パターン測定方法、及びパターン測定装置
【課題】設計データと実際のパターン間の位置あわせするための確たる基準がなく、設計データが示す理想パターンに対し、測定対象パターンがどの程度ずれて形成されているのか等、何らかの基準に基づいて、測定することができなかった。
【解決手段】上述のような問題を解決するため、測定個所から離間した位置に形成され、走査電子顕微鏡等によって得られる画像上の基準パターンの位置情報と、設計データに基づいて検出される基準パターンと測定個所の位置関係の情報に基づいて、走査電子顕微鏡等による測定個所の基準位置を設定する。
【解決手段】上述のような問題を解決するため、測定個所から離間した位置に形成され、走査電子顕微鏡等によって得られる画像上の基準パターンの位置情報と、設計データに基づいて検出される基準パターンと測定個所の位置関係の情報に基づいて、走査電子顕微鏡等による測定個所の基準位置を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン測定方法,パターン測定装置、及びプログラムに係り、特に取得された画像内のパターンを測定する方法,装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CAD(Computer Aided Design)データを用いて、半導体集積回路上のパターンを測定することが知られている。CADデータのような設計データは、半導体素子が本来あるべき理想的な形状を示すものであるため、CADデータと実際に形成されたパターンを比較することによって、半導体製造プロセスの評価が可能となる。特許文献1や特許文献2には、検査対象パターンと基準パターンのエッジ検出を行い、検出されたエッジを比較することによって、設計データに対するパターンの変形量を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−338304号公報
【特許文献2】特開2002−31525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、実際に形成されたパターンは、製造プロセスの影響によって、設計データとは異なる形状を示す。半導体ウェハ上には種々の形状のパターンが多数形成されているが、設計データと実際のパターン間の位置あわせするための確たる基準がなく、設計データが示す理想パターンに対し、測定対象パターンがどの程度ずれて形成されているのか、或いはどの程度変形しているのか等を何らかの基準に基づいて、測定することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のような問題を解決するため、アドレッシングパターン等の測定個所から離間した位置に形成され、走査電子顕微鏡等によって得られる画像上の基準パターンの位置情報と、設計データに基づいて検出される基準パターンと測定個所の位置関係の情報に基づいて、走査電子顕微鏡等による測定個所の基準位置を設定する。
【発明の効果】
【0006】
以上のような構成によれば、走査電子顕微鏡等によって得られた画像から基準パターンの位置を検出し、この点を基準として設計データに基づく、測定の基準位置の設定を行っているため、理想的なパターン形成個所或いはパターン形状から、実際のパターンがどの程度ずれて形成されているか、或いはどの程度、変化して形成されているかの測定をSEM像に基づく位置情報と、設計データに基づいて行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】走査電子顕微鏡の概略を示す図。
【図2】回路設計データとパターンとを重ね合わせた例を示す図。
【図3】回路設計データを中心とした測長レシピ作成から評価までのフローチャート。
【図4】画像取得点の例。
【図5】ボックス・イン・ボックスパターンの一例を示す図。
【図6】設計データがウェハ上のチップの何処に対応するかを説明する図。
【図7】設計データとウェハ上の位置との距離を定めるのに用いたパターンの一例を示す図。
【図8】第一アドレッシング点と画像取得点との位置関係を示す図。
【図9】第二アドレッシング点を検索する例を示す図。
【図10】検索された第二アドレッシング点と画像取得点との位置関係を示す図。
【図11】図10の回路設計データ上における具体例を示す図。
【図12】第二アドレッシング点にてSEM像と回路設計データの位置をあわせた例を示す図。
【図13】図12から画像取得点を切り出した例を示す図。
【図14】図13によって得られた画像から測長個所を決定する例を示す図。
【図15】ウェハ上に存在しない仮想的な線分とパターンとの間の距離を測長した例を示す図。
【図16】図15において測長を行った場所とそこにおける二次電子信号強度を示す図。
【図17】測長SEMレシピの詳細情報設定の流れを説明するフローチャート。
【図18】作成されたレシピの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に走査形電子顕微鏡(以下Scanning Electron Microscope:SEMと呼ぶ)の概略を説明する。図1の電子光学系は荷電粒子である電子を放出する荷電粒子源(電子銃)1から発せられる該荷電粒子線(電子ビーム)2をレンズ3により試料4上に集束させて任意の順序で走査することができる。電子線の照射により試料4の表面において発生する二次粒子(例えば二次電子)5は二次粒子検出系6により検出され、画像データとして画像演算制御の機能も持たせた制御系7(制御プロセッサ)に入力される。試料4はX−Y−Zステージ8により3次元方向すべての方向に移動可能である。制御系7は、荷電粒子源(電子銃)1,レンズ3,二次粒子検出系6,X−Y−Zステージ8、および画像表示装置9の制御も行う。
【0009】
本例の場合、電子ビーム2は、図示しない走査コイルで試料4上を二次元的(X−Y方向)に走査される。二次粒子検出系6内の二次電子検出器で検出された信号は、制御系7内の信号増幅器で増幅された後、画像メモリに転送されて画像表示装置9に試料像として表示される。二次信号検出器は二次電子や反射電子を検出するものであっても、光やX線を検出するものであっても良い。
【0010】
なお、画像メモリのメモリ位置に対応したアドレス信号が、制御系7内、或いは別に設置されたコンピュータ内で生成され、アナログ変換された後に、走査コイルに供給される。X方向のアドレス信号は、例えば画像メモリが512×512画素(pixel)の場合、0から512を繰り返すデジタル信号であり、Y方向のアドレス信号は、X方向のアドレス信号が0から512に到達したときにプラス1される0から512の繰り返しのデジタル信号である。これがアナログ信号に変換される。
【0011】
画像メモリのアドレスと電子ビームを走査するための偏向信号のアドレスが対応しているので、画像メモリには走査コイルによる電子線の偏向領域の二次元像が記録される。なお、画像メモリ内の信号は、読み出しクロックで同期された読み出しアドレス生成回路で時系列に順次読み出すことができる。アドレスに対応して読み出された信号はアナログ変換され、画像表示装置9の輝度変調信号となる。
【0012】
制御系7には、図示しない入力装置が設けられ、画像の取り込み条件(走査速度,画像積算枚数)や視野補正方式などの指定、および画像の出力や保存などを指定することができる。
【0013】
また本例で説明する装置は、検出された二次電子或いは反射電子等に基づいて、ラインプロファイルを形成する機能を備えている。ラインプロファイルは一次電子線を一次元、或いは二次元走査したときの電子検出量、或いは試料像の輝度情報等に基づいて形成されるものであり、得られたラインプロファイルは、例えば半導体ウェハ上に形成されたパターンの寸法測定等に用いられる。
【0014】
なお、図1の説明は制御系7が走査電子顕微鏡と一体、或いはそれに準ずるものとして説明したが、無論それに限られることはなく、走査電子顕微鏡鏡体とは別に設けられた制御プロセッサで以下に説明するような処理を行っても良い。その際には二次信号検出器で検出される検出信号を制御プロセッサに伝達したり、制御プロセッサから走査電子顕微鏡のレンズや偏向器等に信号を伝達する伝達媒体と、当該伝達媒体経由で伝達される信号を入出力する入出力端子が必要となる。
【0015】
更に、本例装置は、例えば半導体ウェハ上の複数点を観察する際の条件(測定個所,走査電子顕微鏡の光学条件等)を予めレシピとして記憶しておき、そのレシピの内容に従って、測定や観察を行う機能を備えている。
【0016】
また、以下に説明する処理を行うプログラムを記憶媒体に登録しておき、走査電子顕微鏡に必要な信号を供給する制御プロセッサで、当該プログラムを実行するようにしても良い。即ち、以下に説明する例は画像プロセッサを備えた走査電子顕微鏡等の荷電粒子線装置に採用可能なプログラム、或いはプログラムプロダクトとしての説明でもある。
【0017】
更に、制御系7には、半導体ウェハ上のパターンの設計データを記憶し、SEMの制御に必要なデータに変換する設計データ管理部10を備えている。当該設計データ管理部10は、図示しない入力装置等によって入力された半導体パターンの設計データに基づいて、上記SEMを制御するレシピを作成する機能を備えている。また、制御系7から伝達される信号に基づいて、レシピを書き換える機能をも備えている。なお、本例の説明では設計データ管理部10が、制御系7と別体のものとして説明するが、これに限られることはなく、制御系7と設計データ管理部10が一体であっても良い。
【0018】
