説明

パターンの重ね合わせによる結像光学系の測定

【課題】掩蔽(obscurated:オブスキュレーション)光学系において、分解能の限界が結像構造の位置及び配向に応じて変わる場合、結像光学系の精密測定の実行を可能にするデバイス、このデバイスを有する投影露光装置、その方法、センサユニットとを提供する。
【解決手段】結像光学系上流ビーム経路内に位置決め可能な第1格子構造(16)を有する第1格子パターン(6)と、下流ビーム経路内に位置決め可能な第2格子構造(18)を有する第2格子パターン(8)と、第2格子パターン(8)の第2格子構造(18)への第1格子パターン(6)の第1格子構造(16)の結像中に生成される重ね合わせ縞パターンの空間分解測定用センサユニットとを備えるデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンの重ね合わせにより結像光学系を測定するデバイス及び方法、このタイプのデバイスを有する投影露光装置、及びこのタイプの測定に使用されるセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、第1ピッチを有する第1格子が光源と光学系との間の透明基板上に配置され、その歪みの測定が意図される、歪み測定用のデバイスを開示している。(異なる)第2ピッチを有する第2格子が、光学系と像の記録用のセンサとの間のさらに別の透明基板上に配置される。2つの格子の照明中、第1格子及び第2格子のピッチを数オーダ超えるピッチを有するモアレ縞パターンが、センサにおいて生成される。光学系の歪みは、センサにおける照明強度を光学系に歪みがない場合の予測強度と比較することにより測定される。例示的な一実施形態では、第2格子を有する透明基板は、設置空間を節約するためにセンサに直接配置される。
【0003】
特許文献3は、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置の光学測定デバイスを記載しており、これは、露光放射線の特性を測定する光センサと、測定した特性を測定データの形態で測定デバイス外に配置されたデータ受信機へ転送するよう構成されたデータインタフェースとを有する。測定デバイスは、投影露光装置のウェーハ平面に測定デバイスを配置するためにプレートとして構成され得る。
【0004】
特許文献4は、光機能コンポーネント及び関連機能コンポーネントを製造する方法を開示している。機能コンポーネントは、第1波長域の電磁放射線を第2波長域の電磁放射線に変換する周波数変換層を有する。周波数変換層は、機能コンポーネントの2つの光学コンポーネント間を圧力嵌め接続することができ、例えば蛍光キットの形態で構成することができる。機能コンポーネントは、例えばモアレ測定技法用の格子基板を形成する役割を果たすことができる。
【0005】
特許文献5は、空間像の位置を測定する結像微小光学ユニットの形態の測定装置を開示している。拡大光学ユニット(例えば200倍又は400倍の倍率用の顕微鏡対物レンズ)及び偏向ミラーを有する微小光学ユニットは、ウェーハステージの領域に配置し、これと運動結合するか又はこれに組み込むことができる。このような微小光学ユニットを使用して、異なるリソグラフィ装置の空間像間のインコヒーレント比較を実行することが可能である。
【0006】
特許文献6は、モアレ測定技法を使用してリソグラフィ装置を測定するデバイスを記載している。ここでは、モアレ格子が、浸漬液を充填可能な容器の底に取り付けられた窓に設けられる。不可視放射線、例えばUV放射線を可視放射線に変換するために、窓を蛍光材料で構成することができる。
【0007】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置が、相互間の距離がこの場合に使用される結像光学系の分解能限界に近いマスク上の構造を結像するために、「光近接効果補正」(OPC)補正構造と称するものを使用することも知られている。これらのOPC補正構造は、いずれの場合も補正構造又は被結像構造に一致する照明分布(「ソースマスク最適化」と称するもの)と共に、結像光学系の物体平面において(補正構造なしの)結像すべきマスクの構造に対応する被結像構造の像を生成することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,973,773号明細書
【特許文献2】米国特許第5,767,959号明細書
【特許文献3】独国特許第10 2008 042 463号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102 53 874号明細書
【特許文献5】国際公開第2009/033709号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0257049号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特に、例えば掩蔽(obscurated:オブスキュレーションのある)光学系において、分解能の限界が結像構造の位置及び配向に応じて変わる場合に、この限界での結像光学系の精密測定の実行を可能にするデバイスと、このタイプのデバイスを有する投影露光装置と、その方法と、センサユニットとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、パターンの重ね合わせにより結像光学系を測定するデバイスであって、結像光学系の上流のビーム経路内に位置決め可能な、第1格子構造を有する第1格子パターンと、結像光学系の下流のビーム経路内に位置決め可能な、第2格子構造を有する第2格子パターンと、第2格子パターンの第2格子構造への第1格子パターンの第1格子構造の結像中に生成される重ね合わせ縞パターンの空間分解測定用のセンサユニットとを備えるデバイスにより達成される。パターンの重ね合わせにより測定するデバイスでは、第1格子構造が、第1格子構造をスケール変換により第2格子構造に変換できないよう第2格子構造から所定の様式でずれているか、又は第1格子構造及び第2格子構造が(同じサイズの縮尺であっても)補正構造により異なる。
【0011】
モアレ法とも称するパターンの重ね合わせにより測定する従来の測定法では、第1格子パターンは物体平面に配置され、第2格子パターンは測定対象の光学系の像平面に配置され、2つの重ね合わせ格子構造は、スケール変換すなわちスケールの変更(光学系の結像スケールでの拡大又は縮小)により相互に変換できるよう選択される。例えば、リソグラフィ装置で多くの場合に使用されるような0.25の結像スケールでは、第1格子パターンの格子構造を第2格子パターンの格子構造に1/4の縮尺で変換され得る。
【0012】
本発明者らの認識によれば、光学系の光学特性、特に歪み又は「限界寸法」(CD)の厳密な特性評価(characterization)のために、結像光学系自体の特性だけでなく、被結像構造及び照明設定も重要である。2つ以上の光学系の、特に多重露光に対する適性に関する比較では、測定結果に対する照明系の影響、被結像構造の影響、及び結像光学系の影響を相互に別個に判定する必要はない。正確には、比較対象の光学系において、同一の条件が与えられれば、すなわち同じ被結像構造及び同じ照明設定が選択されて両方の光学系の測定結果が相互に比較されれば十分である。このような比較は、動作中の2つ以上の光学系に関して、例えば異なる場所に位置付けられた2つの投影露光装置に関して、「その場で」実行することができる。
