説明

パッシブ型の車載器

【課題】路側機器の仕様は変更することなく、パッシブ型の車載器から出力されるアップリンクの電波強度を強くする。
【解決手段】固定局アンテナ3から出力された変調波MW及び搬送波CWは、車載器100の送受信アンテナ101で受信され、セミアクティブ回路120をそのまま通過してから、車載器回路110に伝送される。車載器回路110は、搬送波CWを反射して変調することにより返送用の車載器出力電波UWを作り、この車載器出力電波UWはセミアクティブ回路120で増幅されてから送受信アンテナ101から固定局アンテナ3に向けて送信される。このようなセミアクティブ回路120を介装することにより、アップリングの電波強度を強くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブ型の車載器に関し、路側機器から出力される電波強度を変更することなく、車載器から出力する電波強度を強くすることができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
ノンストップ料金収受システムとして、自動料金収受(ETC:Electronic Toll Collection )システムや電子式道路課金(ERP:Electronic Road Pricing )システムがある。
このようなノンストップ料金収受システムでは、地上側に設置した路側機器と、車両に搭載した車載器との間で無線通信をすることにより、課金処理が行われ、車両はノンストップで走行することができる。
【0003】
車載器としては、発振器を有するアクティブ型の車載器と、発振器を有さないパッシブ型の車載器がある。
パッシブ型の車載器では、路側機器から送信されてきた電波(ダウンリンクの電波)を受信すると、この電波を反射すると共に変調し、このように反射して変調した電波をアップリンクの電波として路側機器に送信(返送)している。
【0004】
ここで、パッシブ型の車載器を採用した電子式道路課金(ERP:Electronic Road Pricing )システムについて説明する。
ERPシステムは、予め決めた規制区域(例えば都心部)に入る車両に対して課金をするシステムである。このような課金をすることにより、規制区域(都心部等)への車両の流入を抑制して渋滞緩和を図ったり、交通整備の財源確保を図っている。
【0005】
ERPシステムでは、図5に示すように、道路1上に跨がって、門型の構造物であるガントリ2が設置され、このガントリ2に固定局アンテナ3を備えている。
車両4にはパッシブ型の車載器5を備えている。
車両4がガントリ2の下を走行すると、固定局アンテナ3と車載器5との間で準マイクロ波帯(例えば2360MHz)の電波により通信が行われ、ノンストップ状態で自動課金が行われる。
【0006】
ここで、固定局アンテナ3と車載器5との通信状態を、タイムチャートである図6を参照して説明する。
固定局アンテナ3からは、変調波MWとこの変調波MWに続く搬送波(無変調波)CWとが、通信1スロット分の電波として送信される。変調波MWには、ERPシステムの入口であることを示す情報等が情報として含まれている。
車載器5では、変調波MWを受信・検波することによりERPシステムの入口に達したことを判定する。そこで、車載器5は、搬送波CWを受信すると、この搬送波CWを反射・変調して車載器出力電波UWとして出力する。この車載器出力電波UWには、当該車載器5のID情報等が情報として含まれている。
固定局アンテナ3が車載器出力電波UWを受信することで、課金処理が行われる。
【0007】
【特許文献1】特開平8−221623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したパッシブ型の車載器5では、発振回路を有していないため、装置構成が簡単で安価であるという利点がある。
しかし、このパッシブ型の車載器5では、固定局アンテナ3から送信されてきた搬送波CWを、そのまま電気的に反射して車載器出力電波UWとして固定局アンテナ3に返送しているため、車載器出力電波UWのパワーが弱い。
このため、他系の無線システム(例えば広域無線LAN)から、ERPシステムで用いている電波の周波数に近い電波が侵入してくると、電波の干渉が発生して、課金処理が確実にできなくなる懸念がある。
【0009】
なお、固定局アンテナ3から出力する電波強度を強くすれば、それに応じて車載器出力電波UWも強くなり、電波干渉の不具合を防止できるとも考えられるが、現実的には、固定局アンテナ3から出力する電波強度を強くすることはできない。
