説明

パターン形成装置、およびパターン形成方法

【課題】この発明は、高精細なパターンを高い品質で形成できるパターン形成装置、およびパターン形成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】パターン形成装置は、表面にパターン状の多数の凸部21を有する凸版1を有する。凸版1の凸部21の先端には、パターン状のトナー付着面22がある。トナー付着面22に帯電したトナー粒子43を付着させてパターンを現像し、ガラス板5の表面に塗布した転写液Lの液面Lsと凸版1の谷部23との間に空隙Sが形成されるように凸版1とガラス板5を近接させ、トナー粒子43に電界を作用させてガラス板5へ転写する。凸版1とガラス板5を剥離する際には、空隙Sを介して空気を逃がして負圧を解消し、転写したトナー粒子43の乱れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、平面型画像表示装置、配線基板、ICタグ、LED照明デバイスなどの製造に用いるパターン形成装置、およびパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に微細なパターンを形成する技術として、フォトリソグラフィー技術が中心的な役割を果たしている。しかし、このフォトリソグラフィー技術は、その解像度やパフォーマンスを高めつつある反面、巨大で高額な製造設備を必要とするとともに、パターン以外に塗布した材料の再利用が難しく、パターン形成に要するコストを低く抑えることが難しい。
【0003】
これに対し、例えば、インクジェット技術は、装置の簡便さや非接触パターニングといった特徴を生かした比較的安価なパターニング技術として実用化され始めている。しかし、このインクジェット技術も、例えば近年の平面型画像表示装置の蛍光体スクリーンのパターニングに要求される程度の高解像度化や高生産性には限界があることが露呈されつつある。
【0004】
これらの点において、電子写真技術、とりわけ液体トナーを用いた電子写真技術は、優れた可能性を有している。
【0005】
従来、このような電子写真技術を用いて、フラットパネルディスプレイ用の前面基板の蛍光体層やブラックマトリックス、カラーフィルターなどを形成するパターン形成方法が提案されている。例えば、平面型画像表示装置の前面基板に蛍光体スクリーンを形成する装置として、感光体ドラムの表面にパターン状の静電潜像を形成し、この静電潜像に帯電した現像剤を供給して現像し、このように現像した各色の現像剤像を転写ドラムへ順次転写し、転写ドラム上で重ねられた各色の現像剤像を基板に一括転写して定着させるパターン形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、この種の複数のドラムを用いた装置では、感光体ドラムの湾曲した周面に形成したパターン状の現像剤像を転写ドラムの湾曲した周面に転写し、且つこの転写ドラム周面のパターンを平らな基板上へ転写するため、感光体ドラムと転写ドラムとの間の位置精度、および転写ドラムと基板との間の位置精度を高精度に維持することが極めて困難であり、微細なパターンを要求される程度に高い位置精度で基板に形成することが極めて難しく、品質の高いパターンを形成することは難しい。
【特許文献1】特開2004−30980号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、高精細なパターンを高い品質で形成できるパターン形成装置、およびパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明のパターン形成装置は、略同一平面にあるパターン状のトナー付着面、このトナー付着面を先端に有するパターン状の凸部、およびこの凸部の間に形成された谷部を有する凸版と、この凸版の上記トナー付着面に帯電したトナー粒子を付着させて上記パターンを現像する現像装置と、上記凸版の上記トナー付着面と被転写媒体の表面とを絶縁性液体で濡らした状態で近接対向させて位置決めする位置決め装置と、上記トナー付着面に付着しているトナー粒子に電界を作用させて上記被転写媒体の表面に転写する転写装置と、を有する。
【0009】
