説明

バリア性フィルム基板およびそれを用いた有機電界発光素子

【課題】 水蒸気バリア性が高くて、有機EL素子の基板として使用したときにダークスポットを効果的に抑えることができて、かつ膜強度が高いフィルム基板を提供すること。
【解決手段】 プラスチックフィルム上に少なくとも1層の有機層と少なくとも2層の無機層からなる有機層と無機層の交互積層体を有してなるバリア性フィルム基板であって、前記有機層がポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される1以上の有機化合物を含み、前記有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性フィルム基板に関するものであり、特に各種デバイスの基板に好適な積層型のバリア性フィルム基板に関し、さらに前記バリア性フィルム基板を用いた耐久性およびフレキシブル性に優れた有機電界発光素子(以下「有機EL素子」と呼ぶ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したバリア性フィルムは、水蒸気や酸素など各種ガスの遮断を必要とする物品の包装や、食品、工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている
【0003】
近年、液晶表示素子や有機EL素子等の分野においては、重くて割れやすいガラス基板に代わって、プラスチックフィルム基板が採用され始めている。プラスチックフィルム基板はロールトゥロール(Roll to Roll)方式に適用可能であることから、コストの点でも有利である。しかし、プラスチックフィルム基板はガラス基板と比較して水蒸気バリア性に劣るという問題がある。このため、プラスチックフィルム基板を液晶表示素子に用いると、水蒸気が液晶セル内に侵入し、表示欠陥が発生する。
【0004】
この問題を解決するために、プラスチックフィルム上に金属酸化物薄膜を形成したバリア性フィルム基板を用いることが知られている。バリア性フィルム基板としては、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や、酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られており、これらはいずれも水蒸気透過率が1g/m2/day程度となるバリア性を有する。
【0005】
しかし、有機EL素子に用いるための基板には、水蒸気透過率が0.01g/m2/day未満となるような高いバリア性が要求される。かかる要求に応えるための手段として、有機層と無機層の交互積層構造を有するバリア膜を真空蒸着法により作製する技術が提案されている(例えば、特許文献3〜8および非特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特公昭53−12,953号公報(第1頁〜第3頁)
【特許文献2】特開昭58−217,344号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献3】米国特許第6,413,645B1号明細書(第4頁[2−54]〜第8頁[8−22])
【特許文献4】米国特許第5,757,126B1号明細書(第2頁[2−46]〜第7頁[7−7])
【特許文献5】米国特許第5,686,360B1号明細書(第2頁[2−43]〜第7頁[7−4])
【特許文献6】米国特許第6,231,939B1号明細書(第1頁[1−46]〜第12頁[12−17])
【特許文献7】米国特許第6,492,026B1号明細書(第2頁[2−31]〜第8頁[8−45])
【特許文献8】米国特許第6,522,067B1号明細書(第1頁[1−56]〜第7頁[7−14])
【非特許文献1】Affinitoら著「Thin Solid Films」(1996)、P.290〜291(第63頁〜第67頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、有機EL素子の水蒸気遮断性を単に高めるだけでは、有機EL素子に発生する非発光故障(以下、「ダークスポット」と呼ぶ)を満足が行く程度に抑えることはできない。また、プラスチックフィルムは曲げ等の応力によって変形するが、このような変形の際にバリア膜が損傷してバリア性が低下するという課題もある。
これらの従来技術の課題を考慮して、本発明の第1の目的は、水蒸気バリア性が高くて、有機EL素子の基板として使用したときにダークスポットを効果的に抑えることができて、かつ膜強度が高いフィルム基板を提供することに設定した。また、本発明の第2の目的は、ダークスポットが発生せず、表示特性が優れた有機EL素子を提供することに設定した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らは、有機層をアクリレートの重合によって作成した従来のバリア性フィルム基板を分析して、問題を発生させている原因を鋭意検討した。その結果、拡散性の有機化合物である残存モノマーが、バリア性フィルム基板の上部に設置された有機EL素子まで拡散することによって、ダークスポットが発生することを見出した。かかる発見に基づいて、下記の[1]〜[9]の構成を有する技術を開発したところ、上記の目的を効果的に達成しうることが明らかになった。
【0009】
[1] プラスチックフィルム上に少なくとも1層の有機層と少なくとも2層の無機層から成る有機層と無機層の交互積層体を有してなるバリア性フィルム基板であって、前記有機層がポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される1以上の有機化合物を含み、前記有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であることを特徴とするバリア性フィルム基板。
[2] ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される前記有機化合物が、カルボキシル基またはホスホン酸基を有することを特徴とする[1]に記載のバリア性フィルム基板。
[3] 前記無機層の少なくとも1層がSi、Al、In、Sn、ZnおよびTiからなる群より選択される1以上の金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載のバリア性フィルム基板。
[4] プラスチックフィルム上に少なくとも2層の有機層と少なくとも3層の無機層から成る有機層と無機層の交互積層体を有してなるバリア性フィルム基板であって、前記有機層がポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される1以上の有機化合物を含み、前記有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であることを特徴とするバリア性フィルム基板。
