説明

バイオコークス製造装置及び方法

【課題】バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置及び方法を提供する。
【解決手段】バイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造する装置であって、複数の反応シリンダ5を備え、その一端側にバイオマス粉砕物の供給部が、他端側にバイオコークスの排出部が設けられるとともに、反応シリンダ5に摺動可能な押込み側ピストン4と引抜き側ピストン9が対向配置され、反応シリンダ5には、バイオマス粉砕物を加熱する加熱反応領域20と、冷却領域30とが形成され、押込み側ピストン4と引抜き側ピストン9の間に充填されたバイオマス粉砕物を加圧しながら、ピストンの差圧を調整してバイオマス粉砕物が各領域にて所定時間滞留されるように移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特に石炭コークスの代替燃料として効果的に利用可能であるバイオコークスを工業的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO排出の削減が推進されている。特に、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多いが、この化石燃料は、CO排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
そこで、化石燃料の代替として、バイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用することができる。
【0003】
バイオマスを燃料化する方法としては、バイオマスを乾燥させて燃料化する方法、加圧して燃料ペレット化する方法、炭化、乾留させて燃料化する方法等が知られている。しかし、バイオマスを乾燥させるのみでは、空隙率が大きくみかけ比重が低くなるため、輸送や貯留が困難であり、長距離輸送や貯留して使用する燃料としては有効とはいえない。
一方、バイオマスを燃料ペレット化する方法は、特許文献1(特公昭61−27435号公報)に開示されている。この方法は、細断された有機繊維材料の含水量を16〜28%に調節し、これをダイス内で圧縮して乾燥し燃料ペレットを製造するようにしている。
また、バイオマスを乾留して燃料化する方法は、特許文献2(特開2003−206490号公報)等に開示されている。この方法は、酸素欠乏雰囲気中において、バイオマスを200〜500℃、好適には250〜400℃で加熱して、バイオマス半炭化圧密燃料前駆体を製造する方法となっている。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−27435号公報
【特許文献2】特開2003−206490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、圧縮成形を行うことによりバイオマスを燃料化しているが、生成した燃料ペレットは水分量が多いため発熱量が低く、燃料としては適していない。
また、特許文献2等に記載されるように乾留によりバイオマスを燃料化する方法では、加工処理を施さないバイオマスに比べると燃料として価値が高いものとなっているが、やはり石炭コークスに比べてみかけ比重が低く、発熱量が低い。さらに、石炭コークスに比べて硬度が低いため、石炭コークスの代替として利用するには不十分である。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
近年、石炭コークスの代替として、バイオコークスが研究されている。
バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後、冷却することにより製造される。加圧、加熱条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲に設定する。これにより以下の反応機構が成立し、高硬度で高発熱量を有するバイオコークスが製造できる。
その反応機構は、上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物の繊維成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、バイオマス粉砕物から発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できるものである。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0007】
図5に、バイオコークスの物性値を他の燃料と比較した表を示す。尚、この表は実験的に得られた数値を記載しているのみであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
この表に示されるように、バイオコークスは、みかけ比重1.2〜1.38、最高圧縮強度60〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kgの物性値を示す硬度、燃焼性ともに優れた性能を有しており、未加工の木質バイオマスが、みかけ比重約0.4〜0.6、発熱量約17MJ/kg、最高圧縮強度約30MPaであるのと比べると、発熱量及び硬度の点において格段に優れていることが判る。また、石炭コークスの物性値である、みかけ比重約1.85、最高圧縮強度約15MPa、発熱量約29MJ/kgに比しても、バイオコークスは燃焼性、硬度とも遜色ない性能を有する。
従って、バイオコークスは石炭コークスの代替として有効な燃料であるとともに、マテリアル素材としての利用価値も高い。
【0008】
