パッシブ測角装置およびパッシブ測角方法
【課題】超分解能測角法の精密測角適用範囲を制限し演算負荷を抑え応答速度を高めたパッシブ測角装置とその方法を提供する。
【解決手段】受信アンテナ1および受信機2を制御し、電波放射源捜索過程で捜索範囲が所定角度ステップで分割され各角度ステップが所定周波数ステップで分割された各周波数ステップ毎の受信信号を得て、信号処理装置3で受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号に基づき電波放射源の測角を行い、受信機からの受信信号中の電波放射源の放射信号の特性を評価し各角度ステップの各周波数ステップ毎に電波放射源が検出対象か否かを示す放射信号の特性情報を生成する手段6、受信機の受信信号を受け前記特性情報に基づき検出対象の電波放射源からの放射信号か否かを考慮して受信信号中の放射信号の電波放射源の測角を行う手段4を含む。
【解決手段】受信アンテナ1および受信機2を制御し、電波放射源捜索過程で捜索範囲が所定角度ステップで分割され各角度ステップが所定周波数ステップで分割された各周波数ステップ毎の受信信号を得て、信号処理装置3で受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号に基づき電波放射源の測角を行い、受信機からの受信信号中の電波放射源の放射信号の特性を評価し各角度ステップの各周波数ステップ毎に電波放射源が検出対象か否かを示す放射信号の特性情報を生成する手段6、受信機の受信信号を受け前記特性情報に基づき検出対象の電波放射源からの放射信号か否かを考慮して受信信号中の放射信号の電波放射源の測角を行う手段4を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッシブ測角装置およびその測角方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測角装置は自己に入射する電波信号の到来方向(角度)を検出する装置であり、方向探知や電波監視などの目的に使用される。その中でもパッシブ測角装置は自ら電波を放射することなく電波放射源が放射する電波を受信する装置と信号処理により、自己の設置位置情報を元にした電波放射源の存在角度を出力する装置である。このためパッシブ測角装置は他の電波監視装置などによる探知確率を低減し、周囲環境に何ら影響を与えない状態で監視を実行できることから秘匿性に優れ、さらに送信設備が不要になるため、装置全体の小型・軽量化を図れる利点がある。
【0003】
パッシブ測角装置が監視対象とする電波放射源には、防衛用レーダー装置、秘匿通信機などが挙げられる。レーダー装置は一般に自分と探索相手との距離を測るためにパルス波を放射信号として使用している。また、秘匿通信機もその性質上、キャリアとして用いる周波数を短時間に切り替える周波数ホッピングという送信方式を使用していることが多い。そのため、パッシブ測角装置は捜索空間に広がる複数の受信信号の中からこれらの検出対象であるレーダー装置や秘匿通信機が放射するパルス波やホッピング波を検出し、これらの存在角度を定めることになる。
【0004】
これに対し、例えば防衛用レーダー装置であれば、レーダー装置への相手側からの攻撃を回避し残存する確率を増加させるために、ジャミング信号発生装置(Jamming Transponder)や欺瞞信号発生装置(デコイ)をレーダー装置と離れた場所で動作させ、これらの偽目標にミスロックを発生させるECM(Electric Counter Measure)妨害を採用する場合がある。特に近年の複雑化した電波環境では、近接周波数、または近接角度内に複数信号が存在するケースは増えている。
【0005】
これらの複雑化する電波環境の中で、パッシブ測角装置では、受信アンテナのメインビーム幅内に2波以上の電波放射源が存在する場合に、これを別々の電波放射源によるものと検出し、それぞれの方向を分離・測角できることが必要になっている。これを実現するために、従来技術として例えば下記の特許文献1に記載されているように、受信アンテナのメインビーム幅内に2波以上の電波放射源が存在する場合に、例えばMUSIC(Multiple Signal Classification)法などの超分解能測角法を用いることで分離および測角が可能としている。
【0006】
またMUSICなどの超分解能測角法を用いる場合、電波放射源の数(波源数)を測角に先立ち推定する必要があるが、これについて下記の特許文献2では、モノパルス追尾方式の受信アンテナにおいて、Δ出力とΣ出力の比率によるモノパルス角度誤差信号から、放射信号源が単一かまたは複数かを判定するとしている。
【0007】
また下記の特許文献3では、MUSIC法で超分解能測角処理する際に、得られた受信信号共分散行列の固有値の大きさから入射信号個数(波源数)を推定する方法を示している。
【0008】
さらに、下記特許文献2の第4頁、段落0020に記載のとおり、MUSCI法などの超分解能測角手法は一般にモノパルス測角法よりも信号処理の演算量が多く、処理に要する時間が長くなる。これに対処するため、特許文献2では超分解能測角法とモノパルス測角法を目標数に応じて切り替える手法が紹介されている。
【0009】
【特許文献1】特開2000−81297号公報 第6頁、段落0015〜0016
【特許文献2】特開2003−14843号公報 第3〜4頁、段落0011〜0023
【特許文献3】特開平10−62506号公報 第4頁、段落0014
【非特許文献1】Joseph C.Liberti,JR , Theodore S.Rappaport,”SMART ANTENNAS FOR WIRELESS COMMUNICATIONS:IS-95 and Third Generation CDMA Applications,” Prentice Hall PTR,pp.279-280.1999.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記非特許文献1に記載されているように、「一般に超分解能測角法では測角処理を適用する前に、分離対象としている放射信号源の数(波源数)を早期に正確に推定することが重要なステップ」であることは公知の事実である。誤った波源数を設定すると、超分解能測角法は誤った角度推定値を出力するだけでなく、必要以上の計算時間を要する場合がある。
【0011】
