説明

バイオリアクタ

大きな比表面積を有する多孔担体からなる充填体が収容された濾過器を含むバイオリアクタを開示する。濾過器には、好ましくは光合成活性を有する微生物と発光微生物とを含む微生物混合物が導入されており、有機物の光動的分解が発生する。本発明では、微生物混合物は光触媒活性を有するナノ粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記したバイオリアクタ(生物反応装置)、そのようなバイオリアクタに適した微生物混合物、およびそのようなバイオリアクタを用いた小型廃水処理装置の改造用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
居住する地区(township)または共同体が、集合下水施設への戸別接続配管を不動産所有者のために建設する状況にない場合、廃水処理義務が不動産所有者へ課されるならば、規則として不動産所有者は小型廃水処理装置を設置しなければならない。こういった小型廃水処理装置は所有地内に設置され、通常は家庭廃水を処理するために使用される。小型廃水処理装置で処理された廃水は、地面にしみ込ませるか(地面が処理廃水を吸収することができる場合)、最も近い開放水域に放出する。
【0003】
廃水を機械的に浄化する場合には、溶解しない物質を底部に沈殿させたり、表面に浮き上がらせることによって廃水から除去する多室沈殿タンクを使用することが多い。多室沈殿タンクは、例えば二室または三室タンクとして構成することができ、処理室は共通の容器内に互いに連結して形成され、水は沈殿または浮上した溶解しない物質が除去されるように処理室を流れる。
【0004】
このような多室沈殿タンクは特に古い家や土地に設置されるが、通常その浄化性能は法律の規定を満たしていない場合が多い。機械的・生物学的分離段階を含む新たな小型廃水処理装置を設置するためには高額な投資が必要であるため、既存の多室処理装置に生物学的処理段階を設けて改造することが好ましい場合が多い。
【0005】
廃水、廃気および固体(たとえば過去にあふれて蓄積し漏出した暖房油等の残留油を含む多孔体のような汚染構造体)に含まれる有機汚染物質の確実な分解は、現代の処理装置に対する必須要件である。
【0006】
ドイツ特許出願公開第100 62 812 A1号公報とドイツ特許出願公開第101 49 447 A1号公報は、一定割合の光合成微生物と、一定割合の発光微生物とを含む微生物混合物によって流体や固体に含まれる望ましくない有機成分を分解することを提案している。このような混合培養物は、共同廃水と工場廃水の浄化や残留油で汚染された構造体の衛生処理で大きな成功を収めている。
【0007】
その後のドイツ特許出願公開第102 53 334号公報では、分解時に光増感剤を有機汚染物質の孔内に導入することによって微生物混合培養物のさらなる改良を達成した。つまりそれは、光によって光増感剤を刺激することで、一重項酸素やその他のラジカルを生成させ、有機成分の分解を促進することを達成したものである。
【0008】
しかし、これらの微生物混合培養物は、特定の用途では有機成分の確実な分解に必要とされる有効性を発揮しないことが分かっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、装置技術の点において単純な構造で流体内の有機汚染物質を確実に分解することができるバイオリアクタを提供する目的に基づく。また、本発明はこのようなバイオリアクタで使用される微生物混合培養物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、バイオリアクタに関しては請求項1の特徴の組み合わせによって達成され、微生物混合培養物に関しては独立請求項19の特徴によって達成され、そして、浄化装置のための改造用キットに関しては請求項24の特徴によって達成される。
【0011】
本発明は、有機物質を含む廃水が通過することのできる開口部を有する容器を含むバイオリアクタを提案する。容器の内部には比較的大きな比表面積を有する充填体(以下「担体」ともいう)が設けられており、廃水の生物成分の消化と転化のための大きな物質交換表面が得られる。本発明では、有機成分の分解のための微生物は容器内にもさらに設けられている。これらの微生物は多孔担体の多孔体内でバイオフィルムとして付着し、効果的な物質交換表面によって、非常に効率的な生物学的転化が可能となる。
【0012】
担体は、担体が容器と相対的に回転できるように取り付けられるか、あるいは容器が担体と相対的に回転できるように取り付けられるように、有利には螺旋状に容器内に挿入されている。適切な流量管理および/または容器のコーティング(後述する)と担体の螺旋状構成によって、担体または容器全体を回転させることができ、従来の構成と比較して混合が改良され、生物学的転化が改善される。
【0013】
