説明

パック電池

【課題】縦横に配列している複数の電池を回転しないようにしっかりと固定して耐振動特性を向上する。
【解決手段】パック電池は、複数の電池1を、端面が同一の面に位置する平行な姿勢でケース2に収納している。ケース2は、電池1を保持して定位置に配置する複数の電池ホルダ7をプラスチックで一体的に成形して縦横に配列して設けている。ケース2は、互いに隣接して周囲に配置される3本又は4本の電池1で囲まれる内側にあり、かつ、周囲に配置される3又は4本の電池ホルダ7で囲まれる領域に、接着材の充填室22を設けている。さらに、ケース2は、この充填室22に連結するように電池ホルダ7に貫通部23を設けている。パック電池は、充填室22に接着材を充填して、接着材を貫通部23から隣接する電池1の表面に接着して、この接着材でもって充填室22の周囲に配置される電池1を互いに連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動の多い用途に使用されて最適なパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具や自転車に等の用途に使用されるパック電池は、激しく振動される状態で使用される。耐振性を向上するために、縦横に並べた電池の間に、円筒形に成形しているシリコンゴムを挿入するパック電池は開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−285887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の公報のパック電池は、円筒型電池を平行に配置したものを上下2段に積層している。このパック電池は、振動しても、温度センサーを電池の表面に配置するために、上下左右に配置される電池の間に筒状に成形したシリコンゴムを挿入している。シリコンゴムは弾性変形して、温度センサーを電池の表面に弾性的に押し付ける。このため、パック電池が振動される状態で使用されても、温度センサーを電池の表面に接触させて、電池温度を正確に検出できる特徴がある。
【0004】
ただ、この構造のパック電池は、振動しても温度センサーを電池表面に配置できる特徴はあるが、振動が激しいと、ケース内で電池の相対位置がずれたり、あるいは電池の電極に溶接して連結しているリード板の溶接が外れ、あるいはリード板が切断される等の弊害が発生する。
【0005】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、縦横に配列している複数の電池をしっかりと連結して、定位置に回転しないように固定できる耐振動特性の優れたパック電池を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、振動によるリードの破断や溶接部分の切断を有効に阻止できるパック電池を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の大切な目的は、接着材の充填を簡単かつ容易に、しかも接着材が確実に電池表面に接着できる状態で充填できるパック電池を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、接着材を電池表面にしっかりと剥離しないように接着して、接着材で確実に電池を定位置に配置できるパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパック電池は、複数の電池1を、端面が同一の面に位置する平行な姿勢でケース2に縦横に並べて収納している。ケース2は、内部に収納している電池1を外周で保持して定位置に配置する複数の電池ホルダ7をプラスチックで一体的に成形して縦横に配列して設けている。ケース2は、互いに隣接して周囲に配置される3本又は4本の電池1で囲まれる内側にあり、かつ、周囲に配置される3又は4本の電池ホルダ7で囲まれる領域に、接着材の充填室22を設けている。さらに、ケース2は、この充填室22に連結するように電池ホルダ7に貫通部23を設けている。パック電池は、充填室22に接着材を充填して、接着材を貫通部23から隣接する電池1の表面に接着して、この接着材でもって充填室22の周囲に配置される電池1を互いに連結している。
【0007】