【0013】
パターンの重ね合わせによる精密測定のために、各格子構造の格子線のピッチを非常に小さくする必要があり、したがって選択される格子線の空間周波数を格子線の格子構造の構造サイズが結像光学系の分解能限界に近付くほど大きくする必要がある。このような小さなピッチの場合でも第1格子構造の像がその形態及び幾何学的形状に関して第2格子構造に可能な限り精密に一致することを確実にするために、格子構造が相互にずれて、スケール変換すなわち(測定対象の光学系の結像スケールでの)拡大又は縮小により相互に変換できないように、格子構造を変更することが提案される。
【0014】
この目的で、第1格子パターンの格子構造及び/又は第2格子パターンの格子構造は、補正構造を有し得る。補正構造は、補正構造を使用した結像中に、第1格子構造の像が補正構造を使用しない場合よりも大きく第2格子構造に近付くようここでは選択される。
【0015】
特に、選択された場所における第1格子パターンの格子構造を局所的に変更して、像平面における結像中に、第1格子パターンの格子構造の最適像、すなわち結像スケールにより変倍されて第2格子パターンの格子構造と可能な限り厳密に一致した像が生成されるようにすることができる。上述のように、結像光学系の特性を単独で、すなわち被結像構造の影響を伴わずに特性評価する必要がないので、パターンの重ね合わせにおける補正構造の使用が可能である。当然ながら、ここで提案される測定法における2つの格子構造の重ね合わせ縞パターンの評価は、従来のモアレ測定法に類似して実行され得る。
【0016】
一実施形態では、第1格子構造はOPC補正構造を有する。これらは、第2格子パターンの第2格子構造に可能な限り正確に一致する第1格子構造の像を生成する役割を果たすことが意図される。結像系の分解能限界に近い格子構造を結像するために、「光近接効果補正」(OPC)補正構造と称するものを使用することが提案され、これは、必要であれば補正構造又は被結像格子構造に一致する照明分布と共に、結像光学系の物体平面において理想的な場合には第2像側格子パターンの第2格子構造に対応する所望の像を生成する。このようなOPC補正構造は、例えば、参照により本願に援用される米国特許出願公開第2006/0248497号明細書に記載されている。
【0017】
一展開形態では、デバイスは、第1格子パターンの第1格子構造を照明する照明系を有し、照明系の少なくとも1つの照明パラメータは、補正構造に一致する。第1格子構造の結像中に、第2格子構造に可能な限り精密に一致する像を得るために、照明系の照明パラメータを、使用される補正構造又は使用される第1格子構造に一致させることができる。この目的で、双極又は四重極照明等の種々の照明設定を提供する、又はフレキシブルな照明瞳の設定もするマニピュレータを、照明系で用いることができる。特に、種々の照明設定を可能にする交換可能な照明フィルタ、例えばプレート型照明フィルタを、マニピュレータとして照明系に設けることができ、照明設定は特に、各使用格子パターンに又は各使用格子構造に一致させることもできる。所望の像を生成するための照明設定及び補正構造の組み合わせは、「ソースマスク最適化」とも称し、測定対象の結像光学系の結像特性のコンピュータモデルに通常は基づく。
【0018】
一実施形態では、第1格子パターン及び第2格子パターンは、複数の格子構造を有し、異なる格子構造の格子線のピッチは相互に異なる。この実施形態では、種々のピッチでの結像光学系の伝達関数を評価することができるように、複数の格子構造が共通の格子パターンの種々の場所に設けられる。格子構造は、周期構造を有する有限表面積を意味するとここでは理解されたい。格子構造は、例えば、線格子、点格子、角度付き格子線を有する構造等として構成することができる。
【0019】
さらに別の一実施形態では、第1格子パターン及び第2格子パターンは、空間配向の異なる複数の格子構造を有する。異なるピッチの選択の代わりに、又はそれに加えて、光学転写又は結像に必要な0次、1次、及び適宜それよりも高次の回折が結像光学系を通して種々の方位角方向に起こることを可能にし、且つそれらを測定することを可能にするために、格子構造の格子線の種々の配向を選択することも可能である。配向の異なる格子構造の格子線は、ここでは特に90°以外の角度を相互になし、例えば相互に対して45°、30°等の角度で配置され得る。
【0020】
一展開形態では、格子構造のピッチ及び/又は空間配向は、第1格子パターンの第1格子構造がもたらす0次又はそれよりも高次の回折が、結像光学系により少なくとも部分的に掩蔽(遮蔽)又は吸収されるよう選択される。これらの格子構造のピッチは、「禁制ピッチ(forbidden pitch)」とも称する。第1格子パターンの格子構造は、数学モデルに基づき目標通りに選択されることが好ましく、外部の開口絞りにより決定される使用開口内の光学系による格子構造の結像が制限されると考えなければならないようなものである。これが当てはまるのは、例えば、格子構造のピッチ及び/又は配向の選択が、0次又はそれよりも高次の回折が完全に転写されないことにより、重ね合わせ縞パターンを形成する2つの格子パターンの格子構造の重ね合わせにおける像コントラストが低下するようなものである場合である。同様のコントラスト低下効果は、限られた範囲の迷光(「フレア」)又は収差によっても引き起こされ得る。全結像系において、被結像構造の回折次数の遮蔽は、縁部における開口絞りにより、又は(中心の)掩蔽絞りにより行われる。後者の(the last)場合を中心掩蔽と称し、すなわち、例えば瞳の領域に配置されたミラーに貫通開口が設けられるので、使用開口内の瞳平面の一部が掩蔽される。このようなシステムは、例えば、独国特許出願公開第10 2008 046 699号明細書、独国特許出願公開第10 2008 041 910号明細書、米国特許第6,750,948号明細書、又は国際公開第2006/069725号明細書に記載されている。このタイプのいわゆる掩蔽光学系では、分解能の限界、したがって重ね合わせ縞パターンのコントラストは、格子構造の位置及び配向に応じて変わる。掩蔽に加えて、分割ミラーのセグメント間の隙間もこれに対応する効果を有し得る。
【0021】
さらに別の一実施形態では、デバイスは、格子パターンを相互に対して変位させる少なくとも1つの移動装置をさらに備える。ここで使用する重ね合わせ測定技法の場合、格子パターンを相互に対して移動、特に変位させるので、迷光、掩蔽、及び収差により生じる重ね合わせ縞パターンのコントラストの変化を区別することが可能である。したがって、例えば限られた範囲の迷光は、半ピッチが迷光域に対応する格子構造の重ね合わせのコントラストを低下させる。異方的迷光形成も、格子構造の配向に応じてコントラストを様々に低下させ、したがって認識され得る。
【0022】
さらに別の一実施形態では、センサユニットは、空間分解検出器、特にCCD検出器を備え、共通の構造ユニット内に第2格子パターンも備える。共通の構造ユニットは、1.2mm未満の構造高さを有することが好ましい。第2格子パターン及び検出器を共通の構造ユニットに統合することにより、ポータブルセンサユニットを作製することが可能である。特に構造高さが1.2mm以下であるこのセンサユニットは、ウェーハの代わりに投影露光装置の投影対物レンズの像平面にプレート型構造ユニットとして配置することができる。
【0023】