担体は、支持層に形成された多孔体からなる材料によって形成され、あるいは大きな比表面積を有する材料によって形成されてもよく、前記材料は機械的強度が高くなくてもよく、担体の機械的強度を決定する安定で穴の開いた二重壁の間に導入されていてもよい。原理的には、大きい比表面積を有するセラミック材料のような多孔質材料の担体を用いることもできる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、多孔担体は例えばポリウレタンフォームなどの発泡材料からなり、発泡材料は活性炭や木炭などの触媒活性および/または大きな吸着面積を有する材料で被覆されている。
【0015】
本発明の実施形態では、好ましくは螺旋状の担体の一方の主表面が活性炭などのバイオフィルムの形成を促す材料でコーティングされ、他方の主表面が微生物混合物を含む担体物質でコーティングされていることが好ましい。この構造では、一方の主表面ではバイオフィルムが形成され、他方の主表面では添加された微生物を有する層上でのバイオフィルムの形成は触媒活性によって妨げられる。
【0016】
生物学的転化に必要な微生物は、適切なプロセス管理によって担体の多孔体内に予め付着させるか、プロセス時に連続的に供給することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、光触媒層が容器の内周面と外周面に塗布されている。特に好ましくは、光触媒層が外周面にストライプ状に塗布されており、これらのストライプはバイオリアクタの長さ方向に延びていることができる。すなわち、円柱状のバイオリアクタの場合には、ストライプは縦軸と平行に延びている。
【0018】
容器の開口部は好ましくは打抜によって形成され、打抜バリがバイオリアクタの内部空間に延びている。これらの比較的鋭い打抜バリによって、バイオフィルムが運転時に形成されるコーティングに欠陥部が好ましく形成される。
【0019】
容器の壁および/または担体に酸化チタンまたはインジウムスズ酸化物などの光触媒層を少なくとも部分的に塗布することによって、バイオリアクタの効率を向上させることができる。
【0020】
容器は、端面が下方から開口した円柱形状または漏斗形状を有することができる。後者の場合には、底部に向かって細くなる容器の側壁に廃水のための開口部を設け、下端表面は閉じられる。すなわち、後者の場合には流れはほぼ半径方向に発生し、前者の場合には流れは底部から上部に向かって軸方向に発生する。
【0021】
バイオリアクタを浄化装置として使用する場合、多室タンクなどの処理室で浮揚するようにバイオリアクタに浮力を持たせる。濾過器が縦方向でスライドできるように案内されることが好ましく、それによって変化する液面に追従することができる。
【0022】
上述したように、担体材料に微生物を導入することができる。好ましい解決手段では、微生物をキトサンまたはバイオポリマーに付着させ、好ましくは活性炭でコーティングされたPUフォームである担体をこの混合物に含浸させる。
【0023】
本発明に係る微生物混合物は、発光微生物および光合成活性を有する微生物に加えて、表面に光触媒活性層が設けられた好ましくは圧電体コアを含むナノ複合材料を含む。
【0024】
好ましい実施形態では、ナノ複合材料は20〜100nmの長さと2〜10nmの直径を有する繊維状構造を有する。
【0025】
光触媒活性のコーティングには極部位を形成するための複数の開口部が設けられている。上記繊維状構造では、極が両端面に形成される。
【0026】
本発明に係るバイオリアクタは、複雑さを最小化させながら小型廃水処理装置を改造するために使用することができるが、処理装置の一処理段階として独立して使用することもできる。
【0027】
本発明のさらなる利点はさらなる従属請求項の主題である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態を概略図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は、三室沈殿タンク4によって構成された機械的処理段階を含む小型廃水処理装置1の断面図を示す。このような多室沈殿タンクは、特に農村地帯では現在でも多くの家屋で使用されている。三室沈殿タンクは隔壁8によって3つの副室に細分化された容器6からなり、図1は第1の処理室10と別の処理室12のみを示している。浄化される廃水は入口14を介して三室沈殿タンクに流入し、最初の処理室(図示せず)に入り、隔壁8内の流路16を介して次の副室12に流れ、副室12から最後の副室10に流入することができる。処理室10,12内で沈殿することができる物質は沈降によって沈殿し、浮揚物質は液面18に浮き上がる。出口20は、沈殿物と浮揚物質が処理室10,12内に残り、浄化された廃水が汚染物質を含むことなく放出されるように選択される。
【0030】
