説明

パケット通信システム、パケット中継装置、及びパケット通信方法

【課題】着信が不可能である状況下においても着信呼の接続処理を行う。
【解決手段】パケット通信システム10において、SGSN12が、移動通信端末(MS)14への着信呼を受信したときに、MS14においてPDPコンテキストが確立され、SGSN12においてPDPコンテキストが確立されていない状態を示すPDP不一致状態を判定する状態不一致判断部23と、PDP不一致状態が判定された場合に、当該PDP不一致状態を示す不一致情報を保持する不一致情報保持部22と、PDP不一致状態が判定された場合に、移動通信端末14においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更し、その後に、不一致情報保持部22に不一致情報が保持されていることを判断した場合に、不一致情報に基づき移動通信端末14にページング処理を行う接続制御部24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット通信システム、パケット中継装置、及びパケット通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信端末によるデータ伝送技術として、GPRS(General Packet Radio Service)と呼ばれるパケット通信技術がある。移動通信端末がGPRSを利用してパケット通信を行う場合、移動通信端末は、SGSN(Serving GPRS Support Node)、GGSN(Gateway GPRS Support Node)を含むGPRSネットワークを介して他の端末とパケット通信を行う。
【0003】
また、この技術では、移動通信端末、SGSN、GGSNにおいてPDP(Packet Data Protocol:パケットデータプロトコル)コンテキストを確立することによって、データ通信が可能となる。ここで、「PDPコンテキストが確立する」とは、パケット通信を行うための各ノードに保存された通信の情報(IP通信であれば接続先のIPアドレスやノード間での識別子情報など)を有効にすることであり、以下ではこの状態のことを「PDP状態をアクティブにする」という。また、PDPコンテキストが確立されていない状態を、「PDP状態をインアクティブにする」という。
【0004】
図4は、移動通信端末(Mobile station:MS)が、パケット通信の一例としてのIMS(IP Multimedia Subsystem)におけるSIP(Session Initiation Protocol)での音声通信を確立する処理を示したシーケンス図である。この例では、当初、MS、SGSN、GGSNにおいてPDP状態がインアクティブであり、相互にデータ通信不能な状態である。そして、図示しない他の通信端末がMSへSIP音声通信を行おうとしている。
【0005】
図4に示すように、他の発信側端末から未レジストレーション状態の端末に対してINVITEメッセージがS−CSCF(Serving Call Session Control Function)/P−CSCF(Proxy Call Session Control Function)に受信されると(S401)、S−CSCF/P−CSCFからGGSNを介して例えばSMSなどによる着信通知がSGSNへ送信される(S402)。そしてSGSNとMSとの間に配置される図示しないRNC(Radio Network Controller)とMSとの間に無線リソースを確立するためのページング(Paging)信号が、SGSNからRNSを介してMSへ送信される(S403)。
【0006】
MSにおいて、SGSNからページング信号の受信に応じて、RNCとの間で無線リソースを制御するためのRRC(Radio Resource Control)接続が確立され、RNCを介してSGSNへ「Activate PDP Context Request」が送信される(S404)。SGSNにおいて、GGSNへ「Create PDP Context Request」が送信され(S405)、これに応じて、GGSNから「Create PDP Context Accept」が受信され(S406)、MSへ「Activate PDP Context Accept」が送信される(S407)。これにより、MS、SGSN、GGSNにおいてPDPコンテキストが確立されて、MS,SGSN、GGSNのPDP状態がアクティブとなり、相互にデータ通信可能な状態となる。
【0007】
MS、SGSN、GGSNのPDP状態がアクティブになると、IMSネットワークに対してSIPレジストレーションが実施され(S408)、P−CSCFからGGSN、SGSNを介してMSへキューイングしていたINVITEメッセージが送信される(S409)。これに応じて、端末側で呼出動作を始めたことを示す信号“180”が、SGSN、GGSN、P−CSCFを介してS−CSCFへ返信され(S410)、着信者が応答することによって音声通信が確立される(S411)。
【0008】
ここで、上記のGPRSネットワークにおいて、MSと、SGSNなどのパケット通信装置との間でPDP状態に不一致が生じる場合がある。例えば、MSとSGSNの両方のPDP状態がアクティブである状況において、MSがトンネルに入って通信圏外となった際にGPRSネットワーク上に何らかの故障が発生すると、GPRSネットワークがリセットされてSGSNのPDP状態はインアクティブとなる。このときMSはトンネル内でネットワーク圏外のため、ネットワークのリセット処理の影響を受けず、MSのPDP状態は依然としてアクティブである。このようにしてMSとSGSNの間でPDP状態の不一致が生じる。