また、この発明のパターン形成方法は、略同一平面にあるパターン状のトナー付着面、このトナー付着面を先端に有するパターン状の凸部、およびこの凸部の間に形成された谷部を有する凸版を用意する工程と、上記凸版の上記トナー付着面に帯電したトナー粒子を付着させて上記パターンを現像する現像工程と、上記凸版の上記トナー付着面と被転写媒体の表面とを絶縁性液体で濡らした状態で近接対向させて位置決めする位置決め工程と、上記トナー付着面に付着しているトナー粒子に電界を作用させて上記被転写媒体の表面に転写する転写工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
この発明のパターン形成装置は、上記のような構成および作用を有しているので、高精細なパターンを高い品質で形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係るパターン形成装置10について詳細に説明する。
図1に示すように、パターン形成装置10は、矩形平板状の凸版1(後に詳述する)、この凸版1を図中下面側に固定して保持した矩形板状の固定プレート2、および2本の支持フレーム3を有する。凸版1は、その裏面を固定プレート2の下面に対して着脱可能に面接せしめて表面を下向きにした状態で保持されている。また、固定プレート2は、コの字状の2本の支持フレーム3によって図中左右端を保持されて、略水平な姿勢に固定されている。すなわち、凸版1は、以下に説明するプロセスユニット20およびガラス板5に表面を対向せしめた状態で、その上方に離間して中空に浮かせた状態で定位置に水平な姿勢で保持されている。
【0012】
上記のように定位置に保持された凸版1の図中下方には、プロセスユニット20、およびガラス板5(被転写媒体)が移動可能に配設されている。つまり、プロセスユニット20およびガラス板5は、3本のレール4に沿って図中矢印T方向に移動可能に取り付けられた可動プレート6上に配設されている。特に、ガラス板5は、可動プレート6上に配設された位置決めステージ7(位置決め装置)の上に載置されている。ここでは、可動プレート6の移動機構についての詳細な説明は省略する。なお、可動プレート6は、プロセスユニット20およびガラス板5を2本の支持フレーム3のコ字状の空間を通して矢印T方向に搬送する。
【0013】
位置決めステージ7は、ガラス板5を凸版1の真下に移動させた状態で、ガラス板5を面方向に移動させるとともに凸版1に対して離接させる方向に昇降移動させる。具体的には、位置決めステージ7は、図示しないカメラで固定プレート2とガラス板5の位置合わせ用のマーク(図示せず)を検出してガラス板5を面方向に移動させ、凸版1とガラス板5を面方向に位置合わせする。ガラス板5の昇降移動に関係する凸版1との間の距離については、後に詳述する。
【0014】
プロセスユニット20は、凸版1の表面を除電するとともに所望する電位に帯電させる帯除電器11、凸版1の後述するトナー付着面22に各色(r:赤、g:緑、b:青)の液体現像剤を供給してパターンを現像する複数の現像装置12r、12g、12b(以下、総称して現像装置12と称する場合もある)、および後述する転写工程後に凸版1に残留したトナー粒子を除去するクリーナー13を備えている。
【0015】
各色の現像装置12に収納される液体現像剤は、炭化水素系やシリコーン系などの絶縁性液体中に帯電した微粒子(トナー粒子)を分散したもので、この微粒子が電界で電気泳動することによって現像が行われる。微粒子としては、例えば平均粒径4[μm]の蛍光体粒子をこれよりも平均粒径が小さい樹脂粒子が取り囲み、樹脂粒子がイオン性帯電サイトを有していて電界中でイオン解離することで電荷を帯びる構成や、樹脂粒子の内部に顔料微粒子を内包する構成、もしくは樹脂粒子の表面に顔料微粒子を担持する構成などが実施可能である。
【0016】
図2に部分的に拡大して示すように、凸版1の表面1aには、多数の針状の凸部21(パターン状の凸部)がマトリックス状に整列して形成されている。本実施の形態では、凸部21は、全て同じ形状、すなわち略四角柱状に形成されており、その先端にある略矩形のトナー付着面22が略同一平面内に配置されている。トナー付着面22には、後述する現像工程においてトナー粒子43(図6参照)が付着される。つまり、これら多数のトナー付着面22の形状が、ガラス板5に転写するパターンの形状を概ね決めることになる。また、多数の凸部21の間には、必然的に一定の深さを有する谷部23が形成される。
