説明

バーミキュライト(Expandedvermiculite)を担体に用いた一酸化炭素選択酸化触媒

【課題】バーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いた一酸化炭素選択酸化触媒であって、さらに触媒剤、キャリア、促進剤を加えて性能を向上する一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】キャリアをバーミキュライト(Expanded vermiculite)上に沈殿させ、仮焼してキャリアを含むバーミキュライト担体とし、更に、バーミキュライト担体を触媒剤と促進剤原料を含む溶液に浸漬して浸透させ、乾燥、仮焼してバーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体とする一酸化炭素選択触媒とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いた一酸化炭素選択酸化触媒に関し、特に水素リッチガスに適している一酸化炭素選択酸化反応の触媒であり、このタイプの触媒は水素の消耗を抑制しつつ選択的に一酸化炭素を酸化して水素リッチガス中の一酸化炭素の濃度を抑えて一酸化炭素濃度の低い水素リッチガスを陽子交換膜燃料電池(proton exchange membrane fuel cell,PEMFC)に供給する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素を陽極燃料、酸素を陰極燃料とする。水素は、メタノール・エタノール・液化石油などの有機物の水素改質反応によって生成させ、例えば、メタノールの水素改質反応ではメタノールと水とを反応して水素と二酸化炭素を生成するが、普通の水素改質反応には高濃度の一酸化炭素を伴い、それは陽子交換膜燃料電池を汚染しやすいため、改質反応によって生成した水素リッチガス中の一酸化炭素を取除くなどして極めて低濃度に抑えなければならないのである。
【0003】
改質反応の生産側は、高濃度の水素リッチガスなので、普通は水素ガス転移反応(water-gas shift reaction)によって水素リッチガス中の一酸化炭素の濃度を下げる。水素ガス転移反応の段階では適量の水を加えて、改質反応後の水素リッチガスをこの水素ガス転移反応の触媒に適した温度に下げる。加えて、適量の水を加えることは水素ガス転移反応段階での原材料中の水素/炭素比を向上し、その高い水素/炭素比は水素ガス転移反応の進行にとっては有利である。しかしながら、水素ガス転移反応を経由した水素リッチガスの一酸化炭素の濃度は、やはりPEMFCに求められる条件を満足させることができない。現在の技術発展においてはPEMFCに適用するためには水素リッチガス中の一酸化炭素の濃度は30ppmより低くする必要があり、水素ガス転移反応段階の後に水素リッチガス中の一酸化炭素を更に取除く必要が有る。
【0004】
一酸化炭素選択酸化反応は、よく水素ガス転移反応後の水素リッチガス中の一酸化炭素を更に取除くために適用されている。いわゆる、一酸化炭素選択酸化反応は、一酸化炭素選択酸化触媒で酸素と一酸化炭素との反応を促進する一方、酸素と水素との反応を抑える。文献の記載によれば一酸化炭素選択酸化触媒は、大抵酸化アルミニウム・酸化チタニウム・酸化珪素或いは沸石を担体とする貴金属触媒であり、その貴金属の種類にはプラチナ・パラジウム・ロジウムなどが含まれている。触媒の貴金属成分は、触媒の性能を決める要素となるが、触媒の担体の特性も触媒に影響する場合があり得る。例えば、担体の表面積サイズ・表面にあるカルボキシル基の含量・熱安定性・孔のサイズ及び穴直径分布などがある。
【0005】
米国特許4,134,860に開示された触媒の製造方法において、触媒の組成には貴金属・アルカリ金属・レアアース金属・活性アルミニウムなどがある。中でも活性アルミニウムだけは耐火材料で熱安定性がより良好で、常に触媒の担体として使われている。しかし、活性アルミニウムを担体にする場合の欠点は、硫化物に汚染されやすいことで、つまり活性アルミニウムは二酸化硫黄などの硫化物と反応しやすく、その結果安定な硫酸アルミニウムを生成する。硫酸アルミニウムが生成すると、活性アルミニウムの表面積或いは穴直径が縮小し、触媒の接触面積が減少して触媒の性能も低下する。硫化物に汚染されがちな問題を克服するため、米国特許5,922,294には成分に酸化チタンを含有する触媒担体が開示されている。この酸化チタンで構成した担体によって製造された触媒は、自動車・バイクの排気ガス処理システムに使用されている。もう一つの活性アルミニウムの性能を改善できる方法は、活性アルミニウムの成分の一部に酸化珪素を加えるもので、米国特許4,134,856号に共同沈殿法によって製造する酸化珪素活性アルミニウムの製法が開示されている。
