説明

バルブ、および流量制御装置

【課題】弁体の移動に伴う不純物の発生を抑えることが可能なバルブを提供する。
【解決手段】開口部1aを配管内部に備えた弁座1と、開口部1aを開閉する磁性を備えた弁体2と、配管外部に弁体2を挟んで互いに対向して取り付けられ、一方の磁石のN極が他方の磁石のS極と対向して第1の磁界を形成し、一方の磁石のS極が他方の磁石のN極と対向して第2の磁界を形成する一対の磁石3a、3bと、一対の磁石3a、3bを挟んで互いに対向し、電流が第1の向きに流れると第1の磁界と同じ向きの磁界を発生させ電流が第2の向きに流れると第2の磁界と同じ向きの磁界を発生させる一対のコイル4a、4bと、を有し、弁体2は、電流が一対のコイル4a、4bを第1の向きに流れると第1の磁界に向かって移動し、電流が一対のコイル4a、4bを第2の向きに流れると第2の磁界に向かって移動することによって開口部1aを開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内部に形成された流路を開閉するバルブ、およびそのバルブを備えた流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を塗工対象物に塗布する装置には、一般的に、薬液の供給および停止を行うバルブが配管内部に設けられている。このバルブの駆動手段としてピストンを用いる技術が、特許文献1に開示されている。
【0003】
図7は、特許文献1に開示されたバルブの構成を示す断面図である。
図7に示すバルブでは、バルブ本体110の内部に、薬液を通過させる開口部を備えた弁座120が取り付けられている。弁座120の開口部は、弁体150が弁座120に接触したときに閉鎖し、弁体150が弁座120から離れたときに開放する。弁体150には、ピストン140が接続されている。ピストン140は、バルブ本体110の外部に設けられたシリンダー130内で往復移動させられる。この往復移動に伴って弁体150は弁座120に接触する位置と弁座120から離れた位置との間を往復移動する。これにより、弁座120の開口部が開閉して薬液の供給および停止が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3399881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示すバルブでは、バルブ本体110の内部を流れる薬液がシリンダー130に漏れるのを防ぐために、ピストン140のシャフト部をシール部材170でシールする構造となっている。そのため、ピストン140が往復移動すると、シール部材170がピストン140のシャフト部との摩擦により摩耗し、その結果、摩耗粉が不純物として薬液に混入するおそれがある。
【0006】
本発明は、弁体の移動に伴う不純物の発生を抑えることが可能なバルブ、およびそのバルブを備えた流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のバルブは、流体を通過させる開口部を配管内部に備えた弁座と、前記配管内部で前記弁座の前記開口部を開閉する、磁性を備えた弁体と、配管外部に前記弁体を挟んで互いに対向して取り付けられた一対の磁石であって、一方の磁石のN極が他方の磁石のS極と対向して第1の磁界を形成し、前記一方の磁石のS極が前記他方の磁石のN極と対向して前記第1の磁界と逆向きの第2の磁界を形成する一対の磁石と、前記一対の磁石を挟んで互いに対向し、電流が第1の向きに流れると前記第1の磁界と同じ向きの磁界を前記配管内部に発生させ、前記電流が前記第1の向きと反対の第2の向きに流れると前記第2の磁界と同じ向きの磁界を前記配管内部に発生させる一対のコイルと、を有し、前記弁体は、前記電流が前記一対のコイルを前記第1の向きに流れると前記第1の磁界に向かって移動し、かつ前記電流が前記一対のコイルを前記第2の向きに流れると前記第2の磁界に向かって移動することによって、前記弁座の前記開口部を開閉する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の流量制御装置は、上記バルブと、前記電流の向きを、前記第1の向きと前記第2の向きとに交互に切り替えて前記一対のコイルに前記電流を流す電流調整部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁性を備えた弁体が、一対のコイルに流れる電流の向きに応じて第1の磁界および第2の磁界に移動することによって、弁座の開口部が開閉する。これにより、ピストンを用いずに弁体を移動させることが可能になるので、弁体の移動に伴う不純物の発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のバルブの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すバルブの一部の構成を示す上面図である。
