説明

バランス型弾性波フィルタ及び弾性波フィルタ装置

より一層の小型化を図ることができ、かつ帯域外減衰量の拡大を図ることができ、良好なフィルタ特性を得ることを可能とするバランス型の弾性波フィルタを提供する。
弾性波基板2上において、不平衡端子3と、第1,第2の平衡端子4,5との間に、第1,第2のフィルタ素子7,8が接続されており、フィルタ素子7,8は、少なくとも3個のIDT7a〜7c,8a〜8cをそれぞれ有する縦結合型の表面波フィルタであって、IDT7a,7c,8a,8cの一端同士が共通接続されて、不平衡端子3に接続されており、IDT7a,7c,8a,8cの他端同士が第2の接続配線12により接続されて不平衡側接地部を構成しており、IDT7b,8bの接地側端部同士が第1の接続配線11により接続されて共通中点接地部を構成しており、該共通中点接地部と上記不平衡側接地部とが電気的に分離されている、弾性波フィルタ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の弾性波素子を接続してなる弾性波フィルタ及び弾性波フィルタ装置に関し、より詳細には、平衡−不平衡変換機能を有する中点接地型のバランス型弾性波フィルタ及び弾性波フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話機などの通信機器の帯域フィルタとして様々な弾性表面波フィルタが用いられている。特に、携帯電話機のRF段に使用される弾性表面波フィルタでは、平衡−不平衡変換機能を併せ持つものが求められている。弾性表面波フィルタが平衡−不平衡変換機能を有する場合、平衡−不平衡変換機能素子としてのバランを省略することができる。従って、携帯電話機等の小型化を進めることができる。
【0003】
下記の特許文献1には、平衡−不平衡変換機能を有する、中点接地型のバランス型弾性表面波フィルタの一例が開示されている。図24及び図25は、特許文献1に記載の弾性表面波フィルタの模式的平面図及びその回路構成を示す図である。
【0004】
図24に示すように、弾性表面波フィルタ200は、表面波基板301を有する。表面波基板301上に、第1,第2の弾性表面波フィルタ素子201,202及び第1,第2の弾性表面波共振子203,204が形成されている。図25に示すように、第1のフィルタ素子201は、表面波伝搬方向に並べられたIDT205〜207と、反射器208,209とを有する縦結合型弾性表面波フィルタ素子である。フィルタ素子202も、同様であり、IDT210〜212と、反射器213,214とを有する。もっとも、第2のフィルタ素子202の位相は、第1のフィルタ素子201と180度ずらされている。
【0005】
不平衡端子215に、第1のフィルタ素子201の中央のIDT206と、第2のフィルタ素子202の中央のIDT211とが接続されている。また、IDT205,207の一方端は、弾性表面波共振子203を介して、第1の平衡端子216に接続されている。他方、第2のフィルタ素子202の外側のIDT210,212の一端が、弾性表面波共振子204を介して第2の平衡端子217に接続されている。従って、弾性表面波フィルタ200は、不平衡端子215と、第1,第2の平衡端子216,217とを有するバランス型弾性表面波フィルタである。
【0006】
ところで、第1,第2のフィルタ素子において、IDT206,211の不平衡端子215と接続されている側とは反対側の端部は、接地されている。図24に示すように、IDT206,211は、表面波基板301上に設けられた電極パッド302,303に接続されている。電極パッド302,303が、接地電位に接続される電極パッドである。
【0007】
製品化に際しては、電極パッド302,303上に金属バンプが接合され、該金属バンプがパッケージ側のアース電位に接続される電極ランドに電気的に接続されることになる。そして、電極パッド302,303、ひいてはIDT206,211の接地側端部は、パッケージ側のアース電位に接続される電極ランドにおいて共通接続されている。
【0008】
他方、第1のフィルタ素子201のIDT205,207の平衡信号端子216に接続される側とは反対側の端部も接地されている。すなわち、図24において、IDT205の接地側端部は、電極パッド311に電気的に接続されている。また、IDT207は、電極パッド312に電気的に接続されている。電極パッド311,312は、アース電位に接続される電極パッドである。
【0009】
同様に、第2のフィルタ素子202側においても、IDT210,212の平衡信号端子217と接続される側とは反対側の端部が接地されている。より具体的には、図24に示すように、IDT210の接地側端部が、電極パッド312に接続されており、IDT212の接地側端部が、電極パッド313に接続されている。電極パッド311〜313は、前述した電極パッド302,303と同様に、パッケージ基板に設けられておりかつアース電位に接続される電極ランドに接続される。すなわち、パッケージ基板において示すが、共通接続される。
【特許文献1】特開2004−88551号公報
【発明の開示】
【0010】
弾性表面波フィルタ200は、フェイスダウン工法によりパッケージ基板に搭載され、製品化されている。この場合、上述した電極パッド302,303,311〜313を含む複数の電極パッド上に金属バンプが接合される。そして、パッケージ基板上に、上記金属バンプが接合されている面が下面となるように搭載され、金属バンプにより電極パッド302,303,311〜313などが、パッケージ基板上の電極ランドに接合される。
【0011】
上記弾性表面波フィルタ200では、フェイスダウン工法を利用して組み立てられているため、また平衡−不平衡変換機能を有するためバランを省略することができるため、小型化を図ることができ、弾性表面波フィルタ200が構成されるRF段の小型化を進めることができる。
【0012】
しかしながら、弾性表面波フィルタ200をパッケージ基板に上記のようにして搭載し、実際に平衡−不平衡変換機能を有するバランス型の弾性表面波フィルタとして使用した場合、帯域外減衰量が十分でないという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、より一層の小型化を図ることができ、かつ帯域外減衰量を効果的に改善することができ、従って良好なフィルタ特性を有するバランス型の弾性波フィルタ及び該弾性波フィルタを用いて構成された弾性波フィルタ装置を提供することにある。
【0014】
本発明のある広い局面によれば、不平衡端子と第1,第2の平衡端子とを有するバランス型弾性波フィルタであって、弾性波基板と、前記弾性波基板上に形成されており、不平衡端子と第1の平衡端子との間に接続された少なくとも3個のIDTを有する縦結合型の第1のフィルタ素子と、前記弾性波基板上に形成されており、不平衡端子と、第1のフィルタ素子の第1の平衡端子とは逆位相の信号が流れる第2の平衡端子との間に接続された少なくとも3個のIDTを有する縦結合型の第2のフィルタ素子と、前記第1のフィルタ素子の第1の平衡端子に接続されているIDTの接地側端部と、前記第2のフィルタ素子の第2の平衡端子に接続されているIDTの接地側端部とを接続して共通中点接地部を構成しており、かつ前記弾性波基板上に設けられた第1の接続配線と、前記第1のフィルタ素子において、不平衡端子に接続されているIDTの接地側端部と、前記第2のフィルタ素子において、不平衡端子に接続されているIDTの接地側端部とを接続して不平衡側接地部を構成しており、かつ前記弾性波基板上に設けられた第2の接続配線とを有し、前記共通中点接地部と、前記不平衡側接地部とが弾性波基板上において電気的に分離されていることを特徴とする、バランス型弾性波フィルタが提供される。
【0015】
本発明に係るバランス型弾性波フィルタの別の広い局面によれば、弾性波基板と、前記弾性波基板上に形成されており、不平衡端子と、第1,第2の平衡端子と、不平衡端子と前記第1,第2の平衡端子との間に接続された少なくとも3個のIDTとを有する縦結合型の第1のフィルタ素子と、前記第1のフィルタ素子の第1,第2の平衡端子に接続された第3,第4の平衡端子と、第5,第6の平衡端子とを有し、かつ第3,第4の平衡端子と、第5,第6の平衡端子との間に接続された複数のIDTを有する縦結合型の第2のフィルタ素子と、第1のフィルタ素子の第1の平衡端子が接続されているIDT及び第2の平衡端子が接続されているIDTの各接地側端部と、第2のフィルタ素子の第3,第4の平衡端子が接続されているIDTの各接地側端部とを接続しており、共通中点接地部を構成しており、かつ前記弾性波基板上に設けられた第1の接続配線と、前記第1のフィルタ素子の不平衡端子に接続されているIDTの接地側端部に接続されて、不平衡側接地部を構成するように、弾性波基板上に設けられた第2の接続配線とを有し、前記共通中点接地部と、前記不平衡側接地部とが前記弾性波基板上において電気的に分離されていることを特徴とする、バランス型弾性波フィルタが提供される。
