説明

バルブ装置

【課題】体格の大型化を招かずに脈動の発生源そのものに対策を施して脈動を抑制することができるバルブ装置を提供すること。
【解決手段】弁体13と弁口12aが開口する弁口端面12bの少なくとも一方は凸部12eを備え、弁体13が弁口12aを閉じるとき弁体13が凸部12eを介して弁口端面12bに当接するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路の開閉を行うバルブ装置に関し、バルブ装置の閉弁時に生じる脈動(具体的には、流体の供給側に逆流伝播する圧力変動)を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ装置において、弁体によって弁口を急激に閉塞すると、流体の流れが急激に停止し、弁口の上流側へ向けて圧力波が発生する現象(所謂、ウォーターハンマー現象)が知られている。
【0003】
具体的な一例を示すと、エンジンの吸気側とキャニスタとの間に接続されパージバルブとして用いられる電磁弁(バルブ装置の一例)が閉弁された際、閉弁に伴う圧力波が電磁弁で発生し、その圧力波がキャニスタに伝わって、キャニスタから電磁弁の閉弁に伴う作動音(騒音)が発生する。
【0004】
この作動音は弱(低)いが、異音として知覚されるため、特に乗用車では問題となる。電磁弁の閉弁時に生じる脈動を抑える技術として、弁口と入力ポートとの間の流体通路にチャンバ(容積を大きくしたボリューム室)を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
チャンバを用いた脈動対策は、チャンバの容積を大きくするほど大きな脈動低減効果(騒音低減効果)が得られる。このため、脈動低減効果を大きくしようとすると、電磁弁が大型化する問題があった。
【0006】
そこで、チャンバの容積を増大させないで脈動を抑える技術として、チャンバ内に突出した形状の脈動低減手段を設ける技術が開発された(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−295960号公報
【特許文献2】特開2008−291916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
チャンバ内に脈動低減手段を配設する技術は、弁体によって弁口を急激に閉塞することで生じる脈動を一種の邪魔板で抑制しようとするもので、一定の脈動低減効果が見られるが、不十分である。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、体格の大型化を招かずに脈動の発生源そのものに対策を施して脈動を抑制することができるバルブ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するためになされた本発明のバルブ装置は、流体の供給を受ける入力ポートと、流体の排出を行う出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートを連通する弁口の開閉を行う弁体と、前記弁体を駆動するアクチュエータと、を有するバルブ装置であって、前記弁体と前記弁口が開口する弁口端面の少なくとも一方が凸部を備え、前記弁体が前記弁口を閉じるとき前記弁体が前記凸部を介して前記弁口端面に当接することを特徴とする。
【0011】
弁体が弁口を閉じるとき弁体が凸部を介して弁口端面に当接するので、弁体によって弁口を急激に閉塞することがなく、弁口の上流側へ向けての圧力波の発生が抑制される。
【0012】
上記のバルブ装置において、前記凸部は前記弁口端面に一体的に形成されるとよい。
【0013】
剛性材料でできた弁口端面に弾性材料でできた弁体が当接するので、凸部の耐久性が向上する。
【0014】
また、前記弁体の前記弁口端面に当接する面と前記弁口端面は円形であり、前記凸部が少なくとも3つ前記円形と同心円である円上に等間隔配置されるとよい。
【0015】
弁体が弁口端面に片当たりすることがなくなり、弁体で弁口を確実に閉塞することができる。
【発明の効果】
【0016】
弁体と弁口端面の少なくとも一方が凸部を備え、弁体が弁口を閉じる前に弁体が凸部を介して弁口端面に当接するので、弁体によって弁口を急激に閉塞することがなく、弁口の上流側へ向けての圧力波の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るバルブ装置の断面図である。
【図2】図1のバルブ装置の要部拡大断面図である。
【図3】図1の弁口端面部の上面視図である。
【図4】変形例に係る弁体の上面視図(a)と側方視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態のバルブ装置は、流体(気体、液体、気液混合流体等)の供給を受ける入力ポートと、流体の排出を行う出力ポートと、入力ポートと出力ポートを連通する弁口の開閉を行う弁体と、弁体を駆動するアクチュエータとを備える。また、バルブ装置は、弁体と弁口が開口する弁口端面の少なくとも一方が凸部を備え、弁体が前記弁口を閉じるとき前記弁体が前記凸部を介して前記弁口端面に当接する。
【0019】
(実施形態)
本実施形態のバルブ装置は、パージバルブとして用いられるノーマリ・クローズタイプの電磁弁である。
【0020】
本実施形態の電磁弁を図1〜図3を参照して説明する。なお、図1は説明の都合上オープン状態の電磁弁(パージバルブ)を示している。
【0021】
電磁弁は、流体の流路Rを形成するハウジング11と、一端側が流路Rに開口し流体の供給を受ける入力ポート14と、一端側に流路Rに連通する弁口12aが開口する弁口端面12bを備え他端側にエンジンの吸気管に接続される出力ポート12cが形成され且つハウジング11の上部開口を覆うフランジ12dを備える出力ポート部12と、入力ポート14と出力ポート12cを連通する弁口12aの開閉を行う円盤状弁体13とを備えている。また、電磁弁は、弁体13を駆動して弁口端面12bに当接させて弁口12aを閉じる電磁駆動部(アクチュエータ)15を備えている。16は、フィルタである。
