説明

バルブ金属粉末のための微粒子回収法

【課題】小さな一次粒子径を有するタンタル粉末を提供する。
【解決手段】タンタル及びその他のバルブ金属粒子を製造する方法及びシステムであって、反応容器内201で実施される還元過程でタンタル粒子を形成し、そしてサイフォン209を使用して、タンタル微粒子を反応混合物から回収容器223へ移動することを含む、方法及びシステム。反応混合物が攪拌されている間に、この粒子移動を行うことができる。反応混合物がタンタル微粒子回収容器の流体レベル229よりも高い深さレベルを有しているときに、タンタル粒子を自動的に引き出すことができ、また反応容器と粒子回収容器との流体レベルが平衡すると、流出が自動的に停止する。これらの方法によって形成されたタンタル又はその他のバルブ金属粉末、及びバルブ金属粉末で形成されたキャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ金属微粒子、具体的にはタンタル微粉末の製造及び回収、及びこれらの粉末を組み込んだ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル粉末から形成されたタンタル陽極は、電子回路の小型化に寄与する主要なものであり、このような回路の、極端な環境内での適用を可能にしている。タンタル陽極を有するキャパシタは典型的には、タンタル粉末を圧縮してペレットを形成し、ペレットを炉内で焼結して多孔質タンタル体(電極)を形成し、次いで好適な電解質中で多孔質体に陽極酸化を施して、焼結体上に連続的誘電酸化膜を形成することにより製造される。タンタル粉末が高品質キャパシタの製造の際に最良に役立つように、このタンタル粉末に必要とされる特性を設計しようという、キャパシタ製造業者及びタンタル処理業者の双方による努力の結果、タンタル・キャパシタを形成するのに適した粉末が開発されている。このような特性は、比表面積、純度、収縮、及びプレス可能性などを含む。
【0003】
これらのタンタル粒子特性のうちの1つ又は2つ以上に影響を与え得るタンタルの還元によるタンタル粉末の製造に関して、種々様々な技術が実践又は開示されている。典型的な技術、例えばCabot Corporationの米国特許第5,234,491号明細書(特許文献1)に手短に概説された技術を以下に検討する。
【0004】
溶融塩中に予め溶解されているK2TaF7にナトリウムを添加することによる化学的な方法で、タンタル粉末が製造されている。この方法において、K2TaF7又は他の被還元性ハロゲン化タンタル及び希釈塩を反応容器内で、塩混合物の融点を上回る温度まで加熱する。次いで液体ナトリウムを添加する。内部攪拌機によって浴を攪拌しながら、浴を本質的に等温条件で保持する。結果として生じた粉末は広範囲の粒度を有している。これらの材料が、電解キャパシタのための陽極を製造する上で受け入れられるようにするために、これらの材料は、所期粒度分布を得るために、大規模な分級を必要とすることがある。これらの粉末に由来する陽極から得ることができる容量電荷は典型的には、中間の範囲にある。この攪拌液相反応スキームの改変形は、攪拌された反応浴に希釈塩を導入することを伴う。希釈剤、例えばNaCl及びKClのような希釈剤をK2TaF7に添加することにより、より低い浴温度の使用が可能になる。しかしながら、このような改変された過程は、微粉化された材料の凝集体をもたらし、不純物を捕らえる傾向を生み、そして過剰の微粒子を生成することになる。
【0005】
別の方法において、固形希釈塩及びK2TaF7を液体ナトリウムと混練し、そして混合物を自然発熱反応の開始点まで加熱する。この発熱反応は容易には制御されず、従って、生成物特性は、変動する粒度、幅広い粒度分布、及び変動する電気特性を含む。これらの材料は、電解キャパシタのための陽極を製造する際にこれらを利用する前に、完成生成物から微粒子と粗粒子とを取り出すための分級を必要とする。
【0006】
フルオロタンタル酸カリウム(K2TaF7)は、ナトリウム及びカリウムの希釈塩化塩及び希釈フッ化塩を有する溶融浴中でタンタルに電解還元することもできる。加えて、K2TaF7が還元剤と交互の層を成して配列されている密閉容器内の発熱反応によって、タンタル粉末を形成することもできる。
【0007】
米国特許第4,149,876号明細書(特許文献2)には、還元法においてタンタル粉末生成物の粒度を制御する技術が開示されており、ここでは、K2TaF7と希釈塩との溶融浴に溶融ナトリウムを添加し、このナトリウム添加は核生成期間中に制御される。この特許明細書は、初期浴温度から還元温度まで装入材料の温度が高くなる反応全体の期間を「核生成期間」と定義している。高容量電荷の電解キャパシタの製造に際して採用される陽極の製造に使用されるように、極めて微細な粒度のタンタルの粉末を生成することが望まれたときには、ナトリウム金属は、還元温度に達するまで、極めて高い速度で添加されるものとして開示されている。またこの特許明細書には、核生成期間中のナトリウム注入速度(反応器内への供給速度)が、完成生成物の平均粒度に逆効果を及ぼすことも報告された。より具体的には、この特許明細書はまた、完成生成物の平均粒度が、核生成期間中の時間に対する温度上昇率に対して、そして、「成長期間」と呼ばれる、その特定の還元温度において所要の化学量論的量のナトリウムを添加するのを完了するための時間に対して、反比例したことも教示している。
【0008】
米国特許第4,684,399号明細書(特許文献3)に開示されたタンタル粉末製造方法の場合、還元性金属との反応経過中に、タンタル化合物を連続的又は増分的に反応器に添加する。連続添加速度及びそれぞれの増分の量は、所望の特定のタンタル粉末生成物特性に応じて変化させることができる。連続的な添加又はより小さな増分の添加が、キャパシタンスの増大を支援する傾向がある。還元剤をタンタル化合物の導入前に単一の単位装入物として添加するか、或いは、連続的又は半連続的に添加することも開示されている。
【0009】
カナダ国特許出願公開第2,622,336号明細書(特許文献4)に開示された、バルブ金属の製造方法は、バルブ金属前駆体と希釈剤とを含む混合物を第1容器内で溶融し、そして、混合物を第2容器に移すことにより、同じ又は異なる温度条件下、及びバルブ金属を形成するためのバルブ金属前駆体の反応が開始される間の同じ又は異なる滞留時間条件下で、混合物を混合する工程を含む。希釈塩とバルブ金属前駆体との比は、概ね1:5を上回り、大抵は1:20を上回る。粒子の細かさは、反応温度、還元剤比、及び溶融塩希釈率に基づく。
