説明

バランス型弾性波フィルタ装置

【課題】 平衡−不平衡変換機能を有し、不平衡端子のインピーダンスと平衡端子のインピーダンスとの比が大きくされている弾性波フィルタ装置を得る。
【解決手段】 圧電基板2上に縦結合共振子型の第1,第2の弾性表面波フィルタ部6,7が形成されており、弾性表面波フィルタ部6,7は、それぞれ、表面波伝搬方向に配置された第1〜第3のIDT11〜13及び第4〜第6のIDT14〜16を有し、第1,第3のIDT11,13及び第4,第6のIDT14,16が不平衡端子3に接続されており、第2,第5のIDT12,15が、それぞれ、第1,第2の平衡端子4,5に接続されており、第2,第5のIDT12,15が、表面波伝搬方向に分割されて設けられた第1,第2の分割IDT部12a,12b,15a,15bを有し、第1,第2の分割IDT部12a,12b,15a,15bが直列接続されている、弾性波フィルタ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡−不平衡変換機能を有するバランス型弾性波フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波フィルタは、移動体通信機器において、アンテナと差動アンプとの間に帯域フィルタとして接続されることが多い。この場合、アンテナは不平衡信号を入出力する。他方、差動アンプは平衡信号を入出力する。従って、アンテナと差動アンプとの間において、不平衡−平衡変換機能を有する部品を挿入する必要がある。平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタを上記帯域フィルタとして用いた場合には、平衡−不平衡変換機能を実現する部品、すなわちバランを省略することができる。従って、従来、平衡−不平衡変換機能を有するバランス型弾性表面波フィルタが種々提案されている。
【0003】
もっとも、アンテナの特性インピーダンスは通常50Ωであり、差動アンプの特性インピーダンスは100Ω以上であり、1000Ω程度であることも珍しくない。従って、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタでは、インピーダンス変換機能をも併せ持つことが求められている。
【0004】
下記の特許文献1には、このようなインピーダンス変換機能を有するバランス型弾性表面波フィルタ装置が開示されている。
【0005】
図4は、特許文献1に記載のバランス型弾性表面波フィルタ装置の電極構造を示す模式的平面図である。弾性表面波フィルタ装置101は、不平衡端子102と、第1,第2の平衡端子103,104とを有する。不平衡端子102に、第1,第2の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ105,106が接続されている。弾性表面波フィルタ105,106は、それぞれ、第1〜第3のIDT105a〜105c,106a〜106cを有する3IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタである。IDT105a〜105c,106a〜106cの表面波伝搬方向両側には、それぞれ、反射器105d,105e,106d,106eが配置されている。
【0006】
中央の第2のIDT105b,106bが、共通接続され、不平衡端子102に接続されている。弾性表面波フィルタ105の両側のIDT105a,105cが共通接続され、第1の平衡端子103に接続されている。また、弾性表面波フィルタ106の第1,第3のIDT106a,106cが共通接続されて第2の平衡端子104に接続されている。第1,第2の弾性表面波フィルタ105,106の位相は180°異ならされている。
【0007】
特許文献1に記載の弾性表面波フィルタ装置101では、第1,第2の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ105,106の表面波伝搬路が同じ方向に配置されており、かつ第1,第2の弾性表面波フィルタ105,106間の間隔をd1、使用されている圧電基板の厚みをtとしたときに、d1≦2.3×tまたはd1≧2.8×tとされており、それによって伝送特性が改善され得ると記載されている。
【0008】
