説明

バイオトイレ

【課題】 微生物の働きを活発にさせ、水分を蒸発させる加熱手段としての電気ヒーター用商用電源が不要であると共に、小型で容易に移動設置可能なバイオトイレを得る。
【解決手段】 便器4と、この便器の下部に設けられ発酵床および糞尿8が収容される発酵処理槽5と、この発酵処理槽5を包囲し、内部に貯められた潜熱蓄熱材12を温水パイプ3との熱交換で加熱することで上記発酵処理槽5内部を加熱する貯液槽6と、この貯液槽6内の潜熱蓄熱材12を温める温水7を貯める貯液タンク20と、この貯液タンク20に貯める温水7を加熱する太陽熱温水器2と、この太陽熱温水器2から上記貯液タンク20内および上記貯液槽6内の温水パイプ3へ温水7を送り込むポンプ30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱と微生物によって糞尿を分解させるバイオトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物と熱によって糞尿を分解させるトイレは、汲み取りの必要がなく、下水に流す必要もない為、環境に優しいトイレとして以前から開発され、知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】 特許第3160859号
【0003】
しかし、ほとんどのバイオトイレは、微生物の活性化及び水分調整の為に加熱手段を必要とし、主に電気ヒータが使用されているが、非常に多くの電力を消費している。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】 特許第3027823号
【0004】
また、商用電源を不要とするバイオトイレも開発されているが、太陽光発電や風力発電または化石燃料発電などを使用し、加熱に必要な電力を供給する場合には大規模な設備となっている。(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献3】 特開2002−161572号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のバイオトイレでは、電気ヒータ用の商用電源を使用するので、電力の供給されていない場所には電気工事が必要になり、電力供給の困難な離島や山間部、また、災害時に容易に移動設置することができないという問題点があった。
【0006】
また、加熱手段に太陽光発電や風力発電または燃料電池を使用する場合には、大規模な設備が必要になり、設備コストとランニングコストが高くなるという問題点があった。
【0007】
また、加熱手段として太陽熱温水器を扱う場合には、太陽熱温水器で温められた温水を用いるが、昼間に蓄えた温水の熱を翌朝まで保つには、補助熱源の電気ヒータ等を用いるか、太陽熱温水器の集熱面積と貯液タンクの容量を大きくしなければならないという問題点もあった。
【0008】
この発明は上述のような問題点を解決する為になされたもので、微生物の働きを活発にさせ、水分を蒸発させる加熱手段としての電気ヒータ用商用電源が不要であるとともに、小型で容易に移動設置可能で、設備やランニングコストの安いバイオトイレを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバイオトイレにおいては、便器と、この便器の下部に設けられ発酵床および糞尿が収容される発酵処理槽と、この発酵処理槽を包囲し、内部に貯められた加熱部材により上記発酵処理槽内部を加熱する貯液槽と、この貯液槽内の上記加熱部材を温める温水を貯める貯液タンクと、この貯液タンクに貯める温水を加熱する太陽熱温水器と、この太陽熱温水器から上記貯液タンク内および上記貯液槽内の温水パイプへ温水を送り込むポンプとを備えたものである。
【0010】
また、便器と、この便器の下部に設けられ発酵床および糞尿が収容される発酵処理槽と、この発酵処理槽を包囲し、内部に貯められた加熱部材により上記発酵処理槽内部を加熱する貯液槽と、この貯液槽内の上記加熱部材を温める温水を貯める貯液タンクと、この貯液タンクに貯める温水を加熱する太陽熱温水器と、この太陽熱温水器から上記貯液タンク内および上記貯液槽内の温水パイプへ温水を送り込むポンプと、このポンプを制御するバルブ類と、上記ポンプおよびバルブ類に電力を供給する太陽光発電ユニットとを備えたものである。
【0011】
また、上記加熱部材は、発酵処理槽の設定温度値付近で固体と液体の相変化を示す潜熱蓄熱材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバイオトイレは、発酵処理槽の加熱手段として、太陽熱温水器で温められた温水を利用するようにしたので、従来のバイオトイレのような電気ヒータが不要となり、消費電力が大幅に少なくなる。