【0017】
この凸版1は、例えば、厚さ1.0[mm]ないし5.0[mm]、より好ましくは厚さ2.0[mm]ないし3.0[mm]の均一な厚さを有する矩形の平らな金属板の表面をマスキングしてエッチングすることで形成される。この場合、パターン状の凸部21(トナー付着面22)の谷部23に対する高さは、0.2[mm]乃至1.0[mm]、より好ましくは0.5[mm]乃至1.0[mm]に設計される。また、谷部23には、後述する高抵抗層44(図6参照)が形成される。
【0018】
金属板は、アルミニウム、ステンレス、チタン、アンバーなどの素材で構成可能であるほかに、ポリイミドやPETなどの表面に金属蒸着を施したものなどでも良いが、転写パターンを高い位置精度で形成するためには、熱膨張や応力による伸びなどが生じにくい素材で構成することが望ましい。または、被転写媒体としてのガラス板5と熱膨張率を合わせるため、ガラス板の表面をエッチングすることで凸部21を形成し、その後、この凸部21を有する表面1aに金属層を被覆するようにしても良い。
【0019】
いずれにしても、谷部23に形成する高抵抗層は、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロン、公知のレジスト材料などの体積抵抗率が1010[Ωcm]以上の材料(絶縁体を含む)により形成され、その膜厚は、10[μm]〜40[μm]、より好ましくは20[μm]±5[μm]に形成されている。高抵抗層は、より好ましくは、トナー付着面22を除く凸版1の表面1a全体を被覆するように設けられる。
【0020】
また、本実施の形態では、谷部23を含むトナー付着面22以外の凸版1の表面1aに、厚さ数百nmから数十μm程度の表面離型層(離型材)をコーティングした。これにより、トナー粒子の転写特性が向上しより好ましい特性が得られる。
【0021】
図1に示す帯除電器11は、周知のコロナ帯電器であり、例えば図示しないコロナワイヤーとグリッド電極からなるスコロトロン型の帯電器等が使用可能である。コロナワイヤーに例えば実効電圧6[kV]、周波数50[Hz]の交流電圧を印加し、グリッドを接地すると、帯電に先立って凸版1の高抵抗層の表面が略0Vとなるよう除電することができる。このように凸版1の表面1aを除電することで、高抵抗層を繰り返し帯電させる際の特性を安定化できる。また、帯除電器11は、コロナワイヤーに+5.5[kV]の電圧を印加し、グリッドに+500[V]の電圧を印加することで、高抵抗層の表面を略+500[V]に均一に帯電させる。
【0022】
図3には、上記のように帯電した凸版1トナー付着面22に液体現像剤を供給してパターンを現像するための現像装置12の概略構成を示してある。現像装置12は、プロセスユニット20を図1中矢印T方向に移動させつつ動作する。
【0023】
現像ローラ31は、凸版1の表面1aにあるトナー付着面22に対して100〜150[μm]程度のギャップを介してその周面が対向する位置に配置され、凸版1と現像装置12の相対的な移動方向と同じ方向(図中反時計回り方向)に1.5倍ないし4倍程度の速度で回転する。
【0024】
現像剤供給部33から現像ローラ31に供給された液体現像剤は、現像ローラ31の回転に伴って搬送され、凸版1の表面1aに供給される。このとき、現像ローラ31に例えば+250[V]の電圧が印加されていると、正に帯電しているトナー粒子は、接地電位の凸版1に向かって溶媒中を泳動し、凸版1のトナー付着面22に付着する。トナー付着面22以外の表面1aに設けられた高抵抗層は+500[V]に帯電されているので正に帯電したトナー粒子は反発されて付着しない。
【0025】
現像に寄与しなかったトナー粒子は、現像ローラ31の回転によって再び現像装置12内に回収され、スクイーズローラ32によって掻き取られる。すなわち、凸版1に付着した液体現像剤は続いてスクイーズローラ32と凸版1が対向するギャップに進入する。ここでは、ギャップ(トナー付着面22とスクイーズローラ32表面の間の距離)が30ないし50[μm]に設定されており、スクイーズローラ32の電位が+100[V]乃至+250[V]に設定されており、スクイーズローラ32は凸版1とは逆向きに凸版1の速度の3から5倍程度の速度で移動するように設定されているため、現像をさらに促進しつつ、同時に凸版1に付着している溶媒の一部を絞り取る効果を奏する。このようにして、凸版1のトナー付着面22にトナー粒子によるパターンが形成される。
