説明

バンドパスフィルタ及びバンドパスフィルタのキャリブレーション方法

【課題】BPFを構成するOTAの個数を削減し,低消費電力で高次のバンドパスフィルタを提供する。
【解決手段】バンドパスフィルタは,入力信号が入力されるハイパスフィルタ(14)と,ハイパスフィルタの出力が反転入力端子に入力され,反転入力端子と非反転入力端子間の入力電圧を増幅して出力信号を出力端子に出力するアンプ(10)と,アンプの非反転出力端子と反転入力端子との間に接続された第1抵抗(R2)と,反転入力端子に第1端子が接続された第1キャパシタ(C2)と,アンプの非反転出力端子の出力信号の極性を反転し,当該反転した信号をキャパシタの第2端子に出力する反転アンプ(12)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,バンドパスフィルタ及びバンドパスフィルタのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バンドパスフィルタは,無線通信装置などに設けられ,例えば,アンテナで受信した受信信号のうち所望の周波数帯域の高周波信号を抽出する。従来は,SAWフィルタによるバンドパスフィルタが一般的である。しかし,SAWフィルタは,集積回路内に形成することが困難であり,ディスクリートな回路素子として集積回路装置に外付けされる。そのため,SAWフィルタは無線通信装置のコストアップの要因の1つとなっている。
【0003】
一方,アクティブフィルタやスイッチトキャパシタフィルタが,オンチップフィルタとして注目されている。たとえば,以下の特許文献や非特許文献などである。
【0004】
理論的には,ハイパスフィルタにローパスフィルタを組み合わせることによりバンドパスフィルタを構成することができる。
【0005】
非特許文献4では,2次のバンドパスフィルタ(BPF)を2個のOTA(Operational Transconductance Amplifier)で構成し,よって,5次のバンドパスフィルタ(BPF)を10個のOTAで構成しているが,OTAの数が多いためその消費電力が23.5mWと大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−301182号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Williams & Fred Taylor, "Electronic Filter Design Handbook 4th edition", McGRAW-HILL, page 207, Chapter 5
【非特許文献2】S. Amico, V. Giannini and A. Baschirotto, "A 4th-Order Active-Gm-RC Reconfigurable (UMTS/WLAN) Filter," IEEE J. Solid-State Circuit, pp. 1630-1637, 2006
【非特許文献3】H. Kondo, M. Sawada, N. Murakami and S. Masui, "Design of Complex BPF with Automatic Digital Tuning Circuit for Low-IF Receivers" IEICE Trans. Electron., pp. 1304-1310, 2009
【非特許文献4】Tien-Yu Lo, Chuan-Cheng Hsiao, Kang-Wei Hsueh, and Hung-Sung Li, "A 1-V 60MHz Bandpass Filter with Quality-Factor Calibration in 65nm CMOS,” Proc. Of IEEE Asia Solid-Sate Circuit Conference, pp. 53-56, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,急峻な特性を持つ高次のバンドパスフィルタの消費電力を削減することは容易ではない。例えば,BPFのQ値を高くするためには,BPFを構成するOTAのユニティゲイン周波数fu(Hz)をBPFの中心周波数fcの10倍以上にすることが必要となる。しかし,OTAの消費電力は一般に,ユニティゲイン周波数fuを高くすると増加する。それはOTAを高い周波数でも動作可能にするためには,例えばトランジスタのドレイン電流を大きくしてgm(トランスコンダクタンス)を大きくする必要があるからである。
【0009】
そこで,本発明の目的は,低消費電力で高いQ値をもつ高次のバンドパスフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
バンドパスフィルタの第1の側面は,
入力信号が入力されるハイパスフィルタと,
前記ハイパスフィルタの出力が反転入力端子に入力され,前記反転入力端子と非反転入力端子間の入力電圧を増幅して出力信号を出力端子に出力するアンプと,
前記アンプの非反転出力端子と前記反転入力端子との間に接続された第1抵抗と,
前記反転入力端子に第1端子が接続された第1キャパシタと,
前記アンプの前記非反転出力端子の出力信号の極性を反転し,当該反転した信号を前記キャパシタの第2端子に出力する反転アンプとを有する。
【発明の効果】
【0011】
Q値を高くし且つ消費電力を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態におけるバンドパスフィルタの回路図である。
【図2】図1のバンドパスフィルタの特性を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における差動信号に適用したバンドパスフィルタの回路図である。
【図4】図2の差動アンプ10を構成するOTAの回路図である。
【図5】比較例のバンドパスフィルタの回路図である。
【図6】第2の実施の形態におけるバンドパスフィルタの回路図である。
【図7】第2の実施の形態における差動構成のバンドパスフィルタの回路図である。
【図8】第3の実施の形態におけるバンドパスフィルタの回路図である。
【図9】第3の実施の形態における差動構成のバンドパスフィルタの回路図である。
【図10】第4の実施の形態におけるバンドパスフィルタの回路図である。
【図11】第4の実施の形態における差動構成のバンドパスフィルタの回路図である。
【図12】容量可変キャパシタC3を利用した中心周波数のキャリブレーション用の回路図である。
【図13】図12のキャリブレーション用のリング発振器の発振動作を説明する図である。
【図14】図3,7,9の第1,第2,第3の実施の形態の差動構成のバンドパスフィルタをアドミッタンスYで構成した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は,第1の実施の形態におけるバンドパスフィルタの回路図である。このバンドパスフィルタは,入力信号Vinが入力されるハイパスフィルタ14と,ハイパスフィルタ14の出力が反転入力端子INmに入力されるアンプ10とを有する。図1は単相構成であるのでアンプ10の非反転入力端子INpには基準電圧(グランド)Vssが印加されている。アンプ10は,例えばGm RC OTAなどのオペレーションアンプであり,反転入力端子INmに入力される入力信号の電圧を増幅し,増幅された電圧を有する出力信号Voutを出力端子OUT(非反転出力端子)に出力する。さらに,アンプの非反転出力端子OUTと反転入力端子INmとの間に接続された第1抵抗R2と,反転入力端子INmに第1端子が接続された第1キャパシタC2と,アンプの非反転出力端子OUTの出力信号の極性を反転し,当該反転した信号を前記キャパシタの第2端子に出力する反転アンプ12とを有する。
【0014】
ハイパスフィルタ14は,第2キャパシタC1と,それと基準電圧Vssとの間に接続された第2抵抗R1とを有する。また,アンプ10と第1抵抗R2と第1キャパシタC2と反転アンプ12とで,ローパスフィルタ16が構成されている。すなわち,図1に示されているバンドパスフィルタは,ハイパスフィルタ14とローパスフィルタ16とからなる。
【0015】
ハイパスフィルタ14は,ある周波数以上の信号を通過させ,一方,ローパスフィルタ16はある周波数以下の信号を通過させる。これら2種類のフィルタを組み合わせることで,ある周波数を中心とする帯域の信号のみを通過させるバンドパスフィルタにすることができる。
【0016】
