説明

バルブ自動点検装置、バルブ自動点検方法及びバルブ自動点検プログラム

【課題】人の五感に頼ることなくバルブの点検を行うことができ、作業時間とコストとを低減することができる装置、方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】バルブ自動点検装置1は、HD5から圧力系統のCADデータ等の設計情報を読み込み、複数のバルブ、圧力センサ及び分岐部の各々を、それぞれの上流側及び下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ又は分岐部によって特定する定性モデル生成部10と、HD5から点検対象バルブ決定ルールを読み込み、特定されたバルブ、圧力センサ及び分岐部の位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成部11と、バルブ点検シーケンスに基づき、各バルブの開閉操作を行う試験計画実行部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ自動点検装置、バルブ自動点検方法及びバルブ自動点検プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロケット等の飛翔体においては、安全性の観点から様々な点検が自動的に行われている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、推進系に使用されるバルブの点検は、一つ一つのバルブを駆動しながら作業員がその動作音を確認し、かつバルブの開閉状態について現場の圧力センサ等の値を確認しながら実施されている。
【特許文献1】特開2006−083943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような人による作業では、作業員の熟練度によっては点検時間がかかる場合がある。また、点検対象バルブは、推進薬タンクに囲まれた狭い範囲に密集して配されているため、組み立て後、特に射場での点検時には、高所かつ狭いところでの点検作業となり危険を伴うといった問題がある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、人の五感に頼ることなくバルブの点検を行うことができ、作業時間とコストとを低減することができるバルブ自動点検装置、バルブ自動点検方法、及びバルブ自動点検プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
第1の発明に係るバルブ自動点検装置は、複数のバルブと、圧力センサと、分岐部を有する配管と、を備えて、圧力源と大気開放端との間に配された圧力系統における前記各バルブを点検するためのバルブ自動点検装置であって、前記圧力系統の設計情報と点検対象バルブ決定ルールとが記憶された記憶部と、該記憶部から前記圧力系統の設計情報を読み込み、前記バルブ、前記圧力センサ及び前記分岐部の各々を、それぞれの前記圧力源側となる上流側及び前記大気開放端側となる下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ又は分岐部によって特定する定性モデル生成部と、前記記憶部から前記点検対象バルブ決定ルールを読み込み、特定された前記バルブ、前記圧力センサ及び前記分岐部の位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成部と、前記バルブ点検シーケンスに基づき、バルブの開閉操作を行う試験計画実行部と、を備えていることを特徴とする。
【0006】
この発明は、圧力系統の設計情報と予め決められた点検対象バルブ決定ルールとから、バルブ点検シーケンスを自動的に求めることができ、該シーケンスに基づいたバルブ点検を行うことができる。
【0007】
また、本発明に係るバルブ自動点検装置は、前記シーケンス生成部が、前記圧力源と、前記点検対象バルブと、前記圧力センサと、前記点検対象バルブよりも下流側に配されて該点検対象バルブが大気開放されないように閉じられた別のバルブと、で構成される点検ルートを特定することを特徴とする。
【0008】
この発明は、点検対象バルブが大気開放されないように開閉操作することができ、点検対象バルブを外部の汚染から保護することができる。
【0009】
また、本発明に係るバルブ自動点検装置は、前記シーケンス生成部が、前記点検対象バルブを新たな圧力源と想定して、次の点検対象バルブを決めることを特徴とする。
【0010】
この発明は、点検対象バルブの上下流で常に圧力差のある状態で点検を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係るバルブ自動点検装置は、前記バルブ自動点検装置であって、前記点検対象バルブの開閉音を検出して解析するバルブ動作音解析部を備えていることを特徴とする。