【0006】
米国特許6,235,255号は、沸石担体を用いた一種のプラチナ触媒を開示しており、その触媒は稀薄燃焼(lean burn)エンジンからの排気ガスを処理する。米国特許6,780,805号には沸石と活性アルミニウム成分を含有する高表面積の担体を開示しており、この担体によりプラチナとロジウムを含む貴金属触媒を作り、一酸化炭素を含む自動車・バイクの排気ガスの処理に用いる。陳ら(Chen et al., International Journal of Hydrogen Energy, 2006, 31, 427-435)は、既にセリウム-ジルコニウムの酸化物を担体に用いた銅系触媒は一酸化炭素選択酸化反応において高い一酸化炭素の除去率と選択性を備えることを証明した。セリウム-ジルコニウムの酸化物の酸化還元機構(メカニズム)は、主にセリウム-ジルコニウムの酸化物が酸素を提供して触媒に吸着した一酸化炭素と反応させ、空気中の酸素でセリウム-ジルコニウムの酸化物が有する酸素欠損という特性を補う。しかし、このタイプの粉末は実際に応用する場合には未だに圧力差を克服しなければならないという問題がある。
【特許文献1】米国特許5,922,294号明細書
【特許文献2】米国特許6,235,255号明細書
【特許文献3】特許第276753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今迄様々な担体を利用して製造した触媒は、内燃エンジンからの一酸化炭素を含む排気の処理に使用され、或いは水素改質反応により生成した水素リッチガス中に含まれる一酸化炭素ガスの濃度の抑制に使用されているが、商業応用としては触媒性能面とともに、コスト・耐久性・製造しやすさ或いは汎用性などの要素も考えなければならない。本発明は、これまで目を向けられなかったバーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いる低コスト・耐熱性、及び製造容易な一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いて、高性能で、かつ耐熱性の高い一酸化炭素選択酸化触媒を製造する。バーミキュライト(を担体にすれば触媒剤をより多く載せられるため、触媒剤と反応ガスの接触面積を拡大することが出来る。バーミキュライト(Expanded vermiculite)とはマグネシウム・アルミニウム・珪素などの成分を含む鉱物で、物性は軽量で耐圧性・吸水性が共に高く、かつ安価であるなどの特徴を備えていることから、バーミキュライトを担体に用いて製造された一酸化炭素選択触媒は上記の商業応用の要求に応えることができる。
【発明の効果】
【0009】
該当触媒の製造プロセスは:(一)まずキャリアをバーミキュライト(Expanded vermiculite)上に沈殿させ、仮焼によってキャリアを含んだバーミキュライトの担体を形成する;(二)湿式含浸法によりキャリアを含むバーミキュライトの担体を触媒剤と促進剤を含む原料薬剤溶液に浸漬し、乾燥と仮焼処理によってバーミキュライトを担体に用いる一酸化炭素選択酸化触媒を完成した。本発明の一酸化炭素選択酸化触媒は、少なくとも触媒剤・キャリアとバーミキュライトの担体からなり、少量の促進剤を加えて触媒の性能向上も可能である。本発明は、酸化銅をメイン触媒剤として、コバルト又はマンガンの酸化物を促進剤として加え、キャリアはセリウム-ジルコニウム酸化物として酸素交換の能力を向上し、触媒の性能を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる促進剤と触媒剤の重量比は、1:10から1:60の範囲にあって、最適範囲は1:30から1:50の範囲にある。キャリアと触媒剤の重量比は1:1から4:1の範囲にあるが、最適範囲は1.5から4:1の範囲にある。