図2は,図1のバンドパスフィルタの特性を示す図である。図2には,図1のローパスフィルタ16の特性LPF0と,ハイパスフィルタ14の特性HPFと,バンドパスフィルタの特性BPFとが示されている。横軸が周波数,縦軸がフィルタの利得に対応する。ローパスフィルタ16のカットオフ周波数fcutは,利得が-3dBに低下する周波数である。一方,ハイパスフィルタ14は,特性HPFが示すように,このカットオフ周波数fcutより大きい周波数帯域で利得が大きい。そして,ローパスフィルタLPF0とハイパスフィルタHPFを組み合わせたバンドパスフィルタBPFは,中心周波数fcentの両側の狭い帯域の信号を通過させる。この中心周波数fcentは,ローパスフィルタのカットオフ周波数fcutとほぼ等しくなる。
【0017】
図1に示された第1の実施の形態のバンドパスフィルタは,単相信号に対応した構成であるが,以下のとおり差動信号にも適用することができる。
【0018】
図3は,第1の実施の形態における差動信号に適用したバンドパスフィルタの回路図である。図中,差動アンプ10の非反転入力端子(正極入力端子)に接続される素子を正側とし,反転入力端子(負極入力端子)に接続される素子を負側と称する。
【0019】
バインドパスフィルタは,差動入力信号Vin+,Vin-が,ハイパスフィルタ14の第2の正側及び負側キャパシタC1の一方の電極に入力される。そして,第2の正側及び負側キャパシタC1の他方の電極が,差動アンプ10の非反転入力端子(正極入力端子)と反転入力端子(負極入力端子)とに接続される。
【0020】
差動アンプ10は,例えばOTA(Operational Transconductance Amplifier)である。差動アンプ10の非反転出力端子(正極出力)と反転入力端子(負極入力)との間には,第1の負側抵抗R2が接続され,反転入力端子(負極入力)には第1の負側キャパシタC2の一方の端子が接続されている。そして,第1の負側キャパシタC2の他方の端子は差動アンプ10の反転出力端子(負極出力)に接続される。
【0021】
上記と同様に,差動アンプ10の反転出力端子(負極出力)と非反転入力端子(正極入力)との間に第1の正側抵抗R2が接続され,非反転入力端子(正極入力)には第2の正側キャパシタC2の一方の端子が接続され,他方の端子は非反転出力端子(正極出力)に接続される。
【0022】
このように,一方の端子が非反転入力(正極入力)に接続された第1の正側キャパシタC2の他方の端子を非反転出力端子(正極出力)に接続し,一方の端子が反転入力(負極入力)に接続された第1の負側キャパシタC2の他方の端子を反転出力端子(負極出力)に接続することは,出力差動信号が反転されることを意味するので,図1のようにアンプ10の出力を反転アンプ12で極性を反転して第1キャパシタC2に接続したことと等価である。
【0023】
そして,差動アンプの出力端子対には,差動出力信号Vout+,Vout-が出力される。図3の回路図には,差動出力信号Vout+,Vout-の出力対には,それぞれ負荷容量CLが示されている。
【0024】
図4は,図2の差動アンプ10を構成するOTAの回路図である。図中,左側がOTAを示し,右側がコモンモードフィードバック回路CMFBを示す。左側のOTAは,Active Gm RC アンプである。
【0025】
すなわち,OTAは,バイアス電圧Vbiasがゲートに供給されているPチャネルMOSトランジスタM5からなる電流源回路と,差動入力InP,InMがゲートに入力されるPチャネルMOSトランジスタM1,M2と,コモンモードフィードバック電圧がゲートに供給されるNチャネルMOSトランジスタM3,M4とで差動回路を有する。さらに,OTAは,PチャネルMOSトランジスタM7,M8からなる電流源回路と,トランジスタM1,M2のドレインがそれぞれゲートに接続されたソース接地のNチャネルMOSトランジスタM6,M9とからなる出力段回路と,トランジスタM1,M2のドレインと出力端子OutP,OutMとの間にそれぞれ設けられたCR回路Cc,Rcとを有する。
【0026】
さらに,コモンモードフィードバック回路CMFBは,OTAの出力信号OutP,OutMの平均電圧であるコモンモード電圧を生成する平均化回路20と,電源VDDと基準電圧のグランドVSSとの間に設けられ所望のコモンモード電圧Voc.desを生成する抵抗R10,R12とを有する。さらに,平均化回路20が生成する差動出力信号のコモンモード電圧がゲートに印加されるPチャネルMOSトランジスタM21と,所望のコモンモード電圧Voc.desがゲートに印加されるPチャネルMOSトランジスタM22と,NチャネルMOSトランジスタM23,M24とを有する。そして,トランジスタM21のドレイン電圧がフィードバック電圧VfbとしてOTAの負荷回路のトランジスタM3,M4のゲートに印加されている。
【0027】
このフィードバック電圧Vfbが上昇するとトランジスタM3,M4がより導通し,OTAの出力信号OutP,OutMとのコモンモード電圧を低下させ,Vfbが低下するとコモンモード電圧を上昇させる。その結果,OTAの出力信号OutP,OutMとのコモンモード電圧を,所望のコモンモード電圧Voc,desに一致させることができる。
【0028】
図1,3に示したバンドパスフィルタは,従来のバンドパスフィルタと以下の点で異なっている。ハイパスフィルタとローパスフィルタを組み合わせてバンドパスフィルタを構成する場合,一般に,ローパスフィルタのゲインが1になるユニティゲイン周波数fuを中心周波数fcentより十分に大きく(例えば中心周波数fcentの10倍)する必要がある。例えば,図2に示したユニティゲイン周波数fu1に対応する特性LPF1のようにである。このようにすることで,バンドパスフィルタの中心周波数fcentでのローパスフィルタの周波数特性をフラットにしてゲインを十分に大きくできるからである。
【0029】
ところが,ローパスフィルタを構成するOTAを高い周波数帯域まで動作可能にするためには,OTAを構成する増幅トランジスタのドレイン電流を大きくしてそのgmを高くする必要があり,消費電流の増大を招く。
【0030】
それに対して,図1,3に示したバンドパスフィルタでは,図2に示したとおり,ローパスフィルタ16のユニティゲイン周波数fu0を,バンドパスフィルタの中心周波数fcentの2〜3倍に下げている。つまり,ローパスフィルタ16のカットオフ周波数fcutとバンドパスフィルタの中心周波数fcentとが一致するようにしている。
【0031】
このユニティゲイン周波数をfu0のように低くできるということは,ローパスフィルタを構成するOTAが高い周波数帯域まで追従する必要がなく,トランジスタM5によるトランジスタM1,M2のドレイン電流を低くしてgmを下げることができることを意味する。つまり,本実施の形態では,OTAのトランジスタM5の電流量をユニティゲイン周波数fu0が中心周波数fcentの2〜3倍になる程度まで低くしている。これが省電力化できる第1の理由である。
【0032】
ただし,ユニティゲイン周波数fu0を低くすれば,中心周波数fcentでのゲインが低くなる。そこで,図1,3のバンドパスフィルタは,ローパスフィルタ16のOTAの出力を反転してキャパシタC2に供給している。このような構成にすることで,後述するQ値の数式が示すとおり,Q値を高くすることができ,中心周波数fcentでのゲインを十分に高くすることができる。
【0033】
さらに,省電力化の第2の理由は,2次のローパスフィルタ16を,1つのOTAで構成していることにある。2次のローパスフィルタは,2個のキャパシタを設けて伝達関数の分母のs変数の次数を2にする必要がある。そのため,非特許文献4では,OTAにフィードバック抵抗とフィードバックキャパシタを設けた構成を2組接続している。
【0034】
それに対して,図1,3のバンドパスフィルタでは,ローパスフィルタ16を構成する1個のOTAをGm RC アンプで構成し,OTA内のCR回路のキャパシタCcの容量を大きくして,そのインピーダンス1/jωCcを小さく,伝達関数H(s)の分母のs変数が2次になるようにしている。つまり,1個のOTAを用いてOTA内のキャパシタCcとOTAのフィードバックキャパシタC2とにより2次のローパスフィルタを構成している。そのため,1個のOTAで2次のローパスフィルタを構成でき,4次のローパスフィルタであれば2個のOTAで構成でき,非特許文献4に比較してOTAの個数を半分に減らすことができる。その結果,消費電流を半減することができる。
【0035】
さて,図1,図3に示したバンドパスフィルタの伝達関数は,次の式(1)のとおりである。ここで,A, Q, ωcは,フィルタゲイン,Q値,中心周波数であり,これらのパラメータは,式(2),(3),(4)に示すとおりである。
【0036】
【数1】

