説明

バイオチップ及び生体物質検出装置

【課題】バイオチップ及び生体物質検出装置が提供される。
【解決手段】バイオチップは、第1及び第2傾斜面によって形成された複数の尖鋭部を有する表面を含む基板と、第1及び第2傾斜面のうち少なくとも何れか一つの傾斜面上に形成された金属層と、金属層上に形成され、表面に標的分子と特異結合する捕捉分子が固定された誘電層と含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップ及び生体物質検出装置に関し、より詳細には、表面プラズモン共鳴現象を利用する生体物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体物質検出装置(すなわち、バイオセンサー)とは、特定の生体物質に対する認識機能を有する生物学的収容体と分析しようとする分析体との選択的反応及び結合によって変化する光学または電気信号を感知できる素子である。すなわち、バイオセンサーは、生体物質の存在を確認したり、定性的または定量的に分析することができる。ここで、生物学的収容体(すなわち、感知物質)としては、特定物質と選択的に反応及び結合できる酵素、抗体及びDNAなどが使用される。そして、信号感知方法としては、分析体の有無による電気信号の変化、収容体と分析体の化学反応による光学信号の変化など、様々な物理化学的方法を使用して生体物質を検出及び分析する。
【0003】
光学信号の変化を利用する光学バイオセンサーの場合、表面プラズモンバイオセンサー(Surface Plasmon Biosensor)、全反射エリプソメトリーバイオセンサー(Total Internal Reflection Ellipsometry Biosensor)、光導波路バイオセンサー(Waveguide Biosensor)などの光学的方法を利用するバイオセンサーに対する研究開発が活発に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5641640号明細書
【特許文献2】米国特許第7397043号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より容易に表面プラズモンを励起して、生体物質を分析するための蛍光信号の感知効率を向上させることができるバイオチップを提供することにある。
【0006】
本発明が解決しようとする他の課題は、より容易に表面プラズモンを励起して、生体物質を分析するための蛍光信号の感知効率を向上させることができる生体物質検出装置を提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、以上で言及した課題に限定されず、言及されなかったまた他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解できるはずであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記解決しようとする課題を達成すべく、本発明の一実施例によるバイオチップは、第1及び第2傾斜面によって形成された複数の尖鋭部を有する表面を含む基板と、第1及び第2傾斜面のうち少なくとも何れか一つの傾斜面上に形成された金属層と、金属層上に形成され、表面に標的分子と特異結合する捕捉分子が固定された誘電層と含む。
【0009】
上記解決しようとする他の課題を達成すべく、本発明の一実施例による生体物質検出装置は、第1及び第2傾斜面によって形成された複数の尖鋭部を有する表面を含む基板と、第1及び第2傾斜面のうち少なくとも何れか一つの傾斜面上に形成された金属層と、金属層上に形成され、蛍光体で標識された標的分子と特異結合する捕捉分子が表面に固定された誘電層と、基板の第1または第2傾斜面に対して所定角度に励起光を照射する光源部と、基板の第1及び第2傾斜面のうち少なくとも何れか一つの傾斜面に、捕捉分子と前記標的分子の特異結合によって固定された蛍光体から放出される放出光を検出する検出部とを含む。
【0010】
その他の実施例の具体的な事項は詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバイオチップ及び生体物質検出装置によると、捕捉分子と標的分子が特異結合する基板の上面を楔状に形成することによって、基板に対して所定入射角に照射される入射光が、表面プラズモン共鳴角に金属層に入射することができる。これによって、捕捉分子と標的分子の特異結合によって基板上部に固定された蛍光体から表面プラズモンによって励起された蛍光信号を放出することができる。
【0012】
また、基板が楔状の上面を有するので、基板上面に標的分子を含む流体が供給されるとき、流体の供給量及び供給速度を制御することができる。
【0013】
また、楔状の上面を有する基板に入射する入射光と、蛍光体から放出される放出光(すなわち、蛍光信号)が空間的に分離できるので、信号対雑音比が向上して、生体物質の感知効率がより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例によるバイオチップを示す図である。
【図2】本発明の 他の実施例によるバイオチップを示す図である。