本例においては試料4として、半導体製品を製造する工程の中にあるウェハとした。リソグラフィー工程によりウェハ上に形成されたレジストパターンを用いた。その比較対象として、そのパターンのもととなる半導体回路設計データ(CADデータ)を用いた。ここで用いる半導体回路設計データとは、最終的に半導体回路パターンとして所望される理想のパターン形状である。なお、以下の説明は、検査対象を半導体ウェハとしたが、設計データと評価したい対象が対をなしていればこれに限ることはない。また、回路設計データは、回路設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。
【0019】
〔実施例〕
従来、測長SEMにおいて測長点は観測者が手動で指定していた。そのためウェハ上においてその測長点の場所を探し出す必要があったが、ウェハ上において指定された箇所を探し出すのは非常に困難である。測長点が指定された後、観測者はその測長点毎にアドレッシング点,オート・フォーカス点などの測長SEMのレシピ作成に必要な条件を個別に設定する必要があり、観測者の習熟度に依存せざるを得なかった。
【0020】
さらに測長レシピを作成するために測長SEMとウェハが無ければならないという制限があるため効率的な作業が行えなかった。例えば、アドレッシング点としてあるパターンを選択しても、それが実際に適切かどうかは実際にウェハ上のパターンとマッチングさせなければわからない。このような試行錯誤を繰り返すことで測長SEMによる計測レシピが作成されるが、それに要する時間が多くなること自体が効率の低下を意味し、さらにレシピ作成中にも測長SEMを使用しなければならず、その間に他の測定を行うことができないという点でも効率が悪い。
【0021】
また近年半導体デバイスの製造デザインルールが小さくなるに従い、パターン幅より短い露光波長を用いるため必然的に光近接効果(Optical Proximity Effect)が大きくなり、それを補正する光近接効果補正(Optical Proximity Correct)技術が重要になってきている。光近接効果とは同じマスク幅を持つパターンにおいても、そのパターンが置かれる環境においてはウェハ上に得られるパターン幅が異なるという現象である。
【0022】
ここでいう環境とは例えば、パターンピッチである。密な環境にあるパターンにおいて、マスク上のパターン幅とウェハ上のパターン幅が同じ寸法となる条件においては粗な環境にある孤立的なパターンはその寸法が細くなる。このような現象を光近接効果といいこの効果を補正する技術が光近接効果補正である。孤立パターンのマスク幅を太くすることでウェハ上のパターン幅が密パターンの幅と同じになるように調節することができる。
【0023】
このような簡単な光近接効果補正を評価するにはパターン幅を測長することができれば評価できたが、近年さらに高精度な光近接効果補正を行うためパターンの形状を計測する評価手法も提案されている。その一つの具体例としてはある基準に対するパターンの位置を計測するものである。
【0024】
この場合設計データとウェハ上のパターンを正確に重ね合わせる事ができた例が図2であるとする。この場合両者の寸法を測定することができるのはもちろんであるが、さらに両者の位置関係を計測することも可能となる。位置を計測することができればパターン幅以上の情報が得られるため、その情報を用いることにより、より高精度な光近接効果補正に役立てる事ができると期待される。ウェハ上にはそのような基準が無いのでパターンの位置を計測することは困難であったが、測長SEMにより取得された画像に回路設計データをウェハパターンと重ね合わせることでこのような計測が可能となる。
【0025】
以下、図3に示すフローチャートを用いて本例を大まかに説明する。まずは回路設計データを利用して検査をすべき評価点を定める。その各評価点について、SEMで計測を行うためのレシピを作成する。作成されたレシピを用いて検査対象物であるウェハ上の評価点の画像を測長SEMにて取得する。取得された画像を回路設計データと比較することで評価を行う。本例において、この比較は回路設計データと行ったが、これに限るものではなく比較可能である基準的なパターンであればこれに限るものではない。例えば、設計データをもとに得られたシミュレーション像と測長SEMにより取得された画像と比較しても構わない。
【0026】
以下、図3に示すフローチャートの各ステップを段階的に説明する。本例において評価に用いた設計データは最小線幅が90nmであるパターンを対象とした回路設計パターンを模したものをGDSIIフォーマットにて作成したものを用いた。この疑似回路設計パターンの中において評価点を定めるステップでは、リソグラフィー工程後のウェハを検査するとして、リソグラフィーシミュレーターを用いた。
【0027】
他の工程後に得られるウェハを検査する場合には対応するシミュレーターを用いる事により検査箇所を求めればよく、例えばエッチング工程後のパターンにはエッチングシミュレーターを用いて検査箇所を定めることができる。本例においてはリソグラフィーシミュレーターとしてSigma−C社のSolid−Cを用いた。このシミュレーターでは回路設計パターンであるGDSIIフォーマット形式のデータを直接取り扱うことが可能であり、その回路設計パターンからリソグラフィー工程のプロセス条件を用いれば、その回路設計パターンがリソグラフィー工程後にウェハ上にどのようなパターンとして得られるかを与えることが可能である。
【0028】
シミュレーションの条件として、193nmの露光波長を用い、投影光学系の縮小比1/4,露光波長193nm,NA:0.73,コヒーレンスファクタσ:0.75,輪帯遮蔽率ε:0.67,設定露光量28mJ/cm2という条件を用いた。これは後ほど作成するウェハと同じ条件である。シミュレーションにより得られたパターン形状から不良の原因となりそうな箇所を選択するためにデザインルールチェッカーを用いた。これは、シミュレーションにより形成されたパターンの中から寸法が短くなってしまう箇所を自動的に検出するツールである。本例においてはMentor Graphics社のCalibreに内蔵されるデザインルールチェッカーを用いた。デザインルールである90nmに対して、線幅が80nm以下と100nm以上に仕上がっている箇所を危険箇所としてデザインルールチェッカーにより検出する。今回は線幅についてのみ危険箇所として抽出したが、それ以外の項目において危険箇所を抽出しても構わない。検出された危険箇所は回路設計パターン上の座標として出力された。
【0029】
即ち、デザインルールである90nmに対して、80nmと100nmを、それぞれ上下限のしきい値として設定し、当該しきい値以上、或いはそれを超えた個所を、危険個所として抽出し、設計データに基づいて、当該部分の座標を出力するようにした。本例では、設計データ管理部10に備えられた表示装置、或いは画像表示装置9にその情報を表示するようにした。このような表示を行うようにすれば、複数のパターンが混在する半導体ウェハ上のどこに測長個所(評価点)を設定すれば良いかの判断が容易になる。また、設計データ管理部10、或いは制御系7に、ポインティングデバイス等の入力装置を備えておき、危険個所として抽出された個所の中から、所望の個所を、測長個所として選択するような構成としても良い。そしてこの選択によって、自動的にレシピが書き換えられるような構成にしておけば、操作者は危険個所の中から、自身の経験則に基づいて、測長すべき個所を指定することができるので、危険個所の適切な選択と、評価時間の効率化の両立を図ることが可能となる。なお、検出された危険個所を自動的に測長対象個所としてレシピへ記録し、その中から不要な測長個所を後から削除するような構成としても良い。
【0030】
次にそれら出力された座標を測長SEMにて検査する為のレシピを作成する。測長SEMにて評価点の測長を行うには、評価点の座標だけでなくステージ座標とチップ座標を補正するグローバルアライメント点、そこにたどり着くまで段階を踏んで位置補正を行うためのアドレッシング点,オート・フォーカス,オート・スティグマを行う場所、などを評価点の置かれた環境により、設定条件を変える必要がある。
【0031】
本例においては、これらのうち、アドレッシング点とオート・フォーカス,オート・スティグマ点については設計データから自動的にその領域を定める。
【0032】
また、設計データをアドレッシングテンプレートとして取り扱うことができるため、測長を実施するウェハが無くても測定レシピを作成することが可能となった。上記座標以外についての設定(アドレッシング点ならびに測長点における倍率,加速電圧,試料電流,電子光学系条件,コントラスト条件)については測定条件として測長者が指定した。なぜならこれらの設定は回路設計データから決められるものではなく測長者が決定すべき情報であるからである。
【0033】
測長SEMのレシピとしては、まずグローバルアライメントを行い、ウェハとウェハ上に形成されたチップの間の座標補正をする。これにより、測長SEM上でチップ上での座標を使えるようになる。次に各危険箇所の画像を取得するが、本発明においてはアドレッシングを二段階にて行う。最初のアドレッシングにおいて、測長SEMのステージ精度による誤差を補正し、次なるアドレッシングでは測長すべきパターンの位置を補正する。本発明に用いた測長SEMのステージ停止精度が保証される範囲が4μmの範囲であるので、第一アドレッシング点においては視野領域(正方形)の一辺が6.75μmとなる倍率20Kに固定した。もちろん、これ以下の倍率すなわち一辺が4μm以上である視野領域にてアドレッシングをしても構わないが、今回はこの倍率を第一アドレッシング点での倍率とした。
【0034】
このように、第一アドレッシング点は使用する測長SEMのステージ停止精度に依存する。第二アドレッシング点については最終的な測長箇所と同じ視野内にあるものを選択する。以下の説明では2048×2048の画素数にて保存する場合の例について説明する。SEM像における一画素あたりの面積を同じにするならば、512×512の画素数で画像を保存する場合と比較して、視野の一辺として4倍、面積では16倍の領域を持つSEM画像を取得できる。この2048×2048の領域に測長箇所を含めるのはもちろんだが、それに加えて第二アドレッシング点も含めるようにする。最終的に取得したい画像を512×512の画素数で一辺900nmとした。これは倍率でいうと150Kに相当するが、倍率はこれに限らず、所望の分解能が得られる倍率であればこれに限定されるものではない。
