説明

バランシスリンダ装置及びその調心方法

【課題】簡素な構成で、ピストンとシリンダとが正確に同軸に位置するように調心を行うことができるバランスシリンダ装置及びその調心方法を提供する。
【解決手段】ピストン4をコラム3に対して相対移動可能にするとともにシリンダ室81を大気開放させた状態で、ピストン4に設けられた軸受エア供給管7から、ピストン4の外周面41に形成された空気軸受44に圧縮空気を供給することによって、ピストン4とシリンダ5との間の嵌合隙間85の全周に亘って均等に自動調心する。自動調心後に、締結手段42を締結してピストン4のコラム3に対する相対移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に装架されるバランスシリンダ装置及びその調心方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のワークや工具を保持する移動体を移動装置により上下移動させるにあたり、バランスシリンダ装置は、移動体に常に適当な上向きの力を付与して、移動体の重量の全て又は一部とバランスさせるものである。移動体は、バランスシリンダ装置のシリンダ及びピストンの一方に固定され、基台は、シリンダ及びピストンの他方に固定されている。ピストンとシリンダとの間に形成されているシリンダ室には、圧力エアが供給される。圧力エアのシリンダ室への供給量を増減させることにより、シリンダ室が拡大縮小されて、基台に対する移動体の上下移動量が調整される(特許文献1)。
【0003】
ところで、ワークに精密な加工をする場合には、工具とワークとの相対位置を高精度に調整する必要がある。このため、ピストンの外周面とシリンダの内周面との間は、非接触であることが望まれる。このような非接触バランスシリンダ装置においては、ピストンとシリンダとの間の隙間からのエア流出量を少なくするために、当該隙間の幅が20〜30μmと非常に狭く設定されている。それゆえ、ピストンとシリンダとの相対位置が僅かでも同軸上からずれた状態で、ピストン及びシリンダが超精密加工用の加工機械に組みつけられると、ピストンとシリンダとが接触するおそれがある。ピストンとシリンダとの接触を防止するために、ピストン及びシリンダを加工機械に組み付ける際には、ピストンとシリンダとが正確に同軸に位置するようにバランスシリンダ装置の調心を行う必要がある。したがって、ピストン及びシリンダの組み付け作業は、非常に難易度の高い作業であった。
【特許文献1】特開2004−209550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、ピストンとシリンダとが正確に同軸に位置するように調心を行うことができるバランスシリンダ装置及びその調心方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明であるバランスシリンダ装置の調心方法は、工作機械の基台に上下方向に移動可能に装架され移動手段により昇降される移動部材に、シリンダ装置のピストン及びシリンダの一方が固定され、前記ピストン及びシリンダの他方が締結手段により基台に固定され、前記ピストンと前記シリンダとの間に形成されるシリンダ室に圧力流体を供給して前記移動部材の重量を支持するバランスシリンダ装置の前記ピストンと前記シリンダとを調心する方法において、前記締結手段を緩めて前記基台と前記ピストン及びシリンダの他方との相対移動を許容させるとともに、前記ピストンと前記シリンダとの嵌合する前記ピストンの外周面又は前記シリンダの内周面に形成された空気軸受に圧縮空気を供給して、前記ピストンと前記シリンダとの間の嵌合隙間を全周に亘って均等に自動調心する調心工程と、前記自動調心後に、前記締結手段を締結させて、前記基台と前記ピストン及びシリンダの他方との相対移動を規制する締結工程と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記シリンダにおける前記シリンダ室に対面している部分には、前記自動調心時に前記シリンダ室を開放させる開口部と、該開口部を開閉可能に閉止する蓋体とを設け、前記調心工程において、前記蓋体を開けて前記シリンダ室を大気開放させることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、前記調心工程においては、前記シリンダ又は前記ピストンに形成され前記シリンダ室に前記圧力流体を供給する流体供給管を大気開放させることