説明

バーコードスキャナ

【課題】機械的な機構およびその駆動源を用いることなく走査幅を制御すること。
【解決手段】与えられる電気信号の波形に応じた走査範囲を光を用いて走査する走査部と、走査部がバーコードを走査するときバーコードからの反射光を受光する受光部と、受光部からの出力をうけてバーコードを解読するデコーダ部と、デコーダ部の解読結果に基づいて必要な走査範囲に対応した波形の電気信号を生成して走査部に与える走査制御部とを備えるバーコードスキャナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バーコードのサイズに応じてスキャン幅を変化させることが可能なバーコードスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
この発明のようなバーコードスキャナの背景技術としては、レーザ光によりバーコードをスキャンし、そのバーコードからの反射光を集光してバーコード情報を読取るバーコードリーダにおいて、レーザ光のスキャン幅を左右対称に変えるスキャン幅可変手段を設けたバーコードリーダが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、レーザ光を用いたバーコード読み取り装置において、レーザ光を走査する手段と、レーザ光の走査幅を左右対称に調整するレーザ光遮蔽板を備えたバーコード読み取り装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−143761号公報
【特許文献2】特開平7−334602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のスキャン幅(走査範囲)を左右対称に制御するバーコードリーダやバーコード読み取り装置においては、スキャン幅を広げ、例えばスキャン幅がバーコードの左端に達し、まだ右端に達していない場合には、スキャン幅を右端の方へさらに広げる。それに伴って左端のスキャン幅がさらに広がってしまうので、隣接するバーコードに達する危険性がある。
この発明はこのような事情を考慮してなされたもので、スキャン幅を広げても左右それぞれの端に達すれば、それ以上に広がることのないバーコードスキャナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、与えられる電気信号の波形に応じた走査範囲を光を用いて走査する走査部と、走査部がバーコードを走査するときバーコードからの反射光を受光する受光部と、受光部からの出力をうけてバーコードを解読するデコーダ部と、デコーダ部の解読結果に基づいて必要な走査範囲に対応した波形の電気信号を生成して走査部に与える走査制御部とを備えるバーコードスキャナを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、走査制御部がデコーダ部の解読結果に基づいて必要な走査範囲に対応した波形の電気信号を走査部に与え、走査部はその波形に応じた走査範囲を走査するので、バーコードのサイズに応じて走査範囲が電気に自動制御される。
従って、走査範囲、つまりスキャン幅を広げて左右それぞれの端に達すれば、それ以上に広がることがなく、隣接するバーコードを誤って読むことがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態によるバーコードスキャナ構成を示す上面図である。
【図2】図1の要部側面図である。
【図3】図1に示すバーコードスキャナの要部の動作説明図である。
【図4】図1に示すバーコードスキャナの要部の動作説明図である。
【図5】図1に示すバーコードスキャナの要部の動作説明図である。
【図6】図1に示すバーコードスキャナの制御回路を示すブロック図である。
【図7】図1に示すバーコードスキャナの走査部に与えられる電気信号の波形を示す説明図である。
【図8】この発明のバーコードスキャナの動作を示すフローチャートである。
【図9】この発明のバーコードスキャナによるバーコード読み取り手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明によるバーコードスキャナは、与えられる電気信号(電圧又は電流)の波形に応じた走査範囲を光を用いて走査する走査部と、走査部がバーコードを走査するときバーコードからの反射光を受光する受光部と、受光部からの出力をうけてバーコードを解読するデコーダ部と、デコーダ部の解読結果に基づいて必要な走査範囲に対応した波形の電気信号を生成して走査部に与える走査制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
前記走査制御部は、走査部の走査範囲を最小値から徐々に拡大し、デコーダ部の解読結果から走査範囲がバーコードの一端に達したと判断したとき、その後は他端に向かってのみ走査範囲が拡大するように前記電気信号を生成することができる。
【0011】
前記走査部が、光源からの出射光を反射する反射ミラーと、反射ミラーを回動可能に支持する支持部と、与えられる電気信号の波形に応じて反射ミラーを回動させる駆動部とを備えてもよい。前記駆動部が、前記電気信号により励磁される電磁石と、電磁石が形成する磁界によって反射ミラーを回動させる磁石とからなってもよい。前記電気信号が三角状の波形を有してもよい。
【0012】
また、前記走査部はガルバノメータ方式のものであってもよい。