【0035】
本例においてはこの倍率で所望の分解能が得られる事が事前にわかっていたのでこの倍率を用いた。この条件下では第二アドレッシング点としてはこの一辺900nmの正方形領域を含み、その一辺が900nmの四倍すなわち3600nmの正方形領域となる。取得画像の一辺あたりの画素数を四倍にしたので画像領域も辺として四倍となるためである。この領域の画像を取得し、この領域内の適当な場所・適当な領域において回路設計データとSEMにより取得されたパターンを合わせることができれば最終的に得られる画像は設計データと対応する位置にあることになる。
【0036】
図4ではリソグラフィーシミュレーターとデザインルールチェッカーにより出力された危険箇所、すなわち画像を取得すべき箇所を中心とした一辺900nmの正方形領域とそれを含む一辺3600nmの正方形領域を模式的に示している。ただし、この段階では第二アドレッシング点が定まっていないため記されていない。第二アドレッシング点を指定するプロセスは後述する。
【0037】
最初の段階で行われるグローバルアライメント点についてはチップに配置されたアライメント精度補正マークを用いる。これは半導体デバイスを製造する際、その直前のレイヤーに重ね合わせることで意図したデバイスを作成するが、その重ね合わせが仕様の範囲にあるかどうかを検証するために配置され、重ね合わせがなされた後の工程においてその重ね合わせ精度が専用の装置によって確認される。このマークの代表的なものとしては、図5に示すようなボックス・イン・ボックスと呼ばれるパターンがあるが、二つの正方形はそれぞれ、別のレイヤーのものであり両者の中心座標のずれをアライメント精度として検出する。
【0038】
このパターンはデバイスレイヤー毎に決められた位置に置かれている為、設計データから座標を指定することができる。また、アライメントに用いるテンプレート像としては、設計データとした。もちろんこのボックス・イン・ボックスパターン以外のパターンを用いてグローバルアライメントを行っても構わない。
【0039】
次に測長SEMより取得される画像と設計データとSEM像の位置をあわせる必要がある。一般的に設計データの座標原点については特に取り決めが無いため、両者の相関値を与えなければ設計データとSEM像の座標は関連性を持たなくなってしまう。図6では網掛け部が設計データで外枠がウェハのチップであるとする。回路設計データはそのデータサイズからウェハのチップ領域と同じ領域について取り扱うのが非常に困難である。今回の例では、測長すべき箇所が存在する領域に限定して回路設計データを準備した。このようにすることによって、データの取り扱いが容易となった。
【0040】
設計データとSEM像の位置をそれぞれの画像データとして合わせるためには、両者の特定位置の座標をそれぞれの座標系において求め、両者を同じ座標とすればよい。本例においては、図7に図示するように、設計データに適当な大きさのH型の文字パターン配置しておいたので、それらの同一箇所の座標を用いた。SEMパターンは設計データと異なり角部は曲線となるので、二つの直線部分の線を延長し、それらが交わる部分を角部とした。
【0041】
以上のような条件を踏まえ、測長SEMレシピの詳細情報を定める。図17はその詳細情報設定の流れを説明するフローチャートである。まず、最終的な測長点とその倍率の指定を行う(S0001)。本例においては、先に測長点と倍率を指定したが、これに限られることはない。
【0042】
次に、SEM像の位置補正を行う点、すなわちアドレッシング点を定める為にまずその候補とすべき領域を定める。具体的には電子ビームの経路を移動させることにより視野を変更できる範囲内であればよく、評価点を中心に上下左右に15μmの領域が、その領域にあたる装置の場合、この範囲内でアドレッシング点を定める。逆に言うと、一辺が30μmである領域内でアドレッシング点を設定すればよいことになる。
【0043】
第一アドレッシング点の倍率と視野領域は測長SEMのステージが最低でもその視野内に停止しなければマッチングしその位置を補正できないため、測長SEMのステージ停止精度によることになる。アドレッシング点としてのテンプレートの大きさも一辺30μmの正方形領域の中からアドレッシング点を求める。本例においては、アドレッシング点のテンプレート画像の大きさとしては、図8に図示するように、一辺30μmの正方形領域の中から視野を一辺6750nmの正方形領域に限定し、アドレッシングに適した場所を探索する(S0002)(S0003)。
【0044】
本例の場合、ステージの停止精度より広い領域を与える倍率として、20Kという倍率を設定したため、この視野の一辺の長さは6750nmとなった。もちろん、これよりも広い領域であれば測長SEMのステージ移動の誤差があっても視野内にテンプレート画像が入るのでシステム上全く問題はない。こうして、今回は視野一辺30μmの正方形領域の範囲から一辺6750nmの正方形領域をテンプレートとして正規化相関法を応用することで自動的に求めた。
【0045】
本例においては「岩波講座 マルチメディア情報学5 画像と空間の情報処理 p.56」に記されている方法を用いて、アドレッシングに適する領域を自動的に定めたが、最終的に取得したい画像の領域を除いて定めた。
【0046】
本例においては、上図のような十字形のパターンが第一アドレッシング点として定められた。続いてオート・フォーカス点とオート・スティグマ点を設計データから自動的に決めたが、これも第一アドレッシング点を定めた方法と同様に定めた。ただし、オート・フォーカス点とオート・スティグマ点は最終的な画像取得倍率と同じ視野領域(本発明においては900nm四方の正方形領域)において適切な領域を定めたという点が異なる。
【0047】
次に第一アドレッシング点を設定した領域が、測長領域と重なって良いかどうかの判断を行う(S0004)。アドレッシング領域内にパターンが存在すれば、その領域内において、オート・フォーカスが実行可能である。オペレータは、測長領域を含む領域にてアドレッシング点を探索する(S0005)か、測長領域を含まない領域にてアドレッシング点を探索する(S0006)かの判断を行い、最終的に第一アドレッシング点の位置・領域を確定する(S0007)。
【0048】
次に、第二アドレッシング点とすべき箇所を定めるがこれは最終的に必要とされる画像領域が900nm四方の正方形領域を含む一辺3600nmの正方形領域の中において、画像取得点以外の領域から上記の方法によりアドレッシング点を定めればよい。ただし、第一アドレッシング点においてはSEM像一画素が約13nm四方の領域となるので、この大きさの範囲内で必然的にアドレッシング誤差が生じてしまう。
【0049】
この誤差による第二アドレッシング点での位置ずれを防ぐために3600nmの正方領域でなく、この13nm以上内側の領域として今回は3550nmの正方形領域の中から第二アドレッシング点となりうる箇所を検索し定めるようにした。最終的に取得する画像はこの一辺3550nmの正方形領域に含まれていればよいので図9のように画像取得点を中心に一辺3550nm*2−900nm=6200nmの正方形領域内から第二アドレッシング点を検索した。本例の場合、第二アドレッシング点の倍率(視野領域)を測長領域と同じ倍率に設定した(S0008)。なお、本例においては、測長レシピを作成する場合、第二アドレッシング点の位置,領域を確定する(S0013)前に、第一アドレッシング点と同様に、第二アドレッシング点の探索領域を設定(S0009)し、第二アドレッシング領域が測長領域と重なって良いか(S0010)をオペレータが判断する。オペレータは、測長領域を含む領域にてアドレッシング点を探索する(S0011)か、測長領域を含まない領域にてアドレッシング点を探索する(S0012)か、を判断した上で、第二アドレッシング点の位置・領域を確定する。
【0050】
検索の結果、図10のように第二アドレッシング点が決められた場合、画像取得点と第二アドレッシング点の中心を結ぶ線分の中点を、最終取得画像の中心点とした(S0014)。最終画像取得領域は一辺3600nmの正方形領域であるから、この領域が第二アドレッシング点を含み、測長SEMにより最終的に取得される画像の領域となる。さらにこの領域内でアドレッシングを行い、一辺900nmの正方形領域のみを切り出すことにより、設計データとSEM像を重ね合わせることにより両者の位置関係を完全に一致させた画像が取得できる。
【0051】
プロセスシミュレーターにより出力された危険点毎にSEM像を取得するレシピが一点ずつこのように作成される。今回画像取得点を中心として一辺6200nmの正方形領域の中から第二アドレッシング点を自動的に求めた結果、図11のようになった。つまりこの領域がもっとも特徴的な形状であるためアドレッシング点としてふさわしいということである。この第二アドレッシング点と画像取得点から最終的に取得される画像の領域が定められた。
【0052】
ウェハ上にパターンを形成する場合、例えば以下のような工程にて行われる。まず、ウェハ上に厚さ約60nmの塗布型反射防止膜をスピンコートし、さらにその上に厚さ約200nm化学増幅系ポジ型レジスト膜をスピンコートした。このウェハに対し、本例に用いられた設計データから生成されたフォトマスクを用いて、投影光学系の縮小比1/4,露光波長193nm,NA0.73,コヒーレンスファクタσ0.75,輪帯遮蔽率ε0.67,設定露光量28mJ/cm2というプロセスシミュレーターに用いたものと同じ条件で露光を行った。露光後、ウェハを100℃にて約90秒ポストエクスポージャーベーク(PEB)し、さらに、0.21規定のアルカリ現像液に約60秒間浸漬し、現像を行い、ウェハ上に転写パターンを作製した。