生物学的処理のために、生物学的処理段階を構成する改造用キットとしてバイオリアクタ2が処理室10内に設けられている。バイオリアクタの主要な構成要素は、図示する実施形態では浮揚体(すなわち、生物学的に処理される廃水内で浮揚する十分な浮力を有する)である容器(strainer basket(濾過器))22である。濾過器22を適切な位置に配置するために垂直ガイド24が処理室10内に配置されており、垂直ガイド24は、例えば隔壁8および/または三室沈殿タンク6の側壁によって支持することができる(図1の破線を参照)。濾過器22は、垂直ガイド24に沿って図1のX方向にスライドできるように配置されており、濾過器22は液面18に追従して処理室10内で浮揚体として上下移動することができる。
【0031】
濾過器22には触媒表面が設けられており、特定の微生物混合物がバイオフィルムを形成する。図示する実施形態では、微生物混合物は光合成微生物と発光微生物とからなる。光合成微生物と発光細菌との相互作用の結果、光合成微生物は放出された光によって光合成を行う。微生物は抽出物としての硫化水素および水を使用して光合成を行い、硫黄と酸素をそれぞれ放出する。また、微生物は窒素およびリン酸塩(phosphate)と結合し、有機・無機物質を分解することができる。微生物混合物の具体的な組成に関しては、説明を簡略化するため、本願出願人によるドイツ特許出願公開第100 62 812 A1号公報とドイツ特許出願公開第101 49 447 A1号公報を参照する。これらの出願を参照して、実施形態の説明に続いて、光動的(photodynamic)分解の主要な工程を説明する。
【0032】
微生物混合物と濾過器22の触媒表面の相互作用によって、有機物質の光動的分解が発生する。物質の光動的分解については、例えば本願出願人によるドイツ特許出願第102 53 334号に記載されている。
【0033】
以下、濾過器22の構造を図2と図3を参照して説明する。
【0034】
これらの図に示す実施形態では、濾過器22は側面図(図1)においてほぼ漏斗状の形状を有し、濾過器22の直径は液面18から下に向かって円錐状に減少している。図示する実施形態では、濾過器22の側壁はステンレスからなり、少なくとも部分的に光触媒コーティングを設けることができる。図2において一点鎖線と二点鎖線で示すように、コーティングは濾過器22の内周壁および/または外周壁上に形成することができる。図示する実施形態では、濾過器22はV4Aステンレスからなり、二酸化チタンコーティングが設けられている。二酸化チタンの代わりに、インジウムスズ酸化物等を使用することもできる。濾過器22の外周壁には複数の開口部26が設けられ、生物学的に安定化される廃水は処理室10から濾過器22に入ることができる。濾過器の下端面28は閉じられており、濾過器22への流れは実質的に半径方向に発生する。また、上端面も閉じられていてもよい。なお、上面が液面の上方に位置している場合には上面を閉じる必要はない。濾過器22のキャビティ内には、上面図(図3)において螺旋状構造を有する交換可能な充填体30が収容されている。図示する実施形態では、充填体30は、例えば螺旋状のステンレス板であってもよい担体材料からなる。この螺旋形状は濾過器22の漏斗状構造に適合するもので、螺旋の直径は底部から上部に向かって軸方向に増加している。従って、螺旋は漏斗内で螺旋状のラインを構成し、その直径は上方に向かって竜巻のように増加している。
【0035】
ステンレスからなるスクリュー型螺旋状担体には、活性炭と任意のナノ複合材料がコーティングまたは混合されたポリウレタン(PU)フォームなどの発泡材料が両面に塗布されている。PUフォームによって、壁面が活性炭でコーティングされた多孔体が形成され、大きな物質交換表面が得られる。
【0036】
活性炭とナノ複合粒子でコーティングされた多孔体は、上述したメカニズムによるバイオフィルムの形成のための比較的大きな成長表面を形成している。
【0037】
本発明のさらなる展開では、螺旋状充填体30の一方の面には上述した活性炭コーティングが設けられ、他方の面は活性炭層または多孔性材料(例えば発泡材料)上に塗布された酸化チタンなどの光触媒活性表面でさらにコーティングされている。光触媒活性層によって上述した光動的プロセスが促進されるが、光触媒表面によってバイオフィルムの形成が阻害されるため、バイオフィルムは活性炭のみが設けられた表面に形成される。また、光触媒層と成長表面(活性炭)は部分的に(特定の壁領域のみに)並べて塗布することもできる。
【0038】
中心の担体といずれかの面のコーティングを有する構成の代わりに、それ自体は十分な強度を有していない多孔体(発泡体)を使用することもできる。充填体の強度を向上させるために、ステンレスまたはその他の適当な材料(例えば耐酸性プラスチック)で製造された担体の二重壁の間にコアを挿入する。
【0039】
