説明

バルブ内蔵コネクタ

【課題】 圧縮スプリングを常に正常な状態で支えておくことができる支持構造を備えたバルブ内蔵コネクタを提供する。
【解決手段】 環状部101に周方向等間隔で一体的に6枚のプレート状又は板材状収容部側スライド脚111を設ける。それぞれの収容部側スライド脚111を、環状部101に設けた支持部113と、この支持部113の軸方向他端に一体的に連続して形成した長方形状のスライド部115と、このスライド部115の軸方向他端の径方向内側部分に一体的に連続して形成した軸方向一方側に延びるズレ防止部116と、から構成する。それぞれのスライド部115に、圧縮コイルスプリング121の軸方向一端部を収容する支持溝117を形成しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の燃料供給系に用いられるエバポレート配管又はベーパリターン配管等で燃料蒸発ガス(ベーパ)の調整に使用するためのバルブ内蔵コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンク内で発生したベーパが大気中に排出されるのを防止するために、ベーパをキャニスタに吸着させるベーパ排出防止機構が広く採用されている。このベーパ排出防止機構で、燃料タンクとキャニスタとを接続するエバポレート配管には、ベーパ流量を調整して燃料タンク内の圧力を適正に保つための1WAYバルブ又はチェックバルブが使用される。また、ベーパ排出防止機構では、インレットパイプの口元近傍と燃料タンクとをベーパリターン配管を用いて連結し、燃料タンク内のベーパの一部をベーパリターン配管を介してインレットパイプの口元に導き、燃料供給時に、外側からインレットパイプの口元に外気が巻き込まれるのを防止して、ベーパの発生量を抑制しているが、ベーパリターン配管の中間部には、燃料タンクの内圧に応じてベーパの循環量を調整するための1WAYバルブ又はチェックバルブが設けられる。
【0003】
このようなエバポレート配管又はベーパリターン配管では、1WAYバルブ又はチェックバルブの両側にゴムホースを接続し、かつ、一方側のゴムホースの一端部を、例えば燃料タンクに設けられているロールオーババルブ側又は差圧バルブ側の接続パイプに接続し、そして他方側のゴムホースの他端部を、キャニスタ側の接続パイプ又はインレットパイプ側の接続パイプに接続しているが、燃料供給系配管からの燃料の蒸散が厳しく規制される傾向にあるので、ゴムホースに代えて樹脂チューブも用いられている。樹脂チューブを用いる場合には、樹脂チューブと接続パイプとの接続は、コネクタあるいはクイックコネクタを介して行われる場合が多い。また、ゴムホースあるいは樹脂チューブと1WAYバルブ等との接続部分からの微少量の燃料蒸散も、近年の低燃料蒸散への更なる要求のもとでは、無視することができず、構成部品同士の接続箇所数を削減することが、低燃料蒸散化に必要であるとされている。
【0004】
そこで、例えば接続パイプの挿入部を備えたクイックコネクタに1WAYバルブ又はチェックバルブを内蔵あるいは付加させることにより、エバポレート配管やベーパリターン配管等の部品点数自体を削減するとともに、構成部品同士の接続箇所数を削減して、低燃料蒸散化を達成することが提案されている。
【0005】
1WAYバルブ又はチェックバルブを内蔵あるいは付加したクイックコネクタとしては、軸方向一方側にチューブ接続部が形成され、軸方向他方側にパイプ挿入部が形成されたコネクタハウジングを用い、このコネクタハウジングのチューブ接続部近傍の内面にバルブシート面を設けておき、軸方向に移動してバルブシート面と離接するようにコネクタハウジング内にバルブ本体を配置するとともに、このバルブ本体をバルブシート面に向かって付勢する圧縮スプリングを取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。バルブ本体は、閉塞部の外周部に形成された当接面がバルブシート面に当接して流体流路を閉塞し、また、軸方向一方側からの流体圧力を受け、バルブシート面から離れるように移動して流体流路を開放する。
【0006】
