説明

バリウムマグネシウムシリケートを添加剤として含む光変換材料

本発明は、式Ba3(1-x)Eu3xMg1-yMnySi28(1)(ここで、0<x≦0.3であり、0<y≦0.3である)のバリウムマグネシウムシリケートを添加剤として含む光変換材料、特に温室壁用の光変換材料に関する。該材料は、紫外線帯域の太陽エネルギーを赤色光線に変換することができる。該材料はまた、塗料及び化粧品中に用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリウムマグネシウムシリケート(ケイ酸バリウムマグネシウム)を添加剤として含む光変換材料、特に温室の壁用の光変換材料に関する。
【0002】
本明細書において用語「光変換材料」とは、特に紫外線を赤色光線に変換することができる材料を意味する。かかる材料は、いくつかの技術分野において必要とされている。
【背景技術】
【0003】
かくして、農業用の温室の壁を製造するために、ポリマー及び無機ガラスが広く用いられている。これらのポリマーやこれらの無機ガラスは、作物の最適保護及び成長を可能にするために特定的な技術的特徴を満たさなければならない。
【0004】
特に、日光を最も効率よく利用することを可能にする材料が求められる。赤−橙領域の放射線、即ち約500nm〜約700nmの範囲の波長を有する放射線は、植物の成長に特に有用であり、特に光合成を促進するのに対して、紫外線領域の放射線は植物によって吸収されないということが、特に知られている。
【0005】
また、他にも、紫外線に曝された時に特に赤色帯域で発光することができる材料が求められる分野があり、例えば化粧品及び塗料の分野がこれに該当する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、紫外線(特に紫外線帯域の太陽エネルギー)を赤色光線(特に植物が容易に同化又は利用できる光線)に変換することができる材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的で、本発明の光変換材料は、マトリックス及び添加剤を含むものであり、添加剤として次式の化合物を含むことを特徴とする。
Ba3(1-x)Eu3xMg1-yMnySi28 (1)
(ここで、0<x≦0.3であり、0<y≦0.3である。)
【0008】
本発明のその他の特徴、詳細及び利点は、以下の説明及び添付した図面を読めばさらにより一層はっきりするであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、マトリックス及び添加剤をベースとする任意のタイプの材料であって、その機械的特性及び/又は光学特性により、紫外線を特に赤色光線に変換すること又は紫外線(特に太陽紫外線)をそれより低エネルギーの放射線に変換することが望まれる用途において用いられ又は用いることができる前記材料に当てはまる。
【0010】
前記マトリックスは、天然又は非天然繊維、例えば絹、羊毛、綿若しくは麻、又はビスコース、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル及びそれらのコポリマーであってよい。
【0011】
このマトリックスはまた、無機ガラス(ケイ酸塩)又は有機ガラスであってもよい。
【0012】
このマトリックスはまた、ポリマー、特に熱可塑性タイプのポリマーをベースとするものであってもよい。
【0013】
本発明にとって好適な熱可塑性ポリマーの例としては、次のものを挙げることができる:ポリカーボネート類、例えばポリ[メタンビス(4−フェニル)カーボネート]、ポリ[1,1−エーテルビス(4−フェニル)カーボネート]、ポリ[ジフェニルメタンビス(4−フェニル)カーボネート]、ポリ[1,1−シクロヘキサンビス(4−フェニル)カーボネート]及び同じ類のポリマー;ポリアミド類、例えばポリ(4−アミノ酪酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6−アミノヘキサン酸)、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(p−キシリレンセバカミド)、ポリ(2,2,2−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)及び同じ類のポリマー;ポリエステル類、例えばポリ(エチレンアゼラート)、ポリ(エチレン−1,5−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)、ポリ(p−ヒドロキシベンゾエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及び同じ類のポリマー;ビニルポリマー類及びそれらのコポリマー類、例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル;ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー及び同じ類のポリマー;アクリルポリマー類、ポリアクリレート類及びそれらのコポリマー類、例えばポリエチルアクリレート、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリル酸)、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸メチル−スチレンコポリマー、エチレン−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマー、ABS及び同じ類のポリマー;ポリオレフィン類、例えば低密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)並びにエチレン又はプロピレンの一般的なα−オレフィンを1−ブテン及び1−ヘキセンのようなその他のα−オレフィン(これは1%までの量で用いることができる)と共重合させたもの。その他のコモノマーとして、1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネンのような環状オレフィンを用いてもよい。また、前記コポリマーは、アクリル酸やメタクリル酸のようなカルボン酸であることもできる。最後に、低密度塩素化ポリ(エチレン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(エチレン)及びポリ(スチレン)を挙げることもできる。
【0014】
これらの熱可塑性ポリマーの中で特に好ましいものは、ポリエチレン類、例えばLDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、メタロセン合成によって得られるポリエチレン、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリメチルメタクリレート、コポリレフィン類、例えばEVA(ポリエチレン−ビニルアルコール又はエチレン−酢酸ビニル)、並びにこれらの(コ)ポリマーをベースとする混合物及びコポリマー並びにポリカーボネートである。
【0015】
ポリマーは、硬質形態及び厚さ数mmのシート又はプレートの形にあることができる(例えばポリ塩化ビニル、メチルメタクリレート又はポリカーボネートの場合)。また、厚さ数十μmのフィルムの形又は厚さ数μm〜十分の数mm(数百μm)のフィルムの形にあることさえできる(例えばポリウレタン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、低密度ポリエチレン又はエチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー又はポリ塩化ビニルの場合)。
【0016】
これらのフィルム、シート又はプレートは、それら自体で本発明に従う材料のマトリックスを構成することができる。しかしながら、もっと複雑な構成を採用することもできる。かくして、本発明の材料は、別の基材(例えば上記の熱可塑性ポリマー)上に付着させたり該基材と組み合わせたりすることもできる。この付着物や組合せ物は、既知の同時押出、積層及びコーティング方法によって調製することができる。本発明に従う材料の1つ又はそれより多くの層を、同時押出バインダーの層を介して、1種又はそれより多くの熱可塑性ポリマー(例えばポリエチレン又はポリ塩化ビニル)の1つ又はそれより多くの別の層(これは支持体成分を構成することができ、フィルムの構造中の大部分となる)と組み合わせることによって、多層構造を形成させてもよい。こうして得られるフィルムは、熱可塑性ポリマーを変換するための既知の技術に従って一軸延伸又は二軸延伸することができる。シート又はプレートは、切断し、熱成形し又は打抜くことによって所望の形態にすることができる。
【0017】
本発明の材料はまた、マトリックスが塗料若しくはワニス又はラテックスをベースとする形にあることもでき、このマトリックスは有機又は無機基材(例えばガラス)上にコーティングすることによって付着させることができる。
【0018】
用語塗料又はワニスは、塗料の技術分野においてこの用語が通常示す配合物又は組成物であって、例えば以下の樹脂をベースとするエマルション状のものを意味する:アルキド樹脂(その最も一般的なものは、グリセロフタリック樹脂と称されるものである);長油又は短油で変性された樹脂;アクリル酸及びメタクリル酸のエステル(メチル又はエチルエステル)から誘導されるアクリル樹脂(随意にアクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル又はアクリル酸ブチルと共重合されたもの)、及びアクリル−イソシアネート樹脂;ビニル樹脂、例えばポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール及び塩化ビニルと酢酸ビニル又は塩化ビニリデンとのコポリマー;アミノプラスト又はフェノール樹脂(通常は変性されたもの);ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;セルロースベース又はニトロセルロースベースの樹脂。