【0037】
【数2】

【0038】
【数3】

【0039】
【数4】

【0040】
そして,ωuは,式(5)のとおりアクティブGm RC フィルタ内のOTAのユニティゲイン周波数(radian/second)であり,OTAの伝達関数は,式(6)の通りである。
【0041】
【数5】

【0042】
【数6】

【0043】
式(1)の伝達関数は分子が1次のs変数を有するので,図1,3の回路がバンドパスフィルタの特性を有することが理解できる。また,式(1)の伝達関数の分母が2次のs変数を有するので,2次のバンドパスフィルタであることが理解できる。そして,式(6)のOTAの伝達関数では分母が1次のs変数を有するので,OTA内のRC回路のキャパシタCcが実効的なインピーダンスを有することも理解できる。
【0044】
さらに,差動アンプ10の出力の極性を反転する反転アンプ12を設けたことで,式(3)に示したQ値の分母の第3項は,-ωu R1 R2 C2と符号が負であり,Q値の分母が後述の比較例よりも小さくなっている。つまり,Q値が比較例よりも大きくなり,OTAの消費電力を下げてユニティゲイン周波数fu0を中心周波数fcentの2〜3倍にしてもバンドパス特性を急峻にして,中心周波数fcentでの十分なゲインを得ることができ,バンド幅を狭くすることができる。
【0045】
すなわち,式(2)に示されたゲインの式も同様に,分母の第3項は,-ωu R1 R2 C2と符号が負であり,ゲインが高くなっている。
【0046】
図5は,比較例のバンドパスフィルタの回路図である。この比較例は,図1の回路と違い,反転アンプ12が設けられていない。図5の比較例も,ハイパスフィルタ14と,アンプ10,フィードバック抵抗R2,キャパシタC2からなるローパスフィルタ16とを有し,バンドパスフィルタを構成する。
【0047】
しかし,この比較例のQ値は,上記の式(3)において,分母の第3項が,+ωu R1 R2 C2と符号が正である。このことは,図1,図3のバンドパスフィルタのQ値の式(3)のほうが,比較例のQ値よりも高いことを意味する。同様に,ゲインAも比較例より高くなる。
【0048】
以上のように,第1の実施の形態のバンドパスフィルタでは,パワーを大きくすることなくOTAのユニティゲイン周波数fu0を低くしたにもかかわらず,差動アンプの出力信号を反転して第1キャパシタC2に供給することでQ値をより大きくして,中心周波数fcentでの十分なゲインを持つことができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
図6は,第2の実施の形態におけるバンドパスフィルタの回路図である。このバンドパスフィルタも,ハイパスフィルタ14と,アンプ10と第2抵抗R2と第2キャパシタC2と反転オペアンプ12とからなるローパスフィルタ16とを有する。さらに,このバンドパスフィルタは,アンプ10の反転入力端子(負極入力)と基準電圧Vssとの間に容量を可変できる容量値可変キャパシタC3を有する。
【0050】
アンプ10の反転入力端子(負極入力)には,第2キャパシタC2が接続されている。そして,一般に,反転入力端子には寄生容量Cpが形成される。この寄生容量Cpにより第2キャパシタC2の実質的な容量値が変動し,バンドパスフィルタの中心周波数がばらつくという問題がある。
【0051】
そこで,第2の実施の形態では,前述の通り,アンプ10の反転入力端子と基準電圧Vssとの間に,容量を可変できる容量値可変キャパシタC3を有する。この容量値可変キャパシタC3の容量値を調整することで,中心周波数を所望の周波数に調整することができる。具体的な調整方法は後述する。
【0052】
図7は,第2の実施の形態における差動構成のバンドパスフィルタの回路図である。図7に示されるとおり,この差動構成のバンドパスフィルタは,差動アンプ10の両入力端子と基準電位のグランドVssとの間にそれぞれ,容量を可変できる容量値可変キャパシタC3を有する。この2つのキャパシタC3の容量値を調整することで,中心周波数を所望の周波数に設定することができる。
【0053】
図6,図7に示したバンドパスフィルタの伝達関数は,次の式(7)のとおりである。ここで,A, Q, ωcは,フィルタゲイン,Q値,中心周波数であり,これらのパラメータは,式(8),(9),(10)に示すとおりである。
【0054】
【数7】