【0010】
国際公開第2007/130483号パンフレット(特許文献5)には、溶融塩中に溶解されたフッ化タンタルカリウム中に少なくとも1種の還元剤を分散添加し、そしてタンタル粒子に電解・電着処理を施すことによりタンタル微粒子の表面粗さを低減し且つ/又はネック厚を増大させることによって、タンタル微粒子を形成する方法が開示されている。タンタル粒子を形成するための反応は、塩化カリウム中にK2TaF7を溶解させた後、極めて高い希釈率を用いる一方、ナトリウム及び窒素の増分添加を行うことを含む。微粒子は、連続的な添加を行うことなしに捕集される。
【0011】
特開2006−002241号公報(特許文献6)の第1実施態様には、フッ化カリウム及び塩化カリウムを含有する希釈剤中にナトリウムを添加しながらK2TaF7を還元することによってバルブ金属を製造する方法及び製造する装置が開示されている。反応器底部に設けられた弁付き排出管を有する反応器から、金属タンタル、次いでいくらかの希釈剤を取り出す。反応器内の残りの希釈剤に、取り出された希釈剤の量の代わりにするための塩化カリウム及びフッ化カリウムを補充し、これを再使用する。開示された第2実施態様の場合、反応工程後、いくらかの上側の希釈剤を、廃棄のための排出管で除去し、残りの希釈剤を、再使用のために別の反応器に供給し、そして冷却後に反応器を開くことによって金属タンタルを捕集する。残りの希釈剤に、除去された希釈剤の量の代わりにするための塩化カリウム及びフッ化カリウムを補充し、これを再使用する。
【0012】
特開2006−546787号公報(特許文献7)に開示されたタンタル製造法は、約15〜25回にわたって希釈しながら、反応器内のタンタルフッ素化カリウム及び塩化カリウム中に、加熱された窒素を導入することを伴い、K2TaF7溶解後に約40〜60回にわたって増分ナトリウムを添加する。
【0013】
本発明者は、より効率的な、そして改善された形で反応系からタンタル微粒子又は他のバルブ金属粒子を生成し単離するのを可能にする反応系を提供することが有利であることを認識した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,234,491号明細書
【特許文献2】米国特許第4,149,876号明細書
【特許文献3】米国特許第4,684,399号明細書
【特許文献4】カナダ国特許出願公開第2,622,336号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/130483号パンフレット
【特許文献6】特開2006−002241号公報
【特許文献7】特開2006−546787号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の特徴は、小さな一次粒子サイズを有するタンタル粉末を提供することである。
【0016】
本発明の更なる特徴は、タンタル微粒子又は他のバルブ金属粒子を、これらが粗大化又は凝集する前に、還元過程の溶融塩反応混合物から回収することである。
【0017】
本発明の別の特徴は、任意には同時に反応混合物を攪拌しながら、溶融塩反応混合物から、中断なしに(in a non-disruptive manner)、タンタル微粒子又はその他のバルブ金属粒子を自動的に回収することである。
【0018】
本発明の更なる特徴は、反応熱に対する生成済タンタル粒子の曝露量を低減し、しかも粒子中の不純物を低減する仕方で、溶融塩反応混合物からタンタル微粒子又はその他のバルブ金属粒子を回収することである。
【0019】
本発明の別の特徴は、経済的な高い溶融塩希釈率の溶融塩反応混合物中でタンタル微粒子又はその他のバルブ金属粒子を生成して回収する方法を提供することである。
【0020】
本発明の更なる特徴は、高容量キャパシタ及びその他の製品を製造するのに良く適した、高容量能力を有する小さな一次粒子サイズから成るタンタル粉末を提供することである。
【0021】
本発明の付加的な特徴及び利点は、下記の記述に一部を示し、また一部は記述内容から明らかになる。或いは、これらは本発明の実施によって習得することもできる。本発明の目的及びその他の利点は、記述内容及び添付の特許請求の範囲において具体的に指摘された要素及び組み合わせによって実現され達成される。
【0022】
これらの利点及びその他の利点を達成するために、そして本発明の目的に従うと、本明細書中で具体化され幅広く説明されているように、本発明は、タンタル微粒子又はその他のバルブ金属粒子を生成して回収する方法であって、反応容器内の被還元性ハロゲン化タンタルと溶融希釈塩とを含む反応混合物中に少なくとも1種の還元剤を添加してタンタル微粒子を生成することにより、タンタル粒子を形成することを含む方法に関する。反応混合物からタンタル微粒子を分離するために、自動サイフォンが使用される。サイフォンによって、粒子が分散されている少量の反応流体によって反応浴から金属微粒子が取り出される。こうして、分散された最終金属粒子を含有する流動性の溶融希釈塩は、サイフォン装置を使用することにより、中断なしに反応混合物から単離することができる。
【0023】
タンタル微粒子、例えば一次粒子が、サイフォンを用いて溶融反応混合物から分離されるときに、反応混合物を攪拌することができる。溶融反応混合物は、処理システム内部の静水圧に対して反応する流動性流体材料の形態を成している。サイフォンの入口端部は、タンタル粒子が所期粒度、例えば小さな一次粒子サイズを有する一次粒子まで成長する、反応混合物中の深さに位置決めすることができる。小さな一次粒子サイズを有するタンタル粒子は、これらが凝集するか又は粗くなる前に、反応混合物中のその位置から外部へ移動(輸送)することができる。このように捕集された回収済タンタル粒子は、大部分が一次粒子であることが可能である。回収済タンタル粒子は、大部分が約2,000nm未満、又は約1nm〜約2,000nm、又は約10nm〜約1,000nm、又は約10nm〜約100nmの粒度を有することができる。
【0024】