【0016】
本発明にバランス型弾性波フィルタのある特定の局面では、前記不平衡端子と、該不平衡端子と接続されている少なくとも1つのIDTとを接続しており、前記第1の接続配線と弾性波基板上において交差されている第3の接続配線と、前記第1の接続配線と第3の接続配線とが交差している部分において第1,第3の接続配線間に配置された層間絶縁膜とがさらに備えられている。
【0017】
本発明に係るバランス型弾性波フィルタのさらに他の特定の局面では、パッケージ材がさらに備えられており、前記パッケージ材が、前記共通中点接地部とバンプ接続される第1の電極ランドと、前記不平衡側接地部とバンプ接続される第2の電極ランドとを有し、前記第1の電極ランドと前記第2の電極ランドとが前記パッケージ材上で分離されている。
【0018】
本発明に係るバランス型弾性波フィルタのさらに別の特定の局面では、上記弾性波として弾性表面波が利用され、従って本発明によりバランス型弾性表面波フィルタが提供される。なお、本発明において、「弾性波」とは、弾性表面波だけでなく、弾性境界波などの他の弾性波を広く含むものとする。
【0019】
本発明に係る弾性波フィルタ装置のある特定の局面では、弾性波基板上に、本発明に従って構成されたバランス型弾性波フィルタとしての第1のバランス型弾性波フィルタと、本発明に従って構成されたバランス型弾性波フィルタとしての第2のバランス型弾性波フィルタとが形成されている。前記第1のバランス型弾性波フィルタの中心周波数と、第2のバランス型弾性波フィルタの中心周波数とは異なっており、第1のバランス型弾性波フィルタの共通中点接地部が、第2のバランス型弾性波フィルタの共通中点接地部と共通接続されており、第1のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部が、第2のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部と共通接続されている。共通接続された双方の共通中点接地部と、共通接続された双方の不平衡側接地部とが前記弾性波基板上において電気的に分離されている。
【0020】
本発明に係る弾性波フィルタ装置の他の特定の局面では、弾性波基板上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバランス型弾性波フィルタとしての第1のバランス型弾性波フィルタと、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバランス型弾性波フィルタとしての第2のバランス型弾性波フィルタとが構成されており、前記第1のバランス型弾性波フィルタの中心周波数と、第2のバランス型弾性波フィルタの中心周波数とが異なっており、第1のバランス型弾性波フィルタの共通中点接地部が、第2のバランス型弾性波フィルタの共通中点接地部と共通接続されており、共通接続された双方の共通中点接地部と、第1のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部と、第2のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部とが前記弾性波基板上において電気的に分離されており、パッケージ材をさらに備え、前記パッケージ材が共通中点接地部とバンプにより接続される第1の電極ランドと、前記第1のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部とバンプにより接続される第2の電極ランドと、前記第2のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部とバンプにより接続される第3の電極ランドとを有し、前記第1の電極ランドと前記第2の電極ランドと前記第3の電極ランドとが、前記パッケージ材において分離されている。
【0021】
本発明に係る弾性波フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、デュプレクサまたはマルチバンドフィルタとして構成された弾性波フィルタ装置が提供される。
【0022】
本発明に係るバランス型弾性波フィルタにおいては、第1の接続配線が、第1のフィルタ素子の第1の平衡端子に接続されているIDTの接地側端部と、第2のフィルタ素子の第2の平衡端子に接続されているIDTの接地側端部とを接続して共通中点接地部を構成しており、第2の接続配線が、第1のフィルタ素子の不平衡端子に接続されているIDTの接地側端部と、第2のフィルタ素子において不平衡端子に接続されているIDTの接地側端部とを接続して不平衡側接地部を構成しており、上記共通中点接地部と、不平衡側接地部とが弾性波基板上において電気的に分離されている。従って、平衡−不平衡変換機能を有する中点接地型のバランス型の弾性波フィルタにおいて、帯域外減衰量を効果的に改善することができる。これは、以下の理由によると考えられる。すなわち、中点接地型のバランス型弾性波フィルタにおけるアース電流は、不平衡端子に接続されるIDTのアース側においてのみ流れることになる。すなわち、平衡端子に接続されるIDTの接地側端部同士が接続されて、その中点で接地されている場合、2つのIDTは、2つの平衡信号端子間において直列接続されていることになる。この場合、平衡側の上記2つのIDTには、同じ大きさで、逆位相の電圧が発生し、一方のIDTの平衡端子から、他方のIDTの平衡端子に向かって電流が流れ、中点接地部分においては、互いに逆向きの電流が同時に流れ込んで打ち消し合うためである。
【0023】
しかしながら、第1,第2のフィルタ素子を接続した構成において、2つのフィルタ素子のIDTの中点接地部は、通常1つの弾性波基板上においてまとめることができない。従って、前述した特許文献1に記載のように、パッケージ基板上のアース電極側で共通化されていた。しかしながら、弾性表面波基板と、パッケージ基板とがバンプにより接合されており、従ってパッケージ基板上のアース電極と、弾性表面波基板上のIDTの共通中点接地部との距離が大きいこと、バンプの面積が大きいこと、複数のバンプ間の距離が大きいことなどにより、小型化を進めることが困難であった。しかも、前述したように、帯域外減衰量が悪化するという問題があった。
【0024】
すなわち、弾性表面波による電流が、パッケージ基板の電極ランドにおいて、1つの接地電位に接続されるバンプの接続点から、他の接地電位に接続されるバンプ接続点に向かって流れ、電気的中点が、パッケージ基板上の電極ランドの2つのバンプ接続点間の1点に存在し、該1点と、第1,第2のフィルタ素子のIDTの中点接地部との間のインピーダンスが高くなり、それによって平衡度が悪化し、帯域外減衰量が悪化していたと考えられる。
【0025】
これに対して、本発明では、上記共通中点接地部が弾性波基板上において共通接続されているため、電気的中点が、弾性波基板上に存在し、従って共通中点接地部と電気的な中点までの距離が短くなり、両者の間のインピーダンスが低くなり、平衡度が改善されてフィルタの帯域外減衰量の拡大が図られていると考えられる。すなわち、分離されている共通中点接地部と、不平衡側接地部とがインピーダンスもしくはインダクタンスで接続されることにより、通過帯域高域側の減衰量が改善される。この場合のインダクタンス値は、特に限定されないが、0.1〜10nH程度とすればよい。加えて、弾性波基板上において、不平衡端子に接続されている第1のフィルタ素子のIDTの接地側端部と、不平衡端子に接続されている第2のフィルタ素子のIDTの接地側端部とが第2の接続配線により共通接続されて不平衡側接地部が構成されているため、すなわち不平衡側のアースが弾性波基板上において共通化されている。従って、アース電流の流れを適切に制御することができ、それによって帯域外減衰量の拡大が図られる。
【0026】
本発明のバランス型弾性波フィルタにおいて、弾性波基板上に、不平衡端子と、第1,第2の平衡端子とを有する平衡−不平衡変換機能を有する第1のフィルタ素子と、第1のフィルタ素子の第1,第2の平衡端子に接続された第3,第4の平衡端子と、第5,第6の平衡端子とを有する第2のフィルタ素子とが備えられており、第1の接続配線により、第1の平衡端子が接続されているIDT及び第2の平衡端子が接続されているIDTの各接地側端部と、第2のフィルタ素子の第3,第4の平衡端子が接続されているIDTの各接地側端とを接続して共通中点接地部が構成されており、第1のフィルタ素子の不平衡端子が接続されているIDTの接地側端部に第2の接続配線が接続されて不平衡側接地部が構成されており、共通中点接地部と、不平衡側接地部とが電気的に分離されている場合には、同様に、弾性波フィルタの小型化を進め得るだけでなく、帯域外減衰量を効果的に拡大することができ、良好なフィルタ特性を得ることができる。