【0055】
【数8】

【0056】
【数9】

【0057】
【数10】

【0058】
そして,ωuは,式(11)のとおりアクティブGm RC フィルタ内のOTAのユニティゲイン周波数(radian/second)であり,OTAの伝達関数は,式(12)の通りである。
【0059】
【数11】

【0060】
【数12】

【0061】
式(7)の伝達関数は,式(1)と同様に,分子が1次のs変数を有するので,図6,7の回路がバンドパスフィルタの特性を有することが理解できる。また,分子が2次のs変数を有するので2次のバンドパスフィルタであることがわかる。
【0062】
さらに,式(8)に示したQ値の分母の第3項も,-ωu R1 R2 C2と符号が負であり,Q値の分母が前述の比較例よりも小さくなっている。つまり,Q値が比較例よりも大きくなり,OTAの消費電力を下げてユニティゲイン周波数fu0を中心周波数fcentの2〜3倍にしてもバンドパス特性を急峻にして,中心周波数fcentでの十分なゲインを得ることができ,バンド幅を狭くすることができる。同様に,式(7)に示されたゲインの式も同様に,分母の第3項は,-ωu R1 R2 C2と符号が負であり,ゲインが高くなっている。
【0063】
[第3の実施の形態]
図8は,第3の実施の形態におけるバンドパスフィルタの回路図である。このバンドパスフィルタも,ハイパスフィルタ14と,アンプ10と第2抵抗R2と第2キャパシタC2と反転アンプ12とからなるローパスフィルタ16とを有する。さらに,このバンドパスフィルタは,ハイパスフィルタ14の第2抵抗R1をアンプ10の非反転入力端子(負極入力)とコモンモード電圧Vcmとの間に設けている。このコモンモード電圧Vcmに接続している構成は,図1,6と異なる。
【0064】
アンプ10の非反転入力端子のコモンモード電圧が不安定だと,バンドパスフィルタの利得が不安定になる。そこで,第2抵抗R1の他端にコモンモード電圧Vcmを供給することで,アンプ10の非反転入力端子のコモンモード電圧を安定化して,バンドパスフィルタの利得のばらつきを抑制することができる。
【0065】
図9は,第3の実施の形態における差動構成のバンドパスフィルタの回路図である。図7に示されるとおり,この差動構成のバンドパスフィルタは,差動アンプ10の両入力端子に接続されている第2の正側及び負側抵抗R2の他端に,コモンモード電圧VCMを印加している。これにより,差動アンプ10の両入力端子のコモンモード電圧を安定化し,バンドパスフィルタの利得の変化を抑制している。
【0066】
[第4の実施の形態]
図10は,第4の実施の形態におけるバンドパスフィルタの回路図である。第4の実施の形態は,図6の第2の実施の形態に設けられた調整用の容量可変キャパシタC3を使用して,バンドパスフィルタの中心周波数を調整する場合に適した回路である。中心周波数を測定しながら容量可変キャパシタC3の容量値を調整することは必ずしも効率的ではない。それに対して,第4の実施の形態では,容量値可変キャパシタC3の容量値の調整を容易にする。
【0067】
図10のバンドパスフィルタは,図6の回路に,スイッチSW1,SW2,SW3と,抵抗Rlpとを追加している。そして,スイッチSW1を抵抗Rlp側に切り替え,スイッチSW2をオフにして抵抗R1を反転入力端子から切り離し,さらに,スイッチSW3をオフにしてフィードバック抵抗C2を切り離す。この状態の回路は,入力抵抗Rlpとフィードバック抵抗R2をアンプ10の反転入力端子に設けたローパスフィルタである。
【0068】
このローパスフィルタの伝達関数は,次の式(13)のとおりである。また,そのパラメータは,式(14)〜(16)のとおりである。
【0069】
【数13】

