説明

パウチ型リチウム二次電池

【課題】容器内部にあるリードの端部との接触により容器内壁に損傷が発生するのが防止されたパウチ型リチウム二次電池を提供すること。
【解決手段】パウチ型リチウム二次電池は、正極板6と、セパレータ8と、負極板7とを有する電極体と、前記電極体を収納する空間が密閉面15において密閉されているケース13と、極板から伸長するタブ1Aと、タブ1Aと電気的に接続されたリード4Aと、リード4Aの両面を被覆して2面の密閉面15を接着させる絶縁シール部2と、リード4の端部近傍の表面を被覆する保護層3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ型リチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウム二次電池の極板群を収納するための容器として、二次電池の軽量化および価格低減を考慮して、ラミネート加工されたアルミニウム箔製のパウチ型容器が知られている。
【0003】
パウチ型容器に極板群が収納されてなるリチウム二次電池(以下、パウチ型リチウム二次電池という)では、パウチ型容器の内部を減圧した状態で、容器開口部を熱融着等により封止(シール)することで、容器内部に極板群を密閉している。正極板および負極板から突出したタブに接続されたリードは、容器開口部のシール部を通過して容器外部に引き出される。ところが、シール部においてリードと容器との接着性が低下し、容器の密閉性が損なわれる問題があった。
【0004】
特許文献1では、シール部を通過する箇所のリード表面を熱融着性樹脂で被覆することで、この熱融着性樹脂によりリードとシール部を接着することで容器の密閉性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−233133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パウチ型リチウム二次電池は容器が柔軟性を有するものであるため、減圧下で封止を行なう際または電池を取り扱う際に、容器内部にあるリードの端部が容器の内壁に密着して、それにより容器内壁が傷つけられやすくなるという問題があった。特にパウチ型リチウム二次電池全体の厚みが薄くなるに従い、相対的にリードの厚みが増大し、リードの端部と容器内壁が接触して損傷が発生する可能性が高くなる。パウチ型リチウム二次電池の安全性及び信頼性向上のため、このような損傷の発生を回避する必要があった。
【0007】
本発明は、以上に鑑み、容器の密閉性を確保しつつも、容器内部にあるリードの端部との接触により容器内壁に損傷が発生するのが防止されたパウチ型リチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、正極板と、セパレータと、負極板とを有する電極体と、前記電極体および電解液を収納する空間を内部に有すると共に、前記空間の縁に沿って、対向する2面の密閉面を有し、当該密閉面の接着により前記空間が密閉されるケースと、前記正極板および前記負極板の各々から伸長するタブと、前記密閉面または前記空間において前記タブと電気的に接続され、一端または中間部は前記2面の密閉面に挟まれ、他端は前記ケースの外部に突出しているリードと、前記2面の密閉面の端面近傍において前記リードの両面を被覆し、前記2面の密閉面を接着させる絶縁シール部と、前記リードの前記一端近傍の少なくとも一部の表面を被覆する保護層と、を有する、パウチ型リチウム二次電池である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パウチ型リチウム二次電池において、容器の密閉性を確保しつつも、容器内部にあるリードの端部が容器内壁と接触するために容器内壁に損傷が発生するのを防止することができる。その結果、安全性及び信頼性が向上したパウチ型リチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態におけるタブとリードを分離して示す概念図
【図2】図1におけるリード、絶縁シール部および保護層の関係を示す平面図
【図3】従来技術におけるリードと絶縁シール部の関係を示す平面図
【図4】本発明の一実施形態に係るパウチ型リチウム二次電池の構成を示す断面図
【図5】長尺リードからリードを切り出す際の切断線を示す図
【図6】リードが折り曲げ構造を有する場合の長手方向における断面図