【0010】
その理由を説明すると次の通りである。
車載器に不正カードが挿入されていたり、残高が不足していたりすること等により、適正な課金処理をすることができない不正車両が通過した場合に、このような不正車両を検出するシステムが、ガントリ2に近接して設置されている。
この不正車両を検出するシステムにおいても、電波を車両に向けて送信し、当該車両や当該車両に搭載した車載器からの返信電波を受信することにより、不正車両であるかどうかを判断している。
【0011】
このとき、固定局アンテナ3から出力する電波強度を強くしたとすると、不正車両を検出するシステムの電波が乱されてしまい、不正車両を検出することができなくなってしまう。このため、固定局アンテナ3から出力する電波強度を強くすることはできないのである。
【0012】
また、既に多数の車載器が普及して実稼働しており、このような実稼働している車載器は、現状の電波強度に対応した機器構成となっており、電波強度を変えると動作が不安定になる恐れもあるからである。
【0013】
本発明は、上記従来技術に鑑み、路側機器(固定局アンテナ)については変更を加えることなく、車載器から路側機器に返送する車載器出力電波の強度を強くすることができる、パッシブ型の車載器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明の構成は、
路側機器から送信されてくる電波を受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した電波を反射して変調することにより返送用の電波を作り、この返送用の電波を出力して前記アンテナから送信させる車載器回路と、
を有するパッシブ型の車載器において、
前記アンテナが受信した電波をそのまま通過させて前記車載器に伝送すると共に、前記車載器から出力された返送用の電波を増幅してから前記アンテナに伝送するセミアクティブ回路を備えたことを特徴とする。
【0015】
また本発明の構成は、
前記車載器回路には、
前記アンテナで受信した電波が入力されるとウェイク・アップ信号を出力する制御部と、
前記ウェイク・アップ信号が出力されると、前記セミアクティブ回路に電力供給をするレギュレータとが備えられていることを特徴とする。
【0016】
また本発明の構成は、
前記セミアクティブ回路は、
第1ポートと第2ポートと第3ポートを有しており、第1ポートに入力した電波を第2ポートから出力し、第2ポートに入力した電波を第3ポートに出力し、第3ポートに入力した電波を第1ポートに出力する特性を有している第1と第2のサーキューレータと、
電波を増幅するアンプとを有し、
第1のサーキュレータは、前記アンテナと前記車載器回路とを接続する伝送ラインに介装されており、その第1ポートが前記アンテナ側に配置され、その第2ポートが前記車載器回路側に配置されており、
第2のサーキュレータは、前記伝送ラインのうち第1のサーキュレータの介装位置よりも車載器回路側に介装されており、その第1ポートが前記アンテナ側に配置され、その第2ポートが車載器回路側に配置されており、
前記アンプは、その入力端子が第2のサーキュレータの第3ポートに接続されており、その出力端子が第1のサーキュレータの第3ポートに接続されていることを特徴とする。
【0017】
また本発明の構成は、
前記第1と第2のサーキュレータは、
矩形の枠形状となっているマイクロストリップラインで形成したリング方向性結合器と、前記リング方向性結合器の各辺に装荷されたマイクロストリップラインで形成した多数の周期性のスタブと、前記リング方向性結合器の四隅に形成されたマイクロストリップラインで形成した4つのポート端子と、前記ポート端子の一つを終端する終端抵抗とでなる、装荷型リング方向性結合器で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、アンテナと車載器回路との間に、アンテナで受信したダウンリンクの電波はそのまま通過させて車載器回路に伝送し、車載器回路から出力されたアップリンクの電波は増幅してからアンテナに伝送するセミアクティブ回路を備えたため、路側機器の仕様は変更することなく、車載器からアンテナに返送するアップリンクの電波強度を強くすることができる。この結果、アップリンクの電波は、他系の無線システムの電波に干渉されることがなくなり、確実な課金処理をすることができる。
【0019】