【0070】
【数14】

【0071】
【数15】

【0072】
【数16】

【0073】
式(13)の伝達関数の分母にsがないので,ローパスフィルタであることが理解できる。
【0074】
そして,ローパスフィルタのカットオフ周波数は,バンドパスフィルタの中心周波数に一致するので,ローパスフィルタのカットオフ周波数が所望の周波数になるように容量可変キャパシタC3の容量値を調整する。
【0075】
しかも,後述するとおりスイッチSW1,SW2,SW3を制御して構成したローパスフィルタによってリング発振器を構成し,その発振周波数がカットオフ周波数に一致することを利用して,発振周波数が所望の周波数になるように容量可変キャパシタC3の容量調整を行う。さらに,調整用の容量可変キャパシタC3の容量値の調整に連動して,キャパシタC1,C2の容量値も,C1,C2,C3の容量値の比を保ちながら調整することが好ましい。
【0076】
図10において,スイッチSW1をキャパシタC1側に切り替え,スイッチSW2をオンにして抵抗R1を接続し,さらにスイッチSW3をオンにしてキャパシタC2をアンプ10の反転入力端子側に接続すれば,図6のバンドパスフィルタの回路になる。
【0077】
図11は,第4の実施の形態における差動構成のバンドパスフィルタの回路図である。図11では,図7の回路に,図10のスイッチSW1,SW1x,SW2,SW2x,SW3,SW3xと入力側の抵抗Rlpとを追加している。そして,スイッチSW1,SW1xを抵抗Rlp側に接続し,スイッチSW2,SW2x,SW3,SW3xをオフにすることで,差動構成のローパスフィルタが構成される。一方,スイッチSW1,SW1xをキャパシタC1側に接続し,スイッチSW2,SW2x,SW3,SW3xをオンにすることで,図7と同様の差動構成のバンドパスフィルタが構成される。
【0078】
図12は,容量可変キャパシタC3を利用した中心周波数のキャリブレーション用の回路図である。図12には,図11の回路のスイッチを制御してローパスフィルタの構成にした2つのローパスフィルタ30,31と,それらとリング状に接続されるコンパレータ32と,バッファ33とを有するリング発振器が示されている。すなわち,スイッチSW4でローパスフィルタ30の入力端子をバッファ33の出力端子側に接続して,これらの回路をリング構成にしている。
【0079】
一方,図11で説明したように,2つのローパスフィルタ30,31をそれぞれバンドパスフィルタの構成にし,スイッチSW4を入力端子In側に接続することで,通常のバイパスフィルタの構成になる。このバンドパスフィルタは,2次のバイカッドフィルタを2個直列に接続した4次のバンドパスフィルタになる。
【0080】
図12のキャリブレーション用の回路図では,リング発振器の発振周波数をカウントするカウンタ34と,そのカウント値Ncに応じてキャパシタC1,C2,C3の容量値を調整する制御信号を生成する演算器35とを有する。演算器は,リング発振器の発振周波数に対応するカウント値Ncが所望のカウント値の範囲Nmin〜Nmaxの間に入るように,容量可変キャパシタC3の容量値を制御する制御信号S35を生成する。つまり,リング発振器の発振周波数が所望の周波数になるよう容量値可変キャパシタC3の容量値が調整される。
【0081】
図13は,図12のキャリブレーション用のリング発振器の発振動作を説明する図である。ローパスフィルタ30,31は,入力信号の内,低周波数の信号を通過させ高周波数の信号を減衰させる。そして,入力信号と出力信号との間に位相ずれが生じ,その位相ずれは通過する信号の周波数に依存する。1つのローパスフィルタ30または31は,カットオフ周波数の信号に対して入力信号と出力信号との間に90°の位相ずれが生じる。そのため,2つのローパスフィルタ30,31を接続した場合,カットオフ周波数の信号は,2つのローパスフィルタを通過すると180°位相がずれる。180°の位相ずれは,差動信号が反転することを意味する。つまり,カットオフ周波数の信号だけがリング発振するのである。
【0082】
図13には,上側にローパスフィルタLPFの利得特性と,カットオフ周波数Fcutとの関係が示され,下側に周波数に対する2つのローパスフィルタLPFの位相ずれが示されている。上記したとおり,カットオフ周波数fcutの信号は,2つのローパスフィルタで180°位相がずれるので,その極性が反転する。そのため,図12の回路では,カットオフ周波数に等しい周波数をもつ信号だけがリング発振する。したがって,リング発振する信号の周波数は,ローパスフィルタのカットオフ周波数fcutに等しい。
【0083】
さらに,前述したとおり,ローパスフィルタのカットオフ周波数fcutは,バンドパスフィルタの中心周波数fcentと等しい。したがって,図12のリング発振している信号の周波数Ncを所望の周波数Nmin〜Nmaxの範囲になるように,可変容量キャパシタC3の容量値を調整することで,バンドパスフィルタの中心周波数fcentを所望の周波数の範囲内に調整することができる。
【0084】
図12において,モード選択信号36を調整モードにすると,スイッチSW1,SW2,SW3が前述のように制御されてローパスフィルタが構築され,さらに,スイッチSW4がそのローパスフィルタ30の入力端子をバッファ33の出力に接続し,リング発振器が構築される。このリング発振器では,2つのローパスフィルタ30,31と,コンパレータ32と,バッファ33とがリング状に接続されていて,差動信号を反転する接続にはなっていない。そして,ローパスフィルタ30,31のカットオフ周波数に等しい信号は,それぞれのローパスフィルタで90°位相がずれて,2つのローパスフィルタにより差動信号の位相が180°ずれる。その結果,リング接続された回路は,カットオフ周波数の信号に対してのみリング発振器を構成する。そして,カットオフ周波数に等しい信号だけがリング発振する。
【0085】
上記のリング発振器が構築された状態で,演算回路35が,リング発振器の発振周波数に対応するカウント値Ncが所望の周波数範囲になるように,容量値可変キャパシタC3の容量値を調整する制御信号S35を生成する。
【0086】
調整モードでは,可変容量キャパシタC3に加えて,第1キャパシタC2と第2キャパシタC1の容量も,キャパシタC3との容量比を維持しながら,キャパシタC3と同様にその容量値が増減される。第1,第2キャパシタC2,C1は,それぞれ調整前の初期状態では,所望の容量値に設計されている。そして,調整モードでは,第1,第2キャパシタC2,C1はローパスフィルタ回路から切り離されるが,可変容量キャパシタC3の調整と同時に,第1,第2キャパシタC2,C1の容量値もそれらの容量比を維持しながら調整される。
【0087】