【図7】リードの幅方向断面の形状の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下に限定されない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るパウチ型リチウム二次電池のタブ付近を拡大して示す概念である。ここでは、タブとリードを分離して図示している。図4は、同実施形態に係るパウチ型リチウム二次電池の構成を示す断念図である。なお、パウチ形リチウム二次電池は、一般にラミネート型パウチ形リチウム二次電池とも呼ばれている。
【0013】
本実施形態に係るパウチ型リチウム二次電池は、電極体9と、これを収容する空間を提供するケース13とを含む。電極体9は、正極板6、負極板7、及び、前記正極板6と負極板7との間に介在され、これらを電気的に絶縁させるセパレータ8とを備える。正極板6と負極板7の一端からは、正極タブ1Aと負極タブ1Bがそれぞれ引き出されている。図1および図4では、正極板が2枚存在し、負極板が1枚示されているが、これに限定されない。図4では、正極タブ1Aを含む断面を図示している。いずれかの極板が2枚以上存在するときには、図4に示すように、それぞれの極板から引き出されたタブは極板毎に集められる。
【0014】
ケース13は、高分子フィルムとアルミニウムなどの金属シートをラミネートして形成したシートで製造したパウチ型ケースである。ケース13の内部には電極体9と電解液を収容できる空間が形成され、通常、上部及び下部ケースが相互分離可能に接合されている。
【0015】
正極タブ1A、負極タブ1Bはそれぞれ、正極リード4A、負極リード4Bに電気的に接続される。以下では正極タブ1A、負極タブ1Bを総称してタブ1といい、正極リード4A、負極リード4Bを総称してリード4という。タブ1はケース13の外部には伸長していないが、リード4はケース13の外部に伸長している。ケース13からリード4が突出する部分において、リード4の両面は、絶縁シール部2によって被覆されている。絶縁シール部2が存在することで、リード4と、ケース内面の密閉面15との接合が達成され、ケース13の密閉性を確実にしている。リード4の容器内部にある端部近傍の表面には、当該表面の少なくとも1部を被覆する保護層3が設けられている。これにより、容器内部にあるリードの端部が容器内壁と接触して、容器に損傷を与えることを防止している。
【0016】
図2は、図1の矢印方向から絶縁シール部2、保護層3およびリード4を見た平面図である。リード長手方向におけるリード4の中央付近には、絶縁シール部2が配置され、ケース内側にある側の端部の近傍には保護層3が配置される。絶縁シール部2はケース13の密閉面15に挟まれ、例えば熱融着されることで、密閉面15およびリード4との接着に資する。保護層3は、リード4の容器内部にある端部の表面に設けられている。リードの端部が保護層により被覆されているため、リードの端部が容器内壁と直接接触することは回避され、容器内壁に損傷を与えることを防止できる。
【0017】
本願において「接着」は熱融着(熱溶着ともいう)により好適に達成することができるが、これに限定されない。例えば、超音波溶着、誘導加熱溶着、インパルス溶着、または、バイブレーション溶着により達成することもできる。
【0018】
図3は、絶縁シール部2のみを設け、保護層3を設けていない従来のリード5を、図2と同様の方向から見た平面図である。リード5の容器内部にある端部には、保護層3が設けられておらず、露出している。そのため、リードの端部が容器内壁と直接接触することになり、容器内壁に損傷を与える可能性が高い。
【0019】
図1および図4では平面状に収納された電極群を示したが、本発明では、電極群を捲回して容器に収納することで捲回型のパウチ型リチウム二次電池を構成することも可能である。
【0020】
次に、本実施形態のパウチ型リチウム二次電池の各構成要素を説明する。
【0021】
<<電極体>>
本実施形態のパウチ型リチウム二次電池における電極体は、正極板6、負極板7、及び、正極板6と負極板7との間に介在され、これらを電気的に絶縁させるセパレータ8とを備える。正極板6と負極板7はそれぞれ、集電体と、その表面に形成された活物質層からなり、活物質層同士が対向するように配置される。図1および図4では、両面に活物質層を有する負極板が1枚と、片面に活物質層を有する正極板2枚から構成された電極体を示しているが、これに限定されない。図1と図4における正極板と負極板の関係は逆であってもよい。
【0022】
<<正極板>>
正極板6は、正極集電体と、正極集電体の片面または両面に設けられた正極活物質層とを有する。正極活物質層は、例えば、正極活物質、結着剤および導電助剤より構成される。
【0023】
正極集電体は、導電性を有するシート状の部材であり、典型的には金属箔で構成される。金属箔に代えて、多数の孔を有する部材(金属メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル)も使用できる。正極集電体を構成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を好適に使用できる。
