説明

バックグラインドフィルム及びその製造方法

【課題】本発明は、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、該半導体ウェハに反りが生じにくい優れた寸法安定性を有するバックグラインド用基体フィルム及びバックグラインドフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物からなるバックグラインド用基体フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの裏面研削(以下、「バックグラインド」という)する際に、該半導体ウェハに貼着して使用されるバックグラインドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する場合には、半導体ウェハの表面にイオン注入、エッチング等で回路を形成した後、ウェハを所定の厚さにするためにウェハの回路形成面とは反対の面をグラインダー等で研削するバックグラインド工程を経るのが一般的である。
【0003】
この半導体ウェハのバックグラインド時に、半導体ウェハの破損を防止し、研削加工を容易にするため、半導体ウェハの回路形成面(表面)に裏面研削用表面保護フィルム(バックグラインドフィルム)を貼着して保護する方法がとられている。
【0004】
バックグラインドフィルムは、バックグラインド時の摩擦熱により加熱され、バックグラインド終了後は常温まで冷却される。従来用いられているバックグラインドフィルムは、バックグラインド終了後の冷却過程で収縮するため半導体ウェハ側に反りが発生することが知られている。
【0005】
近年、半導体ウェハの超薄型化(50μm以下)により、バックグラインドフィルムの反りに追随して貼着された半導体ウェハにも反りが発生しやすくなり、ひいては半導体ウェハチップに欠けが発生するという問題が生じている(例えば、図1参照)。そのため、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程で反りが生じにくい寸法安定性に優れるバックグラインドフィルムが望まれてきている。
【0006】
かかるウェハの反りの問題を解決するべく、種々のバックグラインドフィルムが開発されており、例えば、粘着剤層上にエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVA)フィルムをラミネートし、さらに粘着剤及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートして得られる半導体ウェハ加工用保護シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載された保護シートでは、極めて引張り弾性率の低い層を別途中間層として設けることにより、基材のわずかな寸法変化を緩和し、ウェハの反りを抑制することが提案されているが、緩和しきれない寸法変化が発生した場合には、反りが大きくなる等の問題があった。
【0007】
さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系共重合体からなる基材フィルムの片表面に粘着剤を塗布した半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム(例えば、特許文献2参照)や、ジエン系ブロック重合体の水素添加物及び極性基変性オレフィン系重合体から選ばれる少なくとも1種を含むエラストマーからなるバックグラインドテープ(例えば、特許文献3参照)が知られている。しかしながら、これらの特許文献においては、50μm程度の薄型半導体ウェハに使用される場合については十分な検討がなされておらず、その結果、これらの文献の保護材料では、薄型半導体ウェハの反り抑制という点では十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−128292号公報
【特許文献2】特開2006−261482号公報
【特許文献3】特開2005−191296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、該半導体ウェハに反りが生じにくい優れた寸法安定性を有し、かつ、フィルム巻き取り時におけるブロッキングが抑制できるバックグラインド用基体フィルム、該バックグラインド用基体フィルムを含むバックグラインドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物からなるバックグラインド用基体フィルムが、バックグラインド工程において寸法安定性に優れ、かつ、フィルム巻き取り時におけるブロッキングが抑制できることを見いだした。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は下記のバックグラインド用基体フィルム、該基体フィルムを含むバックグラインドフィルム、半導体ウェハのバックグラインド方法、及びバックグラインド用基体フィルムの製造方法を提供する。
項1.軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物からなるバックグラインド用基体フィルム。
項2.厚みが50〜300μmである上記項1に記載のバックグラインド用基体フィルム。
項3.上記項1又は2に記載のバックグラインド用基体フィルムの表面に粘着剤層及び離型フィルムを有するバックグラインドフィルム。
項4.上記項3に記載のバックグラインドフィルムを半導体ウェハの表面に貼着し、該半導体ウェハの裏面を研削し、半導体ウェハからバックグラインドフィルムを除去することを特徴とする半導体ウェハのバックグラインド方法。
項5.軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物を押出し成形する工程を含むバックグラインド用基体フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバックグラインド用基体フィルムは、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程において、該半導体ウェハに反りが生じにくく寸法安定性に優れている。また、基体フィルム巻き取り時におけるブロッキングを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】バックグラインド用基体フィルムの反りに追随して半導体ウェハにも反りが発生し欠けが発生することを模式的に示した図である。
【図2】バックグラインド用基体フィルムの反りの測定方法を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.バックグラインド用基体フィルム