本発明のパック電池は、隣接する電池1の端部にリード5を溶接して、リード5で電池1を直列又は並列に接着することができる。本発明のパック電池は、充填室22に充填される接着材を、シリコン系、ウレタン系、エポキシ系の何れか、またはこれ等を混合してなる接着材とすることができる。本発明のパック電池は、貫通部23をスリットと貫通孔13のいずれか又は両方とすることができる。本発明のパック電池は、電池ホルダ7に一体的に成形して充填室22の底板24を設けることができる。さらに、本発明のパック電池は、充填室22に温度センサーを配置することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパック電池は、縦横に配列している複数の電池をしっかりと連結して、定位置に回転しないように固定できる特長がある。それは、本発明のパック電池が、複数の電池を収納するケースを、複数の電池ホルダを縦横に配列した構造としており、このケースは、互いに隣接して周囲に配置される3本又は4本の電池で囲まれる内側で、電池ホルダで囲まれる領域に接着材の充填室を設けると共に、この充填室に連結する貫通部を電池ホルダに設けて、充填室に充填する接着材を貫通部から電池の表面に接着しているからである。この構造のパック電池は、隣接する電池ホルダ間に設けた充填室に充填される接着材を、貫通部から外部に移行させて隣接する電池の表面に接着するので、接着材を簡単かつ容易に充填しながら、接着材を電池表面に接着して、充填室の周囲に配置される電池をしっかりと連結できる。このように、ケースに収納される電池をしっかりと保持して動かないように連結できる本発明のパック電池は、振動によるリードの破断や溶接部分の切断を有効に阻止して、耐振動特性に優れたパック電池を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのパック電池を例示するものであって、本発明はパック電池を以下のものに特定しない。
【0010】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0011】
図1ないし図4に示すパック電池は、複数の電池1と、電池1を収納しているケース2と、ケース2の開口部8に固定しているエンドプレート3と、電池1に接続されて電池電圧を検出する電圧検出回路を実装する回路基板4と、この回路基板4に電池1を接続すると共に、電池1を直列と並列に接続するリード5とを備える。さらに、図のパック電池は、外ケース6にケース2と回路基板4を収納している。
【0012】
電池1は、円筒型のリチウムイオン二次電池である。ただ、電池には、充電できる全ての二次電池、たとえばニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池とすることもできる。また、電池は、円筒型電池に代わって角型電池も使用できる。
【0013】
図のパック電池は、縦横に並べている電池1を4行5列に配置して、20個の電池1を備えている。ただし、本明細書において、電池の行と列は、図1と図2に示すように、回路基板4を上面に配置する姿勢で、横一並びの要素を行、縦一並びの要素を列とする。
【0014】
図のパック電池は、隣接する行(図において上下)に配置される電池1の向きを、上2行および下2行に配置される電池同士で等しくすると共に、同じ列に配設される電池1については、上2行の電池1と下2行の電池1とでは逆向きとなるようにしている。すなわち、ケース2の開口部8から表出する電池1の極性は、上2行の電池同士及び下2行の電池同士では同じ極性とするとが、同じ列に配置される上2行の電池1と下2行の電池1では異なる極性としている。いいかえると、ケース2の開口部8において、ひとつの列では、上2行に凸部電極を下2行に平面電極を配置し、あるいは、上2行に平面電極を下2行に凸部電極を配置している。このように配列される電池1は、上2行または下2行で上下に位置する電池1をリード5で接続してこれらを並列に接続できる。また、ひとつの列に配置される4個の電池をリード5で接続して、上2行の電池1と下2行の電池1を直列に接続できる。これらのリード5は、板状の金属板である。
【0015】
また、図のパック電池は、隣接する列(図において左右)に配置される電池1の向きを逆向きとして、ケース2の開口部8から表出する電池1の極性を、隣接する列の電池同士では互いに異なる極性としている。すなわち、ケース2の開口部8において、左右に隣接する電池同士は、凸部電極と平面電極とが交互に位置するようにしている。したがって、左右に隣接する電池1の電極をリード5で接続して、これらを直列に接続できる。これらのリード5も、板状の金属板である。
【0016】
図のパック電池は、一方の開口部8において、上下に位置する電池1の電極を並列と直列に接続し、他方の開口部8において、左右に位置する電池1の電極を直列に接続して、20個の電池1を互いに接続している。図のパック電池は、10個の電池1を直列に接続し、さらに10個ずつの電池1を2個ずつ並列に接続している。すなわち、2個の電池1を並列にしたものを10個直列に接続している。
【0017】
