説明

パイプ曲げ加工装置及びパイプ曲げ加工補助具並びにパイプ曲げ加工方法

【課題】作業者の熟練が不要であると共に、従来よりも加工能率が高くなる、パイプ曲げ加工装置及びパイプ曲げ加工補助具並びにパイプ曲げ加工方法を提供する。
【解決手段】パイプ曲げ加工装置は、樹脂製パイプに挿入して内嵌めできるように長物状に形成されていると共に、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されたパイプ内側保形加熱部材10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質塩化ビニル管(以下、「硬質塩ビ管」と略す)等の樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工するのに用いられるパイプ曲げ加工装置及びパイプ曲げ加工補助具並びにパイプ曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木、建築の配管において、直管状配管が不能とされる位置にいわゆる曲線状配管が求められることがある。そのような曲線状配管に用いられる曲管は、直管の硬質塩ビ管等の樹脂製パイプを曲げて作製される。そのとき、例えば、曲げようとする樹脂製パイプ内に焼き砂や可撓性がある芯材等の充填材を挿入したり、或いは、加熱圧縮流体を充満させ、そして、加熱して軟化させた樹脂製パイプを上下から曲げ型に挟むことによって、内側断面が潰れるのを防止しつつ樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工する方法が採られてきた。
【0003】
また、特許文献1には、薄肉片又は線状片を多数本束ねた略円形断面の芯材を非加工パイプに挿入し、次いで、この非加工パイプを加熱状態のもとで上記芯材の各片相互間を摺動させつつ金型により曲げ成形し、この曲げ成形プラスチック管の冷却後に芯材を引き抜く方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、熱可塑性樹脂パイプを加熱して曲げる際に、この熱可塑性樹脂パイプ内に一端部が閉塞された中空円筒形状のゴム製中子を挿入して膨張させ、該ゴム製中子により前記パイプ内面に所定の圧力を加えた状態で曲げ加工する方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、熱可塑性樹脂パイプの内形に、グリースなどの潤滑剤を塗布した曲げ変形自在の支持管を挿入し、前記熱可塑性樹脂パイプの外周をベルト形状のヒーターで巻いた上を、更に断熱材で覆って固定した後、このヒーターで前記熱可塑性樹脂パイプを加熱して軟化させ、所望の曲率で曲げてベンダ管を得る方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、二軸延伸熱可塑性樹脂パイプ内に、該樹脂パイプの内径と略同径のコアを挿入する工程と、該樹脂パイプの曲げ加工すべき部分をその樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+40℃の加工温度に加熱し、その軸方向の延伸状態の一部もしくは全部を解き、軸方向に収縮させる工程と、該樹脂パイプの曲げ加工すべき部分を前記コアとともに曲げ加工する工程とからなる二軸延伸熱可塑性樹脂パイプの曲げ加工方法が開示されている。
【0007】
特許文献5には、プラスチックパイプの所望区間を冷間で曲げ加工して湾曲させ、次いで、そのプラスチックパイプを拘束装置の支持台に拘束治具4で取り付けることで湾曲した状態に拘束し、その状態で炉に入れて熱変形温度以上、融点以下に加熱し且つ適当な時間保持することで熱処理し、曲げ加工によって生じていた応力の緩和を進め、永久曲げ変形歪を残留させて曲げ加工部を形成する方法が開示されている。
【0008】
特許文献6には、大口径の熱可塑性樹脂製ホースのジャバラ形状部分に曲げを形成し、予め曲げ形成部分を加熱した状態で曲げ賦型金型にセットし冷却する方法、もしくは、曲げ形成部分を曲げ賦型金型にセットした状態で加熱し冷却する方法により曲げ加工する方法が開示されている。
【0009】
特許文献7には弾性を持つ金属ワイヤによる編組筒体で構成された中子をプラスチックパイプ内の曲げ位置に挿入し、曲げ位置近傍を加熱・軟化させながら、パイプベンダで曲げるが開示されている。
【0010】
特許文献8には、被加工物としての略々直線状の樹脂パイプに、該樹脂パイプの内径よりわずかに小径の外径及び可撓性を有する棒状の曲げ加工用治具を挿入し、前記樹脂パイプ及び該曲げ加工用治具に外力を加えて所望の形状に変形させ、該曲げ加工用治具を前記樹脂パイプから抜き取ることにより前記樹脂パイプに曲がり部を形成する方法が開示されている。
【0011】
特許文献9には、ポリオレフィンパイプを軟化温度に加熱して該加熱部を型に嵌めて目的の曲げ角に曲げ加工し、該曲げ加工したポリオレフィンパイプを型に嵌めたまま再加熱し、その後型に嵌めたまま冷却し脱型する曲げ加工方法が開示されている。
【0012】
特許文献10には、ポリオレフィンパイプを軟化温度に加熱して該加熱部を目的の曲げ角より大きい角度に曲げ加工し、次いで該曲げ加工したポリオレフィンパイプを無拘束状態下で再度加熱する方法が開示されている。
【0013】
特許文献11には、所定の曲げ形状の加熱軟化された樹脂パイプ部分を冷却固化する工程を、曲げ成形型から脱離させて曲げ形状を保持具で保持した状態で行う方法が開示されている。
【0014】
特許文献12には、加熱された熱可塑性樹脂パイプ内に、複数枚の弾性体シートが摺動自在に積層されて形成された上記熱可塑性樹脂パイプの内径に略等しい外径を有するロッドを挿入した後、上記熱可塑性樹脂パイプに上記弾性体シートの積層方向の曲げ力を加える熱可塑性樹脂パイプの曲げ加工方法が開示されている。
【0015】
特許文献13には、加熱された熱可塑性樹脂パイプの外径に略等しい内径が形成された柔軟性を有する管状部材と、該管状部材の外壁に、これと直交する支承部材が所定間隔で多数取り付けられた鞘管内に上記熱可塑性樹脂パイプを挟持させ、上記鞘管の支承部材を曲げ型表面に押圧することを特徴とする熱可塑性樹脂パイプの曲げ加工方法が開示されている。
【0016】
特許文献14には、軟質塩化ビニル樹脂チューブの曲げ加工方法であって、所望の曲げ形状に適合した金属製の芯棒を、加工しようとする軟質塩化ビニル樹脂チューブ内に挿入した状態で、遠赤外線を照射して該チューブを加熱し、次いで冷却して成形する曲げ加工方法が開示されている。
【0017】
特許文献15には、該合成樹脂パイプの内径よりも若干小さい外径を有し、かつパイプ外壁面に環状またはスパイラル状の凹凸が所定ピッチで設けられた可撓パイプを準備し、合成樹脂パイプを所定温度に加熱軟化してから管内に該可撓パイプを挿入するか、またはパイプ内に該可撓パイプを挿入してから合成樹脂パイプを加熱軟化させ、合成樹脂パイプの端部に曲げ応力を付与してパイプ内壁面を該可撓パイプの外壁面でサポートしつつ所望の曲率に湾曲させ、しかる後、パイプ内から可撓パイプを無理抜きして成形する方法が開示されている。
【0018】
特許文献16には、肉厚が0.15〜0.5mmの高密度ポリエチレンチューブを曲率半径30〜50mmに曲げる高密度ポリエチレンチューブの曲げ加工方法であって、所望の曲げ形状に適合し、120〜160℃に加熱された金属棒を、加工しようとする高密度ポリエチレンチューブ内に挿入し、次いで冷却して成形する曲げ加工方法が開示されている。
【0019】
特許文献17には、所望の曲げ形状に一致した形状を有する導電性の芯棒が挿入された樹脂チューブを、導電性の台に設けられた上記曲げ形状に一致した溝に嵌め込み、該芯棒と該台の間に高周波電流を流して上記樹脂チューブを発熱させ、次いで通電を止めて冷却して成形する曲げ加工方法が開示されている。
【0020】
特許文献18には、加熱された熱可塑性樹脂パイプの両端部をコア及びチャックにより密封保持し、この熱可塑性樹脂パイプ内に流体を導入して加圧した状態で、熱可塑性樹脂パイプの曲げ内側部位と曲げ外側部位とに2分割された内側型と外側型とで、熱可塑性樹脂パイプを型締することにより、熱可塑性樹脂パイプの曲げ加工を行う方法が開示されている。