【0053】
このウェハの危険箇所の画像を測長SEMにより取得するが、そのレシピは上記手法で設計データを基に作成されたレシピを用いた。設計データを基にしたレシピであるので、設計データと測長SEMにより取得された像の位置について対応付けができなければアドレッシング点が機能しないので最終的に必要な画像が取得できない。本例ではそのマッチング手法として特開2002−328015号公報に記載される手法を用いた。
【0054】
この手法を用いることで、設計データを測長SEMのテンプレートとして用いる事が可能となり、危険箇所のSEM像が取得された。下図に第二アドレッシング点と危険箇所を含む一辺3600nmの正方形領域での取得SEM像と設計データをマッチングさせた結果の模式図を、図12に示す。これは第二アドレッシング点を含む画像領域におけるSEM像とその位置に対応する設計データを重ねた図であり、両者はこの視野内においてマッチングした結果である。
【0055】
本例では、危険個所から離間した第二アドレッシング点を基準パターンとすると共に、当該基準パターンの画像上の位置情報と、基準パターンと上記危険個所(測定すべき個所)を含む部分の設計データに基づいて、測定のための基準位置(例えば図12の左側に配置されたラインパターンの線部分)を設定する。図12に示すように、第二アドレッシング点と、当該第二アドレッシング点に相当するSEM像上の位置とのマッチングを取ることで、SEM像と設計データを重ね合わせる。このような重ね合わせによって、実際のSEM像によって得られる実際の位置情報と、設計データから得られる基準パターンと測定個所の理想的な位置関係を用いて、測定のための基準位置を設定することができる。
【0056】
特に本例の場合、測定個所が図面の縦方向に延びるラインパターンであるため、図面縦方向の測定基準位置を正確に設定することが難しいという問題がある。しかしながら図面の縦横両方向に伸びるパターンを第二アドレッシング点とすることによって、図面の縦横両方の位置あわせ精度を確保することができるので、図面縦方向の測定基準位置を精度良く配置することが可能となる。例えば、ラインパターンの先端が、設計データに対し、どの程度縮んだか等を評価する際に、極めて効果的な測定基準設定法となる。
【0057】
以下に上記手法によって、設定された測定基準位置を利用した具体的な測長法について説明する。
【0058】
図13は取得されたSEM像から取得画像領域のみを切り出したSEM像とそれに重ね合わせた設計データの例である。この視野領域においては設計データとSEM像の位置関係がずれているように見えるが、この領域を含む大きな領域においてマッチングを行った結果から一部を切り出したものであるので両者の位置関係としてはこれが正解となる。
【0059】
この図を用いて取得されたSEM像を設計データに対して評価する。まずはデザインルールチェッカーにより検出した線幅という観点で評価を行うとすると、この視野内のSEM像にて線幅を測長する。
【0060】
図13の例の場合、設計データに対し、実際のパターンがどの程度ずれて形成されたかを設計データを基準として評価することができる。
【0061】
図14の例では、SEM像に対する設計データとの差を評価値とした。設計データと比較することで、線幅以外についても評価することが可能となる。設計データの線分とSEM像のエッジ部分の距離を評価項目にできる。図14の例の場合、パターンの縦方向がどの程度縮んだか、或いは左右のずれの程度を、設計データを基準として評価することができる。また、図示はしていないが、コンタクトホールのようなパターンの場合、測定基準位置,コンタクトホール上部、及びコンタクトホール底部間の比較を行うという新たなコンタクトホール評価法を提案できる。この場合、コンタクトホール上部とコンタクトホール底部の両方の測定基準位置を設定可能にしても良い。
【0062】
更に、このようにして得られたデータをウェハマップとして表示するようにしても良い。ウェハマップとして表示する具体的な手法は、例えば特開2001−110862号公報(USP6,765,204)に記載されている。
【0063】
これらの距離はSEM像と対応する設計データが正しく重ね合わせることができて初めて得ることができる値である。また、このデバイスパターンの次の工程に対応する設計データをさらに重ねることで別の観点での評価が可能となった。
【0064】
図15の点線で示される正方形の設計データは半導体デバイス製造工程としてこの次の工程、すなわちこの上に形成されるパターンの理想的な位置を示す。設計データ毎の重ね合わせについては誤差が無いのでこの点線データとの重なり具合も評価基準となる場合がある。本例においては、点線設計データとパターン端の距離を測定した。このように取得されたSEM像のパターンと設計データを比較することで、新たな測長値を算出することができた。これらの測長を行う際に必要とされるパラメータについては、回路設計データの段階で決定することは行わず、SEM画像が取得された後にSEM画像から最適と思われるものを定めた。今回の例ではSEM画像からの測長において直線近似法を用いた。その閾値としては二次電子信号最大強度の50%とした。
【0065】
図16(a)はSEM画像における測長箇所を示している。図の上部から下部に掛けての二次電子信号を検出した。図16(b)に二次電子信号強度を示す。閾値を50%とした直線近似法により図の右側の位置が同定される。図の左側の位置は回路設計データとSEM画像のマッチングによりすでに位置が同定されているので、これら両者の値より寸法を測長することが可能となった。これ以外の箇所における測長についても同様な手法で測長することができた。
【0066】
図18は、作成されたレシピの概念図である。このような概念図を、レシピ作成工程中に、表示装置等に表示することによって、レシピ作成者(オペレータ)は、画像取得領域等が適切か否かを判断しながら、レシピ作成を行うことができる。本例の場合、レシピの作成工程で設定すべき領域を、回路設計データ上で表示することによって、電子ビームが走査される領域に重なりがないかどうか確認することができる。またこれらの領域を色分けしその役割を表示することによって、その確認が容易になる。
【0067】
例えばAP1/AFとあれば、その領域が第一アドレッシング領域であり、オート・フォーカスを実行する領域であることが判る。測長を実施する前にアドレッシングやオート・フォーカスのための電子線走査を行う場合、それがない場合と比較して測長値が異なる可能性があるので、この確認は有効である。
【符号の説明】
【0068】
1…荷電粒子源(電子銃)、2…荷電粒子線(電子ビーム)、3…レンズ、4…試料、5…二次粒子、6…二次粒子検出系、7…制御系、8…X−Y−Zステージ、9…画像表示装置、10…設計データ管理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン測定方法,パターン測定装置、及びプログラムに係り、特に取得された画像内のパターンを測定する方法,装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CAD(Computer Aided Design)データを用いて、半導体集積回路上のパターンを測定することが知られている。CADデータのような設計データは、半導体素子が本来あるべき理想的な形状を示すものであるため、CADデータと実際に形成されたパターンを比較することによって、半導体製造プロセスの評価が可能となる。特許文献1や特許文献2には、検査対象パターンと基準パターンのエッジ検出を行い、検出されたエッジを比較することによって、設計データに対するパターンの変形量を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−338304号公報
【特許文献2】特開2002−31525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、実際に形成されたパターンは、製造プロセスの影響によって、設計データとは異なる形状を示す。半導体ウェハ上には種々の形状のパターンが多数形成されているが、設計データと実際のパターン間の位置あわせするための確たる基準がなく、設計データが示す理想パターンに対し、測定対象パターンがどの程度ずれて形成されているのか、或いはどの程度変形しているのか等を何らかの基準に基づいて、測定することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のような問題を解決するため、アドレッシングパターン等の測定個所から離間した位置に形成され、走査電子顕微鏡等によって得られる画像上の基準パターンの位置情報と、設計データに基づいて検出される基準パターンと測定個所の位置関係の情報に基づいて、走査電子顕微鏡等による測定個所の基準位置を設定する。
【発明の効果】
【0006】
以上のような構成によれば、走査電子顕微鏡等によって得られた画像から基準パターンの位置を検出し、この点を基準として設計データに基づく、測定の基準位置の設定を行っているため、理想的なパターン形成個所或いはパターン形状から、実際のパターンがどの程度ずれて形成されているか、或いはどの程度、変化して形成されているかの測定をSEM像に基づく位置情報と、設計データに基づいて行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】走査電子顕微鏡の概略を示す図。
【図2】回路設計データとパターンとを重ね合わせた例を示す図。
【図3】回路設計データを中心とした測長レシピ作成から評価までのフローチャート。
【図4】画像取得点の例。
【図5】ボックス・イン・ボックスパターンの一例を示す図。