本発明のバックグラインド用基体フィルムは、軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物からなるものである。以下、本発明のバックグラインド用基体フィルムについて詳述する。
【0015】
1.1 軟質ポリエステル樹脂
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂は、酸成分とジオール成分からなるものである。ここで、軟質とは、ショア硬度D(JIS K 7215)で60以下である。
【0016】
(1)酸成分
酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が二量化して生成する化合物)等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。これらは1種単独又は2種以上混合して使用することもできる。
【0017】
また、本発明においては、酸成分として、テレフタル酸を必須成分とし、その他のジカルボン酸を含む酸成分混合物を用いることができるが、その他のジカルボン酸としては、特に限定されるものではなく、上記酸成分から適宜選択することができる。
【0018】
(2)ジオール成分
ジオール成分としては、2−メチル−1,3−プロパンジオール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールを含むジオール成分が好ましく、2−メチル−1,3−プロパンジオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールの両方を含むジオール成分がより好ましい。
【0019】
2−メチル−1,3−プロパンジオールの配合量としては、全ジオール成分中、10〜90モル%であることが好ましく、50〜70モル%であることがより好ましい。
【0020】
また、1,4−シクロヘキサンジメタノールの配合量としては、全ジオール成分中、10〜90モル%であることが好ましく、30〜50モル%であることがより好ましい。1,4−シクロヘキサンジメタノールの配合量が10モル%未満であると、得られる軟質ポリエステル樹脂の耐熱性および耐衝撃性が不十分となる傾向があり、90モル%を超えると、結晶化速度が速くなるために得られるフィルムの透明性が低下する傾向がある。
【0021】
本発明の軟質ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の直接重合法やエステル交換法等を採用することができる。
【0022】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂の数平均分子量は、特に限定されるものではなく、適宜決定することができる。
【0023】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂の密度は、1.30g/cm3以下であることが好ましい。また、密度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、0.5g/cm3以上を挙げることができる。密度がこの範囲にあることで、結晶化しにくく透明性に優れたフィルムが得られるため好ましい。
【0024】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂のメルトフローレート(MFR(JIS K 7210、190℃、21.2N))は、1〜10g/10分であることが好ましく、3〜9g/10分であることがより好ましい。
【0025】
本発明で用いる軟質ポリエステル樹脂のヘーズ値は、0.1〜5%であることが好ましく、0.1〜1%であることがより好ましい。なお、このヘーズ値は、JIS K 7105に準じて測定したものである。
【0026】
本発明で用いることができる軟質ポリエステル樹脂としては、例えば、(株)ベルポリエステルプロダクツ製のFLX92等を挙げることができる。
【0027】
1.2 ポリエステル系エラストマー
本発明で用いるポリエステル系エラストマーは、少なくとも1種のポリエステルハードセグメントと、少なくとも1種のポリエーテルソフトセグメントからなる共重合体である。
【0028】
ハードセグメントとソフトセグメントの比率は、ハードセグメント:ソフトセグメント=15〜90:85〜10(重量%)であることが好ましい。
【0029】
(1)ポリエステルハードセグメント
ポリエステルハードセグメントを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4−シクロへキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が二量化して生成する化合物)等の脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、機械的性質や耐熱性の点から、芳香族ジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。
【0030】
ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸を含む場合、その配合量は50モル%以上であることが好ましい。
【0031】
また、ハードセグメントを構成するジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の炭素数2〜12の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールがより好ましい。
【0032】
ポリエステルハードセグメントの数平均分子量としては、特に限定されるものではなく、適宜決定することができる。
【0033】
(2)ポリエーテルソフトセグメント
ポリエーテルソフトセグメントを構成するポリエーテルとしては、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールが好ましい。
【0034】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,3−プロピレングリコール)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが好ましい。
【0035】
ポリエーテルソフトセグメントの数平均分子量は、約200〜6,000であることが好ましい。