【0009】
このような状態では、上述のようにMS,SGSN、GGSNの間でPDP状態の制御を正常に行えなくなる。そこで、MSとSGSNとのPDP状態の不一致を解消するための標準動作が非特許文献1に規定されている。図5は、MSへの着信時にMSがアクティブ、SGSNがインアクティブの場合における従来のPDP状態の不一致を解消する処理を示すシーケンス図である。図5のステップS501〜S503は、図4のステップS401〜S403と同一であるため、説明を省略する。
【0010】
図5に示すように、SGSNからMSへのページング信号の受信に応じて、MSのPDP状態が含まれるService Request(ページング応答信号(Paging Response))がMSからSGSNへ送信される(S504)。SGSNにおいて、PagingResponseに含まれるMSのPDP状態が自機のPDP状態と異なることが検知されると、MSにService Rejectが返され(S505)、MSとRNCとの間のRRC接続が開放され、MS及びSGSNのPDP状態を共にインアクティブにして、PDP状態を一致させる。さらに、SGSNからGGSNを介してP−CSCFへ着信通知に対するNG応答が返される(S506)。P−CSCFからはS−CSCFを介して発信側端末へ呼が成立しなかったことを示すエラーコード“4xx(例えば480や486)”が返される(S507)。そして、音声着信不可となったところで処理を終了する(S508)。
【非特許文献1】3GPP TS24.008
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1のように従来のPDP状態の不一致を解消する手法では、SGSNによるRRC開放処理の際に着信呼が消去されてしまうため、PDP状態の不一致が解消された後に着信側端末と呼接続を行うことができない。このため、発信者は発信呼に対するエラーを受信することになり、この発信呼を着信者へ着信させることができない。また,発信者が再度発信を行わなければ、着信者は自分に対して着信があったことを知ることさえできない。
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、着信が不可能である状況下においても着信呼の接続処理を行うことが可能なパケット通信システム、パケット中継装置、及びパケット通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るパケット通信システムは、移動通信端末とこの移動通信端末のパケット通信を中継するパケット中継装置とを備え、パケットデータプロトコル(PDP)コンテキストを確立することによりデータ転送を可能にするパケット通信システムにおいて、パケット中継装置が、移動通信端末への着信呼を受信したときに、移動通信端末においてPDPコンテキストが確立され、パケット中継装置においてPDPコンテキストが確立されていない状態を示すPDP不一致状態を判定する判定手段と、判定手段によりPDP不一致状態が判定された場合に、当該PDP不一致状態を示す不一致情報を保持する不一致情報保持手段と、判定手段によりPDP不一致状態が判定された場合に、移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更する変更手段と、変更手段により移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更された後に、不一致情報保持手段に不一致情報が保持されていること判断した場合に、この不一致情報に基づき移動通信端末にページング処理を行うページング処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るパケット中継装置は、移動通信端末のパケット通信を中継するパケット中継装置であって、移動通信端末への着信呼を受信したときに、移動通信端末においてパケットデータプロトコル(PDP)コンテキストが確立されデータ転送が可能な状態であり、パケット中継装置においてPDPコンテキストが確立されておらずデータ転送ができない状態であるPDP不一致状態を判定する判定手段と、判定手段によりPDP不一致状態が判定された場合に、当該PDP不一致状態を示す不一致情報を保持する不一致情報保持手段と、判定手段によりPDP不一致状態が判定された場合に、移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更する変更手段と、変更手段により移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更された後に、不一致情報保持手段に不一致情報が保持されていることを判断した場合に、この不一致情報に基づき移動通信端末にページング処理を行うページング処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るパケット通信方法は、移動通信端末とこの移動通信端末のパケット通信を中継するパケット中継装置とを備え、パケットデータプロトコル(PDP)コンテキストを確立することによりデータ転送を可能にするパケット通信システムにおいて実行されるパケット通信方法であって、パケット中継装置が移動通信端末への着信呼を受信する受信ステップと、受信ステップにおける着信呼の受信に応じて、移動通信端