【0019】
用語「ラテックス」とは、重合可能な有機モノマーの標準的な乳化(共)重合プロセスから誘導されるポリマー粒子の水性分散体を意味する。
【0020】
これらの有機モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸アルキル、α,β−エチレン性不飽和エステル;α,β−エチレン性不飽和ポリカルボン酸エステル及び半エステル;ハロゲン化ビニル;ビニル芳香族;共役脂肪族ジエン;α,β−エチレン性不飽和ニトリル;ポリ酢酸ビニルラテックス、イソシアネート並びにポリオールから選択することができる。
【0021】
本発明に従えば、上記の材料は、ユーロピウム(これはバリウムの部分置換物と考えられる)及びマンガン(これはマグネシウムの部分置換物と考えられる)をドープされたバリウムマグネシウムシリケートを添加剤として含有し、このシリケートは上記の式(1)に相当する。
【0022】
紫外線又は近紫外線(UVA)励起に付された時、即ち約250nm〜約390nmの波長帯域の放射線に曝された時に、この添加剤は特に赤色帯域及びさらに青色帯域、即ち約370nm〜約400nmの波長帯域(青色帯域については400nm〜500nmの範囲、赤色帯域については550nm〜700nmの範囲)で良好な収率で発光する特性を有する。
【0023】
第1の具体例に従えば、前記の化合物は、上記の式(1)において0.0001≦x≦0.25且つ0.0001≦y≦0.25であるものに相当する。
【0024】
別のより特定的な具体例に従えば、前記の化合物は、上記の式(1)において0.01≦x≦0.25且つ0.01≦y≦0.25であるものに相当する。
【0025】
より良好な強度の発光を得るためには、化合物中のユーロピウムの濃度を少なくとも0.01%にするのが有利であることに注目することができる。また、自然減光の不利な現象を最小限にするためには、ユーロピウム及びマンガンの濃度を25%以下にするのが有利である。上に示した百分率は、ドーピングイオンEu2+及びMn2+それぞれのBa2+及びMg2+イオンに対するモル置換度に相当する。
【0026】
別の好ましい具体例に従えば、式(1)の化合物は、次のx及びy値を有する:0.01≦x≦0.03及び0.04≦y≦0.06。これらのx及びyの値については、発光強度が最大になる。
【0027】
最後に、式(1)の化合物においては、バリウム、マグネシウム及びケイ素の一部が上記のもの以外の元素に置き換えられていてもよい。かくして、バリウムは約30%までであってよい割合でカルシウム及び/又はストロンチウムに一部置き換えられていてもよい。この割合は、置換物/(置換物+バリウム)の原子比によって表わされる。マグネシウムは約30%までであってよい割合で亜鉛に一部置き換えられていてもよい。この割合は、Zn/(Zn+Mg)の原子比によって表わされる。最後に、ケイ素は約10%までであってよい割合でゲルマニウム、アルミニウム及び/又はリンに一部置き換えられていてもよい。この割合は、置換物/(置換物+ケイ素)の原子比によって表わされる。
【0028】
材料中のシリケートの量は、特に材料の総質量に対して0.01〜10質量%の範囲、より特定的には0.1〜1質量%の範囲であることができる。これらの値は純粋に例示として与えられたものであり、マトリックスの性状の関数として変更してもよい。これより低い値は、得ることが望まれる所望の効果の強さの関数として設定される。これより高い値は臨界的ではない。それ以上の量を追加しても他の圧迫(例えば費用上の圧迫)の割りには追加の利点や効果が得られないような値は超えないようにするのが一般的である。
【0029】
ユーロピウムをドープされたバリウムマグネシウムシリケートは青色帯域で発光するのに対して、ドーパントとしてマンガンを存在させることによって、この化合物の発光を赤色帯域の方向に向けることが可能になる。Eu/Mn比を変えることによって本発明の添加剤の発光の色彩を調節することができる。
【0030】
さらに、本発明の添加剤は紫外線吸収能力を有し、そのために、抗紫外線機能を提供することができ、かくしてこの添加剤が添加された材料を紫外線に対して保護することができる。
【0031】
本発明のために用いられるシリケートは一般的に、高温において固相反応によって調製される。
【0032】
出発原料としては、必要な金属酸化物を直接用いることもでき、また、加熱することによってこれらの酸化物を生成させることができる有機又は無機化合物、例えば該金属の炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、酢酸塩、硝酸塩又はホウ酸塩を用いることもできる。