【特許文献1】特開2004−116733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載されたバルブ内蔵コネクタでは、バルブ本体の安定した作動を確保するために、閉塞部から軸方向他方側に延びるガイドを周方向に間隔を設けて複数形成し、バルブ本体が動くときに、このガイドがコネクタハウジングの内周面上をスライド移動するように構成している。そして、ガイドそれぞれに軸方向に延びる支持溝を形成しておき、この支持溝に圧縮スプリングの軸方向一端部を収容し、かつ、コネクタハウジング側に設けられたスプリング受けで軸方向他端部を受けることにより圧縮スプリングを支えるようにしている。
【0008】
ところが、このような圧縮スプリングの支持構造では、バルブ本体が圧縮スプリングを圧縮してスプリング受け側に移動しているときに、衝撃的な振動などが加わり、バルブ本体がバルブシート面側に瞬間的に移動すると、圧縮スプリングの軸方向一端部の例えば一個所が支持溝から外れ、ガイドの軸方向他端部に引っ掛ってしまうといった事態も発生する。このような状態では、圧縮スプリングのバネ力がバルブ本体に傾いて加わるために、バルブ本体の作動は不安定なものとなってしまい、バルブ内蔵コネクタの所定の圧力−流量特性を維持できなくなる。
【0009】
そこで本発明は、圧縮スプリングを常に正常な状態で支えておくことができる支持構造を備えたバルブ内蔵コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するための本発明のバルブ内蔵コネクタは、軸方向一方側にチューブ接続部が形成され、軸方向他方側にパイプ挿入部が形成された、貫通路を有するコネクタハウジングと、前記貫通路を開閉するように前記コネクタハウジングに設けられた内蔵バルブと、を具備し、前記内蔵バルブは、前記コネクタハウジング内に形成されたバルブシート面と、前記バルブシート面に当接する当接面が外周部に形成された閉塞部を有し、軸方向に移動できるように前記コネクタハウジング内に収められたバルブ本体と、前記バルブ本体を前記バルブシート面に向かって付勢する圧縮スプリングと、を備え、前記バルブ本体は、前記閉塞部から軸方向他方側に延び、前記コネクタハウジングの内周面上をスライド移動するように周方向に間隔を設けて複数形成されたガイドを有していて、前記圧縮スプリングは、前記ガイドに形成された、軸方向に延びる支持溝に軸方向一端部が収容され、かつ、前記コネクタハウジング側に設けられたスプリング受けに軸方向他端部が支えられているバルブ内蔵コネクタであって、前記ガイドの前記支持溝から径方向内側の部分は、前記支持溝から径方向外側の部分よりも軸方向他方側に長く延びているものである。ガイドの支持溝から径方向内側の部分、すなわち、ガイドの、支持溝をはさんで径方向内側の部分は、圧縮スプリング内に長く入り込んでいる。したがって、バルブ本体が圧縮スプリングから離れる方向に瞬間的に移動しても、径方向内側の部分が圧縮スプリング内に入り込んだ状態は維持される。そうすると、圧縮スプリングの軸方向一端部は、径方向内側の部分に規制され、径方向に偏って位置できないので、バルブ本体の軸方向他端部に引っ掛ってしまうことがない。ガイドは例えば、周方向に等間隔で3つ以上設けられる。また、ここでは、ガイドの支持溝から径方向外側の部分(ガイドの、支持溝をはさんで径方向外側の部分)は短いままにしておくことができるで、十分に長いバルブ本体の移動距離を確保できる。
【0011】
径方向内側の部分は、径方向外側の部分よりも、少なくともバルブ本体の軸方向の移動距離に等しい長さだけ、軸方向他方側に長く延ばしておくことができるが、さらに、バルブ本体がバルブシート面を閉塞する状態で、圧縮スプリングの軸方向他端部の軸方向位置まで軸方向他方側に延びているといったように形成することもできる。このように構成すれば、圧縮スプリングから径方向内側の部分が抜け出てしまうといったことはないので、圧縮スプリングが支持溝から外れてしまうのを効果的に防止できる。
【0012】