本発明に開示するバーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いる一酸化炭素選択酸化触媒は、まずキャリアをバーミキュライト上に沈殿させ、仮焼によってキャリアを含むバーミキュライトの担体を形成し、更に湿式含浸法によりキャリアを含むバーミキュライトの担体を触媒剤と促進剤を含む原料薬剤溶液に浸漬してから、二次仮焼処理によって本発明のバーミキュライトを担体に用いる一酸化炭素選択酸化触媒を完成した。本発明は、水溶性の銅塩水和物を触媒剤の原料とし、セリウム塩の水和物とジルコニウム塩の水和物をキャリア原料とし、促進剤の原料としては水溶性コバルト塩の水和物或いはマンガン塩の水和物がある。セリウム塩の水和物は、硝酸セリウム水和物・硫酸セリウム水和物或いは塩化セリウム水和物などのセリウム塩の水和物でもよいが、硝酸セリウム水和物が最適とする;ジルコニウム塩の水和物の源はセリウム塩の水和物と似ていて、硝酸ジルコニウム水和物・硫酸ジルコニウム水和物或いは塩化ジルコニウム水和物などのジルコニウム塩の水和物としても良いが、硝酸ジルコニウム水和物が最適とする。促進剤の原料である塩類は、キャリア原料の塩類と似ていて、水溶性コバルト塩の水和物は硝酸コバルトの水和物・硫酸コバルト水和物或いは塩化コバルト水和物などのコバルト塩の水和物としても良いが、硝酸コバルト水和物が最適とする;マンガン塩の水和物は硝酸マンガン水和物・硫酸マンガン水和物或いは塩化マンガン水和物などのマンガン塩の水和物としても良いが、硝酸マンガン水和物が最適とする。触媒剤の材料である水溶性銅塩水和物は、硝酸銅水和物・硫酸銅水和物或いは塩化銅水和物などの銅塩の水和物としても良いが、硝酸銅水和物が最適とする。
【0011】
本発明の効果を説明するため、以下に実施例について説明する。この実施例に使用された条件は本発明を例証するが、その範囲に限定されない。
【実施例1】
【0012】
本実施例は、バーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いる一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法を開示する。
【0013】
ステップ1:0.611グラムのオキシ硝酸ジルコニウムを秤とって適量の純水(deionized water)を加えて、オキシ硝酸ジルコニウムを水中に分散させ、超音波振動器に入れて10分間振動してオキシ硝酸ジルコニウムを完全に溶解させる;
【0014】
ステップ2:硝酸セリウムを5.8423グラムを秤量して前記溶液に加えたり適量の純水を加えたりして溶液の総重量を11.68グラムにしてから、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニウムとを完全に溶解させてセリウム-ジルコニウム溶液を作成する(この時のセリウム-ジルコニウムのモル比は0.9/0.1である);
【0015】
ステップ3:1.536グラムのバーミキュライト(Expanded vermiculite)をセリウム-ジルコニウム溶液に浸漬し、アンモニア水でpH値を10~11の間にあるように調整して4時間程度静置して沈殿させる;
【0016】
ステップ4:濾過によりステップ3で得られた沈殿物の固体と液体を分離すると、得られた固体は、沈殿物を含んだバーミキュライト担体が得られ、純水で洗浄する;
【0017】
ステップ5:洗浄した固体を空気に曝して650℃で4時間仮焼(昇温速度は5℃/minとする)をするとキャリアを含んだバーミキュライト担体が得られる;
【0018】
ステップ6:ステップ5で作られたバーミキュライトを50wt%の硝酸銅溶液に浸漬して硝酸銅溶液を含浸させる;
【0019】
ステップ7:硝酸銅溶液を含浸したバーミキュライト担体を105℃で2時間乾燥させ、水分を除去してから空気中に650℃で4時間仮焼するとバーミキュライトを担体とする一酸化炭素選択酸化触媒が得られる。
【0020】
続いて得られた触媒の性能検証:まず作成した触媒を直径4.0mmのU字形石英管に充填し、管の両端を石英綿で固定してからU字形石英反応器を高温炉に載置して、高温炉によって反応温度を調節し、質量流量コントロール(mass flow controller, MFC)によって反応気体の流量を操作し、バブル式流量計を気体流量の測定に用いて、マイクロガスクロマトグラフィー(micro gas chromatography,Agilent Technologies)によって生成気体の組成濃度を測定する。表1は触媒性能の検証結果であり、特にCOの転化率、CO選択率およびF/W値の定義は下記通りになる。
【0021】
触媒性能の実験において、その操作条件は:触媒0.27gを採取し、反応気体の組成は、1.99%CO、1.74% O2、15% CO2及び48% H2であって、残余は、N2であり;反応気体の流速は75.85 cc/minで、この時のF/Wは29.16 L/g-hとなる。
【0022】
【数1】