[5] ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される前記有機化合物が、カルボキシル基またはホスホン酸基を有することを特徴とする[4]に記載のバリア性フィルム基板。
[6] 前記無機層の少なくとも1層がSi、Al、In、Sn、ZnおよびTiからなる群より選択される1以上の金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物を含むことを特徴とする[4]または[5]に記載のバリア性フィルム基板。
[7] 40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.01g/m2・day以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
[8] 前記プラスチックフィルムのガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項にに記載のバリア性フィルム基板を用いたことを特徴とする有機EL素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバリア性フィルム基板は、水蒸気バリア性が高いうえに、有機EL素子の基板として使用したときにダークスポットの原因となる有機化合物が拡散することがない。また、曲げ等の応力に対して膜強度が高く、バリア性が低下しにくい。さらに、本発明の有機EL素子は、ダークスポットが発生せず、表示特性が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明のバリア性フィルム基板と有機EL素子について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
<バリア性フィルム基板>
本発明のバリア性フィルム基板は、プラスチックフィルム上に、少なくとも1層の有機層と少なくとも2層の無機層を有するフィルム基板である。層の構成としてはプラスチックフィルム側から第1の無機層、有機層、第2の無機層の順に堆積している。プラスチックフィルムと第1の無機層との間には別の層が挿入されていても良い。また、第2の無機層の上には他の層が存在しても良い。
本発明のバリア性フィルム基板は、好ましくはプラスチックフィルム上に2層以上の無機層と2層以上の有機層からなる無機層と有機層の交互積層体を有するフィルム基板である。より好ましくは、プラスチックフィルム上に3層以上の無機層と2層以上の有機層からなる無機層と有機層の交互積層体を有するフィルム基板である。層の構成としては、プラスチックフィルム側から第1の無機層、第1の有機層、第2の無機層の順に堆積しており、さらにこの上に第2の有機層、第3の無機層、第3の有機層、第4の無機層...のように繰り返し積層されていても良い。あるいはプラスチックフィルム側から第1の有機層、第1の無機層、第2の有機層、第2の無機層の順に堆積しており、さらにこの上に第3の有機層、第3の無機層、第4の有機層、第4の無機層...のように繰り返し積層されていても良い。交互積層体の最上層は無機層でも有機層でもよい。
この他、必要に応じてプラスチックフィルムと前記交互積層体との間、交互積層体の上、あるいはプラスチックフィルムの裏面に別の機能性層が挿入されていても良い。挿入される別の機能性層は単層でも多層でも良い。
【0013】
(無機層)
本発明における無機層とは、無機材料で構成される層を意味する。無機層は、ガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造の薄膜である。無機層の例としては、金属化合物からなる薄膜(金属化合物薄膜)が挙げられる。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
前記無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特にSi、Al、Sn、Tiがから選ばれる金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
【0014】
前記無機層の厚みに関しては特に限定されないが、厚みが厚すぎると曲げ応力によるクラックが発生し、薄すぎると膜が層を形成せずに島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。このため、各無機層の厚みは、それぞれ5nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、10nm〜200nmである。また、2層以上の無機層は、各々が同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよく、特に制限はされない。
また、無機層は均一層であることが好ましい。ここで「均一層」とは、層内の組成が均一である層を意味する。均一層であれば、力学的、光学的に不連続な境界が生じにくく、ディスプレイ材料として好適であるという利点がある。
【0015】
(有機層)
本発明のバリア性フィルム基板における有機層は、有機ポリマーを主成分とする。有機ポリマーとしてはポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、およびポリメタクリレート等が挙げられる。有機ポリマーは付加重合ポリマーでも縮合重合ポリマーでも良い。付加重合ポリマーはホモポリマーでも共重合ポリマーでも良い。有機ポリマーは架橋されていても良い。有機層中に含まれる有機ポリマーは1種でも2種以上の混合物でも良い。本発明の有機ポリマーは有機層を成膜する際、モノマーおよび/またはオリゴマーの重合反応および/または架橋反応により形成する。
【0016】
本発明において、有機層は液体の有機化合物を実質的に含まないことを特徴とする。液体の有機化合物とは融点が25℃未満で沸点が25℃以上の有機化合物を指す。有機層が液体の有機化合物を実質的に含まないとは、有機層中に含まれる液体の有機化合物の含有率が有機層の0.5質量%未満であることを言う。本発明においては有機層中に含まれる液体の有機化合物の含有率が有機層の0.1質量%未満であることが好ましく、0.01質量%未満であることがさらに好ましい。すなわち、本発明においては、有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であり、有機層に含まれる有機化合物の99.9質量%以上が25℃において固体であることが好ましく、有機層に含まれる有機化合物の99.99質量%以上が25℃において固体であることが特に好ましい。
【0017】