【0021】
特許文献19には、両端に密封栓が設けられた可撓性を有する筒状体よりなる内型の内部に、粒状の固形物を充填して両端を密封栓により密封し、この内型を予め加熱軟化させた熱可塑性樹脂パイプ内に挿入し、この熱可塑性樹脂パイプを上下に分割された曲げ加工用の外型にセットし、上記内型の密封栓に設けられた供給路より圧力空気を供給して内型を熱可塑性樹脂パイプの内壁に密着させ、しかる後、外型を加圧手段により型締めし、外型の曲げ形状に合わせた曲げ加工を行う方法が開示されている。
【0022】
特許文献20には、熱可塑性樹脂パイプ内に可撓性チューブを挿入し、該チューブ内に流体を注入し、熱可塑性樹脂パイプを加熱して曲げ加工する熱可塑性樹脂パイプの曲げ加工方法が開示されている。
【0023】
特許文献21には、曲げ加工される樹脂複合パイプの曲げ加工部に、当該樹脂複合パイプの曲げ加工に応じて曲がりうる芯金を挿入し、前記樹脂複合パイプの先端部をクランプ型によって挟持して曲げ加工する方法が開示されている。
【0024】
特許文献22には、熱可塑性樹脂パイプの外形状にあった形状の半部の穿設された板を、可撓性のある軸に、複数ほぼ等間隔で挿通してなる半割れの曲げ型を用い、加熱された熱可塑性樹脂パイプを上記半割れの曲げ型で両側より挟着した上、曲げ型を曲げることにより熱可塑性樹脂パイプの曲げ加工を行い、この曲げを保持した状態で冷却して成形する曲げ加工方法が開示されている。
【0025】
特許文献23には、一方の割金型の窩部内に加熱軟化させた熱可塑性樹脂パイプを挿入設置すると共に、前記パイプ内に充填物を挿入し、さらにこのパイプに他方の割金型の窩部を被せ、パイプの両端部のうち、少なくとも曲がり部外周側になる部分を軸方向に押圧することにより窩部内で滑らせつつ両方の割金型を型締めし、前記割金型の窩部に沿わせて曲げ加工する方法が開示されている。
【0026】
特許文献24には、一方の割金型の窩部内に加熱軟化させた熱可塑性樹脂パイプを挿入設置すると共に、前記パイプ内に充填物を挿入し、さらにこのパイプに他方の割金型の窩部を被せ、パイプの曲がり部外周側の両端部を窩部内で滑らせつつ両方の割金型とを型締めし、前記割金型の窩部に沿わせて曲げ加工する方法が開示されている。
【0027】
特許文献25には、予め要求形状を記憶させた治具としての形状記憶合金をマルテンサイト変態終了温度(Mf点)以下で適宜に曲げ直した後、処理すべき硬質樹脂品に所要の配置となして固定し、これらを形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度(Af点)及び硬質樹脂の熱変形温度(HDT)以上に加熱し、その後、これらを少なくとも前記熱変形温度(HDT)より低い温度に冷却した後、形状記憶合金を硬質樹脂品から取り外して成型する方法が開示されている。
【0028】
特許文献26には、複数の薄板を積層させた略円形断面の芯材をプラスチックパイプに挿入した後、平面状に配線した電熱線の上下に耐熱樹脂系または耐熱ゴム系の絶縁材料を被覆して形成した板状ヒーターを前記プラスチックパイプの曲げ加工しようとする局部に面接触させ、その局部が加熱軟化した後にプラスチックパイプを曲げ成形し、このプラスチックパイプの冷却後に前記芯材を引き抜き取る方法が開示されている。
【特許文献1】特許3115014号公報
【特許文献2】特開2002-301761号公報
【特許文献3】特開2002-172691号公報
【特許文献4】特開2001-232681号公報
【特許文献5】特開2000-326398号公報
【特許文献6】特開2000-271996号公報
【特許文献7】特開2000-158529号公報
【特許文献8】特開2000-025104号公報
【特許文献9】特開平11-300822号公報
【特許文献10】特開平11-300821号公報
【特許文献11】特開平11-268113号公報
【特許文献12】特開平11-227041号公報
【特許文献13】特開平11-221853号公報
【特許文献14】特開平11-034162号公報
【特許文献15】特開平10-244585号公報
【特許文献16】特開平10-138328号公報
【特許文献17】特開平09-029831号公報
【特許文献18】特開平08-309844号公報
【特許文献19】特開平08-072138号公報
【特許文献20】特開平08-011202号公報
【特許文献21】特開平07-328725号公報
【特許文献22】特開平07-256748号公報
【特許文献23】特開平07-148835号公報
【特許文献24】特開平07-148834号公報
【特許文献25】特開平06-246826号公報
【特許文献26】特開平05-200855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかし、以上のような樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工する方法の中で、焼き砂を充填する方法は、曲げ加工後に高温の砂が冷却されるまで待つ必要があるので、それだけ生産能率が悪くなる。また、砂の後処理も大変な作業を必要とする。さらに、滑らかな曲げ部を形成するためには作業員に経験と熟練が必要である。
【0030】
前記特許文献5、16に開示されているように炉やオーブンを使用する方法は、装置が大規模となり現場で簡便に加工できない。
【0031】
前記特許文献20に開示されているように圧縮流体を使用する方法は、芯材の密閉性の確保が困難である。
【0032】
前記特許文献4、7、9、10、11、15、24に開示されているようにバーナーや熱風、遠赤外線を使用する方法では、作業の安全性が低く、また、曲げ部全体を均一に加熱できないために座屈扁平が起こりやすい。
【0033】
前記特許文献2、12、13、18、19、22、23及び25のいずれにも、樹脂製パイプの加熱方法の記載がなく、簡便かつ安全に樹脂製パイプを加熱加工するという課題を解決することについての開示がない。
【0034】
前記特許文献3に開示されているように樹脂製パイプに挿入する支持管全体に、曲げ加工工程の最後に簡単に取り除くためにグリース等の潤滑剤を塗布する方法は、樹脂製パイプが大きいものになるとその作業が簡便とはいえないし、作業環境においても清潔感を欠くといえる。
【0035】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業者の熟練が不要であると共に、従来よりも加工能率が高くなる、パイプ曲げ加工装置及びパイプ曲げ加工補助具並びにパイプ曲げ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
請求項1に係る発明は、樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工するのに用いられるパイプ曲げ加工装置であって、樹脂製パイプに挿入して内嵌めできるように長物状に形成されていると共に、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されたパイプ内側保形加熱部材を備えることを特徴とするものである。
【0037】
上記の構成によれば、パイプ内側保形加熱部材が樹脂製パイプに挿入できるような簡易な構成であるので、パイプ内側保形加熱部材を樹脂製パイプに挿入して内嵌めし、それを加熱して軟化させることにより容易に曲げ加工を施すことができる。また、パイプ内側保形加熱部材が横方向に剛直に構成されているので、曲げ加工により樹脂製パイプの内側断面が潰れてしまうのを阻止することができる。さらに、パイプ内側保形加熱部材が長さ方向に屈曲可能に構成されているので、大きな力を作用させることなく樹脂製パイプの曲げ加工を行うことができる。また、曲げ加工の後は、樹脂製パイプを冷却してパイプ内側保形加熱部材を引き抜くだけでよい。従って、作業者の熟練が不要であると共に従来よりも加工能率が高いものとなる。
【0038】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたパイプ曲げ加工装置において、上記パイプ内側保形加熱部材は、部材本体が剛体製コイルで形成されていることを特徴とするものである。
【0039】