【0023】
【数2】

【0024】
【数3】

【0025】
【表1】

【実施例2】
【0026】
触媒の製造工程は、実施例1と同様であるが、ただしステップ6においてステップ5で得られたバーミキュライト(Expanded vermiculite)担体に60 wt.%の硝酸銅溶液を含浸させる。触媒の性能検証方法も実施例1と変わらないが、反応気体と反応気体の流速が操作し難いため若干異なる場合がある。反応気体の組成は、2.02%CO、1.74% O2、15% CO2及び48% H2であって、残余は、N2であり;反応気体の流速は72.55 cc/min、この時のF/Wは、27.89 L/g-hとなる。性能検証の結果は、表2のとおりである。
【0027】
【表2】

【実施例3】
【0028】
触媒の製造工程は実施例1と同じく、ただしステップ6においてステップ5で得られたバーミキュライト(Expanded vermiculite)担体を25 wt.%の硝酸銅溶液を含浸させる。触媒の性能検証方法も実施例1と変わらないが、反応気体と反応気体の流速が制御し難いため若干異なる場合がある。反応気体の組成には2.01%CO、1.73% O2、15% CO2及び48% H2があって、残りはN2であり;反応気体の流速は72.55 cc/minで、この時のF/Wは27.89 L/g-hとなる。性能検証の結果は、表3のとおりであった。
【0029】
【表3】

【0030】
表1から表3までの結果から、同じ反応温度範囲のもとでは、50%の硝酸銅溶液の場合が最も性能が良い触媒が得られることが解り、反応温度が180℃である時、COの転化率は99.96%まで上昇し、COの選択率は74.82%となる。
【実施例4】
【0031】
触媒の製造工程は、実施例1と同じである。ただし、ステップ1、2にはそれぞれ1.146gのオキシ硝酸ジルコニウムと5.307gの硝酸セリウムを使用し、適量の純水を加えて総重量11.68gのセリウム-ジルコニウム溶液を調製する。(この時のセリウム-ジルコニウムのモル比は0.8/0.2である。)触媒の性能検証方法も実施例1と変わらないが、反応気体の流速が制御し難いため若干異なる場合がある。反応気体の組成は、2.01%CO、1.75% O2、15% CO2及び48% H2であって、残余は、N2である。性能検証の結果は、表4のとおりであった。
【0032】
【表4】

【実施例5】
【0033】
触媒の製造工程は、実施例1と同じく、ただしステップ1、2にはそれぞれ1.744gのオキシ硝酸ジルコニウムと4.709gの硝酸セリウムを採取し、適量の純水を加えて総重量11.68gのセリウム-ジルコニウム溶液を調製した(この時のセリウム-ジルコニウムのモル比は0.7/0.3である。)。触媒の性能検証方法も実施例1と変わらない、性能検証の結果は、表5のとおりであった。
【0034】
【表5】