スプリング受けは、圧縮スプリングの軸方向他端部を収容する筒状部と、この筒状部の軸方向他端部の内側に形成され、圧縮スプリングの軸方向他端を受ける、連通孔が形成された環状受け面と、を一体的に有するバルブキャップとして構成することができる。この場合には、ガイドの支持溝から径方向内側の部分を、バルブ本体がバルブシート面を閉塞する状態で、バルブキャップの筒状部内に入り込むまで軸方向他方側に延ばすことができる。バルブ本体は例えば、ガイドの支持溝から径方向外側の部分が、バルブキャップの筒状部の軸方向一端に当接するまで軸方向他方側に移動できるように構成される。したがって、径方向内側の部分が、バルブキャップの筒状部内に入り込んでいれば、圧縮スプリングから径方向内側の部分が抜け出てしまうといったことはない。さらに、径方向内側の部分が、バルブ本体がバルブシート面を閉塞する状態で、環状受け面との間に、圧縮スプリングの線径(圧縮スプリングの線材自体の径)以下の軸方向の隙間が形成される軸方向位置まで軸方向他方側に延びていれば、圧縮スプリングの軸方向他端部が環状受け面の連通孔内に落ち込むのを防止することが可能となる。径方向内側の部分の軸方向他端部は、例えば、環状受け面の連通孔(連通孔周縁)よりも径方向内側に位置するので、圧縮スプリングの軸方向他端部の連通孔内への落ち込みを効果的に阻止するためには、連通孔(連通孔周縁)との径方向の隙間も圧縮スプリングの線径以下としておくのが好ましい。
【0013】
ガイドの支持溝から径方向内側の部分はまた、バルブ本体がバルブシート面を閉塞する状態で、環状受け面とほぼ同一の軸方向位置まで又は連通孔に入り込むまで軸方向他方側に延びるように形成することができる。このように構成することにより、径方向内側の部分と連通孔との間のクリアランスを小さくできるので、バルブ本体の移動時の傾きを精度よく防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のバルブ内蔵コネクタを用いれば、圧縮スプリングを常に正常な状態に保持できるので、安定した圧力−流量特性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図8を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明に係るバルブ内蔵コネクタの断面図、図2はバルブ内蔵コネクタの一部切欠斜視図である。
【0017】
ガソリン燃料などの燃料タンクのエバポレート配管やベーパリターン配管等に用いられて、ベーパ流量を調整するバルブ内蔵コネクタ1は、軸方向の貫通路3を有する、ガラス繊維強化ポリアミド(PA・GF)製の、例えばガラス繊維強化ナイロン6製のコネクタハウジング5と、このコネクタハウジング5内に嵌め込み組み込まれた内蔵チェックバルブ7と、コネクタハウジング5に嵌め付けられた、PA製の、例えばナイロン12製のリテーナー9と、を備え、このコネクタハウジング5は、軸方向一方側の小径に形成されたチューブ接続部11と、軸方向他方側のパイプ挿入部13と、チューブ接続部11及びパイプ挿入部13の間のバルブ収容部15と、から一体的に構成されていて、パイプ挿入部13は、軸方向一方側のパイプ支持部17と、リテーナー9を収容して保持する軸方向他方側のリテーナー保持部19と、から一体的に形成されている。
【0018】
コネクタハウジング5のリテーナー保持部19では、周壁の径方向対称位置に外面が平面状に形成されている平板状部分21、21が形成され、周壁のそれぞれの円弧状部分23、23に係合窓25、25が対向して設けられていて、このリテーナー保持部19内に収容されているリテーナー9は比較的柔軟であり、弾性変形可能なように形成されている。リテーナー9は、図3に示すように(図3はリテーナー9の斜視図)、軸方向他端部の径方向対称位置に、径方向外側に突出した一対の係合爪部27、27が形成されている、周方向両端部29、29間に比較的大きな変形用隙間が設けられた断面C形の本体部31を有し、この本体部31の内面は、周方向両端部29、29及び変形用隙間と対向する部分を除いて軸方向一方側に向って縮径する状態に形成されていて、本体部31の軸方向一端部33は、周方向両端部29、29及び変形用隙間と対向する部分を除いてパイプ体35(図6参照)の外径とほぼ同じ内径状態に形成されている。本体部31の変形用隙間と対向する部分の内面はほぼ円筒内面状態に形成され、本体部31の変形用隙間と対向する部分の軸方向一端部33には切欠状凹部37が形成されていて、この切欠状凹部37には、リテーナー保持部19の内周面の軸方向一端部に設けられた回止突出部39が嵌り込んで、リテーナー9がリテーナー保持部19内で回転してしまうのを防止している。
