説明

ハーネス配線構造及びこれを用いた画像読取装置並びにフィニッシャ装置

【課題】走行ユニットと回路基板との間を電気的に結線するハーネスを、伸緊時の負荷変動が少なく、同時に断線することの少ないハーネス配線構造を提供する。
【解決手段】所定の作業エリアを往復動する走行ユニットと、このユニットに電源供給若しくは信号を送受信する回路基板との間をハーネスで電気的に接続する際に、このハーネスを所定の湾曲形状で伸縮させるケーブル長さ調整手段を設ける。この調整手段は、ハーネスを支持するため所定距離間を往復動可能に配置されたサポート部材と、このサポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、サポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材とで構成する。そしてハーネスの長さと牽引部材の長さを付勢手段からサポート部材に作用する引っ張り張力が牽引部材側に作用し、ハーネス側には作用しないか又は軽減して作用する長さに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、フィニッシャ装置など所定ストロークで往復動するキャリジなどの走行ユニットに回路基板から電源供給或いは制御信号送受信するハーネスの配線構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像読取装置における走査キャリッジ、フィニッシャ装置における後処理装置、穿孔ユニット、スタンプユニット、ステイプラーユニットなどは、所定のストロークで往復動自在に装置フレームに取付けられている。そして画像読取装置(スキャナ装置)の場合にはキャリッジに光源、反射ミラーなどを搭載してプラテン上の原稿画像を走査(スキャニング)するように構成されている。また後処理装置の場合にはステイプラー、パンチ、スタンプなどの後処理手段を処理紙葉の端縁に沿って位置移動自在に構成し、シートの所定位置(1個所又は複数個所)に後処理(仕上処理)を施すように構成されている。
【0003】
このように所定ストロークで往復動する走行ユニットと、装置フレーム側に配置されている電源基板、制御基板などの回路基板とは、ハーネスで電気的に連結されている。そしてこのハーネスで走行ユニットに搭載されている機器(例えば駆動モータ)に電源を供給している。また走行ユニットに搭載されている機器(例えばセンサ)からの検知信号を受信している。或いは走行ユニットと制御基板との間でコマンド信号を送受信している。
【0004】
そこで上述のハーネスの機械的強度が問題となる。例えば特許文献1にはハーネスをフレキシブルプリント配線で構成した場合の次の問題が指摘されている。柔軟性に富んだプリント配線を走行ユニットが往復動する都度、配線に生ずる撓みと緊張を自由な配線形状で繰り返すと配線に局部的な折り曲がり部が発生すると、その繰り返しでこの部分から断線することが問題となっている。
【0005】
この断線の問題と同時に、ハーネスを走行ユニットの往復動で自由な配線形状に構成するとこのハーネスが緩やかなカーブで湾曲変形する場合と、急峻なカーブで湾曲変形する場合とでは走行ユニットに作用する負荷が変動する。このハーネスによる負荷変動は走行ユニットに振動を招き、特に画像読取装置のスキャニング機構にあっては
読取画質の劣化を招く。
【0006】
そこで特許文献1の装置ではプリント配線基板の湾曲内側に弾性変形可能なフレキシブル部材を設けることが提案されている。このフレキシブル部材(弾性板)によってプリント配線基板は常に一定の方向に一定の形状で湾曲し、断線或いは負荷変動の問題を引き起こすことがない。
【0007】
また従来のハーネス配線構造として走行ユニットと回路基板との間をプリント基板、リード単線、リード線束、フラットケーブルなどで接続する場合に次の構造も知られている。この走行ユニットとプリント基板とを結線するハーネスの中央部を滑車に巻回してU字状に湾曲させ、この滑車を走行ユニットの走行方向に移動可能にスライド支持し、更にこの滑車を付勢スプリングで一方向に付勢する結線構造(以下「従来例2」という)が知られている。
【特許文献1】実公平06−013574号公報(図4、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように所定ストロークで往復動する走行ユニットと回路基板を電気的に連結するハーネス配線構造として、従来は前掲特許文献1に開示されているようにハーネスと一体にその配線形状をコントロールする内張りバネ部材(同公報のフレキシブル部材)を配置するものが知られている。
【0009】
また前述の従来例2のように走行ユニットの移動方向に所定範囲で移動自在のスライド部材を設け、このスライド部材にハーネスを巻回する滑車を設け、付勢手段でスライド部材を一方向に付勢する構造が知られている。
【0010】