しかし、このバイオコークスは未だ実験段階にとどまっており、反応容器にバイオマス粉砕物を人手で充填して一つの反応容器で少量ずつ製造しているのが実状であった。
そこで本発明は、上記したバイオコークスを効率的に製造する装置及び方法を提案する。
【0009】
本発明は、所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
複数の円筒状反応シリンダを備え、該反応シリンダの一端側にバイオマス粉砕物の供給部が、他端側にバイオコークスの排出部が設けられるとともに、該反応シリンダに摺動可能な押込み側ピストンと引抜き側ピストンが対向して配置されており、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
前記反応シリンダには、前記供給部から前記排出部に向けて順に、バイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱反応領域と、該加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却領域とが形成され、
前記押込み側ピストンと前記引抜き側ピストンの間に充填されたバイオマス粉砕物を前記圧力範囲に加圧しながら、これらのピストン間の差圧を調整して、バイオマス粉砕物が各領域にて所定時間滞留されるように移送することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能なバイオコークスを効率的に製造可能である。即ち、複数の反応シリンダ内で同時にバイオマス粉砕物を処理することにより、バイオコークスを工業的に大量生産することができるようになる。
また、各処理領域における滞留時間を自在に調整可能であるため、異なる種類のバイオマス粉砕物にも好適に適用できる。さらに、本実施例では長尺状のバイオコークスが製造できるため、バイオコークス製品の大きさを調整できる。
【0011】
また、前記押込み側ピストンと前記引抜き側ピストンの夫々において、複数のピストンが駆動装置に一体的に連結されていることを特徴とする。
このように、複数のピストンにおいて駆動装置を一体に形成することにより、装置の簡素化、制御の容易化が達成できる。
【0012】
さらに、前記押込み側ピストンと前記引抜き側ピストンの夫々において、複数のピストンが駆動装置に一体的に連結されたバイオコークス製造装置が複数設けられ、
該複数のバイオコークス製造装置にて、互いに異なる処理領域に前記ピストンが位置するようにしたことを特徴とする。
さらにまた、前記押込み側ピストンと前記引抜き側ピストンの夫々において、複数のピストンが駆動装置により独立制御されるように構成され、
前記複数の反応シリンダにて、互いに異なる処理領域にピストンが位置するようにしたことを特徴とする。
これらの発明によれば、一つの処理領域に複数のバイオマス粉砕物が存在することを回避でき、加熱反応領域や冷却領域における熱負荷を軽減することができる。
【0013】
また、所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を、反応シリンダ内にて加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造方法であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が予め設定されており、
前記反応シリンダが複数設けられ、該反応シリンダ内に供給されたバイオマス粉砕物を、押込み側ピストンと引抜き側ピストンにより前記圧力範囲に加圧した状態でシリンダ内を移動させ、該反応シリンダ内にて、バイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱反応工程と、該加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却工程とを行うようにしたことを特徴とする。
さらに、前記複数のシリンダにて、互いに時間差を以って各処理工程を行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上記載のごとく本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量を有するバイオコークスを、効率的に生産することが可能となる。
即ち、複数の反応シリンダ内でバイオマス粉砕物を押出しながら処理を行うことにより、バイオコークスを工業的に大量生産することができるようになる。
また、各処理領域における滞留時間を自在に調整可能であるため、異なる種類のバイオマス粉砕物にも好適に適用できる。
また、複数のピストンにおいて駆動装置を一体に形成することにより、装置の簡素化、制御の容易化が達成できる。
さらに、複数のシリンダ若しくは装置において互いにピストン位置を異ならせることにより、一つの処理領域に複数のバイオマス粉砕物が存在することを回避でき、加熱反応領域や冷却領域における熱負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成図、図2は本実施例の反応シリンダの配置構成を説明する図、図3は本実施例の充填装置を示す側断面図、図4は充填装置と各シリンダの動作タイミングを示す図である。
本実施例において、バイオコークスの原料となるバイオマスは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスであり、例えば、廃木材、間伐材、剪定枝、植物、農業廃棄物、コーヒー粕や茶粕等の厨芥廃棄物等が挙げられる。
【実施例】
【0016】
本実施例では、バイオマスを予め所定の含水率になるように水分調整するとともに、所定粒径以下まで粉砕する前処理を行ったバイオマス粉砕物を原料としている。