図14は,図3,7,9の第1,第2,第3の実施の形態の差動構成のバンドパスフィルタをアドミッタンスYで構成した回路図である。図14のバンドパスフィルタは,正極入力端子VIPとOTAの正極入力端子VXPとの間及び負極入力端子VIMとOTAの負極入力端子VXMとの間にそれぞれ第1のアドミッタンスYsが設けられ,正極入力端子VXPと負極入力端子VXMとにそれぞれ第2のアドミッタンスYxが接続され, OTAの正極出力端子VOPと正極入力端子VXPとの間とOTAの負極出力端子VOMと負極入力端子VXMとの間にそれぞれ第3のアドミッタンスYPが設けられ,OTAの負極出力端子VOMと正極入力端子VXPとの間とOTAの正極出力端子VOPと負極入力端子VXMとの間にそれぞれ第4のアドミッタンスYNが設けられ,正極出力端子VOPと負極出力端子VOMにそれぞれ第5のアドミッタンスYLが接続されている。
【0088】
図3,9のバンドパスフィルタの場合は,上記の第1〜第5のアドミッタンスは,以下の式になる。
Ys=sC1
Yx=1/R1
YP=sC2
YN=1/R2
YL=sCL
一方,図7のバンドパスフィルタの場合は,上記の第1〜第5のアドミッタンスは,以下の式になる。
Ys=sC1
Yx=(R1+sC3)/(R1・sC3)
YP=sC2
YN=1/R2
YL=sCL
以上説明したとおり,第1〜第3の実施の形態のバンドパスフィルタは,ハイパスフィルタとローパスフィルタとを組み合わせた構成を有する。そして,後段のローパスフィルタ16のユニティゲイン周波数fuを中心周波数fcentの2〜3倍程度に低くして消費電流を抑制している。しかし,ローパスフィルタのフィードバックキャパシタとOTAなどのアンプの出力との間に,極性を反転する回路,例えば,反転アンプや,アンプの正極出力端子と負極出力端子とを反転してフィードバックキャパシタ対に接続する構成を設けることで,バンドパスフィルタのQ値を高くして,ローパスフィルタのユニティゲイン周波数fuを低くしても中心周波数でのゲインを高くでき,バンド幅を狭くすることができる。
【0089】
また,ローパスフィルタを構成するOTAをアクティブGm RC OTAにして,RC回路を有する1個のOTAと,OTAのフィードバックキャパシタC2とにより2次のローパスフィルタを構成することで,OTAの数を減らして消費電流を削減している。
【0090】
例えば,ローパスフィルタのユニティゲイン周波数を,従来の中心周波数fcentの約10倍から約2倍にすることで,消費電流を20%に低減できる。そして,2次のローパスフィルタを1個のOTAで構成することで,非特許文献4のように2個のOTAを必要とする場合に比較すると,消費電流を約半分にできる。つまり,合計で消費電流を10%まで削減できる。
【0091】
さらに,第2の実施の形態では,アンプの入力端子の寄生容量による中心周波数のばらつきは,可変容量キャパシタC3を設けその容量値を調整することで抑制することができる。
【0092】
また,第3の実施の形態では,アンプの入力端子にハイパスフィルタの第2抵抗R1を介して差動信号のコモンモード電圧を供給することで,バンドパスフィルタの中心周波数での利得のばらつきを抑制することができる。
【0093】
さらに,第4の実施の形態のようにバンドパスフィルタをローパスフィルタ構成にし,そのローパスフィルタでリング発振器を構成して,その発振周波数が所望の中心周波数と同じ周波数になるように,可変容量キャパシタC3の容量値を調整することで,バンドパスフィルタの中心周波数を所望の周波数に設定することができる。これによれば,調整工程が簡単になる。
【0094】
第1〜第3の実施の形態のバンドパスフィルタは2次のフィルタであるが,これを複数段接続して,4次,6次などより高次のバンドパスフィルタにすることもできる。
【0095】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0096】
(付記1)
入力信号が入力されるハイパスフィルタと,
前記ハイパスフィルタの出力が反転入力端子に入力され,前記反転入力端子と非反転入力端子間の入力電圧を増幅して出力信号を出力端子に出力するアンプと,
前記アンプの非反転出力端子と前記反転入力端子との間に接続された第1抵抗と,
前記反転入力端子に第1端子が接続された第1キャパシタと,
前記アンプの前記非反転出力端子の出力信号の極性を反転し,当該反転した信号を前記キャパシタの第2端子に出力する反転アンプとを有するバンドパスフィルタ。
【0097】
(付記2)
付記1において,
さらに,前記アンプの非反転入力端子と基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な容量値可変キャパシタを有し,
前記容量値可変キャパシタの容量値が,前記バンドパスフィルタの中心周波数が所望の周波数になるように可変設定されるバンドパスフィルタ。
【0098】
(付記3)
付記2において,
前記ハイパスフィルタは,前記入力信号が第1端子に入力される第2キャパシタと,前記第2キャパシタの第2端子と基準電位との間に設けられた第2抵抗とを有し,前記第2端子が前記アンプの反転入力端子に接続され,
さらに,前記第2キャパシタと入替可能な第3抵抗を有し,
前記第3抵抗を前記第2キャパシタと入れ替え,前記第2抵抗を前記反転入力端子から切り離し,前記第1キャパシタのフィードバックループをオープンにしたバンドパスフィルタを2個直列に接続して構成されたリングオシレータの発振周波数が,前記所望の中心周波数と一致するように,前記容量値可変キャパシタの容量値が設定されたバンドパスフィルタ。
【0099】
(付記4)
付記1において,
前記ハイパスフィルタは,前記入力信号が第1端子に入力される第2キャパシタと,前記第2キャパシタの第2端子と基準電位との間に設けられた第2抵抗とを有し,前記第2端子が前記アンプの反転入力端子に接続されるバンドパスフィルタ。
【0100】
(付記5)
付記1において,
前記ハイパスフィルタは,前記入力信号が第1端子に入力される第2キャパシタと,前記第2キャパシタの第2端子と差動信号のコモンモード電圧との間に設けられた第2抵抗とを有し,前記第2端子が前記アンプの反転入力端子に接続されるバンドパスフィルタ。
【0101】
(付記6)
差動入力信号が入力されるハイパスフィルタと,
前記ハイパスフィルタの差動出力信号が非反転入力端子と反転入力端子に入力され,前記差動入力信号を増幅して差動出力信号を反転出力端子と非反転出力端子に出力するアンプと,
前記アンプの反転出力端子と非反転入力端子との間に接続された第1の正側抵抗と,
前記アンプの非反転出力端子と反転入力端子との間に接続された第1の負側抵抗と,
前記アンプの非反転出力端子と非反転入力端子との間に接続された第1の正側キャパシタと,
前記アンプの反転出力端子と反転入力端子との間に接続された第1の負側キャパシタとを有するバンドパスフィルタ。
【0102】
(付記7)
付記6において,
さらに,前記アンプの非反転入力端子と基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な正側容量値可変キャパシタと,
前記アンプの反転入力端子と前記基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な負側容量値可変キャパシタとを有し,