このような従来のハーネス配線構造では次の問題がある。まず引用文献1の構造では、ハーネスと一体に内張りバネ部材を設け、ハーネスが不特定な形状に変形するのを防止する構造では、走行ユニットには、ユニット自身の荷重とハーネスの変形荷重と、更に内張りバネ部材の変形荷重が作用する。このためハーネスが緩んだ状態と緊縮した状態ではハーネスと内張りバネ部材が走行ユニットに及ぼす負荷が大きく変動する。つまりハーネスが緊縮した状態ではこの線自身と内張りバネ部材の緊縮変形による負荷が走行ユニットに負荷変動として影響する。このため例えば画像読取装置の場合には読取画像に画像ブレなどの問題を生ずる。
【0011】
また、前掲従来例2の構造では、ハーネスは滑車などのスライド部材でU字状に湾曲され、このスライド部材は付勢バネで引っ張られているから、ハーネスには常に引っ張りバネの力が作用している。そこで装置使用時には勿論、その不使用時にも常にスプリングなどの引っ張り力が作用するハーネスは断線し易い問題が生ずる。この場合にハーネスをこの断線に耐えうる強度に構成することも考えられるが、ハーネスの剛性を強くするとハーネスの変形によって走行ユニットに及ぼす負荷変動が大きくなる問題が生ずる。
【0012】
そこで本発明者はプリント基板或いはリード線束のフラット線などのハーネスを滑車、ローラなどのサポート部材で所定の湾曲形状に保持してこのサポート部材を付勢バネで牽引する際に、サポート部材にハーネスとは異なる牽引部材を設け、この牽引部材で付勢バネの付勢力を受け止めるとの着想に至った。
【0013】
本発明は、所定ストロークで往復動する走行ユニットと回路基板とを電気的に結線するハーネス配線構造を、ハーネスの伸張時と緊縮時で走行ユニットに及ぼす負荷変動が少なく、繰り返しの往復動でハーネスが断線することの少ないハーネス配線構造の提供をその主な課題としている。
【0014】
本発明は、走行ユニットと回路基板との間を電気的に結線するハーネスを、走行ユニットに及ぼす伸緊時の負荷変動が少なく、同時に断線することの少ないハーネス配線構造の提供をその主な課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
尚本発明にあって「ハーネス」とは、電気又は電気信号を伝達するワイヤ線、フレキシブルプリント配線を意味し、ワイヤ線は単一のリード線及びフラットハーネスなど複数のリード線束を含むものとする。
【0016】
上記課題を達成するため本発明は以下の構成を採用する。本発明は所定の作業エリアを往復動する走行ユニットと、このユニットに電源供給若しくは信号を送受信する回路基板との間をハーネスで電気的に接続する際に、このハーネスを所定の湾曲形状で伸縮させるケーブル長さ調整手段を設ける。この調整手段は、ハーネスを支持するため所定距離間を往復動可能に配置されたサポート部材と、このサポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、サポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材とで構成する。そしてハーネスの長さと牽引部材の長さを付勢手段からサポート部材に作用する引っ張り張力が牽引部材側に作用し、ハーネス側には作用しないか又は軽減して作用する長さに設定する。
【0017】
所定ストロークで往復する走行ユニットと回路基板とを接続するハーネス配線構造であって、装置フレームと、上記装置フレームに設定された所定の作業エリアを往復動する走行ユニットと、上記装置フレームに固定され上記走行ユニットに電源供給及び/又は信号を送受信する回路基板と、上記回路基板と上記走行ユニットを電気的に接続するハーネスと、上記走行ユニットの往復動に伴って上記ハーネスを湾曲させるケーブル長さ調整手段とを備える。上記ケーブル長さ調整手段は、所定距離間を往復動可能に配置され上記ハーネスを支持するサポート部材と、上記サポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、上記サポート部材と上記装置フレームとの間に配置され、上記サポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材とで構成し、上記ハーネスの長さと上記牽引部材の長さは、上記付勢部材から上記サポート部材に作用する引っ張り張力が上記牽引部材側に作用し、上記ハーネス側には作用しないか又は軽減して作用する長さに設定する。
【0018】
前記牽引部材と前記ハーネスとは、基端部を前記装置フレームに固定された回路基板に固定されると共に、先端部を前記走行ユニットに固定し、この牽引部材の長さは上記ハーネスの長さより短く設定する。
【0019】
前記サポート部材は、装置フレームに摺動可能に取付けられたスライド部材と、上記スライド部材に取付けられ、前記ハーネスケーブルを指示する滑車部材とで構成し、前記付勢部材は、上記装置フレームと上記スライド部材との間に懸架された引っ張りバネで構成する。