上記の構成によれば、パイプ内側保形加熱部材が剛体製コイルで形成されているので、軸回転方向に捻る事によりその外径を縮小させることができる。従って、部材本体を軸方向に捻って縮径させることにより、パイプ内側保形加熱部材を樹脂製パイプに容易に挿入することができる。一方、樹脂製パイプを曲げ加工処理した後には、部材本体を軸方向に捻って縮径させることにより、パイプ内側保形加熱部材を樹脂製パイプから容易に取り出すことができる。
【0040】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載されたパイプ曲げ加工装置において、上記パイプ内側保形加熱部材は、上記部材本体の内側に長さ方向に沿って取り付けられた可撓性ヒータを有することを特徴とするものである。
【0041】
上記の構成によれば、可撓性ヒータが部材本体の長さ方向に沿って取り付けられているので、部材本体の外部に別体の加熱装置を設ける場合に比較して装置構成のコンパクト化を図ることができる。
【0042】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載されたパイプ曲げ加工装置において、上記パイプ内側保形加熱部材は、上記部材本体に対して上記可撓性ヒータを押しつけるように該部材本体に挿入して設けられた弾性材を有することを特徴とするものである。
【0043】
上記の構成によれば、弾性材の弾性力により可撓性ヒータが部材本体に押し付けられるので、可撓性ヒータからの熱を効率よく部材本体に伝導させることができる。従って、加熱開始から早期に樹脂製パイプの曲げ加工を行うことができる。
【0044】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載されたパイプ曲げ加工装置において、上記弾性材は、剛体製コイルで形成されていることを特徴とするものである。
【0045】
上記の構成によれば、パイプ内側保形加熱部材が内空形状となる。このため、樹脂製パイプを加熱する際、パイプ内側保形加熱部材内にファンを設けて部材内部の熱気を環流させて、樹脂製パイプの加熱部の全体を一様に且つ効率的に加熱することができる。
【0046】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載されたパイプ曲げ加工装置において、上記パイプ内側保形加熱部材は、少なくとも一方の部材端にハンドルが設けられていることを特徴とするものである。
【0047】
上記の構成によれば、ハンドルが外部に出るように樹脂製パイプにパイプ内側保形加熱部材を挿入して内嵌めし、そのハンドルを握って作業することができるので、人の手で容易に樹脂製パイプの曲げ加工を行うことができる。
【0048】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載されたパイプ曲げ加工装置において、樹脂製パイプに被せて外嵌めできるように長物状に形成されていると共に、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されたパイプ外側保形部材をさらに備えることを特徴とするものである。
【0049】
上記の構成によれば、樹脂製パイプの曲げ加工の際に、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されたパイプ外側保形部材を樹脂製パイプに被せて外嵌めすることにより、曲げ加工時の樹脂製パイプの外表面に皺や変形が生じるのを抑制することができる。
【0050】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載されたパイプ曲げ加工装置において、上記パイプ外側保形部材の外側を被覆するように構成されたパイプ外側加熱部材をさらに備えることを特徴とするものである。
【0051】
上記の構成によれば、樹脂製パイプの外側からもさらに加熱することができるので、樹脂製パイプの肉厚方向の温度分布を均一にすることができる。
【0052】
請求項9に係る発明は、樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工する方法であって、樹脂製パイプに、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成された長物状のパイプ内側保形加熱部材を挿入して内嵌めするステップと、上記パイプ内側保形加熱部材によって上記樹脂製パイプを加熱するステップと、上記加熱した樹脂製パイプを所定形状に曲げるステップと、上記所定形状に曲げた樹脂製パイプを冷却した後に該樹脂製パイプから上記パイプ内側保形加熱部材を取り出すステップと、を備えたことを特徴とするものである。
【0053】
上記の方法によれば、パイプ内側保形加熱部材を樹脂製パイプに挿入して内嵌めし、それを昇温させることで樹脂製パイプを加熱して軟化させることにより容易に曲げ加工を施すことができる。また、パイプ内側保形加熱部材が横方向に剛直に構成されているので、曲げ加工により樹脂製パイプの内側断面が潰れてしまうのを阻止することができる。さらに、パイプ内側保形加熱部材が長さ方向に屈曲可能に構成されているので、大きな力を作用させることなく樹脂製パイプの曲げ加工を行うことができる。また、曲げ加工の後は、樹脂製パイプを冷却してパイプ内側保形加熱部材を引き抜くだけでよい。従って、作業者の熟練が不要であると共に従来よりも加工能率が高いものとなる。
【0054】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載されたパイプ曲げ加工方法において、上記樹脂製パイプを所定形状に曲げるステップの前に、樹脂製パイプに、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成された長物状のパイプ外側保形部材を被せて外嵌めするステップをさらに備えたことを特徴とするものである。
【0055】
上記の方法によれば、樹脂製パイプの曲げ加工の際に、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されたパイプ外側保形部材を樹脂製パイプに被せて外嵌めすることにより、曲げ加工時の樹脂製パイプの外表面に皺や変形が生じるのを抑制することができる。
【0056】
請求項11に係る発明は、請求項10に記載されたパイプ曲げ加工方法において、上記樹脂製パイプにパイプ外側保形部材を被せて外嵌めするステップの前に、樹脂製パイプをパイプ外側保護部材で被覆するステップをさらに備えたことを特徴とするものである。
【0057】
上記の方法によれば、パイプ外側保形部材と樹脂製パイプとの間にパイプ外側保護部材が介在した状態で樹脂製パイプの曲げ加工を行うため、パイプ外側保形部材によって樹脂製パイプ表面に傷等が生じるのを抑制することができる。さらに、パイプ外側保形部材の形状を問うことなく、曲げ加工の際のパイプ外側保形部材からの圧力を一様に樹脂製パイプに伝えるため、樹脂製パイプの加工形状が良好となる。
【0058】
請求項12に係る発明は、請求項11に記載されたパイプ曲げ加工方法において、上記パイプ外側保護部材としてシリコン樹脂製のものを用いることを特徴とするものである。
【0059】
上記の方法によれば、パイプ外側保護部材がシリコン樹脂製であるため、樹脂製パイプの外表面を覆った状態で、パイプの横方向に弾性を有し且つ縦方向に伸縮性を有する。このため、樹脂製パイプの曲げに柔軟に追従することができ、樹脂製パイプの曲げ加工の際にパイプ外側保護部材の切断等が生じず、よりパイプの曲げ加工精度が向上する。
【0060】
請求項13に係る発明は、樹脂製パイプの曲げ加工予定部を載置するためのステージと、上記ステージに載置された樹脂製パイプを、その曲げ加工予定部を両側から挟むように保持するパイプ保持部と、上記ステージ上で上記パイプ保持部に保持された樹脂製パイプの横方向に可動に設けられ、樹脂製パイプを横方向から押圧して曲げ加工するパイプ押圧部材と、を備えたことを特徴とするパイプ曲げ加工補助具に関する。
【0061】