【図3】弁体が弁座の開口部を閉鎖している状態を示す断面図である。
【図4】弁体が弁座の開口部を開放している状態を示す断面図である。
【図5】図1に示すバルブを備えた流量制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明のバルブの他の実施形態を示す断面図である。
【図7】特許文献1に開示されたバルブの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明のバルブの一実施形態を示す断面図である。図2は、図1に示すバルブ10の一部の構成を示す上面図である。
【0012】
まず、本実施形態のバルブ10の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態のバルブ10は、弁座1と、弁体2と、一対の磁石3a、3bと、一対のコイル4a、4bとを有する。
【0013】
弁座1は、非磁性体の配管5の内部に取り付けられている。弁座1には、流体を通過させる開口部1aが形成されている。配管5の内部における開口部1aの下流側には、磁性を備えた弁体2が配置されている。弁体2は、図2に示すように、配管5の内壁に取り付けられた支持部材6によって支持されている。支持部材6は、例えば板ばねのような弾性体で構成されている。
【0014】
一対の磁石3a、3bは、配管5の外部に弁体2を挟んで互いに対向して取り付けられている。本実施形態では、図1に示すように、磁石3aのN極が磁石3bのS極と対向して、これらの間に磁界B1を形成する。さらに、磁石3aのS極が磁石3bのN極と対向してこれらの間に磁界B2を形成する。磁界B1と磁界B2に関し、互いの向きは逆向きであり、互いの強度は等しい。
【0015】
一対のコイル4a、4bは、磁石3a、3bを挟んで互いに対向している。コイル4a、4bを流れる電流の向きに応じて、磁界B1と同じ向きの磁界B3(図3参照)、および磁界B2と同じ向きの磁界B4(図4参照)が配管5の内部に発生する。以下、本実施形態では、磁界B3を発生させる電流の向きを第1の向きと称し、磁界B4を発生させる電流の向きを第2の向きと称する。コイル4a、4bの中には、コイル4a、4bに通電することによって発生する磁界B3、B4の磁束密度を高めるため、層状の鉄芯7が挿入されている。
【0016】
次に、本実施形態のバルブの動作について説明する。
【0017】
電流がコイル4a、4bに流れていないとき、弁体2は、図1に示すように、磁界B1および磁界B2の磁力により中立点に静止している。
【0018】
電流がコイル4a、4bを第1の向きに流れると、上述したように磁界B1と同じ向きの磁界B3が配管5の内部に発生する。すると、磁界B1の磁力は磁界B3の磁力によって強められ、磁界B2の磁力は磁界B3の磁力によって弱められる。そのため、磁束の偏りが生じ、磁性体である弁体2を磁界B1に向かわせる力が発生する。その結果、弁体2は、図3に示すように、弁座1に接触する。これにより開口部1aが閉鎖される。
【0019】
電流がコイル4a、4bを第2の向きに流れると、上述したように磁界B2と同じ向きの磁界B4が配管5の内部に発生する。すると、磁界B1の磁力は磁界B4の磁力によって弱められ、磁界B2の磁力は磁界B4の磁力によって強められる。その結果、今度は、弁体2を磁界B2に向かわせる力が発生する。その結果、弁体2は、図4に示すように、弁座1から離れる。これにより開口部1aが開放される。
【0020】
図5は、図1に示すバルブ10を備えた流量制御装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【0021】
図5に示す流量制御装置は、図1に示すバルブ10に加え、操作部11と、磁気センサ12と、電流調整部13と、を有する。
【0022】
操作部11は、予め定められた複数の電流値からいずれかを選択する操作を受け付ける。
【0023】
磁気センサ12は、弁体2に取り付けられている。磁気センサ12は、弁体2が位置する場所の磁界の強度を検出し、検出値を電流調整部13に送る。
【0024】
電流調整部13は、コイル4a、4bに流す電流の向きを上述した第1の向きと第2の向きとに交互に切り替える。これにより、弁座1による開口部1aの開閉動作が自動的に行われる。
【0025】
さらに、電流調整部13は、コイル4a、4bに流す電流値を、操作部11で選択された電流値に設定する。コイル4a、4bに流す電流値が設定されると、弁体2を移動させる力の大きさが決まる。この力の大きさに応じて、弁体2の第1の磁界B1への移動速度、および弁体2の第2の磁界B2への移動速度が決まる。これらの移動速度は、開口部1aの開放または閉鎖にかかる時間に対応している。したがって、本実施形態では、操作部11でコイル4a、4bに流す電流値を選択することによって、開口部1aの開閉を早くしたり遅くしたりして流量を制御することが可能となる。
【0026】
