説明

バッテリフォークリフトのバッテリ固定装置

【課題】より確実かつ実用的にバッテリの脱落防止を行い得るバッテリフォークリフトのバッテリ固定装置を提供する。
【解決手段】本発明のバッテリ固定装置は、車体1から常態において垂直に延びてバッテリ搭載室を形成し、固定穴1bが貫設された固定フレーム1aと、ロック穴10eと係合溝10dとが形成され、固定穴1b内で出没可能なストッパ部材10と、固定フレーム1aに揺動可能に設けられ、一方向側への揺動によってロック穴10eと係合可能なロックアーム12とを備えている。ストッパ部材10がバッテリ搭載室に突出した状態では、係合溝10dがバッテリケース9と係合しつつ、ロックアーム12がロック穴10eに係合する。ロックアーム12とロック穴10eとの係合が外され、かつ係合溝10dとバッテリケース9との係合が外されてストッパ部材10がバッテリ搭載室から引き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリフォークリフトのバッテリ固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリフォークリフトは車体のバッテリ搭載室内にバッテリケースが搭載されている。バッテリケースにはバッテリが搭載されている。このバッテリフォークリフトに用いられる従来のバッテリ固定装置として、特許文献1開示のものが知られている。
【0003】
このバッテリ固定装置は、固定フレームとピンとを備えている。固定フレームは車体から常態(通常の状態)において垂直に延びてバッテリ搭載室を形成している。この固定フレームには、固定穴が貫設されている。ピンは固定フレームの固定穴内に嵌合可能とされている。ピンには係合溝が形成されている。
【0004】
このバッテリ固定装置では、ピンを固定フレームの固定穴に嵌合すれば、ピンの係合溝がバッテリケースと係合可能になる。このため、バッテリがバッテリケースとともに脱落することが防止される。また、バッテリの交換の際にピンを固定穴から抜き取れば、バッテリケースがピンの係合溝と係合することがなくなる。このため、車体からバッテリケースを取り外すことが可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−55049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のバッテリ固定装置は、固定フレームの固定穴に対し、ピンの位置がずれてしまうおそれがある。その場合、ピンの位置ずれによってバッテリが脱落してしまうことのないよう、複雑な構造が必要になる。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、より確実かつ実用的にバッテリの脱落防止を行い得るバッテリフォークリフトのバッテリ固定装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバッテリフォークリフトのバッテリ固定装置は、車体のバッテリ搭載室内にバッテリケースが搭載され、該バッテリケースにバッテリが搭載されたバッテリフォークリフトに用いられるバッテリフォークリフトのバッテリ固定装置において、
前記車体から常態において垂直に延びて前記バッテリ搭載室を形成し、固定穴が貫設された固定フレームと、
ロック部と係合溝とが形成され、該固定穴内で出没可能なストッパ部材と、
該固定フレームに揺動可能に設けられ、一方向側への揺動によって該ロック部と係合可能なロックアームとを備え、
該ストッパ部材が該バッテリ搭載室に突出した状態では、該係合溝が該バッテリケースと係合しつつ、該ロックアームが該ロック部に係合し、
該ロックアームと該ロック部との係合が外され、かつ該係合溝と該バッテリケースとの係合が外されて該ストッパ部材が該バッテリ搭載室から引き込まれるように構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このバッテリ固定装置では、固定フレームの固定穴からバッテリ搭載室にストッパ部材を突出させれば、ストッパ部材の係合溝がバッテリケースと係合可能になる。この状態において、ロックアームをストッパ部材のロック部に係合すれば、ストッパ部材は、固定穴に対してずれず、バッテリ搭載室から引き込まれることがない。このため、バッテリがバッテリケースとともに脱落することが確実に防止される。
【0010】
また、バッテリの交換の際には、ロックアームとストッパ部材のロック部との係合を外し、ストッパ部材をバッテリ搭載室から固定穴に引き込む。これによりバッテリケースがストッパ部材の係合溝と係合することがなくなる。このため、車体からバッテリケースを取り外すことが可能になる。
【0011】
したがって、本発明のバッテリ固定装置では、より確実かつ実用的にバッテリの脱落防止を実現することができる。
【0012】
ストッパ部材は固定穴から脱落不能に設けられていることが好ましい(請求項2)。この場合には、ストッパ部材を誤って固定フレームの固定穴から抜き取ってしまうことがないため、バッテリの交換後に繰り返してバッテリの脱落防止を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例の産業車両は、図1に示すように、三輪のバッテリフォークリフトである。
【0014】
このバッテリフォークリフトは、その車体1の前部に左右一対の駆動輪2を備え、車体1の後部中央に2本のタイヤをもつ一つの操舵輪3を備えている。また、バッテリフォークリフトは、車体1の前側にマスト装置4を備えている。車体1上には運転席5が設けられており、運転席5の下には、図2及び図3に示すように、バッテリ9aを収納したバッテリケース9が設けられている。バッテリケース9は常態では図示しないフードによって隠蔽されている。図1に示すように、運転席5の前方にはステアリングホイール6等が設けられており、運転席5の周りにはフロントピラー7及びリヤピラー8が設けられている。
【0015】
図3〜5に示すように、車体1は運転席5の後方で常態において垂直に延びる固定フレーム1aを有している。固定フレーム1aには常態において水平方向に延びる矩形の固定穴1bが貫設されている。
【0016】