【0027】
本発明において、不平衡端子に接続される少なくとも1つのIDTを不平衡端子に接続している第3の接続配線が、第1の接続配線と弾性波基板上において交差しており、該交差部分において、層間絶縁膜が第1,第3の接続配線間に配置されている場合には、層間絶縁膜により第1の接続配線と第3の接続配線との短絡を確実に防止することができる。のみならず、第1,第3の接続配線が交差されて配置されているため、第1,第3の接続配線の引き回し長さを長くする必要がなく、かつ弾性波基板上における接続配線や電極の高密度配置が可能となる。よって、弾性波フィルタのより一層の小型化を進めることができる。
【0028】
本発明において、パッケージ材が、上記共通中点接地部とバンプ接続される第1の電極ランドと、不平衡側接地部とバンプ接続される第2の電極ランドとを有し、第1,第2の電極ランドがパッケージ材上で分離されている場合には、パッケージ材にバランス型弾性波フィルタ素子をバンプにより接合した構造を得ることができる。そして、このバランス型弾性波フィルタでは、弾性波基板側において、共通中点接地部が構成されており、帯域外減衰量の拡大が図られているため、バンプ接合によりフェイスダウン工法でパッケージ基板に弾性波フィルタが搭載された小型の構造において、良好なフィルタ特性を実現することができる。しかも、弾性波として弾性表面波を用いた場合には、本発明に従って、小型であり、かつ帯域外減衰量の拡大が図られたバランス型の弾性表面波フィルタを提供することができる。
【0029】
弾性波基板上に、本発明のバランス型弾性波フィルタとしての第1のバランス型弾性波フィルタと、第2のバランス型弾性波フィルタとが構成されており、第1のバランス型弾性波フィルタの中心周波数と、第2のバランス型弾性波フィルタの中心周波数とが異なっており、両者の共通中点接地部が共通接続されており、両者の不平衡側接地部が共通接続されている弾性波フィルタ装置の場合には、本発明に従って、複数の平衡−不平衡変換機能を有する弾性波フィルタを1つの弾性波基板を用いた1つのチップ部品として構成することができる。従って、小型であり、帯域外減衰量の拡大が図られたデュプレクサやマルチバントフィルタなどを提供することが可能となる。
【0030】
弾性波基板上に、本発明のバランス型弾性波フィルタとしての第1のバランス型弾性波フィルタと、第2のバランス型弾性波フィルタとが構成されており、第1,第2のバランス型弾性波フィルタの中心周波数が異なっており、両者の共通中点接地部が共通接続されており、両者の不平衡側接地部が共通接続されており、さらに、第1〜第3の電極ランドを有するパッケージ材を備えており、第1の電極ランドに共通中点接地部がバンプ接続され、第2の電極ランドに第1のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部がバンプ接続され、第3の電極ランドに第2のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部がバンプ接続され、第1〜第3の電極ランドが分離されている弾性波フィルタ装置の場合には、複数の平衡−不平衡変換機能を有する弾性波フィルタを1の弾性波基板を用いた1つのチップ部品として構成でき、しかも該弾性波フィルタチップがパッケージ基板にバンプにより接続された小型の弾性波フィルタ装置を提供することができる。そして、この弾性波フィルタ装置では、パッケージ材において上記第1〜第3の電極ランドが分離されているので、第1,第2のバランス型弾性波フィルタ間のアイソレーションを改善することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波フィルタの回路構成を示す模式的平面図である。
【図2】図2は第1の実施形態の弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図3】図3は第1の実施形態の弾性表面波フィルタで用いられるパッケージ材の平面図である。
【図4】図4は第1の実施形態の弾性表面波フィルタの模式的正面図である。
【図5】図5は比較のために用意した弾性表面波フィルタの回路構成を示す模式的平面図である。
【図6】図6は比較のために用意した弾性表面波フィルタに用いられているパッケージ材を示す平面図である。
【図7】図7は第1の実施形態及び比較例の弾性表面波フィルタの位相平衡度−周波数特性を示す図である。
【図8】図8は第1の実施形態及び比較例の弾性表面波フィルタの振幅平衡度−周波数特性を示す図である。
【図9】図9は第1の実施形態及び比較例の弾性表面波フィルタの挿入損失−周波数特性を示す図である。
【図10】図10は第1の実施形態及び比較例の弾性表面波フィルタのコモンモード減衰量−周波数特性を示す図である。
【図11】図11は本発明の第2の実施形態に係る弾性表面波フィルタの回路構成を示す模式的平面図である。
【図12】図12は本発明の第2の実施形態に係る弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図13】図13は本発明の第3の実施形態に係る弾性表面波フィルタの回路構成を示す模式的平面図である。
【図14】図14は本発明の第3の実施形態に係る弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図15】図15は本発明の第4の実施形態としての弾性表面波フィルタ装置の回路構成を示す模式的平面図である。
【図16】図16は本発明の第4の実施形態としての弾性表面波フィルタ装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【図17】図17は本発明の第5の実施形態としての弾性表面波フィルタ装置の回路構成を示す模式的平面図である。
【図18】図18は本発明の第5の実施形態としての弾性表面波フィルタ装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【図19】図19は本発明の第6の実施形態で用いられる弾性表面波フィルタチップの電極構造を示す模式的平面図である。
【図20】図20は第6の実施形態で用いられるパッケージ材としてのパッケージ基板上の電極ランドを説明するための平面図。
【図21】図21は第6の実施形態の弾性波装置及び参考例の弾性波装置のアイソレーション特性を示す図。
【図22】図22は参考例の弾性波装置で用いられるパッケージ基板の上面の電極ランドを説明するための模式的平面図。
【図23】図23は本発明が摘要される弾性境界波フィルタの模式的正面断面図である。
【図24】図24は従来の弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図25】図25は図24に示した従来の弾性表面波フィルタの回路構成を示す模式的平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…弾性表面波フィルタ
2…弾性表面波基板
2a…主面
3…不平衡端子
3A…不平衡端子
4,5…第1,第2の平衡端子
4A,5A…第1,第2の平衡端子
6…SAW共振子
6a…IDT
6b,6c…反射器
7…第1のフィルタ素子
7a〜7c…IDT
7d,7e…反射器
8…第2のフィルタ素子
8a〜8c…IDT
8d,8e…反射器
9,10…SAW共振子
11…第1の接続配線
12…第2の接続配線
13…バンプ
14…電極ランド
15…バンプ
16…第3の接続配線
17a〜17c,18,18b…層間絶縁膜
19,20…接続配線
22…電極ランド
23…バンプ
24,25…バンプ
31…パッケージ材
32〜36…電極ランド
51…弾性表面波フィルタ
52…弾性表面波基板
54〜57…フィルタ素子
54a〜54c,55a〜55c,56a〜56c,57a〜57c…IDT
58,59…第1,第2の平衡端子
101…弾性表面波フィルタ
103…不平衡端子
104,105…第1,第2の平衡端子
106…第1のフィルタ素子
106a〜106c…IDT
107…第2のフィルタ素子
107a〜107c…IDT
107b1,107b2…IDT部分
108…第2の接続配線
109…電極ランド
110…バンプ
111…第1の接続配線
112…電極ランド
114…バンプ
151…弾性表面波フィルタ装置
161…弾性表面波フィルタ装置
171…弾性境界波フィルタ
172,173…媒質層
174a〜174c…IDT
175a〜175c…スルーホール電極
176a〜176c…電極パッド
177a〜177c…バンプ