図の電池1は、上2行の電池1を第1グループの電池1Aとして、下2行の電池1を第2グループの電池1Bとしている。すなわち、第1グループの電池1Aと第2グループの電池1Bを2行の電池1で構成する。ただし、本発明のパック電池は、第1グループの電池と第2グループの電池を3行以上とすることができる。第1グループの電池1Aと第2グループの電池1Bは同じ行数とするので、パック電池全体の行数は、第1グループの電池1Aと第2グループの電池1Bの行数の2倍となる。たとえば、第1グループの電池と第2グループの電池を3行の電池とするパック電池は、全体の行数が6行となる。また、図のパック電池は、列の数が電池1を直列に接続する個数を特定する。正確には、図のパック電池は列の数の2倍が電池1の直列個数となる。したがって、電池1を図に示す配列で並列と直列に接続するパック電池においては、列数を多くして、直列に接続する電池1の個数を多くして、出力電圧を高くできる。
【0018】
図のパック電池は、上下2列の電池1を並列に接続して、隣接する列の電池1を直列に接続しているが、本発明は電池を並列と直列に接続する電池の配列を図に示す構造には特定しない。上下の電池を直列に接続して、隣接する列の電池を並列に接続することもできる。さらに、図のパック電池は、複数の電池1を縦横に直線状に並べて行列に配置するが、電池は必ずしも直線状に配置する必要はなく、たとえば、図示しないが縦列に並ぶ電池を左右に位置をずらせる状態として、ジグザグ状に配置し、あるいは横の行に配置する電池を上下に位置がずれる状態に配置することもできる。
【0019】
ケース2は、ポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチック等の絶縁材で製作される。ケース2を成形するプラスチックはポリプロピレンである。ただ、ポリエチレンやナイロン等の他のプラスチックで成形することもできる。絶縁材で製作されるケース2は、表面を絶縁処理しない電池、すなわち、金属製の外装缶を表面に表出させている電池を直接にケースに収納できる。
【0020】
プラスチック製のケース2は、電池1を挿入して定位置に保持する電池ホルダ7を一体的に成形して設けている。図の電池ホルダ7は、電池1を挿入して保持する筒状に成形している。筒状の電池ホルダ7は、内面の形状を電池1の外形にほぼ等しく、正確には電池1の外形よりもわずかに大きく成形している。図のパック電池は、円筒型電池1をケース2に収納しているので、電池ホルダ7を円筒状としている。図のケース2は、円筒状の電池ホルダ7を縦横に連結して設けている。各々の電池ホルダ7に、電池1を挿入して、ケース2は複数の電池1を定位置に配置して収納する。電池ホルダ7は内面形状を電池1の外形に沿う形状とするが、電池1の全表面に沿う円筒状とする必要はない。電池ホルダ7は、電池1の周囲にあって、電池1を定位置に配置できる全ての形状、たとえば、電池の周囲に複数のロッドや板材を設けた形状とすることもできる。
【0021】
パック電池は、ケース2を定位置に配置している電池1を接着材で連結している。接着材を充填するために、ケース2は充填室22を設けている。充填室22の拡大斜視図を図5に示す。充填室22に充填される接着材は、ケース2の上下左右に隣接して配置される電池1を連結する。図に示すケース2は、電池1を縦方向と横方向に直線状に整列して並べている。このパック電池は、充填室22の周囲に4本の電池1と電池ホルダ7を配置している。したがって、互いに隣接して周囲に配置される4本の電池1で囲まれる内側であって、周囲に配置される4本の電池ホルダ7で囲まれる領域に接着材の充填室22を設ける。充填室22に充填される接着材を電池1の表面に接着するために、充填室22に連結して電池ホルダ7に貫通部23を設けている。貫通部23は、充填室22に充填される接着材を外部に漏らせて、隣接する電池1の表面に接着させる。したがって、充填室22に充填される接着材は、充填室22の周囲に配置される4本の電池1の表面に接着されて、これ等の電池1を連結する。
【0022】
さらに、図6に示すパック電池は、上下の行に配置する電池1を、互いに谷間に配置する。すなわち、電池1を俵積みの状態で積層している。このパック電池は、充填室22の周囲に3本の電池1と電池ホルダ7が配置される。したがって、互いに隣接して周囲に配置される3本の電池1で囲まれる内側であって、周囲に配置される3本の電池ホルダ7で囲まれる領域に接着材の充填室22を設けている。このケース2も、充填室22に充填される接着材を電池1の表面に接着するために、充填室22に連結して電池ホルダ7には貫通部23を設けている。この貫通部23も、充填室22に充填される接着材を外部に漏らせて、隣接する電池1の表面に接着させる。したがって、充填室22に充填される接着材は、充填室22の周囲に配置される3本の電池1の表面に接着されて、これ等の電池1を連結する。
