説明

パターン検査装置及びパターン検査方法

【目的】粗密パターン各々に対して、高い信号強度を得ることが可能なパターン検査装置提供することを目的とする。
【構成】パターン検査装置100は、パターン形成されたフォトマスク101を照明する照明光学系170と、照明によってフォトマスク101から得られる第1の光学画像を複数の第2の光学画像に光学的に分離するビームスプリッタ131と、分離された複数の第2の光学画像を用いて、少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する複数のセンサ回路106,136と、複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する参照回路112と、画素毎に、数の光学画像データの1つと基準画像データとを比較する比較回路108と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査装置及びパターン検査方法に係り、例えば、半導体製造に用いる試料となる物体のパターン欠陥を検査するパターン検査技術に関し、半導体素子や液晶ディスプレイ(LCD)を製作するときに使用されるフォトマスク、ウェハ、あるいは液晶基板などの極めて小さなパターンの欠陥を検査する装置およびその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができるパターン描画装置を用いる。かかるパターン描画装置を用いてウェハに直接パターン回路を描画することもある。例えば、電子ビームやレーザビームを用いて描画される。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査する試料検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
ここで、従来のパターン検査装置では、ランプや連続発振レーザなどの光源から発した連続光を照明光学系に導入し、レチクルやマスク等の被検物を照明する。照明光は、被検物上の限られた領域をスポット状あるいは矩形状に照明する。そして、このスポット状あるいは矩形状に照明された領域からの光は結像光学系を介して集光され、光電検出素子の受光面上に被検物の照明領域の像が形成される。ここから得られた光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パターンを撮像した光学画像とを比較することにより検査を行うことが知られている。例えば、パターン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die検査(ダイ−ダイ検査)」法や、マスクパターンを描画する時に使用したCADデータを検査装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計データ)をベースに比較の基準となる画像データ(基準画像データ)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像データとを比較する「die to database検査(ダイ−データベース検査)」法がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は光学画像(測定画像)データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、基準画像データと光学画像データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0006】
しかし、半導体製造用マスクなどの回路パターンは年々微細化しており、マスクパターンをウェハ上に転写するステッパに用いる光源が短波長化されている。それによって像分解能も向上されている。さらに、ウェハ上に転写すべき理想パターン形状に合わせてマスク上のパターン形状に補正を加える手法(補助パターン(アシスト・セリフ)追加)が開発され、実用化されている。また、転写光源としてX線(EUV光)を用いることで、短波長光源による高解像度性を狙ったEUV−リソグラフィも提案されている。
【0007】
これらの技術の進歩に伴い、欠陥を検査するパターン検査装置に要求される欠陥検出性能も更に厳しいものとなってきている。パターン検査装置における画像分解能向上のために、光源の短波長化や対物レンズの高NA化等の手法が用いられているが、光学系倍率の増大やセンサに取り込む光量の低下のため、S/N比が悪化し、結果として高コントラストの画像を取得することが困難になってきている。また、マスク上に存在するパターンの粗密は一定ではないため、マスク上に存在するパターンについて一律に画像を取得したのでは、例えば一方のパターンで高コントラスト画像を得られても、他方のパターンについて高コントラスト画像を得ることが困難となってしまう。高コントラスト画像が得られなかったパターンについては高精度に検査することが難しい。そのため、線幅や形状の異なる様々なパターンに対して高コントラスト画像を得て高精度の検査感度を有する欠陥検査装置が期待されている。このように、高精度画像採取のため、マスク上に存在する粗密パターン各々に対して存在する欠陥に対し、高い信号強度を得る手法が必要となっている。
【0008】
かかる要求に応える手法の1つとして、ステージ移動速度を調整することで検査対象試料の特定パターンについて照射光の走査相対速度を調整して、特定パターンに対して照射光の光量を増減して光学画像を取得する技術が文献に開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−205828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、被検査対象マスク上に存在する粗密パターン各々に対して、高い信号強度を得る手法が必要となっている。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、粗密パターン各々に対して、高い信号強度を得ることが可能なパターン検査装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のパターン検査装置は、
パターン形成された被検査試料を照明する第1の光学系と、
照明によって前記被検査試料から得られる第1の光学画像を複数の第2の光学画像に光学的に分離する第2の光学系と、
分離された複数の第2の光学画像を用いて、少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する複数の光学画像データ生成部と、
前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する基準画像データ生成部と、
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つと前記基準画像データとを比較する比較部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様のパターン検査装置は、
パターン形成された被検査試料を照明する光学系と、
照明によって前記被検査試料から得られる像を光電変換する光電変換素子と、
光電変換された信号をそれぞれ入力し、それぞれ異なるゲインで少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する複数の光学画像データ生成部と、
前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する基準画像データ生成部と、
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つと前記基準画像データとを比較する比較部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様のパターン検査方法は、
パターン形成された被検査試料を照明する工程と、
照明によって前記被検査試料から得られる第1の光学画像を複数の第2の光学画像に光学的に分離する工程と、