上記の構成によれば、樹脂製パイプの曲げ加工予定部をステージに載置し、その樹脂製パイプを曲げ加工予定部の両側から保持した状態で、パイプ押圧部により樹脂製パイプを横方向から押圧すればよいため、容易に樹脂製パイプに曲げ加工を施すことができる。また、人の手によって直接樹脂製パイプを曲げるものと比べて、より作業者の熟練が不要であると共に、曲げ加工の能率が高くなる。
【発明の効果】
【0062】
以上説明したように、本発明によれば、作業者の熟練が不要であると共に、従来よりも加工能率の高い樹脂製パイプの曲げ加工が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係るパイプ曲げ加工装置を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0064】
図1はパイプ内側保形加熱部材10を示す。図2はパイプ内側保形加熱部材10の断面図を示す。図3(a)はパイプ外側保形部材18を示す。図3(b)はパイプ外側保形部材18の断面図を示す。図4はパイプ外側加熱部材21を示す。図5は曲げR治具27を示す。図6はエンドキャップ28を示す。図7及び8は曲げ加工作業の説明図を示す。
【0065】
(パイプ曲げ加工装置の構成)
本発明の実施形態1に係るパイプ曲げ加工装置は、パイプ内側保形加熱部材10、パイプ外側保形部材18及びパイプ外側加熱部材21で構成されている。このパイプ曲げ加工装置は、硬質塩ビ管などの樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工を施すのに用いられるものである。
【0066】
パイプ内側保形加熱部材10は、図1及び2に示すように、曲げ加工対象である樹脂製パイプに挿入して内嵌めできるように長物状に形成されている。パイプ内側保形加熱部材10は、剛体製コイルで構成された部材本体11と、部材本体11の内側に長さ方向に沿って取り付けられてその内周を覆う可撓性ヒータ12と、部材本体11の可撓性ヒータ12よりも内側に挿入されて設けられた弾性材13と、弾性材13の一端に取り付けられたハンドル14と、を備えている。
【0067】
部材本体11は、例えば、細径のアルミ製の管を間隔を空けた等ピッチの螺旋状に巻いて、曲げ加工対象である樹脂製パイプの内径よりもやや大きい外径のコイル状に形成した剛体製コイルである。これにより、部材本体11は、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されている。また、部材本体11は、アルミ合金製の管やSUS管等であってもよい。
【0068】
可撓性ヒータ12は、例えば、耐熱繊維メッシュ表面に絶縁ニクロム線の帯状ヒータを縫いつけたものや、いわゆるシート状のラバーヒータ等により部材本体11の内径とほぼ同じ外径の筒状に形成された柔軟な薄い面状ヒータで構成されている。可撓性ヒータ12の外周には、外周を周方向に4等分するように間隔をおいて4つの連結バンド15が長さ方向に延びるように取り付けられている。そして、可撓性ヒータ12は、各連結バンド15が部材本体11の内側に蝋付けされることにより部材本体11に固定されている。可撓性ヒータ12の内部には、温度制御用の小型サーモスタット又は温度センサー16が埋設されている。
【0069】
弾性材13は、例えば、シリコンスポンジ等のような耐熱スポンジにより部材本体11の内径よりやや小さい外径の厚肉の筒状に形成された棒状体で構成されている。弾性材13は、部材本体11の可撓性ヒータ12よりも内側に挿入されていることにより、部材本体11に対して可撓性ヒータ12を押しつけている。
ハンドル14は、円盤状に形成された取付部とその中心に立設されたハンドル本体とで構成されている。ハンドル14は、取付部のハンドル本体立設側と反対側の面が弾性材13の端面に固設されており、これによってハンドル本体が長さ方向に延びるものとされている。ハンドル本体は、筒状に形成されており、その内部をヒータ電源用コード17が挿通されている。
【0070】
パイプ外側保形部材18は、図3に示すように、曲げ加工対象である樹脂製パイプに被せて外嵌めできるように長物状に形成されている。パイプ外側保形部材18は、例えば、細径のアルミ管19を密ピッチの螺旋状に巻いて、曲げ加工対象である樹脂製パイプの外径よりもやや小さい外径のコイル状に形成した剛体製コイルである。これにより、部材本体は、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されている。パイプ外側保形部材18の外周には、螺旋のピッチが広がらないように規制するバンド20が設けられている。
【0071】
パイプ外側加熱部材21は、例えば、図4に示すように、絶縁ニクロム線が横方向に配列して埋設された横長長方形のシート状の帯状加熱体22の両側を耐熱繊維フェルト保温材23で覆ったものを横耐熱繊維メッシュ24表面に縫い付けたもので構成されている。パイプ外側加熱部材21には、一方の長辺縁に沿って表側に雄側面状ファスナ25、他方の長辺縁に沿って裏側に雌側面状ファスナが設けられている。そして、パイプ外側加熱部材21は、それらを貼り合わせることにより、パイプ外側保形部材18を外側から被覆できる筒状体が形成されるようになっている。パイプ外側加熱部材21の一つの角からは、ヒータ電源用コード26が引き出されている。パイプ外側加熱部材21の内部には、温度制御用の小型サーモスタット又は温度センサー16が埋設されている。
【0072】
(樹脂製パイプの曲げ加工方法)
次に、実施形態1に係る樹脂製パイプの曲げ加工方法について説明する。
【0073】
樹脂製パイプの曲げ加工方法に際し、まず、直管の樹脂製パイプにパイプ内側保形加熱部材10を挿入して、曲げ加工部分に対応させて内嵌めする。このとき、樹脂製パイプへの挿入前に、パイプ内側保形加熱部材10の部材本体11を軸回転方向に捻ることにより縮径させ、部材本体11を縮径させたままのパイプ内側保形加熱部材10を樹脂製パイプに挿入する。そして、曲げ加工部分において部材本体11の捻りを解除して弾性復帰させ、それによって部材本体11の外径を元に戻させて樹脂製パイプに内嵌めする。また、ハンドル14が樹脂製パイプの外側に突出するようにする。次いで、樹脂製パイプの外側にパイプ外側保形部材18を被せて、曲げ加工部分に対応させて外嵌めする。このとき、樹脂製パイプを挿入する前に、パイプ外側保形部材18を軸回転方向に捻ることにより外径を拡大させ、外径を拡大させたままのパイプ外側保形部材18に樹脂製パイプを挿入する。そして、曲げ加工部分においてパイプ外側保形部材18の捻りを解除して弾性復帰させ、それによってパイプ外側保形部材18の外径を元に戻させて樹脂製パイプに外嵌めする。
【0074】
次いで、パイプ外側保形部材18の外側にパイプ外側加熱部材21を巻き寿司状に巻き付けて面状ファスナ25を貼り合わせることにより、パイプ外側加熱部材21の長辺端同士を結合させてパイプ外側保形部材18を被覆する筒状体に形成する。
【0075】
次いで、パイプ内側保形加熱部材10及びパイプ外側加熱部材21を昇温させる。これにより、樹脂製パイプの曲げ加工部分は、パイプ内側保形加熱部材10によって直接的に加熱されると共にパイプ外側加熱部材21によってパイプ外側保形部材18を介して間接的に加熱されて所定温度にされて軟化する。なお、パイプ内側保形加熱部材10及びパイプ外側加熱部材21は、いずれも小型サーモスタット又は温度センサーによって温度制御する。
【0076】
次いで、パイプ内側保形加熱部材10及びパイプ外側加熱部材21による加熱を停止した後、面状ファスナ25を剥がしてパイプ外側加熱部材21を外す。
【0077】
次いで、樹脂製パイプのハンドル14の突出していない側を固定し、ハンドル14を手で持って、樹脂製パイプの曲げ加工部分を図5に示すような円盤状に形成された曲げR治具27の周縁に沿わせるようにハンドル14を操作する。ここで、パイプ内側保形加熱部材10は、横方向に剛直に構成されているので、曲げ加工により樹脂製パイプの内側断面が潰れてしまうのが阻止され、また、長さ方向に屈曲可能に構成されているので、曲げ加工のために大きな力を作用させる必要がない。
【0078】
次いで、樹脂製パイプを曲げた状態で冷却水等で冷却した後、パイプ外側保形部材18及びパイプ内側保形加熱部材10を取り外す。このとき、パイプ外側保形部材18を軸方向に捻ることにより外径を拡大させ、外径を拡大させたままのパイプ外側保形部材18を樹脂製パイプから外す。また、パイプ内側保形加熱部材10の部材本体11を軸回転方向に捻ることにより縮径させ、部材本体を縮径させたままのパイプ内側保形加熱部材10を樹脂製パイプから取り出す。