本発明者らの検討によれば、有機ポリマーや固体の有機化合物は有機EL素子に対して悪影響を及ぼさないが、液体の有機化合物は有機EL素子に対して悪影響を及ぼすことがわかっている。いかなる理論にも拘泥するものではないが、この原因は、バリア性フィルム基板上に有機EL素子を作製する際、液体の有機化合物がバリア性フィルム基板の有機層から有機EL素子部に拡散するためであると推定される。有機層に含まれる液体の有機化合物とは主として有機層設置の際に用いた液体モノマーの未反応物である。このため、本発明では有機層を設置する際に固体モノマーを用い、実質的に液体モノマーを用いない。また、同じ固体モノマーでも融点が高いほど有機EL素子に対する悪影響が小さい。前記固体モノマーの好ましい融点は40℃〜400℃であり、より好ましくは60℃〜300℃である。
なお、有機層を設置する際に揮発性の有機溶剤を用いることは差し支えないが、前記揮発性の有機溶剤が有機層に残存することは本発明の趣旨に反する。本発明において有機層設置の際に用いる有機溶剤は沸点が200℃以下であり、150℃以下が好ましく、100℃以下がさらに好ましい。これらの有機溶剤を用いるなどして、実質的に有機溶剤が残存しないように製造する。
【0018】
本発明において、無機層と有機層との密着性が高いことは膜強度を維持する上で重要である。このような目的のためには前記固体モノマーとして、カルボキシル基もしくはホスホン酸基を有する固体モノマーを用いることが好ましい。カルボキシル基もしくはホスホン酸基は無機層がSi、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物であるときに特に有効である。有機層設置に用いる全固体モノマーに対するカルボキシル基もしくはホスホン酸基含有固体モノマーの割合は、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が特に好ましい。
【0019】
有機層の形成方法としては、例えば、真空成膜法等を挙げることができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましく、成膜速度を制御しやすい抵抗加熱蒸着法がより好ましい。本発明においては成膜中もしくは成膜後に有機化合物を重合することにより、有機ポリマー層を形成させる。有機化合物を重合する方法としては特に限定は無いが、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせが好ましく用いられる。加熱重合を行う場合、基材となるプラスチックフィルムは相応の耐熱性を有する必要がある。この場合、少なくとも、加熱温度よりもプラスチックフィルムのTg(ガラス転移温度)が高いことが必要である。光重合を行う場合、有機層内に光重合開始剤を含ませる必要がある。本発明では光重合開始剤も常温で固体のものが選択される。光重合開始剤は固体モノマーと同時に蒸着される。
未反応モノマーをポリマーに転換するためにポスト重合を行っても良い。ポスト重合は加熱、光(紫外線、可視光線)照射、電子線照射、プラズマ照射、およびこれらの組み合わせを用いて行われる。ポスト重合は有機層を設置した直後に行っても良いし、すべての層を設置した後に行っても良い。有機層を複数層設置する場合は、各有機層設置ごとにポスト重合を行っても良い。
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難となるし、厚すぎると外力によりクラックを発生し、バリア性が低下する。かかる観点から、上記隣接有機層の厚みは、10nm〜2000nmが好ましく、20nm〜1000nmさらに好ましく、50nm〜500nmが最も好ましい。
【0020】
(プラスチックフィルム)
本発明のバリア性フィルム基板に用いられるプラスチックフィルムは、上記各層を保持できるフィルムであれば特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的に、ポリエステル、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0021】
これらの樹脂のうち、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上の樹脂が好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。具体的な例としては(括弧内は略称:数字はTgを示す)、ポリエステルで特にポリエチルナフタレート(PEN:121℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例4の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例5の化合物:205℃)、フルオレン環変性ポリエステル(特開2002−145998号公報の実施例1に記載のフィルム1〜5に用いられた化合物:334〜365℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物:300℃以上)等の化合物からなるフィルムが挙げられる。
【0022】
特にプラスチックフィルムを構成する化合物としては、下記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂または下記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂が好ましい。
【0023】
【化1】

〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はそれぞれ同一若しくは異なっていてもよく、スピロ結合によって結合している。〕
【0024】
【化2】

〔一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同一若しくは異なっていてもよい。また、環βおよび環γは、環β上の1つの4級炭素原子によって連結される。〕
【0025】
前記一般式(1)および(2)で表される樹脂は、高耐熱性、高弾性率かつ高い引張り破壊応力を有する化合物であるため、製造プロセスにおいて種々の加熱操作が要求され、かつ屈曲させても破壊しにくい性能が要求される有機EL素子等の基板材料として好適に用いることができる。
【0026】
前記一般式(1)における環αの例としては、インダン環、クロマン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、インドリン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環、ジオキサン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。前記一般式(2)における環βの例としては、フルオレン環、インダンジオン環、インダノン環、インデン環、インダン環、テトラロン環、アントロン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。前記一般式(2)における環γとしては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ピリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環、インダン環、クロマン環、インドール環、α-ピロン環等が挙げられる。