上述した微生物は、分配ホースによって螺旋状充填体30の中心に導入することができる。また、充填体の製造時に微生物をナノ複合材料と共に多孔体に導入することもできる。非常に有望な方法として、微生物とナノ複合材料をキトサンに溶解し、ナノ複合材料を添加した混合物を例えば含浸によって充填体に塗布することが挙げられ、これによって微生物の連続的な供給を省略することができ、充填体30を一定の間隔で取り替えればよくなる。
【0040】
濾過器22は、軸受34によって垂直ガイド24に回転可能に固定されている。また、充填体30のみを回転可能に取り付けることもでき、濾過器22(より正確には濾過器22のジャケット)を充填体30がジャケットと相対的に回転できるように垂直ガイド24に固定的に取り付ける。
【0041】
上述した生物学的分解プロセス時の温度上昇およびガスの生成と、特に濾過器22内での交流電界の発生によって、濾過器22または充填体30が回転し、濾過器22内で処理対象の廃水が十分に混合されると共に濾過器22内の流れが改善され、スクリュー型波状構成を有する充填体30が廃水の流れを維持する。
【0042】
上述した交流電界は光動的プロセス時に発生し、濾過器22の光触媒活性を有するコーティング32およびナノ構造の導入によって維持される。ナノ構造の機能は図9を参照して後述する。生物学的分解プロセスによって導入されたエネルギーが充填体30または濾過器22を回転させるために十分ではない場合には、充填体30または濾過器22を回転させるトルクを印加するための駆動機構を接続することもできる。
【0043】
図4はバイオリアクタ2の濾過器22の別の実施形態を示し、濾過器22は、上述した実施形態とは異なり、漏斗形状ではなく円柱形状を有している。
【0044】
濾過器22のジャケット36には、光触媒活性を有するコーティング(二酸化チタン、インジウムスズ酸化物)が両面または片面に設けられている。円柱状ジャケット36内には、活性炭などの触媒表面でコーティングされた多孔構造を有する担体によって形成されたスクリュー型螺旋状充填体30が配置されている。上述した実施形態と同様に、酸化チタン、インジウムスズ酸化物などの光触媒活性を有するコーティングを充填体30の一部または特定の壁部分に塗布することができる。
【0045】
図示する実施形態では、担体はサンドイッチ構造として形成されている。担体材料は、2から3mmの厚みを有するVAグリッドボディからなり、上述した実施形態と同様に、活性炭コーティングを有するセミハード開放セルPUフォームが間に挿入された2つのグリッド表面によって螺旋構造が形成されている。螺旋の下方を向く面に配置されたグリッドバーには光触媒表面が設けられ、下方を向く主表面のメッシュサイズは約10ないし12mmである。螺旋の上方を向く主表面を形成するグリッドバーにはコーティングが設けられていない。上方を向く主表面のメッシュサイズは約25ないし30mmである。
【0046】
螺旋の下方を向く面では、PUフォームがキトサンのゲル状材料でコーティングされている。キトサンには、光触媒コーティングを有するPZT短繊維の圧電体セラミックからなるナノ複合材料が埋め込まれている。また、浄化装置に特有の機能と生物物理機能を有する微生物も埋め込まれている。PUフォームコアの上面には、好気性微生物のみがカチオン活性キトサン乳酸塩に設けられている。
【0047】
上述したように、バイオフィルムは螺旋の上面で非常に急速に形成され、サンドイッチ構造体の下面におけるバイオフィルムの形成はガス(水素および酸素)の激しい生成に伴う光触媒活性によって妨げられる。円柱状濾過器22の内面と外面には、上述した実施形態と同様に永久的な光触媒表面が設けられている。
【0048】
この実施形態では、螺旋状充填体30の外径は底部から上方に向かって増加している。上述した実施形態とは異なり、図4に示す濾過器22では、下端面は処理される廃水の入口断面として設けられており、周囲のジャケット36は水を透過させず、濾過器22への流れは上述した実施形態のように半径方向ではなく軸方向に発生する。
【0049】
予備試験によって、充填体30のPUフォームによって濾過器22は十分な浮力を有することが分かっている。浮力が不十分な場合には、図4に示すように、円柱状ジャケット36を環状に取り囲む浮揚体38を濾過器22の上部に設けることができる。
【0050】
活性炭でコーティングされたPUフォームの代わりに、十分な細孔容積を有するセラミック材料を使用することもできる。
【0051】
図4に示す実施形態の利点は、ジャケット36の製造が非常に簡素化され、軸方向に廃水が流れる場合に圧力損失が減少することである。
【0052】
次に、図5ないし図8を参照してバイオリアクタ2の別の実施形態を説明する。
【0053】