【0013】
また、太陽光発電ユニットによりポンプや制御バルブ類へ電力を供給するようにしたので、電力の供給されていない場所や、災害時に容易に設置することができると共に、移動も容易である。
【0014】
また、加熱部材として、潜熱蓄熱材を用いるようにしたので、発酵処理槽内の温度変化が緩やかであり、容易に温度を一定に保つことができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1を示すバイオトイレ構成図であり、(A)は正面図、(B)は右側面図である、図において、1はトイレハウスであり、後述する便器4、発酵処理槽5、貯液槽6、貯液タンク20、等が設置されている。2は太陽熱温水器でありトイレハウス1の屋根に一体に設置されている。
【0016】
図2は本発明の実施の形態1を示すバイオトイレの構成図である。図3は本発明のバイオトイレの発酵処理槽および貯液槽の拡大断面図である。図において、4はトイレハウス1の内部に設置された便器、5は便器4の下部に設置された発酵処理槽である。6は貯液槽であり、発酵処理槽5を包囲するように設置されている。この貯液槽6内部には、貯液タンク20から温水7を導入する為の温水パイプ3を備え、温水パイプ3の周囲には加熱部材としての潜熱蓄熱材12が貯められている。この潜熱蓄熱材12は発酵処理槽5の設定温度値付近で固体と液体の相変化を示す性質を持っており、例えば、塩化カルシウム水和物や硫酸ナトリウム水和物、またパラフィンなどで作られたものである。この貯液槽6内部に太陽熱温水器2で温められた温水7を液入口3aから導入し、温水パイプ3を通って液出口3bから排出し循環させることによって潜熱蓄熱材12を加熱し発酵処理槽5の内部の発酵床および糞尿8を間接的に加熱する。
【0017】
発酵処理槽5は、図3に示すように、その内部に発酵床および糞尿8を収容し、内部を均等にかき混ぜる撹拌羽根9と、撹拌軸10を有している。11はエアー供給口であり、発酵処理槽5の下部に設けられた貫通孔5aから発酵処理槽5の内部へ空気を送り込み、好気性菌を有効に働かせる。15は第一の温度センサであり、貯液槽6の内部の液温を検出する。
【0018】
20は貯液タンクであり、その内部に太陽熱温水器2で温められた温水7を蓄積している。21は第二の温度センサであり、貯液タンク20の内部の液温を検出する。30は太陽熱温水器2から貯液タンク20内および貯液槽6内の温水パイプ3へ温水7を送り込むポンプである。31は明暗センサまたはタイムスイッチであり、太陽熱温水器タンク2aに装着されており、ポンプ30の運転を制御する。
【0019】
40は貯液タンク20と貯液槽6を結ぶ配管、41は貯液槽6と太陽熱温水器2とを結ぶ配管、42は太陽熱温水器2と貯液タンク20を結ぶ配管である。43は貯液タンク20と配管41を結ぶ配管、44は配管41と配管42を結ぶ配管である。50、51、52はエアー抜き弁である。60、61、62、63、は電磁弁である。65はドレンであり、貯液槽6の下部から外部へ液を排出できる。66は手動弁でありメンテナンス時に使用する。尚、ポンプ30、31、電磁弁60、61、62、63等の消費電力の小さい機器への電力は、図示しない商用電源から供給する。
【0020】
上述のように構成されたバイオトイレの作用および効果を図2に基づき説明する。昼間(明るい場合)の通常時の運転は、太陽熱温水器タンク2aに設けられた明暗センサまたはタイムスイッチ31により太陽熱温水器2が加熱状態にあると判断し、第一のポンプ30を運転することにより、太陽熱温水器2で加熱された温水7は貯液タンク20と太陽熱温水器2との間を循環する。この時、電磁弁60、61が閉、62、63が開となっており、貯液槽6へは温水7は供給されない。
【0021】
昼間(明るい場合)でも、貯液槽6にある第一の温度センサ15が設定温度より低い温度を検出すると、電磁弁60、61が開、62、63が閉となり、貯液タンク20から温められた温水7がオーバーフローとなって貯液槽6へ送られ、貯液槽6内部に貯められた潜熱蓄熱材12を加熱することによって、発酵処理槽5内部を加熱する。
【0022】
また、貯液槽6の第一の温度センサ15が設定温度より高い温度を検出すると、昼間の通常時の電磁弁の動作に切り替わるという動作を繰り返し、常に発酵処理槽5内部の温度を一定に保つように構成されている。
【0023】
夜間(暗い場合)においては、太陽熱温水器2は温める能力が出ない為、昼間と同じ循環方式は行なわれない。すなわち、明暗センサまたはタイムスイッチ31の働きにより、夜間の通常時の運転は、ポンプ30は停止状態にあり、この時、電磁弁60、61、62、63も全て閉じている状態となっている。