更に、セミアクティブ回路に用いるサーキュレータとして、マイクロストリップラインにより構成した小型で熱に強い装荷型リング方向性結合器を用いることにより、セミアクティブ回路ひいては車載器を小型にすることができ、また、熱的にも強い車載器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の実施例1に係る、パッシブ型の車載器100を示す。この車載器100は、送受信アンテナ101と、車載器回路110と、セミアクティブ回路120を有している。
これら送受信アンテナ101と、車載器回路110と、セミアクティブ回路120は、伝送ラインLにより電磁的に接続されている。
【0022】
車載器100のうち、車載器アンテナ101と車載器回路110は、従来の車載器にも備えられている構成部品(構成回路)である。実施例1の車載器100では、車載器アンテナ101と車載器回路110との間に、新たにセミアクティブ回路120を備えていることを特徴としている。
【0023】
送受信アンテナ101は、路側機器である固定局アンテナ3から送信されてくる変調波MWと搬送波CWを受信すると共に、車載器回路110から出力された車載器出力電波UWを固定局アンテナ3に向けて送信する。
【0024】
セミアクティブ回路120は、詳細構成は後述するが、送受信アンテナ101にて受信した変調波MWと搬送波CWをそのまま通過させて車載器回路110に伝送すると共に、車載器回路110から出力された車載器出力電波UWを増幅して送受信アンテナ101に伝送する。
つまり、セミアクティブ回路120は、ダウンリンクの電波はそのまま通過させて伝送し、アップリンクの電波は増幅してから伝送する特性を有している。
なおセミアクティブ回路120の具体的構成例は、後の実施例3,4にて説明する。
【0025】
車載器回路110は、スイッチ回路111と、検波器112と、アンプ113と、変調器114と、制御部(CPU)115を有している。
【0026】
変調器114は、基板の上に、銅箔のトランスミッションラインを形成して構成したものである。トランスミッションラインは矩形形状となっており、電波を伝送する方向の長さは、搬送波CWの波長をλとすると、λ/4となっている。したがって、この変調器114、即ち、トランスミッションラインに搬送波CWが入射してから反射すると、反射した搬送波CWの位相は、入射時の位相に対して位相がλ/2ずれる(位相が反転する)。
【0027】
固定局アンテナ3から送信されてくる変調波MWと搬送波CWを、送受信アンテナ101で受信すると、受信された変調波MWと搬送波CWは、セミアクティブ回路120を通過して車載器回路110に伝送される。
【0028】
車載器回路110に変調波MWが入力すると、この変調波MWはスイッチ回路111を介して検波器112に入力される。検波器112は、変調波MWを検波して受信データaを求め、この受信データaはアンプ113にて増幅されてから制御部115に入力される。
【0029】
制御部115は、受信データaを受信することにより、車両がERPシステムの入口に到達したこと等を判定し、デジタル信号である送信データbを出力する。この送信データbには、当該車載器100のID情報等が含まれている。
【0030】
送信データbはスイッチ回路111に送られ、スイッチ回路111は送信データbのハイ(H)、ロー(L)に応じてスイッチング動作する。
スイッチ回路111が開放状態(OFF状態)になると、車載器回路110に入力されてきた搬送波CWはスイッチ回路111にて反射され、反射された電波の位相は、入力時の位相と同相となる。
またスイッチ回路111が投入状態(ON状態)になると、車載器回路110に入力されてきた搬送波CWは変調器(トランスミッションライン)114にて反射され、反射された電波の位相は、入力時の位相と逆相になる。
【0031】
このようにして、送信データbに応じてスイッチ回路111をスイッチング動作させると、搬送波CWは反射位置が異なることに起因して反射電波の位相が変化し、二位相偏移変調(BPSK:Binary phase-shift keying)が行われる。このように搬送波CWを二位相偏移変調して作った反射電波が、車載器出力電波UWとなって車載器回路110から出力される。
【0032】
車載器回路110から出力された車載器出力電波UWは、セミアクティブ回路120にて増幅されてから送受信アンテナ101に伝送され、送受信アンテナ101から送信(返送)される。
