説明

バンク等の製造方法

【課題】高精度でバンク等を製造する方法などを提供する。
【解決手段】フレキソ印刷版上のバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写し、転写されたバンク形成用組成物中の溶剤を乾燥除去して、又は転写されたバンク形成用組成物に光を照射して硬化させて、
被印刷基板上に固定化することによってバンクを製造する方法であって、
下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いてバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写する、バンクの製造方法。
【化1】


【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版を用いてバンクを製造する方法及び印刷版を用いて照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence、以下、「有機EL」と略記する。)表示装置は、携帯電話や携帯情報端末などの高画質化及び低消費電力化に伴い、液晶表示装置に代わるディスプレイデバイスとして有望視されている。この有機EL表示装置に使用される表示素子である有機EL素子は、ガラスなどからなる基板上に、下部電極(画素電極ともいう)と、有機EL層と、上部電極とを順次積層した構造を有しており、上部電極と下部電極との間に電流を流すことにより発光する。有機EL層は、例えば、発光層のみの構造であってもよいし、発光層と正孔輸送層及び電子輸送層のいずれか又は双方の層などとを組み合わせた構造であってもよい。
【0003】
有機EL素子に含まれる基板に発光層や正孔輸送層を形成する方法として、低分子系材料が使用される場合には、真空蒸着法などが知られており、高分子系材料が使用される場合にはスピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ドクターブレード法、及び各種印刷法などの方法が知られている。
【0004】
近年では、画素を形成する有機EL素子部(以下、「画素形成部」と略記する。)毎に有機EL層を効率的に形成でき、RGBの各色を発光すべき各有機材料の配置(塗り分け)が容易であるという利点を有する、インクジェット法が注目されている(特許文献1)。ここで、このインクジェット法が使用される場合、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクである前記有機材料を含む液状物質が、着弾の目標とされる画素形成部から隣接する画素形成部へ流出することがある。このような流出が生じるのは、液滴を形成するためにインクジェットヘッドと基板との間にある程度のギャップ(間隔)があけられるためである。すなわち、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させたとき、当該ノズルの尖端部に付着する汚れなどによりインクが吐出される方向(角度)が変化し、又は空気の流れなどの影響によりインクの飛行曲がりなどが生じる結果、前記ギャップを経てインクの液滴が着弾する位置は、所望の目標位置に対してずれを生じることがある。
【0005】
また、有機EL素子を作製するとき、当該素子を可動式のXYテーブル上に載置し、このXYテーブルを駆動することにより基板の位置を機械的に制御することが多い。そのため、機械的な位置合わせ誤差に起因して流出が生じることがある。一般的に、インクジェットヘッドの吐出精度と前記テーブルの位置合わせ精度とにより決定される着弾位置精度は、±15〜30μm程度の値である。この着弾位置のずれが生じることにより、特に流出が生じないような構成を取ることなくインクジェット法を使用すれば、所望の位置に精度良く有機EL層を形成することが困難となる。
【0006】
そこで、有機EL素子を作製するとき、撥水撥油性(以下、「撥液性」と略記する。)を有するバンクにより各画素形成部を囲む方法が提案されている(特許文献2)。この方法は、透明基板上に形成された電極に対して所定のパターニングを施すことにより複数の画素電極として形成した後、形成された隣り合う画素電極間に隔壁として機能するバンクを形成し、さらに当該バンクにより囲まれた領域に有機EL層(例えば電荷注入輸送層及び/又は発光層)を液相で形成し、さらにまたその上に上部電極を形成する方法である。
ここで、前記バンクの厚みは一般的には1〜3μm程度であり、また通常、バンクの材料としてはポリイミド系樹脂、ポリメタクリレート、ノボラック系樹脂などの有機樹脂材料が使用されるが、パターニングを容易にするために感光性を付与されることが多い。また、バンク表面は、撥液性を付与するため、インクに対し表面自由エネルギーが小さくなるようにする必要がある。このようにバンク表面に撥液性を付与するため、例えばフッ素を含む官能基やシリコンを含む添加剤を予めバンクの材料である有機樹脂に含ませる方法や、パターニング後に四フッ化炭素に代表されるフッ素系ガスを使用することによりバンク表面に対してプラズマ処理を施す方法などが採用される。
【0007】
また、画素電極表面には、バンク表面に付与される撥液性とは相反する特性である親水親油性(以下、「親液性」と略記する。)が付与される。画素電極の材料としては、透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)が使用されることが多いが、例えば画素電極の表面に対して公知の洗浄処理方法であるUV/O3処理や酸素プラズマ処理を施すことにより有機(炭化水素)系の不純物を除去し、その結果として画素電極表面の親液性を高める事もできる。有機EL素子の場合には、前記処理によりITO表面のイオン化ポテンシャル(仕事関数)が上昇し、正孔注入効率が向上するという効果も期待できる。
【0008】
以上のようにバンク表面に撥液性が付与され、かつ画素電極表面に親液性が付与されることにより、インクの一部がバンク表面の一部に着弾したとしても、このバンク表面に着弾したインクは、親液性を有する画素電極表面に引き込まれ、かつ画素電極表面に均一にパターニングされるため、着弾位置のずれをある程度許容(補償)することができる。このような手法によれば、隣接する画素電極表面にインクが着弾しない限り、隣接する画素形成部を他の種類のインクによって汚染することがないため、画素形成部内でのインクの混色が抑制される。
【0009】
前述のように、有機EL素子に含まれる基板に発光層や正孔輸送層を形成する方法として、高分子系材料が使用される場合には各種印刷法による発光層や正孔輸送層の製造方法が知られている。特許文献3にはオフセット印刷法による方法が、特許文献4及び5には凸版印刷法による方法が開示されている。そして、特許文献5には、凸版印刷法において、水現像タイプの感光性樹脂凸版を用いると、ポリアミド系の感光性樹脂が親水性樹脂を多く含む材料からなるため、有機溶剤に対する耐性が高く、有機発光インクを用いても膨潤や変形の少ない版が得られることが開示されている。
【0010】
高分子系材料を使用して印刷法により有機発光層を製造する場合には、高分子系材料などを含有する有機発光インク中の溶剤として、トルエンやキシレンなどの芳香族有機溶剤などを用いる必要がある。
【0011】
【特許文献1】特開平10−12377号公報
【特許文献2】特開平11−87062号公報
【特許文献3】特開2001−93668号公報
【特許文献4】特開2001−155858号公報
【特許文献5】特開2006−252787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に開示されているようなバンクを使用する従来の手法では、バンクをパターニングする方法がフォトレジスト工程を用いているため、感光性樹脂を塗布した後に、露光・現像・洗浄を行って所望のパターニングする必要があり、効率的にバンクを製造する方法の開発が望まれていた。
【0013】
また、オフセット印刷に用いるゴムブランケットには、弾性をもつことが必要であるのでオレフィン系やシリコーン系のゴムなどが使用されている。該ゴムなどは、トルエンやキシレンなどの芳香族有機溶剤によって膨潤や変形を起こしやすいという問題があった。さらに、フレキソ印刷に用いられるゴムや感光性樹脂等の版も、概して、有機溶剤に対する耐久性が乏しいという問題があった。
【0014】
そして、ポリアミド系の感光性樹脂から製造された版は、概して硬く、基材へのダメージが大きいというという問題がある。また、この技術も露光、現像工程を経てパターンを形成するフォトリソグラフィーを用いる方法であるため、印刷製版の効率の点で問題がある。さらに、この方法では露光工程での硬化収縮や現像工程での未硬化成分現像液中への抽出により、光硬化したパターンの中央部の厚さが薄くなるカッピングによる版の厚みむらが発生することや、版外周部が反る版反りの問題がある。厚み精度の低い印刷版を用いると、印刷で得られるパターンの膜厚が不均一になり、得られる有機発光層、該有機発光層を含む有機EL素子、及び有機ELディスプレイの性能においても不均一になってしまう。
【0015】
以上のように、従来技術では、効率よく高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法は知られていない。
【0016】
本発明は、高精度でバンクを製造する方法及び高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、被印刷基板上にバンク形成用組成物を転写して、バンクを製造する際に、特定の構造を有するポリカーボネートジオールから製造されるポリマーを含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いることによって、高精度でバンクを製造できることを見出すとともに、被印刷基板上に有機発光インクを転写して、照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する際に、特定の構造を有するポリカーボネートジオールから製造されるポリマーを含有する樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いることによって、高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明は以下のバンクを製造する方法及び照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法を提供する。
[1]
フレキソ印刷版上のバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写し、転写されたバンク形成用組成物中の溶剤を乾燥除去して、又は転写されたバンク形成用組成物に光を照射して硬化させて、
被印刷基板上に固定化することによってバンクを製造する方法であって、
下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いてバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写する、バンクの製造方法。
【化1】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
【化2】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表す。)
[2]
前記樹脂組成物が、
前記ポリカーボネートジオールと、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造されるポリマー(a)、及び/又は
前記ポリカーボネートジオールと、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造されるポリマー(a)を含有する、[1]に記載のバンクの製造方法。
[3]