【0024】
正極活物質としては、二酸化マンガン(MnO)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMnまたはLiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−y)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn2−yNi)、オリビン構造を有するリチウムリン酸鉄(LiFePO)等の酸化物を使用できる。上記化学式の「x」および「y」は、それぞれ、0〜1の範囲の値であり得る。好ましい正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムリン酸鉄が挙げられる。これらは、金属リチウムの電位に対して例えば3.0V以上5.0V以下の充放電電位を有する。
【0025】
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の樹脂材料を使用できる。
【0026】
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素材料を使用できる。
【0027】
<<負極板>>
負極板7は、負極集電体と、負極集電体の片面または両面に設けられた負極活物質層とを有する。負極活物質層は、例えば、負極活物質、結着剤および導電助剤より構成される。
【0028】
負極集電体も導電性を有するシート状の部材であり、典型的には金属箔で構成される。金属箔に代えて、多数の孔を有する部材(金属メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル)も使用できる。負極集電体を構成する材料としては、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を好適に使用できる。
【0029】
負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金、リチウムチタン複合酸化物(例えばLiTi12)、リチウムイオンを吸蔵および放出できる炭素材料、リチウムと合金を形成し得る材料(いわゆる合金系活物質)等を使用できる。炭素材料としては、グラファイトが代表的である。合金系活物質としては、スズ、スズ合金、シリコンおよびシリコン合金が挙げられる。充放電効率およびサイクル寿命の観点から、炭素材料またはリチウムチタン複合酸化物を好適に使用できる。
【0030】
結着剤および導電助剤としては、正極板におけるそれらに関して使用可能な物質を同様に使用できる。
【0031】
負極活物質層が、金属リチウムの電位に対して1.0V以上貴な電位を有する負極活物質を含む場合、負極集電体を構成する材料は、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0032】
<<セパレータ>>
セパレータ8としては、多孔質フィルム、不織布等を使用できる。多孔質フィルムとしては、ポリエチレンまたはポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを例示できる。不織布としては、セルロースまたはポリビニルアルコール(PVA)から形成された不織布を例示できる。
【0033】
<<電解液>>
正極板6、負極板7およびセパレータ8からなる電極体9には、電解液が含浸されている。電解液としては、電解質と有機溶媒とを含む液状の非水電解液が挙げられる。
【0034】
電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)等のリチウム塩が挙げられる。化学的安定性と高誘電率化の観点から、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を主たる電解質として用いることが好ましい。「主たる電解質」とは、モル比にて最も多く含まれる電解質を意味する。電解質は、有機溶媒に対して、例えば0.5〜2.0mol/Lの濃度で溶解して電解液を構成することができる。
【0035】
有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネートを使用できる。また、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)等の環状エーテル、ジメトキシエタン(DME)等の鎖状エーテル、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等も使用できる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で使用できる。
