説明

バックグラウンド信号補正による光学的分析システム

本発明は、分光器の広帯域バックグラウンド(例えば、分光の蛍光バックグラウンドまたは検出器の暗電流によるバックグラウンド信号)の有効な補正のための光学的分析システムを提供する。光学的分析システムは、スペクトル信号の多変量光学分析を効果的に提供する。光学的分析システムは、分光ピークまたはスペクトルバンドと広帯域バックグラウンドの重ね合わせを表すさまざまなスペクトル成分の波長選択的検出を提供する。さらに、光学的分析システムは、分光ピークまたはバンドの広帯域バックグラウンドに主に対応するスペクトル成分を取得するように構成されている。さまざまなスペクトル成分の波長選択的抽出は、再構成可能な多変量光学素子に基づいて、または空間光学透過マスクの位置変位に基づいて実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学分光学の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分光技術は、物質の組成の測定に広く使われている。光信号、すなわち分光光学信号をスペクトル分析することによって、物質中の特定の化合物の濃度を正確に測定できる。一般的に、特定の物質の濃度は光信号の主成分の振幅で与えられる。
【0003】
米国特許公報6198531号には、光信号の主成分の振幅を測定するための光学的分析システムの一実施例が開示されている。既知の光学分析システムは、例えば、サンプル中にどの化合物がどの濃度で含まれるかを分析するのに適した分光分析システムの一部である。サンプルと相互作用する光が、化合物とその濃度に関する情報を搬送するということはよく知られている。この基本的な物理的方法は、例えば、レーザ、ランプまたは発光ダイオードのような光源の光をサンプルに向けて送り、この情報を搬送する光信号を生成するような光学的分光器の技術において利用される。
【0004】
例えば、光はサンプルに吸収されうる。代わりに、あるいは、加えて、既知の波長の光は、サンプルと相互作用し、例えばラマン・プロセスにより異なる波長で光を生成しうる。送られた光および/または生成された光は、スペクトルとも称される光信号を構成する。波長の関数としての光信号の相対強度は、それから、サンプルに含まれる化合物およびその濃度を表す。
【0005】
サンプルに含まれる化合物を識別するために、および、その濃度を測定するために、光信号を分析しなければならない。既知の光学的分析システムでは、光信号は、光学フィルタを具えている専用ハードウエアにより分析される。この光学フィルタは波長に依存する透過率を有する、すなわち、この光学フィルタは、波長依存透過率により与えられるスペクトル重み関数によって光信号に重み付けするように設計されている。スペクトル重み関数は、重み付けされた光信号、すなわちフィルタを透過した光の総強度が特定の化合物の濃度に正比例するように選択される。この種の光学フィルタは、多変量光学素子(MOE)とも称される。この場合には、この強度を、例えば、フォトダイオードのような検出器で、都合よく検出することができる。あらゆる化合物に特有のスペクトル重み関数を有する専用の光学フィルタが用いられる。光学フィルタは、例えば、所望の重み関数を構成している透過率を有する干渉フィルタであってもよい。
【0006】
一般的に、主成分は正の部分と負の部分を具える。従って、光信号の一部は、主成分の正の部分に対応する第1のスペクトル重み関数によって光信号を重み付けする第1フィルタに送られ、光信号の他の一部は、主成分の負の部分に対応する第2のスペクトル重み関数によって光信号を重み付けする第2フィルタに送られる。第1および第2のフィルタを透過した光は、第1および第2の検出器で別々に検出される。2つの検出器で得られた2つの信号はそれから減算され、その結果、サンプルの専用の化合物の濃度に対応する振幅を有する信号が得られる。
【0007】
このように、スペクトル全体の代わりに、サンプルの特定の化合物に比例する単一の信号のみが検出される。それゆえ、かなり高価な電荷結合素子(CCD)カメラを、例えば、半導体ベースのフォトダイオードような低廉な光検出器と有効に置き換えることができる。
【0008】
多くの分光分析システムにおいて、弾性散乱光が、検出器の暗電流と同様に、固有のスペクトル信号に重畳されるかなり大きなバックグラウンド信号を発生しうる。一般的に、分析されるべきスペクトル信号は、広帯域蛍光または暗電流バックグラウンドと比較してスペクトルの比較的狭いピークを特徴とする。通常、信頼性が高く充分な分光分析は、広帯域バックグラウンド信号の効果的除去を必要とする。
【0009】
これは、例えば、スペクトルのゆっくり変化する信号成分のフィルタリングによって与えられる。しかし、MOEを利用することによって、スペクトル全体ではなく単一の信号のみが検出される。従って、ゆっくり変化するスペクトル成分のフィルタリングは、直接的な方法で実行することはできない。しかし、バックグラウンド補正はスペクトル信号分析の必要なステップであり、多変量光学分析に基づく分光分析にも適用されなければならない。
【0010】