【0019】
リテーナー9の本体部31の軸方向他端部には、係合爪部27、27と対応した位置から軸方向他方側に向って径方向外側に傾斜して延びる一対の操作アーム41、41が一体的に設けられていて、それぞれの操作アーム41、41の軸方向他端部には径方向外側に突出した操作端部43、43が形成されている。本体部31の軸方向一端部33には、周方向に延びる係合スリット45、45が対向して形成されていて、このような構成のリテーナー9は、係合爪部27、27がリテーナー保持部19の係合窓25、25内に入り込み、操作端部43、43がリテーナー保持部19の軸方向他端と係合状態となるように、リテーナー保持部19内に押し込まれて嵌め付けられている。
【0020】
コネクタハウジング5のチューブ接続部11は、外周面が軸方向他方側に向って緩やかに拡径する断面直角三角形状の軸方向一方側部47と、軸方向一方側部47の軸方向他方側でほぼ単純な円筒状外面として延びている外周面に、断面四角形状の抜け止め環状突出部49及び軸方向他方側に向って拡径する断面直角三角形状の2本の抜け止め環状突出部51が、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって順次、軸方向に間隔を有して形成された軸方向他方側部53と、から構成されていて、チューブ接続部11の内周面55は、単純な小径の円筒状内面として延びて軸方向一方側の貫通路3を形成している。通常、チューブ接続部には全長にわたってチューブが嵌め付けられる。
【0021】
コネクタハウジング5のパイプ支持部17の内周面57は、ほぼ単純な大径の円筒状内面として延びて軸方向他端寄りの貫通路3を形成している。パイプ支持部17の内周面57には、軸方向他端部でPA・GF製の、例えばガラス繊維強化ナイロン12製の環状ブッシュ59が嵌め付けられ、軸方向一方側でポリアセタール(POM)製、又はガラス繊維強化ナイロン12製の筒状ブッシュ61が嵌め付けられていて、さらに、環状ブッシュ59と筒状ブッシュ61の間で、POM製、又はガラス繊維強化ナイロン12製のカラー63を挟んで第1Oリング65及び第2Oリング67が嵌め付けられている。パイプ支持部17の内周面57の軸方向他端部には固定用凹部69が形成されていて、環状ブッシュ59は、外周面に形成された係合用凸部71が固定用凹部69に嵌り込むことにより、軸方向に移動しない状態でパイプ支持部17に取り付けられている。筒状ブッシュ61は、ほぼ単純な円筒状のブッシュ本体73と、このブッシュ本体73の軸方向一端に一体的に接続形成された、内蔵チェックバルブ7を構成するバルブキャップ75と、から形成されていて、ブッシュ本体73はパイプ支持部17の内周面57に嵌め付けられているが、バルブキャップ75はバルブ収容部15内に突出して位置している。環状ブッシュ59と筒状ブッシュ61のブッシュ本体73とは、ほぼ同一の内径を有している。軸方向他方側の第1Oリング65には、防水・防塵性に優れ、高い耐低温性及び耐オゾン性を有するフロロシリコーンゴム(FVMQ)が素材として用いられ、軸方向一方側の第2Oリング67には、防水・防塵性に優れ、高い耐ガソリン性等の耐燃料性及び耐オゾン性を有するフッ素ゴムが素材として用いられている。
【0022】