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明であるバランスシリンダ装置は、工作機械の基台に上下方向に移動可能に装架され移動手段により昇降される移動部材に、シリンダ装置のピストン及びシリンダの一方が固定され、前記ピストン及びシリンダの他方が基台に固定され、前記ピストンと前記シリンダとの間に形成されるシリンダ室に圧力流体を供給して前記移動部材の重量を支持するバランスシリンダ装置において、前記ピストンと前記シリンダとの嵌合する前記ピストンの外周面又は前記シリンダの内周面に形成され圧縮空気を供給されて前記ピストンと前記シリンダとの間の嵌合隙間を全周に亘って均等に自動調心する空気軸受と、前記空気軸受による自動調心時は前記基台と前記ピストン及びシリンダの他方との相対移動を許容し、前記自動調心後に締結されて前記相対移動を規制する締結手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は、前記シリンダにおける前記シリンダ室に対面している部分には、前記自動調心時に前記シリンダ室を開放させる開口部と、該開口部を開閉可能に閉止する蓋体とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
前記請求項1に係る発明によれば、ピストン及びシリンダの他方を基台に対して相対移動を許容しながら、ピストンの外周面又はシリンダの内周面に形成された空気軸受に圧縮空気を供給することによって、ピストンとシリンダとの間の嵌合隙間を全周に亘って均等にしている。このため、ピストンとシリンダとが正確に同軸に位置するように、バランスシリンダ装置の調心を行うことができる。
【0011】
また、バランスシリンダ装置の調心を行うにあたっては、空気軸受から嵌合隙間に圧縮空気を供給するだけでよく、容易で手間がかからない。
【0012】
前記請求項2に係る発明によれば、蓋体を開けてシリンダの開口部を開口させると、シリンダ室が大気開放されて、シリンダ室のエア圧が低くなる。この状態で、圧縮空気を空気軸受に供給することによって、圧縮空気がシリンダ室で押し戻されることなく、シリンダ室から嵌合隙間へ逆流することを防止できる。ゆえに、嵌合隙間に、空気軸受から嵌合隙間の軸方向両端に向けて、圧縮空気のスムーズな流れを形成できる。したがって、嵌合隙間を全周に亘ってより一層均等にすることができる。
【0013】
前記請求項3に係る発明によれば、調心工程においては、流体供給管を大気開放している。このため、嵌合隙間からシリンダ室に流通してきた圧縮空気が、流体供給管を通じて大気側へ導出される。それゆえ、シリンダ室を大気開放させることができ、シリンダ室から嵌合隙間への圧縮空気の逆流を防止できる。ゆえに、嵌合隙間に圧縮空気のスムーズな流れを形成することができる。したがって、嵌合隙間を全周に亘ってより一層均等にすることができる。
【0014】
前記請求項4に係る発明によれば、ピストンの外周面又はシリンダの内周面に、空気軸受を形成している。このため、ピストン及びシリンダの他方を基台に対して相対移動可能としながら、空気軸受に圧縮空気を供給することによって、ピストンとシリンダとの間の嵌合隙間を全周に亘って均等に自動調心することができる。従って、ピストンとシリンダとを正確に同軸に位置させることができる。
【0015】
また、自動調心するにあたっては、ピストン及びシリンダの少なくとも一方に空気軸受を設けるだけでよく、簡素な構成である。
【0016】
前記請求項5に係る発明によれば、蓋体を開けてシリンダの開口部を開口させると、シリンダ室は、大気開放されて、エア圧が低くなる。この状態で、圧縮空気を空気軸受に供給することによって、シリンダ室から嵌合隙間への圧縮空気の逆流を防止でき、嵌合隙間に圧縮空気のスムーズな流れを形成できる。したがって、嵌合隙間を全周に亘ってより一層均等にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るバランスシリンダ装置は、加工機械としての超精密加工装置のワーク移動装置に装備されている。図1、図2に示すように、超精密加工装置9は、ベッド2と、ワークWをY軸及びZ軸上に移動させ、C軸周りに回転させるワーク移動装置91と、工具TをX軸上に移動させ、B軸周りに回転させる工具移動装置92とを備えている。
【0018】