181…弾性表面波フィルタチップ
182…パッケージ基板
183…パッケージ基板
301〜309…電極ランド
308b…電極ランド
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0034】
図1は本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波フィルタの回路構成を説明するための模式的平面図であり、図2はその電極構造の具体的な形状を示す模式的平面図である。
【0035】
図1に示すように、弾性表面波フィルタ1は、弾性波基板としての弾性表面波基板2を有する。弾性表面波基板2は、圧電単結晶または圧電セラミックスからなり、本実施形態では矩形板状の形状を有する。弾性表面波基板2の一方主面2a上に、後述する各種電極及び接続配線等が形成されて、図1に示す回路構成が実現されている。
【0036】
図1に示すように、弾性表面波フィルタ1は、不平衡端子3と、第1,第2の平衡端子4,5とを有し、平衡−不平衡変換機能を有する。
【0037】
不平衡端子3に、1ポート型SAW共振子6が接続されている。1ポート型SAW共振子6の後段には、第1,第2のフィルタ素子7,8が接続されている。第1,第2のフィルタ素子7,8は、それぞれ、3個のIDT7a,7b,7c,8a,8b,8cを有する3IDT型の縦結合型弾性表面波フィルタ素子である。
【0038】
第1のフィルタ素子7の両側のIDT7a,7cの一端が、SAW共振子6を介して不平衡端子3に接続されている。中央のIDT7bの一端が、SAW共振子9を介して第1の平衡端子4に接続されている。同様に、第2のフィルタ素子8の両側のIDT8a,8cの一端がSAW共振子6を介して不平衡端子3に接続されている。中央のIDT8bの一端がSAW共振子10を介して第2の平衡端子5に接続されている。
【0039】
IDT7b,8bの第1,第2の平衡端子4,5に接続されている側とは反対側の端部である接地側端部同士が、第1の接続配線11により共通接続されて、共通中点接地部を構成している。
【0040】
他方、IDT7a,7c,8a,8cの不平衡端子に接続されている側とは反対側の端部は、第2の接続配線12により共通接続されて、不平衡側接地部を構成している。
【0041】
本実施形態の弾性表面波フィルタ1の特徴は、上記のように共通中点接地部及び不平衡側接地部が構成されており、かつ弾性表面波基板2上において、共通中点接地部と、不平衡側接地部とが分離されていることにある。これを、図2を参照してより具体的に説明する。
【0042】
図2において、図1と同じ部分については、同じ参照番号を付することにより、図1を参照して説明した部分と同一部分については説明を適宜省略することとする。
【0043】
図2に示すように、弾性表面波基板2の主面2a上には、具体的には、不平衡端子3に相当する電極パッドが形成されており、該電極パッド上に、バンプ13が接合されている。
【0044】
また、弾性表面波基板2上に形成された第1の接続配線11の端部には、電極パッド14が連ねられている。電極パッド14上にバンプ15が接合されている。電極パッド14は、後述するパッケージ側のアース電位に接続される電極ランドにバンプ15により接合される。
【0045】
なお、SAW共振子6、フィルタ素子7,8、及びSAW共振子9,10は、図1では図示を省略されていたが、図2では、それぞれ、表面波伝搬方向両側に一対の反射器を備えるように構成されている。例えば、SAW共振子6を例にとると、IDT6aの両側に反射器6b,6cが設けられている。図1では、図示を簡略化するために、これらの反射器の図示が省略されていることを指摘しておく。
【0046】
以下の他の実施形態の回路図においても、同様に、反射器の図示は適宜省略されている。
【0047】
図2に戻り、SAW共振子6のIDT6aと、フィルタ素子7,8のIDT7a,7c,8a,8cを接続するために、第3の接続配線16が設けられている。
【0048】
フィルタ素子7,8において、中央のIDT7b,8bに第1の接続配線11が接続され、両側のIDT7a,7c,8a,8cに第3の接続配線16が接続されている。そして、第1の接続配線11は、フィルタ素子7,8から表面波基板2の一方端縁2b側に隔てられた電極パッド14に接続されている。また、第3の接続配線16も、端縁2b側に配置された不平衡端子3にSAW共振子6を介して接続されている。従って、当然のことながら、第1の接続配線11と第3の接続配線16は交差せざるを得ない。
【0049】
本実施形態では、第1の接続配線11と第3の接続配線16との短絡を防止するために、交差部分に層間絶縁膜17a〜17cが設けられている。すなわち、交差部において、層間絶縁膜17a〜17cが、第3の接続配線16を覆うように形成されている。そして、この層間絶縁膜17a〜17c上を、第1の接続配線11が通過し、それによって第1の接続配線11と第3の接続配線16との電気的絶縁が図られている。
【0050】
層間絶縁膜17a〜17cを構成する材料は、SiO2などの適宜の絶縁性材料を用いることができ、その形成方法についても特に限定されない。
【0051】
また、第1の接続配線11は、本実施形態では、第1のフィルタ素子7の中央のIDT7bから電極ランド14上に延びる第1の直線状部分11aと、第2のフィルタ素子8の中央のIDT8bから直線状に延びる第2の直線状部分11bと、直線状部分11bのIDT8bと反対側の端部において第1のフィルタ素子7側に90度の角度をなすように折り曲げられ、かつさらに直線上に延びる第3の直線上部分11cとを有する。第3の直線状部分11cの端部が、第1の直線状部分11aに連ねられている。従って、第1の接続配線11は、上記のような複数の直線状部分11a〜11cを有し、比較的短い距離で、IDT7b,8bが、電極パッド14に接続されている。
【0052】
他方、第3の接続配線16についても、IDT7a,7c,8a,8cの端部からIDTの電極指の延びる方向外側に延びる直線状分16a,16b,16c,16dと、これらの直線状部分16a,16dの外側端を結ぶ直線状分16eとを有し、直線状部分16eが、SAW共振子6を介して不平衡端子3に接続されている。従って、第3の接続配線16もまた、上記直線状部分16a〜16eを有し、比較的短い距離で、IDT7a,7c,8a,8cと、SAW共振子6、ひいては不平衡端子3とを接続していることがわかる。
【0053】
また、IDT7b,8bの上記共通中点接地部とは反対側の端部は、それぞれ、接続配線19,20を介して、SAW共振子9,10に接続されており、ひいては第1,第2の平衡端子4,5に接続されている。他方、IDT7a,7c,8a,8cの不平衡端子3に接続されている側とは反対側の端部には、第2の接続配線12が接続されている。第2の接続配線12は、IDT7a,7c,8a,8cの接地側端部を共通接続しており、電極パッド22に連ねられている。電極パッド22上には、バンプ23が接合されている。バンプ23は、パッケージ材状のアース電位に接続される電極ランドに接続される。従って、上記第2の接続配線12は、不平衡側接地部を構成している。そして、上記不平衡側接地部が、第1の接続配線11で構成されている共通中点接地部と、弾性表面波基板2上において分離されている。
【0054】
また、上記第2の接続配線12と、接続配線19,20とが交差する部分にも、層間絶縁膜17a〜17cと同様に形成された層間絶縁膜18a,18bが配置されている。
【0055】
なお、第1,第2の平衡端子4,5は、所定の面積を有する電極パッドとして形成されており、各電極パッド上に、金属バンプ24,25が接合されている。
【0056】
弾性表面波フィルタ1を製品化するにあたっては、上記弾性表面波基板2の一方主面2aが下面となるようにして、図3に平面図で示すパッケージ材31上に接合される。すなわち、図4に略図的正面図で示すように、フェイスダウン工法で、弾性表面波フィルタ1がパッケージ材31上にバンプ接合により取り付けられ、製品化される。
【0057】
図3に示すように、パッケージ材31は、板状の基板を用いて構成されており、その上面31a上に、複数の電極ランド32〜36が形成されている。電極ランド32〜36は、適宜の導電性材料からなる膜を全面に形成した後パターンニングすることにより、あるいは印刷法等により導電性材料を付与することにより形成され得る。
【0058】
電極ランド32は、上記入力端子3に接合されている金属バンプ13(図2参照)が接合される部分である。他方、共通中点接地部に設けられているバンプ15は、アース電位に接続される電極ランド33に接合される。
【0059】
他方、図2の金属バンプ23,24,25は、それぞれ、電極ランド34,36,35に接合されることになる。
【0060】