【0020】
前記ハーネスは、一端を前記回路基板に、他端を前記走行ユニットに固定支持すると共に、その中間部を前記滑車に巻回して略U字状に支持し、前記牽引部材は、一端を前記回路基板に、他端を前記走行ユニットに固定支持されると共に、その中間部を前記滑車に巻回して略U字状に支持する。このとき上記牽引部材の長さは上記ハーネスの長さより短く設定され、このハーネスは上記滑車の外周に間隙を形成してU字状に巻回する。
【0021】
本発明に係わる画像読取装置は、装置フレームと、上記装置フレームに配置されたガイドレールと、上記ガイドレールに沿って所定の画像読取エリアを往復動するキャリッジと、上記キャリッジに配置され上記画像読取エリアの原稿画像に光を照射する光源と、上記原稿画像からの反射光を所定の結像面に集光するレンズ手段と、上記結像面に配置され上記レンズ手段からの光を光電変換する光電変換手段と、上記光源に電源を供給する回路基板と、上記回路基板と上記キャリッジを電気的に接続するハーネスと、上記キャリッジの往復動に伴って上記ハーネスを湾曲させるケーブル長さ調整手段とを備える。上記ケーブル長さ調整手段は、所定距離間を往復動可能に配置され上記ハーネスを支持するサポート部材と、上記サポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、上記サポート部材と上記装置フレームとの間に配置され、上記サポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材とで構成し、上記ハーネスの長さと上記牽引部材の長さは、上記付勢部材から上記サポート部材に作用する引っ張り張力が上記牽引部材側に作用し、上記ハーネス側には作用しないか又は軽減して作用する長さに設定する。
【0022】
前記回路基板は、前記装置フレームに配置されたシャーシに固定し、この回路基板には前記光電変換手段と、前記光源に電源を供給する電源回路を配置する。
【0023】
本発明に係わるフィニッシャ装置は、単シート若しくはシート束を一時的に保持する処理トレイと、この処理トレイ上のシートに綴じ処理、捺印処理、パンチ処理などの後処理を施す後処理手段と、上記後処理手段を上記処理トレイ上のシートの端縁に沿って往復動する走行ユニットと、上記後処理手段に駆動電源を供給する回路基板と、上記回路基板と上記後処理手段を電気的に接続するハーネスと、上記走行ユニットの往復動に伴って上記ハーネスを湾曲させるケーブル長さ調整手段とを備え、上記ケーブル長さ調整手段は、所定距離間を往復動可能に配置され上記ハーネスを支持するサポート部材と、上記サポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、上記サポート部材と上記装置フレームとの間に配置され、上記サポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材とで構成し、上記付勢部材から上記サポート部材に作用する引っ張り張力が上記牽引部材側に作用し、上記ハーネス側には作用しないか又は軽減して作用する長さに設定する。
【0024】
前記後処理手段は、前記処理トレイ上に集積されたシート束をステイプル綴じするステイプラーで構成する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、走行ユニットと回路基板との間を電気的に結線するハーネスに、線部材を支持して所定形状に湾曲させるサポート部材と、このサポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、このサポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材とを設けたものであるから以下の効果を奏する。
【0026】
走行ユニットの往復動でハーネスは、予め定められた湾曲形状で伸縮するようにサポート部材に支持されているからハーネスが捩れ、或いは屈折変形することがなく円滑に伸縮することとなり、走行ユニットに及ぼす負荷変動を小さくすることが出来る。
【0027】
更に、ハーネスには、所定の湾曲形状に支持するサポート部材が設けられ、このサポート部材は一方向に付勢手段で付勢され、その付勢力は牽引部材側に作用するようにハーネスと牽引部材の長さが設定されている。従って走行ユニットを繰り返し往復動させても、ハーネスは捩れ或いは屈曲することがなくバネなどのストレス(内部応力)が作用することがなく、断線を招くことが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は、本発明に係わるハーネス配線構造の全体構成を示す斜視図であり、図2はハーネス配線構造の概念を示す説明図である。図3はハーネスの構造をそれぞれ示す説明図であり、図4は本発明のハーネス配線構造における走行ユニットの動作状態説明図である。