前記樹脂組成物が、さらに、重合性不飽和基を有し、数平均分子量が5,000未満である有機化合物(b)を含有する、[1]又は[2]に記載のバンクの製造方法。
[4]
前記樹脂組成物が、さらに、無機系微粒子(c)を含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のバンクの製造方法。
[5]
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物である、[1]〜[4]のいずれかに記載のバンクの製造方法。
[6]
前記フレキソ印刷版が、フレキソ印刷原版表面に印刷パターンをレーザー彫刻することにより得られる、[1]〜[5]のいずれかに記載のバンクの製造方法。
[7]
前記フレキソ印刷版が、シート状又は円筒状に形成される、[1]〜[6]のいずれかに記載のバンクの製造方法。
[8]
前記フレキソ印刷版が、前記バンク形成用組成物中の前記溶剤に対する耐性を溶剤浸漬膨潤テストで評価した場合に、前記溶剤への浸漬前後で10質量%以下の質量変化率を示す、[1]〜[7]のいずれかに記載のバンクの製造方法。
[9]
印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された有機発光インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に固定化することにより得られる有機発光層の製造方法であって、
下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて有機発光インクを被印刷基板上に転写する、照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の製造方法。
【化3】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
【化4】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表す。)
[10]
印刷版が、フレキソ版、樹脂凸版、又はオフセット、ドライオフセット、反転オフセット若しくはグラビアオフセットに用いるブランケットである、[9]に記載の照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によれば、高精度でバンクを製造すること及び高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
本実施の形態におけるフレキソ印刷版は、下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られる。好ましくは、フレキソ印刷版は、前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を硬化した樹脂硬化物層を含む。本実施の形態におけるフレキソ印刷版が、前記樹脂組成物を含むことにより、バンク形成用組成物中の各種溶剤に対する卓越した耐溶剤性を発現させることができる。また、本実施の形態における印刷版は、下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られる。好ましくは、印刷版は、前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を硬化した樹脂硬化物層を含む。本実施の形態における印刷版が、前記樹脂組成物を含むことにより、有機発光インク中の各種溶剤に対する卓越した耐溶剤性を発現させることができる。
【0022】
【化5】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
【0023】
【化6】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表す。)
【0024】
前記ポリカーボネートジオールは、例えば、特公平5−29648号公報などを参照して、前記式(1)又は式(2)にそれぞれ対応するジオール化合物であるHO−(R1−O)n−H又はHO−R2−OHより、公知の方法などにより製造することができる。
【0025】
数平均分子量(Mn)とは、末端基濃度から算出される分子量を意味し、ポリカーボネートジオールのOH価([OHV])から、下記実施例中に記載した計算式により算出することができる。
【0026】
前記式(1)の炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基としては、例えば、炭素数2〜50の直鎖のアルキレン基などが好ましい。入手容易性や取扱い容易性などの観点から、炭素数2〜20の直鎖のアルキレン基などが好ましい。
前記式(2)の炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基としては、例えば、炭素数10〜50の直鎖のアルキレン基などが好ましい。入手容易性や取扱い容易性などの観点から、炭素数12〜40の直鎖のアルキレン基などが好ましい。
【0027】
前記式(1)のnとしては、入手容易性や取扱い容易性などの観点から、2〜30の整数であることが好ましい。
【0028】
前記分岐した炭化水素基としては、主鎖の1つ以上の水素原子がアルキル基で置換された構造のものが好ましい。
【0029】
前記ポリカーボネートジオールは、両末端が水酸基である。両末端が水酸基であるのは、耐溶剤性の高いフレキソ印刷版を製造するのに好適な樹脂組成物の製造に際して、ポリカーボネートジールと他の機能性分子などとを結合させるためである。また、ポリカーボネートジオールは数平均分子量が300〜50,000である。数平均分子量を300以上とすることが、耐溶剤性の観点から好ましい。また、数平均分子量を50,000以下とすることにより、ポリカーボネートジオールの工業的製造を良好に行うことができる。
【0030】
ポリカーボネートジオールとしては、下記式(3)又は(4)で表される数平均分子量が300〜50,000である化合物が好ましい。
【0031】
【化7】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表し、aは、1以上の整数を表す。)
【0032】
【化8】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、bは、1以上の整数を表す。)
【0033】
前記ポリマー(a)は、前記ポリカーボネートジオールから製造されるものであれば特に制限はされないが、ポリカーボネートジオールの末端水酸基と他の化合物との間で化学結合の形成を伴って製造されるポリマーであって、かつ重合性不飽和基を含むポリマーであることが好ましい。化学結合及び重合性不飽和基の種類に制限はされないが、化学結合としては、ウレタン結合などが好ましく、重合性不飽和基としては、ラジカル重合又は付加重合に関与し得る二重結合などが好ましい。フレキソ印刷版を製造するに際し、ポリマー(a)が様々な分子と連結することができることから、ポリマー(a)が重合性不飽和基を有することが好ましい。
【0034】
ポリマー(a)としては、ポリカーボネートジオールの末端水酸基が、多官能イソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物、イソシアネートアルキルアクリレート及びイソシアネートアルキルメタクリレートなどのイソシアネート基を有する化合物などと化学結合を伴って製造されるポリマーであることが好ましく、アクリル基及びメタクリル基などの重合性不飽和基を有するポリマーであることが好ましい。
【0035】
ポリマー(a)の好ましい第1の例は、ポリカーボネートジオールの末端水酸基を、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートと反応させることにより製造されるポリマーなどが挙げられる。
【0036】
多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限はされない。ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなど;脂肪族又は脂環式ジイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。トリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリ(イソシアネートフェニル)トリホスフェートなどが挙げられる。さらに、多官能ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメリック(ジフェニルメタンジイソシアネート)などが挙げられる。フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、ジイソシアネート化合物が好ましく、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、トリレンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0037】
ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量とは、多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量(mol)が、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量(mol)未満であることを意味する。該イソシアネート基当量としては、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満であれば制限はされないが、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量の50〜95%当量であることが好ましく、60〜90%当量であることがより好ましい。
【0038】
イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートとしては、例えば、該アクリレート化合物中のアルキル部分が炭素数2〜10のアルキレン基などである化合物が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基などである化合物がより好ましい。イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートの具体例としては、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0039】
ポリマー(a)の好ましい第1の例における具体例としては、極めて優れた耐溶剤性を示すことから、下記式(5)で表されるポリマーなどが挙げられる。
【0040】
【化9】

(式中、Rpは、前記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから両末端水酸基を除いた残基を表し、Rqは、ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表し、Rrは、は、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、RS、RTは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、Lは、1以上の整数を表す。)
【0041】
ポリマー(a)の好ましい第2の例は、ポリカーボネートジオールの末端水酸基を、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと反応させることにより製造されるポリマーなどが挙げられる。
【0042】