本実施形態の弾性表面波フィルタ1では、上記のように、弾性表面波基板2上において、第1の接続配線11により、IDT7b,8bが共通接続されて、共通中点接地部が構成されており、かつ該共通中点接地部が、第2の接続配線12により構成される不平衡側接地部と分離されている。従って、従来の相当の弾性表面波フィルタに比べて、帯域外減衰量を効果的に改善することができる。これを、図5及び図6に示す比較例と上記実施形態とを比較することにより明らかにする。
【0061】
図5は、特許文献1に記載のような従来の平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタに相当する弾性表面波フィルタあって、中点接地部が共通化されておらず、また不平衡側接地部についても共通化されていない構造を有する弾性表面波フィルタの回路構成を示す模式的平面図であり、図6はこの弾性表面波フィルタがフェイスダウン工法で搭載されるパッケージ材の平面図である。図5においては、図1に示した部分に相当の部分については、図1で示した参照符号に400加えた数の参照符号を用いて図示することとする。
【0062】
弾性表面波401では、第1のフィルタ素子407のIDT407b及び第2のフィルタ素子408のIDT408bの接地側端部は、それぞれ、独立に接地されていることがわかる。すなわち、共通中点接地部は、弾性表面波基板402上において設けられていないことがわかる。
【0063】
また、IDT407a,407cの接地側端部も異ならされている。同様に、IDT408a,408cの接地側端部も異ならされている。もっとも、IDT407c,408aの接地側端部は共通化されている。
【0064】
その他の点については、弾性表面波フィルタ401は弾性表面波1と同様に構成されている。
【0065】
なお、図6に示すパッケージ材431では、上面431a上に設けられた電極ランド432に、図5に示されている不平衡端子403が接合される。そして、L字型の電極ランド433に、IDT407b,408bの接地側端部に接合されているバンプがそれぞれ接合される。言い換えれば、電極ランド433上において中点接地部が共通化されている。すなわち、共通中点接地部は、電極ランド433を用いて構成されている。
【0066】
同様に、電極ランド434には、IDT407aに接合されるバンプ、IDT407c,408aの接地側端部に共通接続されているバンプ及びIDT408
cの接地側端部に接続されている金属バンプが接合される。すなわち、不平衡側のIDT407a,407c,408a,408cの接地側端部に接続される複数のバンプが、パッケージ材431側の電極ランド434において共通接続されている。
【0067】
他方、電極ランド435,436は、それぞれ、平衡端子405,404が接合される。
【0068】
上記実施形態の弾性表面波フィルタ1及び比較例の弾性表面波フィルタ401を、それぞれパッケージ材31,431に搭載した状態で、周波数特性を測定した。図7〜図10に測定結果を示す。図7は、位相平衡度−周波数特性、図8は振幅平衡度−周波数特性、図9は挿入損失−周波数特性、図10はコモンモード減衰量−周波数特性を示し、実線が実施例形態の結果を、破線が比較例の結果を示す。
【0069】
なお、上記振幅平衡度及び位相平衡度は、それぞれ、一対の平衡端子間4,5における振幅特性の等しさの程度、及び位相が180度反転している程度を示す。上記振幅平衡度及び位相平衡度は、以下のように定義される。
【0070】
すなわち、このような振幅平衡度及び位相平衡度は、前記平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタを3ポートのデバイスと考え、例えば不平衡入力端子を第1ポート、平衡出力端子のそれぞれを第2ポート、第3ポートとしたとき、振幅平衡度=〔A〕、A=|20log(S21)|−|20log(S31)|、位相平衡度=B−180、B=|∠S21−∠S31|にてそれぞれ定義される。なお、S21は第1ポートから第2ポートへの伝達係数を、S31は第1ポートから第3ポートへの伝達係数を示しており、また、上記各式中の||は絶対値を示すためのものである。
【0071】
上記一対の平衡信号端子間の平衡度については、理想的には、通過帯域内において振幅平衡度が0dBであること、かつ位相平衡度が0度とされていることが望ましいとされている。
【0072】
図7〜図10から明らかなように、実施形態の弾性表面波フィルタ1では、通過帯域は2.10〜2.20(GHz)であるのに対し、この通過帯域内において、位相平衡度及び振幅平衡度において比較例の弾性表面波フィルタに対して優れていることがかわる。
【0073】
また、図9から明らかなように、通過帯域外減衰量が、特に高域側において、比較例の弾性表面波フィルタ401に比べて、実施例によれば著しく改善され得ることがわかる。
【0074】
さらに、図10から明らかなように、コモンモード減衰量が、特に高域側帯域外において、比較例の弾性表面波フィルタに比べて、実施例によれば著しく改善できることがわかる。
【0075】
上記のように、実施例の弾性表面波フィルタ1において、比較例の弾性表面波フィルタ401に比べて、帯域外減衰量の改善が図られ、さらに位相平衡度などの平衡度が改善されるのは、以下の理由によると考えられる。
【0076】
すなわち、上記共通中点接地部が弾性波基板上において共通接続されているため、電気的中点が、弾性波基板上に存在し、従って共通中点接地部と電気的な中点までの距離が短くなり、両者の間のインピーダンスが低くなり、平衡度が改善されてフィルタの帯域外減衰量の拡大が図られていると考えられる。すなわち、分離されている共通中点接地部と、不平衡側接地部とがインピーダンスもしくはインダクタンスで接続されることにより、通過帯域高域側の減衰量が改善される。この場合のインダクタンス値は、特に限定されないが、0.1〜10nH程度とすればよい。加えて、弾性波基板上において、不平衡端子に接続されている第1のフィルタ素子のIDTの接地側端部と、不平衡端子に接続されている第2のフィルタ素子のIDTの接地側端部とが第2の接続配線により共通接続されて不平衡側接地部が構成されているため、すなわち不平衡側のアースが弾性波基板上において共通化されている。従って、アース電流の流れを適切に制御することができ、それによって帯域外減衰量の拡大が図られる。
【0077】
加えて、上記実施形態の弾性表面波フィルタ1では、第1の接続配線と第3の接続配線が、いずれも直線を組み合わせた形状とされており、比較的短い距離で、電極ランド14もしくは不平衡端子3と、IDTとを接続している。さらに、第1の接続配線11と第3の接続配線16とが交差する部分においては、層間絶縁膜17a〜17cにより電気的絶縁が図られている。また、第2の接続配線12についても、複数のIDT7a,7c,8a,8cの接地側端部を短い距離で接続するように複数の直線状部分を連ねた形状とされている。また、第2の接続配線12についても、接続配線19,20と交差する部分において、層間絶縁膜17a,18aにより電気的に絶縁されている。
【0078】
従って、上記のように、複数の直線状部分を連ねて設けられた接続配線11,12,16及び層間絶縁膜17a〜17c,18a,18bを設けて複数の接続配線を電気的に絶縁した状態で交差させているため、弾性表面波フィルタ1では、弾性表面波基板2の主面2a上における電極や接続配線の形成密度を効果的に高めることができる。すなわち、弾性表面波フィルタ1では、比較例の弾性表面波フィルタ401に比べて、より一層の小型化を図ることができる。
【0079】
しかも、上記のような小型化を図った上で、さらに、共通中点接地部及び不平衡側接地部が、パッケージ材31ではなく弾性表面波基板2上において構成されており、かつ互いに分離されているため、図7〜図10に示したように、帯域外減衰量を拡大し、さらに平衡度を改善することが可能とされている。
【0080】
よって、本実施形態によれば、周波数特性に優れ、かつ小型のバランス型の弾性表面波フィルタ装置を容易に提供することが可能となる。
【0081】
図11は、本発明の第2の実施形態の弾性表面波フィルタの回路構成を示す平面図であり、図12は、その電極構造を示す模式的平面図である。
【0082】
第2の実施形態に係る弾性表面波フィルタ51では、表面波基板52の主面52a上に種々の電極及び接続配線を形成することにより、弾性表面波フィルタが構成されている。より具体的には、不平衡端子53に接続されるように、第1,第2のフィルタ素子54,55が形成されている。そして、フィルタ素子54,55の後段に、それぞれフィルタ素子56,57が形成されている。
【0083】