コネクタハウジング5のバルブ収容部15の内周面77は、ほぼ単純な円筒状内面として延びて軸方向中間の貫通路3を形成しているが、内周面77は、パイプ挿入部13のパイプ支持部17内周面57よりも若干小径に、かつ、チューブ接続部11の内周面55よりも十分大径に形成されている。バルブ収容部15の内周面77の軸方向他端部には固定用凹部79が形成されていて、筒状ブッシュ61は、ブッシュ本体73の軸方向一端外面がパイプ支持部17の軸方向一端内面に接触し、かつ、バルブキャップ75の外周面に形成された係合用凸部81が固定用凹部79に嵌り込むことにより、軸方向に移動しない状態でパイプ挿入部13又はパイプ支持部17(あるいはパイプ支持部17及びバルブ収容部15)に取り付けられている。バルブキャップ75は、ブッシュ本体73の軸方向一端から一体的に径方向内側に広がり、内周に連通孔83を有する環状のスプリング受け部85と、スプリング受け部85の外周から一体的に軸方向一方側に僅かに延びる筒状部87と、から形成されている。また、スプリング受け部85の軸方向一方側面(環状受け面)には、連通孔83(連通孔周縁)に沿ってわずかに突出する環状の位置決め突起88が一体的に形成されている。
【0023】
バルブ収容部15とチューブ接続部11との間のハウジング内周面89は、バルブ収容部15の内周面77の軸方向一端から、急な角度で軸方向一方側に向ってテーパ状に縮径して延びる第1環状面91と、この第1環状面91の軸方向一端から、緩い角度でチューブ接続部11の内周面55の軸方向他端までテーパ状に縮径して延びる第2環状面93と、から構成され、第1環状面91と第2環状面93とは、ほぼ同一の軸方向長さを有していて、第2環状面93は、内蔵チェックバルブ7のバルブシート面として機能する(図4も参照:図4は内蔵チェックバルブ7部分の拡大断面図)。なお、第1環状面91と第2環状面93とが同一の角度で傾斜し、1つのテーパ面としてバルブシート面を形成するようにしてもよい。
【0024】
バルブ収容部15内には、内蔵チェックバルブ7を構成するバルブ本体95が収容されている。バルブ本体95は、中心に貫通小孔97が設けられた薄肉の円盤状部99の外周に、軸方向他方側に短く延びる環状部101を一体的に有する閉塞部103と、この閉塞部103の環状部101に設けられ、軸方向他方側に延びる収容部側ガイド105と、閉塞部103の円盤状部99の外周から軸方向一方側に延びる接続部側ガイド107と、から一体的に形成されていて、バルブ本体95の素材にはPOMが用いられている。閉塞部103では、円盤状部99と環状部101との接続部分の外周面(接続外周面)109が、断面外側に膨らむ円弧状に形成されることにより、ハウジング内周面89の断面直線状に形成されている第2環状面93に当接する当接面として構成されている(図5も参照:図5はバルブ本体95の斜視図)。なお、単純なチェックバルブとして機能させる場合には、貫通小孔97を設けないでおく。
【0025】
収容部側ガイド105は、環状部101に周方向等間隔(具体的には60度間隔)で一体的に設けられた6枚のプレート状又は板材状収容部側スライド脚111から構成され、それぞれの収容部側スライド脚111は、環状部101に設けられた支持部113と、この支持部113の軸方向他端に一体的に連続して形成された長方形状のスライド部115と、このスライド部115の軸方向他端の径方向内側部分に一体的に連続して形成された軸方向他方側に延びるズレ防止部116と、を有していて、プレートの厚み方向が環状部101の接線方向と一致するように配置されている。環状部101の中心からそれぞれのスライド部115の径方向外側面までの径方向距離は、バルブ収容部15の内周面77の半径とほぼ等しく、あるいはバルブ収容部15の内周面77の半径よりも僅かに小さく設定されていて、スライド部115の径方向外側面は、バルブ収容部15の内周面77上をスライド移動できるように軸方向に直線状に延びる面として形成されている。また、スライド部115の径方向内側面も、軸方向に直線状に延びる面として形成されている。
【0026】