【0036】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーとしては、ポリエステルハードセグメントが、テレフタル酸/エチレングリコール又は1,4−ブタンジオール共重合体からなるセグメントであり、ポリエーテルソフトセグメントが、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールからなるセグメントであることが好ましい。
【0037】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーは、ポリエステルハードセグメントとポリエーテルソフトセグメントがブロックやグラフトの形態で結合したポリエステル系エラストマーであることが好ましく、その製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法も採用することができる。
【0038】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーの融点は、150〜300℃であることが好ましく、180〜230℃であることがより好ましい。
【0039】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーのガラス転移温度は、−40〜60℃であることが好ましく、−30〜30℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーの表面硬さ(JIS K 7215)は、40〜75であることが好ましい。
【0041】
本発明で用いるポリエステル系エラストマーの比重(ASTM D 792)は、1〜2であることが好ましく、1〜1.5であることがより好ましい。
【0042】
本発明で用いることができるポリエステル系エラストマーとしては、例えば、東レ・デュポン(株)製のハイトレル(登録商標)、東洋紡績(株)製のペルプレン(登録商標)等を挙げることができる。
【0043】
1.3 樹脂組成物
本発明のバックグラインド用基体フィルム用を形成する樹脂組成物は、前記軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及び前記ポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含むものであり、前記軟質ポリエステル樹脂20〜70重量%及び前記ポリエステル系エラストマー30〜80重量%を含むことが好ましく、前記軟質ポリエステル樹脂40〜60重量%及び前記ポリエステル系エラストマー40〜60重量%を含むことがより好ましい。樹脂組成物の組成が前記範囲内であることにより、薄型半導体ウェハのバックグラインド工程における寸法安定性が優れ、かつ、基体フィルム巻き取り時のブロッキングを抑制できるため好ましい。
【0044】
また、樹脂組成物には、前記軟質ポリエステル樹脂又はポリエステル系エラストマー以外にも酸化防止剤、耐候性剤等を含むことができる。その添加範囲としては、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中10重量%以下であることが好ましく、1〜5重量%の範囲を挙げることができる。
【0045】
前記樹脂組成物からなる層は、ポリエステル系エラストマーに軟質ポリエステル樹脂が分散した構造、又は、軟質ポリエステル樹脂にポリエステル系エラストマーが分散した構造となる。
【0046】
本発明のバックグラインド用基体フィルムは、前記樹脂組成物からなる層を含むものであるが、さらに、前記樹脂組成物からなる層以外の層を含んでいてもよい。
【0047】
本発明のバックグラインド用基体フィルムの厚みは、容易にロ−ル状に巻くことができる程度であれば良く、例えば、50〜300μm程度であり、好ましくは60〜250μm程度、より好ましくは80〜230μm程度である。
【0048】
2.バックグラインド用基体フィルムの製造方法
本発明のバックグラインド用基体フィルムの製造方法は、軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物を押出し成形する工程を含むものであり、押出し成形方法としては、Tダイスまたは環状ダイスを使用した押出法等、従来から用いられている方法を適宜用いることができる。これらの中でも、基材フィルムの厚み精度の点から、Tダイスを使用した押出法が好ましい。
【0049】
以下、Tダイスを使用した押出法について説明する。
【0050】
押出機上に設置された投入ホッパへ原料となる軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物を投入し、160〜240℃に設定された押出機中で溶融・混練された後、180〜300℃のTダイスからフィルム状に押出され、これを50〜70℃の冷却ロ−ルに通しながら冷却して実質的に無延伸で引き取る。
【0051】
原料樹脂は投入ホッパへ原料を投入する前に混合しておくことが好ましい。
【0052】
上記の原料樹脂は、投入ホッパへ原料を投入する前にドライブレンド又は溶融混練し調製することができる。また、原料樹脂を一旦ペレットとして取得した後、上記の様に押出成形してもよい。
【0053】
なお、引き取りの際に実質的に無延伸とするのは、バックグラインド工程において、延伸したことによるフィルムの収縮を抑制するためである。この実質的に無延伸とは、無延伸、あるいは、バックグラインド時のウェハの反りに影響を与えない程度の僅少の延伸を含むものである。通常、フィルム引き取りの際に、たるみの生じない程度の引っ張りであればよい。
【0054】
上記で得られるバックグラインド用基体フィルムの表面に粘着剤層及び離型フィルムを設ける方法は、公知の方法を採用することができる。バックグラインドフィルムは、通常テープ状にカットされたロール巻き状態で取得される。
【0055】
3.バックグラインドフィルム
本発明のバックグラインドフィルムは、前述のバックグラインド用基体フィルムの表面に粘着剤層及び離型フィルムを有するものである。より具体的には、前述のバックグラインド用基体フィルムの片方の表面上に公知の粘着剤をコートして粘着剤層が形成され、さらに該粘着剤層上に離型フィルムが設けられて、バックグラインドフィルムが製造される。
【0056】
粘着剤層の厚さは、例えば、10〜200μm程度であり、離型フィルムの厚さは、例えば、10〜100μm程度であればよい。
【0057】
粘着剤層で用いられる粘着剤成分としては、公知の粘着剤を特に制限なく使用できる。例えば、特開2006−128292号公報等に記載された粘着剤成分を用いることができる。なお、離型フィルムも公知のものが用いられる。
【0058】