【0023】
図5と図6のパック電池は、電池ホルダ7にスリット状に貫通部23を設けている。このパック電池は、スリット状の貫通部23から充填室22の外部に漏れる接着材を電池1の表面に接着させる。このため、接着材を長く電池表面に接着して、電池1に強固に接着できる。ただし、貫通部は必ずしもスリット状にする必要はなく、たとえば図示しないが、電池ホルダを貫通する貫通孔とすることもできる。また、貫通孔とスリット状からなる両方の貫通部を設けることもできる。
【0024】
さらに、図4と図5のケース2は、電池ホルダ7に一体的に成形して充填室22の底板24を設けている。底板24は充填室22の深さを調整する。底板24は、充填室22の深さが、好ましくは、約10mm〜20mmとなる位置に設けられる。ただし、底板の位置は、充填室の深さが10mmよりも浅く、あるいは20mmよりも深くなる位置に配置することもできる。充填室を浅くすると、ここに充填する接着材量を少なくできる。充填室を深くすると、多量の接着材を充填して、電池に強固に接着できる。
【0025】
ケース2は、電池1の一方の端部に充填室22を設けて、ここに充填する接着材を電池表面に接着する。ただし、電池の両端部に充填室を設けて、ここに接着材を充填して、電池を両端部で連結することもできる。
【0026】
充填室22には、シリコン系の接着材が充填される。シリコン系の接着材は硬化状態でゴム状弾性を示すので優れた緩衝作用がある。したがって、シリコン系の接着材を充填しているパック電池は、衝撃を接着材で吸収して、耐衝撃性を向上できる。ただし、充填室には、シリコン系の接着材に代わって、ウレタン系の接着材やエポキシ系の接着材を使用することもできる。ウレタン系の接着材もゴム状弾性を示して優れた緩衝作用がある。エポキシ系の接着材は、金属に対する接着強度が強く、電池の外装缶に強固に接着して、隣接する電池を極めて強固に連結する。
【0027】
ケース2は、各々の電池ホルダ7に電池1を挿入して、複数の電池1の端面が同一の面に位置する平行な姿勢として、縦横に並べて、すなわち行列にならべて収納する。図1と図2のパック電池は、電池1の端面が垂直面に位置するように、電池1を水平な姿勢で平行にケース2に収納している。
【0028】
電池1は、ケース2の電池ホルダ7に収納された状態で端部にリード5を接続する。このことを実現するために、ケース2は、電池1の端部を外部に表出させる開口部8を設けている。図1と図2のケース2は、一方の開口部8を、電池1を出し入れできる構造とし、他方の開口部8を、電池1が出ない構造としている。電池1を出し入れできる開口部8は、電池ホルダ7の開口部8を電池1を通過できる大きさとする。電池1が出ない構造の開口部8は、図2に示すように、電池1の挿通を阻止するストッパ凸部10を一体的に成形して設けている。ストッパ凸部10は、電池1の端面に当接して、電池1が開口部8から出るのを阻止する。
【0029】
図1と図2のケース2は、エンドプレート3を固定する開口部8を、電池1を出し入れできる構造として、他方の開口部8を電池1を出し入れできない構造としている。この構造のケース2は、エンドプレート3を外す状態でケース2の電池ホルダ7に電池1を挿入し、その後、開口部8にエンドプレート3を固定して、電池1をケース2から出ないように収納できる。
【0030】
エンドプレート3はプラスチック等の絶縁材で製作される。エンドプレート3は、ケース2の開口部8に固定されて、電池1をケース2から出ないように定位置に固定する。また、このエンドプレート3は、これをケース2に固定する状態で、電池1の端部にリード5を固定できるように、各々の電池1の端面電極位置に電極窓11を開口している。図のパック電池は、4行5列に20個の電池1を収納するので、エンドプレート3は20個の電極窓11を開口している。
【0031】
エンドプレート3は、ケース2の定位置に連結される。エンドプレート3をケース2の定位置に連結するために、図のエンドプレート3は、ネジ止してケース2に連結するネジ孔15を設けている。一方、ケース2は、止ネジをねじ込むネジ挿入部16をネジ孔15に対向する位置に設けている。ネジ孔15は、エンドプレート3を貫通する貫通孔であって、エンドプレート3の周縁部に複数個を開口して設けている。ネジ挿通部16は、ネジ孔15に挿通される止ネジをねじ込む部分であって、ネジ孔15に対向する位置、図のケース2においては、端部の外周部に設けている。エンドプレート3は、ネジ孔15に止ネジが挿通されると共に、この止ネジがケース2のネジ挿通部16にねじ込まれて、ケース2の定位置に連結される。
【0032】