分離された複数の第2の光学画像を用いて、少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する工程と、
前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する工程と、
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つと前記基準画像データとを比較し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他の態様のパターン検査方法は、
パターン形成された被検査試料を照明する工程と、
照明によって前記被検査試料から得られる像を光電変換する工程と、
光電変換された信号をそれぞれ入力し、それぞれ異なるゲインで少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する工程と、
前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する工程と、
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つと前記基準画像データとを比較する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の光学画像データの中からパターンの粗密に応じた高い信号強度の光学画像データを得ることができる。かかる画像で検査することで、高精度でパターンの検査ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。
【図3】実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための図である。
【図4】実施の形態1における条件で生成される光学画像データの信号強度の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。
【図6】実施の形態2におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図7】実施の形態2におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。
【図8】実施の形態3におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図9】実施の形態3におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。
【図10】実施の形態4におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図11】実施の形態4におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。
【図12】実施の形態4における参照データの強度の一例を示す概念図である。
【図13】実施の形態5におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図14】実施の形態5におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。
【図15】実施の形態6におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図16】実施の形態6におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。
【図17】別の光学画像取得手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図1において、マスクやウェハ等の基板を試料として、かかる試料の欠陥を検査するパターン検査装置100は、光学画像取得部150と制御回路160を備えている。光学画像取得部150は、XYθテーブル102、光源103、拡大光学系104、ビームスプリッタ131、複数のフォトダイオードアレイ105,135(光電変換素子の一例)、複数のセンサ回路106,136、レーザ測長システム122、オートローダ130、及び照明光学系170を備えている。制御回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較部の一例となる比較回路108、展開回路111、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、オートフォーカス制御回路140、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、及びプリンタ119に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。拡大光学系104はピエゾ素子等の圧電変換素子142によって駆動される。図1では、本実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。パターン検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0019】
検査開始前に、まず、オートローダ制御回路113により制御されたオートローダ130により、パターン形成された被検査試料となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上にロードされ、そして、XYθテーブル102上に載置される。また、フォトマスク101のパターン形成時に用いた設計パターンの情報(設計データ)は、装置外部からパターン検査装置100に入力され、記憶装置(記憶部)の一例である磁気ディスク装置109に記憶される。
【0020】
図2は、実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。図2において、実施の形態1におけるパターン検査方法は、照明工程(S102)、像分離工程(S104)、光学画像データ生成工程(S110及びS112)、参照データ生成工程(S202及びS204)、及び比較工程(S210)という一連の工程を実施する。
【0021】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。また、拡大光学系104は、オートフォーカス制御回路140によって駆動される圧電変換素子142によって駆動され、フォトダイオードアレイ105,135へと像の焦点が合わされる。
【0022】
S(ステップ)102において、照明工程として、フォトマスク101に形成されたパターンには、XYθテーブル102の上方に配置されている適切な光源103によって光が照射される。光源103から照射される光束は、照明光学系170(第1の光学系)を介してフォトマスク101を照射する。光源103から照射される照明光は画像の輝度出力がフォトダイオードアレイ105,135の測定レンジを越えない範囲で最大となる量を1としたとき、N(但し、N>2)の量の光量を与えると好適である。すなわち、照明光の光量が、フォトダイオードアレイ105,135の測定レンジの最大輝度出力のN倍の量となる光量になるように設定すると好適である。これにより、後述する像分離をした後でも双方の画像で十分な光量を確保でき、高分解能でデータを生成できる。但し、これに限るものではなく、解像度は劣ることになるが、Nより小さい量であってもよい。或いはフォトダイオードアレイ105,135の測定レンジを越えない量であっても構わない。供給する光量は、照明光源の光量変動や光量調整誤差を見込んで、予め定めた許容値を設け、その範囲内に収まるよう調整される。
【0023】