【0029】
[ハーネス配線構造]
本発明に係わるハーネス配線構造は、所定の作業エリア15を往復動する走行ユニット20と、この走行ユニット20に搭載された構成部品(後述の光源23a、後処理手段25など)に電源を供給或いは各種信号を送受信する回路基板30と、この回路基板30と走行ユニット20の構成部品を電気的に接続するハーネス40と、このハーネス40を走行ユニット20の往復動に伴って長さ調節するケーブル長さ調整手段45とで構成される。各構成について順次説明する。
【0030】
上記作業エリア15は、装置フレーム内に処理ステージが設けられ、このステージ内に作業エリア15が設定される。図5の画像読取装置Aの作業エリア15は読取プラテン5に配置され、図6のフィニッシャ装置Bの作業エリア15は後述する処理トレイ10に設定されている。
【0031】
上記走行ユニット20は、装置フレーム2に設定された作業エリア内を往復動するユニットで構成され、図5の画像読取装置Aにおけるキャリッジ21、図6のフィニッシャ装置Bにおける後処理手段25で構成されている。この走行ユニット20は図2(a)に示すように作業エリア15間をストロークL0で往復動するように支持されている。このため装置フレーム2にはガイドレール12が敷設され、このガイドレール12に走行ユニット20が係合支持されている。
【0032】
走行ユニット20の構造は、システム構成によって異なるが画像読取装置Aの場合にはボックス形状のユニットフレーム22と、このユニットフレームに光源ランプ収納部23と反射ミラー収納部24が設けられている。これは図5に示す装置は、プラテン上の原稿画像に光を照射する光源ランプ23aと反射ミラー24aをキャリジ(走行ユニット)21(20)に搭載し、反射ミラー24aからの光を光電変換素子上に結像するレンズユニット17と光電変換素子18を装置フレーム側に配置するスキャナー構成である関係上キャリッジ21に上述の光源ランプ23aと反射ミラー24aを搭載している。この他、キャリッジ21に光源ランプ23aと、反射ミラー24aと、レンズユニット17と、光電変換素子18を搭載する構成も採用可能である。
【0033】
そこで上述のように目的に応じた構成の走行ユニット20は装置フレーム2に前後一対配置されているガイドレール12に載置支持され、図5左右方向に位置移動可能に支持されている。そしてこの走行ユニット20を所定速度で往復動するユニット移動モータ(駆動モータ)Muと、巻上げワイヤ26が装置フレーム2に配置されている。巻上げワイヤ26は、作業エリア15のホーム位置(図5右端)Hpとリターン位置(図5左端)Rpとの間で走行ユニット20が往復動するように左右一対のプーリ27a、27bに巻上げワイヤ26が架け渡されている。そしてこの一方のプーリ27bにユニット移動モータMuが連結されている。
【0034】
上記回路基板30は、装置フレーム2の底部シャーシ2cに配置されている。この回路基板30には光電変換素子18の取付基板32と、各種アクチュエータMaの電源回路33が設けられている。光電変換素子18はCCD(チャージカップルドディバイス)で構成され回路基板30に設けられた取付基板32に固定されている。また電源回路33は前述の走行ユニット20に搭載される光源ランプ、ステイプル駆動モータなどのアクチュエータ(モータ、ソレノイド)に電源を供給するドライバ回路で構成されている。この他、回路基板30には走行ユニット20に搭載される処理手段の制御信号発信回路(不図示)と、走行ユニット20に搭載されたセンサなどのディバイスの検知信号を受信する受信回路(不図示)が配置されている。
【0035】
上述の回路基板30と走行ユニット20の間を電気的に連結するハーネス40は、種々の配線を使用することができる。例えば回路基板30と走行ユニット20のアクチュエータを電気的に結線する為にはこのハーネス40を単一のリード線40aで構成しても、複数のリード線を束状に結束した結束リード線40bで構成しても、複数のリード線を帯状に結束したフラットケーブル40cで構成しても、或いはフレキシブルプリント配線板40dで構成しても良い。つまり回路基板30と走行ユニット20との間を供給電源或いは制御信号、検知信号を送受可能であればハーネス40のケーブル構造は種々のものが採用可能である。
【0036】
そこでハーネス40は、その基端部40x(図1右端)を回路基板30に配置したコネクタ41に接続され、その先端部40y(図1左端)は走行ユニット20に配置したコネクタ42に接続されている。従って、ハーネス40の長さLhは走行ユニット20の移動ストロークL0より長く設定されている。そしてこのハーネス40は弾性変形可能にフレキシブル素材(例えば銅細線と樹脂チューブなど)で構成され、走行ユニット20の移動に伴って形状変化する。
【0037】
[ケーブル長さ調整手段]