さらに、パック電池は、図示しないが、エンドプレートとケースのいずれか一方に嵌着突出部を設けると共に、他方にこの嵌着突出部を嵌合する嵌合凹部を設けて、嵌着突出部を嵌合凹部に嵌合させてエンドプレートをケースの定位置に連結することもできる。この連結構造は、たとえば、嵌着突出部を凸部や凸条とし、嵌合凹部を凸部や凸条を嵌入する凹部や穴、溝とすることができる。嵌着突出部と嵌合凹部は、エンドプレートとケースの互いに対向する部分であって、たとえば、周縁部や中間部に設けることができる。このパック電池は、嵌着突出部を嵌合凹部に嵌合させる状態でエンドプレートとケースとを定位置に連結する。さらに、定位置に連結されるエンドプレートとケースとを接着剤で固定し、あるいは溶着し、あるいはまたネジ止めして強固に固定することができる。
【0033】
以上のように、エンドプレート3をケース2の定位置に連結するパック電池は、リード5をエンドプレート3の定位置に連結し、電池1をケース2の電池ホルダ7でケース2の定位置に連結することにより、リード5を電池1の定位置に配置して、簡単に電池1の電極に連結できる特徴が実現できる。ただ、本発明のパック電池は、エンドプレートをケースの定位置に連結する構造を以上の構造に特定しない。パック電池は、エンドプレートをケースの定位置に連結できる他の全て構造でエンドプレートとケースを連結することができる。
【0034】
エンドプレート3は、リード5を定位置に連結している。エンドプレートがリード5を定位置に固定する状態を図7ないし図11に示す。これらの図のエンドプレート3は、リード5の両側に係止部12を設け、この係止部12でリード5を定位置に連結している。係止部12は、図11の断面図に示すように、リード5の両側縁を係止するL字状に成形された凸部である。この形状の係止部12は、プラスチック製のエンドプレート3に一体的に成形して設けられる。図のエンドプレート3は、電池1の端部に連結される連結部5aの両側に係止部12を設けている。このエンドプレート3は、リード5を上から係止部12に挿入して、すなわち、リード5の両端縁を係止部12に挿入する状態でスライドさせて簡単に連結できる。ただし、本発明のパック電池は、エンドプレートにリードを接着して連結し、あるいは嵌着して連結し、あるいは粘着テープ等を介して定位置に連結することもできる。
【0035】
図1と図2のパック電池は、図7ないし図11に示すように、エンドプレート3の内側面にリード5の連結部5aを連結している。図のパック電池は、電池1を第1グループの電池1Aと第2グループの電池1Bに分離している。図のパック電池は、回路基板4に接近する側の電池1と、回路基板4から離れる側の電池1とで第1グループの電池1Aと第2グループの電池1Bに分離している。図において、回路基板4側の上2行の電池1を第1グループの電池1Aとして、回路基板4から離れる側の下2行の電池1を第2グループの電池1Bとしている。
【0036】
第1グループの電池1Aに連結部5aを接続している第1のリード5Aの引出し部5bは、エンドプレート3の内側面に配置される。第2グループの電池1Bに連結部5aを接続している第2のリード5Bの引出し部5bは、エンドプレート3を貫通して外側面に配置している。エンドプレート3は、図9に示すように、第2のリード5Bの引出し部5bを挿通する貫通孔13を開口しており、この貫通孔13にリード5Bの引出し部5bを挿通して、エンドプレート3の内側に第2のリード5Bの連結部5aを、外側に第2のリード5Bの引出し部5bを配置している。さらに、図9のエンドプレート3は、外側に引き出された第2のリード5Bの引出し部5bを案内する嵌入凹部14を設けている。この構造のエンドプレート3は、第1のリード5Aの引出し部5bを内側に、第2のリード5Bの引出し部5bを外側に配置して絶縁し、絶縁された引出し部5b、5bが回路基板4に接続される。
【0037】
第1のリード5Aと第2のリード5Bは、電池1の電極に接続される連結部5aに、回路基板4に接続される引出し部5bを連結した形状に金属板を裁断して製作される。第1のリード5Aと第2のリード5Bは、幅の広い連結部5aに幅の狭い引出し部5bを連結した4本電池連結用のリードと、引出し部5bと連結部5aの幅を同じ幅とする2本電池連結用のリードからなる。4本電池連結用のリードは、図において上下左右に隣接する4本の電池1の電極に溶接等の方法で接続される。この4本電池連結用のリードは、上下に配置される2本の電池1を並列に接続して、さらに左右に位置する2本の電池1を直列に接続する。2本電池連結用のリードは、図において上下に位置する電池1の電極に溶接等の方法で接続されて、2本の電池1を並列に接続する。2本電池連結用のリードは出力端子(図示せず)に接続される。
【0038】