センサユニットのこのような低い構造高さは、適宜その構造高さに関してさらに最適化した従来のCCDカメラチップを検出器として使用することにより、達成することができる。CCDカメラチップの感光層又は感光検出器表面に取り付けられた保護ガラスを除去して、構造高さを減らすことができる。当然ながら、センサユニットの他の寸法(特にその直径)も、ウェーハの寸法を超えないよう選択される。
【0024】
このタイプのセンサユニットは、測定、例えば歪み測定を実行するために種々の投影露光装置に導入することができる。関連の物体側格子パターンを、ここでマスク(「レチクル」)の代わりに投影対物レンズ又は投影系の物体平面に導入することができる。このように、多重露光に関するそれらの適性を検査するか、又は投影露光装置の光学特性を多重露光に関して一致させるために、複数の投影露光装置をその場で測定することが可能である。
【0025】
一展開形態では、波長変換用の周波数変換素子(量子変換層(quantum converter layer))が、第2格子パターンと検出器との間に配置され、この周波数変換素子は、1μm〜100μm、特に10μm〜50μmの厚さを有することが好ましい。波長変換は、特に浸漬系において、全反射の臨界角を超えることにより波長変換を伴わずに保護ガラスから取り出されてから検出器に結合されることができない、大きな開口角で像平面に入射する放射線の検出も可能にする。波長変換により、検出器への格子線の転写を、格子パターンと検出器表面との間に接続されて低域フィルタとして働くこの目的用の(リレー)光学ユニットを使用せずに抑制することも可能である。この目的で、周波数変換素子は直接、すなわち光子パターン又は格子構造から通常は約20μm以下の距離に配置され、周波数変換されていない放射線が検出器表面に衝突するのを防止するのに十分な厚さを有する。
【0026】
有利な一展開形態では、周波数変換素子は、空間分解検出器用の保護ガラスとして構成される。特に、保護ガラスは、蛍光ガラス又はシンチレーションガラスとして構成することができる。前者の場合、保護ガラスは、UV波長域(例えば、約120nm〜約400nm)と可視波長域(例えば、約500nm〜約700nm)との間の波長変換に役立つ。所望の特性を有する市販の蛍光ガラスは、例えば、Sumita製のいわゆるLumilassガラスである。特に、パターンの重ね合わせによるEUVリソグラフィ装置の投影系を測定するためのセンサユニットの使用に適しているのは、シンチレーションガラスであり、これは、可視波長域へのEUV域(約10nm〜50nm)の放射線の変換を可能にする。例えば、Proxitronicにより例えば提供されるようなP43蛍光体層が、本願に適していることが分かった。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置であって、結像光学系としての特に掩蔽投影対物レンズと、上述のように構成された投影対物レンズを測定するデバイスとを備える投影露光装置に関する。投影露光装置又は投影対物レンズは、UV波長域の、例えば193nmの放射線、又はEUV波長域(13.5nm)の放射線に適合させることができる。特に、投影対物レンズは、(中心)掩蔽部を有し得る。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、パターンの重ね合わせによる測定用の、特に上述のようなデバイス用のセンサユニットであって、空間分解検出器、特にCCD検出器と、少なくとも1つの格子構造を有する格子パターンと、格子パターンと空間分解検出器の放射線感応検出器表面との間に配置され、検出器表面に取り付けられた保護ガラスの形態の、センサユニットに入射する放射線の波長変換用の周波数変換素子とを備える、センサユニットに関する。上記で説明したように、周波数変換素子があるので、リレー光学ユニットを設ける必要がない。
【0029】
一実施形態では、センサユニットは1.2mm未満の構造高さを有する。このような低い構造高さは、格子構造又は周波数変換素子の高さが無視できるほど低いので、空間分解(CCD)検出器の平坦設計をリレー光学ユニットの排除と組み合わせることにより達成することができる。上述のように、このような平坦なセンサユニットは、ウェーハの代わりにウェーハステージ上に配置することができる。
【0030】
さらに別の実施形態では、保護ガラスは、測定対象の結像光学系がVUV放射線で動作するかEUV放射線で動作するかに応じて、蛍光ガラス又はシンチレーションガラスである。
【0031】
さらに別の実施形態では、空間分解検出器は、測定信号を伝送するための側方に配置された電気接点を有する。電気接点は、例えばCCDカメラチップの接続ピンの形態であるが、センサユニットの構造高さを増加させないように、また測定データ又は測定信号を構造空間が限られている領域から転送するように、検出器から横方向に引き出される。当然ながら、検出器内で十分な格納空間が利用可能である場合、又は測定データの無線伝送用のインタフェースがある場合、電気接点を省くことができる。
【0032】
さらに別の実施形態では、5個〜50個の格子線又は1000個を超える格子線が、空間分解検出器の感光検出器表面又は層の各画素に位置付けられる。通常、個々の画素(すなわち、画素の面積にわたって積分又は平均化される測定信号を有するセンサの領域)は、例えば約10μm×10μmの範囲のサイズを有する。VUV放射線を使用した重ね合わせ測定技術における格子線の通常の線密度は、(像平面内で)1mmあたり約1000個〜2000個程度の線(線対)であるので、約10個〜20個の数の格子線が得られ、これは1画素あたりの照射強度に寄与する。周波数変換層により、これらの格子線がCCD検出器に転写されるのを防止することが可能である。
【0033】
センサユニットがEUV放射線で作動される結像光学系の測定に使用される場合、フォトレジストにおける潜像の構造幅をより小さくすることが追求されることにより、歪みに関する種々のリソグラフィ装置の比較の確度に対する要求が高まる。これらの高い要求は、格子線の線密度を増やすことにより、例えば1mmあたり2000個〜10000個の線対を使用することにより、対応することができる。1mmあたり10000個の線対を使用した場合でも、EUV放射線(通常は13.5nm)の波長は約100nmのピッチよりもなお小さいので、このような格子は投影(shade casting)モードで有利に働く。当然ながら、このような高い線密度は、VUV域で作動する光学系の測定に使用することもでき、その場合、このような高い線密度がこれらの系の分解能限界範囲内にあるので、補正構造が物体側格子パターンに適宜設けられるようにするべきである。
【0034】
本発明のさらに別の態様は、結像光学系、特にマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズを、パターンの重ね合わせにより測定する方法であって、結像光学系の上流に配置された第1格子パターンの第1格子構造を結像光学系の下流に配置された第2格子パターンの第2格子構造に結像することにより生成される、重ね合わせ縞パターンを測定するステップと、2つの格子パターンを相互に対して変位させると同時に、重ね合わせ縞パターンのコントラストを判定するステップと、格子パターンの相対移動中にモアレ縞パターンのコントラストを評価することにより、結像光学系の掩蔽、収差、迷光域及び/又は歪みを判定するステップとを含む方法に関する。
【0035】
