説明

バルブ・ゲート用駆動装置

【課題】 電源に燃料電池を用いることで、電源装置全体を小型化できると共に、取扱いを容易にしてメンテナンスも行いやすいバルブ・ゲート用駆動装置を提供する。
【解決手段】 駆動機構の電源として燃料電池20を用い、バルブ又はゲート開閉の際に燃料電池20から電力を供給することにより、商用電源設備が周囲になく電力供給が難しい場所において、電源として一般的に用いられる自然エネルギを利用した他の発電装置と蓄電池との組合せに比べて、周囲環境の影響をほとんど受けず且つ小型化できる燃料電池20で生じさせた電力で駆動機構を確実に動作させられ、バルブ又はゲート開閉の信頼性を高められると共に、小型、軽量である燃料電池20は容易に運搬でき、緊急時は可搬型電源として燃料電池20を持込んで現場で駆動機構に接続し、バルブ又はゲートを開閉動作させることもでき、緊急対応性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源として商用交流電源を用いることが困難な箇所に配設されるバルブやゲートの開閉用駆動装置に関し、特に、駆動装置に燃料電池を接続して電源として用いることで、電源部分のメンテナンスの手間を必要最小限とすると共に電源部分の小型化が図れるバルブ・ゲート用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や貯水池等から導水する管路や水路に設けられ、開閉制御されて水の流れを調節するバルブやゲート(水門)は、人の居住地域から離れた場所に設置されるのが一般的であり、バルブやゲートの開閉駆動機構を動作させる電源を得るために、この設置箇所まで送電線を敷設又は架設することが物理的に不可能な場合や、コスト面で非常に困難な場合も多いことから、商用電源に代えて蓄電池(バッテリ)を電源とし、この蓄電池に充電するための太陽光発電装置や風力発電装置等を併用する手法が従来から一般的に行われていた。このような従来の蓄電池電源を使用したバルブ・ゲート用駆動装置の例として、特開平8−120653号公報や特開平9−209338号公報に記載されるものがある。
【0003】
このような従来の駆動装置は、蓄電池から駆動機構の電動機に対し電力を安定して供給するために、太陽光発電装置の場合には日中に発電した電力を、風力発電装置の場合には風が吹いている際に発電した電力を蓄電池に充電しておくことで、夜間や無風時にもゲートの開閉を可能としている。
【特許文献1】特開平8−120653号公報
【特許文献2】特開平9−209338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のバルブ・ゲート用駆動装置は前記各特許文献に示される構成となっており、蓄電池への充電に太陽光発電装置と風力発電装置とを併用することにより、各発電装置を単独で用いる場合に比べてより安定して蓄電池への充電を行えるようにし、様々な状況で確実にゲートを動かせるようにしているものの、やはり日照不足や無風状態が続いて太陽光発電装置や風力発電装置の発電量が不足する事態に対処するため、蓄電池の充電容量をある程度余裕のあるものにすると共に、太陽光発電装置や風力発電装置についても、少ない発電機会に確実に電力を供給できるような発電容量の大きなものを設置する必要があった。
【0005】
加えて、バルブやゲートの開閉駆動機構を動作させるためには、負荷に対応した十分な電力を供給できる大容量の蓄電池が必要であり、且つこの蓄電池を充電するために太陽光発電装置や風力発電装置も大容量のものが必要となる。このため、太陽光発電装置や風力発電装置、蓄電池はいずれも大型となり、設置スペースが大きくなる他、コストも非常に大きなものになるという課題を有していた。
【0006】
さらに、バルブやゲートの開閉を要する事態にも拘らず、蓄電池から電力が供給できないなどトラブルが生じた際、予備電源が用意されていない状況では、作業員が現場に発電機を持込んだり、作業者自身がバルブやゲートを手動で動かしたりしていたが、発電機は重く取扱いが面倒であり、また、手動操作は大変な労力と手間がかかるなど、作業者の負担が大きいという課題を有していた。