S104において、像分離工程として、照明によってフォトマスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、分岐ミラー或いは光束分岐素子の一例となるビームスプリッタ131に入射する。そして、ビームスプリッタ131等の光束分岐素子(第2の光学系)によって、入射光は複数の光に分離(分岐)される。これにより、フォトマスク101から得られる透過像(第1の光学画像)は、ビームスプリッタ131によって、複数の像(第2の光学画像)に光学的に分離される。ビームスプリッタ131は、ここでは、上述したNを用いて、例えば、1:N−1の割合で入射光を分岐する。これにより、分岐された同一視野の2つの光学画像は、それぞれ光量の異なる光学画像にできる。例えば、照明光の光量が、上述したフォトダイオードアレイ105,135の測定レンジの最大輝度出力のN倍の量となる光量である場合、分岐された一方の光の光量は測定レンジの最大輝度出力値となり、他方の光の光量は測定レンジの最大輝度出力値を超えた最大輝度出力値の(N−1)倍の量となる。そして、拡大光学系104によって、かかる分岐された一方の光はフォトダイオードアレイ105に光学像として結像し、入射する。他方の光はフォトダイオードアレイ135に光学像として結像し、入射する。ここでは、測定レンジの最大輝度出力値の光量を持った分岐された一方の光がフォトダイオードアレイ105に入射し、最大輝度出力値の(N−1)倍の光量を持った分岐された他方の光がフォトダイオードアレイ135に入射する。
【0024】
図3は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための図である。被検査領域は、図3に示すように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割される。そして、更にその分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、図3に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第1の検査ストライプ20における画像を取得した後、第2の検査ストライプ20における画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第3の検査ストライプ20における画像を取得する場合には、第2の検査ストライプ20における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプ20における画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。ここでは、フォワード(FWD)−バックワード(BWD)手法を用いているが、これに限るものではなくフォワード(FWD)−フォワード(FWD)手法を用いても構わない。
【0025】
S110において、光学画像データ生成工程として、フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの一方の像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。
【0026】
S112において、光学画像データ生成工程として、フォトダイオードアレイ135上に結像されたパターンの他方の像は、フォトダイオードアレイ135によって光電変換され、更にセンサ回路136によってA/D変換される。
【0027】
実施の形態1において、フォトダイオードアレイ105とセンサ回路106は、光学画像データ生成部の一例となる。同様に、フォトダイオードアレイ135とセンサ回路136は、他の光学画像データ生成部の一例となる。また、フォトダイオードアレイ105,135には、共に、例えばTDI(タイムディレイインテグレータ)センサのようなセンサが設置されている。そして、フォトダイオードアレイ105,135は、同じ測定レンジに設定されていればよい。また、センサ回路106,136も、共に、同じ回路で構成されればよい。
【0028】
図4は、実施の形態1における条件で生成される光学画像データの信号強度の一例を示す図である。図4(c)に示すような粗密パターンが混在したマスクパターン画像10を採取する場合に、図4(a)に示すように、フォトダイオードアレイ135に入射する光の光量は、フォトダイオードアレイ105に入射する光の光量のN−1倍であるから、光電変換後に出力される信号強度もN−1倍となる。同様に、センサ回路136によってA/D変換された後に出力される信号強度も、センサ回路106,136のゲインが同じであれば、センサ回路106によってA/D変換された後に出力される信号のN−1倍となる。例えば、N=2.5のときセンサ回路136の出力画像の信号強度は、センサ回路106の出力画像の信号強度の1.5倍となる。その結果、図4(b)に示すように、粗いサイズの粗パターン部24において得られるセンサ回路136の画像出力はフォトダイオードアレイ135の測定レンジの最大値を超えてしまう部分が生じる。例えば、0〜255の階調値で信号強度を設定する場合、超えた部分の信号強度の値は全て255となり、大きく飽和する。しかし、微細パターン部22においては信号強度が大きくなった分だけ却ってコントラストが増加する。その結果、微細パターン部22においては分解能を向上できる。その結果として微細パターン部22の欠陥を拡大して検出することが可能となる。一方、フォトダイオードアレイ105に入射する光の光量は、フォトダイオードアレイ105の測定レンジの最大値の量であるから、センサ回路106の画像出力の信号強度も測定レンジ内の信号強度となる。よって、粗いサイズの粗パターン部24においても出力は最大値を超えないため飽和せず、欠陥検査を実施することができる。
【0029】
以上のように、対象となるパターン画像を高コントラストで採取する時には、高い光量でパターンを照明することが効果的となる。一般的に、パターンサイズの微細化に伴い、画像コントラストが低下する。言い換えれば、粗いピッチサイズパターンの画像出力と同等な出力を微細なピッチサイズパターンで得るためには、当該マスクパターンにより多量の照明光を照射することで解決できる。一方、粗いピッチサイズパターンについては、同等の照明光ではセンサが飽和するため、得られた画像を減光することで、センサにおいて飽和せずかつ高い信号出力を得ることが可能となる。
【0030】
以上のように、ステージとなるXYθテーブル102を例えばX軸方向に連続的に移動させることにより、2つのTDIセンサにフォトマスク101の同一視野のパターンを異なる入射光量の条件で撮像させる。これにより、ビームスプリッタ131で分離された複数の光学画像を用いて、少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成できる。
【0031】
センサ回路106出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎に、順に、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に出力される。同様に、センサ回路136出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎に、順に、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に出力される。これらの測定データは、画素毎に例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を例えば0〜255で表現している。これらの光源103、照明光学系170、拡大光学系104、ビームスプリッタ131、複数のフォトダイオードアレイ105,135、及び複数のセンサ回路106,136によって高倍率の検査光学系が構成されている。
【0032】
ここで、図1では、フォトダイオードアレイ105とセンサ回路106の組、及びフォトダイオードアレイ135とセンサ回路136の組の2組のセットを示しているが、これに限るものではなく、3つ以上のセットで構成されても構わない。
【0033】
S202において、参照データ生成工程として、まず、展開回路111は、所定の領域毎に、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計データを読み出し、読み出された被検査試料となるフォトマスク101の設計データを2値ないしは多値のイメージデータである展開画像データに変換(展開処理)する。所定の領域は、例えば、後述する比較工程において、光学画像と比較する画像の領域(エリア)とすればよい。例えば、1024×1024画素の領域(エリア)とする。