さらに、電流調整部13は、コイル4a、4bに電流を流しているときに磁気センサ12の検出値を、弁体2を第1の磁界B1または第2の磁界B2に移動させるのに必要な磁界の強度の下限置と比較する。磁気センサ12の検出値がその下限置を下回っている場合、電流調整部13は、コイル4a、4bに流す電流値を大きくする。すなわち、コイル4a、4bに電流を流した時に弁体2が移動しているか否か判断し、弁体2が移動していない場合に弁体2を移動させるようにフィードバックしている。このフィードバックにより弁体2の確実な移動、すなわち開口部1aの確実な開閉が確保される。
【0027】
図7に示すバルブでは、上述したように、弁体150を駆動するためにピストン140を用いる必要があった。そのため、ピストン140の往復移動中に、シール部材170がピストン140のシャフト部との摩擦により摩耗し、摩耗粉が薬液に混入するおそれがあった。
【0028】
しかし、本実施形態のバルブ10では、電流調整部13が一対のコイル4a、4bに流れる電流の向きを第1の向きと第2の向きとに交互に変えることによって、弁体2を、第1の磁界B1および第2の磁界B2へ移動させている。弁体2は、第1の磁界B1および第2の磁界B2への移動によって弁座1の開口部1aを開閉する。したがって、本実施形態のバルブ10によれば、ピストンを用いずに、弁体2に弁座1の開口部1aを開閉させることが可能になる。よって、弁体2の移動に伴う不純物の発生を抑えることが可能となる。
【0029】
本実施形態では、配管5内を流れる流体の圧力を利用して開口部1aをスムーズに開放させるために弁体2が開口部1aの下流側に位置する構成である。しかし、本発明では、図6に示すように、弁体2は、開口部1aの上流側に位置する構成であってもよい。この構成であっても、電流調整部13が一対のコイル4a、4bに流れる電流の向きを第1の向きと第2の向きとに交互に変えることによって、ピストンを用いずに弁体2を移動させられる。よって、弁体2の移動に伴う不純物の発生を抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 弁座
1a 開口部
2 弁体
3a 磁石
3b 磁石
4a コイル
4b コイル
5 配管
6 支持部材
7 鉄芯
10 バルブ
11 操作部
12 磁気センサ
13 電流調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を通過させる開口部を配管内部に備えた弁座と、
前記配管内部で前記弁座の前記開口部を開閉する、磁性を備えた弁体と、
配管外部に前記弁体を挟んで互いに対向して取り付けられた一対の磁石であって、一方の磁石のN極が他方の磁石のS極と対向して第1の磁界を形成し、前記一方の磁石のS極が前記他方の磁石のN極と対向して前記第1の磁界と逆向きの第2の磁界を形成する一対の磁石と、
前記一対の磁石を挟んで互いに対向し、電流が第1の向きに流れると前記第1の磁界と同じ向きの磁界を前記配管内部に発生させ、前記電流が前記第1の向きと反対の第2の向きに流れると前記第2の磁界と同じ向きの磁界を前記配管内部に発生させる一対のコイルと、を有し、
前記弁体は、前記電流が前記一対のコイルを前記第1の向きに流れると前記第1の磁界に向かって移動し、かつ前記電流が前記一対のコイルを前記第2の向きに流れると前記第2の磁界に向かって移動することによって、前記弁座の前記開口部を開閉する、バルブ。
【請求項2】
前記弁体が、前記配管内部における前記開口部の下流側に配置されている、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバルブと、
前記電流の向きを、前記第1の向きと前記第2の向きとに交互に切り替えて前記一対のコイルに前記電流を流す電流調整部と、を有する流量制御装置。
【請求項4】
予め定められた複数の電流値からいずれかを選択する操作を受け付ける操作部をさらに有し、
前記電流調整部は、前記一対のコイルに流す電流値を、前記操作部で選択された電流値に設定する、請求項3に記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記弁体に取り付けられ、磁界の強度を検出する磁気センサをさらに有し、
前記電流調整部は、前記一対のコイルに前記電流を前記第1の向きまたは前記第2の向きに流しているときの前記磁気センサの検出値が、前記弁体を前記第1の磁界または前記第2の磁界に移動させるのに必要な磁界の強度の下限値を下回っている場合、前記一対のコイルに流す電流値を大きくする、請求項3または4に記載の流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251598(P2012−251598A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124194(P2011−124194)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】