【0027】
前記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂の好ましい例としては、下記一般式(3)で表されるスピロビインダン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(4)で表されるスピロビクロマン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(5)で表されるスピロビベンゾフラン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
【0028】
【化3】

【0029】
一般式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R33は置換基を表す。また、R31、R32、R33のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R31およびR32はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。また、R33としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
一般式(4)中、R41は水素原子または置換基を表す。R42は置換基を表す。また、R41およびR42のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R41としては、水素原子、メチル基またはフェニル基がさらに好ましく、R42としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基がさらに好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
一般式(5)中、R51は水素原子または置換基を表す。R52は置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51としては、水素原子、メチル基またはフェニル基が好ましい。また、R52としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基が好ましい。
【0034】
また、前記一般式(2)における環βとしては、例えばフルオレン、1,4−ビベンゾシクロヘキサンが挙げられ、環γとしては、例えばフェニレン、ナフタレンが挙げられる。前記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂の好ましい例として、下記一般式(6)で表されるフルオレン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
【0035】
【化6】

【0036】
一般式(6)中、R61およびR62はそれぞれ独立に置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。jおよびkはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51およびR52としては、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。
【0037】
前記一般式(3)〜(6)で表される構造を繰り返し単位中に含む樹脂は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドまたはポリウレタンなど種々の結合方式で連結されたポリマーであってもよいが、一般式(3)〜(6)で表される構造を有するビスフェノール化合物から誘導されるポリカーボネート、ポリエステルまたはポリウレタンであることが好ましい。
【0038】
以下に一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい具体例(樹脂化合物(I−1)〜(FL−11))を挙げる。但し、本発明で用いることができる樹脂はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
本発明におけるプラスチックフィルムに用いることのできる一般式(1)および一般式(2)で表される構造を有する樹脂は、単独で用いてもよく、複数種混合して用いてもよい。また、ホモポリマーであってもよく、複数種構造を組み合わせたコポリマーであってもよい。前記樹脂をコポリマーとする場合、一般式(1)または(2)で表される構造を繰り返し単位中に含まない公知の繰り返し単位を本発明の効果を損ねない範囲で共重合することができる。なお、ホモポリマーとして用いた場合よりも溶解性および透明性の観点で優れている場合が多いことから、上記樹脂はコポリマーであることが好ましい。
【0046】
本発明に用いることのできる一般式(1)および(2)で表される構造を有する樹脂の分子量は、質量平均分子量で1万〜50万が好ましく、2万〜30万がさらに好ましく、3万〜20万が特に好ましい。前記樹脂の分子量が低すぎる場合、フィルム成形が困難となりやすく、また力学特性が低下してしまう場合がある。また、分子量が高すぎる場合、合成上分子量のコントロールが困難となり、また溶液の粘度が高すぎて取扱いが難しくなる場合がある。なお、前記分子量は、これに対応する粘度を目安にすることもできる。
【0047】
(吸湿性層)
本発明のバリア性フィルム基板は吸湿性層を有しても良い。好ましい吸湿性層の例としては、2属金属一酸化物から構成される層を挙げることができる。前記2属金属一酸化物に含まれる2属金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。本発明においては何れの2属金属をも使用することができるが、コスト、吸湿性を考慮すると、Ca、Sr、Baが好ましい。
【0048】
(プライマー層)
本発明のバリア性フィルム基板は、プラスチックフィルム上に公知のプライマー層を設置することができる。プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層、親水性樹脂共存下でゾルーゲル反応により形成する有機無機ハイブリッド層、無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機層を挙げることができる。