【0034】
設計データに定義されるパターンを構成する図形は長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0035】
かかる図形データが展開回路111に入力されると、図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の画像データを展開する。そして、展開された画像データ(展開画像データ)は、回路内の図示しないパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。言い換えれば、占有率演算部において、設計パターンデータを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目ごとに設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データをパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109に出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、展開画像データは、各画素に対して8ビットの占有率データで定義されたエリア単位の画像データとしてパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109に格納される。
【0036】
そして、参照回路112は、展開画像データを入力し、展開画像データに対してデータ処理(画像処理)を行い、光学画像データと比較するための参照データ(基準画像データ)を生成する。参照回路112は、基準画像データ生成部の一例となる。参照回路112は、展開画像データに適切なフィルタ処理を施す。
【0037】
図5は、実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。センサ回路106,136から得られた光学画像データ(測定データ)は、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にある。そのため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである展開画像データにも所定のモデルに沿ったフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。例えば、拡大或いは縮小処理をおこなうリサイズ処理、コーナー丸め処理、或いはぼかし処理といったフィルタ処理を施す。このようにして光学画像と比較する基準画像を作成する。作成された基準画像データは、比較回路108に送られる。基準画像データも測定データと同様、各画素が例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を0〜255で表現している。生成された参照データは、参照回路112内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109に格納される。
【0038】
S204において、参照データ生成工程として、参照データ生成工程(202)と同様の動作を実施し、別の参照データを生成する。例えば、参照データ生成工程(202)では、フォトダイオードアレイ105,135の測定レンジの最大輝度出力の量となる光量が入射した場合に得られる信号強度の参照データを生成する。一方、参照データ生成工程(204)では、フォトダイオードアレイ105,135の測定レンジの最大輝度出力のN−1倍の量となる光量が入射した場合に得られる信号強度の参照データを生成する。
【0039】
以上のようにして、入射光量を変えることによって得られた信号強度の異なる複数の光学画像データA〜Nに合わせて、対応する複数の参照データa〜nを生成する。言い換えれば、参照回路112は、複数の光学画像データの1つと比較するための参照データの他に、さらに、複数の光学画像データの残りに対応する、複数の光学画像データと比較するための少なくとも1つの参照データを生成する。そして、複数の光学画像データの他とは異なる1つと比較するために生成された複数の参照データは、比較回路108に出力される。
【0040】
S210において、比較工程として、比較回路108は、画素毎に、所定の判定条件で、該当する所定の領域の複数の光学画像データの各光学画像データとこれに対応する参照データとを比較する。比較回路108は、比較部の一例である。以下、比較回路108内での処理を具体的に説明する。比較回路108内では、まず、1つのストライプ分の光学画像データを入力し、1つのストライプ分の光学画像データを参照データの画像と同じ領域サイズで切り出す。その際、切り出す領域は、参照データの画像を生成する際の領域に合わせることは言うまでもない。領域サイズが合わされた光学画像データは、比較回路108内の図示しないメモリに格納される。他方、生成された所定の領域の参照データも、比較回路108内の図示しない他のメモリに格納される。そして、同じ領域の光学画像データと参照データを読み出し、位置合わせを行なう。そして、アライメントされた光学画像データと参照データに対して、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、欠陥の有無を判定する。判定条件としては、例えば、所定のアルゴリズムに従って画素毎に両者を比較し、欠陥の有無を判定する際の閾値が該当する。或いは、例えば、両者を比較し、欠陥の有無を判定する際の比較アルゴリズムが該当する。
【0041】
例えば、比較工程(S210)の内部工程として、比較工程(S212)として、比較回路108は、粗なパターン部分を検査する際は相対的に入射光量が少ない条件の光学画像データ(例えば、光学画像データA)とこれに対応する参照データ(例えば、参照データa)とを比較する。逆に、比較工程(S214)として、比較回路108は、蜜なパターン部分を検査する際は相対的に入射光量が多い条件の光学画像データ(例えば、光学画像データN)とこれに対応する参照データ(例えば、参照データn)とを比較する。
【0042】
以上のように、実施の形態1では、入射光量が異なる同一視野の複数の光学画像データを生成することで、画素毎に、或いは領域毎にパターンの粗密を判断して、粗なパターン部分を検査する際は相対的に入射光量が少ない条件の光学画像データを用い、蜜なパターン部分を検査する際は相対的に入射光量が多い条件の光学画像データを用いることを可能にした。その結果、複数の光学画像データの中からパターンの粗密に応じた高い信号強度の光学画像データで検査でき、高精度でパターンの検査ができる。
【0043】
或いは、パターンの粗密に関わらず、画素毎に得られている複数の光学画像データと複数の参照データを用いて、光量条件の同じ画像同士でそれぞれ比較するようにしても好適である。その結果、同じ画素について、比較工程(S212)ではOKで、比較工程(S214)でもOKとなる第1の組み合わせ、比較工程(S212)ではNGで、比較工程(S214)ではOKとなる第2の組み合わせ、比較工程(S212)ではNGで、比較工程(S214)でもNGとなる第3の組み合わせができ得る。そこで、比較回路108は、これらの組み合わせの内、第1の組み合わせでは欠陥ではなく、第2或いは第3の組み合わせでは欠陥であると判定するようにしても好適である。或いは、第1と第2の組み合わせでは欠陥ではなく、第3の組み合わせでは欠陥であると判定してもよい。
【0044】
そして、比較結果は、出力される。例えば、CRT117に表示される。或いは、パターンモニタ118に表示される。或いは、プリンタ119で印刷される。或いは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、或いはFD116に記憶される。
【0045】
実施の形態2.