この実施形態では、バイオリアクタ2は円柱状に形成され、端面が開口した円柱状濾過器22を有し、濾過器22は多孔金属板、好ましくはステンレスで製造されている。開口部が設けられたジャケットの代わりに、両端面のみが開口した周囲閉鎖ジャケットを使用することもできる。管状の濾過器22は、例えば約110cmの長さと35cmの直径を有する。好ましくは管状のジャケットに形成される環状開口部26は、図示する実施形態では約8mmの直径と12mmの中心間距離を有する。
【0054】
濾過器22は、図示する実施形態では均一な外径を有する螺旋状に形成された充填体30を取り囲み、濾過器22の内径は充填体30の螺旋の外径Dよりもわずかに大きい。
【0055】
図示する実施形態では、充填体30は、濾過器22と同軸に配置された鋼管42によって実質的に形成された支持体40と、支持体40上に螺旋状に配置された丸棒44からなる。丸棒44は、PURフォームの螺旋状マット46を支えている。丸棒44は鋼管軸42と直角に配置され、濾過器22の多孔周壁にほぼ達している。図6に示すように、PURマット46は丸棒46の下に配置され、流れ(図6において下から上)の方向に支持されている。
【0056】
図示する実施形態では、濾過器26は直立位置にあり、充填体30が濾過器26内に回転可能に取り付けられている。
【0057】
上述した実施形態と同様に、PURマット46には触媒活性層、好ましくは活性炭コーティングが設けられている。丸棒46とは反対側を向くマット46の下側主表面には、乳酸ポリマー(PLA)などのバイオポリマーがコーティングされている。バイオポリマー内には、上述した微生物とナノ複合材料が設けられている。PLAに加えて、またはPLAの代わりに、糖蜜(sugar−molasses)またはキトサン−乳酸塩を担体材料として使用することもできる。また、本発明に係る微生物混合物は、アルミニウム、カルシウム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、カリウム、ニッケル、セレン、硫黄、亜鉛および/またはクロムなどの微量元素も含む。
【0058】
また、微生物混合物は、浄化装置に通常使用される典型的な微生物を含むことができる。
【0059】
上述したように、バイオフィルムは螺旋状充填体30の上面で非常に急速に形成され、マットの下面におけるバイオフィルムの形成はガス(水素および酸素)の激しい生成に伴う触媒活性によって妨げられる。
【0060】
また、有機成分の光動的分解は、濾過器22の光触媒コーティングによって促進される。特に図7の拡大図に示すように、濾過器の内周面および外周面は光触媒層(例えば、二酸化チタン)でコーティングされている。この層は内周面(充填体30に面する側面)全体に塗布されており、図5および図7に示すように、外周面には二酸化チタンがストライプ48状に塗布され、ストライプ48間には非コーティング領域50が残っている。コーティング領域48と非コーティング領域50は、濾過器22の長さ方向に延びている。図示する実施形態では、ストライプ48の幅は4つの穴状開口部26の間隔に対応しており、非コーティング領域50の幅はかなり小さく、隣接する2つの開口部26の間隔にほぼ対応している。
【0061】
濾過器22の触媒コーティングおよび螺旋状充填体30の上述したコーティングとの相互作用によって、バイオリアクタの上方で比較的強い電磁場が発生し、電圧を供給するか、濾過器22内の充填体30または濾過器22全体を回転させるために使用することができる。
【0062】
バイオリアクタ2の別の特徴を図8に示す。図示する実施形態では、環状開口部26は好ましくは打抜によって形成され、打抜バリ52が内部(充填体30の方向)に突出している。この実施形態では、上述した二酸化チタンの光触媒活性コーティング32は、開口部26の打抜後に塗布される。コーティングは非常にエッジが鋭い打抜バリ52の範囲では密着しないことが分かっており、バリ52はコーティングされずに残る。ところが、バイオリアクタ2の運転時に好ましくはバイオフィルム54がコーティングされていない打抜バリ52に付着する。すなわち、非コーティング領域がリアクタの内周面でのバイオフィルムの形成の発芽ゾーンとして機能し、有機成分の転化がさらに向上する。
【0063】
電磁場の形成の根底にあるメカニズムを図9の概略図を参照して説明する。
【0064】
図9は、PZT繊維(チタン酸ジルコン酸鉛)から製造された細長いナノ粒子を概略的に示す。この圧電体繊維材料は、当初は直流電界で矢印で示す方向に分極している。繊維には二酸化チタン層が設けられ、コーティングは、例えば繊維を浸漬させ、余剰材料を除去することによって行われる。450℃で乾燥処理を行うと、二酸化チタン層は光触媒活性を有するアナターゼ相に変態する。
【0065】
塗布工程後、粒子を電磁交流電界内で切断し、端面58からコーティングが除去される。これらの非コーティング領域には、その後のスパッタリング等の製造工程でアルミニウム等が設けられ、完成した状態のナノ粒子56は、先端極キャップ、二酸化チタンコーティング、圧電体コアからなる。
【0066】