上記走行ユニット20と回路基板30との間隔は走行ユニット20の移動に伴って距離が変化する為、ハーネス40は捩れたり、局部的に屈折して折れ曲がったり、他の構造物に引っ掛かったりすることがある。このためケーブル線40を所定の形状で伸縮するように長さ調整する必要がある。そこで本発明は以下のケーブル長さ調整手段45が設けてある。このケーブル長さ調整手段45はサポート部材46と、付勢手段47と、牽引部材48で構成されている。
【0038】
[サポート部材]
サポート部材46は、装置フレーム2に所定ストロークで摺動可能なスライド部材50で構成されている。図1に示すように箱形形状に形成された装置フレームの側板2aにはガイドピン7が植設されている。このガイドピン7にスライド部材50の長溝50gが嵌合されている。従ってスライド部材50はガイドピン7に沿って図1左右方向に移動可能となる。なおこのスライド部材50の移動ストロークLSは走行ユニットの移動ストロークL0の1/2程度とする(その理由は後述する)。
【0039】
上記スライド部材50には滑車部材51が軸支持されている。そしてこの滑車部材51の外周に前述のハーネス40がU字状に巻回支持される。この滑車部材51は、その円弧状外周部でハーネス40を所定曲率のU字形状に保持する為であり、滑車の他、ローラ、半円状折曲片であっても良い。
【0040】
[付勢手段]
上記スライド部材50には、これをハーネス40の張り側に付勢する付勢手段47が設けられている。図示の付勢手段47は引っ張りスプリングで構成され、その一端は装置フレームの側板2aに固定され、他端はスライド部材50に固定されている。従って滑車部材51を軸支したスライド部材50は付勢手段47でハーネス40の張り側(図1左側)に付勢力を受けている。
【0041】
[牽引部材]
上記付勢手段47でハーネス40を支持する滑車部材51に引っ張り方向の張力を付与する際に、この張力が直接ハーネス40に付加されると内部応力(ストレス)が生じ、この状態で湾曲変形を繰り返すと断線することがある。そこで本発明は付勢手段47の張力が直接ハーネス40に及ばないように以下の牽引部材48を設けたことを特徴としている。
【0042】
上記牽引部材48は、滑車部材51にU字状に巻回されたハーネス40と滑車部材51との間に配置されている。この牽引部材48は、金属、樹脂、布、革などのワイヤ部材又はベルト部材で構成される。この牽引部材48は曲げ方向にはフレキシブルで弾性変形し易く、引っ張り方向(長さ方向)には弾性変形しない剛性に富んだ材料で構成されている。
【0043】
上記牽引部材48の基端部48xは前述のハーネス40と共に回路基板30のコネクタ41の近傍で、概略同一個所に固定されている。また先端部48yはハーネス40の先端部40yを連結した走行ユニット20のコネクタ42の近傍で、概略同一個所に固定されている。
【0044】
そこで上記ハーネス40と牽引部材48の長さ関係について説明する。牽引部材の長さLwと、ハーネスの長さLhとの関係は、付勢部材47からサポート部材46に作用する引っ張り張力Fs(図2参照)が牽引部材48側に作用し、ハーネス40側には作用しない長さに設定されている。つまり基端部40x(48x)と先端部40y(48y)を実質的に同一個所に固定する図示の形態では、ハーネスの長さLhは牽引部材の長さLwより長く(Lh>Lw)設定されている。
【0045】
以上のようにハーネス40と牽引部材48の長さを設定すると次の作用が得られる。前記付勢手段47の付勢力はスライド部材50と滑車部材51を図2左方向に移動する力として作用する。このとき牽引部材48が回路基板30と滑車部材51と走行ユニット20の間に架け渡されている。そしてこの牽引部材の長さLwはハーネスの長さLhより短く設定されている。従って付勢手段47の付勢力は牽引部材48側に作用し、ハーネス側には作用しないこととなる。これによってハーネス40にはテンションなどの内部応力が発生することなく、繰り返しの湾曲変形で断線することがない。
【0046】
このようなハーネス40と牽引部材48の関係に於いて、ハーネス40はサポート部材46および/又は牽引部材48に支持される必要がある。図示のものは、ハーネス40はサポート部材46を構成するスライド部材50に係合支持されU字状の形状が保たれている。つまりU字状に滑車部材51の外周に緩く巻回されたハーネス40はスライド部材50の折り曲げ部50cに上下方向を運動規制されている。
【0047】
なお、本発明にあってハーネス40と牽引部材48は、それぞれの両端部を同一個所(回路基板と走行ユニット)に固定する態様について説明したが、例えば牽引部材48の基端部48xは回路基板に隣接する装置フレームに固定しても良く、この場合にはハーネスの長さLhと牽引部材の長さLwは、Lh>Lwの関係とならない場合がある。このときには付勢手段47から滑車部材51に及ぶ付勢力が牽引部材側にテンションとして作用する長さに設定する。
【0048】