【図3A】本発明の一実施例によるバイオチップの製造方法を示す図である。
【図3B】本発明の一実施例によるバイオチップの製造方法を示す図である。
【図3C】本発明の一実施例によるバイオチップの製造方法を示す図である。
【図4】本発明の一実施例による生体物質検出装置を示す図である。
【図5】励起光の入射角による反射率変化を示すグラフである。
【図6】本発明の他の実施例による生体物質検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の利点及び特徴、そしてそれを達成する方法は添付図面とともに詳細に後述される実施例を参照すれば明確になるであろう。しかし、本発明は以下で開示される実施例に限定されるのではなく、互いに異なる様々な形態に具体化されることができ、本実施例は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明の思想を十分に理解するために提供されるものであって、本発明は特許請求の範囲によって正義されるものである。明細書全体にわたって同一参照符号は同一構成要素を示す。
【0016】
本明細書で使用された用語は実施例を説明するためのものであって、本発明を限定しようとするものではない。本明細書で、単数形は特別な言及がない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む(comprise)」を利用して言及された構成要素、段階、動作及び/または素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
【0017】
また、本明細書で記述する実施例は、本発明の理想的な例示図である断面図及び/または平面図を参考して説明される。図面において、膜及び領域の厚さは技術的内容の効果的な説明のために誇張されたものである。よって、図面に例示された領域は概略的な属性を有し、図面に例示された領域の模様は素子の領域の特定形状を例示するためのものであって、発明の範囲を限定するためのものではない。
【0018】
本明細書において標的分子(target molecules)とは、特定基質を表す生体分子であって、分析体または分析物(analytes)と同じ意味に解釈でき、本発明の実施例において抗原に該当する。
【0019】
本明細書において捕捉分子(capture molecules)とは、標的分子と特異結合(specific binding)する生体分子であって、プローブ分子(probe molecules)、収容体(receptor)またはアクセプター(acceptor)と同じ意味に解釈でき、本発明の実施例において捕集抗体に該当する。
【0020】
また、本発明の実施例では、生体物質を検出するために、サンドイッチ免疫測定法(sandwich immunoassay)を利用する。サンドイッチ免疫測定法とは、標的分子を感知分子と特異結合させ、感知分子が結合された標的分子を捕捉分子と特異結合させて、捕捉分子‐標的分子‐感知分子構造の複合体(conjugate)を形成して生体物質を検出する方法である。
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施例によるバイオチップについて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例によるバイオチップを示す図である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一実施例によるバイオチップ100は、基板110、金属層120、誘電層130及び標的分子144と特異結合する捕捉分子142を含む。
【0024】
基板110は、光が透過及び反射できる物質で形成される。例えば、基板110は、プラスチック、ガラスまたはシリコン基板であってもよい。また、基板110は、PDMS(polydimethylsiloxane)、PMMA(polymethylmethacrylate)、PC(polycarbonate)、COC(cyclic olefin copolymer)、PA(polyamide)、PE(polyethylene)、PP(polypropylene)、PPE(polyphenylene ether)、PS(polystyrene)、POM(polyoxymethylene)、PEEK(polyetheretherketone)、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PVDF(polyvinylidene fluoride)、PBT(polybutyleneterephthalate)、FEP(fluorinated ethylenepropylene)、PFA(perfluoralkoxyalkane)などのポリマーからなってもよい。
【0025】
基板110は、所定領域に楔状の上面を含む。具体的に、基板110の上面には、第1及び第2傾斜面112、114によって形成された尖鋭部116が形成され、尖鋭部116は基板110の上面に複数個が形成されることができる。基板110に形成された第1及び第2傾斜面112、114は、所定角度に入射する励起光を表面プラズモン共鳴角に金属層120に入射させることができる。これについて、図4を参照してより詳しく説明する。