ワーク移動装置91は、ベッド2上に装架されZ軸方向に移動可能なテーブル90と、テーブル90に立設された基台としてのコラム3と、コラム3に装架されY軸方向に移動可能な移動部材としてのスライドテーブル93と、スライドテーブル93に固定された主軸ヘッド94と、主軸ヘッド94にC軸回りに回転可能に支持され、先端にワークWを保持するチャックが設けられた主軸99とをもつ。
【0019】
ベッド2は、Z軸方向に延設されたZ軸リニアモータマグネット(図示略)及びZ軸ガイド23、並びにX軸方向に延設されたX軸リニアモータマグネット(図示略)及びX軸ガイド22を備えている。Z軸、X軸はいずれも平面方向で、互いに直交している。
【0020】
テーブル90には、ベッド2上のZ軸リニアモータマグネットと対向配置されたZ軸リニアモータコイル(図示略)と、ベッド2上のZ軸ガイド23に移動可能に支承された滑動体(図示略)とが固定されている。Z軸リニアモータコイルに通電することにより、テーブル90は、Z軸ガイド23にガイドされながらZ軸方向に移動する。
【0021】
コラム3は、テーブル90に立設した立設部31と、立設部31の側面に固定された側部32とを有する。図1に示すように、コラム3の側部32には、Y軸リニアモータマグネット98a及びY軸ガイド98bがY軸方向(上下方向)に延設されている。また、スライドテーブル93には、Y軸リニアモータマグネット98a及びY軸ガイド98bにそれぞれ対向配置されたY軸リニアモータコイル98c及び滑動体98dが配設されている。Y軸リニアモータコイル98cに通電することにより、スライドテーブル93は、滑動体98bを介してY軸ガイド98bにガイドされながらY軸方向に移動する。上記Y軸リニアモータマグネット98a、Y軸ガイド98b、Y軸リニアモータコイル98c及び滑動体98dは、スライドテーブル93をY軸方向に移動させる移動手段98を構成している。
【0022】
また、図2,図3に示すように、コラム3の側部32の上には、スライドテーブル93の重量を支持するバランスシリンダ装置1が配設されている。バランスシリンダ装置1は、コラム3の側部32上に固定されたピストン4と、スライドテーブル93の側面に固定されたシリンダ5と、ピストン4の内部に配設された流体供給管としてのシリンダエア供給管6と、ピストン4の内部に配設された軸受エア供給管7とをもつ。
【0023】
ピストン4は、円柱形状を呈しており、その軸方向は、超精密加工装置9のY軸方向(上下方向)に一致している。そして、ピストン4の軸方向基端部には、径方向に突出するフランジ部40が設けられている。フランジ部40は、ボルトなどの締結手段42により側部32の上部に締結されている。ピストン4の外周面41は、略円形断面を有し、一般部41aと、一般部41aよりも軸方向先端に近い部分に位置し一般部41aよりも大径の軸受部41bとをもつ。軸受部41bには、その周方向に間隔をおいて、後述の軸受エア供給管7が開口している空気軸受44が形成されている。即ち、空気軸受44は、ピストン4の外周面41の軸受部41bにおける、軸受エア供給管7の開口周縁に形成されている。図4に示すように、ピストン4の外周側にはシリンダ5が軸方向にスライド可能に同軸上に配設されている。シリンダ5は、移動手段98によりY軸方向に移動可能で平面方向の移動が規制されたスライドテーブル93に固定されているため、シリンダ5の平面方向の移動は規制されている。
【0024】
シリンダ5は、有底筒形状であって、筒形状で軸方向の両端に開口部50a、50bをもつ本体50と、蓋体52とをもつ。シリンダ5の本体50の内周面51は、円形の開口断面を有し、ピストン4の外周面41に対して非接触で嵌合している。本体50の内周面51とピストン4の外周面41との間には、円環状の隙間80が形成されている。シリンダ5の軸方向の一端に形成されている開口部50aは、蓋体52で被覆されている。シリンダ5の軸方向の一端側と蓋体52とピストン4との間には、シリンダ室81が形成されている。シリンダ室81は、シリンダ5の軸方向のスライドによって拡大縮小される。図3に示すように、シリンダ5の軸方向の他端部に形成されている開口部50bとピストン4との間には、環状隙間80を大気側に開放させる大気開放端83が形成されている。
【0025】