バイオリアクタの運転時に、アルミニウムキャップによって形成された極先端60,62は、微生物の代謝生成物であるカチオン(図9の左側)とアニオン(図9の右側)の付着によってイオン化される。極先端60,62のイオン化によって、図9にその電場ライン64を示す比較的強い電磁場が発生する。
【0067】
極先端60,62の表面積は比較的小さいため、極先端60,62で電界強度の大きな増加が観測される。この電気的点作用によって、極先端60,62の範囲において、極先端60,62の近傍で強く加速された電荷キャリアによるガス分子の衝突イオン化が発生する。この放電と同時に、2つの極先端60,62から「対流放電(electric wind)」が発生する。その結果、ナノ粒子46は光子(フォトン)が自発的に放出される「光子ポンプ(photon pump)」として作用し、極先端60,62で青色ビーム64と赤色ビーム66が発生する。
【0068】
図11の概略図によれば、有機成分の包括凝集(inclusion flocculation)が光動的分解の第1工程で発生し、凝集時にエネルギーが放出される。
【0069】
有機成分と廃水との間の境界面を克服するために、バイオ界面活性剤(胆汁酸)が微生物によって生成され、接触面が酸性化される。これらのバイオ界面活性剤は、微生物によって生成される表面活性物質であり、安定化効果を有し、細菌を汚染物質と接触させ、分解させる。接触面の酸性化によって、境界面の伝導率が上昇する。フレークと流体との間の境界面では、格子原子の同形置換(isomorphous exchange)のために負の表面電荷が形成され、電解液(シュテルン層(Stern layer))のカチオンが付着する。その後の層では、イオンの拡散によってカチオン濃度が緩やかに減少すると共にアニオン濃度が上昇する。
【0070】
ナノ複合材料は、さらなる構成成分として微生物混合物に添加される。ナノ複合材料は、20〜50mmの長さを有する圧電体セラミック系PZT短繊維である。これらの短繊維は光触媒コーティングを施され、コーティング材料としては二酸化チタンまたはインジウムスズ酸化物が使用される。50〜500kHzにおけるこれらの元素の自然振動によって燐光(発光)が発生し、蛍光以外の場合には、発光は時間的遅延を伴って発生する。この刺激の結果、ほとんどが長い波長(354〜450nm)を有する放射線としてエネルギーが放出される。
【0071】
放出された振動エネルギーによって、刺激による菌類の燐光と細菌(vibrio fischeri)の生物発光の生体触媒反応が発生する。この生物発光によって、青色光下で明るい赤色蛍光(633nm)を有する蛍光蛋白質(sea Anemone(登録商標) anemonia sulcata)が放出される。
【0072】
微生物は、例えばMonascus pururus、Limicola−Nadson(色素細胞2145)、Pseudomonas fluorescensなどの顔料を放出する。バクテリオクロロフィル(シアノバクテリア(cyanobacteria))によって、684nmの強い緑色蛍光を有するクロロフィルA反応が発生する。青色冷光との相互作用によって、紫色細菌における電子移動と酸素の放出が発生する。微細藻類種(Chlorella vulgaris)とキトサン乳酸塩との組み合わせによるシアノバクテリアのポルフィリン合成および青色冷光(469〜505nm)の吸収によって、PpIXは小さな電池に蓄えられ、エネルギーを通常の酸素に移動させることができる。また、これらの「生物燃料電池」は、生物触媒によって糖からの電子を酸素代謝に移動させることにより糖代謝を利用する。
【0073】
光合成によって形成された酸素のエネルギー濃縮と平行して、反応性一重項酸素が放出される。
【0074】
この「非機械的細胞消化(non−mechanical cell digestion)プロセス」によってより多くの有機材料が放出され、少ないエネルギーの導入で特にグラム陽性菌による非常に高度な消化が達成される。
【0075】
部分的無機質化(partial mineralization)は1200ないし1500mVの電圧電界での有機物の完全に無酸素での分解によって発生する。この電圧電界は、明るい赤色螢光(633nm)と緑色の葉緑素蛍光(634nm)との間で確立される。
【0076】
無機質化時に自発的なフミン化(huminification)が発生し、汚染物質とそれらの代謝物質が生物学的に安定化され、再び固定されない場合もある。
【0077】
最後に、微生物によるミネラル(無機)化合物への完全な無機質化が発生する。その結果、バイオマスにおける光合成によって固定された炭素は二酸化炭素として再放出され(炭素サイクル)、有機的に結合した窒素、硫黄、リン酸塩は酸化または還元された無機化合物として分離され(窒素サイクル、硫黄サイクル)、それらは栄養分(鉱物、栄養塩)として再び環境中に放出される。
【0078】