例えば、バックグラウンドが生物組織の分光分析の枠組みの中で容易に起こりうる修正を受けるとき、バックグラウンド補正の効果は明らかである。特に、分光分析を、異なる光学的性質を特徴とする種々の異なる生物組織に適用するとき、蛍光バックグラウンドは生物組織のタイプに強く依存しうる。さらに、収集した光信号を分光分析システムに伝送する光導波路における光散乱のようなその他の効果もまた、バックグラウンドレベルに大きな影響を及ぼしうる。また、バックグラウンドが不均一のとき、すなわち、蛍光または暗電流が広いスペクトル域にわたって不均一のとき、一定の蛍光および暗電流のバックグラウンドを減算すると、スペクトル信号が大きく改変されることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、本発明の目的は、多変量光学素子に基づく光学スペクトルのバックグラウンド補正を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光信号の主成分を測定するための光学的分析システムを提供する。光学的分析システムは、分散光学素子と、空間光操作手段と、検出器と、処理手段とを具える。分散光学素子は、光信号のスペクトル成分を第1の方向に空間的に分離する働きをする。一般的に、分散光学素子は、回折格子またはプリズムとして実現される。空間光操作手段は、第1の時間に、光信号の少なくとも第1のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過し、第2の時間に、光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を透過する働きをする。
【0013】
光信号の少なくとも第1および第2の透過スペクトル成分は次いで検出器で検出される。それ故、少なくとも第1および第2の透過したスペクトル成分は、第1および第2の時間に順次に検出される。このように、検出器は少なくとも第1および第2の光信号の透過スペクトル成分を順次検出する働きをする。処理手段は、少なくとも第1および第2の検出されたスペクトル成分に基づいて、光信号の補正を実行するように構成される。厳密な意味において、処理手段は、少なくとも第1および第2の透過スペクトル成分の検出に応じて、検出器から得られる電気信号の補正を実行するように構成される。
【0014】
本発明は、特に、光信号が、広帯域バックグラウンドと、光信号の主成分の測定に関連する狭帯域の分光ピークとを具えているという仮定に基づく。さらに、化合物特有の分光ピークの波長が知られているので、空間光操作手段は、特定の分光ピークを十分に含む識別可能なスペクトルバンドのみを選択的に透過する働きができる。たとえば、光信号の第1の透過スペクトル成分は、狭いラマンバンドに対応するものとしうる。
【0015】
実際には、第1の時間に検出器で検出される対応する信号は、狭いラマンバンドからの寄与分のみならず広帯域バックグラウンドからの寄与分も含む。それゆえ、第1の時間に空間光操作手段で透過された光信号の第1のスペクトル成分は、広帯域バックグラウンドと狭帯域のスペクトル信号の重ね合わせを表す。
【0016】
光信号の第1の透過スペクトル成分のラマンおよびバックグラウンドの寄与分を分解し、別々に分析するために、バックグラウンドレベルを測定し、検出された第1のスペクトル成分から減算しなければならない。したがって、空間光操作手段は、第2の時間に、光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を透過する。ここで、空間光操作手段は、光信号の第2のスペクトル成分が、所望のラマンの寄与分を含まないで、第1の時間に空間光操作手段で透過された第1のスペクトル成分のバックグラウンドの寄与分と同等のバックグラウンド信号にのみ対応するように構成される。一般的に、第2のスペクトル成分は、第1のスペクトル成分の第1のスペクトルバンドに隣接して位置するスペクトルバンドを覆うように、第1のスペクトル成分と比較して、ごくわずかに移動させる。
【0017】
本発明のさらなる好適実施例によれば、空間光操作手段は、第1の方向に沿って移動可能で、固定の透過開口をさらに具える。この基本的な実施形態においては、空間光操作手段は、第1の方向に沿って、すなわち光信号の空間分解方向に沿って、または分散光学素子から展開されるスペクトルの方向に沿って、移動し得るスリット開口の形で有効に実現できる。たとえば、空間光操作手段は、複数のスリット開口を特徴とする空間透過マスクとして実現でき、この場合には各スリットは個別のラマンバンドに対応させる。こうして、空間透過マスクは複数のラマン・ピークを透過する働きをし、一方、光信号の他のスペクトル成分は遮断される。一般的に、透過されたラマン・ピークは蛍光およびノイズバックグラウンドの著しい寄与を含むので、分光の寄与分、例えば透過されたスペクトル成分のラマン寄与分を抽出なければならない。空間光透過マスクを光信号のスペクトルの方向にわずかに移動させて、分光ピークが空間光透過マスクでほぼ遮断され、かつ、隣接するバックグラウンドレベルが透過されるようにすることによって、検出器で検出できる展開信号は、単に先に測定されたスペクトル信号のバックグラウンドの寄与分に対応するものとなる。これらの2つの順次測定された信号を相互に減算することによって、分光の寄与分を十分に決定できる。
【0018】
代案として、空間光操作手段を移動する代わりに、分散光学素子を、分光ピークの横方向の位置が空間光操作手段のスリット開口に対して移動できるように、例えば回転可能にしてもよい。このような方法で、空間光操作手段あるいはスペクトル全体のいずれかを、例えば横方向に、移動させる必要がある。原則として、この相互の移動は、使用光学部品のいずれかを適切に移動、あるいは傾動することによって入射光信号の方向を変える多種多様の光装置によって実現できる。少なくとも第1の透過スペクトル成分の検出中には、光信号の分光ピークの空間的位置が、空間光操作手段のさまざまな開口の位置に実質的に合致することだけは、保証しなければならない。