【0049】
(保護層)
本発明のバリア性フィルム基板は保護層を有していても良い。特に基板の裏面には保護層を設置するのが好ましい。保護層に使用するポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロースアシレート、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースアシレートとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などが挙げられる。
前記保護層には、バリア性フィルム基板の透明性を実質的に損なわない程度に無機または、有機の微粒子をマット剤として含有させることができる。無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(SiO2),二酸化チタン(TiO2),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。有機の微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリスチレン、米国特許第4,142,894号明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許第4,396,706号明細書に記載されているポリマ−などを用いることができる。これらの微粒子マット剤の平均粒子サイズは0.01〜10μmのものが好ましい。より好ましくは、0.05〜5μmである。また、その含有量は0.5〜600mg/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜400mg/m2である。
前記保護層は、一般に良く知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法により塗布することができる。
【0050】
(帯電防止層)
本発明のバリア性フィルム基板は、帯電防止層(導電性層)を有しても良い。帯電防止層は、バリア性フィルム基板の裏面(バリア層が形成されていない面)に形成することが好ましい。帯電防止層は、ガスバリアフィルムの取扱の際に帯電するのを防ぐ機能を付与するものであり、具体的には、イオン導電性物質や導電性微粒子を含有する層を設けることによって行う。
ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであり、例としてはイオン性高分子化合物を挙げることができる。イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、特公昭49−23827号、特公昭47−28937号各公報に見られるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、特公昭57−18175号、特公昭57−18176号、特公昭57−56059号各公報などに見られるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、特公昭57−15376号、特公昭53−45231号、特公昭55−145783号、特公昭55−65950号、特公昭55−67746号、特公昭57−11342号、特公昭57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、特公昭62−9346号各公報に見られるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることができる。
【0051】
導電性微粒子である金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2およびSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、またSnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
【0052】
(その他の機能性層)
本発明のバリア性フィルム基板は必要に応じて平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層等を設置しても良い。
【0053】
<有機EL素子>
次に、本発明のバリア性フィルム基板を用いた有機EL素子(以下、「本発明の有機EL素子」と呼ぶ)について説明する。
【0054】
本発明の有機EL素子は、基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と呼ぶ)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。なお、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0055】
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0056】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0057】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流または高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0058】
本発明の有機EL素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。が、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0059】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0060】
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としては1属金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0061】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、1属金属や2属金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%の1属金属または2属金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0062】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種または2種以上を同時または順次にスパッタ法等に従って行うことができる。陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0063】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。また、陰極と前記有機化合物層との間に、1属金属または2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜して、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0064】