【0026】
パターン形成装置10は、図1に示す構成の他に、図示しない転写装置および剥離機構を有する。
転写装置は、上記のようにパターンを現像した凸版1の表面1aに絶縁性の転写液(絶縁性液体)を介してガラス板5の表面を密着させた状態で、凸版1とガラス板5との間に電位差を与えてパターン状のトナー付着面22に付着されているトナー粒子に電界を作用させ、このトナー粒子によるパターンをガラス板5の表面に転写するよう機能する。より具体的には、図4に示すように、ガラス板5の表面に塗布された転写液Lに凸版1の凸部21の先端、すなわちトナー付着面22が浸る程度に、凸版1とガラス板5を近接させた状態で、トナー付着面22とガラス板5との間に電界を形成してトナー粒子に電界を作用させる。
【0027】
剥離機構は、上記のように転写液Lを介して密着した凸版1とガラス板5を、パターンを転写した後、剥離するよう機能する。本実施の形態では、上述した転写プロセスにおいて、凸版1とガラス板5を近接対向させるときに、図4に示すように、少なくとも凸版1の谷部23が転写液Lで満たされることのないよう、位置決めステージ7を動作させるようにしているため、転写プロセスの後、凸版1とガラス板5を剥離させる際には、谷部23と転写液Lの液面Lsとの間に空間Sが形成されており、この空間を介して空気を逃がすことができ、剥離の際に凸版1とガラス板5との間に大きな負圧が生じることがない。このため、剥離工程において、ガラス板5に転写したトナー粒子が乱されることがなく、高精細なパターンを安定して形成できる。
【0028】
次に、図5に示すフローチャートとともに図6乃至図9を参照して、上述したパターン形成装置10の動作を説明する。なお、ここでは、主に、パターンを現像した後の転写工程および剥離工程について詳細に説明する。また、本実施の形態では、被転写媒体としてのガラス板5の表面に、トナー粒子を受け入れるための多数の凹所を区画した格子状のバンク41が形成されているものとする。また、ガラス板5の表面には、転写電界を形成するため、光透過性を有する導電層42が形成されている。
【0029】
まず、主に図1を参照して説明したように、固定プレート2によって裏面を保持された凸版1の表面1aに、現像装置12を介して液体現像剤が供給され、現像ローラ31にバイアス電圧が印加されて、凸版1のトナー付着面22にトナー粒子43が付着され、パターンが現像される(図5;ステップ1)。このとき、例えば、赤色パターンを現像するため、現像装置12rが作動されて赤色のパターンが凸版1に形成される。
【0030】
この後、トナー粒子43によるパターンを保持した凸版1に対し、可動プレート6が移動されてガラス板5が対向配置される。なお、ガラス板5が凸版1に対向配置される前に、ガラス板5の表面には、図示しない塗布装置によって、絶縁性の転写液Lが塗布される(ステップ2)。ステップ2の転写液Lの塗布工程では、バンク41内の転写液Lの厚みを100[μm]程度にした。
【0031】
転写液Lが塗布されて凸版1に対向する位置まで移動されると、ガラス板5は、位置決めステージ7によって、凸版1に対して面方向に位置合わせされ、その後、凸版1に向けて上昇されて近接され、凸版1に対して位置決めされる(ステップ3)。この状態を図6に示す。本実施の形態では、凸版1の背面を固定プレート2に面接させて保持させているため、凸版1の表面の平面度が高く、ガラス板5に対する位置合わせを高精度に実施できる。
【0032】
なお、ステップ3の位置決め工程では、位置決めステージ7は、図4で説明したように、凸版1の多数の凸部21のトナー付着面22がガラス板5に塗布された転写液Lで濡れる程度にガラス板5を凸版1に近接させる。或いは、見方を変えると、凸版1の凸部21の高さ、すなわちトナー付着面22の谷部23に対する高さが、凸版1とガラス板5を近接対向させた状態で、転写液Lの液面Lsと凸版1の谷部23との間に空隙Sができる程度の高さに設計されている。なお、転写液Lとしては、液体現像剤の分散媒であるアイソパーが使用可能であり、金属石鹸等の帯電制御剤を分散させても良い。
【0033】