図3,図4に示すように、ピストン4とシリンダ5との間に形成された環状隙間80は、大気開放端83側に位置する一般隙間84と、一般部84よりもシリンダ室81側において一般隙間84よりも径方向の幅が狭い嵌合隙間85とからなる。一般隙間84は、シリンダ5の本体50の内周面51とピストン4の外周面41の一般部41aとの間に形成されている。嵌合隙間85は、シリンダ5の本体50の内周面51とピストン4の外周面41の軸受部41bとの間に形成されている。この嵌合隙間85は、径方向の幅が通常20〜30μmであり、非常に狭い空間であり、嵌合隙間85においてシリンダ5及びピストン4が互いに嵌合している。このため、バランスシリンダ装置1の作動時にシリンダ室81から流出されるエア流出量は、この嵌合隙間85の開口断面の面積で決まる。
【0026】
図3に示すように、シリンダエア供給管6は、ピストン4の内部にその軸方向に沿って延在している。シリンダエア供給管6の長手方向の一端6aは、シリンダ室81に開口しており、他端6bは、コラム3の内部に設けられたシリンダエア流通管69に接続されている。前記嵌合隙間85から大気開放端83へのエア流出量を考慮して、シリンダエア供給管6からシリンダ室81に供給される圧力流体としてのエアの供給量を調整することで、シリンダ室81のエア圧が調整される。
【0027】
軸受エア供給管7は、ピストン4の軸中心に配設され軸方向に直線状に延在する第1通路71と、第1通路71に接続しピストン4の径方向に延びる第2通路72とからなる。第1通路71の長手方向の上端71aは、栓71cで閉止されて、軸受エア供給管7からシリンダ室81へは直接に圧縮空気が供給されないようになっている。第1通路71の長手方向の下端71bは、側部32の内部に設けられた軸受エア供管79と接続されている。第2通路72は、第1通路71の上端71aと下端71bとの間の中間部71dに接続されている。図5に示すように、第2通路72は、ピストン4の径方向に、ピストン4の軸中心を中心としてX字状、即ち4方向に同角度(90°)で放射状に延在している。第2通路72の径方向外側には、ピストン4の外周面41の軸受部41bに形成された空気軸受44のエアポケット72aが開口している。従って、エアポケット72aは、ピストン4の周方向の4ヶ所に等間隔に配置されている。そして、図5,図6に示すように、第2通路72には、各エアポケット72aの内側に、第2通路72の径方向断面を狭くするオリフィス72bが圧入され、空気軸受44が構成されている。
【0028】
図2、図3に示すように、シリンダ5の本体50は外周面53でスライドテーブル93に固定されている。スライドテーブル93には、Z軸方向で工具Tに向かって延びる主軸ヘッド94が装架されている。主軸ヘッド94には主軸99がZ軸と平行に回転可能に軸承され、主軸99の軸方向先端には、ワークWを保持するチャックが装架されている。主軸99は、Z軸方向に延びる中心軸(C軸)を中心として、DDモータなどによって回転駆動される。
【0029】
図1に示すように、超精密加工装置9に配設されている工具移動装置92は、ベッド2の上に装架されX軸方向に移動可能なテーブル95と、テーブル95上に装架されB軸(垂直軸)回りに回転可能な回転テーブル96と、回転テーブル96の上に固定され工具Tを保持する工具ホルダ97とをもつ。
【0030】
テーブル95には、ベッド2上のX軸リニアモータマグネットと対向配置されたX軸リニアモータコイル(図示略)と、ベッド2上のX軸ガイド22に移動可能に支承された滑動体(図示略)とが固定されている。X軸リニアモータコイルに通電することにより、テーブル95は、X軸ガイド22にガイドされながらX軸方向に移動する。回転テーブル96は、垂直軸(B軸)を中心として、DDモータ等により回転駆動される。
【0031】
ワークWは、ワーク移動装置91によって、Z軸方向及びY軸方向に移動されるとともに、C軸周りに回転される。工具Tは、工具移動装置92によって、X軸方向に移動されるとともに、B軸周りに回転される。ワーク移動装置91及び工具移動装置92のこれらの移動及び回転を駆動する各軸リニアモータ及びDDモータは、工具TとワークWとが所望の相対速度で相対位置に移動するように図略の制御装置で制御される。
【0032】
バランスシリンダ装置を調心するにあたっては、まず、図3に示す締結手段42を緩めて、ピストン4をコラム3に対して相対移動可能にする。これにより、ピストン4は、シリンダ5に対して平面方向に相対移動可能になる。また、シリンダ5の蓋体52を開き、シリンダ室81を大気開放させる。そして、ピストン4に設けられた軸受エア供給管7からピストン4の4ヶ所の空気軸受44に各第2通路72を介して圧縮空気を供給する。図5に示すように、各空気軸受44に圧縮空気が供給されると、ピストン4とシリンダ5との間の嵌合隙間85の径方向の幅の狭い空気軸受44(図5の二点鎖線で示す符号44a)は、幅の広い他の空気軸受44(図5の二点鎖線で示す符号44b)よりもエア圧が高くなる。このため、ピストン4は、幅の狭い空気軸受44で高いエア圧に押圧されて、幅の広い他の空気軸受44に向かって、互いのエア圧が均等になるように移動する。これにより、嵌合隙間の全周に亘って径方向の幅が均等になり、ピストン4とシリンダ5とが同軸に自動調心される。