【0007】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、電源に燃料電池を用いることで、電源装置全体を小型化できると共に、取扱いを容易にしてメンテナンスも行いやすいバルブ・ゲート用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバルブ・ゲート用駆動装置は、管路を開閉するバルブ又は水路を開閉するゲートに対し、所定の駆動機構を介して、所定の電源から供給された電力で動作する電動機から駆動力を付与し、バルブ又はゲートの開閉動作を行わせるバルブ・ゲート用駆動装置において、前記電源として、燃料電池を接続して利用するものである。
【0009】
このように本発明によれば、駆動機構の電源として燃料電池を用い、バルブ又はゲート開閉の際に燃料電池から電力を供給することにより、商用電源設備が周囲になく電力供給が難しい場所において、電源として一般的に用いられる自然エネルギを利用した他の発電装置と蓄電池との組合せに比べて、周囲環境の影響をほとんど受けず且つ小型化できる燃料電池で生じさせた電力で駆動機構を確実に動作させられ、バルブ又はゲート開閉の信頼性を高められると共に、小型、軽量である燃料電池は容易に運搬でき、緊急時は可搬型電源として燃料電池を持込んで現場で駆動機構に接続し、バルブ又はゲートを開閉動作させることもでき、緊急対応性に優れる。また、定置電源として用いる場合は、他の電源装置を直接駆動に用いずに済ませることから、その電力供給能力を抑えて他の電源装置を小型化したり装置自体を省略したりすることもでき、燃料電池自体が小型化しやすいことと合わせて、電源部分全体を小型化でき、バルブ又はゲートの開閉システム全体でコストダウンが図れる。
【0010】
また、本発明に係るバルブ・ゲート用駆動装置は必要に応じて、前記燃料電池が、燃料を反応させて電気を発生させる本体部分と共に、当該本体部分に供給される燃料の少なくとも一方を貯蔵する貯蔵部、及び当該貯蔵部から前記本体部分への燃料供給を制御する燃料供給制御弁を併設されてなり、外部の中央監視所と通信可能に配設されて前記電動機の動作制御並びに前記燃料供給制御弁の開閉制御を行う制御部と、燃料供給制御弁の弁開閉動作用電源及び前記制御部の電源として電力を供給するバッテリとを備え、前記制御部が、外部からの指令に基づいて、前記燃料供給制御弁を開状態に移行させ、燃料電池を発電状態として前記電動機へ電力を供給し、バルブ又はゲートを開閉動作させ、所定のバルブ又はゲート開度に到達させた後、燃料供給制御弁を閉状態として燃料電池からの電力供給を停止させるものである。
【0011】
このように本発明によれば、燃料電池への燃料供給を制御する燃料供給制御弁の開閉動作用電源としてバッテリを用い、制御部で燃料供給制御弁を開閉制御して燃料電池からの電力供給状態を調整することにより、バルブ・ゲートの開閉に係る電力供給のための燃料電池の動作切替えは、中央監視所からの遠隔操作で行え、離れた場所から燃料電池で生じさせた電力を利用して駆動装置を確実に動作させられる。また、バッテリは燃料供給制御弁と制御部のみの電源としてその容量を小さくすることができ、燃料電池と合わせた電源部分全体をコンパクトで信頼性の高いシステムとすることができる。
【0012】
また、本発明に係るバルブ・ゲート用駆動装置は必要に応じて、前記バッテリが、充電により電力供給機能を回復可能な蓄電池であり、当該蓄電池に対して充電用の電力を供給する太陽光発電装置及び/又は風力発電装置を備えるものである。
このように本発明によれば、バッテリを充電可能な蓄電池とすると共に、これに対し充電用の電力を供給する太陽光発電装置及び/又は風力発電装置を配設し、蓄電池を燃料供給制御弁や制御部に常時電力供給可能な状態に維持できることにより、長期にわたって燃料電池の電力供給制御が適切に行え、バルブやゲートの開閉に係る信頼性を維持でき、保守の手間を削減できる上、蓄電池と組で配設される太陽光発電装置や風力発電装置は、燃料供給制御弁を駆動可能な程度の小容量とされる蓄電池の充電のみ行うものとして小型の装置を使用でき、電源部全体を従来型のバルブやゲートの駆動用電力を供給する蓄電池と各発電装置の組合せからなる電源部に比べて大幅に小型化でき、且つ低コスト化も図れる。