また、弾性表面波フィルタ装置101では、弾性表面波フィルタ105,106の入力インピーダンスをZとしたとき、不平衡端子102におけるインピーダンスは、弾性表面波フィルタ105,106の入力インピーダンスを並列接続したインピーダンスとなるため、約Z/2となる。平衡端子103,104におけるインピーダンスは、弾性表面波フィルタ105,106のインピーダンスを直列接続したインピーダンスであるため、約2Zとなる。従って、不平衡端子102におけるインピーダンスと、平衡端子103,104におけるインピーダンスとの比は約1:4とされ得る。
【特許文献1】特開2002−290203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、特許文献1に記載の弾性表面波フィルタ装置では、不平衡端子102側のインピーダンスと、平衡端子103,104側のインピーダンスとの比を約1:4とすることが可能とされている。
【0010】
従って、例えばアンテナの入出力インピーダンスが50Ωであり、弾性表面波フィルタ装置の後段に接続される差動アンプの特性インピーダンスが200Ω程度である場合には、上記バランス型弾性表面波フィルタ装置101を好適に用いることができる。
【0011】
しかしながら、近年、この種の用途で用いられる差動アンプの特性インピーダンスは200Ωよりも大きくなってきており、前述したように、1000Ω程度であることも珍しくない。
【0012】
従って、特許文献1に記載のバランス型弾性表面波フィルタ装置101を用いたとしても、このような大きな特性インピーダンスを有する差動アンプが後段に接続される場合、インピーダンスを変換する部品をさらに接続しなければならなかった。すなわち、特許文献1に記載のバランス型弾性表面波フィルタ装置では、インピーダンス変換機能が十分でなく、従って入出力インピーダンス比をより一層大きくすることが可能なバランス型弾性表面波フィルタ装置が求められている。
【0013】
他方、近年、弾性表面波フィルタだけでなく、弾性境界波などの他の弾性波を利用した弾性波フィルタ装置も知られている。弾性境界波フィルタは圧電基板と誘電体とが積層された境界にIDTを有しており、境界を伝搬する弾性境界波を用いる。弾性表面波フィルタとまったく同じような電極を形成して弾性境界波フィルタを構成できる。このような弾性波フィルタ装置一般においても、上記のように平衡−不平衡変換機能と、大きなインピーダンス変換機能とを有することが求められている。
【0014】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、平衡−不平衡変換機能を有するだけでなく、不平衡端子側のインピーダンスと平衡端子側のインピーダンスとの比がより一層大きくされたインピーダンス変換機能を有する弾性波フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、不平衡端子と、第1,第2の平衡端子とを有するバランス型弾性波フィルタ装置であって、圧電基板と、前記圧電基板に形成されており、3IDT型かつ縦結合共振子型の第1,第2の弾性波フィルタ部とを備え、前記第1の弾性波フィルタ部が、前記第1の平衡端子に接続されている第2のIDTと、弾性波伝搬方向において第2のIDTの両側に配置されており、かつ前記不平衡端子に接続されている第1,第3のIDTとを有し、前記第2の弾性波フィルタ部が、前記第2の平衡端子に接続されている第5のIDTと、弾性波伝搬方向において第5のIDTの両側に配置されており、かつ前記不平衡端子に接続されている第4,第6のIDTとを有し、前記第1の平衡端子に流れる電気信号の位相が、前記第2の平衡端子に流れる電気信号の位相と180度異なるように前記第1〜第6のIDTが構成されており、前記第1の弾性波フィルタ部の前記第2のIDTと、前記第2の弾性波フィルタ部の前記第5のIDTとが、それぞれ、弾性波伝搬方向に分割されて設けられた第1,第2の分割IDT部を有し、該第1,第2の分割IDT部が電気的に直列に接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のある特定の局面では、前記第2のIDTの弾性波伝搬方向両側に位置する最外側電極指が第2のIDTにおいて第1,第2の分割IDT部を直列接続している部分に接続されており、前記第5のIDTの弾性波伝搬方向両側に位置する最外側電極指が、第5のIDTにおいて第1,第2の分割IDT部を直列接続している部分に接続されている。