固定穴1b内には板状のストッパ部材10が出没可能に設けられている。ストッパ部材10は、本体10aと、本体10aからバッテリケース9側で左右に張り出す鍔10b、10cとからなる。本体10aは固定穴1b内を摺動可能であるが、鍔10b、10cは固定穴1b内に押し込まれることはない。本体10aのバッテリケース9側の底面には、全幅方向に延びる係合溝10dが凹設されている。また、本体10aのバッテリケース9から遠い部分にはロック穴10eが貫設されている。ロック穴10eは本体10aの幅方向に延びる矩形をなしている。さらに、本体10aには、図5に示すように、ロック穴10eの近くにボルト穴10fが貫設されている。ボルト穴10fには、図6及び図7に示すように、底面からボルト11が螺合されている。
【0017】
図4及び図5に示すように、固定フレーム1aには常態において水平に突出するピン1cが固定されている。固定フレーム1aの裏面であるバッテリケース9から離れた面側には略Lの字状をなすロックアーム12が設けられている。ロックアーム12にはピン1cと整合するピン穴12aが形成されている。ピン穴12aにピン1cを差し込み、この状態で止めピン13をピン1cの穴1dに差し込むことにより、ロックアーム12が固定フレーム1aに対してピン穴12aを基点に揺動可能とされている。ロックアーム12は、ピン1cから離れた一端に断面が矩形の係合片12bを有し、ピン1cに近い他端に押圧片12cを有している。
【0018】
以上の固定フレーム1a、ストッパ部材10、ロックアーム12及びボルト11等によりバッテリ固定装置が構成されている。
【0019】
このバッテリ固定装置では、図6に示すように、固定フレーム1aの固定穴1bからバッテリケース9側にストッパ部材10を突出させれば、ストッパ部材10の係合溝10dがバッテリケース9と係合可能になる。この状態において、ロックアーム12を揺動させ、その係合片12bをストッパ部材10のロック穴10eに係合すれば、ストッパ部材10は、固定穴1bに対してずれず、バッテリ搭載室から引き込まれることがない。このため、バッテリ9aがバッテリケース9とともに脱落することが確実に防止される。
【0020】
押圧片12cを指で押してロックアーム12を逆に揺動させ、係止片12bとストッパ部材10のロック穴10eとの係合を外し、この状態でストッパ部材10をバッテリケース9側により大きく突出させようとしても、ボルト11が干渉することによってストッパ部材10の移動が阻止される。このため、ストッパ部材10を誤って固定フレーム1aの固定穴1bから抜き取ってしまうことがない。
【0021】
また、バッテリ9aの交換の際、図7に示すように、押圧片12cを指で押してロックアーム12を逆に揺動させ、係止片12bとストッパ部材10のロック穴10eとの係合を外す。この状態でストッパ部材10をバッテリ搭載室から固定穴1bに引き込む。これによりバッテリケース9がストッパ部材10の係合溝10dと係合することがなくなる。このため、車体1からバッテリケース9を取り外すことが可能になる。
【0022】
ストッパ部材10を固定穴1b内により引き込もうとしても、鍔10b、10cが干渉することによってストッパ部材10の移動が阻止される。このため、このときもストッパ部材10を誤って固定フレーム1aの固定穴1bから抜き取ってしまうことがない。
【0023】
したがって、このバッテリ固定装置では、より確実かつ実用的にバッテリ9aの脱落防止を実現することができる。また、このバッテリ固定装置では、ストッパ部材10が固定穴1bから脱落不能にされているため、バッテリ9aの交換後に繰り返してバッテリ9aの脱落防止を実現することができる。
【0024】
また、このバッテリ固定装置は、固定フレーム1aが運転席5の後方に設けられているため、運転者の邪魔になることもない。
【0025】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、ロック穴10eは溝として構成されることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明はバッテリフォークリフトに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例のバッテリフォークリフトの側面図である。
【図2】実施例のバッテリフォークリフトの一部斜視図である。
【図3】実施例のバッテリフォークリフトに係り、フード等を外した状態の一部斜視図である。
【図4】実施例のバッテリフォークリフトに係り、要部の斜視図である。
【図5】実施例のバッテリフォークリフトに係り、要部の分解斜視図である。
【図6】実施例のバッテリフォークリフトに係り、バッテリケースを固定している状態の要部断面図である。
【図7】実施例のバッテリフォークリフトに係り、バッテリケースを外そうとしている状態の要部断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…車体
9…バッテリケース
9a…バッテリ
1b…固定穴
1a…固定フレーム
10e…ロック部(ロック穴)
10d…係合溝
10…ストッパ部材
12…ロックアーム
11…ボルト
10b、10c…鍔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のバッテリ搭載室内にバッテリケースが搭載され、該バッテリケースにバッテリが搭載されたバッテリフォークリフトに用いられるバッテリフォークリフトのバッテリ固定装置において、
前記車体から常態において垂直に延びて前記バッテリ搭載室を形成し、固定穴が貫設された固定フレームと、
ロック部と係合溝とが形成され、該固定穴内で出没可能なストッパ部材と、
該固定フレームに揺動可能に設けられ、一方向側への揺動によって該ロック部と係合可能なロックアームとを備え、
該ストッパ部材が該バッテリ搭載室に突出した状態では、該係合溝が該バッテリケースと係合しつつ、該ロックアームが該ロック部に係合し、
該ロックアームと該ロック部との係合が外され、かつ該係合溝と該バッテリケースとの係合が外されて該ストッパ部材が該バッテリ搭載室から引き込まれるように構成されていることを特徴とするバッテリフォークリフトのバッテリ固定装置。
【請求項2】
前記ストッパ部材は前記固定穴から脱落不能に設けられている請求項1記載のバッテリフォークリフトのバッテリ固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149939(P2010−149939A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326702(P2008−326702)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】