転写液Lの粘性や凸版1の凸部21の精細さなどの諸条件によって、凸版1の谷部23と転写液Lの液面Lsとの間に空隙Sを形成できる条件は変わるが、本実施の形態では、凸版1とガラス板5を近接させたときに、少なくとも空隙Sが転写液Lで満たされることのないギャップでガラス板5を凸版1に対して近接させるようにした。
【0034】
ステップ2でガラス板5の表面に転写液Lが塗布されて、ステップ3でガラス板5が凸版1に対して位置決めされると、ガラス板5の表面に形成した導電層42に図示しない転写装置によって転写バイアスが印加され、凸版1のトナー付着面22に付着しているトナー粒子43にガラス板5に向かう方向の電界が作用される。これにより、トナー粒子43がトナー付着面22から剥離されて転写液L中を泳動され(図7)、ガラス板5の表面にあるバンク41内に転写される(図8)(ステップ4)。トナー粒子43を転写した後の状態を図9に示す。ガラス板5の表面にバンク41がある場合、ガラス板5に転写されるパターンの形状は、バンク41の形状に依存する。
【0035】
この後、位置決めステージ7が動作されてガラス板5が凸版1から離間する方向に下降され、ガラス板5と凸版1が上下方向に剥離される(ステップ5)。このとき、凸版1およびガラス板5は、略矩形平板状の概ね剛体であるものと考えられ、凸版1の谷部23とガラス板表面の転写液Lの液面Lsとの間の空隙Sが無い(すなわち空隙Sが転写液Lで満たされている)と、両者の間に極めて大きな負圧を生じる。これに対し、本実施の形態では、凸版1とガラス板5の間に空隙Sを設けたため、剥離の際に、両者の間に大きな負圧を生じることを防止でき、負圧による転写液Lの流動を略無くすことができ、ガラス板5に転写したトナー粒子43の乱れを防止でき、高精細なパターンを高い品質で形成できる。
【0036】
ステップ5でガラス板5と凸版1を剥離した後、可動プレート6が動作されて凸版1の表面1aに沿ってクリーナー13が移動され、凸版1の表面に残ったトナー粒子43が除去される(ステップ6)。そして、各色のパターンをガラス板5に形成するまで(ステップ7;YES)ステップ1〜ステップ6の処理が繰り返され、パターン形成動作が終了される。
【0037】
以上のように、本実施の形態によると、凸版1の凸部21の先端にあるトナー付着面22にトナー粒子43を付着させてパターンを現像した後、このトナー粒子43によるパターンをガラス板5に転写する際に、ガラス板5の表面に塗布した転写液Lの液面Lsと凸版1の谷部23との間に空隙Sを形成するようにトナー付着面22だけを転写液Lに浸すようにしたため、転写プロセスの後の剥離プロセスにおいて、凸版1とガラス板5との間に大きな負圧を生じることを防止でき、転写したトナー粒子43によるパターンが乱れてしまうことを防止できる。これにより、高精細なパターンを高い品質でガラス板5に形成できる。
【0038】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0039】
例えば、上述した実施の形態では、剛体からなる平板状の凸版1を用いた場合について説明したが、これに限らず、可撓性を有する凸版を用いても良い。可撓性を有する凸版を用いた場合、凸版を湾曲させてドラム状にしても良く、或いは凸版を被転写媒体に対して密着および剥離する際に湾曲させるようにしても良い。
【0040】
また、上述した実施の形態では、ガラス板5の表面に、パターン形状を決定するバンク41を設けた場合について説明したが、これに限らず、例えば、図10に示すように、バンク41を設けなくても良い。この場合、ガラス板5に転写されるトナー粒子43によるパターンの形状は、凸版1の凸部21のトナー付着面22の形状に依存した形状となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態に係るパターン形成装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】図1のパターン形成装置の凸版を部分的に拡大した部分拡大斜視図。
【図3】図1のパターン形成装置の現像装置による動作を説明するための概略図。
【図4】図1のパターン形成装置の凸版とガラス板を対向させて位置決めした状態を示す部分拡大断面図。
【図5】図1のパターン形成装置による動作を説明するためのフローチャート。