【0012】
この発明は、バルブの開閉音の検知の有無により、バルブの開閉状態を確認することができる。
【0013】
第2の発明に係るバルブ自動点検方法は、複数のバルブと、圧力センサと、分岐部を有する配管と、を備えて、圧力源と大気開放端との間に配された圧力系統における前記各バルブを点検するためのバルブ自動点検方法であって、前記圧力系統の設計情報と点検対象バルブ決定ルールとを保存する記憶ステップと、前記圧力系統の設計情報を読み込み、前記バルブ、前記圧力センサ、及び前記分岐部の各々を、それぞれの前記圧力源側となる上流側及び前記大気開放端側となる下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ、又は分岐部によって特定する定性モデル生成ステップと、前記点検対象バルブ決定ルールを読み込み、特定された前記バルブ、前記圧力センサ、及び前記分岐部の位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成ステップと、前記バルブ点検シーケンスに基づき、バルブの開閉操作を行う試験計画実行ステップと、を備えていることを特徴とする。
【0014】
この発明は、圧力系統の設計情報と予め決められた点検対象バルブ決定ルールとから、バルブ点検シーケンスを自動的に求めることができ、該シーケンスに基づいたバルブ点検を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係るバルブ自動点検方法は、前記シーケンス生成ステップが、前記圧力源と、前記点検対象バルブと、前記圧力センサと、前記点検対象バルブよりも下流側に配されて該点検対象バルブの下流側が大気開放されないように閉じられた別のバルブと、で構成される点検ルートを特定することを特徴とする。
【0016】
この発明は、点検対象バルブが大気開放されないように開閉操作することができ、点検対象バルブを外部の汚染から保護することができる。
【0017】
また、本発明に係るバルブ自動点検方法は、前記シーケンス生成ステップが、前記点検対象バルブを新たな圧力源と想定して、次の点検対象バルブを決めることを特徴とする。
【0018】
この発明は、点検対象バルブの上下流で常に圧力差のある状態で点検を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係るバルブ自動点検方法は、前記バルブ自動点検方法であって、前記点検対象バルブの開閉音を検出して解析するバルブ動作音解析ステップを備えていることを特徴とする。
【0020】
この発明は、バルブの開閉音の検知の有無により、バルブの開閉状態を確認することができる。
【0021】
第3の発明に係るバルブ自動点検プログラムは、コンピュータに、複数のバルブと、圧力センサと、分岐部を有する配管と、を備えて、圧力源と大気開放端との間に配された圧力系統における前記各バルブを点検させるためのバルブ自動点検プログラムであって、前記圧力系統の設計情報と点検対象バルブ決定ルールとを記憶する記憶処理と、前記圧力系統の設計情報を読み込み、前記バルブ、前記圧力センサ、及び前記分岐部の各々を、それぞれの前記圧力源側となる上流側及び前記大気開放端側となる下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ、又は分岐部によって特定する定性モデル生成処理と、前記点検対象バルブ決定ルールを読み込み、特定された前記バルブ、前記圧力センサ、及び前記分岐部の位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成処理と、前記バルブ点検シーケンスに基づき、バルブの開閉操作を行う試験計画実行処理と、を実行させることを特徴とする。
【0022】
この発明は、圧力系統の設計情報と予め決められた点検対象バルブ決定ルールとから、バルブ点検シーケンスを自動的に求めることができ、該シーケンスに基づいたバルブ点検を行うことができる。
【0023】
また、本発明に係るバルブ自動点検プログラムは、前記シーケンス生成処理が、前記圧力源と、前記点検対象バルブと、前記圧力センサと、前記点検対象バルブよりも下流側に配されて該点検対象バルブの下流側が大気開放されないように閉じられた別のバルブと、で構成される点検ルートを特定する処理を実行させることを特徴とする。
【0024】
この発明は、点検対象バルブが大気開放されないように開閉操作することができ、点検対象バルブを外部の汚染から保護することができる。
【0025】
また、本発明に係るバルブ自動点検プログラムは、前記シーケンス生成処理が、前記点検対象バルブを新たな圧力源と想定して、次の点検対象バルブを決める処理を実行させることを特徴とする。
【0026】
この発明は、点検対象バルブの上下流で常に圧力差のある状態で点検を行うことができる。
【0027】
