説明

バイアスコア木製パネル

【課題】 資源を有効活用する観点から、間伐材、端材、廃材等を使用して軽量でありながら堅牢を確保できる木製のパネル建材を提供する。
【解決手段】 間伐材、端材、廃材等から板状の横はぎ集成材を作成し、紙製のバイアスコアを芯材として、その両面に前記横はぎ集成材からなる外装材をサンドイッチ状に配置して木製パネルを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は間伐材、端材、廃材等から板状の横はぎ集成材を作成し、その板状体を表裏両面の外装板としてバイアスコアによる芯材中間層部分をサンドイッチ状に挟んで形成した木製のパネル建材に関するものである。
【0002】
従来から資源の有効利用の観点から間伐材や廃材を活用して各種構造の建材パネルを製作する試みがなされている。特開2005−199557号(特許文献1)おいては、間伐材又は廃材を有効に利用するもので、中間シートとして表裏紙の間に波形紙が介設された単層又は複数層段ボール紙を採用した合板を提案しているが、軽量化についてはまったく図られていないもので、通気性をうたっているが、遮音性、断熱性に欠けるものであった。
【0003】
また、特開2000−310003号(特許文献2)も間伐材を利用した構造用パネルであるが、吸湿による反りを防止することを目的とした発明であり、集成材から成る表面材に溝を形成する切り欠き部を備えた形状をして、反りを防止する構造としている。この構造用パネルの芯板部分は表面材と同様に集成材から成るもので、周知のベニヤ板と同様に強度を得るためには表面材の木目と芯板の木目とを直行する方向に配設するとしている。この発明では単にベニャ板様の合板の素材として間伐材を利用したすぎないものであって、軽量化、遮音性、断熱性などに乏しい合板といえる。
【0004】
特開2007−15114号(特許文献3)も、間伐材のような小径木を活用するものであるが、この発明における木質パネルは、間伐小径木の木口面の断面形状が台形または六角形になるように切りだして、それらを接着して集成材ブロックを構成し、その集成材ブロックを木口面と平行に所定間隔で切断することにより集成板材を作成するもので、木口面が繰り返し模様あるいは年輪模様としてのデザイン性のある木質パネルの提供と間伐材の利用を目的としており、中間層としての空気を含む層はまったく介在せず、前記従来例と同様に軽量性、遮音性、断熱性に欠けるものである。
【0005】
上記のような間伐材を利用しない建材パネルの中には断熱性を持たせるために中間層としてハニカムコアを介在させた建材パネルも特開2001−288831号(特許文献4)において提案されている。このパネルにおいてはハニカムコアの全部の孔部に木炭、活性炭などの炭素系の小片または粉末からなる物質を充填して加圧して表裏面板材でカーボンパネルを作成し、このカーボンパネルを枠体内に嵌めて保持した構成のもので、炭素系物質の充填効果により結露が断熱性建材内面に発生しないため、枠体にねじれや反りが発生しない建材パネルを提供するものである。
【0006】
この建材パネルにおいては断熱効果や反り防止の効果を得ることはできるようではあるが、当初から所定サイズに設定してこのようなパネルを作成しなければならない。自在に切断して小サイズにしようとすると、内部の炭素系物質がメラミン樹脂接着剤を混合してあるので、飛散しにくいとはいえ、大量の黒い粉末が生じて作業周辺部あるいは建材パネルに付着して汚すこととなる。この炭素系物質の存在により、断熱性や結露予防から捩じれ防止や反りの防止が期待できるものであって、炭素系物質を充填しないハニカムコア内層材と表裏面板材と枠体だけのパネルではこのような目的とする効果は達成できない。
【先行技術文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−199557号公報
【特許文献2】特開2000−310003号公報
【特許文献3】特開2007−15114号公報
【特許文献4】特開2001−288831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