多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限はされない。ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなど;脂肪族又は脂環式ジイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、トリイソシアネート化合物として、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリ(イソシアネートフェニル)トリホスフェートなどが挙げられる。さらに多官能ポリイソシアネートとしては、ポリメリック(ジフェニルメタンジイソシアネート)などが挙げられる。フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、ジイソシアネート化合物が好ましく、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、トリレンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0043】
ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量とは、多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量(mol)が、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量(mol)を超えることを意味する。該イソシアネート基当量としては、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えていれば制限はされないが、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量の105〜150%当量であることが好ましく、110〜140%当量であることがより好ましい。
【0044】
ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートとしては、例えば、該アクリレート化合物中のアルキル部分が炭素数2〜10のアルキレン基などである化合物が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基などである化合物がより好ましい。ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0045】
ポリマー(a)の好ましい第2の例における具体例としては、極めて優れた耐溶剤性を示すことから、下記式(6)で表されるポリマーなどが挙げられる。
【0046】
【化10】

(式中、Rpは、前記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから両末端水酸基を除いた残基を表し、Rqは、ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表し、Ruは、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、RS、RTは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、mは、1以上の整数を表す。)
【0047】
前記式(5)及び式(6)において、Rpは、下記式(3)及び/又は式(4)で表される化合物から両末端水酸基を除いた残基であることが好ましい。
【0048】
【化11】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表し、aは、1以上の整数を表す。)
【0049】
【化12】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、bは、1以上の整数を表す。)
【0050】
前記式(5)及び式(6)において、Rqとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基又はヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族又は脂環式ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基などが挙げられる。これらの中でも芳香族ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基などが好ましく、より好ましくはトリレンジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基などが挙げられる。
【0051】
前記式(5)及びは式(6)において、Rr、Ruとしては、炭素数2〜10のアルキレン基などが好ましく、より好ましくは、炭素数2〜3のアルキレン基などである。
【0052】
ポリマー(a)の製造方法としては、特に制限はされないが、例えば、以下の方法などによりポリマー(a)を製造することができる。前記ポリカーボネートジオールと、該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ウレタン化触媒とを50〜90℃で1〜5時間反応させた後、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートとウレタン化触媒とを加え、50〜90℃で1〜5時間反応させることにより、ポリマー(a)を製造することができる。
また、前記ポリカーボネートジオールと、該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシナネート化合物と、ウレタン化触媒とを50〜90℃で1〜5時間反応させた後、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとウレタン化触媒とを加え、50〜90℃で1〜5時間反応させることにより、ポリマー(a)を製造することができる。
【0053】
本実施の形態における樹脂組成物は、さらに重合性不飽和基を有する数平均分子量が50以上5,000未満である有機化合物(b)を含有することが好ましい。
本実施の形態における重合性不飽和基とは、ラジカル重合又は付加重合に関与する不飽和基を意味する。ラジカル重合反応に関与する重合性不飽和基としては、例えば、アクリル基、メタクリル基などが好ましく、付加重合反応に関与する重合性不飽和基としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基などが好ましい。
【0054】
有機化合物(b)の具体例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼンなどのオレフィン類;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;ハロオレフィン類;アクリルニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;アリルアルコール、アリルイソシアネートなどのアリル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾールなどが挙げられる。
有機化合物(b)として、目的に応じて1種又は2種以上の有機化合物を併用して用いることができる。
【0055】
有機化合物(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体が好ましい。(メタ)アクリル酸の誘導体の例としては、例えば、以下のアルコール性水酸基を有する化合物などとのエステルなどが挙げられる。該化合物としては、シクロアルキルアルコール、ビシクロアルキルアルコール、シクロアルケニルアルコール、ビシクロアルケニルアルコールなどの脂環式の骨格を有する化合物;ベンジルアルコール、フェノール、フルオレニルアルコールなどの芳香族の骨格を有する化合物;アルキルアルコール、ハロゲン化アルキルアルコール、アルコキシアルキルアルコール、フェノキシアルキルアルコール、ヒドロキシアルキルアルコール、アミノアルキルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、アリルアルコールなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の誘導体の例としては、グリシドール、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパンなどの多価アルコールなどとのエステルなども挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の誘導体が芳香族の骨格を有する化合物とのエステルである化合物の場合には、窒素、硫黄などをヘテロ原子として含有した複素芳香族化合物とのエステルなどである有機化合物も挙げられる。
有機化合物(b)の具体例として、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
有機化合物(b)として、開環付加重合反応するエポキシ基を有する化合物が好ましい。開環付加反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などが挙げられる。
【0057】
具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、
グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSプロピレンオキサイドジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−1’−メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、アジピン酸ビス[1−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル]エステル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ポリブタジエンやポリイソプレンなどのポリジエンに過酢酸を反応させて得られるポリエポキシ化合物、エポキシ化大豆油などが挙げられる。
【0058】
本実施の形態における樹脂組成物は、フレキソ印刷原版とした場合、各種溶剤に対する優れた耐溶剤性に加え、レーザーで直接レリーフ画像を形成する手法において重要な特性である、レーザー彫刻性に優れるという特徴を併せ持つ。レーザー彫刻性をより向上させるためには、樹脂組成物が、さらに無機系微粒子(c)を含有することが好ましい。無機系微粒子(c)の材質、形態などに制限はされないが、粒子中に微小細孔又は微小な空隙を有するものがより好ましい。無機系微粒子(c)には、フレキソ印刷原版がレーザーによって分解されて発生する液状ガスを効果的に吸収除去する働きがあるので、樹脂組成物に無機系微粒子(c)を含有させることにより、レーザー彫刻によるレリーフ画像の精度が向上するのみならず、レーザー彫刻後の洗浄操作が極めて簡便になる。
【0059】
無機系微粒子(c)の大きさに制限はされないが、平均粒子径が0.01〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。無機系微粒子(c)の平均細孔径に制限はされないが、1〜1,000nmであり、より好ましくは2〜200nmであり、さらに好ましくは2〜50nmである。無機系微粒子(c)の細孔容積に制限はされないが、0.01〜10ml/gが好ましく、より好ましくは0.1〜5ml/gである。無機系微粒子(c)の比表面積に制限はされないが、1〜1,500m2/gが好ましく、より好ましくは10〜800m2/gである。
【0060】