実施の形態1では、フォトダイオードアレイに入射前の光を、光量比を変えて分岐させることで、信号強度の異なる同一視野の複数の光学画像データを生成したが、信号強度の異なる同一視野の複数の光学画像データを生成する手法はこれに限るものではない。実施の形態2では、センサ回路の制御により信号強度の異なる同一視野の複数の光学画像データを生成する構成について説明する。
【0046】
図6は、実施の形態2におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図6において、ビームスプリッタ131とフォトダイオードアレイ135を削除し、フォトダイオードアレイ105の出力をセンサ回路106とセンサ回路136に分岐する点以外は図1と同様である。
【0047】
図7は、実施の形態2におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。図7において、像分離工程(S104)の代わりに光電変換工程(S105)を備えた点以外は、図2と同様である。
【0048】
その他、実施の形態2で特に説明する内容以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0049】
S102において、照明工程として、フォトマスク101に形成されたパターンには、XYθテーブル102の上方に配置されている適切な光源103によって光が照射される。光源103から照射される光束は、照明光学系170(第1の光学系)を介してフォトマスク101を照射する。光源103から照射される照明光は画像の輝度出力がフォトダイオードアレイ105,135の測定レンジを越えない範囲で最大となる量の光量を与えると好適である。但し、これに限るものではなく、解像度は劣ることになるが、フォトダイオードアレイ105,135の測定レンジを越えない量であっても構わない。供給する光量は、照明光源の光量変動や光量調整誤差を見込んで、予め定めた許容値を設け、その範囲内に収まるよう調整される。照明によってフォトマスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に入射する。
【0050】
S105において、光電変換工程として、フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換される。フォトダイオードアレイ105から出力された信号は、電気的に分岐され、一方がセンサ回路106に、他方がセンサ回路136に入力される。
【0051】
S110において、光学画像データ生成工程として、センサ回路106は、フォトダイオードアレイ105から出力された信号を入力し、A/D変換する。
【0052】
S112において、光学画像データ生成工程として、センサ回路136は、フォトダイオードアレイ105から出力された信号を入力し、A/D変換する。
【0053】
図4(c)に示したような粗密パターンが混在したマスクパターン画像10を採取する場合に、実施の形態2では、フォトダイオードアレイ105の出力信号を分岐するので、同じ信号強度の信号が、センサ回路106,136に入力される。そこで、実施の形態2では、A/D変換する際のセンサ回路106のゲインの値を1とした場合に、センサ回路136のゲインの値をmとする。但し、m>1とする。また、センサ回路106のゲインの値は、画像出力の信号強度が測定レンジを越えないように設定される。これにより、センサ回路136によってA/D変換された後に出力される信号強度は、センサ回路106によってA/D変換された後に出力される信号のm倍にできる。その際、図4(b)に示したように、粗いサイズの粗パターン部24において得られるセンサ回路136の画像出力は測定レンジの最大値を超えてしまう部分が生じる。しかし、微細パターン部22においては信号強度が大きくなった分だけ却ってコントラストが増加する。その結果、微細パターン部22においては分解能を向上できる。その結果として微細パターン部22の欠陥を拡大して検出することが可能となる。一方、センサ回路106の画像出力の信号強度は測定レンジ内の信号強度となる。よって、粗いサイズの粗パターン部24においても出力は最大値を超えないため飽和せず、欠陥検査を実施することができる。
【0054】
以降の工程の内容は、実施の形態1と同様である。
【0055】
以上のように、実施の形態2では、ゲインの調整により信号強度が異なる同一視野の複数の光学画像データを生成することで、粗なパターン部分を検査する際は相対的にゲインが小さい条件の光学画像データを用い、蜜なパターン部分を検査する際は相対的にゲインが大きい条件の光学画像データを用いることを可能にした。その結果、複数の光学画像データの中からパターンの粗密に応じた高い信号強度の光学画像データで検査でき、高精度でパターンの検査ができる。
【0056】
実施の形態3.