フィルタ素子54〜57は、いずれも、3個のIDT54a〜54c,55a〜55c,56a〜56c,57a〜57cを有する3IDT型の縦結合型弾性表面波フィルタである。また、図11では図示を省略しているが、各弾性表面波フィルタ素子54〜57においては、3個のIDTの表面波伝搬方向両側に一対の反射器が設けられている。図12では、この反射器も略図的に示されている。そして、第3のフィルタ素子56及び第4のフィルタ素子57が、第1,第2の平衡端子58,59に接続されている。
【0084】
より具体的には、第1のフィルタ素子54の中央のIDT54b及び第2のフィルタ素子55の中央のIDT55bの一端が、それぞれ、不平衡端子として共通接続されて、不平衡端子53に接続されている。
【0085】
また、IDT54b,55bの接地側端部は、第2の接続配線60により共通接続されて不平衡側接地部を構成している。
【0086】
他方、IDT54a,54c,55a,55cの各一端は、それぞれ、IDT56a,56c,57a,57cに接続されている。IDT54a,54c,55a,55cの他方側端部は接地端部であり、第1の接続配線61により共通接続され、共通中点接地部を構成している。また、第1の接続配線61は、IDT56a,56c,57a,57cの接地側端部にも接続されている。
【0087】
他方、IDT56b,57bの接地側端部も、上記第1の接続配線61に連ねられている。
【0088】
本実施形態においても、上記共通中点接地部と、不平衡側接地部とは、弾性表面波基板52の主面52a上において構成されており、かつ互いに電気的に分離されている。
【0089】
従って、本実施形態においても、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ1と同様に、小型化及び帯域外減衰量の拡大を図ることができる。
【0090】
なお、図12において、図11と共通する部分については、同一の参照番号を付することとする。また、図12から明らかなように、本実施形態においても、第1の接続配線61と第3の接続配線62とが複数の箇所で交差しており、該交差部分には、層間絶縁膜63a,63bが配置されている。すなわち、層間絶縁膜63a,63bにより、第1,第3の接続配線61,62間の電気的絶縁が図られている。
【0091】
同様に、図12に示すように、他の接続配線間の交差部分においても、層間絶縁膜64〜67が配置されている。
【0092】
本実施形態の弾性表面波フィルタ51を搭載するパッケージ材については、図3に示したパッケージ材31と同じものを用いることができる。
【0093】
第2の実施形態の弾性表面波フィルタ51から明らかなように、本発明においては、第1の実施形態とは異なり、2段4素子構成の中点接地型のバランス型弾性表面波フィルタを構成してもよい。
【0094】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る弾性表面波フィルタの回路構成を示す模式的平面図であり、図14はその電極構造を示す模式的平面図である。
【0095】
第3の弾性表面波フィルタ101では、表面波基板2の主面2a上に種々の電極及び接続配線が形成されている。すなわち、不平衡端子103と、第1,第2の平衡端子104,105との間に、第1のフィルタ素子106及び第2のフィルタ素子107が接続されている。ここでは、前段に第1のフィルタ素子106が、後段に第2のフィルタ素子107が接続されており、従って、各段が1素子である2段構成の中点接地型のバランス型弾性表面波フィルタが構成されている。
【0096】
第1のフィルタ素子106は、3個のIDT106a〜106cを有する3IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタである。なお、図14に示すように、IDT106a〜106cが設けられている領域の表面波伝搬方向両側には、反射器106d,106eが配置されている。また、IDT106aと、IDT106cとは、位相が逆転されている。
【0097】
第2のフィルタ素子107は、3個のIDT107a〜107cを有する。図13では省略されているが、図14に示すように、IDT107a〜107cが設けられている領域の表面波伝搬方向両側には、反射器107d,107eが形成されている。
【0098】
不平衡端子103は、第1のフィルタ素子106のIDT106bの一端に接続されている。IDT106bの他端は接地側端部であり、第2の接続配線108に接続されている。第2の接続配線108は、図14の電極パッド109に連ねられており、不平衡側接地部を構成している。電極パッド109上には、バンプ110が接合されている。
【0099】
他方、IDT106a,106cの一端は、それぞれ、後段のフィルタ素子107のIDT107a,107cに接続されている。IDT106a,106cの他端は中点接地端部であり、第1の接続配線111により共通接続されている。従って、第1の接続配線111は共通中点接地部を構成している。第1の接続配線111は、IDT107a,107cの接地側端部をも共通接続している。そして、第1の接続配線111は、電極ランド112に連ねられている。電極ランド112上には、金属バンプ113が接合されている。
【0100】
なお、第2のフィルタ素子107のIDT107bは、並列に設けられたIDT部分107b1,107b2を有する。すなわち、IDT部分107b1,107b2と、IDT部分107b1,107b2に間挿し合う1つのくし形電極とにより、IDT107bが形成されている。平衡端子104,105は、IDT部分107b1,107b2にそれぞれ電気的に接続されている。
【0101】
図14に示すように、不平衡端子103に相当する電極ランド上に、金属バンプ114が接続されている。同様に、第1,第2の平衡端子104,105に相当する電極パッド上に、それぞれ、バンプ115,116が接合されている。
【0102】
本実施形態のように、1素子2段構成の中点接地型のバランス型弾性表面波フィルタにおいても、本発明に従って、上記のように第1の接続配線111により共通中点接地部を構成し、該共通中点接地部を、弾性表面波基板2の主面2a上において不平衡側接地部と分離することにより、帯域外減衰量の拡大及び平衡度の改善を図ることができる。
【0103】
すなわち、弾性表面波フィルタ101においても、上記バンプ110,113,114〜116を用いて、フェイスダウン工法によりパッケージ材に実装することができる。この場合、本実施形態においても、弾性表面波フィルタ101の弾性表面波基板2側において中点接地部が第1の接続配線111を用いて共通化されており、かつ不平衡側接地部と分離されている。従って、パッケージ材側において中点接地部同士を共通接続する必要はないため、第1の実施形態の場合と同様に、帯域外減衰量の拡大及び平衡度の改善を図ることができる。
【0104】
さらに、表面波基板2の主面2a上において上記のように第1の接続配線111及び第2の接続配線108が形成されており、かつこれらが交差するように高密度に配置されている。よって、弾性表面波フィルタ101では、電極密度及び接続配線の配置密度を高めることができ、それによって小型化を進めることができる。
【0105】
図15は、第4の実施形態の回路構成を示す模式的平面図であり、図16はその電極パターンを示す模式的平面図である。
【0106】
第4の実施形態の弾性表面波フィルタ装置151では、表面波基板2上に第1の実施形態の弾性表面波フィルタ1が2個構成されている。
【0107】
すなわち、弾性表面波基板2の主面2a上に、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ1と同様の電極構造が形成されている。すなわち、不平衡端子3と、第1,第2の平衡端子4,5と間に第1の実施形態の場合と同様の電極構造が形成されている。そして、上記不平衡端子3とは別に、さらに別の不平衡端子3Aが設けられており、また不平衡端子3Aに応じて、一対の第1,第2の平衡信号端子4A,5Aが形成されている。そして、不平衡端子3Aと、平衡端子4A,5A間にも、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ1と同様の電極構造が形成されている。
【0108】
すなわち、弾性表面波フィルタ装置151は、2つの第1の実施形態の弾性表面波フィルタ1,1Aを形成した構造に相当する。
【0109】
なお、図16において、弾性表面波フィルタ1A側の電極及び接続配線において、弾性表面波フィルタ1と同様の部分については、弾性表面波フィルタ素子において示した参照符号にAを付加した参照符号を付することにより、その詳細な説明は省略する。
【0110】
もっとも、弾性表面波フィルタ1Aの中心周波数は、弾性表面波フィルタ1の中心周波数と異ならされている。
【0111】