【0019】
対照的に、光信号の少なくとも第2の透過スペクトル成分の収集中は、光信号の分光ピークは空間光操作手段により遮断されなければならず、バックグラウンド蛍光またはバックグラウンドノイズに対応する隣接して位置するスペクトルバンドだけが空間光操作手段で透過されなければならない。
【0020】
本発明のさらなる好適実施形態によれば、空間光操作手段は、再構成可能な空間光変調器を具える。空間光操作手段を再構成可能な空間光変調器として実現することによって、空間光操作手段を光学的分析システム内に固定できる。したがって、空間光操作手段を光信号のスペクトルに対してもはや移動する必要はなく、光信号の第1のスペクトル成分の透過および次の第2の隣接スペクトル成分の透過は、空間光変調器の再構成によって、効果的に実現できる。
【0021】
たとえば、空間光変調器は、交差偏光器の間に位置する個々に切替え可能な液晶素子のアレイによって有効に実現できる。1つの液晶素子は、入射光の偏光方向を変更するために、電気的に切替え可能である。交差偏光器構成と組み合わせて、切替え可能な、それゆえ、再構成可能な空間透過マスクを有効に実現できる。このような方法で、再構成可能な空間光変調器の動作を適切に制御することによって、特定のスペクトルバンドを、選択的に透過したり遮断したりできる。それゆえ、再構成可能な空間光変調器は、第1の時間に光信号の少なくとも第1のスペクトル成分を透過する働きをし、その後第2の時間に光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を透過する働きをする。例えば液晶素子構成として再構成可能な空間光変調器を実現すると、光信号の第1および第2のスペクトル成分の選択的な透過は、いかなる機械的運動も移動も含まない。
【0022】
本発明のさらなる好適実施形態によれば、空間光操作手段は、少なくとも第1のスリットを有する開口をさらに具える。この少なくとも第1のスリットの幅は変更可能である。空間光操作手段の透過開口の幅を可変にすることによって、空間光操作手段は、異なる幅の分光ピークを特徴とする複数の異なるスペクトルバンドに個々に適応できる。たとえば、透過開口の幅は、1つの分光ピークの透過のみを可能にするように変更できる。それゆえ、少なくとも第1の透過スペクトル成分は、非常に狭いスペクトルバンドを特徴とすることができる。
【0023】
対照的に、空間光操作手段の開口の幅は、かなり広いスペクトルバンドを透過することもでき、これは、バックグラウンド信号を得るのに有利である。一般的に、バックグラウンド信号の絶対強度は、個別の分光ピークの絶対強度よりはるかに大きい。それゆえ、透過されるスペクトル成分のスペクトルバンドを増大することによって、検出される信号のバックグラウンドの寄与分は著しく増大する。したがって、空間光操作手段の移動に代わるものとして、空間光操作手段の開口を拡大して、分光の寄与を犠牲にして、検出される信号のバックグラウンドの寄与分は著しい増大をもたらすことができる。このように、かなり広帯域に透過されたスペクトル成分は、バックグラウンド信号を主に表すようになる。
【0024】
本発明のさらなる好適実施形態によれば、空間光操作手段は少なくとも第2のスリットをさらに具える。この第2のスリットも、スペクトル分散された入射光信号の開口を形成する。空間光操作手段の少なくとも第1および第2のスリット開口は、第1の方向に沿って同時に移動可能である。一般的に、空間光操作手段の少なくとも第1および第2のスリット開口の位置は、光信号の重要なスペクトルバンドの横方向の位置に対応する。少なくとも第1および第2のスリット開口は、第1の時間に、対応する分光ピークを透過させる。それゆえ、第1の時間に検出器で収集される信号は、少なくとも2つの分光ピークの寄与分と関連するバックグラウンドの寄与分とを表す。次に、好ましくは、少なくとも第1および第2のスリット開口を第1の方向に沿って等距離だけ同時に移動することによって、対応する第2の信号を第2の時間に検出器で検出できる。この第2の信号は、第1の時間に収集された少なくとも第1および第2のスペクトル成分の重畳されたバックグラウンドノイズを表すことができる。
【0025】
本発明のさらなる好適実施形態によれば、再構成可能な空間光変調器は、第1の方向に沿って移動するスリット開口を形成するように構成される。この実施形態において、再構成可能な空間光変調器は、例えば走査モードで駆動され、すなわち、再構成可能な空間光変調器は、スペクトル全体の複数の隣接したスペクトルバンドを連続して透過する働きをする。このような方法で、スペクトルピークおよび広帯域の蛍光および/または暗電流バックグラウンドを特徴とするスペクトル全体が、複数の連続するスペクトルバンドに区分され、これらの区分が、空間光変調器および検出器により連続的に透過され、記録される。
【0026】
スペクトルのさまざまな区分の幅は、任意に選択してもよく、不均一にしてもよい。また、開口の幅は、スペクトルの走査中、動的に変化させてもよい。全スペクトルを少数の広帯域区分に分割することによって、この種の走査は、区分数がかなり少ないため、比較的短時間で実行できる。これは、バックグラウンドレベルのかなり粗い見積もりを提供する。代案として、この種のスペクトル走査は、多数の狭帯域のスペクトル区分に基づくものとすることにより、全スペクトルの走査に必要な時間間隔は大きくなるが、バックグラウンドレベルの信頼性が高い測定を提供することもできる。
【0027】