【0079】
以上のように、直管の樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工した曲管の樹脂製パイプを得ることができる。
【0080】
なお、曲げ加工に際しては、ハンドルの代わりに、図6に示すようなエンドキャップ28を用いてもよい。エンドキャップ28は、外径の異なる2枚の円盤を重ねたような形状で、小さい方の円盤の外径が樹脂製パイプの内径に等しく形成されている。またエンドキャップ28の中心軸位置には、ハンドル部材嵌合孔29が形成されている。そして、曲げ加工の際には、小径部分を挿入すると共に大径部分を端面に当接させるようにエンドキャップ28を樹脂製パイプに取り付け、ハンドル部材嵌合孔29にハンドル部材を取り付ける。
【0081】
そして、曲げ加工の具体的な態様としては、図7及び図8に示すものを挙げることができる。
【0082】
図7に示す樹脂製パイプの曲げ加工では、曲げR治具27を作業台30上の所定位置に固定して、固定部と曲げR治具27との間で樹脂製パイプの一端を挟むように固定する。そして、パイプ内側保形加熱部材10及びパイプ外側保形部材18を取り付けたままの樹脂製パイプを曲げR治具27の周縁に沿って曲げるように樹脂製パイプの他端を移動操作する。
【0083】
図8に示す樹脂製パイプの曲げ加工では、曲げR治具27を作業台30上の所定位置に固定した後、上記と同様の操作を行う。次に曲げR治具27'を作業台30上の所定位置に固定し、樹脂製パイプを曲げR治具27'の周縁に沿って曲げ、最後に曲げR治具27''を作業台上の所定位置に固定し、曲げR治具27''の周縁に沿って曲げるように樹脂製パイプの他端を移動操作する。
【0084】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係るパイプ曲げ加工装置を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0085】
図9はパイプ内側保形加熱部材40を示す。図10はパイプ内側保形加熱部材40の断面図を示す。図11は樹脂製パイプ42にパイプ外側保護部材41を巻き付けた様子を示す。図12は樹脂製パイプ42にパイプ外側保形部材43を被せた様子を示す。図13はパイプ外側加熱部材45を示す。図14はパイプ曲げ加工補助具46を用いた曲げ加工作業の説明図を示す。図15はパイプ曲げ加工補助具46の側断面図を示す。
【0086】
(パイプ曲げ加工装置の構成)
本発明の実施形態2に係るパイプ曲げ加工装置は、パイプ内側保形加熱部材40、パイプ外側保形部材43及びパイプ外側加熱部材45で構成されている。このパイプ曲げ加工装置は、硬質塩ビ管などの樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工を施すのに用いられるものである。
【0087】
パイプ内側保形加熱部材40は、図9及び10に示すように、曲げ加工対象である樹脂製パイプに挿入して内嵌めできるように長物状に形成されている。パイプ内側保形加熱部材40は、剛体製コイルで構成された部材本体50と、部材本体50の内側に長さ方向に沿って取り付けられてその内周を覆う可撓性ヒータ51と、部材本体50の可撓性ヒータ51よりも内側に挿入されて設けられ、剛体製コイルで構成された弾性材52と、を備えている。
【0088】
部材本体50は、例えば、細径のアルミ製の管を間隔を空けた等ピッチの螺旋状に巻いて、曲げ加工対象である樹脂製パイプの内径よりもやや大きい外径のコイル状に形成した剛体製コイルである。これにより、部材本体50は、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されている。また、部材本体50は、アルミ合金製の管やSUS管等であってもよい。部材本体50は、その両端部に周方向を4等分するように係合部55が設けられている。係合部55は、部材本体を樹脂製パイプから引き抜く際に用いる紐等が係合できるように、例えばU字状に形成されている。部材本体50には、外周を周方向に4等分するように間隔をおいて4つの部材本体固定バンド53が長さ方向に延びるように取り付けられている。部材本体50は、その剛体製コイルを構成する各々のアルミ製の管をバンド53で結ぶことによりコイルの螺旋のピッチが広がらないように規制されている。バンド53は、その材質は特に限定されないが、耐熱性及び耐応力性を有する繊維で形成されるものが好ましい。
【0089】
可撓性ヒータ51は、例えば、耐熱繊維メッシュ表面に絶縁ニクロム線の帯状ヒータを縫いつけたものや、いわゆるシート状のラバーヒータ等により部材本体50の内径とほぼ同じ外径の筒状に形成された柔軟な薄い面状ヒータで構成されている。可撓性ヒータ51の内部には、温度制御用の小型サーモスタット又は温度センサーが埋設されている。
【0090】
弾性材52は、例えば、細径のアルミ製の管を間隔を空けた等ピッチの螺旋状に巻いて、部材本体50の内径よりやや小さい外径のコイル状に形成した剛体製コイルである。これにより、部材本体50は、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されている。さらに、弾性材52は、部材本体50の可撓性ヒータ51よりも内側に挿入されていることにより、部材本体50に対して可撓性ヒータ51を押しつけている。また、部材本体50は、アルミ合金製の管やSUS管等であってもよい。弾性材52は、図10に示すように、その端部に部材本体50から弾性材52を取り除く際に用いられる紐等を係合させる係合部56が設けられている。
【0091】
パイプ外側保形部材43は、図12に示すように、曲げ加工対象である樹脂製パイプ42に被せて外嵌めできるように長物状に形成されている。パイプ外側保形部材43は、例えば、細径のアルミ製の管を密ピッチの螺旋状に巻いて、曲げ加工対象である樹脂製パイプ42の外径よりもやや小さい外径のコイル状に形成した剛体製コイルである。これにより、パイプ外側保形部材43は、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されている。パイプ外側保形部材43の外周には、螺旋のピッチが広がらないように規制するバンド57が設けられている。バンド57は、パイプ外側保形部材43の周方向を4等分するように4本設けられている。バンド57は、その材質は特に限定されないが、耐熱性及び耐応力性を有する繊維で形成されるものが好ましい。
【0092】
パイプ外側加熱部材45は、例えば、図13に示すように、絶縁ニクロム線が縦方向に配列して埋設された横長長方形のシート状の帯状加熱体60の両側を耐熱繊維フェルト保温材61で覆ったものを横耐熱繊維メッシュ62表面に縫い付けたもので構成されている。パイプ外側加熱部材45には、一方の長辺縁及び両端の突出部64に沿って表側に雄側面状ファスナ63、他方の長辺縁に沿って裏側に雌側面状ファスナが設けられている。そして、パイプ外側加熱部材45は、それらを貼り合わせることにより、パイプ外側保形部材43を外側から被覆できる筒状体が形成されるようになっている。パイプ外側加熱部材45の一つの角からは、不図示のヒータ電源用コードが引き出されている。パイプ外側加熱部材45の内部には、温度制御用の小型サーモスタット又は温度センサー65が埋設されている。
【0093】
(パイプ曲げ加工補助具46の構成)
図14及び15に示すように、パイプ曲げ加工補助具46は、ステージ70、パイプ保持部71及びパイプ押圧部72で構成されている。
【0094】
ステージ70は、その上面が平らに形成された直方体状のケーシングで構成されている。ステージ70は、その上面の一端部から長さ方向に延びるように、短孔73が形成されている。また、ステージ70は、短孔と数cm離れて、ステージ70の長さ方向に延びるように、長孔74が形成されている。ステージ70は、長孔74からさらに伸びるように上面が形成されており、これにより上面延長部が形成されている。ステージ70は、内空部76が形成されており、その内空部76の上方及び下方にそれぞれ水平にガイドレール91,91'が設けられている。ステージ70は、その幅方向下端に、それぞれ3本ずつのステージ支持足77が形成されている。ステージ70は、例えば、ステンレス等により形成されている。