それぞれのスライド部115の軸方向他端からは、軸方向一方側に延びる支持溝117が形成され、この支持溝117は、環状部101とほぼ同一の径方向位置に配置されている。支持溝117の径方向外側部は、軸方向に直線状に延びるように形成されているが、支持溝117の径方向内側部は、軸方向一端から軸方向他方側に向かって、径方向内側に傾斜して直線状に延びるように形成されていて、支持溝117は、軸方向他端の開口に向かって幅が漸次広がるように、あるいは軸方向一方側に向かって幅が漸次狭まるように設けられている。ズレ防止部116は、スライド部115の支持溝117から径方向内側の部分118の軸方向他端に一体的に形成されて径方向内側の部分118を延長しているが、ズレ防止部116の径方向外側面は、支持溝117の径方向内側部から連続して、かつ、支持溝117の径方向内側部と同一の傾きで、軸方向他方側に向かって径方向内側に傾斜して直線状に延び、それから、軸方向他方側に向かって直線状に延びている。すなわち、ズレ防止部116の軸方向一方側120では、径方向外側面は、軸方向他方側に向かって径方向内側に傾斜して延び、軸方向他方側122では、軸方向に直線状に延びている。また、ズレ防止部116の径方向内側面は、スライド部115の径方向内側面から連続して、軸方向他方側に向かって直線状に延びている。
【0027】
ズレ防止部116は、バルブキャップ75の筒状部87内、より具体的には、スプリング受け部85の連通孔83内に入り込めるような径方向位置に配置されている。
【0028】
接続部側ガイド107は、円盤状部99の外周に周方向等間隔(具体的には90度間隔)で一体的に設けられた4枚のプレート状接続部側スライド脚119から構成されていて、それぞれの接続部側スライド脚119は、プレートの厚み方向が円盤状部99の接線方向と一致するように配置され、径方向外端が軸方向に延びる直角三角形状に形成されている。円盤状部99の中心からそれぞれの接続部側スライド脚119の径方向外端あるいは径方向外端面までの径方向距離は、チューブ接続部11の内周面55の半径とほぼ等しく、あるいはチューブ接続部11の内周面55の半径よりも僅かに小さく設定されていて、接続部側スライド脚119の径方向外端面はチューブ接続部11の内周面55上をスライド移動できるように形成されている。
【0029】
このように構成されたバルブ本体95は、収容部側スライド脚111のスライド部115に形成された支持溝117に軸方向一端部が収容され、バルブキャップ75のスプリング受け部85(スプリング受け部85の軸方向一端面)に、位置決め突起88の外周で軸方向他端が当接した圧縮コイルスプリング121によって、接続部側ガイド107がチューブ接続部11の貫通孔3内に入り込み、閉塞部103の接続外周面109が第2環状面93の軸方向中央位置に当接するように、軸方向他方側に付勢されている。バルブキャップ75の筒状部87は、圧縮コイルスプリング121の軸方向他端部を内側に収容して保持する機能を有している。
【0030】
図6はバルブ内蔵コネクタ1にパイプ体を接続した場合を示す断面図である。
【0031】
バルブ内蔵コネクタ1に、リテーナー保持部19の軸方向他端開口又は挿入開口123から挿入されて、より具体的には、操作アーム41、41の操作端部43、43側からリテーナー9の本体部31内に挿入されて嵌め付けられた相手方のパイプ体35は例えば金属製又は樹脂製であり、軸方向一方側の外周面に環状係合突部125が設けられることにより構成された挿入側端部127を有していて、環状係合突部125がリテーナー9の本体部31を押し広げて進行し、係合スリット45、45に嵌り込んでスナップ係合するまでバルブ内蔵コネクタ1あるいはコネクタハウジング5に押し込まれている。パイプ体35が正常に押し込まれた状態では、パイプ体35の軸方向一端は、バルブキャップ75の手前(軸方向他方側)に位置している。パイプ体35は、環状係合突部125がリテーナー9の本体部31の係合スリット45、45に嵌り込んでスナップ係合することにより、バルブ内蔵コネクタ1に対して抜け止めされ、また挿入止めされる。すなわち、軸方向に位置決めされる。パイプ体35の挿入側端部127は、環状ブッシュ59及び筒状ブッシュ61内にガタが生じないように挿入され、パイプ体35とバルブ内蔵コネクタ1との間は第1Oリング65及び第2Oリング67によって密封されている。なお、バルブキャップ75の連通孔83は、パイプ体35の流入開口129とほぼ同一の径又はパイプ体35の流入開口129より若干大きな径を有するように形成されている。
【0032】