【0036】
<<ケース>>
ケース13は、電極体9および電解液を内部の空間に収納する容器である。パウチ型リチウム二次電池におけるケース13は通常、2枚のアルミニウムラミネートシートを貼り合わせることで形成される。貼り合せは、電極体9および電解液を収納する空間の縁に沿って行なわれる。具体的には、前記空間の縁に沿って、容器の内側に、対向する2面の密閉面15が存在し、当該密着面同士を接着することで、2枚のアルミニウムラミネートシートが貼り合わせられて、前記空間を密閉する。
【0037】
ケース13を構成するアルミニウムラミネートシートは、アルミニウム箔表面に樹脂層がラミネートされているものである。樹脂層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。これらの樹脂層は1層のみであってもよいし、2層以上を積層したものであってもよい。
【0038】
この樹脂層同士が対向するように2枚のアルミニウムラミネートシートを対向させ、例えば熱融着させることで、密閉面を容易に接着することができる。また、樹脂層がアルミニウム箔の内表面に形成されていることで漏電を防止することができる。
【0039】
<<タブ>>
タブ1は、各極板の集電体の一片の一部が集電体の面方向に突出することで形成され、電池外部に伸長するリードと接続される部分である。タブは集電体と同じ材料で構成され、表面には活物質層が形成されていない。タブ1には、正極板の正極集電体から伸長する正極タブ1Aと、負極板の負極集電体から伸長する負極タブ1Bの双方がある。図1では双方のタブを示しており、図4では正極タブのみを示しているが、負極タブ周辺も図4の正極タブの周辺と同様に構成され得る。ただし、図4では、2枚の正極集電体から引き出された2枚の正極タブを積層して正極タブ1Aとしているが、負極タブ1Bは1枚のタブのみから構成される。
【0040】
タブ1は、図4に示すように2面の密閉面15に挟まれる領域まで伸長し、密閉面の接着によりリードと合わせて固定されていることが好ましい。これにより、リード端部によるケース内壁の損傷をより確実に回避できる。しかし、タブ1は、2面の密閉面15に挟まれておらず、密閉面の手前まで伸長している形態であってもよい。この場合リードの端部は、密閉面を超えて、ケース内部の空間まで伸長して、そこでタブと接続される。なお、タブの端部は容器1の外部には伸長していない。
【0041】
<<リード>>
リード4は、パウチ型リチウム二次電池内部の空間または密閉面からケースの外部まで伸長している部材であり、タブと電気的に接続され、電池内部から電流を外部に引き出すための端子である。リードとタブとの接続は、タブの一面にリードを重ね合わせ、両者を溶接等により連結することで行なわれる。
【0042】
容器内側にあるリード4の一端は、図4に示すように2面の密閉面15で挟まれていることが好ましい。これによると、密閉面により当該一端が固定されることになるので、ケース内壁の損傷をより確実に回避できる。しかし、当該一端は、密閉面を超えて、ケース内部の空間まで伸長してもよい。
【0043】
リード4を構成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、ステンレス等の金属を使用できる。
【0044】
リードは、長手方向において、図4に示すように平らであってもよいが、平らではない領域を有するものであってもよい。具体的には、図6に示すように、リードの中部に折り曲げ構造を有することで、リードの一部をV形状に形成し、リードの剛性を高めることができる。このような折り曲げ構造を有すると、リードが外部荷重を受けたときに変形しにくいという利点がある。一方で、このような折り曲げ構造が容易内部に含まれると、リードと容器内壁とが接触しやすくなるため、従来のパウチ型リチウム二次電池では容器内壁に損傷が発生する危険性が高くなる。そのため、リードが長手方向において平らではない領域を有する場合には、本発明のパウチ型リチウム二次電池によって容器内壁の損傷を回避する構成を採用することの意義が大きい。この場合、図6に示すように、折り曲げ構造のうち少なくとも鋭角に突出した部分を被覆するように保護層を設けることが好ましい。しかし、突出した部分が滑らかな形状を有する場合には、容器内壁に損傷を与えにくいので、当該部分を保護層により被覆する必要はない。
【0045】