【実施例6】
【0035】
触媒の製造工程は、実施例1と同じく、ただしステップ1、2にはそれぞれ2.991gのオキシ硝酸ジルコニウムと3.462gの硝酸セリウムを採取し、適量の純水を加えて総重量11.68gのセリウム-ジルコニウム溶液を調製した(この時のセリウム-ジルコニウムのモル比は0.5/0.5である。)。触媒の性能検証方法も実施例1と変わらない、性能検証の結果は、表6のとおりであった。
【0036】
【表6】

【0037】
表1、表4、表5、表6の結果により、触媒の性能は、触媒塩類水溶液の濃度に影響される以外、キャリア塩類水溶液に含まれるセリウム-ジルコニウムのモル比もその要因の一つであり、特に、セリウム-ジルコニウムモル比を0.9/0.1で作成した一酸化炭素選択酸化触媒の性能が最良であって、反応温度が180℃の時、COの転化率は99.96%まで向上し、COの選択率は74.82%となった。
【実施例7】
【0038】
触媒の製造工程と性能についての評価方法は実施例1と同じく、ただし触媒の性能検証実験において、実施例1の触媒重量0.5007gを採取し、材料気体の流速を108.5 cc/min(この時のF/W為22.5 L/g-h)に、反応気体の組成はは、2.04%CO、1.63% O2、15% CO2及び48% H2であって、残余は、N2であり、この時の反応器体積は1.66 cm3、性能検証の結果は、表7のとおりであった。
【0039】
【表7】

【0040】
比較例1:
触媒の製造過程において、ステップ3に14.6gのγ活性アルミニウムを採取し、セリウム-ジルコニウム溶液に浸漬する点のみ変更して他は実施例1のとおりとした。なお、触媒の性能検証実験において、変更点として触媒を1.9804g採取し、反応気体の流速は99.83 cc/min(この時のF/W為17.51 L/g-h)であり、その組成は、2.11%CO・1.86% O2・15% CO2及び48% H2であって残余は、N2であり、反応器の体積は2.85 cm3であって、他は実施例1のとおりであった。性能検証の結果を、表8に示す。
【0041】
【表8】

【0042】
比較例2:
触媒の製造過程において、ステップ3に14.6gの5A沸石を取ってセリウム-ジルコニウム溶液に浸漬する点のみ変更し、他は実施例1のとおりとした。なお、触媒の性能検証実験において、変更点としては触媒を2.1485gを採取し、反応気体の流速は100.5 cc/min(この時のF/W為20.8 L/g-h)であり、その組成は2.08%CO、1.81% O2、15% CO2及び48% H2であって、残余は、N2であり、反応器の体積は2.72 cm3であって、他は実施例1のとおりであった。性能検証の結果は表9に示す。
【0043】
【表9】

【0044】
表7から表9までは等量の触媒剤とキャリアを担持させた(総重量0.29g)、バーミキュライト(Expanded vermiculite)やγ-活性アルミニウムや5A沸石などの異なる担体で作られた触媒の性能検証結果を挙げた。これらの結果から分かるように、バーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いる一酸化炭素選択酸化触媒の触媒性能は、最適であった。表7の触媒性能検証の操作条件のもとでバーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いた一酸化炭素選択酸化触媒は、180℃の反応温度において最適の触媒性能を表していて、そのCO転化率は、99.56%でCO選択率は93.66%である。γ-活性アルミニウム或いは5A沸石を担体に用いた一酸化炭素選択酸化触媒の性能検証では、最適の反応温度はそれぞれ145℃と210℃で、対応するCO転化率もそれぞれ97.72%和2.96%になった。
【0045】
【表10】