【0095】
パイプ保持部71は、棒状に形成されており、ステージ70の長さ方向の一端部で、且つ、ステージ70を両端から挟むようにそれぞれ1つずつ設けられている。パイプ保持部71は、ステージ70の下端から上端を越えて延びるように形成されている。パイプ保持部71は、例えば、ステンレス等により形成されている。
【0096】
パイプ押圧部72は、ウィンチ78、ワイヤー79、ワイヤーガイド80,80',80''、型芯軸支持台81、型芯軸82及び曲げ加工型92で構成されている。
【0097】
ウィンチ78は、ステージ70の長さ方向の一端中央部に設けられたウィンチ支持部85の上端部に取り付けられている。ウィンチ78は、ハンドル83及びハンドル83を回すことにより回転する滑車84で構成されている。滑車84にはワイヤー79が巻き付けられている。
【0098】
ワイヤー79は、例えば鋼製の細線で形成されており、滑車84から下方へ延びて、ステージ70の内空部76のワイヤーガイド80に係合されている。ワイヤーガイド80に係合したワイヤー79は、そこから水平にステージ70の長さ方向他端へ延び、ワイヤーガイド80'へ係合する。ワイヤーガイド80'へ係合したワイヤー79は、そこから上方へ延び、内空部76の半分の高さに設けられたワイヤーガイド80''へ係合されている。ワイヤーガイド80''へ係合したワイヤー79は、そこから水平方向且つステージ70の長さ方向一端へ戻るように延び、型芯軸支持台81の半分の高さ位置に形成された係合部90に係合されている。
【0099】
型芯軸支持台81は、ステージ70の内空部76に設けられている。型芯軸支持台81は、その上端部及び下端部の側方に、それぞれステージ70の内空部76に形成されたガイドレール91,91'に嵌合するための嵌合孔が形成されている。すなわち、型芯軸支持台81は、図15に示すように、このガイドレール91,91'に沿って、曲げ加工開始位置97から点線で示した最大移動位置98まで直線運動をするように構成されている。型芯軸支持台81は、ステージ70の内空部76の側部に形成された定荷重バネ部99により、曲げ加工開始位置97に引っ張られている。従って、ウィンチ78を作動させてワイヤー79を巻かない限り、型芯軸支持台81は曲げ加工開始位置97に位置している。また、ウィンチ78には不図示のストッパーが設けられている。このため、ワイヤー79を巻いて型芯軸支持台81を移動させても、ストッパーを取り外さない限り定荷重バネ部99の張力によって型芯軸支持台81は曲げ加工開始位置97に戻ることはない。
【0100】
型芯軸82は、棒状に形成されており、それが直立するように型芯軸支持台81に取り付けられている。型芯軸82は、ステージ70の上面から上方に突出するように設けられている。
【0101】
また、型芯軸支持台81及び型芯軸82は、ステンレス等により形成されている。
【0102】
曲げ加工型92は、所定の径を有する半円柱状に形成されている。曲げ加工型92は、その材質は特に限定されないが、例えば、加工し易いように木製であるのが好ましい。曲げ加工型92は、中央部に型芯軸82を嵌め込むための嵌め込み孔93が形成されている。曲げ加工型92は、この嵌め込み孔93に型芯軸82を嵌め込むことによりステージ70上に載置されるように構成されており、曲げ加工の際の所定の曲率を得るために、最適な曲げ加工型92をその都度選択して載置させることができる。
【0103】
(樹脂製パイプの曲げ加工方法)
次に、実施形態2に係る樹脂製パイプの曲げ加工方法について説明する。
【0104】
樹脂製パイプの曲げ加工方法に際し、まず、図14に示すように、パイプ曲げ加工補助具46を用意し、そのステージ70上に突出した型芯軸82に所望の曲げ加工の曲率に合わせて選択した曲げ加工型92を嵌め込む。
【0105】
次に、パイプ曲げ加工補助具46のステージ70の樹脂製パイプ載置予定部の両側に、ステージ70の高さと同程度の高さを有するパイプ両端支持テーブル95を設置する。このパイプ両端支持テーブル95により、昇温して軟化した樹脂製パイプ42について、その両端が垂れ下がってしまうのを抑制することができる。
【0106】
次に、直管の樹脂製パイプ42にパイプ内側保形加熱部材40を挿入して、曲げ加工予定部に対応させて内嵌めする。このとき、まず、パイプ内側保形加熱部材40の係合部55にそれぞれ紐等を係合させおく。次に、その紐を樹脂製パイプの一方の開口から中に通しておき、他方の開口から出しておく。続いて他方の開口から出しておいて紐等を引き抜くことにより、それに追従してパイプ内側保形加熱部材40が樹脂製パイプへ挿入される。
【0107】
続いて、パイプ外側保護部材41を樹脂製パイプ42の外側表面を覆うように設ける。パイプ外側保護部材41は、図11に示すように、例えば、肉厚3mm且つ幅90mmのシート状に形成されており、少なくとも樹脂製パイプ42の曲げ加工予定部全体を覆うように端から順に巻き付けられている。また、巻き付けられたパイプ外側保護部材41は、その両端が固定テープ44等により樹脂製パイプに固定されている。パイプ外側保護部材41は、例えば、Hs(ゴム硬度)が約30で、圧縮永久歪み(へたり具合)に関して一般的な市販のシリコンスポンジに比べて約4倍の耐性を有するシリコン樹脂で形成されている。
【0108】
ここで、上記のパイプ内側保形加熱部材40を樹脂製パイプ42に内嵌めする工程とパイプ外側保護部材41で樹脂製パイプ42を覆う工程とは、いずれが先であってもよい。
【0109】
次いで、図12に示すように、パイプ外側保護部材41で覆った樹脂製パイプ42の外側にパイプ外側保形部材43を被せて、曲げ加工予定部に対応させて外嵌めする。
【0110】
次いで、パイプ外側保形部材43の外側にパイプ外側加熱部材45を巻き寿司状に巻き付けて面状ファスナ63を貼り合わせることにより、パイプ外側加熱部材45の長辺端同士を結合させてパイプ外側保形部材43を被覆する筒状体に形成する。このとき、パイプ外側加熱部材45は、その帯状加熱体60が絶縁ニクロム線が縦方向に配列して埋設されているため、それぞれの絶縁ニクロム線が曲げに追従しやすく、いずれの位置においてもニクロム線が均一に配置されるため、樹脂製パイプの全体を均一に加熱し易い。
【0111】
次に、樹脂製パイプ42の管内にファン等を設置し、樹脂製パイプ42の両開口部を断熱材等により塞ぐ。
【0112】
続いて、このようにパイプ曲げ加工装置を取り付けた樹脂製パイプ42を、上記のパイプ曲げ加工補助具46のステージ70上に載置する。このとき、樹脂製パイプ42をステージ70の幅方向に延びるように、且つ、樹脂製パイプ42の中央部がステージ70の上面に形成した長孔74上であって曲げ加工型92から数cm離れた位置に載置する。また、樹脂製パイプ42の両端が、それぞれパイプ両端支持テーブル95上に位置するように載置する。
【0113】
次いで、樹脂製パイプ42の曲げ加工予定部を両側から挟むように、例えば耐熱性の紐96を樹脂製パイプ42に取り付ける。そして、耐熱性の紐96の他端をさらにパイプ保持部71にそれぞれ取り付ける。この際、耐熱性の紐96は伸縮しないものを用い、樹脂製パイプ42及びパイプ保持部71間をほぼ水平に繋いでいる。すなわち、樹脂製パイプ42がパイプ押圧部72で押圧されても、この耐熱性の紐96の張力により樹脂製パイプ42の両端が移動しないように構成されている。
【0114】
次いで、パイプ内側保形加熱部材40及びパイプ外側加熱部材45を昇温させる。これにより、樹脂製パイプ42の曲げ加工予定部は、パイプ内側保形加熱部材40によって直接的に加熱されると共にパイプ外側加熱部材45によってパイプ外側保形部材43を介して間接的に加熱されて所定温度にされて軟化する。なお、パイプ内側保形加熱部材40及びパイプ外側加熱部材45は、いずれも小型サーモスタット又は温度センサーによって温度制御する。また、このとき、樹脂製パイプ42の管内に設置したファンを作動させることにより管内の熱気を環流させて、樹脂製パイプ42全体を均一に昇温させる。
【0115】