また、リードの長手方向と直交する方向(すなわち、リードの幅方向)におけるリード断面は、方形であってもよいが、図7に示すように、V形状、W形状、またはU形状であってもよい。これにより、リードの剛性を高め、リードが外部荷重を受けたときに変形しにくくすることができる。しかし、このような断面で特に、V形状、W形状など鋭角部を有する場合に、リードと容器内壁との接触により容器内壁に損傷を与える可能性が高まるが、当該鋭角部を保護層により被覆することで容器内壁の損傷を回避することができるため好ましい。
【0046】
<<絶縁シール部>>
リード4の両面の一部を、絶縁シール部2が被覆している。絶縁シール部2は、リード4の長手方向中央付近でリード4の両面を被覆し、リード4の両端近傍には存在していない。絶縁シール部は少なくとも1部が密閉面15の端面(容器13の端面)近傍に位置している。リードが容器から突出している箇所においては、図4で示すように、2面の密閉面は、絶縁シール部とリードを間に介して接着されることになる。
【0047】
絶縁シール部2を設けることで、リード突出部分において密閉面による封止を確実にすることができ、容器の密閉性を高めることができる。また、当該シール部は絶縁性を有するので、アルミニウムが露出している密閉面の端面とリードが接触することで漏電が生じることも防止できる。
【0048】
絶縁シール部2の形状はシート形状であればよいが、パウチ型リチウム二次電池の上面からみると、図2に示すように通常は四角形である。封止を確実にするため、リードの幅方向両端から突出するように形成されていることが好ましい。すなわち、リードの幅方向における絶縁シール部2の幅は金属リードの幅以上であることが好ましい。絶縁シール部2の長さは特に限定されないが、密閉面との接着が可能になる程度であればよい。絶縁シール部2の厚みはリード4の厚みに合わせて設定することができ、リードの厚みに応じてリード4も厚くすることが好ましい。
【0049】
絶縁シール部2は、2面の密閉面に挟まれた領域のみに配置され、容器の外部に伸長していなくてもよいが、図4で示すように、密閉面の端面から容器の外部に伸長するように配置されていることが好ましい。これによると、リードと密閉面の端面がより接触しにくくなるので、より確実に漏電を防止できる。
【0050】
図4では、タブ1の端部と絶縁シール部2と接触していないが、タブ1の端部は絶縁シール部2と接触するまで伸長していてもよい。
【0051】
絶縁シール部2を構成する材料は電気絶縁性であり、限定されないが、アルミニウムラミネートシートの樹脂層と同じ材料であってよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。また、熱硬化性樹脂や、ゴム性樹脂を使用することもできる。また、絶縁シール部は多層構造であってもよい。
【0052】
絶縁シール部とリードとの接着は、リードの表面に対しエッチング処理、腐食防止処理、めっき処理等の表面処理を行った後、所定サイズの絶縁シート2枚でリードの両面を挟み込み、熱融着により行なうことが好ましい。また、リードに接着された絶縁シール部と密閉面との接着は、密閉面同士の接着と同時に、熱融着により行なうことができる。
【0053】
<<保護層>>
本実施形態に係るパウチ型リチウム二次電池は、容器内部にあるリード4の端部の少なくとも一部の表面を被覆する保護層3を有する。リードの端部が保護層で被覆されていることにより、減圧下で封止を行なう際または電池を取り扱う際に、リード端部が容器内壁と接触することで容器内壁に損傷を与えることを回避できる。
【0054】
保護層3は、リードの長手方向で、図2および図4で示すように、絶縁シール部2から分離している。絶縁シール部2と保護層3の間に挟まれ、リード表面が露出している部分において、リードはタブと接続される。
【0055】
保護層の形状は特に限定されないが、加工性を優先すると、シート形状であってよい。この場合、パウチ型リチウム二次電池の上面からみると、図2に示すように通常は四角形である。保護層はリードの端部全幅(リードの幅方向における全幅)を被覆せずに、リードの端部の一部を被覆するだけでも本発明の効果を達成できるが、損傷を確実に予防するためには、リードの端部全幅を被覆していることが好ましい。さらに、損傷をより確実に防止するため、図2のようにリードの幅方向両端から突出するように形成されていることが好ましい。従って、リードの幅方向における保護層の幅は金属リードの幅以上であることが好ましい。保護層の長さは特に限定されないが、例えば絶縁シール部の長さ以下であってよい。保護層の厚みは特に限定されないが、絶縁シール部の厚みと同程度であってよい。また、図4の保護層3は容器内部にあるリードの端面(長手方向での端面)を被覆しておらず、当該端面が露出しているが、当該端面も被覆するように保護層3を形成することもできる。