【0017】
本発明に係るバランス型弾性波フィルタ装置の他の特定の局面では、上記弾性波として弾性波表面波が用いられ、それによってバランス型の弾性波表面波フィルタ装置が構成される。
【0018】
本発明に係るバランス型弾性波フィルタ装置の他の特定の局面では、上記弾性波として、弾性境界波が用いられ、それによってバランス型弾性境界波フィルタ装置が構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るバランス型弾性波フィルタ装置は、縦結合共振子型の第1,第2の弾性波フィルタ部を備えており、第1の弾性波フィルタ部の第2のIDTが第1の平衡端子に、第1,第3のIDTが不平衡端子に接続されており、第2の弾性波フィルタ部における中央の第5のIDTが第2の平衡端子に接続されており、第4,第6のIDTが不平衡端子に接続されており、第1の平衡端子に流れる電気信号の位相が、第2の平衡端子に流れる電気信号の位相と180°異なるように第1〜第6のIDTが構成されている。従って、平衡−不平衡変換機能を有するバランス型弾性波フィルタ装置を提供することができる。
【0020】
しかも、第1の弾性波フィルタ部の第2のIDTと、第2の弾性波フィルタ部の第5のIDTとは、それぞれ、弾性波伝搬方向に分割されて設けられた第1,第2の分割IDT部を有し、該第1,第2の分割IDT部が電気的に直列接続されているため、不平衡端子側のインピーダンスと平衡端子側のインピーダンスとの比が約1:16とされ得る。
【0021】
すなわち、第1,第2の弾性波フィルタ部の第2,第5のIDTを第1,第2の平衡端子に、第1,第3のIDT及び第4,第6のIDTを不平衡端子に接続するように第1,第2の弾性波フィルタ部を設けた構成では、特許文献1に記載の構成と同様に、不平衡端子側のインピーダンスと平衡端子側のインピーダンスとの比は約1:4である。
【0022】
また、本発明では、第2,第5のIDTが、それぞれ弾性波伝搬方向に二分割され、かつ第2,第5のIDTにおいて、それぞれ、第1,第2の分割IDT部が直列に接続されているため、平衡端子側のインピーダンスを特許文献1に記載の弾性表面波フィルタの場合に比べて4倍の大きさとすることができる。よって、本発明によれば、不平衡端子側のインピーダンスと、平衡端子側のインピーダンスとの比を約1:16とすることができる。従って、平衡−不平衡変換機能を有し、かつ大きなインピーダンス変換機能を有する弾性波フィルタ装置を提供することが可能となる。
【0023】
本発明において、第2のIDTの弾性波伝搬方向両側に位置する最外側電極指が第1,第2の分割IDT部を直列接続している部分に接続されており、第5のIDTの弾性波伝搬方向両側に位置する最外側電極指が、第5のIDTにおいて第1,第2の分割IDT部を直列接続している部分に接続されている場合には、第1,第2の平衡端子に接続されるIDTである、第2,第5のIDTにおいて、隣接する第1,第3のIDTや第4,第6のIDTに隣り合う電極指である最外側電極指が上記直列接続部分に接続されることになる。従って、第2,第5のIDTと、第1,第3のIDTまたは第4,第6のIDTとが隣り合っている部分において、平衡信号が印加された電極指と、不平衡信号が印加された電極指とが隣り合うことがない。よって、帯域外減衰量の拡大及び平衡度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性表面波フィルタ装置の模式的平面図である。本実施形態では、弾性波フィルタ装置として、3IDT型の縦結合共振子型の第1,第2の弾性表面波フィルタ部を有する弾性表面波フィルタ装置が構成されている。
【0025】
弾性表面波フィルタ装置1は、圧電基板2を有する。圧電基板2は、LiTaO3、LiNbO3または水晶などの圧電単結晶、あるいは圧電セラミックスからなる。また、圧電基板2は、圧電材料からなる基板または絶縁基板上に圧電薄膜を形成した構造を有していてもよい。
【0026】
本実施形態の弾性表面波フィルタ装置1は、平衡−不平衡変換機能を有するバランス型弾性表面波フィルタ装置であり、不平衡端子3と、第1,第2の平衡端子4,5とを有する。
【0027】