(有機化合物層)
本発明の有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0065】
((有機化合物層の形成))
本発明の有機EL素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0066】
((発光層))
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0067】
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0068】
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、および白金である。ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
【0069】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0070】
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
【0071】
((正孔注入層、正孔輸送層))
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
【0072】
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0073】
((電子注入層、電子輸送層))
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0074】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのがさらに好ましい。電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0075】
((正孔ブロック層))
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔ブロック層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0076】
(保護層)
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、平坦化作用を持つ材料、水分や酸素が素子内に入ることを抑止する機能を有しているものが好ましい。具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx等の金属窒化物、SiNxy等の金属窒化酸化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。これらのうち、金属の酸化物、窒化物、窒化酸化物が好ましく、珪素の酸化物、窒化物、窒化酸化物が特に好ましい。
【0077】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、真空紫外CVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。本発明においては、保護層が導電性層として使用されてもよい。
【0078】
(封止)
さらに、本発明の有機EL素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤または不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0079】
別の封止法として、いわゆる固体封止法を用いても良い。固体封止法とは有機EL素子の上に保護層を形成した後、接着剤層、バリア性支持体層を重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。バリア性支持体はガラスでも良いし、本発明のバリア性プラスチック基板でも良い。
【0080】
さらに別の封止法として、いわゆる膜封止法を用いても良い。膜封止法とは有機EL素子の上に、無機層、有機層の交互積層体を設ける方法である。交互積層体を設ける前に、有機EL素子を保護層で覆っても良い。
【0081】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。本発明の有機EL素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号公報、米国特許第5,828,429号、同6,023,308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0082】
以上、本発明のバリア性フィルム基板の典型的な応用例として、有機EL素子へ適用した場合について詳細に説明したが、本発明のバリア性フィルム基板は有機EL素子以外の用途へも幅広く適用することができる。例えば、液晶表示装置などの画像表示装置などに適用することが可能である。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0084】
[実施例1] バリア性フィルム基板の作製と評価
プラスチックフィルム上に少なくとも第1の無機層、第1の有機層および第2の無機層を設けたバリア性フィルム基板BF−1〜BF−4を下記の手順にしたがって作製した。各フィルム基板の各層の組成の詳細は、表1に記載される通りである。
【0085】
(1)プラスチックフィルムの作製
樹脂Aを、濃度が15質量%になるようにジクロロメタン溶液に溶解し、該溶液をダイコーティング法によりステンレスバンド上に流延した。次いで、バンド上からフィルムを剥ぎ取り、残留溶媒濃度が0.08質量%になるまで乾燥させた。乾燥後、フィルムの両端をトリミングし、ナーリング加工した後に巻き取り、厚み100μmの基材となるプラスチックフィルムを作製した。作製したプラスチックフィルムのガラス転移温度(Tg)は355℃(DMA法)であった。
【0086】
(2)バリア性フィルム基板の作製
(2−1)第1の無機層の形成
スパッタリング装置を用いて、(1)で作製したプラスチックフィルム上に無機層(酸化アルミニウム)を形成した。ターゲットとしてアルミニウム、放電ガスとしてアルゴン、反応ガスとして酸素をそれぞれ用いた。成膜圧力は0.1Pa、到達膜厚は50nmであった。
【0087】