さらにまた、空間光操作手段の少なくとも第1のスリットの位置は、任意に、例えば周期的に変化させることができる。このような方法で、スペクトルの異なるスペクトルバンドを、バックグラウンド補正を基礎として用い、時間とともに変動するバックグラウンドを考慮することができる。空間光操作手段の少なくとも第1のスリットの位置の変化は、空間光操作手段の移動および/または再構成によって実現できる。
【0028】
本発明のさらなる好適実施形態によれば、分散光学素子と空間光操作手段は、多変量光学素子を形成する。空間光操作手段は、液晶光変調器またはデジタル・マイクロ・ミラー・デバイス(DMD)として実現することが好ましい。それゆえ、入射光信号をスペクトル分散し、展開するスペクトルを空間光操作手段に向けることにより、専用のスペクトル成分を選択的に減衰させ、遮断することが可能となる。空間光操作手段は、異なる空間光透過部を具え、各空間光透過部は、光信号の個別のスペクトル成分の選択的な透過を提供する。
【0029】
たとえば、空間光操作手段は、回帰関数の正および負の部分にそれぞれ対応する波長選択透過を有効に提供する第1および第2の空間光透過マスクを特徴とする。多変量光学素子は、個別の化合物の分析用に特に設計された固定の透過マスクにより実現される。代案として、MOEの空間光操作手段は、液晶光変調器またはデジタル・マイクロ・ミラー・デバイス(各々、光信号のさまざまなスペクトル成分の再構成可能で選択的な透過を提供する)のような、再構成可能な構成として実現してもよい。
【0030】
本発明のさらなる好適実施形態によれば、光学的分析システムは、人の血液の非侵襲性の分析を提供するように構成されている。本実施例において、光学的分析システムにより測定される主成分は、人の血液中の物質の濃度を表す。この物質は、以下の検体;グルコース、乳酸塩、コレステロール、酸化ヘモグロビン、および/またはデソキシ・ヘモグロビン、グリコ・ヘモグロビン(HbAIc)、ヘマトクリット、コレステロール(HDLとLDLの合計)、トリグリセライド、尿素、アルブミン、クレアチニン、酸素化、pH、重炭酸塩等のうちの1つ以上として得る。
【0031】
別の形態において、本発明は、光学的分析システムの光信号の補正を実行する方法を提供する。本発明の方法は、入射光信号のスペクトル成分を、分散光学素子によって、第1の方向に空間的に分離するステップを具える。さらなるステップにおいて、本発明の方法は、第1の時間に、光信号の少なくとも第1のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過し、次に、第2の時間に、光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を透過するステップを具える。第1および第2のスペクトル成分を部分的に透過することは、再構成不可能で移動可能か、あるいは再構成可能で固定の光学的分析システムのいずれかである空間光操作手段により提供される。
【0032】
光信号の少なくとも第1および第2の透過スペクトル成分は、検出器で検出される。少なくとも第1および第2のスペクトル成分の検出は、少なくとも第1および第2のスペクトル成分を明確に分離するために、順次に実行される。少なくとも第1および第2の透過スペクトル成分の検出の後、検出されたスペクトル成分は、光信号の補正を実行するために好ましくは電子的に、処理される。少なくとも第1のスペクトル成分は関心のあるスペクトル信号と大きいバックグラウンドレベルの重ね合わせを表し、一方、少なくとも第2のスペクトル成分は少なくとも第1のスペクトル成分のバックグラウンドレベルのみを表すことが好ましい。
【0033】
本発明のさらなる好適実施形態によれば、本発明の方法は、第1の時間に、光信号の少なくとも第3のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過し、次に、第2の時間に、光信号の少なくとも第4のスペクトル成分を透過するステップを具える。したがって、光信号の補正は、少なくとも第1、第2、第3、および第4の透過され検出されたスペクトル成分の比較に基づいて実行する。このように、第1の時間に検出される信号は、光信号の少なくとも第1および第3のスペクトル成分の透過に対応する。それゆえ、この検出信号は、少なくとも第1および第3のスペクトル成分の重ね合わせである。同様に、第2の時間に検出される第2の信号は、光信号の少なくとも第2および第4のスペクトル成分の重ね合わせに対応する。一般的に、少なくとも第1および第3のスペクトル成分はスペクトルのスペクトルピークを表し、一方、光信号の少なくとも第2および第4のスペクトル成分は対応するバックグラウンドレベルを実質的に表す。このように、光信号を補正する本発明の方法は、第1および第2のスペクトル成分だけの順次収集に限定されるものではない。さらに、少なくとも第1および第2のスペクトル成分は、複数の異なるスペクトルバンドを構成するものとし得る。
【0034】
さらに別の形態において、本発明は、光学的分析システムの光信号の補正を実行するためのコンピュータ・プログラム製品を提供する。光信号は、分散光学素子によって、そのスペクトル成分に空間的に分解される。コンピュータ・プログラム製品は、第1の時間に光信号の少なくとも第1のスペクトル成分を透過し、第2の時間に光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を透過するための空間光操作手段を制御するように構成されているコンピュータ・プログラム手段を具える。コンピュータ・プログラム製品は、光信号の補正を実行するために少なくとも第1および第2の電気信号を処理するように構成されているコンピュータ・プログラム手段をさらに具える。少なくとも第1および第2の電気信号は、光信号の少なくとも第1および第2の透過スペクトル成分の検出に応じて、検出器により提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の好適実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