1実施態様の場合、被還元性ハロゲン化タンタルと、還元剤と、希釈塩とを含む溶融反応混合物が攪拌されている場所で、タンタル粉末を生成するための還元過程を行うことにより、例えば粒子間接触及び凝集を低減し、また、反応容器内の反応混合物の表面レベルが回収容器内の回収済み粒子流体の表面レベルよりも高いときに、タンタル微粒子を攪拌中にサイフォンによって自動的に別個の回収容器に引き出す。反応容器からの流出は、反応混合物流体レベルが回収容器内の流体レベルと同じになるとその時点で、そして同じである時間中、自動的に中断する。
【0025】
攪拌又はその他の反応条件は、反応混合物の表面レベルが、回収容器内にサイフォンによって供給された回収済の流体及び粒子の表面レベルを超えるようにすることがある。微粒子回収の方法及びシステムはさらに、回収容器をオーバーフロー捕集容器内部に位置決めすることを含むこともできる。この配置関係において、反応容器内の流体面レベルが回収容器内の流体レベルを超えたときの、反応容器から回収容器への流体の流出は、回収容器の流体レベルが容器の開いた上端部に達して捕集容器内にオーバーフローするまで続き、そしてこの流体は、任意の追加の粒子流体がサイフォンを介して回収容器内に移動されるのに伴って、オーバーフローし続けることになる。反応容器内の反応混合物の流体レベルは、次いで、回収容器の開いた上端部のレベルまで下がる。その時点で、システム内部の静水圧は平衡することができ、また反応容器からサイフォンを介して回収容器へ微粒子が流出するのが自動的に中断される。このような流出停止は、反応容器内の流体面レベルが回収容器内の流体レベルを再び超えない限り、そして再び超えるまで続き、次いで、自動サイフォン過程は、操作者の介入の必要なしに、任意の回数だけ繰り返すことができる。このような処理装置は、所期粒度、例えば一次粒子を有するタンタル微粒子が、反応混合物中の、これらが集中し得る選択可能なゾーン内で好都合に抽出されるのを可能にする。これはまた、攪拌機を妨げることなしに粒子を引き出すことを可能にする。攪拌機は、反応混合物をかき混ぜ攪拌し続け、そして粒子回収中に反応混合物と生成物との良好な分散を維持することができるようになる。
【0026】
本発明の方法は、数多くの利点及び利益を提供することができる。加熱された反応混合物からタンタル微粒子を、これらが粗大化又は凝集する機会を有する前に、分離・単離することができる。タンタル微粒子の生成に際して、溶融塩希釈率を高くすることができる。それというのも、サイフォン装置が、一次粒子形成の後、熱及び凝集の不都合な作用が顕著に発生して粒子に影響を及ぼす前に、微粒子が反応浴から効率的に抽出されるのを可能するからである。
【0027】
これらの方法によって形成されたタンタル粉末又はその他のバルブ金属粉末、並びに粉末で形成されたキャパシタ陽極も提供される。加えて、上記方法を行うためのシステムも提供される。
【0028】
なお、上記全般的な記述及び下記詳細な記述の双方は、一例を説明するものに過ぎず、特許請求の範囲で主張される本発明の更なる説明を提供するものとする。
【0029】
本明細書中に使用される「サイフォン」は、入口端部と放出端部とを有する管状部材を意味し、この管状部材は、管状部材の互いに対向する端部の静水圧差により駆動される流れによって、流体が流体リザーバから、流体リザーバよりも高い中間点を通って流出するのを可能にする。サイフォンに応じて、小さな圧力差が、サイフォンを通る流れをもたらすことができる。圧力差の大きさは、サイフォンを通る流量の差を形成することができる。圧力差は約0.1〜約0.5kPa以上であってよい。管状部材の幾何学的断面形状は限定されず、任意の形状、例えば円形、楕円形、及び四角形などであってよい。
【0030】
本出願に組み込まれ、そして本出願の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施態様のうちのいくつかを示し、また記述内容とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明におけるタンタル粉末製造方法の1実施態様において使用されるタンタル粉末製造装置を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明におけるタンタル粉末製造方法の更なる実施態様において使用されるタンタル粉末製造装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によれば、還元過程、例えばハロゲン化タンタル還元過程が、反応によって生成される凝集されていない金属微粒子、例えばタンタル粒子を回収するために使用される自動サイフォンを含む溶融塩反応容器内で実施される。この過程は、反応混合物から、小さな粒度の一次粒子に成長又は発達した個々のタンタル粒子を、これらが不所望に粗大化、凝集、又は樹状化する前に取り出すためにサイフォンを使用する。小さな粒度のタンタル一次粒子は、高い容量電荷を提供することができる。こうして、これらの粒子は、電解キャパシタのための陽極として、そして他の製品内に有利に使用することができる。小さなサイズのタンタル一次粒子はまた、凝集体と比較すると、これらがサイフォンによって回収される前に不純物を取り出す機会が少なくなる。
【0033】
本発明の方法において、一般に、タンタル前駆体化合物、例えばハロゲン化タンタル塩を還元剤によって還元することによって、金属タンタル微粉末を生成することができる。タンタル前駆体化合物は、還元性金属との反応によってタンタル金属に還元され得るいかなる化合物であってもよく、好都合な又は望ましい任意の物理的状態で利用することもできる。このような化合物は典型的には、例えばフルオロタンタル酸カリウム(K2TaF7)、フルオロタンタル酸ナトリウム(Na2TaF7)、及び/又は塩化タンタル(TaCl5)、及びこれらの任意の混合物を含むことができる。還元剤に関しては、本発明による方法の反応条件下で、バルブ金属前駆体を元素バルブ金属に還元することができるいかなる物質も使用することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばナトリウム、マグネシウム、カルシウム、又はその水素化物、すなわち水素化マグネシウム及び水素化カルシウムを、還元剤の非限定的例として挙げる。ナトリウムが好ましい。タンタル粉末の物理特性、例えば粒度又は比表面積は一般に、反応混合物に不活性希釈塩を加えることにより少なくとも部分的に制御される。希釈塩という用語は一般に、限定するものではないが、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、共晶塩のような塩、又はこれらの任意の組み合わせを含むハロゲン化アルカリを意味する。