上記特許文献1には、これらの波源数推定に関する具体的な方法については記載されていない。また上記特許文献2に記載の波源数推定手法では、放射信号源が単一か複数かを判定することは可能だが、電波放射源が複数存在する場合にその個数までは判定が困難である。特許文献2では目標数を最大2目標までと仮定しているが、近年の複雑化した電波環境では、捜索過程において1つの角度ステップ内に3個以上の電波放射源が存在する可能性も否定できない。
【0012】
さらに上記特許文献3に記載の波源数推定手法では、放射信号の受信電力とノイズ電力の比(Signal-to-Noise Ratio:SN比)が小さい場合、つまり受信環境が悪い場合には、受信信号共分散行列の各固有値間に大きな差が発生せず、固有値の大きさのみから入射信号個数を推定すると、目標とするべき信号を取り損ねてしまいかねない。
【0013】
また超分解能測角法は受信信号行列の固有値演算、および探索角度範囲内のスペクトル演算が主であり、モノパルス測角法よりも精密な角度分解能を有するが、一般的に信号処理部における演算負荷が高いことが知られる。したがって超分解能法による精密測角が必要なケースはできるだけ適用範囲(捜索角度)を限定し、演算負荷を抑えて応答速度を高めた測角処理手法が望まれる。
【0014】
この発明は、超分解能法による精密測角の適用範囲を制限して演算負荷を抑え、応答速度を高めたパッシブ測角装置およびパッシブ測角方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、自らは電波を放射せずに電波放射源からの放射信号による電波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナを制御して、電波放射源捜索の過程で捜索範囲を所定の角度ステップで分割し、各角度ステップにおいて所定の周波数範囲を所定の周波数ステップで分割した、各角度ステップの各周波数ステップ毎に受信された電波を受信信号として出力する受信機と、前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号に基づき電波放射源の測角を行う信号処理装置と、を備え、前記信号処理装置が、前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号の特性を評価して、各角度ステップの各周波数ステップ毎に電波放射源が検出対象か否かを示す放射信号の特性情報を生成する検出信号処理手段と、前記受信機からの受信信号を受け、前記検出信号処理手段の特性情報に基づき検出対象の電波放射源からの放射信号か否かを考慮しながら受信信号中の放射信号の電波放射源の測角を行う測角信号処理手段とを含む、ことを特徴とするパッシブ測角装置およびこれに関するパッシブ測角方法にある。
【発明の効果】
【0016】
この発明では、超分解能法による精密測角の適用範囲を制限して演算負荷を抑え、応答速度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
図1はこの発明によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。図1においてパッシブ測角装置は、受信アンテナ1、この受信アンテナ1に接続された受信機2、この受信機2に接続された測角信号処理部4、追尾信号処理部5、検出信号処理部6及び記憶部7を含む信号処理装置3を備える。
【0018】
次に動作について図2を用いて説明する。図2は捜索過程におけるパッシブ測角装置の動作について示した図であり、図2において、受信アンテナ1は自らは電波を放射せずに電波放射源からの放射信号による電波を受信する。受信機2は電波放射源捜索の過程では、捜索範囲を所定の角度ステップで分割し、さらにこれらの各角度ステップにおいて所定の周波数範囲を所定の周波数ステップで分割した、各角度ステップの各周波数ステップ毎に受信アンテナ1で受信された電波を受信信号として出力する。
【0019】
信号処理装置3は、受信機2からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号内に電波放射源からの放射信号が存在するかどうかを判定するための信号処理を行う。この時、前述の通り、検出対象であるレーダー装置以外にジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置が存在する電波環境においても、検出対象である電波放射源を正しく検出する対策が必要となる。
【0020】
例えばジャミング信号発生装置としては、ある決まった周波数帯にノイズを連続放射するCWノイズジャマータイプ、特定周波数帯を覆域としたノイズを放射する周波数スイープジャマータイプなどが存在し、欺瞞信号発生装置としては特定のタイミングに則りパルス状のノイズ信号を放射するタイプなどが存在する。しかし、パッシブ測角装置が目標すなわち検出対象と定めるべき電波放射源は多くの場合、ある特徴量を持った周期的なパルス波を放出しており、他のジャミング信号発生装置、または欺瞞信号発生装置と区別できる可能性がある。
【0021】
仮に、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置がレーダー装置や秘匿通信機と完全に同期したまったく同じ特徴量のパルス波を放出した場合、レーダー装置や秘匿通信機自身がこれらジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置の放射信号成分を受信してしまい、レーダー装置や秘匿通信機自身が観測したい情報が遮断、または欺瞞を受けるといった弊害を受けることになる。
【0022】
このようなレーダー装置や秘匿通信機に固有の特徴として、パルス波の繰返し時間間隔(Pulse Repetition Interval:以降、PRIと略す)をある一定に保ちながら、放射信号の周波数をある決まった法則に従うか又はまったくランダムに変化させる放射方式(周波数ホッピング)を採用する場合がある。パッシブ測角装置側がある特定の周波数にロックする周波数追尾方式の場合、周波数ホッピング方式を採用するレーダー装置などに対しては、追尾ロックが解除されてしまう、又はジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置の方へミスロックしてしまうなどの弊害がもたらされる。
【0023】
これに対し、受信信号の中から特徴のあるPRIを持った周期性信号を抽出し、それに対して測角、追尾処理を行うことで、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置による妨害効果を低減できる。