図1に示した実施形態において、光信号の主成分の振幅を測定するための光学的分析システム20は、ある濃度のある物質を含むサンプル2を照明して主成分を生成する光を供給する光源1を具える。主成分の振幅は、物質の濃度に関連する。光源1は、ガスレーザ、色素レーザおよび/または固体レーザ(例えば半導体レーザまたはダイオードレーザ)のようなレーザである。
【0037】
光学的分析システム20は、血液分析システム40の一部である。血液分析システムは、主成分の振幅を測定するため、それゆえ、化合物の組成を測定するための計算要素19をさらに具えている。サンプル2は、血管を有する皮膚を具えている。物質は、以下の検体の1つ以上でありうる。グルコース、乳酸塩、コレステロール、酸化ヘモグロビンおよび/またはデソキシ・ヘモグロビン、グリコ・ヘモグロビン(HbAIc)、ヘマトクリット、コレステロール(HDLとLDLの合計)、トリグリセライド、尿素、アルブミン、クレアチニン、酸素化、pH、重炭酸塩等である。これらの物質の濃度は、光学分光学を使用し、非侵襲性の方法で測定すべきである。このために、光源1からの出力光がダイクロイックミラー3に送られ、反射して、皮膚の血管の方へ送られる。この光は、対物レンズ12を使用して、血管に収束できる。この光は、国際特許出願公開第02/057759号パンフレットに記載されているようなイメージングおよび分析システムを用いて、血管に収束できる。
【0038】
光源1の出力光と血管の血液との相互作用によって、ラマン散乱および蛍光に起因して光信号が発生する。このように発生した光信号を、対物レンズ12で集光し、ダイクロイックミラー3に送ることができる。この光信号は、光源1の出力光と異なる波長を有する。ダイクロイックミラーは、光信号の少なくとも一部を透過するように構成される。
【0039】
このような方法で発生した光信号のスペクトル100を図2Aに示す。スペクトルは、比較的広帯域の蛍光バックグラウンド(FBG)102と、比較的狭帯域のラマンバンド(RB)104、106、108を具える。図2Aのx軸は、光源1による785nmの励起に対する波長シフトを波数で表し、図2Aのy軸は強度を任意単位で表す。x軸は、強度ゼロに対応する。ラマンバンドの波長および強度、すなわち、位置および高さは、水に80mMolの濃度で溶解された検体グルコースのための図2Bの実施例に示されているように、検体の種類を表す。図2Bの実線112はグルコースおよび水の両方のスペクトルを表し、図2Bの点線112は水中グルコースのスペクトルとグルコースなしの水のスペクトルとの差分を表す。これらのスペクトルバンドを有するスペクトルの振幅は、検体の濃度を示す。
【0040】
血液は、図2Bと同じくらい複雑な特定のスペクトルを各々有するような多くの化合物を含んでいるので、光信号のスペクトル分析は比較的複雑である。光信号は、本発明による光学解析システム20に送信され、ここで、光信号は、例えば図3に図式的に示す重み関数で光信号を重み付けするMOEにより分析される。図3の重み関数は、血液中のグルコース用に設計されている。この重み関数は、正の部分Pと負の部分Nを具える。この例では、正の部分Pおよび負の部分Nは、各々、複数のスペクトルバンドを具える。
【0041】
本明細書中では、収束部材と他の光学素子との間の距離は、収束部材の主面と他の光学素子の主面との間の光軸に沿った距離として定義する。
【0042】
図1に示す計算要素19は、正信号と負信号との差分を算出するように構成される。この差分は、光信号の主成分の振幅と比例する。主成分の振幅は、物質の濃度、すなわち検体の濃度に関連する。振幅と濃度の関係は、一次従属性とすることができる。
【0043】
図4は、光学的分析システム20の上面図を図式的に示す。光学的分析システム20は、入射光ビーム18を受光して、計算要素19への電子出力を供給するように構成される。光学的分析システム20は、分散光学素子として働く回折格子22、透過マスク26、収束素子28および検出器30を有する。本質的には、回折格子22は、透過マスク26と組み合わせて、多変量光学素子(MOE)として働く。
【0044】
このようにして、入射光ビーム18の専用のスペクトル成分をフィルタ処理し、任意に減衰させることができる。スペクトル的に修正された光学ビーム18を検出器30に収束することによって、物質中の特定の化合物の濃度を正確に測定できる。透過マスク26の透過パターンは、光学的分析システム20で分析する各化合物に特有のスペクトル重み関数に対応する。一般的に、検出器30は、半導体ベースのフォトダイオードベースにより実現される。
【0045】
本発明によれば、特に入射光ビーム18の完全な分光分析を実行することなく、化合物の濃度を有効に測定することが可能となる。それゆえ、MOEを有効に利用することによって、光学ビーム18の完全なスペクトル24を記録するためのかなり高価な電荷結合素子(CCD)を低廉なフォトダイオード検出器30と有効に置き換えることができる。検出器30で検出される強度は、透過マスク26により実現される正および/または負の回帰関数を表す。実現スペクトル回帰関数の正の部分および負の部分を別々に検出することによって、化合物の濃度を、正確に測定できる。従って、必要な信号処理を提供するために、検出器30を計算要素19に結合する。