【図6】トナー付着面にトナー粒子を付着させた凸版とガラス板を対向させた状態を示す部分拡大断面図。
【図7】転写電界によりトナー粒子が泳動する状態を示す部分拡大断面図。
【図8】トナー粒子がバンク内に転写される状態を示す部分拡大断面図。
【図9】トナー粒子によるパターンがガラス板に転写された状態を示す部分拡大断面図。
【図10】ガラス板の表面にバンクを持たない例を説明するための部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0042】
1…凸版、2…固定プレート、5…ガラス板、6…可動プレート、7…位置決めステージ、10…パターン形成装置、12…現像装置、21…凸部、22…トナー付着面、23…谷部、41…バンク、43…トナー粒子、L…転写液、S…空隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略同一平面にあるパターン状のトナー付着面、このトナー付着面を先端に有するパターン状の凸部、およびこの凸部の間に形成された谷部を有する凸版と、
この凸版の上記トナー付着面に帯電したトナー粒子を付着させて上記パターンを現像する現像装置と、
上記凸版の上記トナー付着面と被転写媒体の表面とを絶縁性液体で濡らした状態で近接対向させて位置決めする位置決め装置と、
上記トナー付着面に付着しているトナー粒子に電界を作用させて上記被転写媒体の表面に転写する転写装置と、
を有することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
上記トナー付着面の上記谷部に対する高さは、上記位置決め装置によって上記凸版と被転写媒体を位置決めした状態で、少なくとも上記谷部が絶縁性液体で満たされることのない高さに設計されていることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
上記位置決め機構は、少なくとも上記凸版の谷部が絶縁性液体で満たされることがないように上記凸版と被転写媒体を近接させることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
上記谷部を含む上記トナー付着面以外の上記凸版の表面には離型材が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項5】
上記凸版は、金属板をエッチングすることで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
上記凸版は、ガラス板をエッチングして上記凸部を形成した後、該凸部を有する表面に金属層を被覆して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項7】
略同一平面にあるパターン状のトナー付着面、このトナー付着面を先端に有するパターン状の凸部、およびこの凸部の間に形成された谷部を有する凸版を用意する工程と、
上記凸版の上記トナー付着面に帯電したトナー粒子を付着させて上記パターンを現像する現像工程と、
上記凸版の上記トナー付着面と被転写媒体の表面とを絶縁性液体で濡らした状態で近接対向させて位置決めする位置決め工程と、
上記トナー付着面に付着しているトナー粒子に電界を作用させて上記被転写媒体の表面に転写する転写工程と、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
上記位置決め工程では、少なくとも上記凸版の谷部が絶縁性液体で満たされることがないように上記凸版と被転写媒体を近接させることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
上記転写工程の後、上記凸版の谷部と絶縁性液体との間の隙間を介して空気を逃がしつつ上記凸版と被転写媒体を離間させて剥離する剥離工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−221642(P2008−221642A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63808(P2007−63808)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】