よって、本実施形態によれば、1素子1段の互いに周波数が異なる2個の弾性表面波フィルタ1,1Aが一体化された弾性表面波フィルタ装置151を得ることができる。
【0112】
なお、弾性表面波フィルタ1,1Aの共通中点接地部は、図15及び図16から明らかなように、第1の接続配線11,11Aを共通接続することにより共通化されている。同様に、不平衡側接地部同士も共通化されている。
【0113】
本実施形態のように、本発明においては、単一の弾性表面波基板上に、本発明に従って構成された複数の弾性表面波フィルタ素子を構成してもよい。その場合においても、各弾性表面波フィルタ素子が、本発明に従って構成されているため、帯域外減衰量の拡大及び平衡度の改善を図ることができ、さらに小型化を進めることができる。しかも、複数の弾性表面波フィルタ素子を単一の弾性表面波基板に構成することにより、より一層小型かつ高密度のフィルタ装置を構成することができる。
【0114】
上記のように、複数の弾性表面波フィルタ1,1Aの周波数を異ならせることにより、デュプレクサやマルチバンドフィルタとして弾性表面波フィルタ装置151を用いることができる。
【0115】
図17は、本発明の第5の実施形態に係る弾性表面波フィルタの回路構成を示す模式的平面図であり、図18は、その電極構造を示す模式的平面図である。
【0116】
弾性表面波フィルタ装置161では、弾性表面波フィルタ装置151と同様に、1つの弾性表面波基板2上に、本発明に従って構成された2個の弾性表面波フィルタ素子が構成されている。もっとも、第5の実施形態では、1つの弾性表面波フィルタ素子が、前述した第3の実施形態に係る1素子2段構成の弾性表面波フィルタ101であり、他方の弾性表面波フィルタ素子が、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ1である。
【0117】
そして、弾性表面波フィルタ101の中心周波数と、弾性表面波フィルタ1の中心周波数が異ならされている。
【0118】
また、第4の実施形態の場合と同様に、第1の弾性表面波フィルタ101の共通中点接地部と、第2の弾性表面波フィルタ1の共通中点接地部とが第1の接続配線を連ねることにより共通化されている。さらに、各弾性表面波フィルタ1,101の不平衡側接地部も接続配線を共通接続することにより共通化されている。
【0119】
図18においては、第1,第3の実施形態の電極構造の説明に用いた参照番号を付することにより、各部分の詳細な説明については、第1,第3の実施形態の説明を援用することとする。
【0120】
第5の実施形態のように、第1,第3の実施形態の弾性表面波フィルタ素子を組み合わせて、単一のチップで2個の弾性表面波フィルタ素子を構成してもよく、この場合においても、各弾性表面波フィルタ1,101において帯域外減衰量の拡大及び平衡度の改善が図られ、しかも2個の弾性表面波フィルタ101,1が一体化されているため、より一層小型化を図ることができる。
【0121】
図19は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置における弾性表面波フィルタチップの電極構造を示す模式的平面図である。第6の実施形態の弾性波装置は、図19に平面図で示されている弾性表面波フィルタチップ181を、後述のパッケージ材としてのパッケージ基板上にバンプにより接合した構造を有する。
【0122】
本実施形態で用いられている弾性表面波フィルタチップ181では、第4の実施形態の弾性表面波フィルタ装置151と同様に、表面波基板2上に第1の実施形態の弾性表面波フィルタ1が2個構成されている。
【0123】
すなわち、弾性表面波フィルタチップ181も、2個の第1の実施形態の弾性表面波フィルタ1,1Aを1つの表面波基板において形成した構造を有する。
【0124】
なお、図19においては、弾性表面波フィルタ1A側の電極及び接続配線において、弾性表面波フィルタ1と同様の部分について、弾性表面波フィルタ1において示した参照番号にAを付加した参照番号を付することにより、その詳細な説明は省略する。
【0125】
もっとも、第4の実施形態の弾性表面波フィルタ装置151の場合と同様に、弾性表面波フィルタ1Aの中心周波数は、弾性表面波フィルタ1の中心周波数と異なっている。
【0126】
よって、本実施形態によれば、1素子1段構成を有し、互いの周波数が異なっている、第1,第2の弾性表面波フィルタ1,1Aが一体化された弾性表面波フィルタチップ181が用いられている。このような弾性表面波フィルタチップ181により、デュプレクサやマルチバンドフィルタを構成することができる。
【0127】
例えば、第1の弾性表面波フィルタでDCS受信用フィルタを構成し、第2の弾性表面波フィルタでPCS受信用フィルタを構成することができる。
【0128】
なお、弾性表面波フィルタ1,1Aの共通中点接地部は、図19から明らかなように、第1の接続配線11,11Aを共通接続することにより共通化されている。
【0129】
しかしながら、第4の実施形態の場合とは異なり、本実施形態では、不平衡側接地部12,12Aは、共通化されていない。
【0130】
本実施形態では、上記弾性表面波フィルタチップ181が、図20に示すパッケージ材としてのパッケージ基板182に搭載される。図20に平面図で示すパッケージ基板182では、弾性表面波フィルタチップ181の種々の電気的接続部分がバンプにより接合される複数の電極ランド301〜309が設けられている。ここでは、電極ランド308,309は、弾性表面波フィルタチップ181の不平衡側接地部12,12Aがバンプ接合される第2,第3の電極ランドに相当し、電極ランド307が、上記共通中点接地部がバンプ接合される電極ランドに相当する。本実施形態では、上記第1〜第3の電極ランドとしての電極ランド307〜309が分離されている。
【0131】
参考例として、図22のパッケージ基板に上記弾性表面波フィルタチップをバンプにより接合し、実装して参考例の弾性波装置を作製した。図22に示すパッケージ基板183は、第2,第3の電極ランドが一体化されて、電極ランド308bとされていることを除いては、上記パッケージ基板182と同様に構成されている。従って、参考例の弾性波装置では、不平衡側接地部12と、不平衡側接地部12Aとがパッケージ基板上において電気的に分離されていない。
【0132】
第6の実施形態の弾性波装置と、上記参考例の弾性波装置の周波数−アイソレーション特性を測定した。つまり、PCS受信用フィルタとしての第2の弾性表面波フィルタから入力された信号がDCS受信用フィルタ(通過帯域が1805〜1880MHzである。)としての第1の弾性表面波フィルタに出力されるレベル(アイソレーション)を測定した。結果を図21に示す。図21において、実線が第6の実施形態の結果を、破線が参考例の結果を示す。
【0133】
アイソレーション特性は減衰量が大きいほど良好である。
【0134】
図21から明らかなように、パッケージ基板182を用い、第1〜第3の電極ランドを分離することにより、アイソレーション特性を高め得ることができることがわかる。
【0135】
上記のように、本発明においては、単一の弾性表面波基板上に、本発明に従って構成された複数の弾性表面波フィルタ素子を構成し、単一の弾性表面波基板上で複数の弾性表面波フィルタの不平衡側接地部同士を分離し、さらに複数の弾性表面波フィルタの各不平衡側接地部が接続される電極ランドを互いに分離してもよい。この場合においても、各弾性表面波フィルタ素子が、本発明に従って構成されているため、帯域外減衰量の拡大及び平衡度の改善を図ることができ、小型化できる。しかも、単一の弾性表面波基板に構成されている複数の弾性表面波フィルタ素子間のアイソレーションを改善することができる。
【0136】
なお、第6の実施形態で用いた弾性表面波フィルタチップ181において、弾性表面波フィルタ1,1Aの共通中点接地部11,11Aは分離されていてもよく、また不平衡側接地部12,12Aが分離されていてもよい。
【0137】
このような構造の弾性表面波フィルタチップを例えば上記パッケージ基板181に搭載した場合のアイソレーション特性は、上記第6の実施形態の場合のアイソレーション特性とほぼ同等であることが確かめられている。
【0138】
なお、第1〜第5の実施形態では、全て弾性表面波を利用した弾性表面波フィルタ素子及び弾性表面波フィルタ装置につき説明したが、本発明は、弾性境界波を利用した弾性境界波フィルタや弾性境界波フィルタ装置にも摘要することができる。
【0139】
図23は、このような弾性境界波フィルタの一例を模式的に示す正面断面図である。弾性境界波フィルタ171では、第1の媒質層172と第2の媒質層173との境界に、フィルタを構成するためのIDT電極174a〜174cが形成されている。そして、スルーホール電極175a〜175cにより、媒質層172の下面に形成された電極パッド176a〜176cにIDT電極174a〜174cが接続されている。