【0033】
ピストン4がシリンダ5に対して同軸に位置した後に、締結手段42の締結力を強めてピストン4をコラム3に本締めする。これにより、ピストン4のコラム3に対する相対移動が規制されて、シリンダ5に対する平面方向の相対移動が規制される。その後、軸受エア供給管7から空気軸受44への圧縮空気の供給を停止し、軸受エア供給管7に連通する軸受エア流通路79の大気開放側の開口79aに栓を詰める。蓋体52により本体50の開口部50aを塞いでシリンダ室81を閉止する。以上により、バランスシリンダ装置1の調心作業が完了する。
【0034】
次に、バランスシリンダ装置1を作動させるに当たっては、シリンダ5、スライドテーブル93、主軸ヘッド94等からなる移動部材の重量をバランスシリンダ装置1が支持するように、シリンダエア供給管6からエアをシリンダ室81に供給する。このとき、エアの供給量を増加させると、シリンダ室81内のエア圧が上昇し、エアの供給量を減少させると、シリンダ室81内のエア圧が減少する。
【0035】
本実施形態においては、ピストン4をコラム3に対して相対移動可能としながら、空気軸受44に圧縮空気を供給して、ピストン4とシリンダ5との間の嵌合隙間85を全周に亘って均等にしている。このため、ピストン4とシリンダ5とが正確に同軸に位置するようにバランスシリンダ装置1の調心を行うことができる。
【0036】
また、バランスシリンダ装置1の調心を行うに当たっては、軸受エア供給管7を設けるだけでよく、簡素な構成であり、軸受エア供給管7から空気軸受44に圧縮空気を供給するだけバランスシリンダ装置1の調心を行うことができるため、容易で手間もかからない。
【0037】
また、蓋体52を開けてシリンダ5の本体50の開口部50aを開口させると、シリンダ室81が大気開放されて、シリンダ室81のエア圧が低くなる。この状態で、圧縮空気を空気軸受44に供給することによって、圧縮空気がシリンダ室81で押し戻されることはなく、シリンダ室81から嵌合隙間85へ圧縮空気が逆流することを防止できる。ゆえに、嵌合隙間85に、空気軸受44からシリンダ室81側の開口部50aへ、及び空気軸受44からシリンダ室81側と反対側の大気開放端83へ向けて、圧縮空気のスムーズな流れを形成できる。したがって、嵌合隙間85を全周に亘ってより一層均等にすることができる。
【0038】
上記実施の形態においては、図5に示すように、軸受エア供給管7の第2通路72は、ピストン4の軸中心を中心として4方向に延びているが、これに限らず、3方向、または5方向以上に放射状に延びていても良い。第2通路72の延びる方向が多いほど、第2通路72と連通する空気軸受44の数が多くなる。また、複数の空気軸受44を設けるに当たっては、全ての空気軸受44をピストン4の外周面41の周方向に等間隔に配置することが好ましい。これにより、嵌合隙間85の全周に亘って均等に圧縮空気を供給することができる。
【0039】
また、上記実施の形態においては、軸受エア供給管7、第1通路72、エアポケット72a及びオリフィス72bをピストン4の内部に設けているが、シリンダ5に設けても良い。また、シリンダエア供給管6をシリンダ5に設けてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態においては、ピストン4をコラム3に固定し、シリンダ5を移動部材であるスライドテーブル93に固定しているが、シリンダ5をコラム3に固定し、ピストン4をスライドテーブル93に固定してもよい。
【0041】
また、上記実施の形態においては、図3に示すように、圧縮空気を嵌合隙間85に供給する際には、蓋体52を開いてシリンダ室81を開放させているが、蓋体52で本体50の開口部50aを閉じた状態で、シリンダエア供給管6を大気開放させることでシリンダ室85を大気開放させてもよい。
【0042】
また、上記実施の形態においては、ワーク移動装置91にバランスシリンダ装置1を装架しているが、工具移動装置92にバランスシリンダ装置1を装架することもできる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバランスシリンダ装置を装架した超精密加工装置の平面図である。