【0026】
金属層120は、楔状の基板110上面に沿って形成され、金属層120の表面では外部から与えられる電磁波(すなわち、エネルギーまたは波長)によって表面プラズモン(surface plasmon)が発生する。例えば、金属層120は金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)またはチタン(Ti)で形成されることができる。
【0027】
また、基板110と金属層の界面には、金属層120の接着力を向上させるための接着層(図示せず)が形成されることができる。接着層(図示せず)としては、例えば、クロム(Cr)薄膜またはチタン(Ti)薄膜が用いられることができ、約1乃至5nmの厚さに形成されることができる。
【0028】
金属層120上には、捕捉分子142と標的分子144の特異結合によって固定される蛍光体148への表面プラズモン共鳴エネルギー伝達効率を向上させるための誘電層130が形成される。誘電層130は、例えば、SiO2、Si34、TiO2、Ta25またはAl23で形成されることができる。
【0029】
蛍光体148が金属層120から所定間隔離隔して有効伝達距離内に位置する時、表面プラズモン共鳴エネルギーの伝達効率が向上する。有効伝達距離とは、金属層120で表面プラズモン共鳴が発生する時、金属層120で散乱する表面プラズモンのエネルギーフィールド(field)である。。具体的に、金属層120から蛍光体148までの有効伝達距離が約2乃至20nmである時、表面プラズモン共鳴エネルギーの伝達効率が極大化されることができる。これによって、蛍光体148を金属層120との間の有効伝達距離内に位置させるために、所定厚さの誘電層130が形成される。
【0030】
また、誘電層130の表面には、捕捉分子142が固定化(immobilization)されることができる。そして、誘電層130の表面には、捕捉分子142がよりしっかり固定化(immobilization)されるように表面処理されることができる。例えば、誘電層130の表面にポリリジン(poly lysine)を含むポリマーが形成されることができ、自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Monolayer)が形成されることができる。
【0031】
また、誘電層130の表面には活性基が誘導されることができる。例えば、誘電層130の表面に、カルボキシル基(‐COOH)、チオール基(‐SH)、水酸基(‐OH)、シラン基、アミン基またはエポキシ基のような活性基が誘導されることができる。
【0032】
誘電層130の表面には、分析しようとする標的分子144と特異結合する捕捉分子142が固定化される。図面には基板110の第1傾斜面112の上部にのみ捕捉分子142が固定されると示されているが、第1傾斜面112だけでなく、第2傾斜面114上部にも捕捉分子が固定されることができる。
【0033】
誘電層130の表面に捕捉分子142を固定化する方法としては、化学的吸着(chemical adsorption)、共有結合(covalent−binding)、電気的結合(electrostatic attraction)、共重合体(co−polymerization)、アビジン‐ビオチン結合システム(avidin−biotin affinity system)などが利用できる。
【0034】
捕捉分子142は、例えば、タンパク質、細胞、ウィルス、核酸、有機分子または無機分子であることができる。タンパク質の場合、抗原、抗体、基質タンパク質、酵素、補酵素など何れの生体物質でも可能である。そして、核酸の場合、DNA、RNA、PNA、LNAまたはそれらの混合体であることができる。具体的に、本発明の一実施例で、捕捉分子142は抗原と特異結合できる捕集抗体であることができる。
【0035】
捕捉分子142には、分析しようとする標的分子(すなわち、抗原)144が特異結合する。この時、標的分子144は、蛍光体148によって標識されて、捕捉分子142に特異結合する。具体的に、蛍光体148が標識された感知分子146が標的分子144と特異結合することで、標的分子144が蛍光体148で標識されることができる。このとき、感知分子(detection molecules)146と捕捉分子142は、標的分子144と特異結合する場所(site)が互いに異なる。本発明の一実施例で、感知分子146は抗原と特異結合できる感知抗体であることができる。
【0036】
このように、本発明の一実施例によるバイオチップ100において、基板110の上面、すなわち第1及び第2傾斜面112、112上には、金属層120及び誘電層130が形成され、誘電層130上には生体物質の分析のために捕捉分子142‐標的分子144‐感知分子146‐蛍光体148の結合構造物が形成されることができる。
【0037】
一方、本発明の一実施例による生体物質検出装置に備えられるバイオチップは、DNAチップ、タンパク質チップ、マイクロアレイ、または微細流体チップに適用できる。
【0038】