パイプ体35は、例えば、操作アーム41、41の操作端部43、43を外側から押圧して操作アーム41、41の径方向の間隔、したがって係合爪部27、27の径方向の間隔を狭め、係合爪部27、27が係合窓25、25から抜け出た状態として、リテーナー9をコネクタハウジング5から相対的に引き抜くと、このリテーナー9とともにコネクタハウジング5から抜き出される。
【0033】
図7はバルブ内蔵コネクタ1をエバポレート配管に使用した場合を説明する図である。
【0034】
バルブ内蔵コネクタ1のチューブ接続部11の外周には、燃料タンクに接続された樹脂チューブ131が嵌め付けられ、パイプ挿入部13にはキャニスタ側のパイプ体35が挿入されて、エバポレート配管が構成されている。ここで、燃料タンク内のベーパ圧が上昇すると、バルブ本体95が圧縮コイルスプリング121のバネ力に抗して軸方向他方側に移動する。バルブ本体95が軸方向他方側に移動して、閉塞部103の接続外周面109が第2環状面93の軸方向中央位置から離れると、閉塞部103の接続外周面109と第1環状面91又は第2環状面93との間の大径の環状隙間を通過してベーパがバルブ収容部15内に流れ込み、流れ込んだベーパは、バルブキャップ75の連通孔83を通って(図8参照:図8はバルブ本体95の開状態を示す図)流入開口129からパイプ体35内に流入し(図8ではパイプ体35は図示されていない)、キャニスタに送られる。バルブ本体95は、収容部側スライド脚111のスライド部115(より具体的には、スライド部115の支持溝117から径方向外側の部分130)が、バルブキャップ75の筒状部87に当接するまで軸方向他方側に移動することができる。バルブ本体95の軸方向の移動は、収容部側スライド脚111の内周面77上のスライド移動及び接続部側スライド脚119の内周面55上のスライド移動、そしてズレ防止部116の軸方向他方側122の連通孔83上のスライド移動を伴なうので、移動中にバルブ本体95が傾いてしまうおそれはない。なお、接続部側スライド脚119は、バルブ本体95が閉塞状態のときの収容部側スライド脚111(スライド部115の支持溝117から径方向外側の部分130)とバルブキャップ75の筒状部87との軸方向距離、あるいはバルブ本体95の軸方向の移動距離よりも長く形成されているので、接続部側スライド脚119がバルブ本体95の移動によってチューブ接続部11から抜け出てしまうといったことはない。
【0035】
また、バルブ本体95が閉塞状態のときに、ズレ防止部116の軸方向他端(先端)は、バルブキャップ75の筒状部87内に入り込んで、圧縮コイルスプリング121の軸方向他端部の軸方向位置(ほぼ軸方向他端の軸方向位置)まで延びている。より具体的には、ズレ防止部116の軸方向他端は、スプリング受け部85の位置決め突起88の軸方向一端(先端)近傍に位置し、例えば、位置決め突起88の軸方向一端(先端)との間に、圧縮コイルスプリング121の線径以下の軸方向の隙間が設けられるように位置している。もちろん、ズレ防止部116の軸方向他端がスプリング受け部85の連通孔83内に入り込んでいてもよい。また、ズレ防止部116の軸方向他端と位置決め突起88との間には、例えば、圧縮コイルスプリング121の線径以下の径方向の隙間が形成されている。
【0036】
ところで、このような構成のバルブ内蔵コネクタ1では、燃料タンク内のベーパ圧が所定の値、すなわちバルブ本体95の最少作動圧力まで上昇しないと、バルブ本体95は軸方向他方側に移動を開始しないので、バルブ本体95を完全な閉塞体に形成すると、燃料タンク内が低圧の場合にはベーパをキャニスタ側に流すことができない。しかしながら、燃料タンク内のベーパ圧が低圧であっても、ベーパをキャニスタに流して燃料タンク内の圧力を適切に調整するのが適当な場合がある。したがって、バルブ本体95の円盤状部99に貫通小孔97を設けて、低圧時にもベーパを流すことができるように構成している。貫通小孔97は、チューブ接続部11の貫通路3の径又は第2環状面93の接続外周面109との当接個所の径のほぼ3分の1から5分の1の径を有するように形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のバルブ内蔵コネクタは、例えば自動車のベーパ用配管に用いられることにより、安定した圧力−流量特性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るバルブ内蔵コネクタの断面図である。