更に、本発明にあってハーネスの長さLhと牽引部材の長さLwとを略々等しく設定する(Lh≒Lw)ことも、また或いはハーネスの長さLhを牽引部材の長さLwより短く設定する(Lh<Lw)ことも可能である。これはハーネス40と牽引部材48の弾性変形の関係で前述の長さ関係(Lh>Lw)が崩れる場合があることを意味する。この場合にはハーネスの弾性限界長さLhmaxは牽引部材の長さLwより長く設定する。このように本発明は付勢手段47からハーネス40に及ぶ付勢力を牽引部材48によって軽減する構成を特徴としている。そして(1)ハーネスと牽引部材が弾性変形しない剛性に富んだ材料のときには、ハーネスの長さLhを牽引部材の長さLwより長く設定する(Lh>Lw)。(2)ハーネスと牽引部材が弾性変形する材料のときには、ハーネスの弾性限界長さLhmaxを牽引部材の長さLwより長く設定する(Lhmax>Lw)。
【0049】
また図2(c)に示すようにスライド部材50の移動によって付勢部材47のバネ力が働くと、滑車部材51に張力Fsが作用する。この滑車部材51の張力Fsは牽引部材48に作用し、回路基板側方向と走行ユニット側方向とに張力が分散され張力1/2Fsがそれぞれの方向の牽引部材48に作用するように設定されている。更に、牽引部材48と滑車部材51が係合したU字状部では、牽引部材48とハーネス40との間にギャップgが形成され、ハーネス40に付勢部材47のバネ力が作用することはない。
【0050】
[画像読取装置]
次に上述のハーネス配線構造を用いた画像読取装置の構成について説明する。図5に示す画像読取装置Aは、ケーシング6と、このケーシング6の上平面に配置された読取プラテン5と、キャリッジ21と、光電変換素子18で構成されている。適宜ボックス形状などに構成されたケーシング21には、その上平面にガラスなどの読取プラテン5が配置されている。この読取プラテン5には読取りエリア(作業エリア)が設定され、このエリアの下方にはキャリッジ21が往復動するように内蔵されている。キャリッジ21は前述したようにユニットフレーム22に光源ランプ収容部23と反射ミラー収容部24が設けてあり、光源ランプ23aと反射ミラー24aを搭載可能に構成されている。このユニットフレーム22は熱的特性に優れたエポキシ樹脂などの耐熱性に優れ機械的強度の強い樹脂材料で構成されている。そしてこのキャリッジ21には図示しないコネクタが配置され、後述する回路基板30から光源ランプ23aに電源を供給するようになっている。
【0051】
上記キャリッジ21はケーシング6に内蔵された装置フレーム2に配置されたガイドレール12に支持されている。従ってキャリッジ21は読取プラテン(作業エリア)5に沿って往復動可能に支持されていることとなる。上記装置フレーム2には、その底部シャーシ2cに回路基板30が配置され、この回路基板30に外部の電源が連結されている。また上記装置フレーム2には読取プラテン5の読取りエリアを挟んで左右に一対のプーリ27a、27bが配置され、このプーリ27a、27bに巻上げワイヤ26が架け渡されている。そして上記プーリ27bにはユニット移動モータMuが連結されている。
【0052】
従って、ユニット移動モータMuの正逆回転でキャリッジ21はプラテン5に沿って図5右端のホームポジションHpから左端のリターン位置Rpとの間で往復動することとなる。そこで上記キャリッジ21に配置されている光源ランプ23aと回路基板30との間はハーネス40で連結されている。このハーネス40の配線構造は図1に基づいて前述した通りであるので説明を省略する。
【0053】
[フィニッシャ装置]
次に前述のハーネス配線構造を用いたフィニッシャ装置の構成について説明する。図6に示すフィニッシャ装置Bは、シートを束状に集積する処理トレイ10と、この処理トレイに集積されたシート束の前端縁に沿って移動自在に配置されたステイプルユニット(後処理手段)25とで構成されている。
【0054】
処理トレイ10は上流側に配置されている排紙経路からシートを搬出されるように排紙経路の下流側に配置されている。この処理トレイ10には図示しないシート端規制部材が設けられ、この規制部材に向けてシートを搬送するスイッチバックローラなどの整合搬送手段が配置されている。この他、処理トレイ10には集積されたシートの側端縁を位置決め整合する整合部材が設けられている。このように処理トレイ10には上流側の排紙経路から順次搬出されるシートを束状に部揃え集積し、この集積の際にトレイに配置されている規制部材にシート先端縁を位置決めし、同時にシートの側端縁を幅寄せ整合するように構成されている。
【0055】
上記処理トレイ10の先端縁にはステイプルユニット(後処理手段)25が配置されている。このステイプルユニット25にはステイプラーが装備されている。このステイプラーはヘッド部とアンビル部とカートリッジ部と駆動機構で構成されている。上記ヘッド部には上下昇降可能にドライバプレートが内蔵され、このドライバプレートの下方にフォーマ部材が配置されている。そしてカートリッジ部から直線状のステイプルをヘッド部に供給しドライバプレートの下降で直線状のステイプル針をコの字状に折曲げ、その後ドライバプレートでトレイ上のシート束に刺入させる。