【0013】
また、本発明に係るバルブ・ゲート用駆動装置は必要に応じて、前記制御部が、前記太陽光発電装置及び/又は風力発電装置の発電状態監視機能を有し、前記太陽光発電装置及び/又は風力発電装置が正常発電状態から発電不能状態に移ってから、所定時間経過又は前記蓄電池残容量が所定割合まで低下した場合に、前記制御部が前記燃料供給制御弁を開状態に移行させ、燃料電池を発電状態として蓄電池へ電力を供給させ、蓄電池が所定の充電状態に達するまで充電を実行させた後、燃料供給制御弁を閉状態として燃料電池からの電力供給を停止させるものである。
【0014】
このように本発明によれば、太陽光発電装置や風力発電装置から蓄電池に電力が供給されず、蓄電池に対し適切に充電できない場合に、制御部がこれを識別して臨時に燃料電池を電力供給可能な状態とし、燃料電池から蓄電池に対し充電用の電力を供給することにより、蓄電池から燃料電池の燃料供給制御弁に駆動用の電力を供給できなくなる前に蓄電池を適切な充電状態に回復させられ、燃料供給制御弁に電力を供給して開閉動作させる機能が常時確保されることとなり、装置の信頼性をさらに高められる。
【0015】
また、本発明に係るバルブ・ゲート用駆動装置は必要に応じて、前記制御部が、燃料電池の貯蔵部からの燃料供給状況を所定のセンサを通じて監視し、常時、又は前記状況が初期状態から大きく変化した時に、前記中央監視所へ前記状況を示す情報を送信するものである。
このように本発明によれば、貯蔵部からの燃料供給状況を制御部で監視し、貯蔵部から燃料電池への燃料供給圧力や流量が低下した場合などの異常状況を制御部が外部の中央監視所に速やかに通知できることにより、中央監視所を通じて作業者が異常を迅速に認識することができ、作業者による貯蔵部への燃料補充等、燃料電池の速やかなメンテナンスが可能となり、バルブやゲートの開閉の際のトラブルを未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を図1ないし図3に基づいて説明する。なお、本実施の形態においては、ゲート(水門)を開閉するシステムの例について説明する。図1は本実施の形態に係るゲート用駆動装置の概略構成図、図2は本実施の形態に係るゲート用駆動装置のブロック図、図3は本実施の形態に係るゲート用駆動装置のゲート開閉動作制御フローチャートである。
【0017】
前記各図において本実施の形態に係るゲート用駆動装置1は、ゲート70を開閉する駆動機構部10と、駆動機構部10に動力を伝達する電動機11と、この電動機11を駆動するための電力を発生させる燃料電池20と、この燃料電池20から供給される電力を電動機11に対し利用可能な形式に変換して出力するインバータ30と、燃料電池20における発電状態及びインバータ30の出力状態を制御する制御部40と、この制御部40他の動作用電力を供給する前記バッテリとしての蓄電池50と、この蓄電池50を充電するための電力を供給する太陽光発電装置60とを備える構成である。
【0018】
前記駆動機構部10は、電動機11から得た回転駆動力をウォームギヤ等の減速段を用いて減速しつつゲート70の上下動の駆動力に変換してゲート70を開閉動作させる公知の機構であり、また、ゲート開度や過負荷状態の検出についても、ウォーム軸等に併設したエンコーダ12やトルクスプリングと組のポテンショメータ13を用いて行う公知の仕組みを採用しており、詳細な説明を省略する。なお、この駆動機構部10については、ゲート70を上下動させて開閉する機構としているが、こうした板状のゲートを上下方向又は横方向に移動させて開閉を行う一般的な機構に限らず、電動機の回転を利用してゲートの開閉を行うものであれば、他方式の機構でもかまわない。
【0019】
前記燃料電池20は、燃料である水素と空気中の酸素とを反応させて電気を発生させる本体部分と共に、この本体部分に供給される水素を貯蔵する前記貯蔵部としてのタンク21、及び、このタンク21から前記本体部分への水素供給を制御する燃料供給制御弁22を併設される構成である。燃料電池20自体は、固体高分子型などの公知のものであり、また、タンク21も公知の水素吸蔵合金等を使用したものであり、詳細な説明を省略する。燃料供給制御弁22は、制御部40と電気的に接続され、制御部40を通じた蓄電池50からの電力供給をON、OFFされることで開、閉いずれかの状態に切替えられる電磁弁である。