また、本発明に係るバルブ自動点検プログラムは、前記バルブ自動点検プログラムであって、前記点検対象バルブの開閉音を検出して解析するバルブ動作音解析処理を実行させることを特徴とする。
【0028】
この発明は、バルブの開閉音の検知の有無により、バルブの開閉状態を確認することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、人の五感に頼ることなくバルブの点検を行うことができ、作業時間とコストとを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明に係る一実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
本実施形態に係るバルブ自動点検装置1は、図1に示すように、プログラムに従って処理を実行するCPU2と、プログラム及びデータを一時的に格納するRAM3と、OS等のシステムプログラム及びシステムデータが格納されているROM4と、処理を実行するためのプログラムやデータ、設計情報、点検対象バルブ決定ルール等の各種情報が格納されるHD(記憶部)5と、I/F(インタフェース)6と、CPU2により生成された定性モデル情報及び試験シーケンス情報を画面に表示する表示器7と、オペレータからの操作情報を入力するマウス8及びキーボード9と、を備えている。
【0031】
CPU2は、オペレータによるマウス8及びキーボード9の操作情報をI/F6を介して入力し、その操作に従ってプログラムを実行し、HD5に格納された設計情報等を読み出し、定性モデル情報及び試験シーケンス情報等を表示器7に表示する。すなわち、CPU2は、後述する一連の処理を実行するバルブ自動点検プログラムをHD5から読み出し、RAM3上に展開して実行し、実行結果をHD5に格納したり、表示器7に表示したりする。
【0032】
また、バルブ自動点検装置1は、例えば、図2に示すような、複数のバルブA,B,C,Dと、圧力センサE,F,Gと、分岐部H,Iを有する配管J,Kと、を備えて、圧力源Lと大気開放端Mとの間に配された圧力系統Nにおける各バルブA,B,C,Dを点検するためのバルブ自動点検装置である。
そして、図3に示すように、HD5から圧力系統NのCADデータ等の設計情報を読み込み、複数のバルブA,B,C,D、圧力センサE,F,G及び分岐部H,Iの各々を、それぞれの圧力源L側となる上流側及び大気開放端M側となる下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ又は分岐部によって特定する定性モデル生成部10と、HD5から点検対象バルブ決定ルールを読み込み、特定されたバルブ、圧力センサ、及び分岐部の位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成部11と、バルブ点検シーケンスに基づき、各バルブA,B,C,Dの開閉操作を行う試験計画実行部12と、を備えている。
なお、試験計画実行部12からの指令は、機体制御装置O及びハードウエアインタフェースユニットPを介して圧力系統Nに伝達される。
【0033】
さらに、バルブ自動点検装置1は、HD5から圧力系統Nの設計情報を読み込み、複数のバルブA,B,C,Dの各々の位置を特定するバルブ位置解析部13と、圧力系統Nの近傍に配されたマイクロフォンアレイQを介して点検対象バルブの開閉音を検出して解析するバルブ動作音解析部14と、試験計画実行部12及びバルブ動作音解析部14が収集した情報から、バルブ動作の異常の有無を解析する試験結果解析部15と、試験結果を表示器7へ表示する試験結果生成部16と、バルブに異常があった場合に、異常原因を解析する異常試験結果原因診断部17と、を備えている。
これらは、CPU2によりHD5からバルブ自動点検プログラムを読み出して実行する機能部に相当する。
【0034】
定性モデル生成部10は、圧力系統Nの構成要素であるバルブA,B,C,Dと、圧力センサE,F,Gと、分岐部H,Iとのそれぞれを、これら各々の上下流に配管を介して接続された他の構成要素を入出力先として特定しながら定性モデルを作成する。
【0035】
シーケンス生成部11は、定性モデルに基づき、点検対象バルブの上流と下流とで圧力を確認しながら点検対象バルブの開閉アンサを確認するシーケンスを生成する。
【0036】
以下、例えば、図4に示すように、圧力源Lから大気開放端Mに向かって、第一圧力センサR、点検対象バルブS、第二圧力センサT、他のバルブUが直列に配されている系統の点検対象バルブ決定ルールについて説明する。
【0037】
このような場合、まず、圧力源Lと点検対象バルブSとの間に第一圧力センサRがあることを確認する。
次に、圧力源Lと点検対象バルブSとの間に閉状態のバルブがない状態とする。そして、圧力源Lと点検対象バルブSとの間が大気開放とならないように、閉とすべきバルブを検索する。
【0038】