パターンの重ね合わせにより測定するデバイスに関連してすでにさらに上述したように、結像光学系の掩蔽、収差、又は迷光域を、測定された重ね合わせ縞パターンのコントラストに基づき判定することができる。当然ながら、上述の方法において、第1格子パターンの場合に補正構造を有する格子構造を使用することにより、第1格子パターンの格子構造を結像光学系の結像スケールを使用した変倍により第2格子パターンの格子構造に変換できないようにすることも同様に可能である。
【0036】
一変形形態では、先行する方法ステップにおいて、第1格子パターンの第1格子構造は、第1格子パターンがもたらす0次又はそれよりも高次の回折が少なくとも部分的に結像光学系により掩蔽又は吸収されるよう選択されたピッチ及び/又は配向で形成される。当然ながら、同じピッチ及び配向の対応する第2像側格子パターンも作製され、結像光学系の結像スケールが考慮される。付加的又は代替的に、ピッチ及び/又は配向は、結像光学系の予測される(適宜異方的な)迷光域の近辺にあるよう選択され得ることで、迷光域を重ね合わせ縞パターンのコントラストの低下によっても検出できるようにする。格子構造のピッチ又は配向の適切な選択により、結像光学系の収差をよりよく検出することも可能である。
【0037】
本方法の展開形態では、格子線のピッチ及び/又は配向は、結像光学系内のビーム経路の数学モデルに基づき決定される。例えば従来の光学プログラムを用いて確立することができる結像光学系の数学光学モデルにより、第1格子パターンの格子構造がもたらす0次及び/又は1次の回折が少なくとも部分的に掩蔽されて重ね合わせ縞パターンの像コントラストの低下が測定中に生じるような、格子線のピッチ又は配向を決定することが可能である。
【0038】
さらに別の変形形態では、本方法は、結像光学系の上流に接続された照明系の少なくとも1つの照明パラメータを、測定中に判定された掩蔽、吸収領域、判定された迷光域、及び/又は歪みに応じて変えることにより、結像光学系の補正を行うステップを含む。結像光学系に関する測定中に求められた測定データに基づき、結像光学系の上流に接続された照明系の照明パラメータを適宜調整することにより、結像の補正を実行することが可能である。
【0039】
本発明のさらに別の態様は、パターンの重ね合わせにより結像光学系を測定するデバイスであって、結像光学系の上流のビーム経路内に位置決め可能な、第1構造を有する第1パターンと、結像光学系の下流のビーム経路内に位置決め可能な、第2構造を有する第2パターンと、第2パターンの第2構造への第1パターンの第1構造の結像中に生成される重ね合わせパターンの空間分解測定用のセンサユニットとを備え、第1構造は、第1構造をスケール変換により第2構造に変換できないよう第2構造から所定の様式でずれているデバイスに関する。
【0040】
本発明のこの態様は、周期的パターン(格子パターン)が重ねて結像されるさらに上述した態様の、任意の所望の(必ずしも周期的ではない)パターン又は構造への拡張を表す。この場合も、結像中に第2パターンの第2構造に可能な限り正確に対応する第1構造の像を生成するために、第1構造は、補正構造、特にOPC補正構造を有し得る。当然ながら、代替的又は付加的に、第2構造も、第1構造の像を第2構造に近似させるために補正構造を有することができる。
【0041】
第1パターンは、特に、基板(ウェーハ)のパターニングに使用される被結像構造を有するリソグラフィ光学系用の露光マスクであり得る。
【0042】
第2パターンの第2構造は、結像光学系の結像スケールにより第1パターンの第1構造よりもサイズが小さいので、第2パターンの第2構造が電子ビーム描画により、又はマイクロパターニングに適した別の方法を使用して作製されることが得策であることが分かった。
【0043】
本発明のさらに他の特徴及び利点は、本発明に重要な細部を示す図面に関する以下の本発明の例示的な実施形態の説明から、また特許請求の範囲から得られる。個々の特徴は、単独で又は本発明の変形形態において任意の所望の組み合わせでまとめて、それぞれ個別に実現することができる。
【0044】
例示的な実施形態を概略図に示し、以下の説明において後述する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】パターンの重ね合わせにより結像光学系を測定するデバイスの概略図を示す。
【図2】OPC補正構造を有する第1格子構造、及びOPC補正構造を有しない結像スケールによりサイズを縮小した第2格子構造の概略図を示す。
【図3】配向及び格子線間の間隔が異なる複数の格子構造の概略図を示す。
【図4】パターンの重ね合わせにより結像光学系を測定する方法のフローチャートを示す。
【図5】図1のデバイス用の平坦構成のセンサユニットの概略図を示す。
【図6】図5のセンサユニットの空間分解検出器の、隣り合わせで配置された複数の画素の概略図を示す。
【図7】aおよびbは、多重露光用のリソグラフィ露光装置の、空間像のコヒーレント比較用の測定機構の概略図を示す。
【図8】パターンの重ね合わせにより測定するデバイスを有する掩蔽EUV投影対物レンズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、マイクロリソグラフィ用の投影対物レンズの形態の結像光学系2をパターンの重ね合わせにより測定するデバイス1を概略的に示す。本例の投影対物レンズ2は、光源としてのレーザ3が発生する193nmの波長の放射線で作動するよう構成される。レーザ光は、照明系5に供給され、照明系5は、投影対物レンズ2の物体平面7に配置された第1格子パターン6を照明するために均一で境界の明確なイメージフィールドを有するビーム経路4を生成する。
【0047】
第1物体側格子パターン6は、格子構造(図1にはより詳細に図示せず)を備え、この格子構造は、投影対物レンズ2を使用して、投影対物レンズ2の像平面9に配置された第2像側格子パターン8の格子構造(同じく図1にはより詳細に図示せず)に結像される。
【0048】
例えば0.25であり得る投影対物レンズ2の結像スケールβでの、像側格子パターン8への物体側格子パターン6の結像中に、第1格子パターン6及び第2格子パターン8の格子構造のピッチよりも数オーダ大きなピッチを有する重ね合わせ縞パターンが生成される。第2格子パターン8の下に配置された空間分解検出器10が、重ね合わせ縞パターンを撮影する役割を果たし、重ね合わせ縞パターンは、評価装置(図示せず)を使用して評価することができる。
【0049】
物体側格子パターン6は、それ自体が既知の直線変位装置の形態の移動装置12を使用して物体平面7において変位させることができる透明基板11を有する。したがって、像側格子パターン8も、透明基板11を有し、さらに別の移動装置14を使用して像平面8において検出器10と共に変位させることができる。検出器10及び第2格子パターン8の共通変位を可能にするために、これらは共通の構造ユニット15に収容される。
【0050】
図2に示すように、第1格子パターン6は、相互間に一定の距離を挟んで配置された複数の格子線16aを有する角度付き格子構造16を有する。さらに、第1格子パターン6の各格子線16aは、角度付き格子構造16のコーナに補正構造17を有する。この補正構造は、以下で「光近接効果補正」(OPC)補正構造とも称するが、それはこの用語が従来の露光マスクの補正構造として使用されるからである。同様に図2で見ることができるように、第2格子パターン8は、投影対物レンズ2の結像スケールβだけサイズを縮小した角度付き格子構造18を有するが、補正構造は有しない。すなわち、第1格子構造16は、モアレ格子で普通はそうであるように、投影対物レンズ2の結像スケールβでのスケール変換により第2格子構造18に変換され得ない。