【0020】
この燃料電池20は、インバータ30と接続されてこれに電力を供給する以外に、前記制御部40を介して蓄電池50とも接続され、制御部40による制御の下でこの蓄電池50への充電も可能とされている。また、燃料供給制御弁22のある水素の送給管路には、圧力センサ23が配設され、送給圧力が検知されて制御部40や外部の中央監視所80に送信され、送給圧力の低下度合からタンク21における水素の残り状況を把握可能となる仕組みである。
【0021】
前記インバータ30は、燃料電池20から供給された直流電力を、電動機11を駆動するための交流電力に変換して電動機11に出力し、電動機11の回転制御を行う公知の回路であり、詳細な説明を省略する。このインバータ30は、制御部40の制御に基づいて、燃料電池20との電気的接続の可否を切替え可能とされ、燃料電池20からの電力供給を必要に応じて受ける仕組みとなっている。
【0022】
前記制御部40は、外部の中央監視所80と電線や光ケーブルによる有線通信、もしくは無線通信により相互に通信可能に配設されると共に、インバータ30や燃料供給制御弁22と接続され、インバータ30を介した電動機11の駆動制御並びに燃料供給制御弁22の開閉制御を行うものである。具体的には、中央監視所80からの指令に基づいて、燃料供給制御弁22を開状態に移行させ、燃料電池20を発電状態とすると共にインバータ30との電気的接続状態を確立させ、インバータ30を作動状態とする。これ以降はインバータ30を用いた公知のゲート開度調整制御となり、ゲート70を開閉動作させて所定のゲート開度に到達させた後、インバータ30により電動機11を停止させるが、これに合わせて、燃料供給制御弁22を閉状態として燃料電池20からの電力供給を停止させる制御を行い、燃料の無駄な消費を抑えている。
【0023】
また、制御部40は、蓄電池50や太陽光発電装置60とも接続され、太陽光発電装置60で発電した電力を蓄電池50に充電する際の充電制御も行っており、蓄電池50に対し過充電を防止する制御等を行う。蓄電池50に充電された電力は、制御部40の動作用として使用される他、制御部40による制御の下、燃料電池20における燃料供給制御弁22の駆動に用いられる。制御部40はこの他、燃料電池20や蓄電池50、太陽光発電装置60の異常監視機能等も備えている。
【0024】
前記蓄電池50は、制御部40や燃料電池20における燃料供給制御弁22の駆動用電源となる充放電可能なリチウムイオン電池等の公知の二次電池であり、詳細な説明を省略する。この蓄電池50の充電容量は、燃料供給制御弁22や制御部40を作動させるのに十分な電力供給を行える程度とされ、従来の蓄電池でゲートを駆動する電力を得る装置の場合に比べその容量を大幅に低減することができ、小型化が可能である。なお、蓄電池50は、制御部40を常時動作させるための電力を供給する関係上、常時放電を行っている。
【0025】
前記太陽光発電装置60は、パネル状の太陽電池を所望の電圧が得られるよう一又は複数枚それぞれ太陽光を受光可能に配置した公知の装置であり、説明を省略する。この太陽光発電装置60の発電容量は、蓄電池50の充電を行うのに十分な電力供給を行えるものとされ、蓄電池50の充電容量が小さく済む分、従来の蓄電池でゲートを駆動する電力を得るタイプの装置に設けられる太陽光発電装置に比べ発電容量を大幅に低減することができ、小型化が可能である。この太陽光発電装置60が発電可能な状態にある時、制御部40は蓄電池50が満充電状態でない限り、太陽光発電装置60での発電により得られた電力を蓄電池50に適切な電圧及び電流として供給し、充電を行う。
【0026】
次に、本実施の形態に係るゲート用駆動装置によるゲート開閉動作について図3のフローチャートを用いて説明する。前提として、制御部40と中央監視所80は有線通信又は無線通信により常時通信が行える状態にあり、且つ初期状態では蓄電池50は適切な充電を経て、制御部40を適切に作動させられると共に、燃料供給制御弁22を確実に開閉動作させるのに十分な電力供給能力を有しているものとする。