また、大気開放端Mと点検対象バルブSの間に第二圧力センサTがあることを確認する。そして、第二圧力センサTと点検対象バルブSとの間に閉状態のバルブがない状態とする。
さらに、大気開放端Mと第二圧力センサTとの間と、点検対象バルブSと第二圧力センサTとの間と、が大気開放とならないようにした状態で、閉とすべきバルブを検索する。
【0039】
点検対象バルブを特定した後は、これを新たな圧力源と想定した場合に上記条件を満たす近傍のバルブを次の点検対象バルブとするようなルートを決めていく。
もし、近傍のバルブが上記条件を満たさない場合には、昇圧状態にある圧力センサと圧力源Lとの間にあるバルブを検索し、昇圧値と大気圧との間の圧力となるように圧力源Lの発生圧を調整する。そして、再度近傍のバルブを特定する。
【0040】
こうして決定された点検ルートに基づき、バルブの開閉操作を含む実際のシーケンスを生成する。この際、図5に示すように、圧力制御が可能な大気開放端治具Vが圧力系統Nの大気開放端Mに接続された状態とする。
そして、圧力源Lが有する圧力源圧力センサW及びバルブX1,X2や、大気開放端治具Vが有する開放端圧力センサY及びバルブZもシーケンスに含める。
【0041】
まず、点検対象バルブS閉の状態で圧力源Lにより昇圧し、
(圧力源Lの圧力)=(第一圧力センサRが示す圧力値)>(第二圧力センサTが示す圧力値)>(大気圧)
であることと、点検対象バルブSのアンサが閉であることと、を確認する。
【0042】
次に、点検対象バルブS開の状態で、圧力源Lにより昇圧し、
(圧力源Lの圧力)=(第一圧力センサRが示す圧力値)=(第二圧力センサTが示す圧力値)>(大気圧)
であることと、点検対象バルブSのアンサが開であることと、を確認する。
【0043】
点検終了後は、
(圧力源Lの圧力)>(第一圧力センサRが示す圧力値)=(第二圧力センサTが示す圧力値)>(大気圧)
の状態として、点検対象バルブSの点検を終了する。
このとき、各バルブが耐圧内であること及び逆圧不可のバルブにおいて制約を充足しているかを確認しておく。
【0044】
バルブ動作音解析部14は、バルブの動作音をマイクロフォンアレイQで計測し、バルブ位置解析部13からのバルブ位置情報と合わせて、点検対象バルブの動作音を周波数解析(FFT解析)し、正常動作しているかどうかの診断を行う。
この診断は、設計情報から定性シミュレータモデルを自動生成し、そのモデルで定性推論を行なう手法であり、点検対象であるシステム系統の上流に圧力をかけ、下流側のバルブを順次操作した場合に得られるバルブ動作パターンと圧力値の定性状態パターンとを自動評価し、システム的な点検を実施する。
【0045】
異常試験結果原因診断部17では、バルブ動作異常(開固着・閉固着)、バルブアンサ異常(センサ断線・センサ逆接続)、バルブ駆動ライン接続異常(断線・誤接続)等の異常原因を予め想定しておく。そして、定性モデルに基づくシミュレーションを行って該当する原因を特定する。
【0046】
次に、バルブ自動点検方法について説明する。
この方法は、図6に示すように、圧力系統Nの設計情報と点検対象バルブ決定ルールとをHD5に保存する記憶ステップ(S01)と、圧力系統Nの設計情報をHD5から読み込み、バルブA,B,C,D、圧力センサE,F,G及び分岐部H,Iの各々を、それぞれの上流側及び下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ又は分岐部によって特定する定性モデル生成ステップ(S02)と、点検対象バルブ決定ルールをHD5から読み込み、特定されたバルブA,B,C,D、圧力センサE,F,G及び分岐部H,Iの位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成ステップ(S03)と、バルブ点検シーケンスに基づき、バルブの開閉操作を行う試験計画実行ステップ(S04)と、バルブの開閉音を解析するバルブ動作音解析ステップ(S05)と、バルブ動作に異常があった場合には、異常原因を解析する異常試験結果原因解析ステップ(S06)と、試験結果を生成する結果生成ステップ(S07)と、得られた結果を表示器7に表示する結果表示ステップ(S08)と、を有している。
【0047】
記憶ステップ(S01)では、圧力系統Nの設計情報と点検対象バルブ決定ルールとをHD5に読み込ませておく。
【0048】
定性モデル生成ステップ(S02)では、圧力系統Nの各構成要素に対して、表1に示す位置関係を算出する。
【0049】
【表1】

【0050】
シーケンス生成ステップ(S03)では、得られた定性モデルに対して上述した点検対象バルブ決定ルールに基づき、表2に示す試験シーケンスを生成する。
【0051】
【表2】

【0052】
このバルブ点検シーケンスに基づき、試験計画実行ステップ(S04)にて実際にバルブの開閉操作を行う。
【0053】
このとき、バルブ動作音解析ステップ(S05)にて、所定のバルブが開閉するか否かを開閉音の有無にて解析する。
