説明

バックボードを備えた車両用シート

【課題】カバーを開けて収容物をシートバックの内部と外部との間で進退させているとき、異物の挟み込みを防止できるバックボードを備えた車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート1は、シートバック3の内部とシートバック3の外部とが連通する開口22を開閉させるカバー40が枢着されているバックボード20を備えている。このカバー40は、開口22の閉まる方向に付勢されている。そして、車両用シート1は、シートバック3の内部に収納されている収納物36がこの開口22から進出すると、この進出した収納物36によって付勢力に抗してカバー40が押し開けられる構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックボードを備えた車両用シートに関し、詳しくは、内部と外部とが連通する開口を開閉させるカバーが枢着されているバックボードを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバックの内部とシートバックの外部とが連通する開口を開閉させるカバーが枢着されているバックボードを備えた車両用シートが既に知られている。このシートバックの内部には、例えば、収納物であるディスプレイ(例えば、表示モニタ)が、この開口を介してシートバックの内部と外部とを進退可能に収納されている。これにより、ディスプレイをシートバックの内部に収納しているときには、カバーでディスプレイを隠すことができるため、ディスプレイを見栄えよく収納できる。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−352239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、カバーを開けてディスプレイをシートバックの内部から進出させている(引き出している)とき、これとは逆に、カバーを開けてディスプレイをシートバックの内部に退行させている(収納している)とき、ディスプレイとカバーとの間に隙間が形成されてしまうといった問題が発生していた。これにより、異物を挟み込んでしまうといった問題が発生していた。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、カバーを開けて収容物をシートバックの内部と外部との間で進退させているとき、異物の挟み込みを防止できるバックボードを備えた車両用シートを提供することである。
提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、内部と外部とが連通する開口を開閉させるカバーが枢着されているバックボードを備えた車両用シートであって、カバーは、開口の閉まる方向に付勢されており、内部に収納されている収納物がこの開口から進出すると、この進出した収納物によって付勢力に抗してカバーが押し開けられることを特徴とする構成である。
この構成によれば、収容物をシートバックの内部からシートバックの外部へと進出させるとき、カバーはディスプレイに追従しながら開き動作(開き方向への回転動作)を行うため、収容物とカバーとの間に形成される隙間が大きくなることがない。これにより、異物を挟み込んでしまうことがない。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバックボードを備えた車両用シートであって、カバーには、突起が形成されており、収納物には、突起が摺接可能なガイドが設けられていることを特徴とするバックボードを備えた車両用シート。
この構成によれば、カバーの開き動作(開き方向への回転)が収容物に追従するとき、常に、カバーの突起が収容物のガイドに追従する。そのため、この追従が確実に行われることとなり、結果として、異物の挟み込みを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るバックボードを備えた車両用シートのシートバックの背面側の分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の組み付け状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、ディスプレイの動きを示す模式図であり、ディスプレイがシートバックの内部に収納されている状態を示している。
【図4】図4は、図3のディスプレイが上昇している途中の状態を示している。
【図5】図5は、図4のディスプレイの上昇が完了した後に、チルトが始まった状態を示している。
【図6】図6は、図5のディスプレイのチルトが完了した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜6を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「車両用シート」の例として、「助手席1」を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、助手席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0011】
はじめに、図1〜3を参照して、本発明の実施例に係る助手席1の概略構成を説明する。この助手席1は、主として、シートクッション(図示しない)と、シートバック3とから構成されている。以下に、このシートバック3について詳述していく。なお、シートクッションは、公知の構成でよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0012】
シートバック3は、その骨格を成す略矩形枠状に形成されたバックフレーム10と、このバックフレーム10に正面と左右の側面とに包着状に組み付けられるクッションパッド(図示しない)と、このクッションパッドの表面をカバーリングする表皮(図示しない)と、このバックフレーム10の背面を覆うバックボード20とから構成されている。
【0013】
このシートバック3の内部には、表示装置30が収納されている。ここで、表示装置30について詳述すると、表示装置30は、バックフレーム10の背面にビスB1、B1、B1、B1によって留められる矩形状に形成されたベース32と、このベース32に対して上下方向にスライド可能なスライダ34と、このスライダ34にヒンジ結合されたディスプレイ36とから構成されている。
【0014】
このスライダ34は、モータ等の駆動手段とボールネジ等の動力伝達手段(いずれも図示しない)によってベース32に対して昇降可能となっている。このディスプレイ36の左右には、ガイド36a、36aが設けられている。また、このディスプレイ36の背面側(助手席1において、正面側)には、フック36bが設けられている。
【0015】
そして、スライダ34を上昇させていき、やがて、ディスプレイ36のフック36bがバックフレーム10に取り付けられているブラケット12に接触し始めると、ディスプレイ36がヒンジの軸回りに後ろ倒れ(チルト)し始める。これにより、後部座席(図示しない)の乗員にとって、ディスプレイ36を見易い角度に切り替えることができる。表示装置30は、このように構成されている。