【0046】
表10は、異なる担体で作られた触媒に含まれる銅・セリウム・ジルコニウムの組成分析を示す。その表10の結果から、バーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体に用いる触媒に含まれた銅・セリウム・ジルコニウムの含量は、γ-活性アルミニウム或いは5A沸石を担体に用いる触媒より多いことが分かる。このため、バーミキュライト(Expanded vermiculite)は確実により多く触媒剤とキャリアを担持できる。
【0047】
【表11】

【0048】
表11には同量の触媒のもとで反応器の必要体積及び使用する異なる担体の製造経費を示している。これにより、等量の触媒剤とキャリアを支持しているとき、バーミキュライト(Expanded vermiculite)担体に必要な反応器体積が一番小さく、バーミキュライト(Expanded vermiculite)の価格もγ-活性アルミニウム或いは5A沸石より安いので必要経費が最少となる。
【0049】
実施例8:
触媒の製造工程は実施例1と変わらないが、ステップ6においてはステップ5で得られたバーミキュライト(Expanded vermiculite)担体の替わり50 wt.%の硝酸銅溶液と1.31 wt.%の硝酸コバルト溶液との混合液に浸漬する。触媒性能の評価方法は実施例1と変わらないが、触媒を0.5gを採取するに変更する以外、反応気体の濃度と流速は操作し難いため若干異なる場合がある。反応気体の組成は、2.05%CO、1.61% O2、15% CO2と48% H2であって残余は、N2であり、反応気体の流速は103.45 cc/min(この時のF/W為21.48 L/g-h)であり、性能検証の結果は、表12に示すとおりである。
【0050】
【表12】

【0051】
実施例9:
触媒の製造工程は、実施例1と変わらないが、但しステップ6においてはステップ5で得られたバーミキュライト(Expanded vermiculite)担体の替わりに50 wt.%の硝酸銅溶液と1.28 wt.%の硝酸マンガン溶液との混合液に浸漬する。触媒性能の評価方法は、実施例1と変わらないが、触媒を0.5g採取することに変更する以外、反応気体の濃度と流速は操作し難いため若干異なる場合がある。反応気体の組成は、2.03%CO、1.61% O2、15% CO2と48% H2であって残余は、N2であり、反応気体の流速は103.63 cc/min(この時のF/W為21.51 L/g-h)であり、性能検証の結果は表13に示すとおりであった。
【0052】
【表13】