【0034】
本発明において、還元反応中、還元反応後、又はその両方で、反応混合物からタンタル粒子を抽出するためにサイフォンを使用することができる。タンタル微粒子、例えば一次粒子が、サイフォンによって溶融反応混合物から分離されるときには、反応混合物は攪拌することができ、或いは静止状態(攪拌させない)にすることもできる。溶融反応混合物は、処理システム内部の静水圧に対する反応する流動性流体材料の形態を成している。サイフォンの入口端部は、タンタル粒子が所望の粒度、例えば小さな一次粒子サイズまで成長する、反応混合物中の深さに位置決めすることができる。小さな一次粒子サイズを有するタンタル粒子は、これらが凝集するか又は粗くなる前に、反応混合物中のその位置から外部へ移動することができる。本発明の方法において捕集された回収済タンタル粒子は、大部分が一次粒子であり得る。さらに、回収済タンタル粒子は、大部分が約2,000nm未満、又は約1nm〜約2,000nm、又は約10nm〜約1,000nm、又は約10nm〜約100nmの粒度を有する一次粒子であることが可能である。
【0035】
反応又は攪拌を中断する必要なしに、攪拌された溶融反応混合物から、サイフォンによってタンタル微粒子を生成して回収するための還元法を提供することができる。被還元性ハロゲン化タンタルと、還元剤と、希釈塩とを攪拌することにより、例えば粒子間接触及び凝集を低減し、また、反応容器内の反応混合物の表面レベルが回収容器内の回収済流体の表面レベルよりも高いときに、タンタル微粒子を攪拌中にサイフォンによって自動的に別個の回収容器に引き出す。反応容器からの流出は、反応混合物流体レベルが回収容器内の流体レベルと同じになるとその時点で、自動的に中断する。回収容器には、オーバーフロー高さを確立するための開いた上端部を設けることもできる。オーバーフロー高さは、回収容器及び反応容器の両方に対する流体高さを画定する。この流体高さで、システム内部で静水圧は平衡することができ、そして結果として、両方のそれぞれの容器内の流体レベルがその流出レベルになると、反応容器の流出は中断する。
【0036】
図1を参照すると、サイフォンによってタンタル微粉末を生成して回収するための還元法が行われる製造装置100内が示されている。反応容器101内の攪拌機117を使用して、被還元性ハロゲン化タンタルと、還元剤と、希釈塩とを含む溶融反応混合物105が攪拌されている。攪拌機117は、粒子間接触及び凝集を低減するように、反応バッチ成分と金属粒子生成物とを分散する。タンタル微粒子が、サイフォン111によって反応混合物105から別個の回収容器123に自動的に引き出される。サイフォン109は、反応混合物105中に沈められた入口端部113と、回収容器粒子流体125中に位置する反対側の放出端部115とを有する管状部材111である。反応容器101内で行われるハロゲン化タンタル化学反応は、特に限定されない。この化学反応は慣用なものであってよい。例えばこの化学反応は、反応容器101内の希釈塩中に溶解されたハロゲン化タンタルに、溶融ナトリウムを添加することにより、タンタル粒子生成物を生成することを含む。反応は、反応混合物105、及び具体的には、反応浴内でよく分散された一次金属粒子126を維持するのに十分な、攪拌機117によるコンスタントな攪拌下で実施することができる。サイフォン109の入口端部113は、一次金属粒子126が丁度形成される深さに位置決めされる。サイフォンは、反応容器101と回収容器123との間に流体通路を提供する。この流体通路を通って、少量の溶融流体部分中に分散されたタンタル微粒子を移動して回収することができる。言うまでもなく、図1(及び図2)に示されたタンタル粒子126のサイズは実物大ではなく、単に説明を簡単にするために拡大している。
【0037】
サイフォン109は、任意の好適な形式でプライミングすることができる。例えば、少量の溶融塩とタンタル微粒子とから成る流れは、いくつかの形式でサイフォン109を通って始動することができる。例えば、入口端部113を反応混合物105内に沈め、そして任意の好都合な手段、例えば、サイフォン109の管状部材111を通して溶融塩とタンタル微粒子126との一部を粒子流125として引き込むのに十分な真空ポンプを使用して、反対側の放出端部115を真空に引くことができる。或いは、図1には示していない外部ガスを、反応混合物105を保持する反応容器101の閉じた変更形内に導入することもできる。この外部ガスは、反応容器101内に保持された溶融塩流体及び粒子を、これが放出端部115を出て回収容器123内に流入するまで、サイフォン109内にそしてサイフォン109を通して押し出すのに効果的な、反応混合物の表面107上の正の静水圧を形成するのに十分である。反応容器と回収容器との間のサイフォン接続をプライミングするためのこのようなアプローチは、図2に関して論じる際に下でより詳しく説明するので、それを参照されたい。図1に示されているように、サイフォン109は、静水圧差により駆動される流れによって、流体が反応混合物浴105から、流体混合物105の表面レベル107よりも高いサイフォン109の中間点を通って流出するのを可能にする。サイフォン109を通って流れるタンタル微粒子流体をもたらすことのできる最小圧力差は、例えば約0.1〜約0.5kPaであってよい。管状部材109の幾何学的断面形状は限定されず、円形、楕円形、及び四角形などであってよい。反応容器101からの流出は、反応混合物105の流体レベル107が回収容器123内の流体レベル129と同じになるとその時点で、自動的に中断する。
【0038】