無機系微粒子(c)の形状に制限はされないが、球状、扁平状、針状、無定形、又は表面に突起のある粒子などを使用することができる。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジなどの均一な細孔径を有する球状顆粒体なども使用することができる。無機系微粒子としては、多孔質無機微粒子、無孔質無機微粒子のいずれも使用することができ、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、メソポーラスモレキュラーシーブ、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化錫、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、ホウ素酸アルミニウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化鉄、酸化セリウムなどを用いることができる。また、層状粘土化合物などのように、層間に数nm〜100nmの空隙が存在するものも無機系微粒子として用いることができる。
【0061】
本実施の形態における樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は公知のものから適宜選択すればよく、例えば、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」(1986年、培風館発行)に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などの重合開始剤などを使用することができる。
【0062】
光重合開始剤を用いて光重合により樹脂組成物の架橋を行うことは、貯蔵安定性を保ちながら、生産性よくフレキソ印刷原版を製造する方法として有用である。
【0063】
光重合開始剤として使用することのできる公知の重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、アントラキノン類などの光ラジカル重合開始剤;光を吸収して酸を発生する芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩などの光カチオン重合開始剤;光を吸収して塩基を発生する光アニオン重合開始剤などを例示することができる。
【0064】
樹脂組成物の組成に制限はされないが、フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、前記ポリカーボネートジオ―ルから製造されるポリマー(a)100質量部に対して、重合性不飽和基を有する有機化合物(b)は5〜200質量部、無機系微粒子(c)は1〜100質量部であることが好ましい。また、フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、前記ポリカーボネートジオ―ルから製造されるポリマー(a)100質量部に対して、重合性不飽和基を有する有機化合物(b)は10〜180質量部、無機系微粒子(c)は1〜80質量部であることがより好ましい。さらに、フレキソ印刷原版製造の効率の観点から、光重合開始剤を1〜100質量部含むことが好ましく、フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、光重合開始剤を1〜80質量部含むことがより好ましい。
【0065】
樹脂組成物には、用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。その総添加量は樹脂組成物100質量部に対して10質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0066】
樹脂組成物をシート又は円筒状に成形する方法に制限はされないが、既存の樹脂組成物の成形方法を用いることができる。例えば、ポンプや押し出し機などの機械で樹脂組成物をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる方法(注型法);ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法などが例示できる。樹脂組成物の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などを施してもよい。通常は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やニッケルなどの素材からなるバックフィルムと言われる下敷きの上に樹脂組成物を成形するが、印刷機のシリンダー上に直接成形することもできる。その場合、継ぎ目のないシームレススリーブを成形することができる。また、スリーブ成形・彫刻装置(液状の感光性樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布し、光を照射して液状感光性樹脂組成物を架橋させる装置内に、レーザー彫刻用のレーザー光源を組み込んだもの)を用いてフレキソ印刷原版を成形することもできる。このような装置を用いた場合、スリーブを成形した後に直ちにレーザー彫刻してフレキソ印刷版を成形することができるので、成形加工に数週間の期間を必要としていた従来のゴムスリーブでは到底考えられない短時間加工が実現可能となる。
【0067】
本実施の形態における印刷版が、樹脂凸版又はオフセット、ドライオフセット、反転オフセット若しくはグラビアオフセットに用いるブランケットである場合にも、前述のように例示的に示したフレキソ印刷版の製造に用いる樹脂組成物を用いて、フレキソ印刷版と同様に耐溶剤性に優れる印刷版を製造することができる。
【0068】
本実施の形態におけるバンク形成用組成物に用いられる樹脂としては、特に制限はされないが、例えば、ノボラック系樹脂、ポリアミック酸、ポリイミド系樹脂、ポリメタクリレート、ポリ6フッ化プロピレン、ポリ4フッ化エチレン、ポリ3フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、フッ素化ポリスチレン、ポリアクリル酸エチル、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリ塩化ビニリデン、6ナイロン、6−6ナイロン、7−7ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンアジパミドなどの有機材料や、サイロライト、サイロホービック(富士シリシア化学社製)などの無機材料や、これら有機材料、無機材料をポジ型レジスト、ネガ型レジスト中に分散したものなどを使用することができる。
【0069】
バンク形成用組成物の溶剤としては、バンク形成用組成物に用いられる樹脂を溶解させるものであれば特に制限はされないが、具体的には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系溶剤、ブチルセロソルブなどのアルコキシアルキルアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドなどが溶解性の面から好適である。中でも溶解性の点でγ−ブチロラクトンが好ましい。また、バンク形成用の溶剤として1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
バンク形成用組成物を光を照射させて硬化させる場合には、該組成物中に、光重合性モノマーを含有させてもよい。光重合性モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0071】
ポリイミド系樹脂は、例えば、前駆体としてのポリアミック酸を加熱閉環イミド化することによって形成される。ポリアミック酸は、通常、下記式(7)で表される構造単位を主成分とする。
【0072】
【化13】

ここで、式(7)のXは1又は2の整数である。Ra及びRbは、各々独立に、少なくとも2個の炭素原子を有する有機基を示す。耐熱性の観点から、Ra及びRbは、各々独立に、環状炭化水素、芳香族環又は芳香族複素環を含有し、かつ、炭素数6から30の基が好ましい。Ra及びRbとしては、特に制限されるものではないが、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、ペリレン基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルフォン基、ジフェニルプロパン基、ベンゾフェノン基、ビフェニルトリフルオロプロパン基、ジフェニルメタン基、シクロヘキシルメタン基などから誘導された基などが挙げられる。
【0073】
ポリアミック酸をバンク形成用組成物として使用する場合の溶剤としては、ポリアミック酸を溶解させるものであれば特に制限はされないが、具体的には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系溶剤、ブチルセロソルブなどのアルコキシアルキルアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドなどが溶解性の面から好適である。中でも溶解性の点でγ−ブチロラクトンが好ましい。また、ポリアミック酸の溶剤としては1種を用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
バンクの膜厚は特に制限はされないが、具体的には、0.1μm〜10μmの範囲の膜厚とすることが好ましい。バンクの膜厚を10μm以下とすることが、生産性の観点から好ましい。また、バンクの膜厚を0.1μm以上とすることが、総合的性能の観点から好ましい。バンクの膜厚としては、総合的性能の観点から、0.2μm〜8μmの範囲内であることがより好ましい。
【0075】
本実施の形態におけるフレキソ印刷版のバンク形成用組成物に含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後におけるフレキソ印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0076】
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後でフレキソ印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、フレキソ印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンのフレキソ印刷及びバンクの均一塗布が可能となる。また、質量変化率が10質量%以下であれば、フレキソ印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となるので、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0077】
本実施の形態における有機発光インクとして、特に制限されるものではないが、有機発光材料とバインダー成分、溶剤よりなるものを用いることができる。印刷品位、生産性、チキソトロピー性などの向上のために、必要に応じて各種添加剤を添加して用いてもよい。
【0078】
有機発光材料としては、高分子型の有機発光材料が用いられ、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポリフィレン系、キナクリドン系、N、N‘−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニリレン系やポリフルオレンといった高分子系材料などが挙げられる。
【0079】
有機発光インクインクが紫外線硬化型である場合、バインダー樹脂成分としては、ラジカル重合性の化合物に、紫外線照射により活性カチオン種を発生しうるカチオン重合開始剤を配合したものが、好適に用いられる。
【0080】
また、有機発光インク中の溶剤としては、前述した高分子系材料を溶解させることができるものであれば特に制限されるものではないが、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤などが挙げられ、これらの溶剤を単独で用いてもよく、これらの混合溶媒を用いてもよい。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族系溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好ましい。