パック電池は、エンドプレート3の反対側で電池1の電極に第3のリード5Cを連結している。第3のリード5Cは、縦1列の電池1の電極に接続されて、上端を回路基板4に接続する。第3のリード5Cは、2本の電池1を並列に接続して、さらに並列に接続している2本の電池1を直列に接続する。すなわち、上2行の電池1を並列に、さらに、下2行の電池1も並列に接続し、さらに、上2行と下2行の電池1を互いに直列に接続する。第1のリード5Aと第2のリード5Bは、上2行の電池1を並列に、さらに、下2行の電池1も並列に接続して、隣の列にある2個の電池1を直列に接続する。したがって、図のパック電池は、第3のリード5Cで上下の電池1を直列に接続して、第1のリード5Aと第2のリード5Bで左右の電池1を直列に接続する。
【0039】
以上のパック電池は、以下のようにして、エンドプレート3とリード5を連結する。
(1) エンドプレート3の定位置に、第1のリード5Aと第2のリード5Bを連結する。このとき、第1のリード5Aの引出し部5bは、エンドプレート3の内側に配置し、第2のリード5Bの引出し部5bは、エンドプレート3の貫通孔13に挿通して外側に引き出し、嵌入凹部14に案内してエンドプレート3の外側に配置する。
(2) ケース2の電池ホルダ7に電池1を挿入して、電池1をケース2に収納する。
(3) ケース2の充填室22に接着材を充填して、電池1を接着材で連結する。
(4) ケース2の開口部8にエンドプレート3を連結する。エンドプレート3は、ネジ止してケース2に連結される。
(5) 第1のリード5Aと第2のリード5Bの連結部5a、5aを、電池1の電極にスポット溶接し、あるいはレーザー溶接して連結する。
(6) ケース2の反対側の開口部8に第3のリード5Cを配置し、電池1の電極にスポット溶接し、あるいはレーザー溶接して連結する。
【0040】
以上の構造のエンドプレート3は、別の部品を使用することなく、第1のリード5Aと第2のリード5Bの引出し部5b、5bを絶縁して配置できる。ただし、本発明のパック電池は、図12ないし図15に示すように、リード5の全体をエンドプレート3の外側に配置することもできる。このパック電池は、第2のリード5Bの引出し部5bをエンドプレート3に貫通させない。このパック電池は、エンドプレート3の外側に第1のリード5Aと第2のリード5Bを配置する。第2のリード5Bの引出し部5bを第1のリード5Aから絶縁するために、第2のリード5Bの引出し部5bと、第1のリード5Aとの間に絶縁材17を積層している。絶縁材17は、紙シートやプラスチックシートである。なお、図12ないし図15に示す実施例において、前述の実施例と同じ構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
これ等の図に示すエンドプレート3は、リード5を定位置に連結するために、リード5をはめ込んで固定する嵌着凹部18を外側面に設けている。嵌着凹部18は、リード5の連結部5aを嵌着するように、その内形を連結部5aの外形にほぼ等しくしている。図のリード5は連結部5aの全体形状を四角形とするので、嵌着凹部18も四角形としている。さらに、図12と図13のエンドプレート3は、絶縁材17も嵌着凹部18にはめ込んで、定位置に嵌着するようにしている。絶縁材17は、エンドプレート3の嵌着凹部18に嵌着される連結部5aをカバーする形状としている。図12と図13のエンドプレート3は、第1のリード5Aを3列に並べて連結している。絶縁材17は、3列に並べている第1のリード5Aの連結部5aをカバーする本体カバー部17Aを、幅の狭いアーム部17Bで連結している。さらに、絶縁材17は、エンドプレート3の電極窓11と同じ位置に電極窓17aを開口している。この絶縁材17は、第1のリード5Aに積層する状態で、第1のリード5Aを電池1の電極に溶接して固定できる。絶縁材17の電極窓17aから第1のリード5Aを外部に表出できるからである。図のエンドプレート3は、絶縁材17の本体カバー部17Aとアーム部17Bをはめ込んで定位置に連結する嵌着凹部18を設けている。絶縁材17の本体カバー部17Aは、図12と図13に示すように、第1のリード5Aの連結部5aの表面に積層されて、第2のリード5Bの引出し部5bを第1のリード5Aから絶縁する。
【0042】
第2のリード5Bの引出し部5bは、電極窓17aの間に配置される。引出し部5bが電極窓17aを閉塞する位置にあると、第2のリード5Bの引出し部5bが電極窓17aから第1のリード5Aにショートしやすく、また、第2のリード5Bをエンドプレート3に連結する状態で、第1のリード5Aを電池1に溶接して連結できなくなるからである。
【0043】