図2は、本発明の他の実施例によるバイオチップを示す図である。
【0039】
図2を参照すると、本発明の他の実施例によるバイオチップは、微細流体チャネル100´を含む。すなわち、バイオチップは、下部プレート110a及び上部プレート(図示せず)を含み、下部プレート110a及び上部プレート(図示せず)が互いに所定間隔(チャネル深さ、h)離隔した状態で結合して、微細流体チャネル100´を形成することができる。すなわち、微細流体チャネル100´は、下部プレート110aの所定領域を上面から一定深さh内にリセスして形成することができる。そして、下部プレート110aの上面に上部プレート(図示せず)が接合されることができる。このような微細流体チャネル100´では、毛細管現象によって標的分子を含む流体が移動することができる。
【0040】
下部プレート110aに形成された微細流体チャネル100´表面には、生体物質が反応する所定領域が楔状に形成される。すなわち、下部プレート110aの表面は、第1及び第2傾斜面112、114によって形成された尖鋭部116を含む。そして、尖鋭部116は、下部プレート110aの上面に複数個が形成されることができる。下部プレート110aに形成された第1及び第2傾斜面112、114は、所定角度に下部プレート110aに入射する励起光を、表面プラズモン共鳴角に金属層120に入射させることができる。
【0041】
また、下部プレート110aに形成された尖鋭部116は、下部プレート110a及び上部プレート(図示せず)の間隔がhに維持される領域と、下部プレート110a及び上部プレート(図示せず)の間隔がhより減少する領域とを含む。よって、微細流体チャネル100´に標的分子を含む流体が供給されるとき、流体の供給速度を制御することができる。
【0042】
また、下部プレート110aに形成された第1及び第2傾斜面112、114上には金属層(図1の120)及び誘電層(図1の130)が順に形成され、誘電層(図1の130)表面には標的分子144を感知するための捕捉分子142が固定化される。
【0043】
図3A乃至図3Cは、本発明の一実施例によるバイオチップの製造方法を示す図である。
【0044】
所定領域に楔状の上面を有する基板は、フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィまたはインプラント技術を利用して形成されることができる。
【0045】
詳しく説明すると、図3Aに示すように、単結晶シリコン基板10を用意し、楔状の上面を形成するための所定領域を露出させるマスク11を形成する。そして、シリコン基板10に第1及び第2傾斜面12、14が形成されるように異方性ウェットエッチング工程を行って、シリコン基板10に溝(groove)を形成することができる。例えば、約80℃の温度で、KOH溶液を利用してシリコン基板10をエッチングすることで、第1及び第2傾斜面12、14間の角度を約55°(特に、エッチング角54.7°)に形成することができる。
【0046】
図3Bを参照すると、楔状の溝を有するシリコン基板10に一般的な電気めっき(electroplating)方法を利用して金属物質を満たし、シリコン基板10と金属膜を分離して金属スタンプ20を形成することができる。これによって、シリコン基板10に形成された楔状の溝が金属スタンプ20の表面に形成されることができる。よって、金属スタンプ20の表面に互いに所定角度を成す第1及び第2傾斜面22、24が形成されることができる。この時、金属スタンプ20としては、Ni/Cr薄膜またはNi/Au薄膜が用いられることができる。
【0047】
図3Cを参照すると、バイオチップの基板を形成するためのプラスチックまたはポリマー基板110を用意し、金属スタンプ20を用いて基板110の所定領域に第1及び第2傾斜面112、114を形成する。すなわち、金属スタンプ20を利用してプラスチック基板を押出成形または射出成形して、楔状の上面を有する基板110を形成することができる。
【0048】
図4は、本発明の一実施例による生体物質検出装置を示す図である。
【0049】
図4を参照すると、生体物質検出装置は、バイオチップ100、光源部200及び検出部300を含む。
【0050】
バイオチップ100は、図1を参照して説明したように、上面の所定領域が楔状に形成された基板110、金属層120、誘電層130及び捕捉分子144を含む。
【0051】
捕捉分子142は、基板110の第1及び第2傾斜面112、114上部に固定され、捕捉分子142には蛍光体148で標識された標的分子144が特異結合する。
【0052】
基板110の第1及び第2傾斜面112、114上に形成された金属層120では、特定角度に入射する励起光によって表面プラズモン共鳴現象が発生することができる。
【0053】
具体的に、表面プラズモン現象とは、特定波長の光が金属層120の表面に照射されると、金属層120の内部に存在する電子が偏極されて(polarized)発生する量子化された(quantized)電子の振動(oscillation)である。
【0054】