攪拌又はその他の反応条件によって、反応混合物105の表面レベルが、回収容器123内に回収済の流体及び粒子125の表面レベル129を超えるようにすることができる。反応容器101内の反応混合物105の表面レベル107(A)が、回収容器123内の回収済みの流体及び粒子125の表面レベル129よりも高さが高いときには、反応容器101からサイフォン109を通した回収容器123内への流体及び粒子の流出は、流体及び粒子のレベルが、回収容器123の開いた上端部128に相当する、回収容器123のレベル131に上昇するまで続く。その時点で、回収済みの流体130の一部が回収容器123から捕集容器124内にオーバーフローし、そしてこの流体は、任意の追加の粒子流体がサイフォン109を介して回収容器123内に移動されるのに伴って、オーバーフローし続けることになる。次いで、反応容器101の流体レベル107は、これが回収容器123の開いた上端部128と同じ高さになるまで下がる。その時点で、システム100(すなわち反応容器101及び回収容器123)内部の静水圧は平衡することができ、また反応容器101からサイフォン109を介して微粒子及び流体が流出するのが自動的に中断される。反応容器101からの流出は、流体面レベル107が回収容器123内の流体レベルを再び超えない限り、そして再び超えるまで停止する。次いで、上記の自動サイフォン過程は、操作者の介入の必要なしに、任意の回数だけ繰り返すことができる。このような処理装置はまた、所期粒度、例えば一次粒子を有するタンタル微粒子126が、反応混合物部分中で容器側壁102の近くで好都合に抽出されるのを可能にする。この容器側壁には、一次粒子がより多く集中することができ、また攪拌機117が反応混合物105をかき混ぜ攪拌し続けると、一次粒子はこの攪拌機117から離れて位置することができる。
【0039】
上記のように、本明細書中では反応浴と呼ぶこともある反応混合物105の攪拌は、還元反応中に、そして反応中及び/又は反応後に行われるタンタル微粒子のサイフォン除去中に、攪拌機117で維持することができる。攪拌機は、典型的には反応容器101の内径の約1/3〜約2/3の外径を備えたブレードを有することができる。攪拌機のブレードは、パドル又は傾斜付きブレード、例えば約30〜約60度の傾斜を有するブレードであってよい。攪拌機117による攪拌は、塩浴が溶融された時から還元反応の完了まで、連続して行われることが好ましい。好ましい実施態様の場合、攪拌機速度は典型的には、運転中約50〜約150rpmであり、又は、混合物が500〜1000kgであるときに溶融塩混合物1kg当たり約0.05〜0.5rpmであり、又は周速1〜10m/秒である。ナトリウムの最高供給速度が用いられる核生成期間中には、より速い攪拌機速度を用いることができ、また、より低いナトリウム供給速度中、及びナトリウム供給完了後には、より低い速度を用いることができる。
【0040】
本発明の方法において利用される反応容器101は、タンタル化合物の還元を介してタンタル粉末を生成するために、当業者によって広く使用される反応器であってよい。一般に、典型的な反応器集成体は、反応器、取り付けられた蓋、攪拌機、サーモウェル、ガスの入口及び出口ポート、及び材料をローディング(反応器への装入)し、取り出すポートを含む。これらの構成要件のうちのいくつかは図2に詳細に示されている。好ましい実施態様の場合、反応容器、回収容器、及びサイフォン管状部分は、反応材料、生成物、又はこれらに含有される他の材料を加熱するために、加熱されるように適合されている。反応容器は、コンベンショナルな容器加熱手段(図示せず)、例えば容器を取り囲む加熱ジャケット、加熱コイル、加熱板、又は電気抵抗又は誘導加熱器によって加熱することができる。回収容器は、反応容器とともに使用されるものと同様の、又はこれとは異なる容器加熱手段によって加熱することができる。サイフォン管状部材は、管を加熱するのに適した加熱手段(図示せず)、例えば電気抵抗素子又は誘導加熱器によって加熱することができる。反応容器、回収容器、及び攪拌機は、タンタル、純ニッケル、ニッケル系合金、又は鉄系合金、又は反応温度、反応物質、又はその他の条件に耐えることができる他の金属から形成することができる。捕集容器124は、例えばインコネル製の支持容器であってよい。
【0041】
図2を参照すると、還元法及び還元設備に関して図1のものと類似性を有するサイフォン形態を含んだ状態で、製造装置200が示されている。反応容器201は、閉じた容器である。サイフォンをプライミングするために外部ガスを使用することに関する付加的な詳細を、この実施態様で説明する。管221を介して、閉じた反応容器201内に外部ガスを導入することができる一方、サイフォン209の放出端部215はガス平衡管241によって平衡される。この外部ガスは、反応容器201内に保持されたいくらかの溶融塩及びタンタル微粒子226を粒子流体225として、これが放出端部215を出て回収容器223内に流入するまで、サイフォン209内にそしてサイフォン209を通して押し出すために、反応混合物205の表面207上の正の静水圧を形成するのに十分である。サイフォン209を通って流れるタンタル微粒子流体をもたらすことのできる最小圧力差は、例えば約0.1〜約0.5kPaであってよく、且つ/又は、反応物質及び/又は希釈剤を反応容器201内に導入するために、管219、及び/又は図示していない他の類似の導入管を使用することができる。他の点に関しては、装置200の反応及びサイフォンのシステムは、上記装置100と同様に操作することができので、それを参照されたい。
【0042】
タンタル粉末の製造方法例において、製造装置100又は200を操作する過程は、下記工程を含むことができる。不純物が混入するのを防止するために、容器101(201)を任意には事前に水で洗浄し、そして好ましくは、任意の超音波クリーニングを施した後、完全に乾燥させる。次いで、希釈塩を容器101(201)内に添加する。容器101(201)の内側を加熱することにより、溶融塩を調節し、そして攪拌手段117(217)によって容器101(201)の内側を攪拌しながら、フッ化タンタルカリウム(K2TaF7)を、これが溶融塩中に溶解されるように添加する。サイフォン109(209)を上記のように、取り付け、そしてプライミングする。次いで、攪拌を続けながら、還元剤を、例えば増分添加により、溶融塩中に溶解されたフッ化タンタルカリウム中に添加することができる。その結果、フッ化タンタルカリウムが還元され、一次粒子から成るタンタル微粒子が形成される。還元剤は分散添加することもできる。この分散添加は、複数のスポット又は場所で同時に(又はほぼ同時に)添加することを意味する。還元剤としてナトリウムを使用するときには、フッ化タンタルカリウム中のフッ素と、ナトリウムとが互いに反応して、ナトリウムのフッ化物を生成する。フッ化物は水溶性であり、従って後の過程で容易に除去される。770℃〜880℃が、容器101(201)の好ましい内部温度である。容器101(201)の内部温度が770℃以上であると、容器101内の成分は、確実に溶解することができ、また内部温度が880℃以下であると、生成されたタンタル一次粉末の自己焼結を防止することができ、ひいては、生成された粒子が粗大化するのを防止することもできる。他の温度、例えば770℃未満又は880℃超の温度を用いることもでき、これらの温度は、適用される還元化学反応及び供給速度の条件に依存する。NaFの融点は993℃であり、そしてNaCl:KCl:LiCl=10:55:35の融点は346℃である。