【0046】
空間光透過マスク26の透過パターンは、さまざまな分光ピークに対応することが好ましい。一般的に、空間光透過マスク26の透過パターンは、ラマンバンド104、106、108のような分光ピークの狭いスペクトルバンドに対応する幅を特徴とする複数のスリット開口により実現される。スペクトル24の分光ピークが空間光透過マスク26の対応するスリット開口と正確に重なる構成において、分光ピークの大きな寄与分と関連するバックグラウンド信号とを具える第1の信号を検出器30で検出できる。
【0047】
スペクトル24の分光ピークの位置に対して空間光透過マスク全体をわずかに移動することによって、分光ピークは空間光透過マスク26により完全に遮断され、バックグラウンド信号を実質的に具える隣接スペクトルバンドは空間光透過マスク26を透過し、検出器30で検出される。このようにして、2つの異なる信号が順次に得られ、不可避の広帯域バックグラウンドと分光情報とが重畳された第1の信号から光信号18の分光情報を抽出することが可能となる
【0048】
原則として、空間光透過マスク全体の移動は、ピエゾ技術に基づくアクチュエータのような従来の移動手段に基づいて実行できる。それゆえ、光透過マスク26の横方向の変位は、パーソナルコンピュータのような計算機として一般的に実現される処理手段19によって、電気的に制御できる。このような方法で、光信号の少なくとも第1および第2のスペクトル成分の順次の収集は、ユーザの手動操作なしで独立して実行できる。
【0049】
図5は、図4に類似した実施形態の平面図である。図5には、空間光操作手段26の切断面を示す。空間光操作手段26は、スペクトル24の特定のスペクトル成分を有効に透過する開口32を特徴とする。矢印で示されるように、光操作手段26全体あるいは開口32はx方向に移動できる。このような方法で、分光ピークとバックグラウンド信号を示す少なくとも第1および第2のスペクトル成分は、選択的に透過させ、順次に検出できる。空間光操作手段26は、1つの開口32に限定されるものではない。さらに、マスク26は、透過マスクに固定された複数の開口を具えてもよいし、さまざまな異なるスペクトル成分を選択的に透過できる再構成可能な空間光変調器として実現してもよい。
【0050】
開口32がマスク26に固定されるとき、マスク全体は、スペクトル24の異なるスペクトル成分を順次選択するために垂直方向(x方向) に移動可能でなければならない。光透過マスク26が再構成可能な空間光変調器として実現されている場合のみ、マスク26は、例えば分散光学素子と一体に取り付けることが可能である。代替実施形態では、分散光学素子22もまた、再構成可能に実現してもよい。例えば、分散光学素子22の向きを修正することによって、スペクトル24は光透過マスク26上で垂直に移動させ、開口32対する分光ピークの移動を有効に実現することができる。分散光学素子22を、例えば回転可能に実装すると、透過マスク26は、原則として、光学的分析システム20内に動かないように取り付けることもできる。
【0051】
図6は、空間光操作手段と投影したスペクトル100の正面図を示す。スペクトル100は、2つの分光ピーク104、106とかなり均一な広帯域蛍光バックグラウンド102とを特徴とする。透過開口32は、スリット開口として実現される。図6に示すように、開口32の水平幅は、分光ピーク104のスペクトルバンドの幅に実質的に合致する。分光ピーク104は、図2Aに示すようにラマンバンド104に対応する。垂直スリット32の水平位置が分光ピーク104の位置に実質的に合致するとき、検出器30が検出できる透過スペクトル成分は広帯域蛍光バックグラウンド102および分光ピーク104の重ね合わせを示す。
【0052】
検出信号への分光の寄与分を分析するために、広帯域蛍光バックグラウンド102にのみ対応する第2信号を収集しなければならない。これは、スリット32を、点線で示される位置33に水平にを移動することによって有効に実現できる。原則として、スリット32の必要な移動は、スリット32の位置が図示された位置33とほぼ重なるように、マスク26全体を移動することによって実現する。代案として、空間光操作手段26を再構成可能な空間光変調器(例えば液晶光変調器)として実現するときは、スリット32を点線33で示される位置へ効果的に移動できる。空間光操作手段26の実現方法とは関係なく、第2信号は広帯域蛍光バックグラウンド102のみを示し、それゆえ、スペクトル信号と広帯域蛍光バックグラウンド102との重ね合わせを表している先に収集されたスペクトル成分の分光寄与分(例えば、知りたいラマン信号)を抽出することが可能となる。
【0053】
代わりに、または、加えて、順次に収集するスペクトルバンドの幅は、任意に修正できる。たとえば、スペクトル100が多数のスペクトルピークを特徴とするときは、比較的広帯域の選択に基づいて広帯域蛍光スペクトルバンドを収集するのが有利となりうる。従って、第2の透過スペクトル成分のスペクトル幅は、第1の収集スペクトル成分のスペクトル幅から明らかに外れうる。原則として、スリット32の幅を広げることによって、収集される信号に対するバックグラウンド信号の寄与分が増加し、分光ピークの寄与分が減少する。
【0054】
また、走査モードで動作するとき、すなわち、スリット32が透過マスク26全体に沿って水平に移動するとき、スリット32の幅は全走査時間に大きな影響を及ぼす。スリット32が大きいほど、走査は速く実行できる。しかし、個別の分光ピークのスペクトルバンドの多数倍程度までスリット幅を広げると、スペクトルピーク104、106の強度を正確に測定することがもはや不可能となる。実用的な実施態様では、分光ピークのスペクトルバンド幅の数倍に一致するスリット幅を選択ことが妥当である。