【0053】
表7・表12・表13の結果により、少量の促進剤を加えることによって触媒の性能を向上することができる。反応温度が180℃であるとき、少量の硝酸コバルトを加えた一酸化炭素選択酸化触媒はより良い触媒性能を備えていて、そのCO転化率は、99.97%でCO選択率は73.66%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア原料を含む水溶液中にバーミキュライト(Expanded vermiculite)素材を浸漬し、アルカリで溶液PHを調整してバーミキュライト上に沈殿させ、濾過、洗滌、乾燥後、空気中で650℃、4時間仮焼処理をしてバーミキュライト担体を形成し、
次いでキャリアを形成したバーミキュライト担体を触媒剤と促進剤を溶解した溶液に浸漬して浸透させ、乾燥、仮焼して形成したバーミキュライトを一酸化炭素選択酸化触媒であって、
その組成として少なくとも触媒剤・キャリア・バーミキュライト担体及び触媒性能を増強する促進剤からなることを特徴とする一酸化炭素選択酸化触媒。
【請求項2】
上記触媒剤としてプラチナ・パラジウム・ラジウム・イリジウム・オスミウム・ルテニウム・タンタル・ジルコニウム・イットリウム・セリウム・ニッケル・銅・銀・金・亜鉛から選択した一種以上の金属、酸化物、或いは合金を含むことを特徴とする担体とする請求項1に記載の一酸化炭素選択触媒。
【請求項3】
上記促進剤としてコバルト・マンガン・ランタン・プラチナ・ルテニウム・カリウム・マグネシウムから選択した一種以上の金属、金属酸化物、或いは合金を含むことを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項1に記載の一酸化炭素選択触媒。
【請求項4】
上記キャリアとしてジルコニウム・ランタン・セリウム・ニッケル・銅・鉄・チタン・錫から選択した一種以上の金属、金属酸化物、或いは合金を含むことを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項1に記載の一酸化炭素選択酸化触媒。
【請求項5】
上記触媒剤としての金属酸化物が銅の酸化物であることを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項2に記載の一酸化炭素選択触媒。
【請求項6】
上記促進剤としての金属酸化物がコバルト或いはマンガンの酸化物であることを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項3に記載の一酸化炭素選択触媒。
【請求項7】
上記キャリアとしての金属酸化物がセリウム-ジルコニウムの酸化物であることを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項4に記載の一酸化炭素選択触媒。
【請求項8】
上記触媒としての銅の酸化物は、触媒全体の重量百分率の10%〜35%を占めるものであることを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項5に記載の一酸化炭素選択触媒。
【請求項9】
上記触媒としてのコバルト或いはマンガンの酸化物は、触媒全体の重量百分率の0.1%〜1.0%を占めるものであることを特徴とする担体とする請求項6に記載の一酸化炭素選択触媒。
【請求項10】
上記触媒としてのセリウム-ジルコニウムの酸化物は、触媒全体の重量百分率の25%〜55%を占めるものであることを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項7に記載の一酸化炭素選択触媒。
【請求項11】
キャリア原料を含む水溶液中にバーミキュライト素材を浸漬し、アルカリで溶液PHを調整してバーミキュライト上に沈殿させ、濾過、洗滌、乾燥後、空気中で650℃、4時間仮焼処理をしてバーミキュライト(担体を形成し、
次いでキャリアを形成したバーミキュライト担体を触媒剤と促進剤を溶解した溶液に浸漬して浸透させ、乾燥、仮焼することを特徴とするバーミキュライトを担体とする一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項12】
上記キャリア原料がセリウム塩とジルコニウム塩であることを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項11に記載の一酸化炭素選択触媒の製造方法。
【請求項13】
上記セリウム塩は、硝酸セリウム水和物、硫酸セリウム水和物、或いは塩化セリウム水和物であることを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項12に記載の一酸化炭素選択触媒の製造方法。
【請求項14】
上記ジルコニウム塩は、硝酸ジルコニウム水和物、硫酸ジルコニウム水和物、或いは塩化ジルコニウム水和物であることを特徴とする請求項12に記載のバーミキュライトを担体とする一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項15】
上記アルカリ溶液は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、或いはアンモニア水であることを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項11に記載の一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項16】
上記キャリアの沈殿後、空気中で105℃で乾燥させ、650℃,4時間仮焼することを特徴とするバーミキュライトを担体とする請求項11記載の一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項17】
上記触媒剤は、銅塩水和物であることを特徴とする請求項16記載のバーミキュライトを担体とする一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項18】
上記銅塩水和物は、硝酸銅水和物・硫酸銅水和物或いは塩化銅水和物であることを特徴とする請求項17に記載のバーミキュライトを担体とする一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項19】
上記促進剤は、コバルト塩水和物或いはマンガン塩水和物であることを特徴とする請求項16に記載のバーミキュライトを担体とする一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項20】
上記コバルト塩水和物は、硝酸コバルト水和物、硫酸コバルト水和物、或いは塩化コバルト水和物であることを特徴とする請求項19に記載のバーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体とする一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。
【請求項21】
マンガン塩水和物は、硝酸マンガン水和物、硫酸マンガン水和物、或いは塩化マンガン水和物であることを特徴とする請求項19に記載のバーミキュライト(Expanded vermiculite)を担体とする一酸化炭素選択酸化触媒の製造方法。

【公開番号】特開2009−101257(P2009−101257A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273187(P2007−273187)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(599171866)行政院原子能委員會核能研究所 (37)
【Fターム(参考)】