本実施例のバイオコークス装置は、このバイオマス粉砕物を所定の圧力、温度条件にて加圧、加熱して一定時間保持した後、冷却することによりバイオコークスを製造するものである。上記した圧力、温度条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲とする。即ち、前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲である。
【0017】
まず、図1を参照して、本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成を説明する。
バイオコークス製造装置は、バイオマス粉砕物が供給され上記した反応を行ってバイオコークスを製造する反応シリンダ5と、シリンダ内のバイオマス粉砕物を供給側から押し込む押込み側ピストンユニットと、このバイオマス粉砕物を排出側から押圧する引抜き側ピストンユニットと、を備える。
前記反応シリンダ5は、横置き円筒状に形成され、その一端側にバイオマス粉砕物の供給部が設けられ、該供給部にバイオマス粉砕物供給装置(図示略)に接続されている。他端側には、反応容器内で生成したバイオコークスを排出する排出部が設けられている。本実施例では、複数の反応シリンダ5が所定間隔を隔てて並列配置された構成となっている。
図2に反応シリンダ5の配置構成の一例を示す。同図では、反応シリンダ5を放射状に複数設けた構成としている。
【0018】
前記押込み側ピストンユニットは、反応シリンダ5に摺動可能に嵌挿されるピストン4と、該ピストン4に連結されたピストンロッド3と、該ピストンロッド3の端部に形成されたピストンヘッド2と、がシリンダ毎に設けられており、複数のピストンヘッド2が油圧駆動装置1に一体に連結された構成となっている。即ち、油圧駆動装置1により、複数のピストン4が反応シリンダ5内を同時に往復動するようになっている。
同様に、引抜き側ピストンユニットは、前記押込み側ピストン4に対向して配置される引抜き側ピストン9と、引抜き側ピストンロッド8と、引抜き側ピストンヘッド7とが複数設けられ、これらが引抜き側油圧駆動装置6に一体に連結された構成となっている。
これらの押込み側ピストン4と引抜き側ピストン9の間に、バイオマス粉砕物が充填され、ピストン4、9により該バイオマス粉砕物を加圧するとともに反応シリンダ5内を移動させるようになっている。
【0019】
反応シリンダ5には、バイオマス粉砕物供給側から排出側に向けて順に、充填領域10と、加熱反応領域20と、冷却領域30が形成されている。
前記充填領域10は、バイオマス粉砕物を反応シリンダ5内に充填させる領域である。その具体的な構成の一例を図3に示す。同図に示されるようにこの充填領域10は、粉砕物ホッパ11から投入されたバイオマス粉砕物が、回転駆動するシャフト12に固定された螺旋状ブレード13により反応シリンダ5側に移送され、所定量のバイオマス粉砕物が反応シリンダ5内に充填される構成となっている。このとき、ピストン4は反応シリンダ5から取り外しておき、バイオマス粉砕物を充填後にピストン4を挿入する。
尚、図示されないが本実施例では、バイオマス粉砕物供給装置より上流側に、バイオマス原料を所定の含水率に水分調整するとともに所定粒径以下まで粉砕する前処理装置と、製造された大径のバイオコークスを所望の大きさまで破砕する破砕装置と、を備えることが好ましい。
【0020】
前記加熱反応領域20は、シリンダ内のバイオマス粉砕物を上記した温度範囲に加熱する加熱手段21が設けられる。該加熱手段21としては、熱媒による加熱、蒸気による加熱、高圧加熱水による加熱、誘導加熱機による加熱等が挙げられる。図1には、一例として熱媒を用いて加熱する構成を示している。これは、反応シリンダ5の加熱反応領域20を、熱媒が貯留された熱媒槽に浸漬し、該熱媒槽内の熱媒を、外部に設けた熱媒タンク22との間で循環させて加熱温度を維持するようにしている。熱媒タンク22には、誘導加熱機23等の加熱手段が具備され、温度センサ24により熱媒タンク22内の温度を検出し、誘導加熱機23へ供給する電流量を制御して熱媒温度を調整する構成となっている。
【0021】
前記冷却領域30には、加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却手段31が設けられる。該冷却手段31としては、冷媒による冷却、空冷、水冷等が挙げられ、反応シリンダ5内の処理物を80℃以下、好適には40℃以下まで冷却する能力を有することが好ましい。
【0022】
さらに本実施例では、押込み側油圧駆動装置1と、引抜き側油圧駆動装置6の油圧を夫々検出する圧力センサ41、42を設け、検出された圧力に基づいて制御装置45により押込み側ピストン4と引抜き側ピストン9の圧力を調整し、シリンダ内のバイオマス粉砕物に加える圧力を設定するとともに、該バイオマス粉砕物の移送を制御している。
ここで、本実施例のバイオマス粉砕物の処理方法としては以下の2通りある。
一つは、夫々の処理領域にてバイオマス粉砕物を一旦保持し、処理終了後に再度移送を開始して次の処理領域まで到達したら停止し、保持することを繰り返し行う方法である。
もう一つは、バイオマス粉砕物が夫々の処理領域にて所定時間滞留されるように一定速度で常時移送しながら処理を行う方法である。
【0023】
前者の方法では、制御装置45によりピストン4、9間のバイオマス粉砕物に加える圧力を上記した圧力範囲内に維持するとともに、押込み側油圧駆動装置1と引抜き側油圧駆動装置6の差圧を変化させて、ピストン4、9の運転と停止を制御する。即ち、移送時には、押込み側ピストン4の圧力Pが引抜き側ピストン9の圧力Pより大きくなるようにし、この差圧ΔP=P−Pが一定となるように制御し、処理領域まで到達したらΔP=0にして所定時間保持する。処理が終了したらΔPを所定の値として移送を開始し、次の処理領域まで移送する。この動作を全処理領域において繰り返し行う。処理領域まで確実にバイオマス粉砕物を移送する場合、シリンダ内のバイオマス粉砕物の位置を検出する構成を備えることが好ましい。位置の検出は、ピストンのストローク長から処理物の位置を検出する方法、位置センサを設けて処理物の位置を検出する方法などがある。