車載器出力電波UWは、セミアクティブ回路120により増幅されて電波強度が強くなっているため、他系の無線システム(例えば広域無線LAN)から電波が侵入してきたとしても、侵入してきた電波と干渉することなく、固定局アンテナ3で確実に受信される。このため、確実な課金処理をすることができる。
【0033】
実施例1の車載器100では、送受信アンテナ101や車載器回路110は、従来の車載器にも使用されている構成部品(構成回路)であるため、従来と同一構成部分である送受信アンテナ101や車載器回路110は、従来の設計技術をそのまま使用することができる。よって、従来技術で構築してきた、信頼性の高い設計・製造の経験やノウハウをそのまま活かすことができる。この結果、実施例1の車載器100も信頼性の高い製品となる。
【0034】
また固定局アンテナ3などの路側機器については仕様の変更を行わないので、既に実稼働している従来の車載器も、そのまま使用することができる。
更に、固定局アンテナ3から出力される電波強度を強くしているわけではないため、不正車両を検出するシステム等に、悪影響を与えることはない。
【実施例2】
【0035】
次に本発明の実施例2に係る、パッシブ型の車載器100aを、図2を参照して説明する。
【0036】
実施例2の車載器100aは、実施例1の車載器100に対してウェイク・アップ(Wake-Up)機能を付加したものである。
【0037】
車載器100aの車載器回路110aには、レギュレータ116が備えられている。レギュレータ116は、電圧調整した電力を、車載器回路110a内のアンプ113やその他の電力消費素子に供給すると共に、セミアクティブ回路120に供給する機能を有している。
【0038】
また、制御部115は、車載器回路110aに変調信号MWが入力されて検波器112から受信データaが入力されると、ウェイク・アップ信号cをレギュレータ116に出力する機能を有している。この制御部115は、送受信アンテナ101にて受信した電波MW,CWが車載器回路110に入力している期間中にわたり、ウェイク・アップ信号cを継続して出力する。
【0039】
レギュレータ116は、制御部115からウェイク・アップ信号cが出力されていないときには、電力供給を停止し、制御部115からウェイク・アップ信号cが出力されると、車載器回路110a内のアンプ113等やセミアクティブ回路120に、電圧調整した電力を供給する。
【0040】
このため、車載器100aと、固定局アンテナ3との間で電波の送受をして通信をする期間においてのみ、セミアクティブ回路120に電力供給がされ、他の期間ではセミアクティブ回路120には電力供給はされない。このため、セミアクティブ回路120を備えていても、無駄に電力消費がされず消費電力を低減させることができ、電源(車両のバッテリ)の過放電を防止することができる。
【0041】
なお他の部分の構成は、実施例1と同様であるため、同一機能を果たす部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例3】
【0042】
次に、実施例1及び実施例2の車載器100,100aに用いているセミアクティブ回路120の具体的構成を、図3を参照して説明する。
図3に示すように、セミアクティブ回路120は、送受信アンテナ101と車載器回路110(または110a)とを接続する伝送ラインLに介在する状態で配置されている。
【0043】
このセミアクティブ回路120は、2つの3ポート型のサーキュレータ121,122と、アンプ123により構成されている。
サーキュレータ121,122としては、磁化されたフェライト材料で製造された汎用のサーキュレータや、後述するような、マイクロストリップラインにより形成した、装荷型リング方向性結合器を用いることができる。
【0044】
第1のサーキュレータ121は、第1ポート♯11と、第2ポート♯12と、第3ポート♯13を有しており、第1ポート♯11に入力した電波を第2ポート♯12から出力し、第2ポート♯12に入力した電波を第3ポート♯13に出力し、第3ポート♯13に入力した電波を第1ポート♯11に出力する特性を有している。
【0045】
同様に、第2のサーキュレータ122は、第1ポート♯21と、第2ポート♯22と、第3ポート♯23を有しており、第1ポート♯21に入力した電波を第2ポート♯22から出力し、第2ポート♯22に入力した電波を第3ポート♯23に出力し、第3ポート♯23に入力した電波を第1ポート♯21に出力する特性を有している。
【0046】
第1のサーキュレータ121は、伝送ラインLに介装されており、第1ポート♯11が送受信アンテナ101側に配置され、第2ポート♯12が車載器回路110(110a)側に配置されている。
