説明

バッテリーパック

【課題】遮断装置等の補機を確実に保護することができるバッテリーパックを提供する。
【解決手段】本発明に係るバッテリーパック13は、車体下部に配設されると共に、その上面に車両上方に突出する前側凸部27および該前側凸部27よりも低く形成された中央側凹部29を有する。そして、この中央側凹部29に遮断装置25を配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に搭載されるバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電気自動車には、バッテリーモジュールを内方に収容したバッテリーパックが搭載されている。このバッテリーパックをメンテナンス等する場合には、安全性を確保するために、バッテリーパックの電気的接続を遮断するための遮断装置を用いる技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された遮断装置は、周囲をブーツ部材によって囲むことによって保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−83601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記背景技術においては、バッテリーパックの比較的高い位置に遮断装置を配設しているため、車体とバッテリーパックとの間に小石などの異物が侵入しようとすると、ブーツ部材を介して遮断装置に当たるおそれがあった。従って、ブーツ部材で遮断装置を保護しても、異物からの衝撃力がブーツ部材を介して遮断装置に伝達されて該遮断装置が損傷を受けるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、遮断装置等の補機を確実に保護することができるバッテリーパックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバッテリーパックは、車体下部に配設されると共に、上面に、車両上方に突出する凸部と前記凸部よりも低く形成された凹部とを備え、この凹部に補機を配設したことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るバッテリーパックによれば、補機が配設される凹部よりも高い凸部が形成されているため、仮に異物がバッテリーパックに向けて飛んできても、凸部が防護壁の機能を発揮するので、凹部への侵入を阻止することができる。これによって、補機を効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るバッテリーパックを配設した車両を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバッテリーパックを示す斜視図である。
【図3】上面カバーを取り外した状態のバッテリーパックを示す斜視図である。
【図4】保持部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。各図中、FRは車両前後方向前方、WDは車幅方向を示すものとする。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリーパックを配設した車両を概略的に示す側面図である。
【0011】
車両1の前部には、モータ等が収容されたフロントコンパートメント3が設けられており、該フロントコンパートメント3の車両後方には、車室5が設けられている。
【0012】
この車室5の内部には、前側にフロントシート7が配設され、後側にリアシート9が配設されている。車室5の前部からフロントシート7近傍に至るまで、車幅方向中央部にフロアトンネル部11が形成され、フロントシート7およびリアシート9の下方には、本実施形態に係るバッテリーパック13が配設されている。このバッテリーパック13においては、パック底面15の上に、第1のバッテリーモジュール17、第2のバッテリーモジュール19、第3のバッテリーモジュール21および遮断装置25が車両前後方向に沿って並設されている。そして、これらのバッテリーモジュール17,19,21および遮断装置25を覆うように上面カバー23が設けられている。
【0013】
図2は本発明の実施形態に係るバッテリーパックを示す斜視図、および、図3は上面カバーを取り外した状態のバッテリーパックを示す斜視図である。
【0014】
これらの図2,3に示すように、バッテリーパック13は、下側に配置されたパック底面15と、該パック底面15の上に載置された第1のバッテリーモジュール17、第2のバッテリーモジュール19、第3のバッテリーモジュール21および遮断装置(補機)25と、これらのバッテリーモジュール17〜21および遮断装置25を覆う上面カバー23とを備えている。