【0024】
後者の方法では、制御装置45により、ピストン4、9間のバイオマス粉砕物に加える圧力を上記した圧力範囲内に維持するとともに、押込み側油圧駆動装置1と引抜き側油圧駆動装置6により発生させるピストン間の差圧を一定に維持しながら一定速度で移送するようにしている。即ち、押込み側ピストン4の圧力Pが引抜き側ピストン9の圧力Pより大きくなるようにし、この差圧ΔP=P−Pが一定となるように制御する。
【0025】
上記した構成を有するバイオコークス製造装置の作用につき、操作方法を含めて説明する。ここではバイオマス粉砕物を各処理領域にて一旦保持する場合につき説明する。尚、ここで記載する温度、圧力、含水率、大きさ等の数値範囲は、本装置における好適な一例であるが、これに限定されるものではない。
まず、原料となるバイオマス粉砕物の前処理として、バイオマスの含水率を5〜10%に乾燥させる水分調整を行い、該乾燥したバイオマスを粒子径3mm以下、好ましくは0.1mm以下に粉砕する。また、バイオマスの種類によっては乾燥・粉砕後に調湿する物もある。これにより、バイオマスを反応シリンダ5に充填する際、嵩密度が向上し均質な充填が可能となり、加熱成形においてバイオマス間の接触が高まり、成形後の硬度も向上する。
粉砕したバイオマスを粉砕物ホッパ11に投入する。粉砕物ホッパ11に貯留されたバイオマス粉砕物は、充填領域10にて充填装置14により反応シリンダ5内に適宜供給される。このとき、充填装置14によりバイオマス粉砕物を2本〜4本の反応シリンダ5に同時に押出し、比重が0.6〜1.0となるように充填することが好ましい。
その後、充填した反応シリンダ5を、ピストン4、6を備えた油圧システムにセットする。
【0026】
押込みピストン4と引抜きピストン9の間に充填されたバイオマス粉砕物は、加熱反応領域20に移送される。移送する際に、押込み側ピストン4の油圧を引抜き側ピストン9の圧力より1〜5Mpa大きくし、引抜き側ピストン9の速度に基づいて押込み側ピストン4の油圧を制御するようにしてもよい。これにより、一定以上の加圧が掛かっていることが確認できる。
前記加熱反応領域20におけるバイオマス粉砕物の圧力は、油圧駆動装置1、6により調整され、8〜25MPaに維持される。該加熱反応領域20では、加圧しながら加熱手段21を作動してバイオマス粉砕物が115〜230℃になるように加熱し、一定時間保持する。保持時間は、反応シリンダの径によって設定されるが、例えばシリンダ径が50mmの場合、保持時間は10〜20分間で、150mmの場合は30〜60分間とする。
上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物の成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、反応シリンダ内に発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できる。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0027】
その後、シリンダ内のバイオマス粉砕物を加熱反応領域20から冷却領域30に移動させ、該冷却領域30にて冷却手段により80℃以下、好適には40℃以下になるまで冷却する。尚、この温度より高い温度でバイオコークスを取り出すと、ヘミセルロースによる接着効果が低下するため、冷却した後に排出するようにする。
冷却後、生成したバイオコークスは反応シリンダ5より排出される。該排出されたバイオコークスは、不図示の切断手段により所望の長さに切断することが好ましい。
【0028】
本実施例のバイオコークス製造装置及び方法を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【0029】
即ち、本実施例によれば、複数の反応シリンダ5内で同時にバイオマス粉砕物を処理することにより、バイオコークスを工業的に大量生産することが可能となる。また、駆動装置1、6は複数のピストン4、9において一体に形成されているため、装置の簡素化、制御の容易化が可能となる。また、加熱反応領域20と冷却領域30を異なる位置で行うようにしたため、単独の加熱手段、或いは冷却手段を具備すればよく、装置構成が簡単化する。さらに、各処理領域における滞留時間を自在に調整可能であるため、異なる種類のバイオマス粉砕物にも好適に適用できる。
また、バイオマス粉砕物を各処理領域毎に一旦停止させ、一定時間保持させる構成とした場合、反応シリンダ5の長さを短くすることができ、装置の小型化、省スペース化が可能となる。
さらに、バイオマス粉砕物を常時移送しながら処理を行う構成とした場合、バイオコークスの製造量を増大することができる。
【0030】
また、上記したバイオコークス製造装置において、各シリンダ毎にピストンが独立制御されるように駆動装置を構成し、複数の反応シリンダにて、互いに異なる処理領域にピストンが位置するように制御してもよい。
具体例として、図4に、充填装置と各シリンダの動作タイミングを示す。図4(a)は充填装置の動作タイミング、(b)はシリンダAの動作タイミング、(c)はシリンダBの動作タイミングである。ここでは、連続移動させながら処理を行う場合につき説明する。
【0031】