【図6】設計データがウェハ上のチップの何処に対応するかを説明する図。
【図7】設計データとウェハ上の位置との距離を定めるのに用いたパターンの一例を示す図。
【図8】第一アドレッシング点と画像取得点との位置関係を示す図。
【図9】第二アドレッシング点を検索する例を示す図。
【図10】検索された第二アドレッシング点と画像取得点との位置関係を示す図。
【図11】図10の回路設計データ上における具体例を示す図。
【図12】第二アドレッシング点にてSEM像と回路設計データの位置をあわせた例を示す図。
【図13】図12から画像取得点を切り出した例を示す図。
【図14】図13によって得られた画像から測長個所を決定する例を示す図。
【図15】ウェハ上に存在しない仮想的な線分とパターンとの間の距離を測長した例を示す図。
【図16】図15において測長を行った場所とそこにおける二次電子信号強度を示す図。
【図17】測長SEMレシピの詳細情報設定の流れを説明するフローチャート。
【図18】作成されたレシピの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に走査形電子顕微鏡(以下Scanning Electron Microscope:SEMと呼ぶ)の概略を説明する。図1の電子光学系は荷電粒子である電子を放出する荷電粒子源(電子銃)1から発せられる該荷電粒子線(電子ビーム)2をレンズ3により試料4上に集束させて任意の順序で走査することができる。電子線の照射により試料4の表面において発生する二次粒子(例えば二次電子)5は二次粒子検出系6により検出され、画像データとして画像演算制御の機能も持たせた制御系7(制御プロセッサ)に入力される。試料4はX−Y−Zステージ8により3次元方向すべての方向に移動可能である。制御系7は、荷電粒子源(電子銃)1,レンズ3,二次粒子検出系6,X−Y−Zステージ8、および画像表示装置9の制御も行う。
【0009】
本例の場合、電子ビーム2は、図示しない走査コイルで試料4上を二次元的(X−Y方向)に走査される。二次粒子検出系6内の二次電子検出器で検出された信号は、制御系7内の信号増幅器で増幅された後、画像メモリに転送されて画像表示装置9に試料像として表示される。二次信号検出器は二次電子や反射電子を検出するものであっても、光やX線を検出するものであっても良い。
【0010】
なお、画像メモリのメモリ位置に対応したアドレス信号が、制御系7内、或いは別に設置されたコンピュータ内で生成され、アナログ変換された後に、走査コイルに供給される。X方向のアドレス信号は、例えば画像メモリが512×512画素(pixel)の場合、0から512を繰り返すデジタル信号であり、Y方向のアドレス信号は、X方向のアドレス信号が0から512に到達したときにプラス1される0から512の繰り返しのデジタル信号である。これがアナログ信号に変換される。
【0011】
画像メモリのアドレスと電子ビームを走査するための偏向信号のアドレスが対応しているので、画像メモリには走査コイルによる電子線の偏向領域の二次元像が記録される。なお、画像メモリ内の信号は、読み出しクロックで同期された読み出しアドレス生成回路で時系列に順次読み出すことができる。アドレスに対応して読み出された信号はアナログ変換され、画像表示装置9の輝度変調信号となる。
【0012】
制御系7には、図示しない入力装置が設けられ、画像の取り込み条件(走査速度,画像積算枚数)や視野補正方式などの指定、および画像の出力や保存などを指定することができる。
【0013】
また本例で説明する装置は、検出された二次電子或いは反射電子等に基づいて、ラインプロファイルを形成する機能を備えている。ラインプロファイルは一次電子線を一次元、或いは二次元走査したときの電子検出量、或いは試料像の輝度情報等に基づいて形成されるものであり、得られたラインプロファイルは、例えば半導体ウェハ上に形成されたパターンの寸法測定等に用いられる。
【0014】
なお、図1の説明は制御系7が走査電子顕微鏡と一体、或いはそれに準ずるものとして説明したが、無論それに限られることはなく、走査電子顕微鏡鏡体とは別に設けられた制御プロセッサで以下に説明するような処理を行っても良い。その際には二次信号検出器で検出される検出信号を制御プロセッサに伝達したり、制御プロセッサから走査電子顕微鏡のレンズや偏向器等に信号を伝達する伝達媒体と、当該伝達媒体経由で伝達される信号を入出力する入出力端子が必要となる。
【0015】
更に、本例装置は、例えば半導体ウェハ上の複数点を観察する際の条件(測定個所,走査電子顕微鏡の光学条件等)を予めレシピとして記憶しておき、そのレシピの内容に従って、測定や観察を行う機能を備えている。
【0016】
また、以下に説明する処理を行うプログラムを記憶媒体に登録しておき、走査電子顕微鏡に必要な信号を供給する制御プロセッサで、当該プログラムを実行するようにしても良い。即ち、以下に説明する例は画像プロセッサを備えた走査電子顕微鏡等の荷電粒子線装置に採用可能なプログラム、或いはプログラムプロダクトとしての説明でもある。
【0017】
更に、制御系7には、半導体ウェハ上のパターンの設計データを記憶し、SEMの制御に必要なデータに変換する設計データ管理部10を備えている。当該設計データ管理部10は、図示しない入力装置等によって入力された半導体パターンの設計データに基づいて、上記SEMを制御するレシピを作成する機能を備えている。また、制御系7から伝達される信号に基づいて、レシピを書き換える機能をも備えている。なお、本例の説明では設計データ管理部10が、制御系7と別体のものとして説明するが、これに限られることはなく、制御系7と設計データ管理部10が一体であっても良い。
【0018】
本例においては試料4として、半導体製品を製造する工程の中にあるウェハとした。リソグラフィー工程によりウェハ上に形成されたレジストパターンを用いた。その比較対象として、そのパターンのもととなる半導体回路設計データ(CADデータ)を用いた。ここで用いる半導体回路設計データとは、最終的に半導体回路パターンとして所望される理想のパターン形状である。なお、以下の説明は、検査対象を半導体ウェハとしたが、設計データと評価したい対象が対をなしていればこれに限ることはない。また、回路設計データは、回路設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。
【0019】
〔実施例〕
従来、測長SEMにおいて測長点は観測者が手動で指定していた。そのためウェハ上においてその測長点の場所を探し出す必要があったが、ウェハ上において指定された箇所を探し出すのは非常に困難である。測長点が指定された後、観測者はその測長点毎にアドレッシング点,オート・フォーカス点などの測長SEMのレシピ作成に必要な条件を個別に設定する必要があり、観測者の習熟度に依存せざるを得なかった。
【0020】
さらに測長レシピを作成するために測長SEMとウェハが無ければならないという制限があるため効率的な作業が行えなかった。例えば、アドレッシング点としてあるパターンを選択しても、それが実際に適切かどうかは実際にウェハ上のパターンとマッチングさせなければわからない。このような試行錯誤を繰り返すことで測長SEMによる計測レシピが作成されるが、それに要する時間が多くなること自体が効率の低下を意味し、さらにレシピ作成中にも測長SEMを使用しなければならず、その間に他の測定を行うことができないという点でも効率が悪い。
【0021】
また近年半導体デバイスの製造デザインルールが小さくなるに従い、パターン幅より短い露光波長を用いるため必然的に光近接効果(Optical Proximity Effect)が大きくなり、それを補正する光近接効果補正(Optical Proximity Correct)技術が重要になってきている。光近接効果とは同じマスク幅を持つパターンにおいても、そのパターンが置かれる環境においてはウェハ上に得られるパターン幅が異なるという現象である。
【0022】
ここでいう環境とは例えば、パターンピッチである。密な環境にあるパターンにおいて、マスク上のパターン幅とウェハ上のパターン幅が同じ寸法となる条件においては粗な環境にある孤立的なパターンはその寸法が細くなる。このような現象を光近接効果といいこの効果を補正する技術が光近接効果補正である。孤立パターンのマスク幅を太くすることでウェハ上のパターン幅が密パターンの幅と同じになるように調節することができる。
【0023】
このような簡単な光近接効果補正を評価するにはパターン幅を測長することができれば評価できたが、近年さらに高精度な光近接効果補正を行うためパターンの形状を計測する評価手法も提案されている。その一つの具体例としてはある基準に対するパターンの位置を計測するものである。
【0024】
この場合設計データとウェハ上のパターンを正確に重ね合わせる事ができた例が図2であるとする。この場合両者の寸法を測定することができるのはもちろんであるが、さらに両者の位置関係を計測することも可能となる。位置を計測することができればパターン幅以上の情報が得られるため、その情報を用いることにより、より高精度な光近接効果補正に役立てる事ができると期待される。ウェハ上にはそのような基準が無いのでパターンの位置を計測することは困難であったが、測長SEMにより取得された画像に回路設計データをウェハパターンと重ね合わせることでこのような計測が可能となる。
【0025】
以下、図3に示すフローチャートを用いて本例を大まかに説明する。まずは回路設計データを利用して検査をすべき評価点を定める。その各評価点について、SEMで計測を行うためのレシピを作成する。作成されたレシピを用いて検査対象物であるウェハ上の評価点の画像を測長SEMにて取得する。取得された画像を回路設計データと比較することで評価を行う。本例において、この比較は回路設計データと行ったが、これに限るものではなく比較可能である基準的なパターンであればこれに限るものではない。例えば、設計データをもとに得られたシミュレーション像と測長SEMにより取得された画像と比較しても構わない。