【0081】
有機発光インク中の溶剤は、ポリマー成分の溶解性や印刷工程中での乾燥性などにより決定される。芳香族系溶剤の中から選ばれる少なくとも1種類の溶剤成分を、溶剤全体量の20質量%以上100質量%以下含有していることが好ましい。前記溶剤成分の含有量が質量%以上100質量%以下であれば、有機発光インク用途で用いられる有機発光材料を十分に溶解又は分散することができる。
【0082】
照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の膜厚は特に制限はされないが、具体的には、1nm〜10μmの範囲の膜厚とすることが好ましい。該有機発光層の膜厚を10μm以下とすることが、生産性の観点から好ましい。また、該有機発光層の膜厚を1nm以上とすることが、総合的性能の観点から好ましい。該有機発光層の膜厚としては、総合的性能の観点から、5nm〜5μmの範囲内であることがより好ましい、10nm〜1μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0083】
本実施の形態における印刷版の有機発光インクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後における印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0084】
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後で印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷及び有機発光インクの均一塗布が可能となる。また、質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となるので、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0085】
レーザー彫刻によりフレキソ印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成されるパターンの深さは、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上あれば、フレキソ印刷版から転写されるバンク形成用組成物や有機発光インクを被印刷基板上に保持することができ、1,000μm以下であれば印刷パターンが印刷工程中に変形したり、破壊されたりすることがないため好ましい。
【0086】
本実施の形態におけるバンクの用途としては、インクジェット印刷法によるRGB画素形成用途に制限されるものではなく、RGB画素をその他の印刷法、例えば、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などで形成する場合にも利用することが可能である。
【0087】
本実施の形態のバンクの製造方法は、フレキソ印刷版上のバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写し、転写されたバンク形成用組成物中の溶剤を乾燥除去して、又は転写されたバンク形成用組成物に光を照射して硬化させて、
被印刷基板上にバンク形成用組成物を固定化することによってバンクを製造する方法であって、
前記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いてバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写する、方法である。
【0088】
本実施の形態の製造方法における、フレキソ印刷版上のバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、溶液供給ロールなどでバンク形成用組成物を供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面のバンク形成用組成物を被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0089】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上にバンク形成用組成物を固定化する方法の第1の態様としては、前記方法により転写されたバンク形成用組成物中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上にバンク形成用組成物を固定化する方法である。
バンク形成用組成物中の溶剤を乾燥除去して、バンク形成用組成物を固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0090】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上にバンク形成用組成物を固定化する方法の第2の態様としては、前記方法により転写されたバンク形成用組成物を熱硬化して、被印刷基板上にバンク形成用組成物を固定化する方法である。
バンク形成用組成物を熱硬化して固定化する方法としては、例えば、バンク形成用組成物に配合したポリアミック酸などの重合性化合物を熱硬化する方法などが挙げられる。
【0091】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上にバンク形成用組成物を固定化する方法の第3の態様としては、前記方法により転写されたバンク形成用組成物に光を照射して硬化させて、被印刷基板上にバンク形成用組成物を固定化する方法である。
バンク形成用組成物に光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、バンク形成用組成物に配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法などが挙げられる。
【0092】
本実施の形態の照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の製造方法は、印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された有機発光インクに光を照射して硬化させて、
被印刷基板上に有機発光インクを固定化することによって照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法であって、
前記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて有機発光インクを被印刷基板上に転写する、方法である。
【0093】
本実施の形態の製造方法における、印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、例えば、凹凸のある印刷版の凸部の表面に、溶液供給ロールなどで有機発光インクを供給し、次に、印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の有機発光インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0094】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法の第1の態様としては、前記方法により転写された有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法である。
有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、有機発光インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0095】
本実施の形態の製造方法における、有機発光インクを固定化する方法の第2の態様としては、前記方法により転写された有機発光インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法である。
有機発光インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、有機発光インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法や有機発光インクに配合したラジカル重合性の化合物に、紫外線照射して硬化させる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0096】
本実施の形態をさらに詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本実施の形態の説明及びそれによって得られる効果などを具体的に示すものであって、本実施の形態の範囲をなんら制限するものではない。なお、以下の実施例及び比較例における諸特性は、下記の方法に従って測定した。
【0097】
<測定方法>
1.ポリカーボネートジオールのOH価
無水酢酸12.5gをピリジン50mlでメスアップしアセチル化試薬を調製した。100mlナスフラスコに、サンプルを1.0g精秤した。アセチル化試薬2mlとトルエン4mlをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間撹拌加熱した。蒸留水1mlをホールピペットで添加、さらに10分間加熱撹拌した。
2〜3分間冷却後、エタノールを5ml添加し、指示薬として1%フェノールフタレイン/エタノール溶液を2〜3滴入れた後に、0.5mol/lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。
ブランク試験としてアセチル化試薬2ml、トルエン4ml、蒸留水1mlを100mlナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、同様に滴定を行った。この結果をもとに、下記計算式(i)を用いてOH価を計算した。
【0098】
[数1]
OH価(mg−KOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e (i)
a:サンプルの滴定量(ml)
b:ブランク試験の滴定量(ml)
e:サンプル質量(g)
f:滴定液のファクター
【0099】
2.ポリカーボネートジオールの数平均分子量
実施例及び比較例中のポリカーボネートジオールの末端は、13C−NMR(270MHz)の測定により、実質的に全てがヒドロキシル基であった。また、ポリカーボネートジオール中の酸価をKOHによる滴定により測定したところ、実施例及び比較例の全てにおいて、酸価が0.01以下であった。
そこで、得られたポリマーの数平均分子量を下記計算式(ii)により求めた。
【0100】
[数2]
数平均分子量Mn=2/(OH価×10−3/56.11) (ii)
【0101】
3.ポリカーボネートジオールの共重合組成
ポリカーボネートジオールの共重合組成は、以下のように測定した。
100mlのナスフラスコにサンプルを1g取り、エタノール30g、水酸化カリウム4gを入れて、100℃で1時間反応した。室温まで冷却後、指示薬として1%フェノールフタレイン/エタノール溶液を2〜3滴添加し、塩酸で中和した。冷蔵庫で1時間冷却後、沈殿した塩を濾過で除去し、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。ガスクロマトグラフィー分析は、カラムとしてDB−WAX(J&W製)をつけたガスクロマトグラフィーGC−14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内標として、検出器をFIDとして行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温した。
【0102】