【0024】
受信信号の中から特徴のあるPRIを持った周期性信号を抽出する手法としては、パルス列分離装置(PRI変換法)が既に存在する。
【0025】
パルス列分離装置は、入射する信号の中にパルス波が存在する場合には、それらの到来時間(Time of Arrival:TOA)などを元にパルス波を分類するものである。受信信号の中に単一のパルスが存在する場合、パルス種類数:1という情報とこのパルスのPRIを、入力信号の中に複数のパルスが存在する場合、これらのTOAを頻度分類することでパルスの種類数とそれぞれのパルスのPRIを得ることが可能である。検出信号処理部6はこのパルス列分類装置とこのための前置処理回路を備え、受信信号の検出、分類を行う。
【0026】
図3は検出信号処理部6の構成の一例を示したものであり、これに従って処理手順について説明する。最初に受信機2からの受信信号は距離方向CFAR(Constant False Alarm Rate)部61と周波数方向CFAR部62に入力される。距離方向CFAR部61の出力はさらにCW信号検出部63に入力され、CW信号検出部63の出力がパルス列分類部64に入力される。CFARとは例えば閾値を設けて、特定の閾値以上の信号を抽出するものである。
【0027】
これにより検出対象としている防衛用レーダー装置からの放射信号が含まれる角度ステップ内の周波数ステップに、ジャミング信号発生装置等によるCW波が含まれている場合(CW信号検出部63)や、ノイズ電力が高くSN比が悪い状態(距離方向CFAR部61)でも、検出対象の誤検出による誤警報が発生する確率を低減することが可能となる。また捜索範囲としている角度ステップ内の全周波数範囲をスイープすることで、特定周波数範囲内を覆域とする周波数スイープジャマーを検出し(周波数方向CFAR部62)、必要に応じて除去することが可能である。
【0028】
これらの距離方向CFAR部61、周波数方向CFAR部62、CW信号検出部63による前置処理によりジャミング信号を検出、除去した場合、捜索対象とした角度ステップの周波数ステップには、信号処理装置3の記憶部7に図4に例示するようなECMフラグマップを格納し(図4は捜索過程一巡後の状態を例示)、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置による妨害措置が取られていることを記憶するECMフラグを”0”以外にセットし、他の捜索範囲のサーチに移行する。そして結果的にECMフラグが”0”の捜索範囲に対し、受信機2からの入力信号がパルス列分類部64に入力される。
【0029】
パルス列分類部64にて捜索対象としている角度ステップの周波数ステップ内にパルス波が存在するかどうかを検出し、1種又は複数種のパルス波が存在すると推定される場合には、各パルス種類とそれぞれのPRIを情報として記憶部7に記憶、パルス波が存在すると推定される角度ステップの周波数ステップに、パルス列分類部64でのパルス列分類処理が適用される。パルス種類の数が波源数となる。なお、これら波源数、各種類のパルスのPRI、ECMフラグ情報を放射信号の特性情報とする。
【0030】
図5には検出信号処理部6の動作を説明するための図を示し、以下、パルス列分類部64の詳細な動作を、図5を用いて説明する。図5の(f)に示す受信機2の出力点(A点)における信号は(a)の「A点における波形例」に示すとおり、検出対象としているパルス列の他にジャミング信号、雑音などが入り混じったものである。まず距離方向CFAR部61に通し、ノイズによる誤警報確率を抑えるために、予め設定したノイズ除去用の閾値を越える振幅(電力)値を有する信号成分のみを抽出する。
【0031】
次に、CW信号検出部63にて、例えば(c)の「C点における波形例」に示すように、時間軸方向に連続した所定値以上の振幅(電力)値を持った信号が存在するかどうかを検出する。もし検出された場合は、ジャミング信号発生装置が発生するCWジャマータイプの信号と認識できる。この時、記憶部7のECMフラグマップのこの角度ステップ、周波数ステップのECMフラグをCWジャマータイプを示す例えば”1”にセットする。
【0032】
一方、周波数方向CFAR部62では、例えば(b)の「B点における波形例」に示すように、特定の周波数帯域内で連続した所定値以上の振幅(電力)値を持った信号が存在するかどうかを検出する。もし検出された場合は、ジャミング信号発生装置が発生する周波数スイープジャマータイプの信号と認識できる。この時、記憶部7のECMフラグマップのこの角度ステップ、周波数ステップにおけるECMフラグを周波数スイープジャマータイプを示す例えば”2”にセットする。
【0033】
これらの操作により受信機2からの入力信号(信号素波)からノイズ成分、ジャミング成分(周波数スイープジャマー)、CW信号成分(CWジャマー)を除去し、(d)の「D点における波形例」に示すような信号波形を抽出する(ECMフラグマップの”0”以外の部分の入力信号を無視するので除去したことになる)。パルス列分類部64では、複数のパルスが混在した信号から、パルスの生成時間と消滅時間を組み合わせたPRIを元に複数種のパルスを分類し、(e)の「パルス列分類によるパルス素波の分離例」に示すように、それぞれのパルス波(パルス波繰返し時間間隔がPRI1とPRI2のパルス波)のみを抜き出す。ただし、双方のパルスが重なる部分においては、他方のパルスが消え残る場合もありうるが、時間軸方向に統計的に処理することで問題を回避できる。
【0034】
以上にように構成することで、捜索対象としている角度ステップの周波数ステップにおいて、電波放射源による放射信号が観測された場合には、この放射信号が検出対象の電波放射源であるレーダー装置や秘匿通信機に特有の特徴量(特徴のあるPRI)を持つパルス波または周波数ホッピング波か否かを判定でき、この検出信号処理部6の処理結果に基づいて図1の測角信号処理部4でこれらの重要な電波放射源が自らすなわちパッシブ測角装置の設置角度からどちらの方向に存在するかを検出(測角)し、測角信号処理部4の測角結果に基づいて追尾信号処理部5で電波放射源の方向を追尾する制御を行わせることができ(受信機2に追尾の方向を示す追尾指令を送る)、かつジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置などの不要な電波放射源による悪影響を軽減することが可能になる。
【0035】
実施の形態2.