【0054】
バルブ異常があった場合には、異常試験結果原因解析ステップ(S06)にて異常解析を行った後、結果生成ステップ(S07)にて試験結果が整理され、結果表示ステップ(S08)にて試験結果を表示器7に表示する。
【0055】
このバルブ自動点検装置1、バルブ自動点検方法、及びバルブ自動点検処理プログラムによれば、圧力系統Nの設計情報と予め決められた点検対象バルブ決定ルールとから、バルブ点検シーケンスを自動的に求めることができ、該シーケンスに基づいたバルブ点検を自動的に行うことができる。
したがって、人の五感に頼ることなくバルブの点検を行うことができ、作業時間とコストとを低減することができる。
【0056】
特に、上述したルールに基づき点検ルートを定めていくので、点検対象バルブが大気開放されないように開閉操作することができ、点検対象バルブを外部の汚染から保護することができる。
【0057】
また、点検対象バルブの上下流で常に圧力差のある状態で点検を行うことができ、圧力センサのモニタによってバルブ開閉確認を行うことができる。
【0058】
さらに、バルブ動作音解析を行うことによって、圧力センサのモニタだけでなくバルブの開閉音の検知の有無により、バルブの開閉状態を確認することができる。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、バルブ自動点検装置1は、図1に示したように、CPU2、RAM3等の揮発性の記憶媒体、ROM4等の不揮発性の記憶媒体、キーボード9やポインティングデバイス等の入力装置、画像やデータを表示する表示器7及び外部の装置と通信をするためのインタフェースを備えたコンピュータによって構成される。
この場合、バルブ自動点検装置1に備えた定性モデル生成部10及びシーケンス生成部11の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPU2に実行させることによりそれぞれ実現される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピィーディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0061】
また、点検対象バルブ決定ルールは、上述したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るバルブ自動点検装置を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るバルブ自動点検装置の点検対象となる圧力系統を示す系統図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るバルブ自動点検装置を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るバルブ自動点検装置に使用される点検対象バルブ決定ルールの説明のための圧力系統図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るバルブ自動点検装置の点検対象となる圧力系統に接続される治具の系統図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るバルブ自動点検方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0063】
1…バルブ自動点検装置
10…定性モデル生成部
11…シーケンス生成部
12…試験計画実行部
14…バルブ動作音解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバルブと、圧力センサと、分岐部を有する配管と、を備えて、圧力源と大気開放端との間に配された圧力系統における前記各バルブを点検するためのバルブ自動点検装置であって、
前記圧力系統の設計情報と点検対象バルブ決定ルールとが記憶された記憶部と、
該記憶部から前記圧力系統の設計情報を読み込み、前記バルブ、前記圧力センサ及び前記分岐部の各々を、それぞれの前記圧力源側となる上流側及び前記大気開放端側となる下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ又は分岐部によって特定する定性モデル生成部と、
前記記憶部から前記点検対象バルブ決定ルールを読み込み、特定された前記バルブ、前記圧力センサ及び前記分岐部の位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成部と、
前記バルブ点検シーケンスに基づき、バルブの開閉操作を行う試験計画実行部と、
を備えていることを特徴とするバルブ自動点検装置。
【請求項2】
前記シーケンス生成部は、前記圧力源と、前記点検対象バルブと、前記圧力センサと、前記点検対象バルブよりも下流側に配されて該点検対象バルブが大気開放されないように閉じられた別のバルブと、で構成される点検ルートを特定することを特徴とする請求項1に記載のバルブ自動点検装置。