【0015】
図2に示すように、前記パック底面15の外周縁には、バッテリーパック13を図外のボルトを介して車体部材に取り付ける取付ブラケットが設けられている。具体的には、車両前側には前側取付ブラケット41が設けられ、車両側方には左右一対の側方側取付ブラケット43が設けられ、車両後方側には後方側取付ブラケット45が設けられている。
【0016】
また、上面カバー23の前部には、車両前方側に配置されて上方に凸状に形成された前側凸部(凸部)27が設けられ、該前側凸部27の車両後方側で、車両前後方向の中央部には前側凸部27よりも高さが低い中央側凹部29が設けられ、中央側凹部29の車両後方側には前記前側凸部27および中央側凹部29よりも高く形成された後側凸部31が設けられている。そして、上面カバー23の中央側凹部29には、矩形状の開口部33が形成されており、該開口部33から遮断装置25が突出している。
【0017】
前記前側凸部27は、偏平状の直方体に形成されており、車両前側に配置されて車幅方向に延びる前壁面27aと、車幅方向両側に配置されて車両前後方向に延びる側壁面27bと、車両後側に配置されて車幅方向に延びる後壁面27cと、これらの前壁面27a、側壁面27bおよび後壁面27cを上側から覆うように配設された上壁面27dと、から画成されている。なお、パック底面15の車両前側には、車幅方向に延びるフランジ部41aが、前側取付ブラケット41の後端から立設されている。
【0018】
さらに、上面カバー23の後側凸部31も、偏平状の直方体に形成されており、車両前側に配置されて車幅方向に延びる前壁面31aと、車幅方向両側に配置されて車両前後方向に延びる側壁面31bと、車両後側に配置されて車幅方向に延びる後壁面31cと、これらの前壁面31a、側壁面31bおよび後壁面31cを上側から覆うように配設された上壁面31dと、から画成されている。前壁面31aは、後方斜め上方にやや傾斜して延びており、中央側凹部29との境部分にリブ59が車幅方向に間隔をおいて4つ配設されている。
【0019】
また、中央側凹部29は、前側凸部27の後壁面27cと底面29aと後側凸部31の前壁面31aと、から画成されている。
【0020】
さらに、図3に示すように、第1および第2のバッテリーモジュール17,19は、薄く扁平な直方体状に形成された同一形状の複数のバッテリー16が上下方向に複数積重されており、第3のバッテリーモジュール21はバッテリー16が左右方向に並設されている。
【0021】
第1のバッテリーモジュール17においては、上下に4枚が積重された状態で左右両側に所定間隔をおいて配置されている。第2のバッテリーモジュール19においては、上下2枚が積重された状態で左右に所定間隔をおいて配置されている。第3のバッテリーモジュール21は、バッテリー16を車幅方向に並設して構成している。従って、左右のバッテリーモジュール17,17および19,19の間には、隙間が形成されており、第2のバッテリーモジュール19,19の間には、保持部材47が配設され、該保持部材47の上に遮断装置25が載置されている。また、バッテリーモジュール17〜21からは、複数の配線57が配索されており、第1のバッテリーモジュール17と第2のバッテリーモジュール19からの配線57と、第3のバッテリーモジュール21からの配線57とは、遮断装置25を介して電気的に接続されている。
【0022】
このように、第1〜第3のバッテリーモジュール17,19,21の高さについて、第2のバッテリーモジュール19が最も低く、次いで第1のバッテリーモジュール17が高く、第3のバッテリーモジュール21が最も高く形成されている。即ち、高さ関係は、第2のバッテリーモジュール19<第1のバッテリーモジュール17<第3のバッテリーモジュール21の順に高く形成されている。ここで、図2に示すように、前側凸部27内には第1のバッテリーモジュール17が収容され、中央側凹部29内には第2のバッテリーモジュール19が収容され、後側凸部31内には第3のバッテリーモジュール21が収容されている。従って、上面カバー23の形状は、バッテリーパック13の内部に収容するバッテリーモジュール17,19,21の高さに対応して形成されている。
【0023】
図4は、本発明の実施形態に係る保持部材を示す斜視図である。
【0024】
保持部材47は、パック底面15にボルト51を介して締結されると共に上方に延設された4本の脚部49と、該脚部49上に支持された平板状の棚面53と、から構成されている。このように、保持部材47は、パック底面15から所定高さの位置に棚面53が配置されている。一方、遮断装置25は、下側に配置された底壁部38と、該底壁部38に取り付けられた本体部35と、該本体部35に支軸39を介して回動可能に軸支された操作レバー37と、を備えている。操作レバー37を把持して上方に持ち上げると、支軸39を中心として回動し、バッテリーパック13の電気的接続が遮断されるように構成されている。