【0027】
まず、中央監視所80からゲート70の開又は閉指令が制御部40に通知される(ステップ01)と、制御部40は燃料電池20の燃料供給制御弁22を開放させる(ステップ02)。開放した燃料供給制御弁22を通じてタンク21から出た水素が燃料電池20の本体部分に達し、燃料電池20では水素が供給されることで水素と空気との反応に伴う発電が開始される。制御部40では、燃料電池20での発生電力を検知し(ステップ03)、正常出力であるか否かを判定する(ステップ04)。正常状態を確認した場合、燃料電池20とインバータ30を電気的接続状態とし、インバータ30に電力を供給させる(ステップ05)。発生電力が正常でない場合は必要に応じて燃料供給制御弁22を再度開閉動作したり、中央監視所80へ異常を通知したりする。
【0028】
インバータ30は燃料電池20からの電力供給を受け、直交変換した電力を制御部40で設定された出力値で出力して電動機11を駆動させ、駆動機構部10により伝達される駆動力でゲートが開閉動作する(ステップ06)。ゲート開度は駆動機構部10に設けられたエンコーダ12を介して制御部40に把握されており、あらかじめ指示された所望の開度位置にゲート70が達したら、制御部40はインバータ30に電動機11駆動の停止を指令する(ステップ07、08)。これと同時に、制御部40はインバータ30への電力供給を停止させる(ステップ09)と共に、燃料電池20の燃料供給制御弁22を閉止させて燃料電池20での発電も停止させ(ステップ10)、一連の開閉制御動作を完了する。
【0029】
ゲート開閉中、異物との接触や挟み込みなど、ゲート70に異常が生じた場合は、従来公知のゲート駆動装置同様、駆動機構部10のポテンショメータ13がトルク過大状態を検知し、これを受けた制御部40がインバータ30に対し電動機11停止を指令して電動機11を緊急停止させ、過負荷による装置各部の損傷を防止できる。この電動機11停止時において、制御部40は通常のゲート正常停止時と同様、インバータ30と燃料電池20との接続を切断すると共に燃料供給制御弁22を閉止させ、燃料電池20での発電を停止させる。
【0030】
一方、制御部40は、ゲート開度を中央監視所80にも送信しており、開度をモニタリングしている中央監視所80から、ゲート開度の当初設定とは異なる所定開度位置での停止が緊急指示されたら、制御部40は速やかにインバータ30による電動機11駆動を停止させ、前記同様にインバータ30への電力供給中断と燃料供給制御弁22閉止を実行させる。
【0031】
続いて、制御部による装置各部のトラブル対応制御について説明する。制御部40は、蓄電池50の電圧を検出すると共に、太陽光発電装置60からの充電が適切に行われているかどうかを監視しており、曇天日の連続等で太陽光発電装置60からの充電が十分に行われない状態が一定期間継続し、蓄電池50の残り容量を示す出力電圧が所定レベル、例えば、あと数日間制御部40に電力供給を続けたり、あと数回燃料供給制御弁22を動作させたりすると、それ以降は正常に制御部40や燃料供給制御弁22に電力を供給できなくなる状況まで降下した場合、制御部40は緊急充電モードとして、燃料電池20と蓄電池50を電気的接続状態とすると共に、燃料供給制御弁22を開放し、燃料電池20で発電を行って、蓄電池50の充電を行う。
【0032】
この充電により蓄電池50の電圧が問題ないレベル(例えば、満充電状態)まで回復したことを検出すると、制御部40は燃料供給制御弁22を閉止させると共に燃料電池20と蓄電池50との電気的接続を切断する。この後、さらに所定期間経過しても太陽光発電装置60からの電力供給が回復しない場合には、この異常を中央監視所80に通知する。この他、蓄電池50が充放電を繰返して短期間で電圧降下が生じるようになった状況を制御部40が検知した場合、蓄電池50の容量が許容レベル以下に低下した寿命状態と制御部40が判定して、中央監視所80にその状態を通知する。なお、蓄電池50が正常に電力を供給できないなど異常の場合で、太陽光発電装置60が正常に稼働している場合は、太陽光発電装置60からの供給電力で燃料供給制御弁22を動作させられるように臨時の回路接続状態とすることもできる。