エンドプレート3は、電池1の端部に位置して電極窓11を設けている。凸部電極側の電極窓11Aは、凸部電極を挿通できるように、凸部電極の外形にほぼ等しい。凸部電極と反対側の平面電極を挿通する平面電極側の電極窓11Bは、電池1の平面電極側を挿通して、平面電極をエンドプレート3の外側面に位置させる。したがって、平面電極側の電極窓11Bは、電池1の外形にほぼ等しい大きさに開口される。凸部電極と平面電極は、電極窓11に挿通されて、エンドプレート3の外側面に積層されるリード5に接触する。この状態で、凸部電極と平面電極は、リード5の連結部5aに溶接して連結される。凸部電極側の電極窓11Aを、凸部電極の外形にほぼ等しくしているエンドプレート3は、凸部電極の外周に入れる絶縁リングを省略できる。エンドプレート3が、凸部電極の周囲にあるカシメ凸部を絶縁するので、凸部電極に連結するリード5が、かしめ凸部に接触してショートするのを阻止できるからである。
【0044】
以上のように、リード5をエンドプレート3の外側に配置しているパック電池は、以下のようにして、エンドプレート3とリード5を固定する。
(1) ケース2の電池ホルダ7に電池1を挿入する。
(2) ケース2の充填室22に接着材を充填して、電池1に接着する。
(3) ケース2の開口部8にエンドプレート3を固定する。エンドプレート3はケース2の開口部8を閉塞して、ケース2から電池1を出ないようにする。
(4) エンドプレート3の外側に設けている嵌着凹部18に第1のリード5Aを入れて定位置に連結する。絶縁材17をエンドプレート3の嵌着凹部18に入れて、エンドプレート3の定位置に連結する。第2のリード5Bを嵌着凹部18に入れて、エンドプレート3の定位置に連結する。
(5) 第1のリード5Aと第2のリード5Bの連結部5aを、スポット溶接などの方法で電池1の電極に連結する。
(6) ケース2の反対側の開口部8に第3のリード5Cを配置し、電池1の電極にスポット溶接し、あるいはレーザー溶接して連結する。
【0045】
以上の方法は、第1のリード5Aと第2のリード5Bの連結部5aをひとつの工程で、電池1の電極に溶接して連結するので、リード5を能率よく電池1に連結できる。ただ、第1のリード5Aをエンドプレート3の外側に連結して、第1のリード5Aを電池1の電極に連結し、その後、絶縁材17を積層した後、第2のリード5Bをエンドプレート3に連結して、第2のリード5Bの連結部5aを電池1の電極に連結することもできる。
【0046】
回路基板4は、各々の電池電圧を検出して、電池1の充放電を制御する電圧検出回路を実装している。図のパック電池は、全ての電池電圧を別々に独立して電圧検出回路で検出する。電池1をリチウムイオン二次電池とするパック電池は、全ての電池電圧を検出して、充放電を理想的な状態で制御できる。図のパック電池は、2個の電池1を並列に接続しているので、並列接続している電池1は一緒に電圧が検出される。リチウムイオン二次電池は、満充電された状態と、完全に放電された状態を電圧で検出できる。複数の電池1を直列に接続しているパック電池は、全ての電池1を同じ電流で充放電させる。ただ、全ての電池1が同じ状態で充放電されるとは限らない。全ての電池1が同じように劣化せず、また、製造工程においても全く同じ特性には製作されない。このため、直列に接続された複数の電池1は、実質的に満充電できる容量や内部抵抗等にばらつきがある。このような電池1を同じ電流で充放電すると、いずれかの電池1が先に満充電され、あるいは完全に放電される。
【0047】
電圧検出回路で全ての電池電圧を検出しながら、充放電をコントロールするパック電池は、全ての電池1の過充電と過放電を防止しながら充放電する。電圧検出回路は、パック電池を充電しているときに、いずれかの電池電圧が最高電圧まで上昇すると充電電流を遮断する。また、放電しているときは、いずれかの電池1の電圧が最低電圧まで低下すると放電電流を遮断する。
【0048】
電池1をニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池とするパック電池においても、全ての電池電圧を検出しながら充放電を制御して、全ての電池1の過充電と過放電を防止しながら使用できる。したがって、本発明は電池をリチウムイオン二次電池に特定しない。
【0049】
回路基板4は、ケース2外周のひとつの面に固定される。図のパック電池は、ケース2の上面に回路基板4を固定している。図のパック電池は、ケース2の上面に基板ホルダ19を固定し、この基板ホルダ19内に回路基板4を固定している。基板ホルダ19は、プラスチックでもって、ケース2と別に成形された上方開口の箱である。基板ホルダ19の内部に固定している回路基板4は、リード線20を介してリード5の引出し部5bの先端に連結している。図のパック電池は、回路基板4にリード線20を半田付けして連結して、リード線20をリード5の引出し部5bに半田付けして連結している。
【0050】