【0056】
保護層3は、損傷防止の観点、また、接着性向上の観点から、リードの上下両面に形成されることが好ましい。しかし、リードの片面のみに形成されたものであってもよい。このような形態であっても一定の効果を達成することができる。片面のみに形成する場合は、図4におけるリードの上面(リードがタブと接触していない側の面)に保護層を設けることが好ましい。上面の端部のほうが、容器内壁に接触する可能性が高いためである。
【0057】
保護層3を構成する材料は特に限定されず、樹脂、金属を使用でき、樹脂が好ましい。容器内壁に損傷を与えるのを回避するため、軟らかい材料が好ましい。しかし、硬い材料であっても、保護層に面取り加工やエッチング加工を施すことで使用できる。金属を使用する場合には、タブやリードの材料と同じ金属を使用することができる。樹脂としては、アルミニウムラミネートシートの樹脂層と同じ材料であってよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。また、保護層は多層構造であってもよい。また、製造を容易にするため、保護層3は、絶縁シール部2と同じ樹脂材料から形成されていることが好ましい。
【0058】
保護層3は、密閉面と対向するように配置され、ここにおいて、2面の密着面は、リードと保護層を介して接着されていることが好ましい。これにより、リードと密着面の接触面積が大きくなり、リードがより強固に容器に固定されるので、傷の発生をより確実に防止できる。また、リード突出部分において密閉面による封止をより確実にして、容器の密閉性をさらに高めることができる。この場合、保護層が樹脂材料からなる場合、保護層とリードとの接着は、リードの表面に対しエッチング処理、腐食防止処理、めっき処理等の表面処理を行った後、所定サイズの絶縁シート2枚でリードの両面を挟み込み、熱融着により行なうことが好ましい。また、リードに接着された保護層と密閉面との接着を行なう場合は、密閉面同士の接着と同時に、熱融着により行なうことができる。
【0059】
保護層が金属材料からなる場合は、金属材料からなる保護層用の部材をリード端部に接着してもよいし、リード端部に、保護層に相当する突出部を設けてもよい。
【0060】
<<製法>>
次に、本実施形態のパウチ型リチウム二次電池の製造方法の一例を説明するが、本発明は以下に限定されない。
【0061】
まず、正極板とセパレータと負極板とを積層して電極体を形成し、容器の内部に収容する。この際、正極板および負極板の各々から伸長しているタブは、容器の密閉面に挟まれるように配置する。この時点ではまだ密閉面の接着はしていない。次に、絶縁シール部と保護層が付着したリードを用意し、絶縁シール部と保護層との間に挟まれ金属が露出しているリード表面と、タブ表面とを、超音波溶接、スポット溶接等により接合する。次に、熱融着により、容器の密閉面を密着させる。この際、絶縁シール部を密閉面と熱融着により接着させることで、リード周辺の密閉性を向上させる。保護層が絶縁シール部と同じ材料から構成されている場合は、保護層と密閉面を同様に熱融着により接着させることができる。
【0062】
上述した絶縁シール部と保護層が付着したリードは、予め、リード表面に絶縁シール部と保護層を付着させることで形成することができる。また、保護層が絶縁シール部と同じ材料から構成されている場合は、例えば以下のような方法により、絶縁シール部と保護層が付着したリードを形成することもできる。
【0063】
図5は、市販されている絶縁シール部付き長尺リードの平面図である。従来の、絶縁シール部のみが付着したリードは、符号14で示すように、前記長尺リードの、隣り合う2つの絶縁シール部間の中央線を順次切断することで形成される。一方、上述した絶縁シール部と保護層が付着したリードは、符号12で示すように、長尺リード上の絶縁シール部の、リード長さ方向の中央線と、2つの絶縁シール部間の中央線を交互に切断することで、1.5個の絶縁シール部が付着したリードを切り出すことで形成することができる。切り出したリードにおいて、0.5個の絶縁シール部は保護層に相当することになる。図5では1つのリードに1.5個の絶縁シール部が付着しているように切り出しているが、切り出し方法はこれに限定されない。例えば、1.2個の絶縁シール部、または、2個の絶縁シールが付着するように切り出すことも可能である。
【0064】
以上では、絶縁シール部と保護層があらかじめ付着しているリードを用いて本実施形態のパウチ型リチウム二次電池を製造する方法を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図3で示したような絶縁シール部のみが設けられている従来のリードを用いて本実施形態のパウチ型リチウム二次電池を製造することも可能である。この場合、例えば、上述した従来のリードをタブと接合してから、所定のリード表面に保護層3を配置すればよい。この場合の保護層としては、接着性樹脂若しくは熱硬化性樹脂、又は、樹脂テープを用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例)