【0043】
還元反応は、タンタル粉末と金属塩とを生成する。サイフォン入口端部113(213)は好ましくは、反応混合物105(205)中の、タンタル一次粒子が抽出のために所望又は選択された小さなサイズを有して丁度形成される場所に位置決めされる。例えば、サイフォンの入口端部は、移動されるタンタル粒子の少なくとも75重量%、又は少なくとも約90重量%が一次粒子であるような、反応混合物中の場所に位置決めすることができる。サイフォン入口端部の場所は、反応中に再位置決めすることができる。回収容器及びサイフォン管状部材は、還元反応中、例えば500〜800℃、又は700〜770℃まで加熱される。
【0044】
本発明の方法、並びに金属粒子、例えばタンタル粒子を生成して回収するためのシステムに関して、方法及び/又はシステムは、完全(例えば連続操作)、半連続、又は不連続(例えばバッチ)形式で操作することができる。これらのタイプの操作のいずれも可能である。バッチ・システム又はバッチ方法の場合、量は一般に予め決められ、この工程の操作前に添加される。半連続操作の場合、種々様々な成分及び工程ステップは、十分な量の反応物質及び希釈剤が存在すること、そしてタンタル微粒子の取り出しが定期的に達成されることを保証するために、種々のインターバルを置いて生じることができる。連続様式の場合、反応物質及び希釈剤の量は増分的又は連続的であってよく、また、連続反応を達成するように、微粒子の取り出し速度と一致する速度で供給することができる。タンタル粉末の別の製造方法例において、タンタル微粒子の回収は、連続過程として行うことができる。反応物質、すなわちタンタル化合物及び還元剤、並びに希釈剤は、反応により生成されたタンタル微粒子の取り出し速度と相関された速度で、反応容器101(201)に連続的に添加することができる。サイフォンの理論によれば、タンタル微粒子の流出量は、反応容器101(201)への反応材料の添加量と関連する。反応物質及び希釈剤が反応容器101(201)へ連続的に添加される場合、反応容器101(201)からサイフォン109(209)内へ、そして回収容器123(223)上へ、タンタル微粒子が連続的に流出することができる。サイフォン109(209)内へ流入するタンタル微粒子流は、反応混合物表面レベル107(207)を調節することにより、制御することができる。
【0045】
還元反応が完了するまで行われた後、サイフォン109(209)を介して回収容器123(223)内に捕集された、タンタル粉末と金属塩との反応塊である粒子流体125(225)は、塩を溶解するために水で浸出し、続いてタンタル粉末の回収前に酸洗浄を施すことにより、処理することができる。反応容器101(201)及び回収容器123(223)の内容物は、容器の底部近くに耐熱弁(図示せず)を取り付け使用することにより、又は、他の好適な流体排出手段によって、規定通りに、更なる処理、再使用、又は廃棄のために、それぞれ容器から排出することができる。回収容器内に捕集されたタンタル粉末は次いで、当業者に知られた方法によって、乾燥させ、スクリーニングし、ドーピングし、そして熱処理することができる。粉末は、他のタンタル粉末とブレンドし、次いでスクリーニングし、ドーピングし、そして熱処理することもできる。
【0046】
数ある利点の中で、図1及び2に示す方法は、事実上、溶融塩からの反応系を妨害する必要なしに、そして攪拌及び良好な分散下で反応混合物を保持しながら、サイフォン・システムを使用して反応混合物中の任意の選択された深さで、所期サイズのタンタル粒子を取り出すのを可能にするという利点を有する。
【0047】
上記利益に加えて、本発明の方法は、多くのその他の利点及び利益を提供することもできる。加熱された反応混合物からタンタル微粒子を、これらが粗大化又は凝集する機会を有する前に、分離・単離することができる。タンタル微粒子の生成に際して、溶融塩希釈率を高くすることができる。それというのも、サイフォン装置が例えば、一次粒子形成の後、熱及び凝集の不都合な作用が顕著に発生して粒子に影響を及ぼす前に、微粒子が反応浴から効率的に抽出されるのを可能するからである。反応後の反応容器内に残る加熱された希釈塩は、同じ又は異なる反応器内で行われる1つ又は2つ以上の連続した生産工程において、エネルギー効率良く材料を節約するように再使用することができる。本発明の方法の別の利点は、経済的な高い溶融塩希釈率の溶融塩反応混合物中でタンタル微粒子又はその他のバルブ金属粒子を生成して回収する方法を提供することである。
【0048】
本発明は、反応容器の種々異なる選択可能な位置に、サイフォンの入口を取り付けるのを可能にする。この入口は、粒子が所望又は所要のサイズの一次粒子に成長した位置に取り付けることができる。すなわち、回収を目的とした粒子が溶融塩還元容器の底部に集まる場合、攪拌が機械的に加えられる必要がある容器領域内及びその内容物中に管を真直ぐに延ばす必要はなく、その代わり、必要なのは、サイホン管入口を容器の底部へ延長させることだけである。さらに、サイフォン管入口を調節することにより、金属微粒子の抽出及び回収を、微粒子が溶融塩還元容器の特定の高さのゾーン内に堆積している場所で行うことができる。サイフォン管の幅は、効率的な小粒子捕集のために溶融塩の流出速度を調節することができるので、タンタル塩の注入時及び溶解時にサイフォンの移動を必要とする反応容器内へナトリウムの供給が開始された時点から、回収が自動的に始まることが可能である。
【0049】