圧電基板2上に、3IDT型の縦結合共振子型の第1,第2の弾性表面波フィルタ部6,7が構成されている。
【0028】
第1の弾性表面波フィルタ部6では、弾性表面波伝搬方向に沿って第1〜第3のIDT11〜13が配置されている。また、第2の弾性表面波フィルタ部7においても、弾性表面波伝搬方向に沿って第4〜第6のIDT14〜16が配置されている。
【0029】
第1の弾性表面波フィルタ部6において、第1〜第3のIDT11〜13が設けられている領域の表面波伝搬方向両側には反射器17a,17bが配置されている。また、第2の弾性表面波フィルタ部7においては、第4〜第6のIDT14〜16が設けられている領域の表面波伝搬方向両側には反射器18a,18bが配置されている。
【0030】
第1の弾性表面波フィルタ部6において、中央の第2のIDT12の両側に位置する第1,第3のIDT11,13の一端が共通接続され、かつ弾性表面波共振子8を介して不平衡端子3に接続されている。同様に、第2の弾性表面波フィルタ部7の中央のIDT15の両側に位置する第4,第6のIDT14,16が共通接続され、1ポート型の弾性表面波共振子8を介して不平衡端子3に接続されている。
【0031】
なお、弾性表面波共振子8は、IDT8aと、IDT8aの表面波伝搬方向両側に配置された反射器8b,8cとを有する。
【0032】
第1の弾性表面波フィルタ部6の中央の第2のIDT12は、一方のバスバーを分割することにより形成された、第1,第2の分割IDT部12a,12bを有する。第1,第2の分割IDT部12a,12bは、表面波伝搬方向に配置されている。すなわち、IDT12を表面波伝搬方向に二分割することにより、第1,第2の分割IDT部12a,12bが設けられている。
【0033】
分割IDT部12a,12bは、バスバー12cにより直列に接続されている。第1の分割IDT部12aは、第1のIDT11側に位置しており、かつ1ポート型の弾性表面波共振子9を介して第1の平衡端子4に接続されている。
【0034】
弾性表面波共振子9は、IDT9aと、IDT9aの表面波伝搬方向両側に配置された反射器9b,9cとを有する。
【0035】
他方、第2の弾性表面波フィルタ部7の中央の第5のIDT15も同様に、表面波伝搬方向に二分割することにより設けられた第1,第2の分割IDT部15a,15bを有し、第1,第2の分割IDT部15a,15bは、バスバー15cにより直列に接続されている。
【0036】
第2の分割IDT部15bが1ポート型の弾性表面波共振子10を介して第2の平衡端子5に接続されている。弾性表面波共振子10は、IDT10aと、IDT10aの表面波伝搬方向両側に配置された反射器10b,10cとを有する。
【0037】
本実施形態では、第1〜第6のIDT11〜16が、上記第1,第2の平衡端子で取り出される信号の位相が180°異なるように配置されている。
【0038】
他方、本実施形態の弾性表面波フィルタ装置1では、不平衡端子3に第1,第2の弾性表面波フィルタ部6,7の第1,第2のIDT11,13及び第4,第6のIDT14,16が接続されており、中央の第2,第5のIDT12,15が第1,第2の平衡端子4,5にそれぞれ接続されている構成によりインピーダンス比を4倍とすることが可能とされており、さらに、第2,第5のIDT12,15が上記のように構成されているため、不平衡端子3と平衡端子4,5とのインピーダンス比を約1:16とすることができる。
【0039】
すなわち、第2のIDT12及び第5のIDT15は、それぞれ、第1,第2の分割IDT部12a,12b,15a,15bを有する。また、第1,第2の分割IDT部12a,12bは電気的に直列に接続されており、第1,第2の分割IDT部15a,15bも電気的に直列に接続されている。従って、第2,第5のIDT12,15の特性インピーダンスは、上記第1,第2の分割IDT部12a,12b,15a,15bを設けない場合に比べて4倍とされている。よって、本実施形態では、不平衡端子3と第1,第2の平衡端子4,5とのインピーダンス比を約1:16と非常に大きくすることが可能とされている。
【0040】
加えて、本実施形態では、第2のIDT12の表面波伝搬方向両側に位置する最外側電極指12d,12eが、バスバー12cに接続されている。すなわち、最外側電極指12d,12eは第1,第2の分割IDT部12a,12bを直列接続している部分に接続されている。