4.フレキソ印刷原版の質量変化率
溶剤に対する質量変化率については、フレキソ印刷原版を1cm×2cmに切り、常温の各溶剤中に24hr浸漬させ、下記計算式(iii)を用いて質量変化率を求めた。
【0103】
[数3]
質量変化率(%)={(浸漬後の質量−浸漬前の質量)/浸漬前の質量}×100
(iii)
【0104】
5.フレキソ印刷原版のレーザー彫刻性
炭酸ガスレーザー彫刻機(出力12ワット、商標Laser Pro Venus、GCC社製)を用いてフレキソ印刷原版のレーザー彫刻を行った。彫刻は、200μm幅の凸線による線画を含む印刷パターンを作成して実施した。彫刻深さは400μmとした。レーザー彫刻による粘稠性液状カス発生の有無及び線画の鮮明性を目視判定した。
【0105】
〔合成例1〕
分留頭を備えた300ml四口フラスコに、1,20−エイコサンジオール100g(0.32mol)、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタン0.062gを加えた。このフラスコを、フラスコの内温が150〜155℃、圧力が7〜8kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、11時間反応した。その後、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を追加し、フラスコの内温155℃、圧力6〜7kPaで7時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。その後さらに、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を追加し、同様にしてフラスコの内温155℃、圧力5〜6kPaで5時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。この反応により、室温で固体のポリカーボネートジオールが102g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は45.3(数平均分子量Mn=2,476)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール65.1g、リン酸モノブチル0.03gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート3.18g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.08g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.002gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.77g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ、二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート23.61g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート7.08g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.12g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.43g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.12g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.71g、ベンゾフェノン1.19g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.71g、リン酸トリフェニル2.13g、サノールLS−785(三共株式会社)1.20gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0106】
〔合成例2〕
合成例1のエチレングリコールフェニルエーテルメタクリレートをラウリルメタクリレートに変更し、以下に示すような樹脂組成物を得た。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコに合成例1で得られたポリカーボネートジオール34.5g、リン酸モノブチル0.02gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート1.61g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.04g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート1.44g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ、二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、ラウリルメタクリレート12.54g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート3.59g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.07g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)2.90g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)0.63g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.38g、ベンゾフェノン0.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.38g、リン酸トリフェニル1.13g、サノールLS−785(三共株式会社)0.63gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0107】
〔合成例3〕
分留頭を備えた300ml四口フラスコに、1,12−ドデカンジオール26g(0.13mol)、1,20−エイコサンジオール40g(0.13mol)、エチレンカーボネート24g(0.27mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタン0.068gを加えた。このフラスコを、フラスコの内温が145〜150℃、圧力が5〜6kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、8時間反応した。その後、エチレンカーボネート24g(0.27mol)を追加し、フラスコの内温150℃、圧力4〜5kPaで7時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。その後さらに、エチレンカーボネート24g(0.27mol)を追加し、同様にしてフラスコの内温155℃、圧力4〜5kPaで5時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。再度エチレンカーボネート24g(0.27mol)を追加し、同様にしてフラスコの内温155℃、圧力4〜5kPaで2時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。この反応により、室温で固体のポリカーボネートジオールが67g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は47.3(数平均分子量Mn=2,371)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール40.1g、リン酸モノブチル0.04gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート2.04g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.05g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2.5時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート1.66g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2.5時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ、二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、ラウリルメタクリレート14.57g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート4.37g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.07g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)3.35g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)0.73g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.44g、ベンゾフェノン0.73g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.44g、リン酸トリフェニル1.31g、サノールLS−785(三共株式会社)0.73gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0108】
〔合成例4〕
分留頭を備えた300ml四口フラスコに、10−オキサナノデカン−1,19−ジオール193g(0.64mol)、エチレンカーボネート59g(0.67mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.11g加えた。このフラスコを、フラスコの内温が150〜155℃、圧力が4〜6kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、11時間反応した。その後、エチレンカーボネート59g(0.67mol)を追加し、フラスコの内温150℃、圧力4〜6kPaで反応した後、圧力を0.1kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去するという操作を3度繰り返し行った。1回目、2回目、3回目の反応時間はそれぞれ6時間、7時間、4時間であった。この反応により、室温で固体のポリカーボネートジオールが195g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は51.1(数平均分子量Mn=2,196)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール96.6g、リン酸モノブチル0.04gを入れ、95℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート5.74g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.11g、アジピン酸0.02g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.002gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート4.09g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.002gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ、二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、ラウリルメタクリレート35.38g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート10.62g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.18g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)8.18g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.78g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン1.07g、ベンゾフェノン1.77g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1.06g、リン酸トリフェニル3.19g、サノールLS−785(三共株式会社)1.78gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0109】