【0033】
微粉砕された形のすべての出発原料の好適な濃度の緊密混合物を形成させる。
【0034】
また、所望の酸化物の前駆体の溶液(例えば水性媒体中の溶液)を用いて共沈させることによって出発混合物を調製することもできる。
【0035】
次いで出発原料の混合物を1時間〜約100時間の期間、約500℃〜約1600℃の範囲の温度に少なくとも一度加熱する。この加熱は、ユーロピウムを全体的に二価の形にするために、少なくとも部分的に還元性雰囲気(例えばアルゴン中の水素)下で実施するのが好ましい。
【0036】
こうして得られるシリケートの形や形態、平均粒子寸法、粒度分布に対しては、何ら制約はない。これらの生成物は、用途媒体中におけるそれらの相溶性や分散を促進するために、粉砕し、微粉化し、篩分けし、表面処理(特に有機添加剤で)してもよい。
【0037】
本発明の材料は、上に記載した成分(例えば繊維、ポリマー、塗料若しくはワニス又はラテックス)をベースとするマトリックス及びバリウムマグネシウムシリケートをベースとする上記の化合物に加えて、例えば次のようなその他の添加剤を既知の態様で含んでいてもよい:安定剤、可塑剤、難燃剤、染料、蛍光増白剤、潤滑剤、ブロッキング(くっつき)防止剤、艶消剤、加工(プロセッシング)剤、フィルムやシートの可撓性や機械的強度を改善するためのエラストマー若しくはエラストマー組成物(例えばアクリルコポリマーやメタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマー)、接着剤(例えばポリアミドに対する接着を可能にする無水マレイン酸をグラフトさせたポリオレフィン)、材料中のシリケートの分散をより良好にする分散剤、多層熱可塑性フィルムの構造の調製のために必要な任意のその他の添加剤{特に温室用のフィルム(例えば無流滴フィルムや防曇フィルム)を作るために知られていてよく用いられるもの}、そしてさらには触媒。このリストは、限定的性質のものではない。
【0038】
本発明の材料を作るためには、マトリックス中、特に上記のポリマー、ラテックス及び塗料又はワニスのようなタイプの高分子化合物中の式(1)のシリケートの分散体を得るための任意の方法を用いることができる。特に、第1の方法は、シリケートとその他の上記の添加剤とを溶融状態の熱可塑性化合物中で混合し、随意に良好な分散を達成するためにこの混合物を高剪断(例えば二軸スクリュー押出装置を用いたもの)に付すことから成る。別の方法は、分散させるべき添加剤を重合媒体中でモノマーと混合し、次いで重合を実施することから成る。別の方法は、熱可塑性ポリマーと分散された添加剤との濃厚ブレンド(例えば上記の方法の内の1つに従って調製される)を、溶融状態の熱可塑性ポリマーと混合することから成る。
【0039】
シリケートは、高分子化合物用の合成媒体中又は熱可塑性ポリマー溶融物中に、任意の形で導入することができる。これは、例えば固体粉末の形又は水中若しくは有機分散剤中の分散体の形で導入することができる。
【0040】
塗料若しくはワニス又はラテックスのための好適な方法は、粉末の形のシリケート化合物をラテックス又は塗料若しくはワニス中に例えば撹拌することによって直接分散させることから成るもの、或は液状又はペースト状媒体中の粉末濃厚物を調製し、次いでこれを塗料若しくはワニス又はラテックスに添加することから成るものである。前記濃厚物は、水をベースとする媒体又は溶剤媒体中で、随意に混合物を安定化してそのデカンテーションを回避するために必要とされる界面活性剤、水溶性若しくは疎水性ポリマー又は親水性末端及び疎水性末端を含むポリマー(これは極性であっても非極性であってもよい)を用いて、調製することができる。濃厚物の組成中に含ませることができる添加剤に対しては何ら制約はない。
【0041】
本発明の材料は、特に温室壁の製造又は建造に用いることができる。本明細書において用語「温室」とは、その最も広い意味において、農業において農作物の保護及び生長のために用いられる任意のタイプの保護施設(シェルター)を対象として含むものとする。例えば、これらは、フランス国パリ、rue de Prony 65のCIPA{農業プラスチック国際会議(Congres International du Plastique dans l'Agriculture)}によって発行されたパンフレットにジャン−ピエール・ジュエ(Jean-Pierre Jouet)によって「L'evolution de la plasticulture dans le Monde」に記載されたように、プラスチックの温室及び大型プラスチックトンネル、ガラス温室、大型シェルター、半促成栽培、フラット保護シート、マルチング(マルチ農法)等であることができる。
【0042】
かくして、本発明は、上記の材料を含む温室用の壁にも関する。
【0043】
本発明の材料はまた、化粧品分野、特にマニキュア液及びスタイリングジェル(整髪用ジェル)の調製にも用いることができる。