【0056】
上記アンビル部は上記ヘッド部にシート束を挟んで対向配置され、ドライバプレートで刺入されたステイプル針の先端を折り曲げるクリンチ溝が設けられている。そして上記ドライバプレートは、ユニットフレームに搭載されたステイプルモータで駆動カムを作動し、この駆動カムとドライバプレートとの間に駆動レバーが配置されている。またこの駆動レバーには蓄勢スプリングが設けてある。
【0057】
従って、ステイプルモータを起動して駆動カムをホームポジションから所定回転させる。この駆動カムの回転で駆動レバーと蓄勢スプリングに蓄勢され、カムの所定回転後にリリースされる。そこで駆動レバーは勢いよく下降し、これに係合しているドライバプレートは上死点から下死点に向かって勢いよく降下する。するとカートリッジ部から供給された帯状(シート状)のステイプル針は、その最先端針がコの字状に折り曲げられ、その後シート束に刺入する。このシート束への刺入と同時に針先端はアンビル部に折り曲げられる。
【0058】
そこでステイプルユニット25は装置フレーム2に設けられたガイドレール(ロッド)12に摺動自在に支持されている。そしてこのステイプルユニット25は処理トレイ10に隣接する装置フレームに配置された左右一対のプーリ27a、27b間に架け渡された巻上げワイヤ26に連結されている。この一方のプーリ27bにはユニット移動モータMuが連結されている。このユニット移動モータMuはステッピングモータで構成され、処理トレイ上のシート束に対してステイプルユニット25を位置移動するのと同時にユニットの作動位置を制御するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係わるハーネス配線構造の全体構成を示す斜視図。
【図2】ハーネス配線構造の概念を示す説明図であり(a)は走行ユニットがホーム位置のときのハーネス状態図、(b)は走行ユニットが復帰位置のときのハーネス状態図、(c)はハーネスに及ぶ付勢力の作用図である。
【図3】ハーネスの構造を示し、(a)は単線、(b)は結束線、(c)はフラットケーブル、(d)はプリント配線をそれぞれ示す。
【図4】図2のハーネス配線構造における動作状態説明図であり(a)は走行ユニットがホーム位置、(b)はは走行ユニットが復帰位置の状態を示す。
【図5】図2のハーネス配線構造を採用した画像読取装置の説明図。
【図6】図2のハーネス配線構造を採用したフィニッシャ装置の説明図。
【符号の説明】
【0060】
A 画像読取装置
B フィニッシャ装置
Mu ユニット移動モータ(駆動モータ)
L0 移動ストローク(走行ユニット)
Lh ハーネスの長さ
Lhmax ハーネスの弾性限界長さ
LS 移動ストローク(スライド部材)
Lw 牽引部材の長さ
Fs 引っ張り張力
2 装置フレーム
2a 側板
2c 底部シャーシ
5 読取プラテン
6 ケーシング
7 ガイドピン
10 処理トレイ
12 ガイドレール
15 作業エリア
17 レンズユニット
18 光電変換素子
20 走行ユニット
21 キャリッジ
22 ユニットフレーム
23 光源ランプ収納部
23a 光源ランプ
24 反射ミラー収納部
24a 反射ミラー
25 後処理手段
26 巻上げワイヤ
27a、27b 一対のプーリ
30 回路基板
32 取付基板
33 電源回路
40 ハーネス
40x 基端部
40y 先端部
41 コネクタ
42 コネクタ
45 ケーブル長さ調整手段
46 サポート部材
47 付勢手段
48 牽引部材
48x 基端部
48y 先端部
50 スライド部材
50c 折り曲げ部
50g 長溝
51 滑車部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ストロークで往復する走行ユニットと回路基板とを接続するハーネス配線構造であって、
装置フレームと、
上記装置フレームに設定された所定の作業エリアを往復動する走行ユニットと、
上記装置フレームに固定され上記走行ユニットに電源供給及び/又は信号を送受信する回路基板と、
上記回路基板と上記走行ユニットを電気的に接続するハーネスと、
上記走行ユニットの往復動に伴って上記ハーネスを湾曲させるケーブル長さ調整手段と、
を備え、
上記ケーブル長さ調整手段は、
所定距離間を往復動可能に配置され上記ハーネスを支持するサポート部材と、
上記サポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、
上記サポート部材と上記装置フレームとの間に配置され、上記サポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材と、
で構成され、