図6はこの発明によるパッシブ測角装置の構成の別の例を示す図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。実施の形態1に記載した検出信号処理部6により検出され記憶部7に格納された、各角度ステップの各周波数ステップ毎のパルスの種類の数である波源数を示す波源数情報100と各パルスのPRIからなるPRI情報101、さらにECMフラグマップのECMフラグ情報102が追尾信号処理部5へ、波源数情報100が測角信号処理部4へそれぞれ送られる。103は測角信号処理部4から追尾信号処理部5へ送られる測角結果である測角値情報を示す。
【0036】
これにより測角信号処理部4と追尾信号処理部5は、各信号特性に応じた測角処理と追尾処理を選択するための判断基準を得ることができる。もし仮にこれらの判断基準となる情報が得られない場合、測角信号処理部4ではジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置の存在する角度ステップに対し超分解能測角法を適用してしまう場合がある。
【0037】
上述のように、超分解能測角法は一般的に信号処理部での演算負荷が大きく、長い処理時間を要する。パッシブ測角装置としては、これらの不要と思われるジャミング信号などへ処理時間を割かれるよりも、重要なレーダー装置や秘匿通信機の処理に時間を費やすべきであり、本実施の形態に記載のように検出信号処理部6による各入射信号の特性情報(100〜102)を受けることで、例えば測角信号処理部4であれば、測角処理に超分解能測角法を用いるのか又は分解能は劣るが演算負荷は小さな他の測角手法を採用するのかの判断が可能となり、パッシブ測角装置としての運用効率化を図ることができる。
【0038】
以上のように構成することで、捜索対象としている角度ステップの周波数ステップにおいて、電波放射源による放射信号が観測された場合には、検出信号処理部においてこの放射信号がレーダー装置や秘匿通信機に特有の特徴量を持つか否かを判定する基準を設定し、測角信号処理部と追尾信号処理部に情報として渡すことで、これらの電波放射源の存在方向を測角する測角信号処理部における測角手法の選択や追尾信号処理部における追尾手法の選択基準を定めることが可能になり、パッシブ測角装置全体としての処理の効率化を図ることが可能となる。
【0039】
実施の形態3.
図7はこの実施の形態によるパッシブ測角装置を説明するための図、図8はこの実施の形態によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図7において(a)は通常状態、(b)はこの実施の形態によるアンテナのビームパターン補正後の状態を示す。Tは検出対象電波放射源、Jは妨害電波放射源を示す。図8において信号処理装置3はアダプティブ信号処理部10をさらに備える。
【0040】
次に動作について説明する。上記実施の形態2において、捜索過程にある、ある角度ステップでECMフラグが“1”にセットされる等の妨害電波放射源Jからの放射信号を検出した場合には、(b)に示すように該角度に対する受信アンテナ1の受信感度を低く設定することで、不要な放射信号による信号処理装置3への干渉や装置の感度低下などの弊害を低減させる。この時、信号処理装置3内部において、この角度方向に対して受信アンテナ1の感度パターンSPにナル(不感領域)を形成するようなアダプティブ信号処理を行う。これらのアダプティブ信号処理として、例えばMSN(Maximum Signal-to-Noise Ratio)アルゴリズム、DCMP(Directionally Constrained Minimization of Power)アルゴリズムが挙げられる。
【0041】
従って信号処理装置3は、記憶部7に格納された図4に示すECMフラグマップの情報を検出信号処理部6から得て、これに従ってアダプティブ信号処理を行い、受信機2にECMフラグマップの情報に従った角度方向に不感領域を形成させるための制御信号を出力するアダプティブ信号処理部10をさらに備える。
【0042】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップにおいて、電波放射源による放射信号が観測され、かつ検出信号処理部にてジャミング信号発生装置などによる妨害波と判断され、ECMフラグが”0”以外にセットされた場合、この方向の受信アンテナの感度パターンにナルを形成するようなアダプティブ信号処理を行うので、信号処理装置3におけるジャミング信号などの不要波(検出対象でない妨害電波放射源等を含む電波放射源からの放射信号)による干渉や感度低下を抑えることができる。
【0043】
実施の形態4.
図9はこの実施の形態によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。受信機2には出力制御部11が設けられている。次に動作について説明する。捜索過程のある角度ステップの周波数ステップでECMフラグが”0”以外にセットされる等、不要波の入射を検出した場合には、受信機2における当該周波数ステップに帯域阻止フィルタを構成し、この部分の受信機2の出力信号レベルを低下させることにより、信号処理装置3において不要波による干渉や感度低下などの弊害を低減させる。
【0044】
従って記憶部7に格納された図4に示すECMフラグマップの情報が検出信号処理部6から受信機2の出力制御部11に送られる。出力制御部11はECMフラグマップの情報に従って、不要波の入射を検出した周波数ステップに相当する周波数帯に帯域阻止フィルタを構成し、この部分の出力信号レベルを低下させる。帯域阻止フィルタや帯域通過フィルタとして具体的には、例えばチャネルフィルタ(Channelized Filter)などにより、捜索対象の周波数帯をいくつかの小さな帯域に分割し、それぞれの分割帯域に対して通過損失を任意に設定できるような装置とする。
【0045】
以上のように構成することで、捜索対象としている角度ステップの周波数ステップにおいて、電波放射源による放射信号が観測され、かつ検出信号処理部6にてジャミング信号発生装置などによる妨害波と判断し、ECMフラグが”0”以外にセットされた場合、受信機2内部でその周波数ステップに対する出力を低下させる帯域阻止フィルタを設けることで、信号処理装置3における不要波による干渉や感度低下を低減することができる。
【0046】
実施の形態5.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6と同様である。次に動作について説明する。この実施の形態では、上記実施の形態2において、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、以降の捜索過程において当該角度ステップに対する捜索や追尾処理を簡略化したものもとする。当該角度ステップから入射する放射信号は、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置によるものと判定されており、本パッシブ測角装置に誤動作を発生させようとするものである。
【0047】
これらの不要波に多くの処理時間を費やし、他の重要なレーダー装置や秘匿通信機による放射信号を処理する物理的リソース(時間・内部メモリなど)を失うことは、運用上問題がある。不要波に対する捜索や追尾処理を簡略化するとは、例えば、追尾信号処理部5で検出信号処理部6からECMフラグが”0”以外にセットされた情報を含むECMフラグ情報102を受けた場合に、ECMフラグが”0”以外にセットされた角度ステップに関して、毎回の捜索過程で当該角度をサーチ(捜索)するのではなく、2回毎、または5回毎など、サーチする時間間隔を広げる、言い換えると捜索、追尾頻度を下げた簡略化した処理を行うようにする。これにより捜索、追尾に要する処理負荷を低減することができる。