前記走査部の電気信号に対する即応性および追従性を高めるためには、可動部分の慣性モーメントをできるだけ小さくする必要がある。慣性モーメントは、可動部分の回転半径の二乗と質量との積で表されるところから、可動部分はコンパクトで軽量であることが好ましい。
【0013】
以下、図面に示す実施形態を用いてこの発明を詳述する。
図1は、この発明の一実施形態のバーコードスキャナの構成を示す上面図である。図2は図1の要部側面図である。これらの図に示すように、本体1は、発光部10と、走査部20と、凹面状の集光ミラー30と、受光部40とを備える。
【0014】
発光部10は、レーザダイオード11と、コリメータレンズ12と、開口部材13とから構成される。開口部材13にはレーザダイオード11から出射されるレーザビームを絞ってビームL1にするための開口13aが形成されている。集光ミラー30には中央部にビームL1を通過させるための透孔31が形成されている。
【0015】
走査部20は、樹脂製の振動ミラー21と、振動ミラー21を前面側に保持するアルミニウム合金製の保持部材22と、保持部材22の背面側に装着された磁石(永久磁石)23と、保持部材22を回動可能に支持する支持軸24と、磁石23に対向して間隔を置いて平行に配置されたコイルユニット25とから構成されている。
【0016】
コイルユニット25は、コイル26と、コイル26をその巻回方向に垂直な方向に貫通するヨーク27を備える。そして、磁石23とコイルユニット35の電磁作用によって、保持部材22およびそれに保持された振動ミラー21が、矢印A,Bで示すようにシーソー式に振動するようになっている。また、受光部40はフォトダイオード等の受光素子で構成される。
【0017】
図2に示すように、支持軸24は支持台8のボス8aに立設し、支持軸24に嵌合する2枚のワッシャ28,29が保持部材22を回動自在に上下から挟持している。また、磁石23は、N極がコイル26に近接し、かつ、S極がコイル26から遠ざかるように保持部材22に固着されている。
【0018】
次に、走査部20における磁石23およびヨーク27の機能を図3〜図5に示す。
図3は磁石23がヨーク27に平行に静止している状態である。この場合、コイル26には通電されず、ヨーク27は磁界を生成していない。
【0019】
図4はコイル26に通電が行われ、ヨーク27が磁界を生成して端部27a側がN極に、端部27b側がS極になり、それによって磁石23(つまり振動ミラー21)が右へ(図1の矢印A方向へ)最大回動角θM=15°だけ回動している状態を示す。
【0020】
図5はコイル26に逆方向に通電が行われ、ヨーク27が磁界を生成して端部27a側がS極に、端部27b側がN極になり、それによって磁石23(つまり、振動ミラー21)が左へ(図1の矢印B方向へ)最大回動角θM=15°だけ回動している状態を示す。
【0021】
このような構成におけるバーコードスキャナの機能を説明する。
図1に示すように、本体1において、発光部10はレーザダイオード11の発光によってレーザ光を出力する。そのレーザ光は、コリメータレンズ12によって平行光束に変換され、開口部材13の開口13aを介してレーザビームL1となって出射される。
【0022】
レーザビームL1は集光ミラー30の透孔31を通って振動ミラー21に達し、振動ミラー21の振動により所定の角度範囲で反射されバーコードBC上を照射する、つまりレーザビームL1のレーザスポットによる走査を行う。なお、バーコードは、規格によって定められた所定の幅を有する複数の黒(黒バー)と白(スペース)の縦縞から構成されている。
【0023】
バーコードBCから反射した光線L2は振動ミラー21に入射して反射される。その反射光は集光ミラー30によって集光される。このとき、振動ミラー21がコイルユニット25と磁石23との間に生ずる磁力によって前述のように回動する。
【0024】
従って、バーコードBCからの走査範囲にわたる反射光が集光ミラー30に送られる。集光ミラー40によって集光された光は、受光部40に入射される。受光部40は受光する光の強度に応じたアナログ電気信号を出力するようになっている。
【0025】
図6は図1に示すバーコードスキャナの制御回路を示すブロック図である。
同図において、起動部51はバーコードスキャナを起動するための起動スイッチなどを備え、起動信号を走査制御部52と発光制御部53に出力する。
【0026】
走査制御部52は、走査部20へ走査信号、つまりコイル26へ振動ミラー21を振動させるための電気信号を生成して出力する。発光制御部53は起動部51から起動信号を受けてからデコーダ部55からバーコード解読完了の信号を受けるまで、発光部10のレーザダイオード11へ駆動電力を供給し、レーザビームL1を走査部20へ出射させる。
【0027】
受光部40は走査部20からのビームL1によってバーコードBCが走査されるとき、バーコードからの出射光L2を受光してアナログ電気信号に変換し、2値化部54へ出力する。
【0028】
2値化部54で2値化された電気信号(デジタル信号)はデコーダ部55に出力され、解読される。デコーダ部55における解読結果は走査制御部52と発光制御部53に出力される。なお、走査制御部52と発光制御部53は、起動部51からの起動信号を受けて起動し、走査部20と発光部10への出力を、それぞれ開始する。
【0029】
図7は振動ミラー21を左右に回動させるためにコイル26に印加する電気信号の波形、ここでは三角状の電圧波形を示す。正の電圧が印加されたときに振動ミラー21が右(図1の矢印A方向)へ回動し、負の電圧が印加されたときに振動ミラー21が左(図1の矢印B方向)へ回動するようになっている。