また、特定波長の光が特定角度に金属層120の表面に入射する時、金属層120によって光が吸収(absorbing)及び散乱(scattering)されて金属層120表面のプラズモンが励起(excitation)される表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)現象が発生することができる。より詳しく説明すると、特定入射角(表面プラズモン共鳴角)θRに光が入射すると、金属層120と誘電層130の境界面で発生した表面プラズモンの波動と位相が一致するようになり、金属層120に入射する励起光のエネルギーがすべて金属層120に吸収されて、反射波が無くなる。すなわち、金属層120の表面では特定波長の光が吸収され、金属層120の表面を囲む物質によって特定波長の光が散乱される。これについて図5を参照して説明する。
【0055】
このように、金属層120に入射する励起光の反射率が急激に減少する角度を表面プラズモン共鳴角(SPR angle)とし、表面プラズモン共鳴角は金属層120の周辺物質(ambient materials)によって異なる。これについて図5を参照して説明する。
【0056】
これによって、金属層120で表面プラズモン共鳴現象を誘導するためには、励起光が特定角度に金属層120に入射する必要がある。ところが、表面プラズモン共鳴角が比較的に大きい場合、励起光を金属層120に表面プラズモン共鳴角に照射することが難しい場合がある。反面、本発明の一実施例では、金属層120を基板110の第1及び第2傾斜面112、114上に形成することで、平面基板に対して小さい入射角(90−θ)の励起光でも、表面プラズモン共鳴角θRに金属層120に入射することができる。
【0057】
また、表面プラズモン共鳴角θR¥に励起光が金属層120に入射する時、金属層120の表面で励起される表面プラズモンはエネルギーを有して散乱されるので、金属層120から放出される共鳴エネルギーが金属層120上部の捕捉分子142と標的分子144の特異結合によって固定される蛍光体148に伝達されることができる。
【0058】
光源部200は、バイオチップ100、すなわち、楔状の基板110上に形成された金属層120に励起光を照射する。このとき、光源部200は、平坦な基板110の下面に対して特定入射角(90‐θ)に励起光LEXを照射する。そして、励起光LEXは第1または第2傾斜面112、114表面で表面プラズモン共鳴角θRに金属層120に入射することができる。
【0059】
すなわち、光源部200から照射される励起光LEXをプラズモン共鳴現象を起こす特定角度に照射しなくても、金属層120の第1または第2傾斜面112、114によって、励起光LEXが表面プラズモン共鳴角θRに金属層120に入射することができる。これによって、金属層120の表面で表面プラズモンが励起されることができる。
【0060】
このような光源部200としては、多色光(polychromatic light)を出力するキセノンランプ(Xenon lamp)を用いることができる。キセノンランプを光源として用いる場合、光源部200は、光フィルタを含んで、単色光(monochromatic light)を励起光として提供できる。また、光源部200として、白色光源、レーザダイオード(laser diode)または発光ダイオード(LED)を使用できる。
【0061】
検出部300は、基板110の第1及び第2傾斜面112、114上部に固定された蛍光体148から放出される蛍光信号(LEM;すなわち、放出光)を検出する。このとき、蛍光体148から放出される蛍光信号(LEM;すなわち、放出光)は金属層120表面で励起された表面プラズモンの共鳴エネルギーを受信して放出されることができる。
【0062】
図5は、入射光の入射角による反射率変化を示すグラフである。
【0063】
図5のグラフは、金属層及び誘電層を含む微細流体チャネルに周辺物質を供給し、金属層に入射する入射光の入射角による反射率変化を検出して示している。微細流体チャネルに供給される周辺物質として空気層、水及びエタノールが用いられた。このうち空気層は、微細流体チャネルが乾燥していることを意味する。ここで、入射光としては、線形偏光(linear polarization)された660nm波長の単色光を用いた。
【0064】
図5参照すると、金属層の周辺物質(ambient materials)別に、励起光の入射角による金属層での反射率変化を確認できる。すなわち、金属層表面に存在する誘電層別に特定入射角で反射率が急激に減少することが確認できる。言い換えれば、図5のグラフは、金属層に入射する光が特定入射角で共鳴吸収されることを意味する。そして、金属層で反射率が急激に減少する時の角度を表面プラズモン共鳴角(SPR angle)とする。また、図5を参照すると、表面プラズモン共鳴角は金属層の表面に接触する物質によって異なることが分かる。
【0065】
図6は、本発明の他の実施例による生体物質検出装置を示す図である。
【0066】
図6を参照すると、本発明の他の実施例による生体物質検出装置は、特定角度に入射する励起光LEXによって基板110の第1及び第2傾斜面112、114表面から放出される蛍光信号LEM1、LEM2を検出できるようにする。
【0067】
詳しく説明すると、本発明の他の実施例において光源部は、光源210、ビームスプリッター220、第1及び第2反射ミラー232、234を含む。