【0051】
例として格子線16aのコーナに示すOPC補正構造17は、図2に結像スケールβの矢印により示すように、像平面9への格子構造16の結像時に、第2格子パターン8の第2格子構造18の像に可能な限り精密に対応する像の形成に使用されることが意図される。OPC補正構造が第1格子パターン6に配置される幾何学的形状及び場所は、投影対物レンズ2を通るビーム経路の数学モデルに基づき通常は決定される。特に、結像に対する照明系5の影響を考慮すること、又は照明系5の適切な照明設定の選択を適切な補正構造17の決定と対応させて行うことがここで可能である。したがって、第1格子構造16の結像時に第2格子構造18を可能な限り精密に再現することができるようにするために、測定は、選択された格子パターン6又は選択された補正構造17に応じて決定される照明設定又は照明パラメータを用いて行われる。
【0052】
歪み等の、デバイス1を使用した測定において判定すべき特性パラメータは、第1格子構造16の像を像平面9における第2格子構造18と重ね合わせることにより生成される縞パターンで測定される。ここで、例えば従来のモアレ測定技術に関する本出願人による米国特許第6,816,247号明細書に記載のように、重ね合わせ縞パターンの位相シフト評価を可能にするために、第1格子パターン6及び第2格子パターン8を相互に対して変位させる。
【0053】
第1格子パターン6及び第2格子パターン8は、図3に例として第2格子パターン8に関して5個の格子構造18〜22で示すように、単一の格子構造16、18だけでなく複数の格子構造を通常は有する。格子構造18〜22の格子線18a〜22aは、本例では3個の異なるピッチd1〜d3及び異なる配向を有する。この場合、例えば、第1格子構造19の格子線19a及び第5格子構造22の格子線22aは、45°の角度で延び、異なる格子構造の格子線は、原理上は相互に任意の所望の角度をなすことができる。当然ながら、第2格子パターンの格子構造18〜22に対応する格子構造が(結像スケールβを考慮して)、第1格子パターン6に形成され、これらを図2に示すように補正構造17でさらに補うことができる。
【0054】
測定対称の光学系への、この場合は投影対物レンズ2への、格子構造18〜22のピッチ及び配向の一致は、測定において判定すべき測定パラメータに関して通常は行われる。したがって、例えば、ピッチd1〜d3及び格子構造18〜22の空間配向は、第1格子パターン6の第1格子構造16がもたらす1次回折を結像光学系により少なくとも部分的に掩蔽するよう選択することができ、それにより、評価において測定することができる重ね合わせ縞パターンのコントラストの低下が得られる。
【0055】
図4は、そのような掩蔽に基づく像コントラスト低下を検出する方法プロセスのフローチャートを示す。ここで、第1ステップS1において、測定対称の結像系、本例では投影対物レンズ2の数学光学モデリングが実行される。数学モデルに基づき、第2ステップS2において、第1格子パターン6がもたらす回折次数(又は少なくとも0次及び/又は1次の回折)を少なくとも部分的に掩蔽する回折構造の構造幅又はピッチ及び配向が決定される。
【0056】
第3ステップS3において、所望のピッチ又は配向を有する格子構造をそれぞれが有する、第1物体側格子パターン6及び関連の第2像側格子パターン8が形成され、必ずしもあるとは限らないが適宜、例えばOPC補正構造の形態の補正構造を、第1格子パターンの格子構造に配置することができる。
【0057】
さらに次の第4ステップS4において、続いて測定が図1に関連して説明した方法で実行され(すなわち、2つの格子パターン6、8を相互に対して変位させ)、生成された重ね合わせ縞パターンのコントラストが判定される。最後の第5方法ステップS5において、縞コントラスト測定が評価され、結像光学系により生じる掩蔽に起因したコントラストの低下に関する結論が下される。
【0058】
図4に示す方法を使用した掩蔽に関する投影対物レンズ2の測定に加えて、又はその代わりに、特に重ね合わせ縞パターンのコントラストの変化、特に低下に基づき、投影対物レンズ2の特に短距離迷光(short range stray light)(「フレア」)の迷光域も判定することが可能である。例として、限られた範囲の迷光は、半ピッチが迷光域に対応する格子構造のピッチにおけるコントラストの低下を招く。異方的迷光形成も、格子構造の配向に応じてコントラストを様々に低下させ、したがって検出され得る。さらに、重ね合わせ縞コントラスト又は重ね合わせ縞パターンのコントラストの低下の測定は、投影対物レンズの収差の検出につながり得る。
【0059】
したがって、重ね合わせ縞パターンのコントラストの変化に基づき、投影対物レンズ2の掩蔽、吸収領域、迷光域、及び収差を判定し、且つ投影対物レンズ2の「限界寸法」のこれらの測定変数に応じた均一性(「CD均一性」)に関する結論を下すことが可能である。「CDU」は、特に多重露光に関して重要なパラメータであり、その理由は、同等のCDU値を有するリソグラフィ装置での多重露光が、CDU値が相互に大きく異なるリソグラフィ装置でよりもうまくいくからである。
【0060】
投影対物レンズ2を測定する上述の手順は、周期構造(格子構造)の結像に限定されない。むしろ、任意の所望の(非周期)構造を相互に結像することも可能である。特に、この場合の第1パターンをリソグラフィ光学系用の露光マスクとすることができ、すなわち、第1構造はウェーハの露光用に設けられる。第2マスクの第2構造は、この場合、例えば電子ビームを使用した直接描画により形成することができる。
【0061】
図1における測定用のデバイス1の場合、検出器10及び第2格子パターン8を有する構造ユニット15がデバイス1の固定コンポーネントであり、これが種々の光学系を特性評価する測定場所を表すと想定した。しかし当然ながら、複数の光学系、特に複数のリソグラフィ装置を特性評価するために、位置が固定された測定デバイスの代わりに、パターンの重ね合わせによる測定を実行することができるように種々のリソグラフィ装置のウェーハステージに導入することができるよう構成された移動構造ユニットの形態のセンサユニットを設ける方が得策であり得る。特に、センサユニットは、この場合はウェーハの代わりにウェーハステージに位置決めすることができるよう構成すべきである。すなわち、センサユニットの寸法は、ウェーハの寸法に実質的に対応すべきである。ウェーハの高さは、通常はわずか約0.7mm〜1mmであるので、これはこのようなセンサユニットの構造高さに特に高い要求を課す。
【0062】
図5は、第2格子パターン又は第2格子パターン8の第2格子線18aが、CCDカメラチップの形態で構成された検出器10に直接、すなわちリレー光学ユニットを間に接続せずに配置される、センサユニット15を示す。格子線18aは、この場合、(通常は20μm未満の厚さの)薄い基板(図5には図示せず)に配置するか、又は検出器10の感光検出表面10aの保護用の保護ガラス23に直接配置することができる。センサユニット15の測定データ又は測定信号を外部の評価装置に伝送するために、電気接点25を検出器10の側方に設けることで、センサユニット25の構造高さを増加させないようにする。ここで、保護ガラス23は、例えば約1μm〜100μm、通常は約10μm〜約50μmという小さな厚さを有する。
【0063】