〔合成例5〕
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3を充填した、充填高さ300mm、内径30mmの蒸留塔、及び分留頭を備えた500ml四口フラスコに、ジエチレングリコール214g(2.01mol)、エチレンカーボネート186g(2.12mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.177g加えた。このフラスコを、フラスコの内温が145〜150℃、圧力が2.5〜3.5kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、22時間反応した。その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温を170℃に上げ、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったジエチレングリコール及びエチレンカーボネートを1時間かけて留去した。その後、フラスコの内温170℃、圧力0.1kPaでさらに5時間反応した。この反応により、室温で粘稠な液状のポリカーボネートジオールが174g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は60.9(数平均分子量Mn=1,843)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール65.0g、リン酸モノブチル0.05gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.77g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ、二重結合を有するポリマーが得られたことを赤外分光分析により確認した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート10.74g、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.96g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.21g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.21g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.17g、サノールLS−785(三共株式会社)1.21gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の樹脂組成物を得た。
【0110】
〔比較合成例1〕
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3を充填した、充填高さ300mm、内径30mmの蒸留塔、及び分留頭を備えた500ml四口フラスコに、1,4−ブタンジオール197.4g(2.19mol)、エチレンカーボネート202.6g(2.30mol)を仕込み、80℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.033g加えた。このフラスコを、フラスコの内温が139〜145℃、圧力が2〜3kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながらオイルバスで加熱し、計23時間反応した。その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温145℃、圧力を1.5kPaにして、フラスコ内に残った、1,4−ブタンジオール及びエチレンカーボネートを1時間かけて留去した。その後、フラスコの内温145〜185℃、圧力0.08〜0.3kPaで、さらに7.5時間反応した。この反応により、室温で固体状のポリカーボネートジオールが128g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は45.0(平均数分子量Mn=2,493)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール50.2g、リン酸モノブチル0.009gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート2.36g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.05g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.09g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート18.22g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート5.47g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.09g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)4.19g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)0.91g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.55g、ベンゾフェノン0.91g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.55g、リン酸トリフェニル1.64g、サノールLS−785(三共株式会社)0.91g、顔料GreenAG(日本化薬株式会社)0.006gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0111】
〔比較合成例2〕
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにポリカーボネートジオール「T6002」(OH価=56、数平均分子量Mn=2,004 旭化成ケミカルズ株式会社)61.67g、トリレンジイソシアネート3.93g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.61g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート22.74g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート6.82g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.11g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.23g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.14g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.68g、ベンゾフェノン1.14g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.68g、リン酸トリフェニル2.05g、サノールLS−785(三共株式会社)1.14g、顔料GreenAG(日本化薬株式会社)0.007gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0112】
(フレキソ印刷原版の作製)
合成例1〜5、比較合成例1〜2で得られた樹脂組成物の各々を用いて、下記の方法でフレキソ印刷原版を作製した。
12×11×0.3cmのガラス板にジエチレングリコールを薄く塗布した後、PETフィルムを乗せ、ヘラでこすり密着させた。そのフィルム上に両面シールにより固定させたスポンジ枠で作成した1辺10cmの四角枠と、その枠外の四隅に厚さ3mmのアルミスペーサーを置いた。この作成した治具を約90℃のホットプレート上に置いた。
治具の枠内に前記各樹脂組成物を注いだ後、ジエチレングリコールを塗布しPETフィルムを乗せたガラス板を、PETフィルム面が樹脂組成物に接触するようにかぶせた。その後に上下のガラス板をクリップで挟み固定した。
この治具について高圧水銀灯(HC−98、センエンジニアリング株式会社)を用いて、500mJ/cm2(照度33.7mW/cm2、時間14.8秒)露光した後、治具面を逆にし、さらに500mJ/cm2露光した。これを両面もう一度ずつ行い、トータルで2,000mJ/cm2露光してフレキソ印刷原版を作成した。得られたフレキソ印刷原版のレーザー彫刻性を表1に示す。
【0113】
〔実施例1〕
(バンク形成用ポリアミック酸組成物の調製)
γ−ブチロラクトンとN−メチル−2−ピロリドンの混合溶剤中で、ピロメリット酸二無水物(0.49モル当量)、4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル(0.95モル当量)、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサン(0.05モル当量)を反応させ、ポリアミック酸溶液(ポリマー濃度20質量%)を得た。このポリアミック酸溶液を200g取り出し、それにγ−ブチロラクトン186gとブチルセロソルブ64gを添加してポリマー濃度10質量%のバンク形成用ポリアミック酸組成物を得た。
【0114】
(バンクの印刷評価)
合成例1の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版1にレーザー彫刻によりパターンを描画したフレキソ印刷版1を用いて、バンク形成用ポリアミック酸の印刷評価を実施した。印刷には卓上型校正機(英国、KR社製、商標「Flexiploofer100」)を用い、版胴上に前記フレキソ印刷版1を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板の表面に、真空蒸着法によって厚さ0.1μmのITO膜(陽極)を形成後、UV−オゾン洗浄を施し、有機物などの付着物を除去したものを用いた。当該基板のITO膜側の表面に、前記バンク形成用ポリアミック酸組成物を印刷した後、145℃でプリベークを行った後、290℃に加熱して熱硬化を行い、バンクを製造した。