【0044】
マニキュア液は一般的に以下のものを含有する:
・ニトロセルロースをベースとするフィルム形成剤、
・樹脂、天然ダンマル樹脂又は合成樹脂(ホルムアルデヒド−スルファミド、ポリスチレン樹脂、ポリビニル樹脂等のタイプのもの)、
・可塑剤、例えばフタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレシル、ステアリン酸n−ブチル、レゾルシノールジアセテート又はそれらの混合物、
・溶解剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル又は通常はこれらの溶剤の混合物、
・希釈剤、特にトルエン又はキシレン、
・随意としてのその他の添加剤、芳香剤又は真珠光沢物質(オキシ塩化ビスマス若しくは二酸化チタンでコーティングされた雲母のフレーク)。
【0045】
典型的な組成の例を下に与える。
・ニトロセルロース:10〜15重量%、
・樹脂:10〜15重量%、
・可塑剤:3〜5重量%、
・溶剤:全体が100重量%になるのに足りる量。
【0046】
本明細書において対象にされる本発明の実施においては、ワニスがマトリックスを構成し、このマトリックス中に添加剤として式(1)の化合物を存在させる。ワニスの調製のためには、ニトロセルロース及び可塑剤から成るプラスチック塊中で化合物を粉砕し、次いで溶剤中に溶解させるのが一般的である。化合物の使用量は通常、ワニスに対して1〜5質量%である。これらの値は指標として与えたものであり、臨界的なものではないということに留意されたい。これらは、望まれる効果の強さ、即ち赤色帯域における発光の強さ、及びコスト上の制約の関数として変えることができる。かくして、本発明はまた、上記の式(1)の化合物を含むマニキュア液にも関する。
【0047】
スタイリングジェルは一般的に以下のものを含有する:
・溶剤としての水;
・ゲル化剤{これは例えばヒドロキシエチルセルロース、エチレン−無水マレイン酸コポリマー又はカルボマー(アクリル酸ホモポリマーをペンタエリトリトールのアリルエーテル、ショ糖のアリルエーテル又はプロピレンのアリルエーテルで架橋させたもの)であることができる};
・固定用ポリマー{これは特にポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルブレンド又はターポリマーであることができる};
・コンディショニング剤、例えばポリクウォータニウム−11、ポリクウォータニウム−4若しくはポリクウォータニウム−7、PVP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーブレンド又はグアール;
・可塑剤、例えばジメチコーンコポリオール。
【0048】
このタイプのジェルにおける本発明の実施のためには、ジェルがマトリックスを構成し、このマトリックス中に添加剤として式(1)の化合物を存在させる。化合物の使用量は通常、ジェルに対して0.5〜4質量%である。この場合もまた、これらの値は指標として与えたものであり、臨界的なものではなく、この場合もまた、望まれる効果の強さ及びコスト上の制約の関数として変えることができるということに留意されたい。
【0049】
かくして、本発明はまた、上記の式(1)の化合物を含むスタイリングジェルにも関する。
【0050】
本発明の材料はまた、衣類用織物の製造、建築物やシェルターの建造、又は自動車産業においても、用いることができる。かくして、該材料は、非農業用途のための発光フィルム、発光塗料又は建築物若しくは自動車用の発光コーティングを有するガラスの製造に用いることができる。本発明の材料はまた、発光ダイオード(LED)にも用いることができる。最後に、該材料は、バイオテクノロジー分野に用いることができる材料の製造にも用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を与える。
【0052】
例1
この例は、Ba3MgSi28:2%Eu2+,5%Mn2+の組成及び式Ba2.94Eu0.06Mg0.95Mn0.05Si28に相当する化合物の調製に関する(ドーピング用イオンについて示した百分率は、Ba2+及びMg2+イオンに対するEu2+及びMn2+イオンそれぞれのモル置換度に相当する)。このプロセスは、固体ルートで、酸化物BaCO3、Eu23、(MgCO3)4Mg(OH)2・5H2O、MnCO3及びSiO2を化学量論的割合で互いに混合することによって行う。この混合物に0.4モルのNH4Clを融剤(flux)として添加する。
【0053】
【表1】

【0054】
これらの出発材料を粉砕によって互いに均質に混合する;混合物をアルミニウムるつぼに入れ、オーブン中に導入し、2回の熱処理に付す。最初の熱処理は、空気中で600℃において4時間行う。この混合物は灰色であり、これを次いで粉砕し、次いでアルミニウムるつぼ中でオーブンに戻す。オーブンをAr/10%H2の混合物で4時間パージした後に、混合物をこの還元性雰囲気下で1200℃において4時間加熱する。360℃/時間の温度上昇及び下降勾配を用いた。得られた生成物は、白色粉末の形にあった。