【0026】
以下、図3に示すフローチャートの各ステップを段階的に説明する。本例において評価に用いた設計データは最小線幅が90nmであるパターンを対象とした回路設計パターンを模したものをGDSIIフォーマットにて作成したものを用いた。この疑似回路設計パターンの中において評価点を定めるステップでは、リソグラフィー工程後のウェハを検査するとして、リソグラフィーシミュレーターを用いた。
【0027】
他の工程後に得られるウェハを検査する場合には対応するシミュレーターを用いる事により検査箇所を求めればよく、例えばエッチング工程後のパターンにはエッチングシミュレーターを用いて検査箇所を定めることができる。本例においてはリソグラフィーシミュレーターとしてSigma−C社のSolid−Cを用いた。このシミュレーターでは回路設計パターンであるGDSIIフォーマット形式のデータを直接取り扱うことが可能であり、その回路設計パターンからリソグラフィー工程のプロセス条件を用いれば、その回路設計パターンがリソグラフィー工程後にウェハ上にどのようなパターンとして得られるかを与えることが可能である。
【0028】
シミュレーションの条件として、193nmの露光波長を用い、投影光学系の縮小比1/4,露光波長193nm,NA:0.73,コヒーレンスファクタσ:0.75,輪帯遮蔽率ε:0.67,設定露光量28mJ/cm2という条件を用いた。これは後ほど作成するウェハと同じ条件である。シミュレーションにより得られたパターン形状から不良の原因となりそうな箇所を選択するためにデザインルールチェッカーを用いた。これは、シミュレーションにより形成されたパターンの中から寸法が短くなってしまう箇所を自動的に検出するツールである。本例においてはMentor Graphics社のCalibreに内蔵されるデザインルールチェッカーを用いた。デザインルールである90nmに対して、線幅が80nm以下と100nm以上に仕上がっている箇所を危険箇所としてデザインルールチェッカーにより検出する。今回は線幅についてのみ危険箇所として抽出したが、それ以外の項目において危険箇所を抽出しても構わない。検出された危険箇所は回路設計パターン上の座標として出力された。
【0029】
即ち、デザインルールである90nmに対して、80nmと100nmを、それぞれ上下限のしきい値として設定し、当該しきい値以上、或いはそれを超えた個所を、危険個所として抽出し、設計データに基づいて、当該部分の座標を出力するようにした。本例では、設計データ管理部10に備えられた表示装置、或いは画像表示装置9にその情報を表示するようにした。このような表示を行うようにすれば、複数のパターンが混在する半導体ウェハ上のどこに測長個所(評価点)を設定すれば良いかの判断が容易になる。また、設計データ管理部10、或いは制御系7に、ポインティングデバイス等の入力装置を備えておき、危険個所として抽出された個所の中から、所望の個所を、測長個所として選択するような構成としても良い。そしてこの選択によって、自動的にレシピが書き換えられるような構成にしておけば、操作者は危険個所の中から、自身の経験則に基づいて、測長すべき個所を指定することができるので、危険個所の適切な選択と、評価時間の効率化の両立を図ることが可能となる。なお、検出された危険個所を自動的に測長対象個所としてレシピへ記録し、その中から不要な測長個所を後から削除するような構成としても良い。
【0030】
次にそれら出力された座標を測長SEMにて検査する為のレシピを作成する。測長SEMにて評価点の測長を行うには、評価点の座標だけでなくステージ座標とチップ座標を補正するグローバルアライメント点、そこにたどり着くまで段階を踏んで位置補正を行うためのアドレッシング点,オート・フォーカス,オート・スティグマを行う場所、などを評価点の置かれた環境により、設定条件を変える必要がある。
【0031】
本例においては、これらのうち、アドレッシング点とオート・フォーカス,オート・スティグマ点については設計データから自動的にその領域を定める。
【0032】
また、設計データをアドレッシングテンプレートとして取り扱うことができるため、測長を実施するウェハが無くても測定レシピを作成することが可能となった。上記座標以外についての設定(アドレッシング点ならびに測長点における倍率,加速電圧,試料電流,電子光学系条件,コントラスト条件)については測定条件として測長者が指定した。なぜならこれらの設定は回路設計データから決められるものではなく測長者が決定すべき情報であるからである。
【0033】
測長SEMのレシピとしては、まずグローバルアライメントを行い、ウェハとウェハ上に形成されたチップの間の座標補正をする。これにより、測長SEM上でチップ上での座標を使えるようになる。次に各危険箇所の画像を取得するが、本発明においてはアドレッシングを二段階にて行う。最初のアドレッシングにおいて、測長SEMのステージ精度による誤差を補正し、次なるアドレッシングでは測長すべきパターンの位置を補正する。本発明に用いた測長SEMのステージ停止精度が保証される範囲が4μmの範囲であるので、第一アドレッシング点においては視野領域(正方形)の一辺が6.75μmとなる倍率20Kに固定した。もちろん、これ以下の倍率すなわち一辺が4μm以上である視野領域にてアドレッシングをしても構わないが、今回はこの倍率を第一アドレッシング点での倍率とした。
【0034】
このように、第一アドレッシング点は使用する測長SEMのステージ停止精度に依存する。第二アドレッシング点については最終的な測長箇所と同じ視野内にあるものを選択する。以下の説明では2048×2048の画素数にて保存する場合の例について説明する。SEM像における一画素あたりの面積を同じにするならば、512×512の画素数で画像を保存する場合と比較して、視野の一辺として4倍、面積では16倍の領域を持つSEM画像を取得できる。この2048×2048の領域に測長箇所を含めるのはもちろんだが、それに加えて第二アドレッシング点も含めるようにする。最終的に取得したい画像を512×512の画素数で一辺900nmとした。これは倍率でいうと150Kに相当するが、倍率はこれに限らず、所望の分解能が得られる倍率であればこれに限定されるものではない。
【0035】
本例においてはこの倍率で所望の分解能が得られる事が事前にわかっていたのでこの倍率を用いた。この条件下では第二アドレッシング点としてはこの一辺900nmの正方形領域を含み、その一辺が900nmの四倍すなわち3600nmの正方形領域となる。取得画像の一辺あたりの画素数を四倍にしたので画像領域も辺として四倍となるためである。この領域の画像を取得し、この領域内の適当な場所・適当な領域において回路設計データとSEMにより取得されたパターンを合わせることができれば最終的に得られる画像は設計データと対応する位置にあることになる。
【0036】
図4ではリソグラフィーシミュレーターとデザインルールチェッカーにより出力された危険箇所、すなわち画像を取得すべき箇所を中心とした一辺900nmの正方形領域とそれを含む一辺3600nmの正方形領域を模式的に示している。ただし、この段階では第二アドレッシング点が定まっていないため記されていない。第二アドレッシング点を指定するプロセスは後述する。
【0037】
最初の段階で行われるグローバルアライメント点についてはチップに配置されたアライメント精度補正マークを用いる。これは半導体デバイスを製造する際、その直前のレイヤーに重ね合わせることで意図したデバイスを作成するが、その重ね合わせが仕様の範囲にあるかどうかを検証するために配置され、重ね合わせがなされた後の工程においてその重ね合わせ精度が専用の装置によって確認される。このマークの代表的なものとしては、図5に示すようなボックス・イン・ボックスと呼ばれるパターンがあるが、二つの正方形はそれぞれ、別のレイヤーのものであり両者の中心座標のずれをアライメント精度として検出する。
【0038】
このパターンはデバイスレイヤー毎に決められた位置に置かれている為、設計データから座標を指定することができる。また、アライメントに用いるテンプレート像としては、設計データとした。もちろんこのボックス・イン・ボックスパターン以外のパターンを用いてグローバルアライメントを行っても構わない。
【0039】
次に測長SEMより取得される画像と設計データとSEM像の位置をあわせる必要がある。一般的に設計データの座標原点については特に取り決めが無いため、両者の相関値を与えなければ設計データとSEM像の座標は関連性を持たなくなってしまう。図6では網掛け部が設計データで外枠がウェハのチップであるとする。回路設計データはそのデータサイズからウェハのチップ領域と同じ領域について取り扱うのが非常に困難である。今回の例では、測長すべき箇所が存在する領域に限定して回路設計データを準備した。このようにすることによって、データの取り扱いが容易となった。
【0040】
設計データとSEM像の位置をそれぞれの画像データとして合わせるためには、両者の特定位置の座標をそれぞれの座標系において求め、両者を同じ座標とすればよい。本例においては、図7に図示するように、設計データに適当な大きさのH型の文字パターン配置しておいたので、それらの同一箇所の座標を用いた。SEMパターンは設計データと異なり角部は曲線となるので、二つの直線部分の線を延長し、それらが交わる部分を角部とした。
【0041】
以上のような条件を踏まえ、測長SEMレシピの詳細情報を定める。図17はその詳細情報設定の流れを説明するフローチャートである。まず、最終的な測長点とその倍率の指定を行う(S0001)。本例においては、先に測長点と倍率を指定したが、これに限られることはない。
【0042】