上記ハーネスの長さと上記牽引部材の長さは、
上記付勢部材から上記サポート部材に作用する引っ張り張力が上記牽引部材側に作用し、上記ハーネス側には作用しないか又は軽減して作用する長さに設定されていることを特徴とするハーネス配線構造。
【請求項2】
前記牽引部材と前記ハーネスとは、基端部を前記装置フレームに固定された回路基板に固定されると共に、先端部を前記走行ユニットに固定され、
この牽引部材の長さは上記ハーネスの長さより短く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のハーネス配線構造。
【請求項3】
前記サポート部材は、
装置フレームに摺動可能に取付けられたスライド部材と、
上記スライド部材に取付けられ、前記ハーネスケーブルを指示する滑車部材と、
で構成され、
前記付勢部材は、
上記装置フレームと上記スライド部材との間に懸架された引っ張りバネで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハーネス配線構造。
【請求項4】
前記ハーネスは、
一端を前記回路基板に、他端を前記走行ユニットに固定支持されると共に、その中間部を前記滑車に巻回して略U字状に支持され、
前記牽引部材は、
一端を前記回路基板に、他端を前記走行ユニットに固定支持されると共に、その中間部を前記滑車に巻回して略U字状に支持され、
このとき上記牽引部材の長さは上記ハーネスの長さより短く設定され、このハーネスは上記滑車の外周に間隙を形成してU字状に巻回されていることを特徴とする請求項3に記載のハーネス配線構造。
【請求項5】
装置フレームと、
上記装置フレームに設定された所定の画像読取エリアを往復動するキャリッジと、
上記キャリッジに配置され上記画像読取エリアの原稿画像に光を照射する光源と、
上記原稿画像からの反射光を所定の結像面に集光するレンズ手段と、
上記結像面に配置され上記レンズ手段からの光を光電変換する光電変換手段と、
上記光源に電源を供給する回路基板と、
上記回路基板と上記キャリッジを電気的に接続するハーネスと、
上記キャリッジの往復動に伴って上記ハーネスを湾曲させるケーブル長さ調整手段と、
を備え、
上記ケーブル長さ調整手段は、
所定距離間を往復動可能に配置され上記ハーネスを支持するサポート部材と、
上記サポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、
上記サポート部材と上記装置フレームとの間に配置され、上記サポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材と、
で構成され、
上記ハーネスの長さと上記牽引部材の長さは、
上記付勢部材から上記サポート部材に作用する引っ張り張力が上記牽引部材側に作用し、上記ハーネス側には作用しないか又は軽減して作用する長さに設定されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
前記回路基板は、前記装置フレームに配置されたシャーシに固定され、
この回路基板には前記光電変換手段と、前記光源に電源を供給する電源回路が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
単シート若しくはシート束を一時的に保持する処理トレイと、
この処理トレイ上のシートに綴じ処理、捺印処理、パンチ処理などの後処理を施す後処理手段と、
上記後処理手段を上記処理トレイ上のシートの端縁に沿って往復動する走行ユニットと、
上記後処理手段に駆動電源を供給する回路基板と、
上記回路基板と上記後処理手段を電気的に接続するハーネスと、
上記走行ユニットの往復動に伴って上記ハーネスを湾曲させるケーブル長さ調整手段と、
を備え、
上記ケーブル長さ調整手段は、
所定距離間を往復動可能に配置され上記ハーネスを支持するサポート部材と、
上記サポート部材を一方向に付勢する付勢部材と、
上記サポート部材と上記装置フレームとの間に配置され、上記サポート部材に作用する付勢力を制限する牽引部材と、
で構成され、
上記付勢部材から上記サポート部材に作用する引っ張り張力が上記牽引部材側に作用し、上記ハーネス側には作用しないか又は軽減して作用する長さに設定されていることを特徴とするフィニッシャ装置。
【請求項8】
前記後処理手段は、前記処理トレイ上に集積されたシート束をステイプル綴じするステイプラーであることを特徴とする請求項7に記載のフィニッシャ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−110180(P2010−110180A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282101(P2008−282101)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】