粘着剤としては、たとえば、一般的に使用されている感圧性粘着剤を使用でき、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の適宜な粘着剤を用いることができる。これらのなかでも、半導体ウェハヘの接着性、剥離後の半導体ウェハの超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0059】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体および共重合体から選ばれたアクリル系重合体、その他の官能性単量体との共重合体、およびこれら重合体の混合物が用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が好ましく使用できる。
【0060】
バックグラインドフィルムは、通常テープ状にカットされたロール巻き状態で取得される。
【0061】
4.半導体ウェハのバックグラインド方法
本発明のバックグラインド方法は、バックグラインドフィルムを半導体ウェハの表面(回路面)に貼着し、該半導体ウェハの裏面を研削し、半導体ウェハからバックグラインドフィルムを除去する。
【0062】
具体的には、該バックグラインドフィルムの粘着剤層から離型フィルムを剥離して、粘着剤層の表面を露出させて、その粘着剤層を介して集積回路が組み込まれた側の半導体ウェハの表面に貼着する。半導体ウェハの研削前の厚みは、通常、300〜1000μm程度である。次いで、半導体ウェハを固定して、その裏面を常法により研削する。研削後の半導体ウェハの厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類、用途等に応じて選択されるが、例えば、50〜200μm程度となる。裏面研削が終了した後、必要に応じケミカルエッチング工程やCMP(メカノケミカルポリッシング)工程を追加してもよい。その後、バックグラインドフィルムを剥離(除去)する。また、必要に応じて、バックグラインドフィルム剥離後に、半導体ウェハ表面に対して、水洗、プラズマ洗浄等の洗浄処理が施される。
【実施例】
【0063】
以下に、本発明を、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1
表1に示す配合割合で、軟質ポリエステル樹脂(FLX92(商品名)、ショア硬度D(JIS K 7215):37、比重:1.21、MFR(JIS K 7210、190℃、21.2N)):7g/10分、密度:1.21g/cm3、ヘーズ値(JIS K 7105):0.6%、(株)ベルポリエステルプロダクツ製)及びポリエステル系エラストマー(ポリブチレンテレフタレート/ポリエーテル共重合体、比重(ASTM D 792):1.26、表面硬さ(JIS K 7215):72、融点:219℃、ガラス転移温度:12℃、ハイトレル(登録商標)7247(商品名)、東レ・デュポン(株)製)をドライブレンドし、樹脂組成物とした。
【0065】
得られた樹脂組成物をバレル温度180〜220℃の押出機に供給した。250℃のTダイスから押出し、設定温度40℃の引き取りロールにて冷却固化して、無延伸の状態で巻き取った。得られたフィルムの厚みは、150μmであった。
【0066】
実施例2、3、比較例1、2
表1に記載の配合割合にする以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0067】
実施例1〜3及び比較例1、2で得られたフィルムについて、下記評価方法で評価を行った。その結果を表1に示す。
【0068】
評価方法
(反りの評価)
ウェハの代替として、常温(25℃)から50℃の温度域で、半導体ウェハと同程度に寸法安定性の良いポリイミド(PI)テープ(スコッチポリイミドテープ No.5434、厚さ53μm、住友スリーエム(株)製)を使用した。
【0069】
作製したバックグラインド用基体フィルムに上記PIテープ(幅2cm×長さ14cm)を貼付け、サンプルとして切り出し、2枚のステンレス板(厚み2mm)に挟み、50℃に設定したオーブン内で10分間加熱した。その後、サンプルを取り出して常温(25℃)で10分間放冷し、フィルムの収縮によって発生する反りを測定した。
【0070】
反り量は、バックグラインド用基体フィルムにPIテープを貼り付けた状態で、バックグラインド用基体フィルムが上側になるように水平面上に置き、該水平面から最も浮いているPIテープの端部の高さ(mm)を測定した(図2)。測定値が3mm以下であれば、半導体ウェハの反りの問題がなく実用できるレベルである。
【0071】
(ブロッキングの評価)
得られた基体フィルムの任意の場所から、たて100mm×よこ30mm(フィルムの流れ方向をたて方向、幅方向をよこ方向としてサンプルを切り出した)の大きさに測定用サンプルを2枚切り出した。2枚の測定用サンプルを、同一面(冷却ロールと接する面)同士がたて40mm×よこ30mmの面積で重なり合うようにし、この重なり合った測定用サンプルを2枚のガラス板で挟み、その上から、サンプルが重なり合っている部分に600gの重りをのせた。これを40℃の恒温槽の中に入れ、7日間放置した。7日後、恒温槽より取り出したサンプルを、新東科学(株)製剥離試験器(Peeling TESTER HEIDON−17)にセットし、引張り速度200mm/分で、180度せん断剥離強度を測定した。測定値が、4.9N/10mm以下であれば、ブロッキングなしとした。
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物からなるバックグラインド用基体フィルム。
【請求項2】
厚みが50〜300μmである請求項1に記載のバックグラインド用基体フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバックグラインド用基体フィルムの表面に粘着剤層及び離型フィルムを有するバックグラインドフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のバックグラインドフィルムを半導体ウェハの表面に貼着し、該半導体ウェハの裏面を研削し、半導体ウェハからバックグラインドフィルムを除去することを特徴とする半導体ウェハのバックグラインド方法。
【請求項5】
軟質ポリエステル樹脂5〜95重量%及びポリエステル系エラストマー95〜5重量%を含む樹脂組成物を押出し成形する工程を含むバックグラインド用基体フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−225677(P2010−225677A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68915(P2009−68915)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】