【0033】
さらに、制御部40は、燃料供給制御弁22開放時のタンク21からの水素吐出圧力を圧力センサ23により監視しており、圧力が規定値以下となった場合には、タンク21内がほぼ空状態もしくはタンク21を含む燃料電池20系統の何らかの異常と判定し、中央監視所80に通知する。これに応じて作業者が装置設置箇所に出向き、水素を補充するなど保守作業を行うことで、燃料電池20の発電能力が維持され、ゲート開閉時におけるインバータ30への電力供給及び蓄電池50への緊急充電が可能となる。この他、制御部40は、燃料電池20における初期発生電圧があらかじめ定められた値まで低下した際、燃料電池20を寿命と判断し、その旨を中央監視所80に通知する。こうした燃料電池自体の不具合など緊急時には、作業者が可搬型の燃料電池をインバータ30に接続してゲート開閉を行わせることもできる。
【0034】
このように、本実施の形態に係るゲート用駆動装置においては、ゲート70の駆動源となる電動機11の電源として燃料電池20を用い、ゲート開閉の際に燃料電池20から電力を供給することから、商用電源設備が周囲になく電力供給が難しい場所において、電源として一般的に用いられる自然エネルギを利用した他の発電装置と蓄電池との組合せに比べて、周囲環境の影響をほとんど受けず且つ小型化できる燃料電池20で生じさせた電力で電動機11及び駆動機構部10を確実に動作させられ、ゲート開閉の信頼性を高められると共に、蓄電池50や太陽光発電装置60等の他の電源装置を直接ゲート駆動に用いずに済ませることから、その電力供給能力を抑えてこうした電源装置を小型化することもでき、燃料電池20自体の小型化容易性と合わせて、電源部分全体を小型化でき、ゲート開閉システム全体でコストダウンが図れる。また、太陽光発電装置60から蓄電池50に電力が供給されず、蓄電池50に対し適切に充電できない場合に、制御部40がこれを識別して臨時に燃料電池20を電力供給可能な状態とし、燃料電池20から蓄電池50に対し充電用の電力を供給することから、蓄電池50から燃料電池20の燃料供給制御弁22に駆動用の電力を供給できなくなる前に蓄電池50を適切な充電状態に回復させられ、燃料供給制御弁22に電力を供給して開閉動作させる機能が常時確保されることとなり、装置の信頼性をさらに高められる。
【0035】
なお、前記実施の形態に係るゲート用駆動装置は、水路に設けられるゲート70を開閉するものであるが、この実施形態の各構成は、管路に設けられるバルブを開閉するバルブ用駆動装置にも同様に適用でき、前記実施形態同様、電力供給を行う燃料電池は、電力が必要な場合のみ発電状態となって電力を供給可能であることから、常時バルブ等の駆動用電力供給能力を確保しておく必要もなく、エネルギ損失を抑えられると共に、バルブ用駆動装置の電源部分を小型化できる。
【0036】
また、前記実施の形態に係るゲート用駆動装置においては、蓄電池50への継続的充電のための電源装置として太陽光発電装置60を用いる構成としているが、これに限らず、風力発電装置を用いたり、太陽光発電装置と風力発電装置を同時に用いる構成とすることもできる。
【0037】
また、前記実施の形態に係るゲート用駆動装置においては、制御部40や燃料供給制御弁22の電源をなすバッテリとして蓄電池50を用いる構成としているが、これに限らず、寿命の長いリチウム電池などの一次電池を用いる構成とすることもでき、作業者が適切な頻度で交換を行える環境であれば問題なく運用が行え、太陽光発電装置等も不要として装置全体の大幅なコストダウンが図れる。
【0038】