【0140】
また、電極パッド176a〜176cには、バンプ177a〜177cが接合されている。
【0141】
このような弾性境界波フィルタ171においても、IDT電極174a〜174cなどを含む電極構造として、上述した第1〜第5の実施形態に示したように構成し、それによって平衡−不平衡変換機能を有する境界波フィルタを構成することができる。そして、第1〜第5の実施形態の場合と同様に、共通中点接地部及び不平衡側接地部を弾性境界波フィルタ171側において構成することにより、帯域外減衰量の拡大、平衡度の改善及び小型化を図ることができる。
【0142】
なお、弾性境界波フィルタ171では、振動は第1,第2の媒質層172,173間に閉じ込められ、第2の媒質層172の下面を実装面として用いることができる。従って、弾性境界波フィルタ171は、バンプ177a〜177cにより、パッケージ材ではなく、回路基板に直接実装される。すなわち、空洞形成パッケージを必要としないため、弾性境界波フィルタ171は、バンプ177a〜177cを用いて直接組み込まれる機器の回路基板などに実装され得る。その場合においても、回路基板側において、アース電極を共通化する必要はないため、組み込まれる機器の小型化を進めることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不平衡端子と第1,第2の平衡端子とを有するバランス型弾性波フィルタであって、
弾性波基板と、
前記弾性波基板上に形成されており、不平衡端子と第1の平衡端子との間に接続された少なくとも3個のIDTを有する縦結合型の第1のフィルタ素子と、
前記弾性波基板上に形成されており、不平衡端子と、第1のフィルタ素子の第1の平衡端子とは逆位相の信号が流れる第2の平衡端子との間に接続された少なくとも3個のIDTを有する縦結合型の第2のフィルタ素子と、
前記第1のフィルタ素子の第1の平衡端子に接続されているIDTの接地側端部と、前記第2のフィルタ素子の第2の平衡端子に接続されているIDTの接地側端部とを接続して共通中点接地部を構成しており、かつ前記弾性波基板上に設けられた第1の接続配線と、
前記第1のフィルタ素子において、不平衡端子に接続されているIDTの接地側端部と、前記第2のフィルタ素子において、不平衡端子に接続されているIDTの接地側端部とを接続して不平衡側接地部を構成しており、かつ前記弾性波基板上に設けられた第2の接続配線とを有し、
前記共通中点接地部と、前記不平衡側接地部とが弾性波基板上において電気的に分離されていることを特徴とする、バランス型弾性波フィルタ。
【請求項2】
弾性波基板と、
前記弾性波基板上に形成されており、不平衡端子と、第1,第2の平衡端子と、不平衡端子と前記第1,第2の平衡端子との間に接続された少なくとも3個のIDTとを有する縦結合型の第1のフィルタ素子と、
前記第1のフィルタ素子の第1,第2の平衡端子に接続された第3,第4の平衡端子と、第5,第6の平衡端子とを有し、かつ第3,第4の平衡端子と、第5,第6の平衡端子との間に接続された複数のIDTを有する縦結合型の第2のフィルタ素子と、
第1のフィルタ素子の第1の平衡端子が接続されているIDT及び第2の平衡端子が接続されているIDTの各接地側端部と、第2のフィルタ素子の第3,第4の平衡端子が接続されているIDTの各接地側端部とを接続しており、共通中点接地部を構成しており、かつ前記弾性波基板上に設けられた第1の接続配線と、
前記第1のフィルタ素子の不平衡端子に接続されているIDTの接地側端部に接続されて、不平衡側接地部を構成するように、弾性波基板上に設けられた第2の接続配線とを有し、
前記共通中点接地部と、前記不平衡側接地部とが前記弾性波基板上において電気的に分離されていることを特徴とする、バランス型弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記不平衡端子と、該不平衡端子と接続されている少なくとも1つのIDTとを接続しており、前記第1の接続配線と弾性波基板上において交差されている第3の接続配線と、
前記第1の接続配線と第3の接続配線とが交差している部分において第1,第3の接続配線間に配置された層間絶縁膜とをさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のバランス型弾性波フィルタ。
【請求項4】
パッケージ材をさらに備え、前記パッケージ材が、前記共通中点接地部とバンプ接続される第1の電極ランドと、前記不平衡側接地部とバンプ接続される第2の電極ランドとを有し、
前記第1の電極ランドと前記第2の電極ランドとが前記パッケージ材上で分離されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバランス型弾性波フィルタ。
【請求項5】
前記弾性波が弾性表面波である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバランス型弾性波フィルタ。
【請求項6】
弾性波基板上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバランス型弾性波フィルタとしての第1のバランス型弾性波フィルタと、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバランス型弾性波フィルタとしての第2のバランス型弾性波フィルタとが構成されており、
前記第1のバランス型弾性波フィルタの中心周波数と、第2のバランス型弾性波フィルタの中心周波数とが異なっており、
第1のバランス型弾性波フィルタの共通中点接地部が、第2のバランス型弾性波フィルタの共通中点接地部と共通接続されており、
第1のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部が、第2のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部と共通接続されており、共通接続された双方の共通中点接地部と、共通接続された双方の不平衡側接地部とが前記弾性波基板上において電気的に分離されていることを特徴とする、弾性波フィルタ装置。
【請求項7】
弾性波基板上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバランス型弾性波フィルタとしての第1のバランス型弾性波フィルタと、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバランス型弾性波フィルタとしての第2のバランス型弾性波フィルタとが構成されており、
前記第1のバランス型弾性波フィルタの中心周波数と、第2のバランス型弾性波フィルタの中心周波数とが異なっており、
第1のバランス型弾性波フィルタの共通中点接地部が、第2のバランス型弾性波フィルタの共通中点接地部と共通接続されており、
共通接続された双方の共通中点接地部と、第1のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部と、第2のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部とが前記弾性波基板上において電気的に分離されており、
パッケージ材をさらに備え、前記パッケージ材が共通中点接地部とバンプにより接続される第1の電極ランドと、前記第1のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部とバンプにより接続される第2の電極ランドと、前記第2のバランス型弾性波フィルタの不平衡側接地部とバンプにより接続される第3の電極ランドとを有し、
前記第1の電極ランドと前記第2の電極ランドと前記第3の電極ランドとが、前記パッケージ材において分離されていることを特徴とする、弾性波フィルタ装置。
【請求項8】
デュプレクサまたはマルチバンドフィルタである、請求項6または7に記載の弾性波フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【国際公開番号】WO2006/003787
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523758(P2006−523758)
【国際出願番号】PCT/JP2005/010911
【国際出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【特許番号】特許第3918102号(P3918102)
【特許公報発行日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】