末においてPDPコンテキストが確立され、パケット中継装置においてPDPコンテキストが確立されていない状態を示すPDP不一致状態を判定する判定ステップと、判定ステップにおいてPDP不一致状態が判定された場合に、当該PDP不一致状態を示す不一致情報をパケット中継装置の不一致状態保持手段に保持する不一致情報保持ステップと、判定ステップにおいてPDP不一致状態が判定された場合に、移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更する変更ステップと、変更ステップにより移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更された後に、不一致情報保持手段に不一致情報が保持されていることを判断した場合に、この不一致情報に基づき移動通信端末にページング処理を行うページング処理ステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
これらの構成により、移動通信端末とパケット通信装置との間にPDP不一致状態が生じた場合に、PDP不一致状態を示す不一致情報がパケット中継装置の不一致状態保持手段に保持され、PDP不一致状態が解消された後に、不一致情報保持手段に不一致情報が保持されていると判断された場合に、この不一致情報に基づき移動通信端末にページング処理が行われる。このため、PDP不一致状態が生じた場合に、PDP状態の不一致を解消して、自動的に着信呼を接続することができ、着信が不可能である状況下においても着信呼の接続処理を行うことが可能となる。
【0017】
また、パケット中継装置が、PDPコンテキストが確立されているか否かを示すPDP状態を保持するPDP状態保持手段を備え、ページング処理手段は、パケット中継装置が移動通信端末への着信呼を受信したときに、着信呼に応じて移動通信端末にページング処理を行い、判定手段は、ページング処理に応じて移動通信端末から受信した移動通信端末のPDP状態と、PDP状態保持手段に保持される自機のPDP状態とを比較して、PDP不一致状態を判定することが好適である。
【0018】
この構成により、パケット中継装置のPDP状態保持手段に保持されるパケット中継装置のPDP状態と、ページング処理に応じて受信した移動通信端末のPDP状態とを比較して、PDP不一致状態が判定されるため、移動通信端末とパケット中継装置とのPDP状態の不一致の発生を精度良く検知することができる。
【0019】
また、不一致情報は着信呼を含む着信呼情報であることが好適である。この構成により、PDP状態の不一致が解消された後に着信呼を保持することができるため、パケット中継装置は着信呼があったことを認識し、迅速に着信呼の接続処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るパケット通信システム、パケット中継装置、及びパケット通信方法によれば、着信が不可能である状況下においても着信呼の接続処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明に係るパケット通信システム、パケット中継装置、及びパケット通信方法の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本実施形態に係るパケット通信システム10の構成図である。図1に示すように、パケット通信システム10は、SGSN(パケット中継装置)12と、RNC13と、移動通信端末(MS)14とを含んで構成されている。MS14は、RNC13を介してSGSN12とパケット通信を行うことにより、図示しないGGSNより上位のGPRSネットワークを介して、他の端末との間でデータを送受信することができる。なお、図1には、MS14は1つしか示されていないが、パケット通信システム10には、通常、無数のMS14が含まれている。
【0023】
SGSN12及びRNC13は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、ハードディスク装置等の補助記憶装置、入力デバイスである入力キー等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュールなどを有するコンピュータとして構成されている。これらの構成要素が動作することにより、SGSN12及びRNC13の後述する各機能が発揮される。
【0024】
また、MS14は、物理的には、CPU、主記憶装置であるRAM及びROM、ハードディスク装置等の補助記憶装置、入力デバイスである入力キー等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、無線送受信機等を含む無線通信モジュールなどを有する端末装置として構成されている。この無線通信モジュールは、移動体通信方式による無線通信を実行するモジュールであり、CPU、RAM、ROM等との協働により任意の端末装置やサーバ装置との間でのデータ通信機能を実現する。
【0025】
次に、SGSN12の機能について説明する。図1に示すように、SGSN12は、PDPコンテキストステータス記憶部(PDP状態保持手段)21、不一致情報保持部(不一致情報保持手段)22、状態不一致判断部(判定手段)23、及び接続制御部(変更手段、ページング処理手段)24を備えている。
【0026】