本発明に係る生物学的処理段階によって、抑制物質の分解と酸素とエネルギーの放出のために濾過器(バイオリアクタ)における乾燥物質(TS)の有機分を乾燥物質の10%未満に減少させることができる。酸素のエネルギー濃縮によって放出された反応性一重項酸素は、例えばホルモン残渣と抗生物質を最も効果的に酸化させる。数秒後には、有機物質は崩壊によって転化され、実質的に無害となる。一方、螺旋状挿入物の上面のバイオフィルムは廃水によって溶解された物質を分解する。
【0079】
大きな比表面積を有する多孔担体からなる充填体が収容された濾過器を含むバイオリアクタを開示する。濾過器には、好ましくは一定割合の光合成活性を有する微生物と一定割合の発光微生物とを含む微生物混合物が導入されており、有機物の光動的分解が発生する。本発明では、微生物混合物は一定割合の光触媒活性を有するナノ粒子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】改造された生物学的処理段階を含む多室タンクの概略図である。
【図2】図1に係る生物学的処理段階のバイオリアクタを示す。
【図3】図2のバイオリアクタの断面図である。
【図4】図1に係る改造された小型廃水処理装置のためのバイオリアクタの別の実施形態の概略図である。
【図5】円柱状バイオリアクタの別の実施形態を示す図である。
【図6】図5のバイオリアクタの充填体を示す図である。
【図7】図5のバイオリアクタの濾過器の壁の詳細図である。
【図8】図8の壁の断面図である。
【図9】バイオリアクタの運転時にナノ複合材料の粒子に形成される電磁場の概略図である。
【図10】本発明に係るバイオリアクタの使用時に発生する光動的分解の進行を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 小型廃水処理装置
2 生物学的処理段階
4 機械的処理段階
6 三室沈殿タンク
8 隔壁
10 処理室
12 処理室
14 入口
16 開口部
18 液面
20 出口
22 濾過器
24 垂直ガイド
26 開口部
28 端面
30 充填体
32 コーティング
34 軸受
36 ジャケット
38 浮揚体
40 支持体
42 鋼管
44 丸棒
46 マット
48 ストライプ
50 非コーティング領域
52 打抜バリ
54 バイオフィルム
56 ナノ粒子
58 端面
60 極先端
62 極先端
64 青色光
66 赤色光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された共同廃水または産業廃水または有機汚染物質で汚染された流体の処理、特に有機汚染物質を分解するための微生物を含む小型廃水処理装置のためのバイオリアクタであって、処理対象の廃水の流路としての少なくとも1つの開口部(26)を有する容器(22)を含み、大きな細孔容積を有する充填体(30)と、好ましくは一定割合の光合成活性を有する微生物と一定割合の発光微生物とを含む微生物混合物とが前記容器(22)の内部に設けられていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記充填体(30)が螺旋形状を有することを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項3】
請求項2において、
前記螺旋状充填体(30)の直径が液面に向かって軸方向に増加していることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記充填体(30)が、発泡材料が塗布された支持層を含むことを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記充填体(30)が好ましくはグリッド状の二重壁を有し、発泡材料が前記二重壁の間に配置されていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記充填体が大きな細孔容積を有するセラミック材料からなることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項7】
請求項4または5において、
前記発泡材料、好ましくはPUフォームに、活性炭コーティングなどの触媒活性を有する表面が設けられていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項8】
請求項7において、
微生物が前記充填体(30)の表面に塗布されているか、または、微生物が濾過器(22)内の中心に導入されていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項9】
請求項8において、
前記微生物が、キトサンまたは乳酸ポリマー等のバイオポリマー等の担体物質に担持されていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項10】