第2のサーキュレータ122は、伝送ラインLのうち第1のサーキュレータ121の介装位置よりも車載器回路110(110a)側に介装されており、第1ポート♯21が送受信アンテナ101側に配置され、第2ポート♯22が車載器回路110(110a)側に配置されている。
【0047】
電波を増幅する機能を有するアンプ123は、入力端子が第2のサーキュレータ122の第3ポート♯23に接続されており、出力端子が第1のサーキュレータ121の第3ポート♯13に接続されている。
【0048】
かかる構成のセミアクティブ回路120では、送受信アンテナ101にて受信した変調波MWと搬送波CWは、第1のサーキュレータ121の第1ポート♯11→第1のサーキュレータ121の第2ポート♯12→第2のサーキュレータ122の第1ポート♯21→第2のサーキュレータ122の第2ポート♯22という経路を経て伝送される。つまり、送受信アンテナ101にて受信した変調波MWと搬送波CWは、セミアクティブ回路120を通過して、車載器回路110(110a)に伝送される。このとき、サーキュレータ121,122での伝送損失は殆ど無い。
【0049】
車載器回路110(110a)から出力された車載器出力電波UWは、第2のサーキュレータ122の第2ポート♯22→第2のサーキュレータ122の第3ポート♯23→アンプ123→第1のサーキュレータ121の第3ポート♯13→第1のサーキュレータ121の第1ポート♯11という経路を経て送受信アンテナ101に向けて伝送される。
このとき、車載器回路110(110a)から出力された車載器出力電波UWは、アンプ123にて増幅されるため、増幅された電波強度の強い車載器出力電波UWが送受信アンテナ101から送信される。
【0050】
次に、サーキュレータ121,122として使用することができる、マイクロストリップラインにより形成した、装荷型リング方向性結合器200について、図4を参照して説明する。
【0051】
図4に示す装荷型リング方向性結合器200は、図3に示すサーキュレータ121,122として用いるものである。
【0052】
この装荷型リング方向性結合器200は、基板の上に、銅箔のマイクロストリップラインを形成して構成したものである。
更に説明すると、装荷型リング方向性結合器200は、矩形の枠形状となっているリング方向性結合器201と、このリング方向性結合器201の各辺に装荷された多数の周期性のスタブ202と、リング方向性結合器200の四隅に形成された4つのポート端子203a,203b,203c,203dと、ポート端子203dを終端する終端抵抗204とで構成されている。
【0053】
方向性結合器201の一辺の長さは、電波MW,CW,UWの波長をλとすると、λ/4となっている。
そして、4つのポート端子203a,203b,203c,203dの端部が、第1〜第4のポート♯1〜♯4となっている。
【0054】
そして、装荷型リング方向性結合器200の第1ポート♯1,第2ポート♯2,第3ポート♯3が、第1のサーキュレータ121の第1ポート♯11,第2ポート♯12,第3ポート♯13に対応すると共に、第2のサーキュレータ122の第1ポート♯21,第2ポート♯22,第3ポート♯23に対応している。
つまり、装荷型リング方向性結合器200は、第1ポート♯1に入力した電波を第2ポート♯2から出力し、第2ポート♯2に入力した電波を第3ポート♯3に出力し、第3ポート♯3に入力した電波を第1ポート♯1に出力する、サーキュレータとしての特性を有している。
【0055】
この装荷型リング方向性結合器200では、周期性のスタブ202をリング方向性結合器201に装荷しているため、周期性スタブを装荷していないリング方向性結合器に比べて、全体のサイズが小さくなっている。
また、装荷型リング方向性結合器200は、基板の上に、銅箔のマイクロストリップラインを形成して構成したものであり、熱に対して強い
ちなみに、磁化したフェライトで構成した汎用のサーキュレータでは、その磁気特性が熱により劣化し易いという問題がある。
【0056】
かかる構成となっている小型の装荷型リング方向性結合器200を、セミアクティブ回路120のサーキュレータ121,122として採用すれば、セミアクティブ回路120の小型化、ひいては車載器100(100a)の小型化を図ることができる。