【請求項3】
前記シーケンス生成部は、前記点検対象バルブを新たな圧力源と想定して、次の点検対象バルブを決めることを特徴とする請求項1又は2バルブ自動点検装置。
【請求項4】
前記点検対象バルブの開閉音を検出して解析するバルブ動作音解析部を備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載のバルブ自動点検装置。
【請求項5】
複数のバルブと、圧力センサと、分岐部を有する配管と、を備えて、圧力源と大気開放端との間に配された圧力系統における前記各バルブを点検するためのバルブ自動点検方法であって、
前記圧力系統の設計情報と点検対象バルブ決定ルールとを保存する記憶ステップと、
前記圧力系統の設計情報を読み込み、前記バルブ、前記圧力センサ、及び前記分岐部の各々を、それぞれの前記圧力源側となる上流側及び前記大気開放端側となる下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ、又は分岐部によって特定する定性モデル生成ステップと、
前記点検対象バルブ決定ルールを読み込み、特定された前記バルブ、前記圧力センサ、及び前記分岐部の位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成ステップと、
前記バルブ点検シーケンスに基づき、バルブの開閉操作を行う試験計画実行ステップと、
を有することを特徴とするバルブ自動点検方法。
【請求項6】
前記シーケンス生成ステップは、前記圧力源と、前記点検対象バルブと、前記圧力センサと、前記点検対象バルブよりも下流側に配されて該点検対象バルブの下流側が大気開放されないように閉じられた別のバルブと、で構成される点検ルートを特定することを特徴とする請求項5に記載のバルブ自動点検方法。
【請求項7】
前記シーケンス生成ステップは、前記点検対象バルブを新たな圧力源と想定して、次の点検対象バルブを決めることを特徴とする請求項5又は6に記載のバルブ自動点検方法。
【請求項8】
前記点検対象バルブの開閉音を検出して解析するバルブ動作音解析ステップを備えていることを特徴とする請求項5から7の何れか一つに記載のバルブ自動点検方法。
【請求項9】
コンピュータに、複数のバルブと、圧力センサと、分岐部を有する配管と、を備えて、圧力源と大気開放端との間に配された圧力系統における前記各バルブを点検させるためのバルブ自動点検プログラムであって、
前記圧力系統の設計情報と点検対象バルブ決定ルールとを記憶する記憶処理と、
前記圧力系統の設計情報を読み込み、前記バルブ、前記圧力センサ及び前記分岐部の各々を、それぞれの前記圧力源側となる上流側及び前記大気開放端側となる下流側に接続された別のバルブ、圧力センサ又は分岐部によって特定する定性モデル生成処理と、
前記点検対象バルブ決定ルールを読み込み、特定された前記バルブ、前記圧力センサ及び前記分岐部の位置情報に基づき、上流側から下流側に向かって漸次点検対象バルブを開閉操作しながら、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認するバルブ点検シーケンスを作成するシーケンス生成処理と、
前記バルブ点検シーケンスに基づき、バルブの開閉操作を行う試験計画実行処理と、
を実行させることを特徴とするバルブ自動点検プログラム。
【請求項10】
前記シーケンス生成処理は、前記圧力源と、前記点検対象バルブと、前記圧力センサと、前記点検対象バルブよりも下流側に配されて該点検対象バルブの下流側が大気開放されないように閉じられた別のバルブと、で構成される点検ルートを特定する処理を実行させることを特徴とする請求項9に記載のバルブ自動点検プログラム。
【請求項11】
前記シーケンス生成処理は、前記点検対象バルブを新たな圧力源と想定して、次の点検対象バルブを決める処理を実行させることを特徴とする請求項9又は10に記載のバルブ自動点検プログラム。
【請求項12】
前記点検対象バルブの開閉音を検出して解析するバルブ動作音解析処理を実行させることを特徴とする請求項9から11の何れか一つに記載のバルブ自動点検プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−210338(P2009−210338A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52315(P2008−52315)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代輸送系システム設計基盤技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(501220020)株式会社 ギャラクシーエクスプレス (5)
【Fターム(参考)】