【0048】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、以降の捜索過程において当該角度ステップに対する捜索や追尾処理を簡略化したものとすることで、不要波に対する信号処理の演算負荷を下げ、パッシブ測角装置全体として効率的な負荷分散と運用を図ることができる。
【0049】
実施の形態6.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6と同様である。但し本実施の形態では、測角信号処理部4にも検出信号処理部6からECMフラグ情報102が送られる。次に動作について説明する。上記実施の形態2において、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、当該角度ステップから入射する放射信号は、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置などの不要波によるものと判定されており、測角信号処理部4は演算負荷が超分解能測角法より比較的小さなモノパルス測角法を採用する。
【0050】
不要波に多くの処理時間を費やし、他の重要なレーダー装置や秘匿通信機による放射信号を処理する物理的リソース(時間・内部メモリなど)を失うことは、運用上問題がある。さらに不要波の到来方向探知であれば、超分解能測角法のような数度程度の測角精度は不要であり、これより精度は悪化するが演算負荷の小さなモノパルス測角法であっても、その後に続く信号処理に対しては実用上大きな問題は発生しない。
【0051】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、測角信号処理部4における当該角度ステップに対する測角手法にモノパルス測角法等を適用することで、不要波に対する信号処理の演算負荷を下げ、パッシブ測角装置全体として効率的な負荷分散と運用を図ることができる。
【0052】
実施の形態7.
図10はこの発明によるパッシブ測角装置の構成のさらに別の例を示す図である。上記図6に示すものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。検出信号処理部6は検出信号処理部6で最初に不要波が検出された時刻や不要波の電力値を他の情報と共に記憶部7に格納すると共に、時刻・電力値情報104を追尾信号処理部5に出力する。次に動作について説明する。上記実施の形態2において、捜索過程のある角度ステップの周波数ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、検出信号処理部6からの波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4からのモノパルス測角法による測角値情報103に加え、検出信号処理部6で最初に不要波が検出された時刻や不要波の電力値を記述した時刻・電力値情報104が付加されて追尾信号処理部5へ出力される。
【0053】
追尾信号処理部5ではこれらを時系列に内蔵するメモリ(図示省略)に記録する。これにより追尾信号処理部5内での不要波の継続時間や電力レベルの変動などの追尾パラメータが増加し、より柔軟性の高い捜索・追尾処理選択が可能となる。もし、所定時間以上不要波の継続が確認された場合には、当該角度ステップの周波数ステップに対する捜索や追尾処理をさらに簡略化するなどの措置を取ることも考えられる。また、時刻・電力値情報104が備わっているため、パッシブ測角装置の運用とは別にオフラインでデータを処理した際の分類要素が増加し、より細かな運用管理を設定することができる。
【0054】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合に、検出信号処理部6からの波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4からのモノパルス測角法による測角値情報103に加え、検出信号処理部6で最初に不要波が検出された時刻や不要波の電力値を記述した時刻・電力値情報104を付加して追尾信号処理部5へ出力して追尾信号処理部5で記憶しておくことで、追尾信号処理部5における捜索・追尾過程の動作選択に対する判断基準指標が増加し、より柔軟性の高い捜索・追尾処理選択が可能となる効果が得られる。
【0055】
実施の形態8.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図10の実施の形態7のものと同様である。次に動作について説明する。捜索過程のある角度ステップの周波数ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合に、検出信号処理部6からの波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4からのモノパルス測角法による測角値情報103に加え、検出信号処理部6での時刻・電力値情報104を付加して追尾信号処理部5へ出力し、追尾信号処理部5ではこれらを時系列に内蔵するメモリ(図示省略)に記録するまでは、上記実施の形態7と同様である。
【0056】
この実施の形態ではさらに、追尾信号処理部5にて入力された測角値情報103やその他の情報をメモリに記録された過去の同一電波放射源に対する記録データと比較し、測角値情報103やその他の情報の時間変化などを検証する。この結果、今回入力(取得)されたデータと過去の累積データ間に大きな(所定値以上の)相違が発見されなかった場合は、当該電波放射源は不要波によるものという判定を変更せずに、当該電波放射源に対する処理には、実施の形態5に記載の簡略化された処理を引き続き採用する。
【0057】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合に、追尾信号処理部5に記録された当該電波放射源に対する過去の累積情報を元に、今回取得された受信データの真偽を判定することが可能になるため、電波放射源の特性や重要度に応じた負荷分散と処理選択精度の向上が図れる。
【0058】
実施の形態9.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図10の実施の形態7及び8のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態8において、追尾信号処理部5にて今回の測角値情報103やその他の情報を過去の同一電波放射減に対する記録データと比較し、情報の一部もしくは全てにおいて大幅な相違点が発見されたとする。この場合、当該電波放射源は不要波によるものとこれまで判定していたが、長時間観測の結果、実際にはパッシブ測角装置が重要と位置づけるレーダー装置や秘匿通信機からのものであったと判明する可能性が考慮される。
【0059】
したがってこの場合、現在割り当てている当該電波放射源に対する捜索や追尾の処理簡略化から通常の処理に復帰させる必要性が発生する。ただし、相違点が発見された後、ただちに復帰するのではなく、数回連続で大幅な相違点が発見された後に復帰する措置が望ましい。なぜなら、瞬間的なノイズ電力や周囲環境の変動などにより、一時的に測角値情報103や時刻・電力値情報104に含まれる誤差が大きくなる可能性があるためである。
【0060】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合に、追尾信号処理部5に記録された当該電波放射源に対する過去の累積情報を元に、今回取得された受信データの真偽を判定し、現在割り当てている当該電波放射源に対する処理簡略化などの選択が正しいかどうかの検証を行うことで、電波放射源の特性や重要度に応じた処理選択の精度と信頼性を向上させ、さらに重要な電波放射源に対するデータ欠落を抑止することができる。