【0022】
出力ポート部12は剛性を有する樹脂材料製で、円形の弁口端面12bに凸部12eが一体に形成されている。図3に示すように、4つの凸部12eは弁口端面12bの外形円より小さい同心円上に等間隔に配置されている。弁体13は、弾性を有するゴム材料製である。
【0023】
凸部12eの形状は、弁体13の弾性率と後述のリターンスプリング15bの付勢力との関係で決められる。すなわち、凸部12eの形状は、弁体13が確実に弁口12aを閉塞でき、圧力波の発生を抑制できる形状に設計されている。
【0024】
電磁駆動部15は、弁体13が取り付けられたムービングコア15aの他に、このムービングコア15aを閉弁方向(弁体13が弁口端面12bに当接する方向)に付勢するリターンスプリング15bと、このリターンスプリング15bの付勢力(閉弁力)に抗してムービングコア15aを開弁方向へ磁気吸引するソレノイド15cとを備える。
【0025】
ムービングコア15aは、上端に弁体13が取り付けられたカップ形状を呈する可動子であり、磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)製である。
【0026】
リターンスプリング15bは、ムービングコア15aを閉弁方向(上方向)へ付勢する圧縮コイルスプリングであり、ムービングコア15aと、ムービングコア15a内に設けられたスプリング保持部15dの間で圧縮配置される。
【0027】
ソレノイド15cは、コイル21、磁気固定子(ヨーク22、ステータ23、磁性リング(不図示))を備え、コネクタ(不図示)によって通電制御されるものである。
【0028】
次に、上記構成よりなる電磁弁の基本動作を説明する。
【0029】
電子制御装置により、電磁弁(具体的には電磁駆動部15のコイル21)がONされると、ムービングコア15aがステータ23に磁気吸引されて、リターンスプリング15bの付勢力に抗してムービングコア15aが下方(開弁方向)へ移動する。その結果、ムービングコア15aに取り付けられた弁体13も開弁方向へ移動し、弁体13が弁口12aを開く。これによって、入力ポート14と出力ポート12cが弁口12aを介して連通する。
【0030】
電子制御装置により、電磁弁がOFFされると、コイル21の発生していた磁力が喪失するため、リターンスプリング15bの付勢力によってムービングコア15aが上方(閉弁方向)へ移動する。その結果、ムービングコア15aに取り付けられた弁体13も閉弁方向へ移動し、弁体13が弁口12aを閉塞する。
【0031】
弁体13が上方に移動すると、弁体13の上面が弁口端面12bより下方に突出している凸部12eに当接する。すると、弁口端面12bの凸部12eに当接する弁体13の部位及びその周辺が弾性変形して弁体13の上方への移動速度を減速する。
【0032】
したがって、弁体13は、上方への移動速度が減速されて上方に移動して弁口12aを閉塞するので、弁口12aの上流(入力ポート14)側への圧力波の発生を抑制することができる。
【0033】
また、弁体13は弁口端面12bの外形円より小さい同心円上に等間隔に配置された4つの凸部12eに当接して弾性変形するので、弁体13が弁口端面12bに片当たりすることがなく、弁体13で弁口12aを確実に閉塞することができる。
【0034】
本実施形態のバルブ装置は、弁口端面12bに凸部12eが形成されていたが、次のようにしてもよい。弁口端面12bの凸部12eをなくして、図4に示すように弁体13に凸部13eを一体的に形成しても良い。なお、この場合、3つの凸部13eが弁体13の弁口端面12bに当接する面の外径円より小さい同心円上に120度隔てて配置されている。
【0035】
凸部が弁体13と弁口端面12aの両方に形成されていても良い。
【0036】
本実施形態では、本発明をパージバルブとして用いられる電磁弁に適用したが、パージバルブとは用途が異なる他の電磁弁に本発明を適用しても良い。
【0037】
本実施形態では、弁体13の駆動手段として電磁駆動部15を用いた例を示したが、ピエゾアクチュエータなど、ほかの電磁アクチュエータを用いても良い。
【符号の説明】
【0038】
12a・・・・・・弁口
12b・・・・・・弁口端面
12c・・・・・・出力ポート
12e、13e・・凸部
13・・・・・・・弁体
14・・・・・・・入力ポート
15・・・・・・・電磁駆動部(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の供給を受ける入力ポートと、流体の排出を行う出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートを連通する弁口の開閉を行う弁体と、前記弁体を駆動するアクチュエータと、を有するバルブ装置であって、
前記弁体と前記弁口が開口する弁口端面の少なくとも一方が凸部を備え、前記弁体が前記弁口を閉じるとき前記弁体が前記凸部を介して前記弁口端面に当接することを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記凸部は前記弁口端面に一体的に形成される請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記弁体の前記弁口端面に当接する面と前記弁口端面は円形であり、前記凸部が少なくとも3つ前記円形と同心円である円上に等間隔配置される請求項1また2に記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233501(P2012−233501A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100645(P2011−100645)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(592056908)浜名湖電装株式会社 (59)
【Fターム(参考)】