間伐材、端材や廃材等を利用した建材パネルは従来から上述の文献をはじめとして各種の開発がなされてきたが、軽量性、遮音性、断熱性、製作容易性およびコスト面などを同時に満足させるものはなく、さらにパネルを活用すべき用途が限られたものが多く展開性に欠けるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本来は廃棄されてしまうか利用されることの少ない端材、間伐材または廃材あるいは成長性の早い竹材などを活用して作成した横はぎ集成板状体を利用して断熱性および遮音性が確保でき、厚さも自在に調整でき軽量でありながら堅牢性も兼ね備え、反りの発生がなく、さらに製作容易性と加工容易性を伴った、従来のパネルの欠点をカバーしながら、かつより一層の長所を有する地球環境エコロジーに寄与する木製パネルを提案するものである。
【0010】
本願発明の木製パネルは、中間層とそれを挟む表裏面外装板材と枠材とから成る極めて簡単な構造でありながら、前述のような欠点をすべて補うものでその構成とする特徴は、中間層となる芯材としてバイアスコアを採用し、表裏面を形成する板材および枠材として端材、間伐材などから形成した横はぎ集成板材を利用するものである。
【0011】
バイアスコアから成る中間層芯材はパネルの厚さを調整する役割を有し、この中間層芯材の存在により断熱性、遮音性、軽量性などの特徴的効果を得ることができる。このように構成された木製パネルは外観的には無垢材を使用したものと区別がつかない程の美観を呈する軽量の木材パネルであり、床材、壁材、ドア、間仕切り、フラッシュパネルなど幅広い用途を有する。
【発明の効果】
【0012】
≪外観≫
本発明によれば芯材であるバイアスコアの、両面に横はぎ集成材を貼着した構造であるので、無垢板と比較して遜色のないパネル建材である。
【0013】
≪製作性と加工性≫
少ない構成要素から成る製作容易性と、パネルの外観厚さよりも薄い木製外装板材部分と紙製から成る中間層芯材部分なのでサイズ調整をする切断も自在にできる加工容易性を有する。
中間層芯材が紙製であり、バイアスコア構造にしてあるので、紙製バイアス材の厚みを形成する隔壁部の高さを変えることにより用途に応じて任意の厚さの木製パネルの作成が容易である。
【0014】
≪断熱性、保温性および遮音性≫
集成板材によりサンドイッチ状に挟まれた中間部芯材は紙製バイアスコアを採用しているので多数の空気室を形成している。この空気層の存在により、断熱性、保温性および遮音性のあるパネル材であり、しかもバイアスコアが紙製なので、バイアスコアの隔壁部を構成する紙素材は空気を含む微細な多孔質部分を有し、それらの効果を一層高めることとなる。
【0015】
≪軽量性と堅牢性≫
バイアスコア構造により内部に多数の小さな空気室を持つ仕切り壁としての隔壁部を形成することから同じ厚さの無垢材に比べて堅牢性と軽量性の両方を兼ね備えている。
【0016】
≪形状安定性≫
横はぎ集成材から成る外装板材を直接接着するバイアスコア中間層芯材の隔壁端面部は、反りの生じる余地のない狭い間隔で外装材を接着保持することができるので形状の安定性のよい木製パネルとなる。
【0017】
≪環境エコロジーとコスト面≫
さらに、外装材や枠材に間伐材や端材・廃材などを活用し、中間層芯材のバイアスコア素材としては再生紙を利用することもできるので地球環境エコロジーに寄与する観点から極めて好ましく、製作コストの廉価な木製パネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明の断面図である。
【図2】 本発明の芯材中間層を形成するバイアスコアの構造図である。
【図3】 本発明の小板形状パネルを連接して床材に適用した説明図である。
【図4】 本発明の大板形状パネルを連接して床材に適用した説明図である。
【図5】 長尺接ぎ手の各種形状の断面図である。
【図6】 木製パネルと各種長尺接ぎ手との接合部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る木製パネル1は、図1に断面図として示すように、バイアスコア3をサンドイッチ状に両面から横はぎ集成材2により構成された外装材で挟むように貼り合わせた構成から成っている。
【0021】
図2は芯材となるバイアスコア3を展開した構造図を示し、パネル作成前の段階では薄い状態に折り畳むことができるので、保管および運搬にスペースを取らずに済む。