前記正側,負側容量値可変キャパシタの容量値が,前記バンドパスキャパシタの中心周波数が所望の周波数になるように可変設定されるバンドパスフィルタ。
【0103】
(付記8)
付記7において,
前記ハイパスフィルタは,前記差動入力信号が第1端子に入力される第2の正側及び負側キャパシタと,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子と基準電位との間にそれぞれ設けられた第2の正側及び負側抵抗とを有し,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子が前記アンプの非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ接続され,
さらに,前記第2の正側及び負側キャパシタとそれぞれ入替可能な第3の正側及び負側抵抗を有し,
前記第3の正側及び負側抵抗を前記第2の正側及び負側キャパシタとそれぞれ入れ替え,前記第2の正側及び負側抵抗を前記反転及び非反転入力端子からそれぞれ切り離し,前記第1の正側及び負側キャパシタのフィードバックループをオープンにしたバンドパスフィルタを2個直列に接続して構成されたリングオシレータの発振周波数が,前記所望の中心周波数と一致するように,前記正側及び負側容量値可変キャパシタの容量値が設定されたバンドパスフィルタ。
【0104】
(付記9)
付記6において,
前記ハイパスフィルタは,前記差動入力信号が第1端子に入力される第2の正側及び負側キャパシタと,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子と基準電位との間にそれぞれ設けられた第2の正側及び負側抵抗とを有し,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子が前記アンプの非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ接続されるバンドパスフィルタ。
【0105】
(付記10)
付記6において,
前記ハイパスフィルタは,前記差動入力信号が第1端子に入力される第2の正側及び負側キャパシタと,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子と差動信号のコモンモード電圧との間にそれぞれ設けられた第2の正側及び負側抵抗とを有し,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子が前記アンプの非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ接続されるバンドパスフィルタ。
【0106】
(付記11)
付記6に記載のバンドパスフィルタであって,さらに,前記アンプの非反転入力端子と基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な正側容量値可変キャパシタと,前記アンプの反転入力端子と前記基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な負側容量値可変キャパシタとを有し,
さらに,前記第2の正側及び負側キャパシタとそれぞれ入替可能な第3の正側及び負側抵抗を有し,
前記ハイパスフィルタは,前記差動入力信号が第1端子に入力される第2の正側及び負側キャパシタと,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子と基準電位との間にそれぞれ設けられた第2の正側及び負側抵抗とを有し,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子が前記アンプの非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ接続され,
前記第3の正側及び負側抵抗を前記第2の正側及び負側キャパシタとそれぞれ入れ替え,前記第2の正側及び負側抵抗を前記反転及び非反転入力端子からそれぞれ切り離し,前記第1の正側及び負側キャパシタのフィードバックループをオープンにしたバンドパスフィルタを2個直列に接続してリング発振器を構築する工程と,
前記構築されたリング発振器の発振周波数が,所望の中心周波数と一致するように,前記正側及び負側容量値可変キャパシタの容量値を調整する工程とを有するバンドパスフィルタのキャリブレーション方法。
【0107】
(付記12)
差動入力信号が入力される正極及び負極入力端子と,
前記正極及び負極入力端子にそれぞれ接続された1対の第1のアドミッタンスと,前記1対の第1のアドミッタンスにそれぞれ接続された1対の第2のアドミッタンスとを有するハイパスフィルタと,
前記ハイパスフィルタの差動出力信号が入力され,前記差動入力信号を増幅して差動出力信号を出力するオペレーショナルトランスコンダクタンスアンプ(以下OTA)と,
前記OTAの正極出力端子と正極入力端子との間と前記OTAの負極出力端子と負極入力端子との間にそれぞれ設けられた第3のアドミッタンス(YP)と,
前記OTAの負極出力端子と正極入力端子との間と前記OTAの正極出力端子と負極入力端子との間にそれぞれ第4のアドミッタンス(YN)と,
前記正極出力端子と負極出力端子にそれぞれ接続された第5のアドミッタンス(YL)とを有するバンドパスフィルタ。
【符号の説明】
【0108】
14:ハイパスフィルタ 10:アンプ,OTA
R2:第1抵抗 C2:第1キャパシタ
12:反転アンプ R1:第2抵抗
C1:第2キャパシタ C3:容量値可変キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が入力されるハイパスフィルタと,
前記ハイパスフィルタの出力が反転入力端子に入力され,前記反転入力端子と非反転入力端子間の入力電圧を増幅して出力信号を出力端子に出力するアンプと,
前記アンプの非反転出力端子と前記反転入力端子との間に接続された第1抵抗と,
前記反転入力端子に第1端子が接続された第1キャパシタと,
前記アンプの前記非反転出力端子の出力信号の極性を反転し,当該反転した信号を前記キャパシタの第2端子に出力する反転アンプとを有するバンドパスフィルタ。
【請求項2】
請求項1において,
さらに,前記アンプの非反転入力端子と基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な容量値可変キャパシタを有し,
前記容量値可変キャパシタの容量値が,前記バンドパスフィルタの中心周波数が所望の周波数になるように可変設定されるバンドパスフィルタ。
【請求項3】
請求項2において,
前記ハイパスフィルタは,前記入力信号が第1端子に入力される第2キャパシタと,前記第2キャパシタの第2端子と基準電位との間に設けられた第2抵抗とを有し,前記第2端子が前記アンプの反転入力端子に接続され,
さらに,前記第2キャパシタと入替可能な第3抵抗を有し,