次に、SEM像の位置補正を行う点、すなわちアドレッシング点を定める為にまずその候補とすべき領域を定める。具体的には電子ビームの経路を移動させることにより視野を変更できる範囲内であればよく、評価点を中心に上下左右に15μmの領域が、その領域にあたる装置の場合、この範囲内でアドレッシング点を定める。逆に言うと、一辺が30μmである領域内でアドレッシング点を設定すればよいことになる。
【0043】
第一アドレッシング点の倍率と視野領域は測長SEMのステージが最低でもその視野内に停止しなければマッチングしその位置を補正できないため、測長SEMのステージ停止精度によることになる。アドレッシング点としてのテンプレートの大きさも一辺30μmの正方形領域の中からアドレッシング点を求める。本例においては、アドレッシング点のテンプレート画像の大きさとしては、図8に図示するように、一辺30μmの正方形領域の中から視野を一辺6750nmの正方形領域に限定し、アドレッシングに適した場所を探索する(S0002)(S0003)。
【0044】
本例の場合、ステージの停止精度より広い領域を与える倍率として、20Kという倍率を設定したため、この視野の一辺の長さは6750nmとなった。もちろん、これよりも広い領域であれば測長SEMのステージ移動の誤差があっても視野内にテンプレート画像が入るのでシステム上全く問題はない。こうして、今回は視野一辺30μmの正方形領域の範囲から一辺6750nmの正方形領域をテンプレートとして正規化相関法を応用することで自動的に求めた。
【0045】
本例においては「岩波講座 マルチメディア情報学5 画像と空間の情報処理 p.56」に記されている方法を用いて、アドレッシングに適する領域を自動的に定めたが、最終的に取得したい画像の領域を除いて定めた。
【0046】
本例においては、上図のような十字形のパターンが第一アドレッシング点として定められた。続いてオート・フォーカス点とオート・スティグマ点を設計データから自動的に決めたが、これも第一アドレッシング点を定めた方法と同様に定めた。ただし、オート・フォーカス点とオート・スティグマ点は最終的な画像取得倍率と同じ視野領域(本発明においては900nm四方の正方形領域)において適切な領域を定めたという点が異なる。
【0047】
次に第一アドレッシング点を設定した領域が、測長領域と重なって良いかどうかの判断を行う(S0004)。アドレッシング領域内にパターンが存在すれば、その領域内において、オート・フォーカスが実行可能である。オペレータは、測長領域を含む領域にてアドレッシング点を探索する(S0005)か、測長領域を含まない領域にてアドレッシング点を探索する(S0006)かの判断を行い、最終的に第一アドレッシング点の位置・領域を確定する(S0007)。
【0048】
次に、第二アドレッシング点とすべき箇所を定めるがこれは最終的に必要とされる画像領域が900nm四方の正方形領域を含む一辺3600nmの正方形領域の中において、画像取得点以外の領域から上記の方法によりアドレッシング点を定めればよい。ただし、第一アドレッシング点においてはSEM像一画素が約13nm四方の領域となるので、この大きさの範囲内で必然的にアドレッシング誤差が生じてしまう。
【0049】
この誤差による第二アドレッシング点での位置ずれを防ぐために3600nmの正方領域でなく、この13nm以上内側の領域として今回は3550nmの正方形領域の中から第二アドレッシング点となりうる箇所を検索し定めるようにした。最終的に取得する画像はこの一辺3550nmの正方形領域に含まれていればよいので図9のように画像取得点を中心に一辺3550nm*2−900nm=6200nmの正方形領域内から第二アドレッシング点を検索した。本例の場合、第二アドレッシング点の倍率(視野領域)を測長領域と同じ倍率に設定した(S0008)。なお、本例においては、測長レシピを作成する場合、第二アドレッシング点の位置,領域を確定する(S0013)前に、第一アドレッシング点と同様に、第二アドレッシング点の探索領域を設定(S0009)し、第二アドレッシング領域が測長領域と重なって良いか(S0010)をオペレータが判断する。オペレータは、測長領域を含む領域にてアドレッシング点を探索する(S0011)か、測長領域を含まない領域にてアドレッシング点を探索する(S0012)か、を判断した上で、第二アドレッシング点の位置・領域を確定する。
【0050】
検索の結果、図10のように第二アドレッシング点が決められた場合、画像取得点と第二アドレッシング点の中心を結ぶ線分の中点を、最終取得画像の中心点とした(S0014)。最終画像取得領域は一辺3600nmの正方形領域であるから、この領域が第二アドレッシング点を含み、測長SEMにより最終的に取得される画像の領域となる。さらにこの領域内でアドレッシングを行い、一辺900nmの正方形領域のみを切り出すことにより、設計データとSEM像を重ね合わせることにより両者の位置関係を完全に一致させた画像が取得できる。
【0051】
プロセスシミュレーターにより出力された危険点毎にSEM像を取得するレシピが一点ずつこのように作成される。今回画像取得点を中心として一辺6200nmの正方形領域の中から第二アドレッシング点を自動的に求めた結果、図11のようになった。つまりこの領域がもっとも特徴的な形状であるためアドレッシング点としてふさわしいということである。この第二アドレッシング点と画像取得点から最終的に取得される画像の領域が定められた。
【0052】
ウェハ上にパターンを形成する場合、例えば以下のような工程にて行われる。まず、ウェハ上に厚さ約60nmの塗布型反射防止膜をスピンコートし、さらにその上に厚さ約200nm化学増幅系ポジ型レジスト膜をスピンコートした。このウェハに対し、本例に用いられた設計データから生成されたフォトマスクを用いて、投影光学系の縮小比1/4,露光波長193nm,NA0.73,コヒーレンスファクタσ0.75,輪帯遮蔽率ε0.67,設定露光量28mJ/cm2というプロセスシミュレーターに用いたものと同じ条件で露光を行った。露光後、ウェハを100℃にて約90秒ポストエクスポージャーベーク(PEB)し、さらに、0.21規定のアルカリ現像液に約60秒間浸漬し、現像を行い、ウェハ上に転写パターンを作製した。
【0053】
このウェハの危険箇所の画像を測長SEMにより取得するが、そのレシピは上記手法で設計データを基に作成されたレシピを用いた。設計データを基にしたレシピであるので、設計データと測長SEMにより取得された像の位置について対応付けができなければアドレッシング点が機能しないので最終的に必要な画像が取得できない。本例ではそのマッチング手法として特開2002−328015号公報に記載される手法を用いた。
【0054】
この手法を用いることで、設計データを測長SEMのテンプレートとして用いる事が可能となり、危険箇所のSEM像が取得された。下図に第二アドレッシング点と危険箇所を含む一辺3600nmの正方形領域での取得SEM像と設計データをマッチングさせた結果の模式図を、図12に示す。これは第二アドレッシング点を含む画像領域におけるSEM像とその位置に対応する設計データを重ねた図であり、両者はこの視野内においてマッチングした結果である。
【0055】
本例では、危険個所から離間した第二アドレッシング点を基準パターンとすると共に、当該基準パターンの画像上の位置情報と、基準パターンと上記危険個所(測定すべき個所)を含む部分の設計データに基づいて、測定のための基準位置(例えば図12の左側に配置されたラインパターンの線部分)を設定する。図12に示すように、第二アドレッシング点と、当該第二アドレッシング点に相当するSEM像上の位置とのマッチングを取ることで、SEM像と設計データを重ね合わせる。このような重ね合わせによって、実際のSEM像によって得られる実際の位置情報と、設計データから得られる基準パターンと測定個所の理想的な位置関係を用いて、測定のための基準位置を設定することができる。
【0056】
特に本例の場合、測定個所が図面の縦方向に延びるラインパターンであるため、図面縦方向の測定基準位置を正確に設定することが難しいという問題がある。しかしながら図面の縦横両方向に伸びるパターンを第二アドレッシング点とすることによって、図面の縦横両方の位置あわせ精度を確保することができるので、図面縦方向の測定基準位置を精度良く配置することが可能となる。例えば、ラインパターンの先端が、設計データに対し、どの程度縮んだか等を評価する際に、極めて効果的な測定基準設定法となる。
【0057】
以下に上記手法によって、設定された測定基準位置を利用した具体的な測長法について説明する。
【0058】
図13は取得されたSEM像から取得画像領域のみを切り出したSEM像とそれに重ね合わせた設計データの例である。この視野領域においては設計データとSEM像の位置関係がずれているように見えるが、この領域を含む大きな領域においてマッチングを行った結果から一部を切り出したものであるので両者の位置関係としてはこれが正解となる。
【0059】
この図を用いて取得されたSEM像を設計データに対して評価する。まずはデザインルールチェッカーにより検出した線幅という観点で評価を行うとすると、この視野内のSEM像にて線幅を測長する。
【0060】
図13の例の場合、設計データに対し、実際のパターンがどの程度ずれて形成されたかを設計データを基準として評価することができる。
【0061】
図14の例では、SEM像に対する設計データとの差を評価値とした。設計データと比較することで、線幅以外についても評価することが可能となる。設計データの線分とSEM像のエッジ部分の距離を評価項目にできる。図14の例の場合、パターンの縦方向がどの程度縮んだか、或いは左右のずれの程度を、設計データを基準として評価することができる。また、図示はしていないが、コンタクトホールのようなパターンの場合、測定基準位置,コンタクトホール上部、及びコンタクトホール底部間の比較を行うという新たなコンタクトホール評価法を提案できる。この場合、コンタクトホール上部とコンタクトホール底部の両方の測定基準位置を設定可能にしても良い。