PDPコンテキストステータス記憶部21は、PDPコンテキストが確立されているか否かを示すPDP状態を保持している。図2は、PDPコンテキストステータス記憶部21の一例を示す図である。図2に示すように、PDPコンテキストステータス記憶部21は、具体的にはNSAPI(0)〜NSAPI(15)までの16個の領域が設けられたテーブルである。
【0027】
NSAPI(5)〜NSAPI(15)は、例えばSIP音声通話やデータ通信などのPDPコンテキストごとに個別に関連付けられた領域であり、各PDP状態を0か1のいずれかの値で保持している。この領域に0が保持される場合には、対応するPDPコンテキストのSM(Session Management)状態がPDP−INACTIVEであり、すなわちPDP状態がインアクティブである。また、この領域に1が保持される場合には、対応するPDPコンテキストのSM状態がPDP−INACTIVEではなく、すなわちPDP状態がアクティブである。また、シングルPDP網では、NSAPI(5)〜NSAPI(15)のうち1つのみが“1”となり、他は“0”となる。
【0028】
本実施形態では、SIP音声通信に関連付けられたNSAPI(5)〜NSAPI(15)のいずれかの領域に、SGSN12におけるSIP音声通信に関するPDP状態に応じて0又は1が保持される。
【0029】
なお、PDPコンテキストステータスについては非特許文献1(3GPPTS 24.008)に記載されている。この文献に規定されているプロトコルのバージョンでは、PDPコンテキストステータス記憶部21のNSAPI(0)〜NSAPI(4)の領域はスペアとして扱われ、常に0が保持される。
【0030】
不一致情報保持部22は、MS14とSGSN12との間にPDP状態の不一致が生じた場合(以下、この状態を「PDP不一致状態」という)に、PDP不一致状態を示す不一致情報を保持する部分である。不一致情報保持部22は、具体的には、PDP不一致状態が生じた際に着信が要求されている呼情報を不一致情報として保持する。呼情報とは発信元の識別情報を含み、例えば発信元のIPアドレスや電話番号などである。
【0031】
状態不一致判断部23は、MS14とSGSN12との間にPDP状態の不一致が生じているか否かを判定する。具体的には、状態不一致判断部23は、MS14への着信呼を受信したとき、後述する接続制御部24からMS14へ送信されるページング信号に応じてMS14から受信したページング応答信号に含まれるMS14のPDP状態と、PDPコンテキストステータス記憶部21に保持される自機のPDP状態とを比較して、前記PDP状態の不一致を検出する。本実施形態では、状態不一致判断部23は、PDPコンテキストステータス記憶部21のSIP音声通信に関連付けられた領域に保持される数値(0又は1)に基づき、SGSN12のPDP状態を認識する。状態不一致判断部23は、不一致を検出したときには呼情報を不一致情報保持部22に送り記憶させる。
【0032】
接続制御部24は、MS14、RNC13、GGSN(図示せず)などとデータや信号の送受信を行い、また、一連のセッション確立処理を行う。具体的には、接続制御部24は、GGSNから着信呼を受信すると、着信呼に応じてMS14に対してページング処理を行う。また、このページング処理に応じてMS14からページング応答信号を受信すると、この信号に含まれるMS14のPDP状態の情報を状態不一致判断部23に送信する。さらに、状態不一致判断部23によりPDP不一致状態が判定されると、RNC13にRRC開放処理を行うよう制御指令を送る。RRC開放処理の後に、不一致情報保持部22に呼情報が保持されている場合に、呼情報の着信呼に応じてMS14にページング処理を行う。
【0033】
次に、図3に示すシーケンス図を用いて、本実施形態のパケット通信システム10において実行される処理を説明すると共に、本実施形態に係るパケット通信方法について説明する。
【0034】
図3は、MS14のPDP状態がアクティブであり、SGSN12のPDP状態がインアクティブの場合に、本実施形態のパケット通信システム10によって実施されるPDP状態の不一致を解消する処理を示すシーケンス図である。図3に示すように、SGSN12により、GPRSネットワークを介して他の通信端末から着信呼が受信されると、MS14へページング信号が送信される(S101)。
【0035】
このページング信号に応じて、MS14により、RNC13とMS14との間にRRC接続が確立され(S102)、ページング応答信号(Paging Response)としてService RequestがSGSN12へ送信される(S103)。このService Requestには、現在のMS14のPDP状態(ここではアクティブ)が含まれている。
【0036】
次に、SGSN12において、接続制御部24により受信されたService Requestが状態不一致判断部23に送信され、状態不一致判断部23によりMS14とSGSN12との間にPDP状態の不一致が生じているか否かが判定される(S104)。具体的には、状態不一致判断部23は、ServiceRequestに含まれるMS14のPDP状態(ここではアクティブ)を抽出し、PDPコンテキストステータス記憶部21に保持されているSGSN12のPDP状態と比較して、両者のPDP状態が異なる場合にPDP不一致状態が生じていると判定する。ここでは、PDP不一致状態と判定され、ステップS101で受信した着信呼が不一致情報保持部22に保持され(S105)、状態不一致が生じていることが接続制御部24へ送信される。
【0037】