【0024】
しかし、貯液槽6にある第一の温度センサ15が、設定温度値より低い温度を検出すると、電磁弁60、61が開、電磁弁62、63が閉となり、ポンプ30が運転し、貯液タンク20から温められた温水7がオーバーフローとなって貯液槽6へ送られ、貯液槽6内部に貯められた潜熱蓄熱材12を加熱することによって、発酵処理槽5内を加熱する。
【0025】
また、第一の温度センサ15が設定温度より低い温度を検出していても、貯液タンク20の第二の温度センサ21が設定温度15より低い温度を検出している場合には、繰り返し循環しても無駄な為、この場合は第一のポンプ30の運転を停止する。
【0026】
上述のように、実施の形態1のようなバイオトイレの構成においては、発酵処理槽5の加熱手段として太陽熱温水器2で温められた温水7を利用するようにしたので、必要な電力は電磁弁60、61、62、63とポンプ30および制御機器(図示せず)の消費電力のみになるため、従来のバイオトイレのような電気ヒータを使用する場合に比較して大幅にランニングコストを削減することができる。
【0027】
また、従来のバイオトイレのような電気ヒータでは局所的な加熱になり発酵床および糞尿8に温度ムラが大きかったのが、本発明のバイオトイレでは潜熱蓄熱材12を使用している為、発酵処理槽5内の温度変化が緩やかであり、容易に温度を一定に保つことができる。
【0028】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2を示すバイオトイレの構成図である。図において、実施の形態1と同様なものは、同一符号を付けてその説明を省略する。45は貯液槽6と貯液タンク20を結ぶ配管、46は貯液タンク20と太陽熱温水器2を結ぶ配管である。70は第一の循環ポンプ、71は第二の循環ポンプであり、太陽熱温水器2から貯液タンク20内および貯液槽6内の温水パイプ3へ温水7を送り込む。
【0029】
上述のように構成されたバイオトイレの作用および効果を図4に基づき説明する。太陽熱温水器2で温められた温水7は、昼間(明るい場合)の通常時の運転は、太陽熱温水器タンク2aに設けられた明暗センサまたはタイムスイッチ31により、太陽熱温水器が加熱状態にあることを判断し、第一の循環ポンプ70を運転させることにより、温水7が貯液タンク20と太陽熱温水器2との間を循環する。この時、第二の循環ポンプ71は停止しており、発酵処理槽5側へ温水は供給されない。
【0030】
昼間(明るい場合)でも、貯液槽6にある第一の温度センサ15が設定温度より低い温度を検出すると、第二の循環ポンプ71を運転し、貯液タンク20から温水7がオーバーフローとなって貯液槽6へ送られ、貯液槽6内部に貯められた潜熱蓄熱材12を加熱することによって、発酵処理槽5の内部を加熱する。
【0031】
また、貯液槽6の第一の温度センサ15が設定温度より高い温度を検出すると、第二の循環ポンプ71は停止するという動作を繰り返し、常に発酵処理槽5の内部の温度を一定に保つように構成されている。
【0032】
夜間(暗い場合)において、太陽熱温水器2は温める能力が出ない為、昼間と同じ循環方式は行われない。すなわち、明暗センサまたはタイムスイッチ31の働きにより、夜間の通常時に第一の循環ポンプ70は停止している。
【0033】
貯液槽6にある第一の温度センサ15が、設定温度より低い温度を検出すると、第二の循環ポンプ71を運転し、貯液タンク20から温水7がオーバーフローとなって貯液槽6へ送られ、貯液槽6内部に貯められた潜熱蓄熱材12を加熱することによって、発酵処理槽5の内部を加熱する。
【0034】
また、第一の温度センサ15が設定温度より低い温度を検出していても、貯液タンク20の第一の温度センサ21が設定温度より低い温度を検出している場合には、繰り返し循環しても無駄な為、この場合は第二の循環ポンプ71の運転を停止する。
【0035】
上述のように、実施の形態2のようなバイオトイレの構成においては、発酵処理槽5の加熱手段として太陽熱温水器2で温められた温水7を利用するようにしたので、必要な電力は循環ポンプ70、71および制御機器(図示せず)の消費電力のみになる為、従来装置のバイオトイレのような電気ヒータを使用する場合に比較して大幅にランニングコストを削減することができる。
【0036】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3を示すバイオトイレ構成図であり、(A)は正面図、(B)は右側面図である、図において、1はトイレハウスであり、便器4、発酵処理槽5、貯液槽6、貯液タンク20、等が設置されている。
2は太陽熱温水器、900は使用する機器に電力を供給する太陽光発電モジュールであり、トイレハウス1の屋根に一体に設置されている。