【0062】
更に、このようにして得られたデータをウェハマップとして表示するようにしても良い。ウェハマップとして表示する具体的な手法は、例えば特開2001−110862号公報(USP6,765,204)に記載されている。
【0063】
これらの距離はSEM像と対応する設計データが正しく重ね合わせることができて初めて得ることができる値である。また、このデバイスパターンの次の工程に対応する設計データをさらに重ねることで別の観点での評価が可能となった。
【0064】
図15の点線で示される正方形の設計データは半導体デバイス製造工程としてこの次の工程、すなわちこの上に形成されるパターンの理想的な位置を示す。設計データ毎の重ね合わせについては誤差が無いのでこの点線データとの重なり具合も評価基準となる場合がある。本例においては、点線設計データとパターン端の距離を測定した。このように取得されたSEM像のパターンと設計データを比較することで、新たな測長値を算出することができた。これらの測長を行う際に必要とされるパラメータについては、回路設計データの段階で決定することは行わず、SEM画像が取得された後にSEM画像から最適と思われるものを定めた。今回の例ではSEM画像からの測長において直線近似法を用いた。その閾値としては二次電子信号最大強度の50%とした。
【0065】
図16(a)はSEM画像における測長箇所を示している。図の上部から下部に掛けての二次電子信号を検出した。図16(b)に二次電子信号強度を示す。閾値を50%とした直線近似法により図の右側の位置が同定される。図の左側の位置は回路設計データとSEM画像のマッチングによりすでに位置が同定されているので、これら両者の値より寸法を測長することが可能となった。これ以外の箇所における測長についても同様な手法で測長することができた。
【0066】
図18は、作成されたレシピの概念図である。このような概念図を、レシピ作成工程中に、表示装置等に表示することによって、レシピ作成者(オペレータ)は、画像取得領域等が適切か否かを判断しながら、レシピ作成を行うことができる。本例の場合、レシピの作成工程で設定すべき領域を、回路設計データ上で表示することによって、電子ビームが走査される領域に重なりがないかどうか確認することができる。またこれらの領域を色分けしその役割を表示することによって、その確認が容易になる。
【0067】
例えばAP1/AFとあれば、その領域が第一アドレッシング領域であり、オート・フォーカスを実行する領域であることが判る。測長を実施する前にアドレッシングやオート・フォーカスのための電子線走査を行う場合、それがない場合と比較して測長値が異なる可能性があるので、この確認は有効である。
【符号の説明】
【0068】
1…荷電粒子源(電子銃)、2…荷電粒子線(電子ビーム)、3…レンズ、4…試料、5…二次粒子、6…二次粒子検出系、7…制御系、8…X−Y−Zステージ、9…画像表示装置、10…設計データ管理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のパターン画像を取得し、当該画像上の測定対象パターンと、当該パターンの設計データとの間のずれを測定する方法であって、
前記試料上の測定対象パターンに対し、離間した位置に配置された基準パターンを含む領域の画像を取得し、
当該測定対象パターンから離間した基準パターンを含む設計データの領域をテンプレートとして、前記取得画像との間でテンプレートマッチングを実行し、
予め定められた部分領域に含まれる前記測定対象パターンについて、当該テンプレートマッチングの実行によって位置合わせが行われた設計データの線分と、前記測定対象パターンのエッジとの間のずれを測定することを特徴とするパターン測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準パターンと前記測定対象パターンが、同じ画像上に配置されるように画像を取得することを特徴とするパターン測定方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記基準パターンと前記測定対象パターンの中間点に、前記画像の中心を位置づけることを特徴とするパターン測定方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記画像は、走査電子顕微鏡によって取得された画像であることを特徴とするパターン測定方法。
【請求項5】
試料のパターン画像上の測定対象パターンと、当該パターンの設計データとの間のずれを測定するための処理装置を備えたパターン測定装置であって、
前記処理装置は、前記試料上の測定対象パターンに対し、離間した位置に配置された基準パターンを含む画像を取得し、
当該測定対象パターンから離間した基準パターンを含む設計データの領域をテンプレートとして、前記取得画像との間でテンプレートマッチングを実行し、
予め定められた部分領域に含まれる前記測定対象パターンについて、当該テンプレートマッチングの実行によって位置合わせが行われた設計データの線分と、前記測定対象パターンのエッジとの間のずれを測定することを特徴とするパターン測定装置。
【請求項6】
取得された試料のパターン画像から、当該画像上の測定対象パターンと、当該パターンの設計データとの間のずれをコンピュータに測定させるコンピュータプログラムであって、
当該プログラムは、前記コンピュータに、前記試料上の測定対象パターンに対し、離間した位置に配置された基準パターンを含む画像を取得させ、
当該測定対象パターンから離間した基準パターンを含む設計データの領域をテンプレートとして、前記取得画像との間でテンプレートマッチングを実行させ、
予め定められた部分領域に含まれる前記測定対象パターンについて、当該テンプレートマッチングの実行によって位置合わせが行われた設計データの線分と、前記測定対象パターンのエッジとの間のずれを測定させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
試料のパターン画像を取得し、当該画像上の測定対象パターンと、当該パターンの設計データとの間のずれを測定する方法であって、
前記試料上の測定対象パターンに対し、離間した位置に配置された基準パターンを含む領域の画像を取得し、
当該測定対象パターンから離間した基準パターンを含む設計データの領域をテンプレートとして、前記取得画像との間でテンプレートマッチングを実行し、
予め定められた部分領域に含まれる前記測定対象パターンについて、当該テンプレートマッチングの実行によって位置合わせが行われた設計データの線分と、前記測定対象パターンのエッジとの間のずれを測定することを特徴とするパターン測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準パターンと前記測定対象パターンが、同じ画像上に配置されるように画像を取得することを特徴とするパターン測定方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記基準パターンと前記測定対象パターンの中間点に、前記画像の中心を位置づけることを特徴とするパターン測定方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記画像は、走査電子顕微鏡によって取得された画像であることを特徴とするパターン測定方法。
【請求項5】
試料のパターン画像上の測定対象パターンと、当該パターンの設計データとの間のずれを測定するための処理装置を備えたパターン測定装置であって、
前記処理装置は、前記試料上の測定対象パターンに対し、離間した位置に配置された基準パターンを含む画像を取得し、
当該測定対象パターンから離間した基準パターンを含む設計データの領域をテンプレートとして、前記取得画像との間でテンプレートマッチングを実行し、
予め定められた部分領域に含まれる前記測定対象パターンについて、当該テンプレートマッチングの実行によって位置合わせが行われた設計データの線分と、前記測定対象パターンのエッジとの間のずれを測定することを特徴とするパターン測定装置。
【請求項6】
取得された試料のパターン画像から、当該画像上の測定対象パターンと、当該パターンの設計データとの間のずれをコンピュータに測定させるコンピュータプログラムであって、
当該プログラムは、前記コンピュータに、前記試料上の測定対象パターンに対し、離間した位置に配置された基準パターンを含む画像を取得させ、
当該測定対象パターンから離間した基準パターンを含む設計データの領域をテンプレートとして、前記取得画像との間でテンプレートマッチングを実行させ、
予め定められた部分領域に含まれる前記測定対象パターンについて、当該テンプレートマッチングの実行によって位置合わせが行われた設計データの線分と、前記測定対象パターンのエッジとの間のずれを測定させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−232359(P2011−232359A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181115(P2011−181115)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【分割の表示】特願2005−49923(P2005−49923)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【分割の表示】特願2005−49923(P2005−49923)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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