次に、MS14とSGSN12との間で認証処理が行われ(S106)、接続制御部24により、SGSN12のPDP状態がアクティブではないというメッセージ(No PDP Context Activated)を含むService RejectがMS14へ送信される(S107)。接続制御部24により、MS14とRNC13とのRRC接続の開放処理が行われ(S108)、MS14のPDP状態もSGSN12と同様にインアクティブになる。
【0038】
次に、接続制御部24により、不一致情報保持部22に着信呼が保持されているかが確認され(S109)、着信呼が保持されている場合にはMS14へページング信号が新たに送信される(S110)。このページング信号に応じて、MS14により、RNC13とMS14との間にRRC接続が確立され(S111)、ページング応答信号としてService RequestがSGSN12へ送信される(S112)。このService Request(ページング応答信号)には、現在のMS14のPDP状態(ここではインアクティブ)が含まれている。
【0039】
次に、SGSN12において、接続制御部24により受信されたService Requestが状態不一致判断部23に送信され、状態不一致判断部23によりMS14とSGSN12との間にPDP状態の不一致が生じているか否かが判定される(S113)。ここでは、PDP状態は一致していると判定され、その判定結果が接続制御部24へ送信される。
【0040】
次に、MS14とSGSN12との間で認証/秘匿処理が行われ(S114)、接続制御部24により、MS14との間でCP−DATAの送受信が行われる(S115)。このCP−DATAは、PDPコンテキストの確立処理をMS14に開始させるトリガとなる信号であり、着信呼に関する発信側端末の情報を含んでいる。
【0041】
次に、MS14により、CP−DATAの受信に応じて、RNC13を介してSGSN12へ「Activate PDP Context Request」が送信される(S116)。SGSN12の接続制御部24により、RNC13へ「RAB Assignment Request(無線アクセスベアラ割当要求)」が送信される(S117)と共に、GGSN(図示せず)に「Create PDP Context Request」が送信される(図4のS405参照)。これに応じてGGSNから「Create PDP Context Accept」が受信される(図4のS406参照)と共に、RNC13から「RAB Assignment Response(無線アクセスベアラ割当応答)」が受信される(S118)と、MS14に「Activate PDP Context Accept」が送信される(S119)。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るパケット通信システム10及びSGSN12によれば、MS14のPDP状態がアクティブであり、SGSN12のPDP状態がインアクティブである状態を示すPDP不一致状態が生じた場合に、PDP不一致状態を示す不一致情報がSGSN12の不一致情報保持部22に保持され、PDP不一致状態が解消された後に、不一致情報保持部22に不一致情報が保持されていることを判断した場合に、MS14にページング処理が行われる。このため、PDP不一致状態が生じた場合に、PDP状態の不一致を解消した後に着信呼の接続処理を再度実行して、自動的に着信呼を接続することができ、着信が不可能である状況下においても、発信者に対して手間をかけることなく着信呼の接続処理を行うことが可能となる。
【0043】
また、SGSN12のPDPコンテキストステータス記憶部21に保持されるSGSN12のPDP状態と、ページング処理に応じて受信したMS14のPDP状態とを比較して、PDP不一致状態が判定されるため、MS14とSGSN12とのPDP状態の不一致の発生を精度良く検知することができる。
【0044】
また、不一致情報は、着信呼を含む着信呼情報であるため、PDP状態の不一致が解消された後に着信呼を保持することができ、SGSN12は着信呼があったことを認識し、迅速に着信呼の接続処理を行うことができる。
【0045】
アクセスネットワーク(IP−CAN)としてGPRS網により構成されるものを一例として説明したが、EPS(Evolved Packet System)などのパケット通信を実現するシステムにおいても情報を保持するシステムが異なるだけで、同様の方法により不一致状態を解消することにより着信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係るパケット通信システムの構成図である。
【図2】図1中のPDPコンテキストステータス記憶部の一例を示す図である。
【図3】図1に示すパケット通信システムにおいて実行される移動通信端末とSGSNのPDP状態の不一致を解消して呼接続を行う処理を示すシーケンス図である。
【図4】従来のGPRSネットワークを介して移動通信端末がSIP着信を確立する処理を例示したシーケンス図である。
【図5】移動通信端末への着信時に移動通信端末がアクティブ、SGSNがインアクティブの場合におけるPDP状態の不一致を解消する従来の処理を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0047】