保護ガラス23は、波長変換用の周波数変換素子として構成され、CCDチップ10の感光検出表面10a用の従来の保護ガラスに取って代わる。保護ガラス23は、センサユニット15に入射する放射線24の周波数変換に役立つ。放射線24は、ここでは例えばDUV波長域又はEUV波長域とすることができ、保護ガラス23により可視波長域の放射線に変換され得る。第1の場合には、保護ガラスは、DUVからVIS波長域への周波数変換を可能にする蛍光ガラスから構成することができ、第2の場合には、EUV波長域からVIS波長域への周波数変換を可能にするシンチレーションガラスから構成することができる。
【0064】
周波数変換素子としての保護ガラス23の使用により、リレー光学ユニットを省くこと、したがって例えば約1.2mm未満の、したがってウェーハの高さと同程度のセンサユニット15の構造高さhを得ることが可能であることにより、センサユニット15をウェーハの代わりに種々のリソグラフィ装置に導入することができ、これは特に、これらのリソグラフィ装置のウェーハステージが、ウェーハを収納するために例えば0.1mm〜0.5mmの範囲の高さの窪みを有する場合に可能である。
【0065】
周波数変換素子の形態の保護ガラス23は、特に、格子線18aが感光表面10aに転写されないことを確実にする。検出器10の感光表面10aの個々の画素26a〜26c(図6を参照)が約10μm×10μmのサイズを有し、従来のモアレ格子の場合に格子線18aの数が1mmあたり約1000個〜2000個程度の線対であると想定した場合、これにより得られる格子線の数は約10個〜20個であり、これは画素26a〜26c毎の、すなわち約0.5μm〜1μmのピッチd1(図5を参照)あたりの照射強度に寄与する。
【0066】
しかしながら、図2及び図3に示す格子構造16、18〜22において、格子線16a、18a〜22aはより密接に位置付けられる。すなわち、例えば100nmの、又はさらにはわずか50nmのピッチd1を達成することが可能である。この場合(適宜EUV放射線の使用と同様に)、画素26a〜26c毎の格子線18aの数は、例えば5000個〜10000個であり得る。ピッチが小さいことにより、測定中の確度を高めることができ、これは、多重露光、特に二重露光に関する複数の結像光学系の比較に特に好都合である。
【0067】
多重露光、特に二重露光(「ダブルパターニング」)と称するものを実行するために、連続露光動作によりレジストにおいて精密に重なった潜像を得ることを確実にしなければならない。さらに、種々の投影露光装置間の偏差は、これらの偏差が適用公差範囲(budget of available tolerances)の一部を占めてしまうので、許容プロセスウィンドウを狭めることになり得る。例えば四重露光(例えば、米国特許出願公開第2010/0091257号明細書を参照)の形態の多重露光に対する需要増に伴い、生産ウィンドウ(production window)がより一層小さくなり、リソグラフィシステムの特性の対応付け(pairing)に対する要求がさらに高まるようになる。
【0068】
パターンの重ね合わせによる測定に加えて、多重露光を改善するために、種々のリソグラフィ装置の空間像間の比較を行うことも可能であり、この目的で、例えば、導入部に記載した国際公開第2009/033709号明細書に示されているようなデバイスを使用することができる。空間像測定は、特に双極又は四重極(quadruple)照明等の種々の照明設定で実行することができ、フレキシブルな照明瞳を使用することができる。このようなフレキシブルな照明瞳は、特に、照明設定又は適切なマニピュレータの変更によりリソグラフィ装置の種々のシステム特性を目標通りに補償するために使用することができる。
【0069】
特に、リソグラフィ装置のそれぞれに空間像測定用の専用測定装置が設けられる場合、このような光学系の対応付けは、多重露光用のマスクを使用して実行することもできる。異なる多重露光ステップがここで関与するので、使用されるマスクは、この場合は通常はわずかに異なる。これらの差も、空間像検出により検出することができ、照明設定を変えることにより、これらの差が空間像においてまさに所望通りに現れるようにすることが可能である。
【0070】
多重露光用の2つのリソグラフィ装置の適性を試験するためには、特に変数「限界寸法」(CD)及び歪みが重要であり、それはこれらが部分像の相互位置の精度を実質的に決定するからである。上述の重ね合わせ測定技術が使用されない場合、重ね合わせ測定技術に匹敵する精度で歪みを比較して、nm範囲内の空間像構造の場所を相互に比較する必要がある。したがって、拡大光学ユニット又はカメラの相対位置が、空間像の走査中にこの確度で把握されなければならず、また把握され続けなければならない。正確な相対位置を保つために、例えば、両方の測定装置を、例えばそれらを熱膨張率の低い材料から例えば製造され得る共通の基板に取り付けることにより、相互に強固に接続することが可能である。
【0071】
代替的に、インコヒーレント空間像測定において、同一のマスクを使用することにより、また横方向走査移動をいずれの場合も各光軸に関してのみ測定することにより、2つの測定装置間の固定結合を省くことが可能である。最初に、又は測定中でさえも、各座標系の対応の原点を得るために空間像における同一のパターン(例えば十字)を標的にすることが可能である。その場合、2つの空間像が、相互に独立して、但しnm確度で横方向位置決定してそれぞれ測定される。続いて、2つの空間像は、歪み及びCDに関して比較される。
【0072】
このように、全く同じ測定装置を比較対象の全リソグラフィシステムの測定に使用することが可能であり、それは使用される座標系の原点を上述のように均一に決定することができるからである。インコヒーレント空間像測定に加えて、コヒーレント空間像測定も可能であり、これについて以下でより詳細に説明する。
【0073】
図7a及び図7bは、VUV域の波長用の2つのリソグラフィ装置101a、101bの空間像をコヒーレントに比較する測定機構100を示す。測定機構100は、例えば193nmの測定放射線103を発生させる役割を果たすレーザ102の形態の光源を有し、測定放射線103は、ビームスプリッタ104を介して2つの部分光線103a、103bに分割され、部分光線103a、103bは、測定対象のリソグラフィ装置101a、101bそれぞれに供給される。ビームスプリッタ104は、例えばビームステアリングミラーとして知られるものの位置に配置され得る。ビームスプリッティングにより、相互に位相結合を有する2つの部分光線103a、103bの発生が可能となる。
【0074】
リソグラフィ装置101a、101bのそれぞれは、照明系105a、105b及び投影対物レンズ106a、106bを有する。2つの部分光線103a、103bは、各リソグラフィ装置101a、101bを通り、偏向ミラー107又は部分透過ミラー108を介して偏向されてコヒーレントに重ね合わせられる。結像光学ユニット109が、重ね合わせられた部分光線103a、103bを空間分解検出器110に、例えばCCDカメラに結像する役割を果たす。空間像測定のために像側で必要なコンポーネントは、リソグラフィシステム101a、101bの両方に共通する構造ユニットに収容することができる。
【0075】