【0115】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版1から作製した試験サンプルを、N−メチル−2−ピロリドン/γ−ブチロラクトン/ブチルセロソルブ=1/1/1(質量比)混合溶剤中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0116】
〔実施例2〕
(バンクの印刷評価)
合成例2の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版2にレーザー彫刻により印刷パターンを描画したフレキソ印刷版2を用いて、実施例1と同様に印刷評価を実施した。焼成後のバンクの膜厚が、1μmとなるように印刷、乾燥、焼成を行った結果、焼成後のバンクの膜厚は1μmで均一であった。
【0117】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版2から作製した試験サンプルを、N−メチル−2−ピロリドン/γ−ブチロラクトン/ブチルセロソルブ=1/1/1(質量比)混合溶剤中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0118】
〔実施例3〕
(バンクの印刷評価)
合成例3の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版3にレーザー彫刻により印刷パターンを描画したフレキソ印刷版3を用いて、実施例1と同様に印刷評価を実施した。焼成後のバンクの膜厚が、1μmとなるように印刷、乾燥、焼成を行った結果、焼成後のバンクの膜厚は1μmで均一であった。
【0119】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版3から作製した試験サンプルを、N−メチル−2−ピロリドン/γ−ブチロラクトン/ブチルセロソルブ=1/1/1(質量比)混合溶剤中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0120】
〔実施例4〕
(バンクの印刷評価)
合成例4の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版4にレーザー彫刻により印刷パターンを描画したフレキソ印刷版4を用いて、実施例1と同様に印刷評価を実施した。焼成後のバンクの膜厚が、1μmとなるように印刷、乾燥、焼成を行った結果、焼成後のバンクの膜厚は1μmで均一であった。
【0121】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版4から作製した試験サンプルを、N−メチル−2−ピロリドン/γ−ブチロラクトン/ブチルセロソルブ=1/1/1(質量比)混合溶剤中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0122】
〔比較例1〕
(印刷評価)
比較合成例1の樹脂組成物から得られた印刷原版(ア)にレーザー彫刻により印刷パターンを描画した印刷版(ア)を用いて、実施例1と同様にして印刷、乾燥、焼成を行った結果、焼成後のバンクの膜厚は約1μmであるものの、不均一でムラが目立つものであった。
【0123】
(質量変化率の測定)
印刷原版(ア)から作製した試験サンプルを、N−メチル−2−ピロリドン/γ−ブチロラクトン/ブチルセロソルブ=1/1/1(質量比)混合溶剤中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0124】
〔比較例2〕
(印刷評価)
比較合成例2の樹脂組成物から得られた印刷原版(イ)にレーザー彫刻により印刷パターンを描画した印刷版(イ)を用いて、実施例1と同様にして印刷、乾燥、焼成を行った結果、焼成後のバンクの膜厚は約1μmであるものの、不均一でムラが目立つものであった。
【0125】
(質量変化率の測定)
印刷原版(イ)から作製した試験サンプルを、N−メチル−2−ピロリドン/γ−ブチロラクトン/ブチルセロソルブ=1/1/1(質量比)混合溶剤中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】

【0127】
〔実施例5〕
(照明用有機発光層の印刷評価)
燐光発光性高分子(芳香族アミン(ホール輸送材料)とホウ素系分子(電子輸送材料)とイリジウム錯体(燐光発光色素)の三元系高分子:poly[viTPD−viTMB−viIr(ppy)2(acac)])を脱水キシレンに添加し、3.0質量%となるように照明用有機発光インクを作製した。
合成例5の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版5にレーザー彫刻によりパターンを描画したフレキソ印刷版5を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。印刷には卓上型校正機(英国、KR社製、商標「Flexiploofer100」)を用い、版胴上に前記フレキソ印刷版5を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷体としては、ITO付基板に中間層としてバイエル社製「バイトロンP」を予め塗布したものを用いた。前記インクを印刷した後、窒素雰囲気下、100℃で30分間乾燥を行い、照明用有機発光層を形成した。当該発光層の膜厚は90±3nmという高い平滑性を有していた。
【0128】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版5から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。質量変化率は0.6質量%であった。
【0129】
〔比較例3〕
(印刷評価)
比較合成例1の樹脂組成物から得られた印刷原版(ウ)にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版(ウ)を用いて、実施例5と同様にして印刷、乾燥を行った結果、乾燥後の有機発光層の膜厚は約90±20nmと極めて不均一であった。
【0130】
(質量変化率の測定)
印刷原版(ウ)から作製した試験サンプルを、キシレン及びメチルエチルケトン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。質量変化率は、それぞれ39質量%及び78%であった。
【0131】
本実施の形態におけるフレキソ印刷版を用いると、溶剤膨潤によるフレキソ印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物であるバンクの厚み変動を縮小させることができる。本実施の形態によりRGB画素性能と直結するバンクの厚みを高精度で制御することが可能である。また、本実施の形態における印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である有機発光層の厚み変動を縮小させることができる。本実施の形態により照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源性能と直結する有機発光層の厚みを高精度で制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のバンクの製造方法により、高精度でバンクを製造する方法を提供することが可能である。また、本発明の照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の製造方法により、高精度で有機発光層を製造する方法を提供することが可能である。また、該有機発光層を含む照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷版上のバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写し、転写されたバンク形成用組成物中の溶剤を乾燥除去して、又は転写されたバンク形成用組成物に光を照射して硬化させて、
被印刷基板上に固定化することによってバンクを製造する方法であって、
下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いてバンク形成用組成物を被印刷基板上に転写する、バンクの製造方法。
【化1】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
【化2】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記樹脂組成物が、
前記ポリカーボネートジオールと、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造されるポリマー(a)、及び/又は
前記ポリカーボネートジオールと、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造されるポリマー(a)を含有する、請求項1に記載のバンクの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、さらに、重合性不飽和基を有し、数平均分子量が5,000未満である有機化合物(b)を含有する、請求項1又は2に記載のバンクの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、さらに、無機系微粒子(c)を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバンクの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバンクの製造方法。
【請求項6】
前記フレキソ印刷版が、フレキソ印刷原版表面に印刷パターンをレーザー彫刻することにより得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバンクの製造方法。
【請求項7】
前記フレキソ印刷版が、シート状又は円筒状に形成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバンクの製造方法。
【請求項8】
前記フレキソ印刷版が、前記バンク形成用組成物中の前記溶剤に対する耐性を溶剤浸漬膨潤テストで評価した場合に、前記溶剤への浸漬前後で10質量%以下の質量変化率を示す、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバンクの製造方法。
【請求項9】
印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された有機発光インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に固定化することにより得られる有機発光層の製造方法であって、
下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて有機発光インクを被印刷基板上に転写する、照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の製造方法。
【化3】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
【化4】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表す。)
【請求項10】
印刷版が、フレキソ版、樹脂凸版、又はオフセット、ドライオフセット、反転オフセット若しくはグラビアオフセットに用いるブランケットである、請求項9に記載の照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の製造方法。

【公開番号】特開2009−70583(P2009−70583A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234570(P2007−234570)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】