10…パケット通信システム、12…SGSN(パケット中継装置)、14…移動通信端末、21…PDPコンテキストステータス記憶部(PDP状態保持手段)、22…不一致情報保持部(不一致情報保持手段)、23…状態不一致判断部(判定手段)、24…接続制御部(変更手段、ページング処理手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信端末と前記移動通信端末のパケット通信を中継するパケット中継装置とを備え、パケットデータプロトコル(PDP)コンテキストを確立することによりデータ転送を可能にするパケット通信システムにおいて、
前記パケット中継装置が、
前記移動通信端末への着信呼を受信したときに、前記移動通信端末において前記PDPコンテキストが確立され、前記パケット中継装置において前記PDPコンテキストが確立されていない状態を示すPDP不一致状態を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記PDP不一致状態が判定された場合に、当該PDP不一致状態を示す不一致情報を保持する不一致情報保持手段と、
前記判定手段により前記PDP不一致状態が判定された場合に、前記移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更する変更手段と、
前記変更手段により前記移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更された後に、前記不一致情報保持手段に前記不一致情報が保持されていることを判断した場合に、当該不一致情報に基づき前記移動通信端末にページング処理を行うページング処理手段と、
を備えることを特徴とするパケット通信システム。
【請求項2】
前記パケット中継装置が、前記PDPコンテキストが確立されているか否かを示すPDP状態を保持するPDP状態保持手段を備え、
前記ページング処理手段は、前記パケット中継装置が前記移動通信端末への着信呼を受信したときに、前記着信呼に応じて前記移動通信端末にページング処理を行い、
前記判定手段は、前記ページング処理に応じて前記移動通信端末から受信した前記移動通信端末のPDP状態と、前記PDP状態保持手段に保持される自機のPDP状態とを比較して、前記PDP不一致状態を判定することを特徴とする、請求項1に記載のパケット通信システム。
【請求項3】
前記不一致情報は前記着信呼を含む着信呼情報であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパケット通信システム。
【請求項4】
移動通信端末のパケット通信を中継するパケット中継装置であって、
前記移動通信端末への着信呼を受信したときに、前記移動通信端末においてパケットデータプロトコル(PDP)コンテキストが確立されデータ転送が可能な状態であり、前記パケット中継装置において前記PDPコンテキストが確立されておらずデータ転送ができない状態であるPDP不一致状態を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記PDP不一致状態が判定された場合に、当該PDP不一致状態を示す不一致情報を保持する不一致情報保持手段と、
前記判定手段により前記PDP不一致状態が判定された場合に、前記移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更する変更手段と、
前記変更手段により前記移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更された後に、前記不一致情報保持手段に前記不一致情報が保持されていることを判断した場合に、当該不一致情報に基づき前記移動通信端末にページング処理を行うページング処理手段と、
を備えることを特徴とするパケット中継装置。
【請求項5】
移動通信端末と前記移動通信端末のパケット通信を中継するパケット中継装置とを備え、パケットデータプロトコル(PDP)コンテキストを確立することによりデータ転送を可能にするパケット通信システムにおいて実行されるパケット通信方法であって、
前記パケット中継装置が前記移動通信端末への着信呼を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおける前記着信呼の受信に応じて、前記移動通信端末において前記PDPコンテキストが確立され、前記パケット中継装置において前記PDPコンテキストが確立されていない状態を示すPDP不一致状態を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて前記PDP不一致状態が判定された場合に、当該PDP不一致状態を示す不一致情報を前記パケット中継装置の不一致状態保持手段に保持する不一致情報保持ステップと、
前記判定ステップにおいて前記PDP不一致状態が判定された場合に、前記移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更する変更ステップと、
前記変更ステップにより前記移動通信端末においてPDPコンテキストが確立されていない状態に変更された後に、前記不一致情報保持手段に前記不一致情報が保持されていることを判断した場合に、当該不一致情報に基づき前記移動通信端末にページング処理を行うページング処理ステップと、
を備えることを特徴とするパケット通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−114845(P2010−114845A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288001(P2008−288001)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】