【0055】
また、広帯域バックグラウンドは、スペクトル100のスペクトル域に修正を受けるかもしれないので、隣接して位置するスペクトルバンドを順次透過させ、検出するのが合理的である。従って、2つの順次のスリット位置の間隔は、できるだけ小さくなければならない。さもないと、第2の収集スペクトル成分は、先に収集されたスペクトル成分のバックグラウンドの寄与分から大きく外れるバックグラウンドに関するものとなりうるからである。スペクトル100の一般構成は大抵知られているので、広帯域バックグラウンドを表す少なくとも第2のスペクトル成分の選択は、スペクトル100の構成に基づいて効果的に実行することができる。例えば、スペクトル100が少なくとも2つの分光ピーク104、106を特徴とするということを知っていると、バックグラウンド信号を表す第2のスペクトル成分がピーク106と重なることを効果的に防止できる。
【0056】
図7は、2つの透過部27、29を特徴としている透過マスク26の他の実施形態を示し、各透過部分はそれぞれ複数のスリット34、36、38を特徴とする。ここで、各スリット34、36、38は、多変量光学分析のための専用のスペクトル成分に対応する。それゆえ、各スリット34、36、38は、入射光信号18のスペクトルの分光ピークの位置に対応する。2つの透過部分27、29は、それぞれ、回帰関数の正および負の部分を多変量光学分析のために提供するように構成される。各スリット34、36、38の幅が、対応する分光ピークの幅に一致することが好ましい。第1の構成において、透過マスク26がスリット34、36、38の水平位置に対応する分光ピークを有効に透過させる。
【0057】
このような方法で、正および負の回帰信号は、2つの垂直に配置された検出器によって、別々に検出できる。第1の検出器が第1の透過部分27で透過された光を検出する働きをし、第2の検出器が第2の透過部分29で透過された光を検出するように構成するのが好ましい。第2の構成において、スリット34、36、38の水平方向の位置が、第1の構成に対してわずかに移動し、対応する分光ピークを遮断し、広帯域蛍光バックグラウンドを表す隣接位置のスペクトルバンドを透過する。ここで、両透過部27、29は、空間光透過マスク26の適当な再構成によって、あるいは固定した透過パターンを移動することによって、例えば水平方向にマスク26全体を移動することによって、同時に移動できる。このようにして、回帰関数の正の部分および負の部分の各々のバックグラウンド信号を別々に得て、回帰関数の正の部分および負の部分を別々に補正することが可能となる。
【0058】
従って、本発明は、分光信号のバックグラウンド補正を可能にする第1および第2の信号を順次に収集する有効な手段を提供する。第1の収集光信号はバックグラウンドと分光寄与分を特徴とし、第2の光信号は第1の信号のバックグラウンド寄与分に一致するバックグラウンドのみを特徴とするのが好ましい。入射光信号18のさまざまなスペクトル成分の選択は、多変量光学素子を使用することによって、効果的に実行できる。特に、分光信号およびバックグラウンド信号の順次選択は、多変量光学素子を使用している既存の分光分析システムに、効果的に実装されることができる。広帯域バックグラウンドレベルを表すスペクトル成分の選択は、空間光透過マスクの再構成によって、あるいは、空間光透過マスク全体のわずかな移動によって、効果的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】血液分析システムの一実施例の概略図である、
【図2】(A)は、皮膚の血液から発生する光信号のスペクトルであり、(B)は溶液中に1つの検体を具えているサンプルから発生する光信号のスペクトルである。
【図3】多変量光学素子において、実装されるスペクトル重み関数である。
【図4】光学的分析システムの上面図説明を図式的に示す。
【図5】および空間光操作手段の上面図および切断面を図式的に示す。
【図6】スペクトルと組み合わせた空間光操作手段の正面図を示す。
【図7】2つの透過部分を有する多変量光学素子としての、空間光操作手段の実施を示す。
【符号の説明】
【0060】
1 光源
2 サンプル
3 ダイクロイックミラー
12 対物レンズ
18 光学ビーム
19 計算機
20 光学的分析システム
22 回折格子
24 スペクトル
26 透過マスク
27 透過部分
28 収束素子
29 透過部分
30 検出器
32、34、36、38 スリット
40 血液分析システム
100 スペクトル
102 広帯域蛍光バックグラウンド
104、106、108 ラマンバンド
110 混合スペクトル
112 グルコース・スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の主成分を決定するための光学的分析システムであって、
光信号のスペクトル成分を第1の方向に空間的に分離するための分散光学素子と、
第1の時間に、光信号の少なくとも第1のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過し、第2の時間に、光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を透過するための空間光操作手段と、
少なくとも第1および第2の透過されたスペクトル成分を検出するための検出器と、
少なくとも第1および第2の検出スペクトル成分に基づいて光信号の補正を実行するための処理手段と、