実施の形態1では、フォトダイオードアレイに入射前の光を、光量比を変えて分岐させることで、信号強度の異なる同一視野の複数の光学画像データを生成したが、信号強度の異なる同一視野の複数の光学画像データを生成する手法はこれに限るものではない。実施の形態3では、同一の光量比で分岐させた場合でも信号強度の異なる同一視野の複数の光学画像データを生成する構成について説明する。
【0057】
図8は、実施の形態3におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図8において、拡大光学系132,134を追加した点以外は図1と同様である。
【0058】
図9は、実施の形態3におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。図9において、像分離工程(S104)と光学画像データ生成工程(S110)の間に拡大工程(S106)を、像分離工程(S104)と光学画像データ生成工程(S112)の間に拡大工程(S108)を追加した点以外は、図2と同様である。
【0059】
その他、実施の形態3で特に説明する内容以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0060】
S102において、照明工程として、フォトマスク101に形成されたパターンには、XYθテーブル102の上方に配置されている適切な光源103によって光が照射される。光源103から照射される光束は、照明光学系170(第1の光学系)を介してフォトマスク101を照射する。光源103から照射される照明光は画像の輝度出力がフォトダイオードアレイ105,135の測定レンジを越えない範囲で最大となる量の光量を与えると好適である。但し、これに限るものではなく、解像度は劣ることになるが、フォトダイオードアレイ105,135の測定レンジを越えない量であっても構わない。供給する光量は、照明光源の光量変動や光量調整誤差を見込んで、予め定めた許容値を設け、その範囲内に収まるよう調整される。
【0061】
S104において、像分離工程として、照明によってフォトマスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、分岐ミラー或いは光束分岐素子の一例となるビームスプリッタ131に入射する。そして、ビームスプリッタ131等の光束分岐素子(第2の光学系)によって、入射光は複数の光に分離(分岐)される。これにより、フォトマスク101から得られる透過像(第1の光学画像)は、ビームスプリッタ131によって、複数の像(第2の光学画像)に光学的に分離される。ビームスプリッタ131は、ここでは、1:1の割合で入射光を分岐する。これにより、分岐された同一視野の2つの光学画像は、同じ光量の光学画像にできる。
【0062】
S106において、拡大工程として、拡大光学系132(複数の第3の光学系の1つ)は、分岐された一方の像をa倍の倍率に変換する。a>1とすることで、分岐された一方の像をa倍の倍率に拡大する。そして、拡大された像は、フォトダイオードアレイ105に入射し、結像する。
【0063】
S108において、拡大工程として、拡大光学系134(複数の第3の光学系の1つ)は、分岐された他方の像をb倍の倍率に変換する。b>1とすることで、分岐された他方の像をb倍の倍率に拡大する。そして、拡大された像は、フォトダイオードアレイ135に入射し、結像する。
【0064】
ここで、a>bに設定することで、フォトダイオードアレイ135の上の光量密度はフォトダイオードアレイ105と比べて(a×a)/(b×b)倍となり、同じ光量で拡大率が小さいから画像は明るくなる。一方、フォトダイオードアレイ105の上の光量密度はフォトダイオードアレイ135と比べて(b×b)/(a×a)倍となり、同じ光量で拡大率が大きいから画像は暗くなる。その結果、フォトダイオードアレイ135に対して、実質的にフォトダイオードアレイ105よりも大きな光量の光を入射させた状態と同じにできる。よって、a>bの時にはセンサ回路136の出力における信号強度が増加し、結果として微細パターンにおけるコントラストが増加し、微細パターン部の欠陥を拡大して検出することが可能となる。ここで、拡大光学系132,134による像の拡大にあたり、フォトダイオードアレイの1素子あたりのフォトマスク101上サイズは100〜50nm角程度に切替えて設定されればよい。
【0065】
以降の工程の内容は、実施の形態1と同様である。
【0066】
以上のように、実施の形態3では、分離された複数の光学画像の倍率をそれぞれ異なる倍率に変換する複数の拡大光学系132,134をさらに備えて、分岐後の各像の拡大率の調整により信号強度が異なる同一視野の複数の光学画像データを生成する。これにより、粗なパターン部分を検査する際は相対的に拡大率の大きい条件の光学画像データを用い、蜜なパターン部分を検査する際は相対的に拡大率の小さい条件の光学画像データを用いることを可能にした。その結果、複数の光学画像データの中からパターンの粗密に応じた高い信号強度の光学画像データで検査でき、高精度でパターンの検査ができる。
【0067】
実施の形態4.
実施の形態1では、条件の異なる複数の光学画像データに合わせて、所定の領域毎に複数の参照データを作成していたが、これに限るものではない。実施の形態4では、所定の領域毎に1つの参照データの作成で済む構成について説明する。
【0068】
図10は、実施の形態4におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図10において、選択回路138を追加した点以外は図1と同様である。
【0069】
図11は、実施の形態4におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。図11において、比較工程(S210)の代わりに比較工程(S216)を備えた点と、光学画像生成工程(S110及びS112)と比較工程(S216)との間にデータ選択工程(S114)を追加した点と、参照データ生成工程(S202及びS204)の代わりに参照データ生成工程(S206)を備えた点、以外は図2と同様である。
【0070】
その他、実施の形態4で特に説明する内容以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0071】
センサ回路106出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎に、順に、選択回路138に出力される。同様に、センサ回路136出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎に、順に、選択回路138に出力される。
【0072】