【0037】
図6は、本発明のバイオトイレに電力を供給する太陽光発電ユニットのブロック図である。図において、200は換気扇であり、トイレの臭いが内部に充満しないように外部に排出する為のもので、24時間運転する。300は照明であり、省電力のLEDを使用し人感センサ(図示せず)の働きで自動的にON/OFFするものである。400はブロワーであり、発酵床および糞尿8にエアーを送り、好気性発酵菌の働きを活発にするために使用するもので、人感センサとタイマー(図示せず)の連動で自動運転とする。
【0038】
500は攪拌モータであり、発酵床および糞尿8を均等にかき混ぜ、発酵し易い状態にするために使用し、人感センサとタイマー(図示せず)の連動で自動運転とする。30、70、71はポンプであり、加熱媒体である温水7を循環させる為に使用する。600は電磁弁や温度センサ等の制御部品であり、温度センサ15、21や明暗センサまたはタイムスイッチ31等で構成されている。800はバッテリーであり、太陽光発電ユニットで発電された電力を蓄える装置である。
【0039】
上述のように図5に示すように構成されたバイオトイレの作用および効果を説明する。バイオトイレの運転の動作は、実施の形態1および2と同様であるので説明は省略する。実施の形態1および2では商用電源を使用する場合について説明したが、商用電源を使用しない場合や使用できない場合については、図6のブロック図で示すような太陽光発電ユニットを利用することで補い、商用電源を不要とし、容易に移動設置ができる。すなわち、太陽光発電ユニットの動作は、太陽光発電モジュール900により発電された電力をバッテリー800へ蓄え、換気扇200、照明300、ブロワー400、撹拌モータ600に電力を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】 本発明の実施の形態1を示すバイオトイレであり、(A)は正面図、(B)は右側面図である。
【図2】 本発明の実施の形態1を示すバイオトイレの構成図である。
【図3】 本発明のバイオトイレの発酵処理槽および貯液槽を示す拡大断面図である。
【図4】 本発明の実施の形態2を示すバイオトイレの構成図である。
【図5】 本発明の実施の形態3を示すバイオトイレであり、(A)は正面図、(B)は右側面図である。
【図6】 本発明の実施の形態3のバイオトイレに電力を供給する太陽光発電ユニットのブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
2 太陽熱温水器、3 温水パイプ、4 便器、5 発酵処理槽、6 貯液槽、7 温水、8 発酵床および糞尿、12 潜熱蓄熱材(加熱部材)、20 貯液タンク、30,70,71 ポンプ、60,61,62,63 電磁弁、900 太陽光発電モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と、この便器の下部に設けられ発酵床および糞尿が収容される発酵処理槽と、この発酵処理槽を包囲し、内部に貯められた加熱部材により上記発酵処理槽内部を加熱する貯液槽と、この貯液槽内の上記加熱部材を温める温水を貯める貯液タンクと、この貯液タンクに貯める温水を加熱する太陽熱温水器と、この太陽熱温水器から上記貯液タンク内および上記貯液槽内の温水パイプへ温水を送り込むポンプとを備えたことを特徴とするバイオトイレ。
【請求項2】
便器と、この便器の下部に設けられ発酵床および糞尿が収容される発酵処理槽と、この発酵処理槽を包囲し、内部に貯められた加熱部材により上記発酵処理槽内部を加熱する貯液槽と、この貯液槽内の上記加熱部材を温める温水を貯める貯液タンクと、この貯液タンクに貯める温水を加熱する太陽熱温水器と、この太陽熱温水器から上記貯液タンク内および上記貯液槽内の温水パイプへ温水を送り込むポンプと、このポンプを制御するバルブ類と、上記ポンプおよびバルブ類に電力を供給する太陽光発電ユニットとを備えたことを特徴とするバイオトイレ。
【請求項3】
上記加熱部材は、発酵処理槽の設定温度値付近で固体と液体の相変化を示す潜熱蓄熱材であることを特徴とした請求項1又は2記載のバイオトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−263418(P2006−263418A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122922(P2005−122922)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(593190674)株式会社寺田鉄工所 (4)
【Fターム(参考)】