リード5は、引出し部5bを回路基板4に接続するので、引出し部5bを回路基板4の方向に延長している。引出し部5bは、電池1から負荷に流す負荷電流を流さない。したがって、引出し部5bは連結部5aよりも幅を狭くして、回路基板4に向かって延長される。
【0051】
さらに、図1と図2のパック電池は、電池1とケース2と回路基板4と基板ホルダ19からなる電池組立21を外ケース6に収納している。外ケース6は、第1ケース6Aと第2ケース6Bを連結して、内部に電池組立21を収納している。第1ケース6Aと第2ケース6Bは、四角い底板の周囲に周壁を設けた形状にプラスチックを成形している。周壁をネジで固定して、内部に電池組立21を収納している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例にかかるパック電池の分解斜視図である。
【図2】図1に示すパック電池の電池組立の背面斜視図である。
【図3】図1に示すパック電池のケースの斜視図である。
【図4】図3に示すケースの正面図である。
【図5】図3に示すケースの要部拡大斜視図である。
【図6】本発明の他の実施例にかかるパック電池のケースの拡大斜視図である。
【図7】本発明の一実施例にかかるパック電池のエンドプレートを外側から見た図である。
【図8】図7に示すエンドプレートを内側から見た図である。
【図9】図7に示すエンドプレートの分解斜視図である。
【図10】図8に示すエンドプレートの分解斜視図である。
【図11】図8に示すエンドプレートのA−A線断面図である。
【図12】本発明の他の実施例にかかるパック電池の分解斜視図である。
【図13】図12に示すパック電池の背面斜視図である。
【図14】本発明の他の実施例にかかるパック電池のエンドプレートを内側から見た図である。
【図15】図14に示すエンドプレートを外側から見た図である。
【符号の説明】
【0053】
1…電池 1A…第1グループの電池
1B…第2グループの電池
2…ケース
3…エンドプレート
4…回路基板
5…リード 5A…第1のリード
5B…第2のリード
5C…第3のリード
5a…連結部
5b…引出し部
6…外ケース 6A…第1ケース
6B…第2ケース
7…電池ホルダ
8…開口部
10…ストッパ凸部
11…電極窓 11A…凸部電極側の電極窓
11B…平面電極側の電極窓
12…係止部
13…貫通孔
14…嵌入凹部
15…ネジ孔
16…ネジ挿入部
17…絶縁材 17A…本体カバー部
17B…アーム部
17a…電極窓
18…嵌着凹部
19…基板ホルダ
20…リード線
21…電池組立
22…充填室
23…貫通部
24…底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池(1)を端面が同一の面に位置する平行な姿勢でケース(2)に縦横に並べて収納しているパック電池であって、
ケース(2)は、内部に収納している電池(1)を外周で保持して定位置に配置する複数の電池ホルダ(7)をプラスチックで一体的に成形して縦横に配列して設けており、
互いに隣接して周囲に配置される3本又は4本の電池(1)で囲まれる内側にあり、かつ、周囲に配置される3又は4本の電池ホルダ(7)で囲まれる領域に、接着材の充填室(22)を設けており、さらにこの充填室(22)に連結するように電池ホルダ(7)に貫通部(23)を設けており、充填室(22)に接着材を充填して、接着材を貫通部(23)から隣接する電池(1)の表面に接着しており、この接着材でもって充填室(22)の周囲に配置される電池(1)を互いに連結してなるパック電池。
【請求項2】
隣接する電池(1)の端部にリード(5)を溶接して、リード(5)で電池(1)を直列または並列に接着している請求項1に記載されるパック電池。
【請求項3】
充填室(22)に充填される接着材がシリコン系、ウレタン系、エポキシ系の何れかまたはこれ等を混合してなる接着材である請求項1に記載されるパック電池。
【請求項4】
貫通部(23)がスリットと貫通孔のいずれか又は両方である請求項1に記載されるパック電池。
【請求項5】
電池ホルダ(7)に一体的に成形して充填室(22)の底板(24)を設けている請求項1に記載されるパック電池。
【請求項6】
充填室(22)に温度センサーを配置している請求項1に記載されるパック電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−100147(P2006−100147A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285561(P2004−285561)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】