測定機構100は、構成に関してマッハ・ツェンダー干渉計に実質的に対応する。2つの部分光線103a、103bのコヒーレントな重ね合わせ、したがって空間像の比較を確保するために、使用される放射線の空間コヒーレンス長を超えてはならない。これを確実にするために、2つの部分光線103a、103bが延びる光路長はほぼ同一でなければならない。第1部分光線103aが延びる光路長を第2部分光線が延びる光路長に一致させることができるように、第1部分光線103aの位相シフト用の可変遅延部111が測定機構100に設けられる。
【0076】
図7aにおける測定機構100では、照明系105a、105bがコヒーレント照明(σほぼゼロ)又は部分コヒーレント照明に設定されることにより、各照明系105a、105bと各投影対物レンズ106a、106bとの間に位置付けられたマスク平面(図示せず)に、平行ビーム経路又は角度分布がわずかに異なる平行ビーム経路の重ね合わせが存在する。図7aにおける測定機構100では、波面収差が全面にわたって(over areas)測定され、マスクは波面の振幅を局所的に変えるだけなので、マスクを省くことが可能である。
【0077】
空間像を比較する際、ウェーハスキャナとして構成される2つのリソグラフィ装置101a、101bの波面、例えば各照明系105a、105bの収差が比較される。このような収差比較は、フィールド分解的(field-resolved manner)且つ偏光依存的(polarization-dependent manner)に行われ得る。この場合特に、多重露光に関連する収差、例えば波面収差のうちコマ収差の割合を、適宜フィールドプロファイルにおいても比較することができる。フィールド分解は、この場合、多重露光も行われる領域で行われ得る。
【0078】
図7bは、さらに孔空きマスク112a、112bが各部分光線103a、103bのビーム経路に挿入された、図7aの測定機構を示す。孔空きマスク112a、112bにより、所望のフィールド点の選択が可能である。孔空きマスク112a、112bは、照明系の収差も隠し、その結果、投影対物レンズ106a、106bの収差のみを相互に比較することができる。
【0079】
2つのリソグラフィ装置101a、101bのコヒーレントな特性評価に関して図7a、図7bにおいて説明した測定機構100では、それらの空間像をその場で相互に比較することが可能であることで、2つのリソグラフィ装置101a、101bの空間像の差を直接、すなわち光源102の影響を受けずに相互に比較することができる。これに対して、2つのインコヒーレント光源又は2つのコヒーレントだが相互にインコヒーレントな光源を用いて実行される空間像測定では、光源及びリソグラフィシステムの組み合わせの光学的効果を相互に比較することしか可能でなく、それは後者がゆらぎ又はドリフト等の光源の影響を完全に補償できないからである。さらに、2つ(又は3つ以上)のリソグラフィ装置のインコヒーレント測定では、各測定の誤差も同様に測定されることにより、リソグラフィ装置自体を特性評価することができるように測定に対する個々の影響を後で分離しなければならない。
【0080】
最後に、図8は、マイクロリソグラフィ用の掩蔽EUV投影対物レンズ200の形態の結像光学系に対する、図1に関連して上述したデバイス1の使用を示す。その構成は、参照により本願に援用される本出願人による国際公開第2006/069725号明細書に詳細に記載されている(該明細書の図17を参照)。投影対物レンズ200は、6個のミラーS100〜S600を有し、そのうち4個は第1部分対物レンズ10000に配置され、2個は第2部分対物レンズ20000に配置され、両者間に中間像ZWISCHが形成される。光路内で2番目のミラーS200は、低入射角を得るために頂点V200を有する凹面ミラーとして構成される。第3ミラーS300は、頂点V300を有する凸面ミラーとして構成される。
【0081】
投影対物レンズ200は、開口絞りBを有し、これは、第5ミラーS500と第6ミラーS600との間のビーム経路内で絞り平面700に配置される。掩蔽部すなわち照明フィールドの内径を画定する遮蔽絞り(shading stop)ABが、第3ミラーS300と第4ミラーS400との間のビーム経路内でさらに別の絞り平面704に配置される。絞り平面700、704は、投影対物レンズ200の入射瞳と共役であり、主光線CRと投影対物レンズ200の光軸HAとの交点として生じる。
【0082】
投影対物レンズ200の物体平面には、図1におけるデバイス1の基板11に配置される第1格子パターン6が配置され、投影対物レンズ200の像平面の領域には、第2格子パターン8(図示せず)を有するセンサユニット15が配置される。すでにさらに上述したように、掩蔽投影対物レンズ200では、格子構造(図3を参照)のピッチ及び/又は空間配向を、0次又はそれよりも高次の回折の(部分的)掩蔽が遮蔽絞りABで生じるよう選択することができ、これが投影対物レンズ200の測定における重ね合わせ縞パターンの像コントラストに影響を及ぼすことで、投影対物レンズ200の掩蔽、吸収領域、迷光域、収差等を判定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンの重ね合わせにより結像光学系(2、200)を測定するデバイス(1)であって、
前記結像光学系(2、200)の上流のビーム経路(4)内に位置決め可能な、第1格子構造(16)を有する第1格子パターン(6)と、
前記結像光学系(2、200)の下流の前記ビーム経路(4)内に位置決め可能な、第2格子構造(18)を有する第2格子パターン(8)と、
該第2格子パターン(8)の前記第2格子構造(18)への前記第1格子パターン(6)の前記第1格子構造(16)の結像中に生成される重ね合わせ縞パターンの空間分解測定用のセンサユニット(15)と
を備え、
前記第1格子構造(16)は、前記第1格子構造(16)をスケール変換により前記第2格子構造(18)に変換できないよう該第2格子構造(18)から所定の様式でずれることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
パターンの重ね合わせにより結像光学系(2、200)を測定するデバイス(1)であって、
前記結像光学系(2、200)の上流のビーム経路(4)内に位置決め可能な、第1格子構造(16)を有する第1格子パターン(6)と、
前記結像光学系(2、200)の下流の前記ビーム経路(4)内に位置決め可能な、第2格子構造(18)を有する第2格子パターン(8)と、
該第2格子パターン(8)の前記第2格子構造(18)への前記第1格子パターン(6)の前記第1格子構造(16)の結像中に生成される重ね合わせ縞パターンの空間分解測定用のセンサユニット(15)と
を備え、
前記第1格子構造(16)及び前記第2格子構造(18)は、補正構造(17)により異なることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスにおいて、前記第1格子構造(16)はOPC補正構造を有するデバイス。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のデバイスにおいて、
前記第1格子パターン(6)の前記第1格子構造(16)を照明する照明系(5)であり、該照明系(5)の少なくとも1つの照明パラメータは前記補正構造(17)に一致する照明系(5)
をさらに備えるデバイス。
【請求項5】
先行する請求項のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、前記第1格子パターン(6)及び前記第2格子パターン(8)は、複数の格子構造(16、18〜22)を有し、異なる格子構造(18〜22)の格子線(18a〜22a)のピッチ(d1、d2、d3)は相互に異なるデバイス。