【0041】
よって、第1のIDT11と第2のIDT12とが隣り合っている部分においては、電極指12dが第1のIDT11と隣り合っているが、電極指12dは第1の平衡端子4に流れる平衡信号が印加される電極指とは異なる電極指である。言い換えれば、第1のIDT11の第2のIDT12側の最外側電極指11aには不平衡信号が印加されるが、第2のIDT12の第1のIDT11側の最外側電極指12dには平衡信号は印加されない。従って、第1,第2のIDT11,12が隣り合っている部分において、平衡信号が印加される電極指と、不平衡信号が印加される電極指とが隣り合うことにはならない。
【0042】
平衡信号が流れる電極指と、不平衡信号が流れる電極指とが隣り合っている場合には、両者の間の電磁結合により直達波が生じ、帯域外減衰量が低下したり、平衡信号の平衡度が低下するおそれがある。これに対して、上記第1,第2のIDT11,12が隣り合っている部分では、前述したように平衡信号が印加される電極指と不平衡信号が印加される電極指とが隣り合わないため、帯域外減衰量の拡大及び平衡度の向上を図ることができる。
【0043】
同様に、第2のIDT12の第3のIDT13側の最外側電極指12eと、第3のIDT13の第2のIDT12側の電極指13aとが隣り合っている部分においても、平衡信号が印加される電極指と、不平衡信号が印加される電極指とが隣り合うことにはならない。
【0044】
さらに、第2の弾性表面波フィルタ部7においても、第5のIDT15の弾性表面波伝搬方向両側の最外側電極指15d,15eは、第1,第2の分割IDT部15a,15bを直列に接続している部分であるバスバー15cに接続されている。従って、第5のIDT15の最外側電極指15dと、第4のIDT14の第5のIDT15側の電極指14aとが隣り合っている部分、並びに第5のIDT15の最外側電極指15eと、第6のIDT16の第5のIDT15側の最外側電極指16aとが隣り合っている部分においても、平衡信号が印加される電極指と不平衡信号が印加される電極指とが隣り合うことはない。よって、帯域外減衰量の拡大及び平衡度の改善を図ることが可能とされている。
【0045】
もっとも、本発明においては、第2,第5のIDT12,15の最外側電極指12d,12e,15d,15eは、第1,第2の分割IDT部12a,12b,15a,15bを直列接続している部分に電気的に接続される必要は必ずしもない。このような変形例を図2に模式的平面図で示す。
【0046】
図2に示す変形例の弾性表面波フィルタ装置21では、第2のIDT22及び第5のIDT25は、第1,第2の分割IDT部22a,22b,25a,25bを有する。もっとも、第2,第5のIDT22,25の表面波伝搬方向最外側に位置する一方の電極指22d,22e及び25e,25dは、それぞれ、第1,第2の分割IDT部22a,22b,25a,25bを直列接続している部分であるバスバー22c,25cに電気的に接続されていない。
【0047】
なお、図2に示した弾性表面波フィルタ装置21は、第2,第5のIDT22,25が上記のように構成されていることを除いては、上記実施形態の弾性表面波フィルタ装置1と同様に構成されている。従って、同一部分については、同一の参照番号を付することによりその説明を省略する。
【0048】
また、電極指22dには、第1の平衡端子4に印加される信号が印加される。この場合、第1,第2のIDT11,22間において直達波が生じるおそれがあるが、この変形例においても、不平衡端子3側のインピーダンスと、平衡端子4,5側のインピーダンスとの比を約1:16と大きくすることができ、本発明によって、大きなインピーダンス変換機能を有するバランス型弾性表面波フィルタ装置を提供することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態及び変形例では、適宜1ポート型の弾性表面波共振子を介して不平衡端子3や平衡端子4,5にIDTが接続されていたが、1ポート型の弾性表面波共振子は必ずしも設けられずともよい。
【0050】