【0061】
実施の形態10.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6の実施の形態2,5,6のものと同様である。図11はこの実施の形態の動作を説明するためのECMフラグマップの一例を示す図である。次に動作について説明する。実施の形態1で説明したように、捜索過程が一巡した後に図4に示すECMフラグマップを作成する。捜索過程のある角度ステップ、周波数ステップでパルス波または周波数ホッピング波が検出された場合、この放射信号はパッシブ測角装置が重要度が高いと位置づけるレーダー装置や秘匿通信機によるものと判断される。
【0062】
そこでこの場合、これらの電波到来角方向に追尾処理を割り当て、図4と同じ図11の(a)に示すマップを(b)に示すようなマップに更新して監視体制に移行する措置をとる。すなわち記憶部7に格納されたECMフラグマップのPRI情報が追尾目標情報に更新されて、PRI情報101が追尾目標情報として追尾信号処理部5に送られる。これにより追尾信号処理部5は、追尾目標情報に基づく目標を追尾するよう追尾指令を受信機2へ送り、捜索過程から追尾過程へ動作モードが遷移する。また、図11の(b)に示すようなマップを生成して表示部(図示省略)に表示することで、例えばオペレータはどの電波放射源にどのような処理を選択しているかが視覚的に把握しやすく、運用の効率化と信頼性向上が図れる。
【0063】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップ、周波数ステップで重要度の高い電波放射源が検出された場合、当該角度、周波数方向に追尾処理を割り当てることで監視体制に移行することができる。
【0064】
実施の形態11.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6の実施の形態2,5,6,10のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態10において、捜索過程にある、ある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高い、すなわち検出対象の電波放射源からの放射信号の可能性有りと判定される放射信号(電波)が検出された場合、検出信号処理部6から追尾信号処理部5にPRI情報101に変わって追尾目標情報が送られることで、追尾信号処理部5は測角値情報103に基づく電波到来角方向に追尾処理を割り当て、監視体制に移行する措置をとる。
【0065】
この時、捜索過程から監視体制すなわち追尾過程に遷移したことを示す動作モード信号を検出信号処理部6から測角信号処理部4に送ることで、測角信号処理部4が追尾過程への遷移を認識して測角手法にMUSIC法などの超分解能測角法を適用する。これにより、重要性の高い電波到来角方向に対し、モノパルス測角法よりも高精度な測角が可能となり、精密な方向探知および追尾処理を実現できる。
【0066】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップで重要度の高い電波が検出された場合、当該角度方向に対する測角手法にMUSIC法などの超分解能測角法を適用することで、重要かつ優先度の高い電波放射源の精度の高い方向探知および追尾処理を実現でき、測角精度や追尾精度を向上させることができる。
【0067】
実施の形態12.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6の実施の形態2,5,6,10,11のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態11では、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、即座にMUSIC法など超分解能測角法による測角処理を採用した。しかし前述のように、超分解能測角法は一般的に演算負荷が高いため、適用範囲をできるだけ限定した方が信号処理装置の応答性を高めるためにも望ましい。このため測角信号処理部4では、まずは演算負荷の比較的小さなモノパルス測角法により、重要電波放射源のおおよその存在範囲を特定した後、この特定範囲内を超分解能測角法により精密測角する。
【0068】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップで重要度の高い電波が検出された場合、最初は演算負荷の比較的小さなモノパルス測角などでおおよその存在範囲を特定し、次にこの範囲内を超分解能測角法で精密測角することにより、超分解能測角法による演算負荷の上昇を抑え、かつ精密な角度分解能を得ることができる。
【0069】
実施の形態13.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6の実施の形態2,5,6,10,11,12のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態11では、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、測角信号処理部4における測角手法にMUSIC法などの超分解能測角法を適用する。しかし、前述のように、超分解能測角法を適用する際には、事前にその適用角度範囲内での波源数(電波放射源の数)を正確に推定する必要がある。
【0070】
波源数を誤って指定したまま超分解能測角法を適用した場合、真値と異なる方向に測角値を推定するだけでなく、不要な長い演算時間が費やされる場合がある。例えばMUSIC法の場合、受信信号の相関特性を示す共分散行列を固有値展開し、大きい固有値の順に並べる。次にこれらの固有値を大きい値から波源数分だけ取り除く。MUSIC法の角度スペクトルは、残りの小さな固有値に対応する固有ベクトルが電波到来方向ベクトルと直行する関係を用いており、電波到来方向に対して高いピークを示す。
【0071】
しかし、上記の波源数が正しい値でなく、本来取り除かれる固有値が除外されない、またはその逆に重要な固有値を取り除くなどの処理を行った場合、正しい角度スペクトルが得られない。さらに角度スペクトルの演算負荷は波源数に影響を受ける。したがって、超分解能測角法における波源数の推定には細心の注意を払う必要がある。
【0072】
本実施の形態では、検出信号処理部6において、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、それらの放射信号(受信素波)が複数電波源による合成信号かどうか、およびいくつの信号の合成によるかをパルス列分類部64に準じた方法で検出・分類を行う。これは、上述の特許文献3に記載の固有値の大きさを比較することにより波源数を推定する手法とは異なり、受信素波の波形自体に着目した分類方法であるため、所望信号とノイズ信号の電力比であるSN比や周囲環境のノイズによる変動の影響を軽減する効果がある。このパルス列分類部64により検出された波源数情報100を用い、測角信号処理部4で超分解能測角法を使用することにより、より高精度な測角値を得ることが可能になる。
【0073】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップで重要度の高い電波が検出された場合、検出信号処理部6にて波源数情報100を検出し、測角信号処理部4に渡す。測角信号処理部4ではこの波源数情報100を用いて超分解能測角法の計算精度を向上させ、演算負荷を最適化することができる。
【0074】