【0025】
以下に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)本実施形態に係るバッテリーパック13は、車体下部に配設されると共に、その上面に車両上方に突出する前側凸部27(凸部)および該前側凸部27よりも低く形成された中央側凹部29(凹部)を有する。この中央側凹部29を前側凸部27の車両後方側に配置し、この中央側凹部29に遮断装置25(補機)を配設している。
【0026】
従って、車両走行中に前側から飛んできた小石などの異物が遮断装置25に当たることを効果的に防止することができる。
【0027】
即ち、図2に示すように、上面カバー23における前側凸部27の前壁面27aとフランジ部41aとによって、異物の衝突を阻止する防護壁を構成するため、仮に異物が前方からバッテリーパック13に向けて飛んできても、前壁面27aとフランジ部41aとによって、中央側凹部29への侵入を阻止することができる。これによって、遮断装置25を効果的に保護することができる。
【0028】
(2)前側凸部27と後側凸部31とを車両前後方向に所定間隔をおいて配置し、これらの凸部同士27,31の間に前記中央側凹部29を設けている。従って、車両が前進する場合のみならず後進する場合にも、異物から遮断装置25を効果的に保護することができる。即ち、後進する場合には、後側凸部31の後壁面31cによって防護壁を形成するため、仮に異物が後方からバッテリーパック13に向けて飛んできても、後側凸部31の後壁面31cによって中央側凹部29への侵入を阻止することができる。これによって、遮断装置25を効果的に保護することができる。
【0029】
なお、上述の実施形態に限定されることはなく、例えば車幅方向に凸部、凹部とを設け、車幅方向からの異物侵入を阻止するように構成することなども可能である。
【0030】
(3)前記上面の前側凸部27、後側凸部31および中央側凹部29は、バッテリーパック13内に収容されたバッテリーモジュール17,19,21の高さに対応して形成されている。従って、上面カバー23の上方への突出高さを極力低く抑えて、バッテリーパック13自体の厚さも薄く形成することができる。
【0031】
(4)なお、補機として遮断装置25を中央側凹部29に配設した。この遮断装置25は、バッテリーパック13の電気的接続を遮断可能にする重要な部品であるため、この遮断装置25を保護することで、バッテリーパック13の機能を確実に保つことができる。
【符号の説明】
【0032】
13…バッテリーパック
17…第1のバッテリーモジュール(バッテリーモジュール)
19…第2のバッテリーモジュール(バッテリーモジュール)
21…第3のバッテリーモジュール(バッテリーモジュール)
23…上面カバー(上面)
25…遮断装置(補機)
27…前側凸部(凸部)
29…中央側凹部(凹部)
31…後側凸部(凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部に配設されると共に、その上面に車両上方に突出する凸部および該凸部よりも低く形成された凹部を有するバッテリーパックであって、
前記凹部に補機を配設したことを特徴とするバッテリーパック。
【請求項2】
前記上面に形成された凹部を前記凸部の車両後方側に配置したことを特徴とする請求項1に記載のバッテリーパック。
【請求項3】
前記凸部を車両前後方向に所定間隔をおいて複数設け、これら複数の凸部同士の間に前記凹部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリーパック。
【請求項4】
前記上面の凸部と凹部は、バッテリーパック内に収容されたバッテリーモジュールの高さに対応して形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のバッテリーパック。
【請求項5】
前記補機は、それぞれのバッテリーモジュールに接続される配線の電気的接続を遮断する遮断装置であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のバッテリーパック。
【請求項6】
前記凹部は前記バッテリーパックの中央に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のバッテリーパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−23292(P2011−23292A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169010(P2009−169010)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】