S114において、データ選択工程として、選択回路138は、画素毎に、入力された複数の光学画像データの1つを選択する。選択回路138は、選択部の一例となる。選択の仕方は、例えば、パターンの粗密によって選択する。上述したように、粗なパターン部分を検査する際は相対的に入射光量が少ない条件の光学画像データ(例えば、光学画像データA)が望ましい。逆に、蜜なパターン部分を検査する際は相対的に入射光量が多い条件の光学画像データ(例えば、光学画像データN)が望ましい。よって、パターンの粗密に割合について閾値を設定し、画素毎に、閾値より大きい(粗)なのか小さい(密)なのかを判定し、判定結果に沿って、一方の光学画像データを選択する。そして、画素毎に選択されたデータを組み合わせて各検査ストライプ20の光学画像データを再構成し、再構成された各検査ストライプ20の光学画像データは位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に出力される。
【0073】
一方、比較対象となる参照データは以下のように生成される。
【0074】
S206において、参照データ生成工程として、展開回路111と参照回路112は、画素毎に、選択回路138によって選択される複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する。ここでは、選択回路138と同様、パターンの粗密に割合について閾値を設定し、画素毎に、閾値より大きい(粗)なのか小さい(密)なのかを判定する。そして、画素毎に、粗なパターン部分を検査するための参照データを生成する際は相対的に入射光量が少ない条件の光量が入射した場合に得られる信号強度の参照データを生成する。逆に、画素毎に、密なパターン部分を検査するための参照データを生成する際は相対的に入射光量が多い条件の光量が入射した場合に得られる信号強度の参照データを生成する。生成の仕方は実施の形態1と同様である。以上のようにして、所定の領域毎の参照データを生成する。よって、かかる所定の領域毎の参照データは、異なる光量でのデータが混在することになる。生成された複数の参照データは、比較回路108に出力される。
【0075】
S216において、比較工程として、比較回路108は、画素毎に、所定の判定条件で、該当する所定の領域の光学画像データとこれに対応する領域の参照データとを比較する。比較回路108内では、まず、1つのストライプ分の光学画像データを入力し、1つのストライプ分の光学画像データを参照データの画像と同じ領域サイズで切り出す。その際、切り出す領域は、参照データの画像を生成する際の領域に合わせることは言うまでもない。領域サイズが合わされた光学画像データは、比較回路108内の図示しないメモリに格納される。他方、生成された所定の領域の参照データも、比較回路108内の図示しない他のメモリに格納される。そして、同じ領域の光学画像データと参照データを読み出し、位置合わせを行なう。そして、アライメントされた光学画像データと参照データに対して、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、欠陥の有無を判定する。実施の形態4では、既に、所定の領域の光学画像データと参照データが、共にパターンの粗密に応じて画素毎にデータ値が区別されているので、比較の際には、比較される画素のパターン部分が粗なのか密なのかを判断する必要がない。
【0076】
ここで、上述した例では、選択回路138の選択条件として、パターンの粗密の割合を用いたが、これに限るものではない。例えば、パターンサイズを用いてもよい。パターンとなる図形の幅が大きい(太い)場合は粗と判断し、幅が小さい(細い)場合は密と判断してもよい。参照データを生成する際の選択も同様である。或いは、以下のように選択しても好適である。
【0077】
図12は、実施の形態4における参照データの強度の一例を示す概念図である。例えば、フォトダイオードアレイ105或いはフォトダイオードアレイ135に入射される光量で参照データを生成した場合に得られる予定の信号強度を使って、閾値より大きい強度になる画素は粗と判断し、閾値以下の強度になる画素は密と判断してもよい。そして、選択回路138は、かかる情報を参照回路112から入力し、粗密の結果に応じて、画素毎に光学画像データを選択する。一方、参照データ生成の際も、かかる粗密の結果に応じて、参照データを生成すればよい。例えば、閾値判定をフォトダイオードアレイ105に入射される光量で参照データを用いて行なった場合、密と判定された画素については再度フォトダイオードアレイ135に入射される光量で参照データを生成して用いればよい。逆に、閾値判定をフォトダイオードアレイ135に入射される光量で参照データを用いて行なった場合、粗と判定された画素については再度フォトダイオードアレイ105に入射される光量で参照データを生成して用いればよい。
【0078】
以上のように、パターンの粗密に応じて、光学画像データと参照データを対応する光量でのデータを選択して用いることで、所定の領域毎の参照データを1つ作成すれば済む。そして、画素毎に、粗なパターン部分を検査する際は相対的に入射光量が少ない条件の光学画像データと参照データを用い、蜜なパターン部分を検査する際は相対的に入射光量が多い条件の光学画像データと参照データを用いることを可能にした。その結果、パターンの粗密に応じた高い信号強度の光学画像データで検査でき、高精度でパターンの検査ができる。
【0079】
実施の形態5.
実施の形態2では、条件の異なる複数の光学画像データに合わせて、所定の領域毎に複数の参照データを作成していたが、これに限るものではない。実施の形態5では、実施の形態4と同様、所定の領域毎に1つの参照データの作成で済む構成について説明する。
【0080】
図13は、実施の形態5におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図13において、選択回路138を追加した点以外は図6と同様である。
【0081】
図14は、実施の形態5におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。図14において、比較工程(S210)の代わりに比較工程(S216)を備えた点と、光学画像生成工程(S110及びS112)と比較工程(S216)との間にデータ選択工程(S114)を追加した点と、参照データ生成工程(S202及びS204)の代わりに参照データ生成工程(S206)を備えた点、以外は図7と同様である。
【0082】
その他、実施の形態5で特に説明する内容以外の内容は実施の形態2と同様である。
【0083】
センサ回路106出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎に、順に、選択回路138に出力される。同様に、センサ回路136出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎に、順に、選択回路138に出力される。データ選択工程(S114)、参照データ生成工程(S206)及び比較工程(S216)の内容は、実施の形態4と同様である。
【0084】
実施の形態6.