実施の形態14.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図10の実施の形態7,8,9のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態13において、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、検出信号処理部6における波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4における測角値情報103に加え、パルス波や周波数ホッピング波の検出時刻や電力値データなどの時刻・電力値情報104が付加されて、追尾信号処理部5へ出力される。
【0075】
追尾信号処理部5ではこれらを時系列に内蔵するメモリ(図示省略)に記録する。これにより追尾信号処理部5は検出対象の可能性のある重要な電波放射源の追尾処理に用いるパラメータが増加する利点を獲得し、より柔軟で精密な追尾処理を選択、実行することが可能になる。特に時刻・電力値情報104を追尾情報として用いることにより、その他の情報の時系列変化を知ることができ、重要な電波放射源の特性をより細かく評価することが可能になる。
【0076】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、検出信号処理部6における波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4における測角値情報103に加え、パルス波や周波数ホッピング波の検出時刻や電力値データなどの時刻・電力値情報104を付加し、追尾信号処理部5へと渡すことにより、追尾信号処理部5において追尾処理に用いる情報が増加し、より柔軟で精密な追尾処理を選択、実行することが可能になる。
【0077】
実施の形態15.
図12はこの発明によるパッシブ測角装置の構成のさらに別の例を示す図である。上記図10に示すものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。追尾信号処理部5は測角信号処理部4に捜索範囲情報105を供給する。
【0078】
次に動作について説明する。上記実施の形態14において、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、検出信号処理部6における波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4における測角値情報103に加え、パルス波や周波数ホッピング波の検出時刻や電力値データなどの時刻・電力値情報104を付加し、追尾信号処理部5へ供給する。追尾信号処理部5ではこれらをメモリ(図示省略)に記録する。
【0079】
この際、測角信号処理部4においてはMUSIC法などの超分解能測角法が適用されているが、上述のように超分解能測角法は捜索対象としている角度範囲内で角度スペクトルを計算するため、一般的にモノパルス測角法に比較して演算負荷が大きいという欠点を持つため、捜索角度範囲が大きいほど演算負荷が増大する。
【0080】
しかし、追尾信号処理部5において、測角信号処理部4からの測角値情報103と当該電波放射源に対する過去の測角値の累積情報を比較し、当該電波放射源が移動する場合に到来角度の時間変化を監視することで、移動速度や移動方向などの傾向を情報として得ることができる。したがってこれらの傾向を元に、次回の捜索・追尾過程における当該電波放射源の存在エリアを想定し、次回の超分解能測角法の捜索範囲をこの存在エリアを含む部分に設定する。
【0081】
すなわち追尾信号処理部5は、放射信号の特性情報に基づき、放射信号が検出対象の電波放射源によるものと検出された場合に、過去の記憶情報からその放射信号源の移動速度、移動方向を求め、次回の追尾過程動作時の未来位置を予想し、その角度ステップ、周波数ステップの周辺に次回の追尾過程における測角信号処理部4による超分解能測角法の捜索範囲を設定する。設定された捜索範囲は捜索範囲情報105として測角信号処理部4へ供給する。測角信号処理部4はこの情報を用いることにより超分解能測角法で捜索する角度範囲を最適化できる。
【0082】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、追尾信号処理部5内の過去の累積情報を元に次回の捜索・追尾過程における当該電波放射源の存在エリアを想定し、測角信号処理部4における超分解能測角法の捜索範囲を最適に設定することで、超分解能測角法で問題となる不要な演算負荷の増大を低減し、パッシブ測角装置全体としての処理速度や反応速度を向上させることが可能になるという効果が得られる。
【0083】
実施の形態16.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図12の実施の形態15のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態15において、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、追尾信号処理部5内の過去の累積情報を元に次回の捜索・追尾過程における当該電波放射源の存在エリアを想定し、測角信号処理部4における超分解能測角法の捜索エリア(範囲)を設定したが、最新の測角値が過去の累積情報と比較して大きく相違した場合、次の原因が考えられる。
(1):上記の捜索エリアの設定が誤っていた可能性、
(2):電波放射源が移動体の場合、想定以上に早い速度で移動していた可能性、
(3):周囲環境やノイズ電力が一時的に変動したことによる影響、
(4):超分解能測角法における波源数設定値が誤っていた可能性。
【0084】
(1)に対しては探索エリアの設定を見直すことが必要となるため、各想定原因に対してそれぞれ次の対策が考えられる。
(1)に対しては、
(1-1)より広い捜索範囲を設定して再度測角する、
(1-2)一時的に現在使用している当該電波放射源に対する追尾情報(存在角度、速度、移動方向)などのデータを破棄して、捜索の過程に戻す。
(2)に対しては、
(2-1)より広い捜索範囲を設定して再度測角する、
(2-2)高速で移動する電波放射源に対しては、一時的に高速に演算可能なモノパルス測角法を使用する。
(3)に対しては、(3-1)さらに数回の測角値データを観察し、時間平均の効果でノイズなどの影響を低減する。
(4)に対しては、(4-1)波源数設定を変えて再度超分解能測角する、などが考えられる。
【0085】
上記の種々の対策を施しても、同様に想定捜索エリア内に当該電波放射源が測角できなかった場合には、電波放射源側の放射が停止された可能性も考慮し、再度捜索の過程に戻すことも考えられる。これらの措置はすべて、複雑に変動する電波環境において、パッシブ測角装置により得られる推定値の真偽を判定し、重要目標への追尾性能維持、偽目標へのミスロックなどの弊害を低減するための動作である。
【0086】
すなわち追尾信号処理部5は、上述のようにして次回の追尾過程における測角信号処理部4による超分解能測角法の捜索範囲を設定するが、次回の追尾過程において測角信号処理部4から目標とする放射信号の電波放射源の測角値が得られなかった場合には、一旦追尾過程動作を中止し、捜索過程へ動作モードを切り替える。
【0087】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、追尾信号処理部5内の過去の累積情報を元に次回の捜索・追尾過程における当該電波放射源の存在エリアを想定し、測角信号処理部4における超分解能測角法の捜索範囲を設定したが、最新の測角値が過去の累積情報と比較して大きく相違した場合に、早急に次の動作を選択することが可能になり、複雑に変動する電波環境において、パッシブ測角装置により得られる推定値の真偽を判定し、重要目標への追尾性能維持、偽目標へのミスロックなどの弊害を低減することができる。
【0088】
実施の形態17.