上述してきた実施形態及び変形例の弾性表面波フィルタ装置は、上記のように弾性表面波を利用したものであるが、本発明は、弾性表面波に代えて、弾性境界波などの他の弾性波を用いたものであってもよい。図3は、弾性境界波フィルタ装置の構造を模式的に示す正面断面図である。この弾性境界波フィルタ装置31では、第1の媒質層としての圧電基板32と、第2の媒質層としての誘電体33とが積層されている。圧電基板32と誘電体33との境界に複数のIDTを有する電極34が形成されている。この境界を伝搬する弾性境界波を利用してフィルタとしての特性が得られる。この場合、弾性境界波フィルタ装置31の電極34の構造を、前述した弾性表面波フィルタについての実施形態における電極構造と同様に形成することにより、本発明の弾性波フィルタ装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る弾性表面波フィルタ装置の模式的平面図。
【図2】本発明の図1に示した実施形態の変形例に係る弾性表面波フィルタ装置を示す模式的平面図。
【図3】本発明が適用される弾性境界波装置の模式的正面断面図。
【図4】従来のバランス型弾性表面波フィルタ装置を説明するための模式的平面図。
【符号の説明】
【0052】
1…弾性表面波フィルタ装置
2…圧電基板
3…不平衡端子
4,5…第1,第2の平衡端子
6,7…弾性表面波フィルタ部
8,9,10…弾性表面波共振子
8a,9a…IDT
8b,8c…反射器
9b,9c…反射器
11〜16…IDT
12a,12b…第1,第2の分割IDT部
12c…バスバー
12d,12e…電極指
15a,15b…第1,第2の分割IDT部
15c…バスバー
15d,15e…電極指
17a,17b,18a,18b…反射器
21…弾性表面波フィルタ装置
22,25…IDT
22a,22b…第1,第2の分割IDT部
25a,25b…第1,第2の分割IDT部
22c,25c…バスバー
22d,25e…電極指
31…弾性境界波フィルタ装置
32…圧電基板
33…誘電体
34…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不平衡端子と、第1,第2の平衡端子とを有するバランス型弾性波フィルタ装置であって、
圧電基板と、
前記圧電基板に形成されており、3IDT型かつ縦結合共振子型の第1,第2の弾性波フィルタ部とを備え、
前記第1の弾性波フィルタ部が、前記第1の平衡端子に接続されている第2のIDTと、弾性波伝搬方向において第2のIDTの両側に配置されており、かつ前記不平衡端子に接続されている第1,第3のIDTとを有し、
前記第2の弾性波フィルタ部が、前記第2の平衡端子に接続されている第5のIDTと、弾性波伝搬方向において第5のIDTの両側に配置されており、かつ前記不平衡端子に接続されている第4,第6のIDTとを有し、
前記第1の平衡端子に流れる電気信号の位相が、前記第2の平衡端子に流れる電気信号の位相と180度異なるように前記第1〜第6のIDTが構成されており、
前記第1の弾性波フィルタ部の前記第2のIDTと、前記第2の弾性波フィルタ部の前記第5のIDTとが、それぞれ、弾性波伝搬方向に分割されて設けられた第1,第2の分割IDT部を有し、該第1,第2の分割IDT部が電気的に直列に接続されていることを特徴とする、バランス型弾性波フィルタ装置。
【請求項2】
前記第2のIDTの弾性波伝搬方向両側に位置する最外側電極指が第2のIDTにおいて第1,第2の分割IDT部を直列接続している部分に接続されており、前記第5のIDTの弾性波伝搬方向両側に位置する最外側電極指が、第5のIDTにおいて第1,第2の分割IDT部を直列接続している部分に接続されている、請求項1に記載のバランス型弾性波フィルタ装置。
【請求項3】
前記弾性波として、弾性波表面波を用い、それによって弾性波表面波フィルタ装置が構成されている、請求項1または2に記載のバランス型弾性波フィルタ装置。
【請求項4】
前記弾性波として、弾性境界波が用いられ、それによって弾性境界波フィルタ装置が構成されている、請求項1または2に記載のバランス型弾性波フィルタ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−229487(P2006−229487A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39629(P2005−39629)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】