実施の形態3では、条件の異なる複数の光学画像データに合わせて、所定の領域毎に複数の参照データを作成していたが、これに限るものではない。実施の形態6では、実施の形態4と同様、所定の領域毎に1つの参照データの作成で済む構成について説明する。
【0085】
図15は、実施の形態6におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図15において、選択回路138を追加した点以外は図8と同様である。
【0086】
図16は、実施の形態6におけるパターン検査方法の要部工程のフローを示すフローチャート図である。図16において、比較工程(S210)の代わりに比較工程(S216)を備えた点と、光学画像生成工程(S110及びS112)と比較工程(S216)との間にデータ選択工程(S114)を追加した点と、参照データ生成工程(S202及びS204)の代わりに参照データ生成工程(S206)を備えた点、以外は図8と同様である。
【0087】
その他、実施の形態6で特に説明する内容以外の内容は実施の形態3と同様である。
【0088】
センサ回路106出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎に、順に、選択回路138に出力される。同様に、センサ回路136出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎に、順に、選択回路138に出力される。データ選択工程(S114)、参照データ生成工程(S206)及び比較工程(S216)の内容は、実施の形態4と同様である。
【0089】
図17は、別の光学画像取得手法を説明するための図である。図1等の構成では、スキャン幅Wの画素数を同時に入射するフォトダイオードアレイ105,135を用いているが、これに限るものではなく、図17に示すように、XYθテーブル102をX方向に定速度で送りながら、レーザ干渉計で一定ピッチの移動を検出した毎にY方向に図示していないレーザスキャン光学装置でレーザビームをY方向に走査し、透過光或いは反射光を検出して所定の大きさのエリア毎に二次元画像を取得する手法を用いても構わない。
【0090】
以上の説明において、「〜部」、「〜回路」或いは「〜工程」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。例えば、演算制御部を構成する、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、選択回路138、或いはオートフォーカス制御回路140等は、電気的回路で構成されていても良いし、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現してもよい。また電気的回路とソフトウェアの組み合わせで実現しても良い。
【0091】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、各実施の形態では、透過光を用いているが、反射光あるいは、透過光と反射光を同時に用いてもよい。反射光を用いる場合には、透過部から得られる画素値と遮光部から得られる画素値の大小が逆になることは言うまでもない。
【0092】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0093】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置或いはパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0094】
10 マスクパターン画像
20 検査ストライプ
22 微細パターン部
24 粗パターン部
100 パターン検査装置
101 フォトマスク
102 XYθテーブル
103 光源
104,132,134 拡大光学系
105,135 フォトダイオードアレイ
106,136 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
111 展開回路
112 参照回路
115 磁気テープ装置
120 バス
131 ビームスプリッタ
138 選択回路
140 オートフォーカス制御回路
150 光学画像取得部
160 制御回路
170 照明光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成された被検査試料を照明する第1の光学系と、
照明によって前記被検査試料から得られる第1の光学画像を複数の第2の光学画像に光学的に分離する第2の光学系と、
分離された複数の第2の光学画像を用いて、少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する複数の光学画像データ生成部と、
前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する基準画像データ生成部と、
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つと前記基準画像データとを比較する比較部と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記分離光学系は、前記複数の第2の光学画像に分離される際に配分される各光量がそれぞれ異なる光量となるように前記第1の光学画像を分離することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
分離された前記複数の第2の光学画像の倍率をそれぞれ異なる倍率に変換する複数の第3の光学系をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項4】
パターン形成された被検査試料を照明する光学系と、
照明によって前記被検査試料から得られる像を光電変換する光電変換素子と、
光電変換された信号をそれぞれ入力し、それぞれ異なるゲインで少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する複数の光学画像データ生成部と、
前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する基準画像データ生成部と、
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つと前記基準画像データとを比較する比較部と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項5】
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つを選択する選択部をさらに備え、
前記基準画像データ生成部は、前記選択部によって選択される前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項6】
前記基準画像データ生成部は、前記複数の光学画像データの1つと比較するための前記基準画像データの他に、さらに、前記複数の光学画像データの残りに対応する、前記複数の光学画像データと比較するための少なくとも1つの基準画像データを生成することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項7】
前記複数の光学画像データは、同一視野の光学画像データであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項8】
パターン形成された被検査試料を照明する工程と、
照明によって前記被検査試料から得られる第1の光学画像を複数の第2の光学画像に光学的に分離する工程と、
分離された複数の第2の光学画像を用いて、少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する工程と、
前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する工程と、
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つと前記基準画像データとを比較し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とするパターン検査方法。
【請求項9】
パターン形成された被検査試料を照明する工程と、
照明によって前記被検査試料から得られる像を光電変換する工程と、
光電変換された信号をそれぞれ入力し、それぞれ異なるゲインで少なくとも一部の信号強度が異なる複数の光学画像データを生成する工程と、
前記複数の光学画像データの1つと比較するための基準画像データを生成する工程と、
画素毎に、前記複数の光学画像データの1つと前記基準画像データとを比較する工程と、
を備えたことを特徴とするパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−99788(P2011−99788A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255377(P2009−255377)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
【Fターム(参考)】