【0055】
例2
この例は、Ba3MgSi28:2%Eu2+,20%Mn2+の組成及び式Ba2.94Eu0.06Mg0.8Mn0.2Si28に相当する化合物の調製に関する。このプロセスは、例1におけるのと同様に、固体ルートで、酸化物BaCO3、Eu23、(MgCO3)4Mg(OH)2・5H2O,MnCO3及びSiO2を化学量論的割合で互いに混合することによって行う。この混合物に0.4モルのNH4Clを融剤として添加する。
【0056】
【表2】

【0057】
次いで、例1のものと同じ操作を実施する。
【0058】
図1に、こうして得られた化合物について、370nmの励起波長についての発光スペクトルを示す。紫外線帯域の励起に応答して、これらの化合物は、赤色帯域(約625nmのピーク)において発光し、青色帯域(約440nmのピーク)においても発光することがわかる。
【0059】
623nmの発光波長について、例1の化合物の励起スペクトルを、図2に示す。この図から、350nmの波長について最大収量が達成されることがわかる。350nm〜400nmの範囲では、相対収率は100%〜78%の範囲である。
【0060】
図3は、例1の化合物の波長の関数としての吸収強度の変化を示す、同期モードで作ったグラフである。このグラフは、約425nm未満の波長については反射強度Rがほとんど0なので、化合物の紫外線吸収能力をはっきりと示す。
【0061】
例3
この例は、ポリマーフィルム中における本発明に従う添加剤の使用を例示する。
【0062】
例1において得られた生成物を90℃において12時間乾燥させる。次いでこれをキューブミキサー中でLDPEのLacqtene 1020FN24、PEG 400(結合剤)及び酸化防止剤Irganox B225と10分間混合する。用いた配合は次の通りである。
【0063】
【表3】

【0064】
幅30cmで開口部の調節が可能なフラットダイを備えたZSK30二軸押出機を用い、押出機から出てきたフィルムを延伸して100μmの厚さにするためのキャストフィルム機をも用いて、実施する。
【0065】
押出機及びフィルム用ダイの温度は180℃とする。キャストフィルム機入口の温度は70℃とする。その他の条件は、次の通りである。
【0066】
【表4】

【0067】
得られたフィルムは、370nmの波長において照明に付した時に深紅色で発光する。
【0068】
例4
この例は、例3のタイプのポリマーに対して行った比色測定の結果を与える。
【0069】
例3におけるのと同じ態様で、例1の生成物であってしかし乾燥処理に付していないものを用いて、フィルムを調製する。
【0070】
各種試験において用いた配合を以下に与える。
【0071】
【表5】

【0072】
HALSは、周知の紫外線防止添加剤(50%Tinuvin 622、50%Chimasorb 944)である。
【0073】
調製されたフィルムは、110μm〜130μmの範囲の厚さを有していた。
【0074】
得られたフィルムを対比カード上に置き、鏡面成分を含むMinolta 508d比色計を用いて白色の背景上で色座標L、a及びbを測定する。これらの座標は、国際照明委員会(Commission Internationale d'Eclairage)によって規定され、フランス規格集(AFNOR)比色測定色X08−12番、X08−14番(1983年)に挙げられている1976CIEシステム(L、a、b)に与えられている。また、曇り度測定は、Byk-GardnerからのXL-211 Hazegard曇り度測定機を用いて行う。
【0075】
得られた数値を以下に与える。
【表6】

【0076】
試験1のフィルムは無色だった。白色ΔEの変化は、測定の不確定性以下の割合だった。これは、本発明の化合物を添加してもフィルムの色に何の変化ももたらされないことを示している。例えば、黄変はなかった。最後に、曇り度測定は、フィルムの透明性を評価することを可能にする。透明性にも、有意の変化はなかった。
【0077】
最後に、250nm〜750nmの波長範囲において、対照用試験フィルム1と試験フィルム2との間、又は試験フィルム3と対照用試験フィルム4との間で、透過スペクトルの目につくほどの変化はなかった。
【0078】
例5
この例は、マニキュア液の調製における例1の生成物の使用に関する。
【0079】
このワニスは、Gemey社より販売されている透明ベース(3.55g)に以下のものを含有させたものである:
・溶剤として:酢酸エチル、酢酸ブチル及びニトロセルロース
・無水フタル酸/グリセロール/デカン酸グリシジルコポリマー
・イソプロピルアルコール
・クエン酸アセチルトリブチル
・ステアラルコニウムヘクトライト(Stearalkonium Hectorite)