【0022】
展開したバイアスコア3には多数の平行四辺形の空気層が形成され、この空気層により断熱性および遮音性を確保することができ、木製パネルの厚さにもかかわらず軽量化を図ることができ、さらにバイアスコア3の空気室を構成する多数の隔壁の存在により全体として軽量でありながらパネルへの堅牢性を付与することができる。
【0023】
図1の木製パネル1の側面端部にはVカット部4を形成して、そのVカット部4と嵌合する形状にカットした断面三角形状の長尺体を嵌めて枠体を形成することにより一枚の基本的な木製パネルを構成する。
【0024】
木製パネル1は連接することにより各種用途に利用でき、例えば床材パネルとして使用する場合の例を図3に示す。木製パネル1のVカット部4に長尺形の接ぎ手部材5を嵌合して複数の木製パネル1を連接して敷き詰めることにより、遮音性、断熱性のある床を構成することができる。
【0025】
図3では正方形の小板形の木製パネルの使用例を示したが、本発明の木製パネル1は用途に応じたサイズに容易に製作加工できるので、図4のように長方形の大板形の木製パネルを連接することも可能であり、床部分に限らず、壁面や天井面、あるいはパーティションボードとしても有効に活用できる。
【0026】
前述の使用例では二次元的な活用例を示したが、図5のように各種形状の断面の長尺形接ぎ手を採用することにより、木製パネル1の適用範囲は平面性のみならず立体的構成の組み立ても可能となる。接ぎ手部材5と木製パネル1とは必要に応じて接着してもよいが、木製パネル1間に接ぎ手部材5を挿入嵌合することにより連接すれば、木製パネル1の部分交換や組み立て後の解体も容易にできこれらの各素材は再利用可能となる。しかもバイアスコア芯材部分への配線も容易に可能なので、OAフロアや展示ブース素材として最適に活用できる。
【0027】
前記接ぎ手部材5と木製パネル1との組み合わせ例の一部を図6に示す。このような継ぎ手を用途に応じて適宜利用することにより、パネルを直列平面状、あるいは自立性のある直角形状やT字形状の組み立て構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
保管および運搬に容積を取らない折り畳み可能なバイアスコア3を、端材、間伐材等から成る横はぎ集成材でサンドイッチ状に挟んで構成したので断熱性および遮音性があり、かつ、木製パネルの1の厚みを増した場合でも堅牢性と軽量化を保つことができるので、ドア、間仕切り、フラッシュパネル、壁材、そのほかへの用途の広い無垢の木板パネルと比較して遜色のない横はぎ集成板材の木製パネルを提供できる。また、複数枚の接ぎ板構成のみならず、一枚の板状体によりバイアスコア3を中間層とする本発明の木製パネルを構成することもできる。
【符合の説明】
【0029】
1 木製パネル
2 横はぎ集成材
3 バイアスコア
4 Vカット部
5 接ぎ手部材
5a〜5f 継ぎ手部材の断面形状例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアスコアを芯材として、その両面に横はぎ集成材または一枚板からなる外装材をサンドイッチ状に配置した構成を特徴とする木製パネル。
【請求項2】
横はぎ集成材は端材、廃材、間伐材、無垢の薄板または竹材などを単独であるいはこれらを組み合わせた構成からなることを特徴とする請求項1記載の木製パネル。
【請求項3】
横はぎ集成材はバイアスコア芯材に直接接着していることを特徴とする請求項1記載の木製パネル。
【請求項4】
バイアスコア芯材は紙製、アルミニウム製、炭素系素材または発泡性素材であることを特徴とする請求項1記載の木製パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−18280(P2013−18280A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167638(P2011−167638)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(511185933)株式会社デザインオフィスライン (1)
【Fターム(参考)】