【図2】バルブ内蔵コネクタの一部切欠斜視図である。
【図3】リテーナーの斜視図である。
【図4】内蔵チェックバルブ部分の拡大断面図である。
【図5】バルブ本体の斜視図である。
【図6】バルブ内蔵コネクタにパイプ体を接続した場合を示す断面図である。
【図7】バルブ内蔵コネクタをエバポレート配管に使用した場合を説明する図である。
【図8】バルブ本体の開状態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 バルブ内蔵コネクタ
3 貫通路
5 コネクタハウジング
7 内蔵チェックバルブ
11 チューブ接続部
13 パイプ挿入部
95 バルブ本体
103 閉塞部
109 接続外周面(当接面)
116 ズレ防止部(径方向内側の部分)
121 圧縮コイルスプリング
130 径方向外側の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一方側にチューブ接続部が形成され、軸方向他方側にパイプ挿入部が形成された、貫通路を有するコネクタハウジングと、前記貫通路を開閉するように前記コネクタハウジングに設けられた内蔵バルブと、を具備し、前記内蔵バルブは、前記コネクタハウジング内に形成されたバルブシート面と、前記バルブシート面に当接する当接面が外周部に形成された閉塞部を有し、軸方向に移動できるように前記コネクタハウジング内に収められたバルブ本体と、前記バルブ本体を前記バルブシート面に向かって付勢する圧縮スプリングと、を備え、前記バルブ本体は、前記閉塞部から軸方向他方側に延び、前記コネクタハウジングの内周面上をスライド移動するように周方向に間隔を設けて複数形成されたガイドを有していて、前記圧縮スプリングは、前記ガイドに形成された、軸方向に延びる支持溝に軸方向一端部が収容され、かつ、前記コネクタハウジング側に設けられたスプリング受けに軸方向他端部が支えられている、バルブ内蔵コネクタであって、
前記ガイドの前記支持溝から径方向内側の部分は、前記支持溝から径方向外側の部分よりも軸方向他方側に長く延びている、ことを特徴とするバルブ内蔵コネクタ。
【請求項2】
前記径方向内側の部分は、前記バルブ本体が前記バルブシート面を閉塞する状態で、前記圧縮スプリングの軸方向他端部の軸方向位置まで軸方向他方側に延びている、ことを特徴とする請求項1記載のバルブ内蔵コネクタ。
【請求項3】
前記スプリング受けは、前記圧縮スプリングの軸方向他端部を収容する筒状部と、この筒状部の軸方向他端部の内側に形成され、前記圧縮スプリングの軸方向他端を受ける、連通孔が形成された環状受け面と、を一体的に有するバルブキャップである、ことを特徴とする請求項1又は2記載のバルブ内蔵コネクタ。
【請求項4】
前記径方向内側の部分は、前記バルブ本体が前記バルブシート面を閉塞する状態で、前記バルブキャップの前記筒状部内に入り込むまで軸方向他方側に延びている、ことを特徴とする請求項3記載のバルブ内蔵コネクタ。
【請求項5】
前記径方向内側の部分は、前記バルブ本体が前記バルブシート面を閉塞する状態で、前記環状受け面との間に、前記圧縮スプリングの線径以下の軸方向の隙間が形成される軸方向位置まで軸方向他方側に延びている、ことを特徴とする請求項3又は4記載のバルブ内蔵コネクタ。
【請求項6】
前記径方向内側の部分は、前記バルブ本体が前記バルブシート面を閉塞する状態で、前記環状受け面とほぼ同一の軸方向位置まで又は前記連通孔に入り込むまで軸方向他方側に延びている、ことを特徴とする請求項3又は4記載のバルブ内蔵コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−234023(P2006−234023A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46442(P2005−46442)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】