生成されたタンタル粉末は、キャパシタ陽極(例えば湿式陽極又は固体陽極)を形成するために使用することができる。キャパシタ陽極及びキャパシタ(湿式電解キャパシタ、固体キャパシタ、など)を任意の方法によって形成することができ、且つ/又は、例えば米国特許第6,870,727号;同第6,813,140号;同第6,699,757号;同第7,190,571号;同第7,172,985号;同第6,804,109号;同第6,788,523号;同第6,527,937号;同第6,462,934号;同第6,420,043号;同第6,375,704号;同第6,338,816号;同第6,322,912号;同第6,616,623号;同第6,051,044号;同第5,580,367号;同第5,448,447号;同第5,412,533号;同第5,306,462号;同第5,245,514号;同第5,217,526号;同第5,211,741号;同第4,805,704号;及び同第4,940,490号の各明細書に記載されているような成分/設計のうちの1つ又は2つを有することができる。これらの明細書全てを全体として参考のため本明細書中に引用する。粉末は、未加工ボディとして形成し、そして焼結することにより、焼結されたコンパクトなボディを形成することができ、焼結されたコンパクトなボディは、コンベンショナルな技術によって陽極酸化することができる。本発明に従って生成されたタンタル粉末から形成されたキャパシタ陽極は、改善された漏電特性を有すると考えられる。タンタル粉末のキャパシタンスは例えば、ペレットにプレスされ、1050℃で焼結された、そして6Vまで陽極酸化されると、約200,000〜約800,000μFV/g、又は約250,000〜約600,000μFV/gであることが可能である。漏れに関しては、漏れは7nA/CV以下、又は3nA/CV以下であることが可能である。
【0050】
本発明のキャパシタは、種々の最終用途、例えば自動車用電子機器;携帯電話機:コンピュータ、例えばモニター、及びマザーボードなど;TV及びCRTを含む家庭用電子機器;プリンタ/複写機;電源装置;モデム;ノート型コンピュータ;及びディスク・ドライブにおいて使用することもできる。
【0051】
上記実施態様は、好ましい材料としてタンタルを使用して論じてきたが、本発明は、ニオブのような他のバルブ金属材料、及び周期表のIVb、Vb及びVIb族に由来するいずれかの金属のような他のバルブ金属材料、又はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、及びこれらの合金に等しく適用される。
【0052】
本発明の一例とする下記理論上の例によって、本発明をさらに明確にする。この非限定的な例において、本発明の方法は、図1に示された製造装置内で行われる。15kgのフッ化カリウム及び15kgの塩化カリウムを反応容器に装入し、攪拌しながら塩を溶融するために温度を800℃まで上昇させる。37.5gのK2TaF7を、1分間にわたって攪拌しながら導入し、そして希釈塩中に溶解し、10.8gのナトリウムを添加し、そして5分間のインターバルを置いて40回にわたって温度を増分的に800℃まで戻す。ナトリウム添加と同時に、容器底部近くの場所で、1分間のインターバルを置いて40回にわたって、タンタル粉末を含む45gの溶融塩を、反応混合物からサイフォンで吸い取る。塩流体及びタンタル粉末を回収容器から取り出し、そして、塩を溶解してタンタル粉末を回収するのに適した溶剤で浸出することにより、コンベンショナルな形式でこれを処理する。タンタル粉末生成物を蒸気乾燥器によって120℃で乾燥させる。
【0053】
出願人は、この開示内容に全ての引用文献の内容全体を取り込む。さらに、量、濃度、又は他の値又はパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値として表されているときには、これは、範囲が別個に開示されているか否かにかかわらず、任意の上限範囲又は好ましい値と任意の下限範囲又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示しているものとして理解されるべきである。数値範囲が挙げられている場合には、特に断りのない限り、範囲は、その終点、及びその範囲以内の全ての整数及び端数を含むものとする。本発明の範囲は、数値範囲を定義したときに挙げられた具体的な値に限定されるものではない。
【0054】
本発明のその他の実施態様は、本明細書を考察し、本明細書中に開示された本発明を実施することから、当業者に明らかになる。本明細書及び例は、添付の特許請求の範囲及びこれと同等のものによって示される本発明の真の範囲及び思想を有する単なる一例と考えられるものとする。
【符号の説明】
【0055】
100,200 製造装置
101,201 反応容器
102,202 反応容器側壁
103,203 反応容器底部
105,205 反応混合物(浴)
107,207 反応混合物表面レベル
109,209 サイフォン
111,211 サイフォン管状部材
113,213 サイフォン入口端部
115,215 サイフォン放出端部
117,217 反応容器の攪拌機
123,223 回収容器
124,224 回収容器からの流出物の捕集器
125,225 回収容器の粒子流体
126,226 タンタル微粒子
128,228 回収容器の開いた上端部
129,229 回収容器の非平衡流体レベル
130,230 回収容器のオーバーフロー粒子流体
131,231 回収容器の平衡液体レベル
219 反応材料導入管
221 ガス導入管
241 反応容器と回収容器との間のガス平衡管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内の被還元性ハロゲン化タンタルと溶融希釈塩とを含む反応混合物中に少なくとも1種の還元剤を添加してタンタル微粒子を生成することにより、タンタル粒子を形成し;
該反応混合物中に配置された該反応混合物から微粒子抽出のための入口端部と、該反応容器の外部に配置された微粒子回収のための放出端部とを有する管状部材を含むサイフォンを通して、前記反応混合物から該反応容器の外部へタンタル微粒子を移動する
ことを含む、タンタル粒子を生成して回収する方法。
【請求項2】