【0030】
図7(a)のように、コイル26に振幅の小さい交番電圧が印加されると、振動ミラー21が小さい振幅で振動する。図7(b)のように、コイル26に振幅の大きい交番電圧が印加されると振動ミラー21もその振幅に対応して大きく振動する。
図7(c)のように正負非対称の交番電圧が印加されると、振動ミラー21も左右非対称に振動する。
【0031】
このような各機能を有するバーコードスキャナを用いてバーコードを読み取る動作を図8に示すフローチャートを用いて説明する。
図8のステップS1において、振動ミラー21の右回動角度θRおよび左回動角度θLは0°に初期設定されている。
【0032】
ステップS2においては、図6に示す受光部40から2値化部54を介して得られる電気信号に基づいて、デコーダ部55がバーコードBC全体の解読(デコード)を完了したか否かが判定される。
【0033】
ステップS3およびS6においては、振動ミラー21が最大振幅に達したか否か、つまり、右回動角度θRおよび左回動角度θLがそれぞれ最大回動角θMに達したか否かが判定される。また、ステップS4およびS7においては、振動ミラー21の右回動および左回動により、デコーダ部55がバーコードBCの右端部および左端部をそれぞれ検出したか否かが判定される。
【0034】
なお、デコーダ部55は受光部40から2値化部54を介して得られる電気信号が所定時間以上連続して0又は1である場合にバーコードBCの右端部又は左端部が検出されたと判定し、それを走査制御部52へ出力する。
【0035】
そこで、バーコードスキャナが起動されると、ルーチンはステップS1からステップS5とS8へ移り、ステップS5,S8において、まず、右および左回動角度θR,θLをそれぞれ1°だけ増加させるための交番電圧がコイル26に印加される。
【0036】
そして、ステップS2〜S8の動作がくり返され、走査範囲が徐々に増大し、ステップS7においてデコーダ部55によりバーコードBCの一方の端部、例えば左端部が検出されると、その後は左回動角度θLは一定に保持される。
【0037】
その後は、右回動角度θRのみを1°ずつ増大させるために振幅が徐々に変化する非対称な交番電圧がコイル26に印加される(ステップS5)。そして、右端部が検出されると、デコードつまりバーコードBCの解読が完了する(ステップS2)。
【0038】
図9は図8に示すバーコードの読み取り動作をさらに具体的に示す説明図である。
図9(a)に示すようにバーコード上の任意の位置にビームスポットを照射すると、ビームスポットの走査範囲が同図(b)のように徐々に左右に広がる。
【0039】
やがて、同図(c)のようにビームスポットの走査範囲がバーコードの左端に達すると、左側への走査範囲の拡大が中止される。そして、同図(d)のように右側のみへ走査範囲が拡大され、走査範囲が右端に達すると、バーコードの解読が完了し、右側への走査範囲の拡大が中止される。
このようにして、バーコードスキャナはバーコードのサイズに丁度対応する走査範囲で適正にバーコードを読み取ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 バーコードスキャナ本体
8 支持台
8a ボス
10 発光部
11 レーザダイオード
12 コリメータレンズ
13 開口部材
13a 開口
20 走査部
21 振動ミラー
22 保持部材
23 磁石
24 支持軸
25 コイルユニット
26 コイル
27 ヨーク
28 ワッシャ
29 ワッシャ
30 集光ミラー
31 透孔
40 受光部
51 起動部
52 走査制御部
53 発光制御部
54 2値化部
55 デコーダ部
BC バーコード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられる電気信号の波形に応じた走査範囲を光を用いて走査する走査部と、走査部がバーコードを走査するときバーコードからの反射光を受光する受光部と、受光部からの出力をうけてバーコードを解読するデコーダ部と、デコーダ部の解読結果に基づいて必要な走査範囲に対応した波形の電気信号を生成して走査部に与える走査制御部とを備えるバーコードスキャナ。
【請求項2】
前記走査制御部は、走査部の走査範囲を最小値から徐々に拡大し、デコーダ部の解読結果から走査範囲がバーコードの一端に達したと判断したとき、その後は他端に向かってのみ走査範囲が拡大するように前記電気信号を生成する請求項1記載のバーコードスキャナ。
【請求項3】
前記走査部が、光源からの出射光を反射する反射ミラーと、反射ミラーを回動可能に支持する支持部と、与えられる電気信号の波形に応じて反射ミラーを回動させる駆動部とを備える請求項1又は2記載のバーコードスキャナ。
【請求項4】
前記駆動部が、前記電気信号により励磁される電磁石と、電磁石が形成する磁界によって反射ミラーを回動させる磁石とからなる請求項3記載のバーコードスキャナ。
【請求項5】
前記電気信号が三角状の波形を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載のバーコードスキャナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−208658(P2012−208658A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72911(P2011−72911)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】