【請求項6】
先行する請求項のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、前記第1格子パターン(6)及び前記第2格子パターン(8)は、空間配向の異なる複数の格子構造(16、18〜22)を有するデバイス。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のデバイスにおいて、前記第1格子構造(16)の前記ピッチ及び/又は前記空間配向は、前記第1格子構造(16)がもたらす0次又はそれよりも高次の回折が、前記結像光学系(2)により少なくとも部分的に掩蔽又は吸収されるよう選択されるデバイス。
【請求項8】
先行する請求項のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、前記格子パターン(6、8)を相互に対して変位させる少なくとも1つの移動装置(12、14)をさらに備えるデバイス。
【請求項9】
先行する請求項のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、前記センサユニット(15)は、空間分解検出器(10)及び前記第2格子パターン(8)を共通の構造ユニット内に備えるデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスにおいて、波長変換用の周波数変換素子(23)が、前記第2格子パターン(8)と前記検出器(10)との間に配置されるデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のデバイスにおいて、前記周波数変換素子は、前記空間分解検出器(10)用の保護ガラス(23)として構成されるデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のデバイスにおいて、前記保護ガラス(23)は蛍光ガラス又はシンチレーションガラスであるデバイス。
【請求項13】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置であって、
結像光学系としての投影対物レンズ(2、200)と、先行する請求項のいずれか1項に記載の前記投影対物レンズ(2、200)を測定するデバイスと
を備える投影露光装置。
【請求項14】
パターンの重ね合わせによる結像光学系(2、200)の測定用の、特に先行する請求項のいずれか1項に記載のデバイス(1)用のセンサユニット(15)であって、
空間分解検出器と、
少なくとも1つの格子構造(18)を有する格子パターン(8)と
を備え、該格子パターン(8)と前記空間分解検出器(10)の放射線感応検出器表面(10a)との間に配置され、該検出器表面(10a)に取り付けられた保護ガラス(23)の形態の、前記センサユニット(15)に入射する放射線(24)の波長変換用の周波数変換素子(23)
を特徴とするセンサユニット。
【請求項15】
請求項14に記載のセンサユニットにおいて、1.2mm未満の構造高さ(h)を有するセンサユニット。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のセンサユニットにおいて、前記保護ガラス(23)は蛍光ガラス又はシンチレーションガラスであるセンサユニット。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載のセンサユニットにおいて、前記空間分解検出器(10)は、測定信号の伝送用の側方に配置された電気接点(25)を有するセンサユニット。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項に記載のセンサユニットにおいて、5個〜50個の格子線又は1000個を超える格子線(18a)が、前記空間分解検出器(10)の前記可能表面(10a)の各画素(26a〜26c)に位置付けられるセンサユニット。
【請求項19】
結像光学系(2、200)をパターンの重ね合わせにより測定する方法であって、
前記結像光学系(2、200)の上流に配置された第1格子パターン(6)の第1格子構造(16)を前記結像光学系(2)の下流に配置された第2格子パターン(8)の第2格子構造(18)に結像することにより生成される、重ね合わせ縞パターンを測定するステップと、
前記2つの格子パターン(6、8)を相互に対して変位させると同時に、前記重ね合わせ縞パターンのコントラストを判定するステップと、
前記格子パターン(6、8)の相対移動中に前記重ね合わせ縞パターンのコントラストを評価することにより、前記結像光学系(2、200)の掩蔽、吸収領域、迷光域及び/又は歪みを判定するステップと
を含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、先行する方法ステップにおいて、前記第1格子パターン(6)の前記第1格子構造(16)は、前記第1格子パターン(6)がもたらす0次又はそれよりも高次の回折が少なくとも部分的に前記結像光学系(2)により掩蔽又は吸収されるよう選択されたピッチ及び/又は配向で形成される方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記格子線(16a)の前記ピッチ及び/又は前記配向は、前記結像光学系(2)を通るビーム経路の数学モデルに基づき決定される方法。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法において、前記結像光学系(2、200)の上流に接続された照明系(5)の少なくとも1つの照明パラメータを、測定中に判定された掩蔽、吸収領域、判定された迷光域、及び/又は歪みに応じて変えることにより、前記結像光学系(2、200)の補正を行うステップをさらに含む方法。
【請求項23】
パターンの重ね合わせにより結像光学系(2、200)を測定するデバイス(1)であって、
前記結像光学系(2、200)の上流のビーム経路(4)内に位置決め可能な、第1構造(16)を有する第1パターン(6)と、
前記結像光学系(200)の下流のビーム経路(4)内に位置決め可能な、第2構造(18)を有する第2パターン(8)と、
該第2パターン(8)の前記第2構造(18)への前記第1パターン(6)の前記第1構造(18)の結像中に生成される重ね合わせパターンの空間分解測定用のセンサユニット(15)と
を備え、前記第1構造(16)は、該第1構造(16)をスケール変換により前記第2構造(18)に変換できないよう該第2構造(18)から所定の様式でずれているデバイス。
【請求項24】
請求項23に記載のデバイス(1)において、前記第1パターン(6)はリソグラフィ光学系用の露光マスクであるデバイス。
【請求項25】
請求項23又は24に記載のデバイスにおいて、前記第2パターン(6)は電子ビームを使用して描画された第2構造(18)を有するデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−216826(P2012−216826A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−73729(P2012−73729)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】