さらに、該反応混合物中の該移動されるタンタル粒子の大部分が一次粒子である深さに、前記サイフォンの入口端部を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、該移動されるタンタル粒子の大部分が約2,000nm未満の粒度を有する該反応混合物中の場所に、前記サイフォンの入口端部を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該反応混合物が、前記タンタル微粒子の前記移動中に攪拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該反応混合物が、前記タンタル微粒子の前記移動中には静止している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応容器内の被還元性ハロゲン化タンタルと溶融希釈塩とを含む反応混合物中に少なくとも1種の還元剤を、該反応混合物を攪拌しながら添加してタンタル微粒子を生成することにより、タンタル粒子を形成し;
該反応混合物中に配置された入口端部と、該反応容器の外部に配置された放出端部とを有する管状部材を含むサイフォンを通して、前記反応混合物から、該反応容器とは別個の回収容器へタンタル微粒子を移動することを含み、前記タンタル微粒子の前記移動が、該反応容器内の反応混合物の流体レベルが該回収容器内の流体レベルよりも高いときに、該反応容器から該サイフォンを介して別個の回収容器へタンタル微粒子を含有する流体を流出させることを含み、そして前記流出は、該液体レベルが該回収容器の液体レベルと等しくなると中断する、
タンタル粒子を生成して回収する方法。
【請求項7】
さらに、該回収容器をオーバーフロー捕集容器内部に配置することを含み、該反応容器内の該流体面レベルが該回収容器内の流体レベルを超えたときの、該反応容器から該回収容器への前記流体の流出が、該回収容器の流体レベルが該回収容器の開いた上端部に達して該捕集容器内にオーバーフローし、そして該反応容器内の該流体レベルが該回収容器の前記開いた上端部のレベルまで下がるまで続く、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに、該移動されるタンタル粒子の大部分が一次粒子である、該反応混合物中の場所に、前記サイフォンの入口端部を配置することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
さらに、該移動されるタンタル粒子の少なくとも75重量%が一次粒子である、該反応混合物中の場所に、前記サイフォンの入口端部を配置することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
さらに、該移動されるタンタル粒子の大部分が約2,000nm未満の粒度を有する、該反応混合物中の場所に、前記サイフォンの入口端部を配置することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
さらに、該移動されるタンタル粒子の大部分が約1nm〜約2,000nmの粒度を有する、該反応混合物中の場所に、前記サイフォンの入口端部を配置することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
被還元性ハロゲン化タンタルの前記添加は、フルオロタンタル酸カリウムを添加することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記形成が、溶融アルカリハロゲン化物希釈塩中にK2TaF7を溶解し、そしてナトリウムを添加することによりK2TaF7をTa粒子に還元することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
該希釈塩が、塩化カリウム、フッ化カリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、又はこれらの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
さらに、約770℃〜約880℃の温度に反応混合物を維持することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
さらに、前記移動された微粒子を洗浄して熱処理してタンタル粉末を形成することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
攪拌機を備えた反応容器と、サイフォンと、回収容器とを含むシステムであって、
前記反応容器は攪拌機を含んでおり、前記反応容器は、反応容器内に添加された被還元性ハロゲン化タンタルと溶融希釈塩とを含む反応混合物中に少なくとも1種の還元剤を、該攪拌機によって該反応混合物を攪拌しながら添加してタンタル微粒子を生成することにより、タンタル粒子を形成するように操作されるようになっており;
前記サイフォンは、該反応容器内の前記反応混合物から、前記サイフォンを通して、該反応容器とは別個の前記回収容器へタンタル微粒子を移動するように操作されるようになっており、前記サイフォンは、該反応混合物中に配置可能な入口端部と、該容器の外部の該回収容器内に配置可能な放出端部とを有する管状部材を含み、そして、
前記システムは、該反応容器内の反応混合物の流体レベルが該回収容器内の流体レベルよりも高いときに、該反応容器から該サイフォンを通して別個の回収容器へタンタル微粒子を含有する流体を流出させることを介して、前記タンタル微粒子を移動しそして前記流出は、該液体レベルが該回収容器の液体レベルと等しくなると中断するように操作されるようになっている、
タンタル粒子を製造して回収するシステム。
【請求項18】
請求項1に記載の方法に従って形成されたタンタル粉末。
【請求項19】
請求項6に記載の方法に従って形成されたタンタル粉末。
【請求項20】
請求項18に記載のタンタル粉末を含有するキャパシタ陽極。
【請求項21】
請求項19に記載のタンタル粉末を含有するキャパシタ陽極。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−168650(P2010−168650A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−288070(P2009−288070)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】