請求項9において、
前記微生物混合物が、前記微生物に加えてナノ粒子をさらに含むことを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれか1項において、
前記充填体(30)には、前記微生物混合物と、活性炭等のバイオフィルムの形成を促進する層とが設けられていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項12】
請求項2ないし11のいずれか1項において、
前記容器の壁(36)および/または前記充填体(30)の表面領域が光触媒活性層でコーティングされていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項13】
請求項10において、
前記層が二酸化チタンまたはインジウムスズ酸化物であることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項14】
請求項12または13において、
前記光触媒層が、前記容器(22)の内周面のほぼ全体と外周面の一部に塗布されていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項15】
請求項14において、
前記外周面上の前記光触媒層がストライプ状に塗布され、前記ストライプが好ましくは長さ方向に延びていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項において、
前記容器(22)の前記開口部(26)が打抜によって形成され、打抜バリ(52)が内部に突出しており、前記光触媒コーティング(32)が打抜後に塗布されていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項において、
前記容器(22)が円柱形状を有し、液体の流路としての少なくとも1つの開口部が端面に設けられていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれか1項において、
前記容器(22)または前記充填体が回転可能に取り付けられていることを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項19】
流体内の有機成分の分解、特に請求項1ないし18のいずれか1項に記載のバイオリアクタにおいて使用するための微生物混合培養物であって、
生物学的溶液中に一定割合の光合成活性を有する微生物と一定割合の発光微生物とを含み、前記混合培養物が、光触媒活性層が表面に設けられた一定割合の圧電活性を有するナノ複合材料を含むことを特徴とする微生物混合培養物。
【請求項20】
請求項19において、
前記ナノ複合材料が、20〜100nmの長さと2〜10nmの直径を有する繊維状構造を有することを特徴とする微生物混合培養物。
【請求項21】
請求項19または20において、
前記コーティングが二酸化チタンまたはインジウムスズ酸化物を含むことを特徴とする微生物混合培養物。
【請求項22】
請求項19ないし21のいずれか1項において、
前記ナノ複合材料のコーティングには極部位を形成するための複数の開口部が設けられていることを特徴とする微生物混合培養物。
【請求項23】
請求項20および22において、
前記ナノ複合粒子のコーティングが両端面で切断されており、各極(60,62)が前記2つの端面に形成されていることを特徴とする微生物混合培養物。
【請求項24】
小型廃水処理装置のための改造用キットであって、請求項1ないし18のいずれか1項に記載のバイオリアクタ(2)と、請求項19ないし23のいずれか1項に記載の微生物混合培養物と、を含むことを特徴とする改造用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−525314(P2007−525314A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517959(P2006−517959)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001491
【国際公開番号】WO2005/005326
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(506010002)ゲオルグ フリッツマイヤー ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (4)
【氏名又は名称原語表記】Georg Fritzmeier GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Forststr. 2, 85655 Grosshelfendorf, Germany
【Fターム(参考)】