まず、正極活物質としてコバルト酸リチウム100重量部、導電剤としてアセチレンブラック2重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン2重量部の混合物に、固形分濃度が50%程度になるように適量のN−メチル−2−ピロリドンを加え、双腕式練合機にて撹拌し混練することで、正極合剤塗料を調製した。
【0067】
この正極合剤塗料を、厚み15μmのアルミニウム箔である正極集電体の片面に塗布して、乾燥後プレスすることで、正極合剤層(活物質層)の厚みが70μmとなる正極を作製した。この正極から、幅10mm×長さ10mmのタブが付いた幅40mm×長さ60mmの正極板6を2枚切り出した。タブ表面には正極合剤層は形成されていない。
【0068】
次に、負極活物質として、リチウムチタン複合酸化物(LiTi12)100重量部、導電剤として気相成長炭素繊維(VGCF)4重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン5重量部の混合物に、固形分濃度が50%程度になるように適量のN−メチル−2−ピロリドンを加え、双腕式練合機にて撹拌し混練することで、負極合剤塗料を調製した。
【0069】
この負極合剤塗料を、厚み15μmのアルミニウム箔である負極集電体の両面に塗布して、乾燥後プレスすることで、負極合剤層(活物質層)の厚みが片面あたり100μmとなる負極を作製した。この負極から、幅10mm×長さ10mmのタブが付いた幅38mm×長さ58mmの負極板7を1枚切り出した。タブ表面には負極合剤層は形成されていない。
【0070】
セパレータ8としては、旭化成社製のポリプロピレン製微多孔膜(厚み25μm)を、幅44mm×長さ64mmのサイズで使用した。
【0071】
正極板6および負極板7を、各活物質層が対向するようにして、図4に示すようにセパレータ8を介して重ね合わせて、電極体9を構成した。
【0072】
次に、幅5mmのアルミ製金属リードに、当該リードの外面(両面)を覆い包む絶縁シール部が15mmピッチで配置された、幅7mm長さ6mmの長尺リード(昭和電工パッケージング(株)製)から、図2に示すリードを切り出すことで、中央近傍に絶縁シール部2が付着し一端に保護層3(長さが0.5個分の絶縁シール部)が付着したリード4を作製した。具体的には、図5の符号12で示すように、長尺リード上の絶縁シール部の、リード長さ方向の中心と、2つの絶縁シール部間の中心を交互に切断することで、1.5個分の絶縁シール部が付着したリードを切り出した。
【0073】
この絶縁シール部2と保護層3が付着したリード4において、絶縁シール部と保護層との間に挟まれ金属が露出したリード表面を、電極体9における正極板6のタブと負極板7のタブそれぞれに、超音波溶接によって接続した。この際、保護層が電極体の側に配置されるようにした。超音波溶接は、日本エマソン株式会社ブランソン事業本部製メタルウェルダ2000ea型を、ウェルドタイム0.1秒、振幅80%の条件で使用して実施した。
【0074】
以上により得たリードが接続された電極体9を、アルミラミネートシート(大日本印刷社(株)製)のパウチに挿入して、さらに電解液を注入した後、絶縁シール部2を上下からラミネートシートで挟み込むようにして熱融着を実施した。熱融着は、減圧封口装置(富士インパルス社製)を使用して実施した。
【0075】
これにより、容器開口部を密閉して、実施例のパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0076】
(比較例)
絶縁シール部2と保護層3が付着したリード4の代わりに、図3に示した絶縁シール部2のみが中央近傍に付着したリード5を使用したこと以外は、実施例と同様にして、比較例のパウチ型リチウム二次電池を製造した。絶縁シール部2のみが付着したリード5は、図5の符号14で示すように、前記長尺リード(昭和電工パッケージング(株)製)から、隣り合う2つの絶縁シール部間の中心を順次切断することで切り出した。
【0077】
(評価方法)