まず、充填装置14をセットし、シリンダAにバイオマス粉砕物を充填する。そしてシリンダAでは、充填されたバイオマス粉砕物をピストン4、9により加圧しながら加熱反応領域20に移動し、加熱反応処理を行う。このとき、充填装置14では、シリンダBにバイオマス粉砕物を充填する。
シリンダAにて加熱反応処理が終了し、冷却領域に移動して冷却処理を行っている時に、シリンダBでは、充填されたバイオマス粉砕物の移動、加熱反応処理を行う。このようにして、他のシリンダにおいても、処理領域が異なるように時間差を以って充填操作を行うようにする。
【0032】
本構成とすることにより、一つの処理領域に複数のバイオマス粉砕物が存在することを回避でき、加熱反応領域や冷却領域における熱負荷を軽減することができる。
さらに上記した構成を、バイオコークス製造装置を複数設けて、これに適用してもよい。これは、一体化された油圧駆動装置を備えたバイオコークス製造装置を複数設け、夫々のバイオコークス製造装置において、互いに時間差を以って処理を行うようにする。これにより、一体化された油圧駆動装置により装置の簡素化が可能であるとともに、熱負荷の軽減が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本実施例に係るバイオコークス製造装置を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成図である。
【図2】本実施例の反応シリンダの配置構成を説明する図である。
【図3】本実施例の充填装置を示す側断面図である。
【図4】充填装置と各シリンダの動作タイミングを示す図である。
【図5】バイオコークスの物性値を比較する表である。
【符号の説明】
【0035】
1 押込み側油圧駆動装置
4 押込み側ピストン
5 反応シリンダ
6 引抜き側油圧駆動装置
9 引抜き側ピストン
10 充填領域
11 粉砕物ホッパ
20 加熱反応領域
21 加熱装置
22 熱媒タンク
23 誘導加熱機
30 冷却領域
40、41 圧力センサ
45 油圧制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
複数の円筒状反応シリンダを備え、該反応シリンダの一端側にバイオマス粉砕物の供給部が、他端側にバイオコークスの排出部が設けられるとともに、該反応シリンダに摺動可能な押込み側ピストンと引抜き側ピストンが対向して配置されており、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
前記反応シリンダには、前記供給部から前記排出部に向けて順に、バイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱反応領域と、該加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却領域とが形成され、
前記押込み側ピストンと前記引抜き側ピストンの間に充填されたバイオマス粉砕物を前記圧力範囲に加圧しながら、これらのピストン間の差圧を調整して、バイオマス粉砕物が各領域にて所定時間滞留されるように移送することを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記押込み側ピストンと前記引抜き側ピストンの夫々において、複数のピストンが駆動装置に一体的に連結されていることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記押込み側ピストンと前記引抜き側ピストンの夫々において、複数のピストンが駆動装置に一体的に連結された請求項1記載のバイオコークス製造装置が複数設けられ、
該複数のバイオコークス製造装置にて、互いに異なる処理領域に前記ピストンが位置するようにしたことを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項4】
前記押込み側ピストンと前記引抜き側ピストンの夫々において、複数のピストンが駆動装置により独立制御されるように構成され、
前記複数の反応シリンダにて、互いに異なる処理領域にピストンが位置するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項5】
所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を、反応シリンダ内にて加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造方法であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が予め設定されており、
前記反応シリンダが複数設けられ、該反応シリンダ内に供給されたバイオマス粉砕物を、押込み側ピストンと引抜き側ピストンにより前記圧力範囲に加圧した状態でシリンダ内を移動させ、該反応シリンダ内にて、バイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱反応工程と、該加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却工程とを行うようにしたことを特徴とするバイオコークスの製造方法。
【請求項6】
前記複数のシリンダにて、互いに時間差を以って各処理工程を行うようにしたことを特徴とする請求項5記載のバイオコークスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−274112(P2008−274112A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119272(P2007−119272)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】