【図2】第1の実施形態に係るバランスシリンダ装置を装架した工具移動装置の断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るバランスシリンダ装置の断面図である。
【図4】図3の要部拡大断面図である。
【図5】図3のA−A矢視断面図である。
【図6】図5の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1:バランスシリンダ装置、2:ベッド、3:コラム、4:ピストン、5:シリンダ、6:シリンダエア供給管、7:軸受エア供給管、9:超精密加工装置、41:ピストンの外周面、41a:一般部、41b:軸受部、44:空気軸受、50:本体、50a、50b:開口部、51:シリンダの内周面、52:蓋体、71:第1通路、72:第2通路、72a:エアポケット、72b:オリフィス、80:円筒隙間、81:シリンダ室、83:開口端、84:一般隙間、85:嵌合隙間、90:テーブル、91:ワーク移動装置、92:工具移動装置、93:スライドテーブル、94:主軸ヘッド、95:テーブル、96:回転テーブル、97:工具ホルダ、98:移動手段、99:主軸、W:ワーク、T:工具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の基台に上下方向に移動可能に装架され移動手段により昇降される移動部材に、バランスシリンダ装置のピストン及びシリンダの一方が固定され、前記ピストン及びシリンダの他方が締結手段により前記基台に固定され、前記ピストンと前記シリンダとの間に形成されるシリンダ室に圧力流体を供給して前記移動部材の重量を支持する前記バランスシリンダ装置の前記ピストンと前記シリンダとを調心する方法において、
前記締結手段を緩めて前記基台と前記ピストン及びシリンダの他方との相対移動を許容させるとともに、前記ピストンと前記シリンダとが嵌合する前記ピストンの外周面又は前記シリンダの内周面に形成された空気軸受に圧縮空気を供給して、前記ピストンと前記シリンダとの間の嵌合隙間を全周に亘って均等に自動調心する調心工程と、
前記自動調心後に、前記締結手段を締結させて、前記基台と前記ピストン及びシリンダの他方との相対移動を規制する締結工程と、
を備えることを特徴とするバランスシリンダ装置の調心方法。
【請求項2】
前記シリンダにおける前記シリンダ室を画成する部分には、前記自動調心時に前記シリンダ室を開放させる開口部と、該開口部を開閉可能に閉止する蓋体とを設け、
前記調心工程において、前記蓋体を開けて前記シリンダ室を大気開放させることを特徴とする請求項1記載のバランスシリンダ装置の調心方法。
【請求項3】
前記調心工程においては、前記シリンダ又は前記ピストンに形成され前記シリンダ室に前記圧力流体を供給する流体供給管を大気開放させることを特徴とする請求項1記載のバランスシリンダ装置の調心方法。
【請求項4】
工作機械の基台に上下方向に移動可能に装架され移動手段により昇降される移動部材に、バランスシリンダ装置のピストン及びシリンダの一方が固定され、前記ピストン及びシリンダの他方が前記基台に固定され、前記ピストンと前記シリンダとの間に形成されるシリンダ室に圧力流体を供給して前記移動部材の重量を支持するバランスシリンダ装置において、
前記ピストンと前記シリンダとの嵌合する前記ピストンの外周面又は前記シリンダの内周面に形成され圧縮空気を供給されて前記ピストンと前記シリンダとの間の嵌合隙間を全周に亘って均等に自動調心する空気軸受と、
前記空気軸受による自動調心時は前記基台と前記ピストン及びシリンダの他方との相対移動を許容し、前記自動調心後に締結されて前記相対移動を規制する締結手段と、
を備えることを特徴とするバランスシリンダ装置。
【請求項5】
前記シリンダにおける前記シリンダ室を画成している部分には、前記自動調心時に前記シリンダ室を開放させる開口部と、該開口部を開閉可能に閉止する蓋体とが設けられていることを特徴とする請求項4記載のバランスシリンダ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−197860(P2009−197860A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38761(P2008−38761)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】