また装荷型リング方向性結合器200は熱に強いので、熱的に強い車載器100(100a)を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明はERPシステムに用いるパッシブ型の車載器のみならず、ETCシステムに用いるパッシブ型の車載器にもそのまま適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係るパッシブ型の車載器を示すブロック構成図。
【図2】本発明の実施例2に係るパッシブ型の車載器を示すブロック構成図。
【図3】本発明の実施例1,2で用いるセミアクティブ回路を示すブロック構成図。
【図4】セミアクティブ回路のサーキュレータとして用いる装荷型方向性結合器を示す回路構成図。
【図5】ERPシステムを示す概要図。
【図6】ERPシステムにおける通信状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0059】
1 道路
2 ガントリ
3 固定局アンテナ
4 車両
5 車載器
100,100a 車載器
101 送受信アンテナ
110,110a 車載器回路
111 スイッチ回路
112 検波器
113 アンプ
114 変調器
115 制御部
116 レギュレータ
120 セミアクティブ回路
121,122 サーキュレータ
123 アンプ
200 装荷型リング方向性結合器
201 リング方向性結合器
202 スタブ
203a〜203d ポート端子
204 終端抵抗
L 伝送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側機器から送信されてくる電波を受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した電波を反射して変調することにより返送用の電波を作り、この返送用の電波を出力して前記アンテナから送信させる車載器回路と、
を有するパッシブ型の車載器において、
前記アンテナが受信した電波をそのまま通過させて前記車載器に伝送すると共に、前記車載器から出力された返送用の電波を増幅してから前記アンテナに伝送するセミアクティブ回路を備えたことを特徴とするパッシブ型の車載器。
【請求項2】
前記車載器回路には、
前記アンテナで受信した電波が入力されるとウェイク・アップ信号を出力する制御部と、
前記ウェイク・アップ信号が出力されると、前記セミアクティブ回路に電力供給をするレギュレータと、
が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のパッシブ型の車載器。
【請求項3】
前記セミアクティブ回路は、
第1ポートと第2ポートと第3ポートを有しており、第1ポートに入力した電波を第2ポートから出力し、第2ポートに入力した電波を第3ポートに出力し、第3ポートに入力した電波を第1ポートに出力する特性を有している第1と第2のサーキューレータと、
電波を増幅するアンプとを有し、
第1のサーキュレータは、前記アンテナと前記車載器回路とを接続する伝送ラインに介装されており、その第1ポートが前記アンテナ側に配置され、その第2ポートが前記車載器回路側に配置されており、
第2のサーキュレータは、前記伝送ラインのうち第1のサーキュレータの介装位置よりも車載器回路側に介装されており、その第1ポートが前記アンテナ側に配置され、その第2ポートが車載器回路側に配置されており、
前記アンプは、その入力端子が第2のサーキュレータの第3ポートに接続されており、その出力端子が第1のサーキュレータの第3ポートに接続されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパッシブ型の車載器。
【請求項4】
前記第1と第2のサーキュレータは、
矩形の枠形状となっているマイクロストリップラインで形成したリング方向性結合器と、前記リング方向性結合器の各辺に装荷されたマイクロストリップラインで形成した多数の周期性のスタブと、前記リング方向性結合器の四隅に形成されたマイクロストリップラインで形成した4つのポート端子と、前記ポート端子の一つを終端する終端抵抗とでなる、装荷型リング方向性結合器で構成したことを特徴とする請求項3に記載のパッシブ型の車載器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−140375(P2010−140375A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317828(P2008−317828)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】