・エチルトシルアミド
・クエン酸
・ポリエチレンオキシド
・雲母。
【0080】
前記の例の生成物3質量%を上記ベースに添加する。
【0081】
370nmの紫外線下で、得られたワニスは深紅色の光を発した。
【0082】
例6
この例は、スタイリングジェルの調製における例1の生成物の使用に関する。
【0083】
Garnier社より販売されている以下のものを含有するスタイリングジェルを用いる(Fructis Style):
【0084】
・水
・変性アルコール
・PVP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー
・ヒドロキシプロピルグアール
・ヒドロキシプロピルセルロース
・水素化ひまし油PEG40
・PEG192(杏仁油グリセリド)
・PEG70(マンゴーグリセリド)
・トリエタノールアミン
・ポリクウォータニウム−11
・ジメチコーンコポリオール
・ペンタナトリウムペンテネート(pentasodium pentenate)
・4−ベンゾフェノン
・プロピレングリコール
・カルボマー
・果物{シトラスリモナム(Citrus limonum)}からの活性剤
・芳香剤。
【0085】
前記の例の生成物0.5質量%を上記ジェルに添加する。
【0086】
370nmの紫外線下で、得られたジェルは深紅色の光を発光した。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】370nmの励起波長についての本発明に従う2種の添加剤の発光スペクトルを示すグラフである。
【図2】623nmの発光波長についての本発明に従う添加剤の励起スペクトルを示すグラフである。
【図3】フロントモノクロメーター及びバックモノクロメーターを備えた分光光度計を用いて同期モードで測定した、本発明に従う添加剤についての波長の関数としての吸収強度の変化(1−R。Rは拡散反射の強度を示す。)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス及び添加剤を含むタイプの光変換材料であって、添加剤として次式:
Ba3(1-x)Eu3xMg1-yMnySi28 (1)
(ここで、0<x≦0.3であり、0<y≦0.3である)
の化合物を含むことを特徴とする、前記光変換材料。
【請求項2】
前記マトリックスがポリマーをベースとすることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記マトリックスが塗料若しくはワニス又はラテックスをベースとすることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
前記式(1)において0.0001≦x≦0.25且つ0.0001≦y≦0.25である化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の材料。
【請求項5】
前記式(1)において0.01≦x≦0.03且つ0.04≦y≦0.06である化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の材料。
【請求項6】
前記マトリックスが低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン合成によって得られるポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン−ビニルアルコール、これらの(コ)ポリマーをベースとするブレンド及びコポリマー並びにポリカーボネートより成る群から選択されるポリマーをベースとすることを特徴とする、請求項2、4及び5のいずれかに記載の材料。
【請求項7】
前記マトリックスがマニキュア液であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の材料。
【請求項8】
前記マトリックスがスタイリングジェルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の材料。
【請求項9】
請求項1、2及び4〜6のいずれかに記載の材料を含むことを特徴とする、温室壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−505659(P2006−505659A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550733(P2004−550733)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003283
【国際公開番号】WO2004/044090
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(503124252)ロディア エレクトロニクス アンド カタリシス (13)
【Fターム(参考)】