また、前記実施の形態に係るゲート用駆動装置においては、燃料電池20については発電の実行と停止のみ、すなわち、燃料供給制御弁22の開閉のみ制御しているが、用いる燃料電池と燃料の種類によっては、燃料供給制御弁の開度調整を行うようにすることもでき、インバータ部分での制御のみに留まらず燃料電池からの供給電力も適宜調整してより幅広い駆動制御が行えることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態に係るゲート用駆動装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るゲート用駆動装置のブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るゲート用駆動装置のゲート開閉動作制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 ゲート用駆動装置
10 駆動機構部
11 電動機
12 エンコーダ
13 ポテンショメータ
20 燃料電池
21 タンク
22 燃料供給制御弁
23 圧力センサ
30 インバータ
40 制御部
50 蓄電池
60 太陽光発電装置
70 ゲート
80 中央監視所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を開閉するバルブ又は水路を開閉するゲートに対し、所定の駆動機構を介して、所定の電源から供給された電力で動作する電動機から駆動力を付与し、バルブ又はゲートの開閉動作を行わせるバルブ・ゲート用駆動装置において、
前記電源として、燃料電池を接続して利用することを
特徴とするバルブ・ゲート用駆動装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のバルブ・ゲート用駆動装置において、
前記燃料電池が、燃料を反応させて電気を発生させる本体部分と共に、当該本体部分に供給される燃料の少なくとも一方を貯蔵する貯蔵部、及び当該貯蔵部から前記本体部分への燃料供給を制御する燃料供給制御弁を併設されてなり、
外部の中央監視所と通信可能に配設されて前記電動機の動作制御並びに前記燃料供給制御弁の開閉制御を行う制御部と、燃料供給制御弁の弁開閉動作用電源及び前記制御部の電源として電力を供給するバッテリとを備え、
前記制御部が、外部からの指令に基づいて、前記燃料供給制御弁を開状態に移行させ、燃料電池を発電状態として前記電動機へ電力を供給し、バルブ又はゲートを開閉動作させ、所定のバルブ又はゲート開度に到達させた後、燃料供給制御弁を閉状態として燃料電池からの電力供給を停止させることを
特徴とするバルブ・ゲート用駆動装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載のバルブ・ゲート用駆動装置において、
前記バッテリが、充電により電力供給機能を回復可能な蓄電池であり、
当該蓄電池に対して充電用の電力を供給する太陽光発電装置及び/又は風力発電装置を備えることを
特徴とするバルブ・ゲート用駆動装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載のバルブ・ゲート用駆動装置において、
前記制御部が、前記太陽光発電装置及び/又は風力発電装置の発電状態監視機能を有し、
前記太陽光発電装置及び/又は風力発電装置が正常発電状態から発電不能状態に移ってから、所定時間経過又は前記蓄電池残容量が所定割合まで低下した場合に、前記制御部が前記燃料供給制御弁を開状態に移行させ、燃料電池を発電状態として蓄電池へ電力を供給させ、蓄電池が所定の充電状態に達するまで充電を実行させた後、燃料供給制御弁を閉状態として燃料電池からの電力供給を停止させることを
特徴とするバルブ・ゲート用駆動装置。
【請求項5】
前記請求項2ないし4のいずれかに記載のバルブ・ゲート用駆動装置において、
前記制御部が、燃料電池の貯蔵部からの燃料供給状況を所定のセンサを通じて監視し、常時、又は前記状況が初期状態から大きく変化した時に、前記中央監視所へ前記状況を示す情報を送信することを
特徴とするバルブ・ゲート用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−265913(P2006−265913A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84302(P2005−84302)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】