続いて、パイプ内側保形加熱部材40及びパイプ外側加熱部材45による加熱を停止する。
【0116】
次に、管内のファンの作動を停止して、樹脂製パイプ42の両端の蓋及び管内のファンを取り除く。
【0117】
次いで、ウィンチ78のハンドル83を手動で巻き、滑車84を回転させてワイヤー79を巻き取る。このとき、図15に示すように、ワイヤーガイド80,80',80''を介してワイヤー79が型芯軸支持台81の係合部90に係合しているため、型芯軸支持台81が直線運動を開始する。そして、型芯軸支持台81が直線運動を開始すると、型芯軸支持台81に取り付けられた型芯軸82も同様に直線運動を開始する。さらに、型芯軸82が直線運動を開始すると、型芯軸82に嵌め込まれた曲げ加工型92も直線運動を開始する。
【0118】
次に、直線運動を開始した曲げ加工型92は、ステージ70上の運動方向に載置された樹脂製パイプ42を押圧する。このとき、樹脂製パイプ42は、その両端が耐熱性の紐96で固定されており、加熱処理により昇温して軟化しているため、曲げ加工型92の押圧力によって曲げ加工型92の形状に沿った形に曲げられる。
【0119】
ここで、パイプ内側保形加熱部材40及びパイプ外側保形部材43は、横方向に剛直に構成されているので、曲げ加工により樹脂製パイプ42の内側断面が潰れてしまうのが阻止され、また、長さ方向に屈曲可能に構成されているので、曲げ加工のために大きな力を作用させる必要がない。さらに、パイプ外側保護部材41が樹脂製パイプ42及びパイプ外側保形部材43の間に設けられているため、樹脂製パイプ42の表面に傷が付くことなく、樹脂製パイプ42の外表面の形状をより確実に保形することができる。
【0120】
次に、樹脂製パイプ42を曲げた状態でほぼ室温まで冷却させた後、パイプ外側加熱部材45、パイプ外側保形部材43、パイプ外側保護部材41及びパイプ内側保形加熱部材40を取り外す。
【0121】
以上のように、直管の樹脂製パイプ42を所定形状に曲げ加工した曲管の樹脂製パイプ42を、ウィンチ78の操作により熟練を要さず簡単に得ることができる。
【実施例】
【0122】
(実施形態1について)
上記実施形態1と同一のパイプ曲げ加工装置を用い、長さ4m、外径140mm、内径125mm(つまり、肉厚7.5mm)の樹脂製パイプ(VP125硬質塩ビ管)の曲げ加工を行った。なお、パイプ外側保形部材は、外径6mm及び内径5mmのアルミ製の管で長さ1mの剛体コイルで形成されたものを用いた。
【0123】
そして、パイプ内側保形加熱部材及びパイプ外側加熱部材共に135℃に昇温させて30分間樹脂製パイプの加熱を行った。
【0124】
次に、樹脂製パイプを曲げ半径が200mmとなり且つ曲げ角度が90℃となるように曲げ加工を行った。
【0125】
曲げ加工の結果、曲げ加工部分の曲げ方向及びそれに垂直な方向の外径がそれぞれ139mm及び138mmであった。従って、ほぼ同形状態を保持した状態で曲げ加工を行うことができた。また、外観も皺が無く良好であった。
【0126】
パイプ内側保形加熱部材は5.6kgと軽量であって操作性も優れている。部材本体が剛体製コイルで形成されたパイプ内側保形加熱部材及び剛体製コイルで形成されたパイプ外側保形部材のいずれも軸方向に捻って外径を変化させることにより容易に取り付け及び取り外しをすることができた。
【0127】
(実施形態2について)
上記実施形態2と同一のパイプ曲げ加工装置及びパイプ曲げ加工補助具を用い、長さ4m、外径140mm、内径125mm(つまり、肉厚7.5mm)の樹脂製パイプ(VP125硬質塩ビ管)の曲げ加工を行った。なお、パイプ外側保形部材は、外径6mm及び内径5mmのアルミ製の管で長さ1mの剛体コイルで形成されたものを用いた。また、パイプ外側保護部材41は、肉厚3mm且つ幅90mmのシート状に形成されており、Hs(ゴム硬度)が30で、圧縮永久歪み(へたり具合)に関して一般的な市販のシリコンスポンジに比べて4倍の耐性を有するシリコン樹脂製のものを用いた。
【0128】
そして、パイプ内側保形加熱部材及びパイプ外側加熱部材共に135℃に昇温させて30分間樹脂製パイプの加熱を行った。
【0129】
次に、パイプ曲げ加工補助具により樹脂製パイプを曲げ半径が200mmとなり且つ曲げ角度が90℃となるように曲げ加工を行った。
【0130】
曲げ加工の結果、曲げ加工部分の曲げ方向及びそれに垂直な方向の外径がそれぞれ139mm及び138mmであった。従って、ほぼ同形状態を保持した状態で曲げ加工を行うことができた。また、外観も皺が無く良好であった。
【0131】
(作用効果)
次に、本発明に係るパイプ曲げ加工装置の作用効果について説明する。
【0132】
以上の構成のパイプ曲げ加工装置によれば、パイプ内側保形加熱部材10,40が樹脂製パイプに挿入できるような簡易な曲げ構成であるので、パイプ内側保形加熱部材10,40を樹脂製パイプに挿入して内嵌めし、それを加熱して軟化させることにより容易に曲げ加工を施すことができる。また、パイプ内側保形加熱部材10,40が横方向に剛直に構成されているので、曲げ加工により樹脂製パイプの内側断面が潰れてしまうのを阻止することができる。さらに、パイプ内側保形加熱部材10,40が長さ方向に屈曲可能に構成されているので、大きな力を作用させることなく樹脂製パイプの曲げ加工を行うことができる。また、曲げ加工の後は、樹脂製パイプを冷却してパイプ内側保形加熱部材10,40を引き抜くだけでよい。従って、作業者の熟練が不要であると共に従来よりも加工能率が高いものとなる。
【0133】
また、パイプ内側保形加熱部材10,40が剛体製コイルで形成されているので、これを軸回転方向に捻ることによりその外径を縮小させることができる。従って、部材本体11を軸方向に捻って縮径させることにより、パイプ内側保形加熱部材10を樹脂製パイプに容易に挿入することができる。一方、樹脂製パイプを曲げ加工処理した後には、部材本体11を軸方向に捻って縮径させることにより、パイプ内側保形加熱部材10を樹脂製パイプから容易に取り出すことができる。
【0134】
さらに、可撓性ヒータ12,51が部材本体11,50の長さ方向に沿って取り付けられているので、部材本体11,50の外部に別体の加熱装置を設ける場合に比較して装置構成のコンパクト化を図ることができる。
【0135】
また、弾性材13,52の弾性力により可撓性ヒータ12,51が部材本体11,50に押し付けられるので、可撓性ヒータ12,51からの熱を効率よく部材本体11,50に伝導させることができる。従って、加熱開始から早期に樹脂製パイプの曲げ加工を行うことができる。
【0136】
さらに、弾性材52は、剛体製コイルで形成されているため、パイプ内側保形加熱部材40が内空形状となる。このため、樹脂製パイプを加熱する際、パイプ内側保形加熱部材40内にファンを設けて部材内部の熱気を環流させて、樹脂製パイプの加熱部の全体を一様に且つ効率的に加熱することができる。
【0137】
また、ハンドル14が外部に出るように樹脂製パイプにパイプ内側保形加熱部材10を挿入して内嵌めし、そのハンドル14を握って作業することができるので、人の手で容易に樹脂製パイプの曲げ加工を行うことができる。
【0138】
さらに、樹脂製パイプの曲げ加工の際に、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されたパイプ外側保形部材18,43を樹脂製パイプに被せて外嵌めすることにより、曲げ加工時の樹脂製パイプの外表面に皺や変形が生じるのを抑制することができる。
【0139】
また、パイプ外側保形部材18,43の外側を被覆するように構成されたパイプ外側加熱部材21,45をさらに備えるため、樹脂製パイプの外側からもさらに加熱することができ、樹脂製パイプの肉厚方向の温度分布を均一にすることができる。従って、樹脂製パイプ内の温度分布が曲げ加工に影響を及ぼすのを規制することができる。
【0140】