(2−2)第1の有機層の形成
プラスチックフィルム上に形成した第1の無機層の上に、表1に示す組成のモノマー20g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー184の商品名で市販されているもの)0.6g、2−ブタノン200gの混合溶液を液厚5μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。室温にて2時間乾燥した後、高圧水銀ランプの紫外線を照射して硬化させ(積算照射量約2J/cm2)、有機層を形成した。膜厚はいずれの場合も約500nmであった。
【0088】
(2−3)第2の無機層の形成
第1の無機層と同様の方法で第1の有機層上に第2の無機層(酸化アルミニウム)を形成した。
【0089】
(2−4)第2の有機層の形成
表1に示すように、バリア性フィルム基板BF−4を作製するときのみ、第1の有機層と同様の方法で第2の無機層上に第2の有機層を形成した。
【0090】
(2−5)第3の無機層の形成
表1に示すように、バリア性フィルム基板BF−4を作製するときのみ、第2の無機層と同様の方法で第2の有機層上に第3の無機層(酸化アルミニウム)を形成した。
以上のようにしてバリア性フィルム基板BF−1〜BF−4を作製した。
【0091】
【表1】

【0092】
【化13】

【0093】
(3)バリア性フィルム基板の物性評価
下記の方法でバリア性フィルム基板BF−1〜BF−4の物性を評価した。
(3−1)水蒸気透過率
MOCON社製、「PERMATRAN−W3/31」を用いて、40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率を各サンプルについて20箇所測定した。いずれのサンプルも過半数の測定部位において水蒸気透過率が検出限界以下(0.01g/m2・day以下と推定される)であった。
水蒸気透過率が観測可能な有限値を与えた部位をバリア性フィルム基板の故障部位と見なした。20箇所の中で正常部位の見出される確率を歩留まりと定義し、百分率で表した。歩留まりが70%以上のものを実用性ありと判定した。
(3−2)膜強度
JIS K5600-5-6(ISO2409)に準拠した方法(クロスカット剥離法)で、バリア層の膜強度を調べた。評価値は膜破壊の起きなかった面積の比率(百分率)で表した。膜強度が50%以上のものを実用性ありと判定した。
(3−3)評価結果
以上のようにして調べた各バリア性フィルム基板の物性値を表2に示した。膜強度は有機層がカルボキシル基を含有するBF−3およびBF−4が特に良好である。バリア性フィルム基板の歩留まりも膜強度の高いBF−3およびBF−4が良好であるが、2層の有機層と3層の無機層からなる有機層と無機層の交互積層体を有するBF−4の方がより歩留まりが高いことは明らかである。
【0094】
【表2】

【0095】
[実施例2] 有機EL素子の作製と評価
(1)有機EL素子の作成
実施例1で作製したバリア性フィルム基板BF−1〜BF−4を真空チャンバー内に導入し、ITOターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、厚み0.2μmのITO薄膜からなる透明電極を形成した。ITO膜を有するバリア性フィルム基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この基板(陽極)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
Alq:膜厚60nm
【0096】
【化14】

【0097】
最後にフッ化リチウムを1nm、金属アルミニウムを100nm順次蒸着し陰極とした。
このものを、大気に触れさせること無く、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、有機EL素子OEL−1〜OEL−4を得た。
【0098】
(2)有機EL素子の評価
製造した各有機EL素子に9Vの電圧を印加して発光させた。いずれの素子もAlqに由来する緑色の発光を示した。発光面状を顕微鏡で観察したところ、OEL−1はダークスポットが多数観察された。一方、OEL2〜4にはダークスポットが観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のバリア性フィルム基板は、水蒸気に対するバリア性が高く、膜強度が高い。また、有機ELの基板として用いた時に、ダークスポットが発生しないという長所を有する。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム上に少なくとも1層の有機層と少なくとも2層の無機層から成る有機層と無機層の交互積層体を有してなるバリア性フィルム基板であって、前記有機層がポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される1以上の有機化合物を含み、前記有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であることを特徴とするバリア性フィルム基板。
【請求項2】
ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される前記有機化合物が、カルボキシル基またはホスホン酸基を有することを特徴とする請求項1に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項3】
前記無機層の少なくとも1層がSi、Al、In、Sn、ZnおよびTiからなる群より選択される1以上の金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項4】
前記交互積層体が少なくとも2層の有機層と少なくとも3層の無機層からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項5】
40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.01g/m2・day以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項6】
前記プラスチックフィルムのガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項にに記載のバリア性フィルム基板を用いたことを特徴とする有機電界発光素子。

【公開番号】特開2007−30387(P2007−30387A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218246(P2005−218246)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】