実施例および比較例のパウチ型リチウム二次電池において、熱融着がされた容器端部の密着面を剥離して、電池内部でリードの端面と対向していた容器内壁を露出させて、傷の有無を目視により確認した。実施例および比較例の電池をそれぞれ5個作製して、同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示すように、実施例では、作製した5個の電池のいずれにも、アルミニウムラミネートシートからなる容器内壁に損傷の発生は認められなかった。これに対して、比較例では、一部の電池で容器内壁に損傷が発生したことが観察された。以上より、容器内部にあるリードの端面近傍を被覆する保護層を設けることで、パウチ型リチウム二次電池の容器内壁に損傷が発生するのを防止できることを確認できた。
【0080】
以上から、本発明によると、パウチ型リチウム二次電池の密閉性を確保しつつ、容器内部にあるリード端部との接触により容器内壁に損傷が発生するのが防止された、安全性及び信頼性が向上したパウチ型リチウム二次電池を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、パウチ型のリチウム二次電池一般に適用することができる。特に、エネルギー分野向けの二次電池、例えば、一般家庭用の二次電池に有利に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 タブ
1A 正極タブ
1B 負極タブ
2 絶縁シール部
3 保護層
4 リード
4A 正極リード
4B 負極リード
5 従来のリード
6 正極板
7 負極板
8 セパレータ
9 電極体
10 切断前の長尺リード
11 絶縁シール部
12 切断線
13 パウチ型ケース
14 従来の切断線
15 密閉面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、セパレータと、負極板とを有する電極体と、
前記電極体および電解液を収納する空間を内部に有すると共に、前記空間の縁に沿って、対向する2面の密閉面を有し、当該密閉面の接着により前記空間が密閉されるケースと、
前記正極板および前記負極板の各々から伸長するタブと、
前記密閉面または前記空間において前記タブと電気的に接続され、一端または中間部は前記2面の密閉面に挟まれ、他端は前記ケースの外部に突出しているリードと、
前記2面の密閉面の端面近傍において前記リードの両面を被覆し、前記2面の密閉面を接着させる絶縁シール部と、
前記リードの前記一端近傍の少なくとも一部の表面を被覆する保護層と、を有する、パウチ型リチウム二次電池。
【請求項2】
前記保護層は、樹脂材料から形成されている、請求項1に記載のパウチ型リチウム二次電池。
【請求項3】
前記樹脂材料は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる、請求項2に記載のパウチ型リチウム二次電池。
【請求項4】
前記絶縁シール部と前記保護層は、同じ樹脂材料から形成されている、請求項2または3に記載のパウチ型リチウム二次電池。
【請求項5】
前記保護層は、前記密閉面と対向しており、前記密閉面と接着されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパウチ型リチウム二次電池。
【請求項6】
前記接着は熱融着である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のパウチ型リチウム二次電池。
【請求項7】
前記絶縁シール部は、前記2面の密閉面の端面から前記ケースの外部に伸長している、請求項1〜6のいずれか1項に記載のパウチ型リチウム二次電池。
【請求項8】
前記密閉面は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる少なくとも1つの樹脂層により被覆されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のパウチ型リチウム二次電池。
【請求項9】
前記リードは、前記リードの長手方向に沿って平らではない領域を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のパウチ型リチウム二次電池。
【請求項10】
前記リードの長手方向と直交する方向における前記リードの断面が、V形状、W形状、またはU形状である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のパウチ型リチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−12343(P2013−12343A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143205(P2011−143205)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】