を具えることを特徴とする光学的分析システム。
【請求項2】
光信号の主成分を決定するための光学的分析システムであって、
光信号のスペクトル成分を第1の方向に空間的に分離するための分散光学素子と、
第1の時間に、光信号の少なくとも第1のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過し、第2の時間に、光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を透過するための空間光マニピュレータと、
少なくとも第1および第2の透過されたスペクトル成分を検出するための検出器と、
少なくとも第1および第2の検出スペクトル成分に基づいて光信号の補正を実行するための処理モジュールと、
を具えることを特徴とする光学的分析システム。
【請求項3】
前記空間光操作手段が、前記第1の方向に沿って移動可能であり、固定の透過開口をさらに具えることを特徴とする請求項1または2に記載の光学的分析システム。
【請求項4】
前記空間光操作手段が、再構成可能な空間光変調器を具えることを特徴とする請求項1または2に記載の光学的分析システム。
【請求項5】
前記空間光操作手段が、少なくとも第1のスリットを有する開口をさらに具え、前記少なくとも第1のスリットの幅が変更可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学的分析システム。
【請求項6】
前記空間光操作手段が、少なくとも第2のスリット開口をさらに具え、前記第1および第2のスリットが、前記第1の方向に沿って同時に移動可能であることを特徴とする請求項5に記載の光学的分析システム。
【請求項7】
前記再構成可能な空間光変調器が、前記第1の方向に沿って移動するスリット開口を形成するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学的分析システム。
【請求項8】
前記分散光学素子および前記空間光操作手段が多変量光学素子を形成し、前記空間光操作手段が液晶光変調器としてまたはデジタル・マイクロ・ミラーデバイスとして実現されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学的分析システム。
【請求項9】
人の血液の非侵襲性の分析を提供するように構成され、前記光信号の前記主成分が、前記血液の物質の濃度を表すことを特徴とする請求項1または2に記載の光学的分析システム。
【請求項10】
光学的分析システムの光信号の補正を実行する方法であって、
光信号のスペクトル成分を、分散光学素子によって、第1の方向に空間的に分離するステップと、
第1の時間に、光信号の少なくとも第1のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過し、第2の時間に、光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過するステップであって、第1および第2のスペクトル成分の部分的透過は空間光マニピュレータによって提供されるステップと、
少なくとも第1および第2の透過されたスペクトル成分を検出器で検出するステップと、
少なくとも第1および第2の検出されたスペクトル成分を、光信号の補正のために処理するステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項11】
第1の時間に、光信号の少なくとも第3のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過するステップと、
第2の時間に、光信号の少なくとも第4のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過するステップと、
少なくとも第1、第2、第3、および第4の透過されたスペクトル成分の比較に基づいて光信号の補正を実行するステップと、
を具えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
光信号が分散光学素子によってそのスペクトル成分に空間的に分解される光学的分析システムの光信号の補正を実行するためのコンピュータ・プログラム製品であって、外コンピュータ・プログラム製品は
第1の時間に光信号の少なくとも第1のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過するとともに第2の時間に光信号の少なくとも第2のスペクトル成分を少なくとも部分的に透過する空間光マニピュレータを制御し、
光信号の補正を実行するために、前記光信号の少なくとも第1および第2の透過されたスペクトル成分の検出に応じて、検出器により供給される少なくとも第1および第2の電気信号を処理する
ように構成されているコンピュータ・プログラム手段を具えることを特徴とするコンピュータ・プログラム製品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−510985(P2008−510985A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529084(P2007−529084)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052765
【国際公開番号】WO2006/021928
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】