さらに、樹脂製パイプにパイプ外側保形部材43を被せて外嵌めする前に、樹脂製パイプをパイプ外側保護部材41で被覆しており、パイプ外側保形部材43と樹脂製パイプとの間にパイプ外側保護部材41が介在した状態で樹脂製パイプの曲げ加工を行うため、パイプ外側保形部材43によって樹脂製パイプ表面に傷等が生じるのを抑制することができる。さらに、パイプ外側保形部材43の形状を問うことなく、曲げ加工の際のパイプ外側保形部材43からの圧力を一様に樹脂製パイプに伝えるため、樹脂製パイプの加工形状が良好となる。また、このパイプ外側保護部材41はシリコン樹脂製であるため、樹脂製パイプの外表面を覆った状態で、パイプの横方向に弾性を有し且つ縦方向に伸縮性を有する。このため、樹脂製パイプの曲げに柔軟に追従することができ、樹脂製パイプの曲げ加工の際にパイプ外側保護部材41の切断等が生じず、よりパイプの曲げ加工精度が向上する。
【0141】
また、パイプ曲げ加工補助具46を用いて曲げ加工を行うと、樹脂製パイプの曲げ加工予定部をステージ70に載置し、その樹脂製パイプを曲げ加工予定部の両側から保持した状態でパイプ押圧部72により樹脂製パイプを横方向から押圧すればよいため、容易に樹脂製パイプに曲げ加工を施すことができる。また、人の手によって直接樹脂製パイプを曲げるものと比べて、より作業者の熟練が不要であると共に、曲げ加工の能率が高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上説明したように、本発明は、パイプを所定形状に曲げ加工するのに用いられるパイプ曲げ加工装置及びパイプ曲げ加工補助具並びにパイプ曲げ加工方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の実施形態に係るパイプ内側保形加熱部材10の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパイプ内側保形加熱部材10の断面図である。
【図3】(a)はパイプ外側保形部材18の斜視図、(b)はパイプ外側保形部材18の断面図を示す図である。
【図4】パイプ外側加熱部材21の斜視図である。
【図5】曲げR治具27の斜視図である。
【図6】エンドキャップ28の斜視図である。
【図7】実施形態1に係る樹脂製パイプの曲げ加工作業を示す説明図である。
【図8】実施形態1に係る他の樹脂製パイプの曲げ加工作業を示す説明図である。
【図9】パイプ内側保形加熱部材40の斜視図である。
【図10】パイプ内側保形加熱部材40の断面図である。
【図11】樹脂製パイプ42にパイプ外側保護部材41を巻き付けた様子を示す図である。
【図12】樹脂製パイプ42にパイプ外側保形部材43を被せた様子を示す図である。
【図13】パイプ外側加熱部材45の斜視図である。
【図14】パイプ曲げ加工補助具46を用いた実施形態2に係る樹脂製パイプの曲げ加工作業を示す説明図である。
【図15】パイプ曲げ加工補助具46の側断面図である。
【符号の説明】
【0144】
10 パイプ内側保形加熱部材
11 部材本体
12 可撓性ヒータ
13 弾性材
14 ハンドル
15 連結バンド
18 パイプ外側保形部材
19 アルミ管
21 パイプ外側加熱部材
27 R治具
28 エンドキャップ
29 ハンドル部材嵌合孔
30 作業台
40 パイプ内側保形加熱部材
41 パイプ外側保護部材
42 樹脂製パイプ
43 パイプ外側保形部材
45 パイプ外側加熱部材
50 部材本体
51 可撓性ヒータ
52 弾性材
70 ステージ
71 パイプ保持部
72 パイプ押圧部
78 ウィンチ
79 ワイヤー
81 型芯軸支持台
82 型芯軸
92 曲げ加工型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工するのに用いられるパイプ曲げ加工装置であって、樹脂製パイプに挿入して内嵌めできるように長物状に形成されていると共に、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されたパイプ内側保形加熱部材を備えることを特徴とするパイプ曲げ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたパイプ曲げ加工装置において、
上記パイプ内側保形加熱部材は、部材本体が剛体製コイルで形成されていることを特徴とするパイプ曲げ加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたパイプ曲げ加工装置において、
上記パイプ内側保形加熱部材は、上記部材本体の内側に長さ方向に沿って取り付けられた可撓性ヒータを有することを特徴とするパイプ曲げ加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたパイプ曲げ加工装置において、
上記パイプ内側保形加熱部材は、上記部材本体に対して上記可撓性ヒータを押しつけるように該部材本体に挿入して設けられた弾性材を有することを特徴とするパイプ曲げ加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたパイプ曲げ加工装置において、
上記弾性材は、剛体製コイルで形成されていることを特徴とするパイプ曲げ加工装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたパイプ曲げ加工装置において、
上記パイプ内側保形加熱部材は、少なくとも一方の部材端に長さ方向に延びるハンドルが設けられていることを特徴とするパイプ曲げ加工装置。
【請求項7】
請求項1に記載されたパイプ曲げ加工装置において、
樹脂製パイプに被せて外嵌めできるように長物状に形成されていると共に、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成されたパイプ外側保形部材をさらに備えることを特徴とするパイプ曲げ加工装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたパイプ曲げ加工装置において、
上記パイプ外側保形部材の外側を被覆するように構成されたパイプ外側加熱部材をさらに備えることを特徴とするパイプ曲げ加工装置。
【請求項9】
樹脂製パイプを所定形状に曲げ加工する方法であって、
樹脂製パイプに、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成された長物状のパイプ内側保形加熱部材を挿入して内嵌めするステップと、
上記パイプ内側保形加熱部材によって上記樹脂製パイプを加熱するステップと、
上記加熱した樹脂製パイプを所定形状に曲げるステップと、
上記所定形状に曲げた樹脂製パイプを冷却した後に該樹脂製パイプから上記パイプ内側保形加熱部材を取り出すステップと、
を備えたことを特徴とするパイプ曲げ加工方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたパイプ曲げ加工方法において、
上記樹脂製パイプを所定形状に曲げるステップの前に、樹脂製パイプに、横方向に剛直で且つ長さ方向に屈曲可能に構成された長物状のパイプ外側保形部材を被せて外嵌めするステップをさらに備えたことを特徴とするパイプ曲げ加工方法。
【請求項11】
請求項10に記載されたパイプ曲げ加工方法において、
上記樹脂製パイプにパイプ外側保形部材を被せて外嵌めするステップの前に、樹脂製パイプをパイプ外側保護部材で被覆するステップをさらに備えたことを特徴とするパイプ曲げ加工方法。
【請求項12】
請求項11に記載されたパイプ曲げ加工方法において、
上記パイプ外側保護部材としてシリコン樹脂製のものを用いることを特徴とするパイプ曲げ加工方法。
【請求項13】
樹脂製パイプの曲げ加工予定部を載置するためのステージと、
上記ステージに載置された樹脂製パイプを、その曲げ加工予定部を両側から挟むように保持するパイプ保持部と、
上記ステージ上で上記パイプ保持部に保持された樹脂製パイプの横方向に可動に設けられ、樹脂製パイプを横方向から押圧して曲げ加工するパイプ押圧部材と、
を備えたことを特徴とするパイプ曲げ加工補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−150934(P2006−150934A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223968(P2005−223968)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(503251271)
【Fターム(参考)】