前記第3抵抗を前記第2キャパシタと入れ替え,前記第2抵抗を前記反転入力端子から切り離し,前記第1キャパシタのフィードバックループをオープンにしたバンドパスフィルタを2個直列に接続して構成されたリングオシレータの発振周波数が,前記所望の中心周波数と一致するように,前記容量値可変キャパシタの容量値が設定されたバンドパスフィルタ。
【請求項4】
請求項1において,
前記ハイパスフィルタは,前記入力信号が第1端子に入力される第2キャパシタと,前記第2キャパシタの第2端子と差動信号のコモンモード電圧との間に設けられた第2抵抗とを有し,前記第2端子が前記アンプの反転入力端子に接続されるバンドパスフィルタ。
【請求項5】
差動入力信号が入力されるハイパスフィルタと,
前記ハイパスフィルタの差動出力信号が非反転入力端子と反転入力端子に入力され,前記差動入力信号を増幅して差動出力信号を反転出力端子と非反転出力端子に出力するアンプと,
前記アンプの反転出力端子と非反転入力端子との間に接続された第1の正側抵抗と,
前記アンプの非反転出力端子と反転入力端子との間に接続された第1の負側抵抗と,
前記アンプの非反転出力端子と非反転入力端子との間に接続された第1の正側キャパシタと,
前記アンプの反転出力端子と反転入力端子との間に接続された第1の負側キャパシタとを有するバンドパスフィルタ。
【請求項6】
請求項5において,
さらに,前記アンプの非反転入力端子と基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な正側容量値可変キャパシタと,
前記アンプの反転入力端子と前記基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な負側容量値可変キャパシタとを有し,
前記正側,負側容量値可変キャパシタの容量値が,前記バンドパスキャパシタの中心周波数が所望の周波数になるように可変設定されるバンドパスフィルタ。
【請求項7】
請求項6において,
前記ハイパスフィルタは,前記差動入力信号が第1端子に入力される第2の正側及び負側キャパシタと,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子と基準電位との間にそれぞれ設けられた第2の正側及び負側抵抗とを有し,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子が前記アンプの非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ接続され,
さらに,前記第2の正側及び負側キャパシタとそれぞれ入替可能な第3の正側及び負側抵抗を有し,
前記第3の正側及び負側抵抗を前記第2の正側及び負側キャパシタとそれぞれ入れ替え,前記第2の正側及び負側抵抗を前記反転及び非反転入力端子からそれぞれ切り離し,前記第1の正側及び負側キャパシタのフィードバックループをオープンにしたバンドパスフィルタを2個直列に接続して構成されたリングオシレータの発振周波数が,前記所望の中心周波数と一致するように,前記正側及び負側容量値可変キャパシタの容量値が設定されたバンドパスフィルタ。
【請求項8】
請求項5において,
前記ハイパスフィルタは,前記差動入力信号が第1端子に入力される第2の正側及び負側キャパシタと,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子と差動信号のコモンモード電圧との間にそれぞれ設けられた第2の正側及び負側抵抗とを有し,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子が前記アンプの非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ接続されるバンドパスフィルタ。
【請求項9】
請求項5に記載のバンドパスフィルタであって,さらに,前記アンプの非反転入力端子と基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な正側容量値可変キャパシタと,前記アンプの反転入力端子と前記基準電圧との間に設けられ,容量値が可変可能な負側容量値可変キャパシタとを有し,
さらに,前記第2の正側及び負側キャパシタとそれぞれ入替可能な第3の正側及び負側抵抗を有し,
前記ハイパスフィルタは,前記差動入力信号が第1端子に入力される第2の正側及び負側キャパシタと,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子と基準電位との間にそれぞれ設けられた第2の正側及び負側抵抗とを有し,前記第2の正側及び負側キャパシタの第2端子が前記アンプの非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ接続され,
前記第3の正側及び負側抵抗を前記第2の正側及び負側キャパシタとそれぞれ入れ替え,前記第2の正側及び負側抵抗を前記反転及び非反転入力端子からそれぞれ切り離し,前記第1の正側及び負側キャパシタのフィードバックループをオープンにしたバンドパスフィルタを2個直列に接続してリング発振器を構築する工程と,
前記構築されたリング発振器の発振周波数が,所望の中心周波数と一致するように,前記正側及び負側容量値可変キャパシタの容量値を調整する工程とを有するバンドパスフィルタのキャリブレーション方法。
【請求項10】
差動入力信号が入力される正極及び負極入力端子と,
前記正極及び負極入力端子にそれぞれ接続された1対の第1のアドミッタンスと,前記1対の第1のアドミッタンスにそれぞれ接続された1対の第2のアドミッタンスとを有するハイパスフィルタと,
前記ハイパスフィルタの差動出力信号が入力され,前記差動入力信号を増幅して差動出力信号を出力するオペレーショナルトランスコンダクタンスアンプ(以下OTA)と,
前記OTAの正極出力端子と正極入力端子との間と前記OTAの負極出力端子と負極入力端子との間にそれぞれ設けられた第3のアドミッタンスと,
前記OTAの負極出力端子と正極入力端子との間と前記OTAの正極出力端子と負極入力端子との間にそれぞれ第4のアドミッタンスと,
前記正極出力端子と負極出力端子にそれぞれ接続された第5のアドミッタンスを有するバンドパスフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−175278(P2012−175278A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33790(P2011−33790)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年8月19日に社団法人 電子情報通信学会発行の電子情報通信学会技術研究報告 信学技報 Vol.110 No.182にて発表
【出願人】(503110381)富士通マイクロソリューションズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】