【0068】
すなわち、光源210は、所定角度に特定波長の励起光LEXを照射する。所定入射角度に照射される励起光LEXは、ビームスプリッター220によって透過及び反射して、第1及び第2励起光LEX1、LEX2に分離されることができる。そして、第1励起光LEX1は、第1反射ミラー232に提供され、第1反射ミラー232に反射して基板110の第1傾斜面112に入射することができる。また、第2励起光LEX2は、第2反射ミラー234に提供され、第2反射ミラー234に反射して基板110の第2傾斜面114に入射することができる。すなわち、所定角度に入射した励起光LEXが第1及び第2励起光LEX1、LEX2に分離されて、第1及び第2傾斜面112、114にそれぞれ表面プラズモン共鳴角度に提供されることができる。
【0069】
これによって、第1及び第2傾斜面112、114にそれぞれ表面プラズモン共鳴角度に励起光が入射することができる。従って、第1傾斜面112上に位置する金属層120で、第1励起光LEX1によって表面プラズモン共鳴現象が発生することができ、これによって第1傾斜面112上に標的分子144と捕捉分子142の特異結合によって固定された蛍光体148に表面プラズモン共鳴エネルギーが伝達されることができる。そして、第2傾斜面114上に位置する金属層120でも、第2励起光LEX2によって表面プラズモン共鳴現象が発生することができ、これによって第2傾斜面114上に固定された蛍光体148に表面プラズモン共鳴エネルギーが伝達されることができる。従って、検出部300では、第1及び第2傾斜面112、114上の蛍光体148から放出される蛍光信号LEM1、LEM2を検出することができる。
【0070】
また、本発明の実施例において、基板110に入射する励起光と、蛍光体148から放出される放出光が基板110によって空間的に互いに分離されるので、検出部300では放出光のみを通過させる光フィルタを用いることなく、蛍光体148から放出される放出光のみを効率的に感知することができる。従って、標的分子144を検出するための蛍光信号の信号対雑音比が向上することができる。
【0071】
一方、本発明の他の実施例において、光源210は、第1波長の励起光と第2波長の励起光に対して複数の励起光を時間間隔を置いて照射することができる。これによって、基板110の第1傾斜面112と基板110の第2傾斜面114に第1波長の励起光が入射する時点と第2波長の励起光が入射する時点をそれぞれ異なるようにすることができる。これによって、第1傾斜面112及び/または第2傾斜面114で第1波長の励起光による蛍光と第2波長の励起光による蛍光をそれぞれ異なる時点で傾向信号を得ることができる。従って、検出部300では第1傾斜面112から放出される蛍光信号と、第2傾斜面114から放出される蛍光信号を時間的に分離して検出することができる。
【0072】
そして、様々な種類の標的分子144を検出するために、光源210は所定入射角度に複数波長の励起光LEXを照射することができる。すなわち、ビームスプリッター220としてダイクロイックミラー(dichroic mirror)を使用する場合、所定入射角度に照射される励起光LEXが特徴波長に対して透過し特徴波長に対して反射して、第1及び第2励起光LEX1、LEX2に分離されることができる。従って、検出部300では、第1傾斜面112から放出される蛍光信号と、第2傾斜面114から放出される蛍光信号は互いに異なる発光中心波長を有し、空間的に分離して検出することができる。上記のような方法で単一チャネルで多種の標的分子144を波長分割方法あるいは時間分割方法で検出可能である。
【0073】
以上、添付図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施できるということを理解できるであろう。従って、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであって限定的ではないものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0074】
100 バイオチップ
110 基板
120 金属層
130 誘電層
142 捕捉分子
144 標的分子
146 感知分子
148 蛍光体
200 光源部
300 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2傾斜面によって形成された複数の尖鋭部を有する表面を含む基板と、
前記第1及び第2傾斜面のうち少なくとも何れか一つの傾斜面上に形成された金属層と、
前記金属層上に形成され、蛍光体で標識された標的分子と特異結合する捕捉分子が表面に固定された誘電層と、含むことを特徴とするバイオチップ。
【請求項2】
前記基板は、上面から所定深さにリセスされた微細流体チャネルをさらに含み、
前記尖鋭部を有する前記表面が前記微細流体チャネルに形成されたことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項3】