【0016】
一方、バックボード20には、上述したように、スライダ34を上昇させたとき、ディスプレイ36をシートバック3の内部から外部へ進出させるための断面略L字状を成す開口22が形成されている。また、バックボード20には、この開口22を塞ぐためのカバー40が組み付けられている。
【0017】
ここで、カバー40について詳述すると、カバー40はバックボード20の開口22を覆うための部材であり、その左右の内面には、リブ42、42が形成されている。この両リブ42、42には、カバー40をバックボード20に組み付けるための金具50がビスB2、B2を介してそれぞれ組み付けられている。
【0018】
そして、この両金具50、50は、ピンPを介してバックボード20の開口22の縁に形成された取付座24、24にそれぞれ枢着されている。このとき、トーションばね52、52を介してそれぞれ枢着されているため、常時、開口22を閉じる方向にカバー40を付勢させることができる。
【0019】
また、この両リブ42、42には、上述したディスプレイ36の両ガイド36a、36aに摺接可能な第1の突起42aと第2の突起42bとがそれぞれ形成されている。カバー40は、このように構成されている。
【0020】
また、バックフレーム10の背面には、アシストグリップ60がバックボード20の開口22を介して突出する格好を成すようにビスB3、B3を介して組み付けられている。
【0021】
続いて、図3〜6を参照して、上述した構成から成る助手席1の作用を説明する。この説明をするにあたって、ディスプレイ36がシートバック3の内部に収納された状態(図3に示す状態であり、以下において、「収納状態」と記す)のときから説明する。この収納状態では、図3からも明らかなように、カバー40も閉じ状態となっている。
【0022】
この収納状態から、スライダ34を上昇させていく。すると、ディスプレイ36は、その両ガイド36a、36aがカバー40の両第2の突起42b、42bを押し当てながら上昇していくため、カバー40は、トーションばね52、52の付勢力に抗して、バックボード20の開口22が開く方向に回転していく。このように、両第2の突起42b、42bによって、カバー40の開き状態が保持される。
【0023】
さらに、スライダ34を上昇させていくと、ディスプレイ36は、その両ガイド36a、36aがカバー40の両第1の突起42a、42aをも押し当てながら上昇していく(図4参照)。さらに、スライダ34を上昇させていくと、両ガイド36a、36aによる両第2の突起42b、42bの押し当てが解消され、両第1の突起42a、42aのみが押し当てられる。このとき、両第1の突起42a、42aによって、カバー40の開き状態が保持される。
【0024】
やがて、ディスプレイ36がシートバック3の外部に進出すると、上述したように、ディスプレイ36のフック36bがバックフレーム10のブラケット12に接触するため、スライダ34のみが上昇していき、ディスプレイ36はヒンジの軸回りに後ろ倒れしていく(図5参照)。このとき、カバー40は、その第1の突起42a、42aがディスプレイ36の両ガイド36a、36aの下縁に接した状態で開き状態に保持されている。
【0025】
やがて、スライダ34の上昇が終了すると、ディスプレイ36の後ろ倒れも終了するため、ディスプレイ36が使用可能状態に保持される(図6参照)。このとき、ディスプレイ36の後ろ倒れに沿って、カバー40の両第1の突起42a、42aはディスプレイ36の両ガイド36a、36の下縁に摺接するため、カバー40もバックボード20の開口22を閉じ方向に回動していく。このようにして、ディスプレイ36を収納状態から使用可能状態へと切り替えることができる。
【0026】
次に、これとは逆に、ディスプレイ36を使用可能状態から収納状態へと戻す場合、スライダ34を下降させていけばよい。すると、ディスプレイ36とカバー40は上述した説明と逆の動作をしていくため、スライダ34の下降が終了すると、ディスプレイ36も収納状態へと戻されると共にカバー40も閉じ状態へと戻される。このようにして、ディスプレイ36を使用可能状態から収納状態へと戻すことができる。
【0027】
本発明の実施例に係る助手席1は、上述したように構成されている。この構成によれば、ディスプレイ36を収納状態から使用可能状態へと切り替えるとき、カバー40はディスプレイ36に追従しながら開き動作(開き方向への回転動作)を行うため、ディスプレイ36とカバー40との間に形成される隙間が大きくなることがない。これにより、異物を挟み込んでしまうことがない。
【0028】
また、この構成によれば、カバー40がディスプレイ36に追従するとき、常に、カバー40の第1の突起42aと第2の突起42bの少なくとも一方の突起がディスプレイ36の両ガイド36a、36aに追従する。そのため、この追従が確実に行われることとなり、結果として、異物の挟み込みを確実に防止できる。
【0029】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、「車両用シート」の例として、「助手席1」を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、例えば、「運転席」であっても構わない。
【0030】
また、実施例では、カバー40がディスプレイ36に追従するとき、カバー40に形成の第1の突起42a、42aと第2の突起42b、42bとがディスプレイ36の両ガイド36a、36aを追従する構成を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、カバー40そのものがディスプレイ36そのものを追従する構成でも構わない。その場合、上述した突起42a、42bおよびガイド36aは不要となる。
【符号の説明】
【0031】
1 助手席(車両用シート)
20 バックボード
22 開口
36 ディスプレイ(収納物)
36a ガイド
40 カバー
42a 第1の突起
42b 第2の突起



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部と外部とが連通する開口を開閉させるカバーが枢着されているバックボードを備えた車両用シートであって、
カバーは、開口の閉まる方向に付勢されており、
内部に収納されている収納物がこの開口から進出すると、この進出した収納物によって付勢力に抗してカバーが押し開けられることを特徴とするバックボードを備えた車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載のバックボードを備えた車両用シートであって、
カバーには、突起が形成されており、
収納物には、突起が摺接可能なガイドが設けられていることを特徴とするバックボードを備えた車両用シート。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−235842(P2011−235842A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111071(P2010−111071)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】