前記基板は、シリコン基板、ガラス基板またはプラスチック基板であることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項4】
前記金属層は、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)又はチタン(Ti)で形成されたことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項5】
前記誘電層の厚さは、前記金属層に照射される励起光によって前記金属層で誘導される表面プラズモン共鳴エネルギーの有効伝達距離であるかそれより小さいことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項6】
前記誘電層は、SiO2、Si34、TiO2またはAl23で形成されることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項7】
前記誘電層は、ポリリジン(poly lysine)を含むポリマーまたは自己組織化単分子膜(SAM)を含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項8】
前記捕捉分子は、前記誘電層の表面に誘導されたカルボキシル基(‐COOH)、チオール基(‐SH)、水酸基(‐OH)、シラン基、アミン基(‐NH2)またはエポキシ基によって固定化されたことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項9】
前記捕捉分子は、核酸、細胞、ウィルス、タンパク質、有機分子または無機分子からなるグループから選択された少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項10】
前記核酸は、DNA、RNA、PNA、LNA及びそれらの混合体からなるグループから選択された少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項9に記載のバイオチップ。
【請求項11】
前記タンパク質は、酵素、基質、抗原、抗体、リガンド、アプタマー及び収容体からなるグループから選択された少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項9に記載のバイオチップ。
【請求項12】
第1及び第2傾斜面によって形成された複数の尖鋭部を有する表面を含む基板と、
前記第1及び第2傾斜面のうち少なくとも何れか一つの傾斜面上に形成された金属層と、
前記金属層上に形成され、蛍光体で標識された標的分子と特異結合する捕捉分子が表面に固定された誘電層と、
前記基板の前記第1または第2傾斜面に対して所定角度に励起光を照射する光源部と、
前記基板の第1及び第2傾斜面のうち少なくとも何れか一つの傾斜面に、前記捕捉分子と前記標的分子の特異結合によって固定された蛍光体から放出される放出光を検出する検出部と、を含むことを特徴とする生体物質検出装置。
【請求項13】
前記基板は、上面から所定深さにリセスされた微細流体チャネルをさらに含み、
前記尖鋭部を有する前記表面が前記微細流体チャネルに形成されたことを特徴とする請求項12に記載の生体物質検出装置。
【請求項14】
前記誘電層の厚さは、前記励起光によって前記金属層で誘導された表面プラズモン共鳴エネルギーの有効伝達距離であるかそれより小さいことを特徴とする請求項12に記載の生体物質検出装置。
【請求項15】
前記光源部と前記検出は前記基板を間において設けられたことを特徴とする請求項12に記載の生体物質検出装置。
【請求項16】
前記光源部は、前記第1または第2傾斜面に対して所定角度に励起光を照射する光源と、
前記励起光を透過及び反射させて、第1及び第2方向に分割するビームスプリッターと、
前記第1方向に照射される励起光を前記第1傾斜面に提供する第1反射ミラーと、
前記第2方向に照射される励起光を前記第2傾斜面に提供する第2反射ミラーと、を含むことを特徴とする請求項12に記載の生体物質検出装置。
【請求項17】
前記検出部は、前記第1傾斜面上の前記蛍光体から放出される放出光と、第2傾斜面上の前記蛍光体から放出される放出光をそれぞれ検出することを特徴とする請求項16に記載の生体物質検出装置。
【請求項18】
前記光源部は、第1波長の励起光と第2波長の励起光を同時に照射し、前記検出部は、前記第1傾斜面から放出される放出光と前記第2傾斜面から放出される放出光を空間的に分離して検出することを特徴とする請求項12に記載の生体物質検出装置。
【請求項19】
前記光源部は、多種の励起光を異なる時間にそれぞれ照射し、前記検出部は、前記第1傾斜面から放出される放出光と前記第2傾斜面から放出される放出光を時間によって分割して検出することを特徴とする請求項12に記載の生体物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−145408(P2010−145408A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290488(P2009−290488)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】