図13はこの発明によるパッシブ測角装置の構成のさらに別の例を示す図である。上記図12に示すものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。106、107は測角信号処理部4、追尾信号処理部5がそれぞれ検出信号処理部6に出力する第2、第3波源数情報(100を第1波源数情報とする)である。
【0089】
次に動作について説明する。上記実施の形態2に記載したように、検出信号処理部6により検出された波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102がそれぞれ測角信号処理部4と追尾信号処理部5へ供給される。この情報に基づき測角信号処理部4は測角処理を、追尾信号処理部5は追尾処理を行うが、測角信号処理部4および追尾信号処理部5でも検出信号処理部6とは違った物理量に基づく波源数推定や電波放射源の特性評価を行うことができる。
【0090】
測角信号処理部4においては、例えば上記特許文献3にも記載の「受信信号共分散行列の固有値の大きさから入射信号個数(波源数)を推定する方法」を用いる。また、追尾信号処理部5においては、「過去の累積情報を元にした追尾航跡の連続性による評価方法」を用いる。これらの各方式は、検出信号処理部6において波源数推定に用いる「パルス列分類法」とは異なる観点による情報を与える。「パルス列分類法」は受信素波の波形自体に着目した手法である。測角信号処理部4における「固有値の大きさによる分類法」は、各電波放射源が放射する電波の、受信アンテナ1における受信電力値に着目している。また、追尾信号処理部5における「追尾航跡の連続性評価法」は、過去から現時点までに追尾している電波放射源の移動航跡に基づく未来の予想位置と実際の測角結果が、現実的以上(所定値以上)に乖離することは無いとする評価法である。
【0091】
つまりそれぞれの評価基準は独立であり、個別の情報として用いることができる。測角信号処理部4で得た第2波源数情報106、および追尾信号処理部5で得た第3波源数情報107を検出信号処理部6へフィードバックする。これにより、検出信号処理部6における電波放射源の波源数や重要度などの推定に用いる情報量が増加する。
【0092】
なお、測角信号処理部4および追尾信号処理部5から検出信号処理部6へフィードバックする情報は波源数に限定されず、それぞれの電波放射源の特性評価結果に基づくその他の情報も併せて電波放射源の特性評価情報としてフィードバックするようにしてもよい。さらに図13中の矢印に示すものに限定されることなく、測角信号処理部4、追尾信号処理部5、検出信号処理部6の間で必要な情報の交換を行うようにしてもよい。
【0093】
以上のように構成することで、測角信号処理部4および追尾信号処理部5の各装置内部で独立の波源数推定を行い、検出信号処理部6へフィードバックすることで、検出信号処理部6における電波放射源の波源数や重要度などの推定に用いる情報を増やすことができる。
【0094】
実施の形態18.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図13の実施の形態17のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態17に記載した検出信号処理部6、測角信号処理部4、追尾信号処理部5の各装置間でそれぞれ独立の波源数推定や電波放射源の特性評価を行い、これらの情報のやり取りを行うことで、互いの間で推定精度を補完しあい、電波放射源の波源数や重要度などの情報をより高精度に推定することが可能になる。
【0095】
測角信号処理部4からの第2波源数情報106および追尾信号処理部5からの第3波源数情報107によるフィードバック情報を受け、検出信号処理部6では次回の検出、分類処理の検証を自己的に行うことが可能になり、他部の推定結果と極端に異なる推定値を棄却するなどの処理を選択することも可能になる。これらの動作を実現するために、各装置又は各部にはカルマンフィルタなどの再帰的アルゴリズムを搭載することも考えられる。
【0096】
以上のように構成することで、検出信号処理部6、測角信号処理部4、および追尾信号処理部5の各部で独立の波源数推定や電波放射源の特性評価を行い、これらの情報のやり取りを行うことで、互いの間で推定精度を補完しあい、電波放射源の波源数や重要度などの情報をより客観的に高精度に推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の実施の形態1によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図2】この発明のパッシブ測角装置の捜索過程における動作を説明するための図である。
【図3】この発明における検出信号処理部の構成の一例を示した図である。
【図4】この発明によるパッシブ測角装置におけるECMフラグマップの一例を示す図である。
【図5】この発明における検出信号処理部の動作を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態2,5〜6,10〜13によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるパッシブ測角装置を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態3によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態4によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態7〜9、14によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図11】この発明によるパッシブ測角装置におけるECMフラグマップの別の例を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態15、16によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態17、18によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1 受信アンテナ、2 受信機、3 信号処理装置、4 測角信号処理部(測角信号処理手段)、5 追尾信号処理部(追尾信号処理手段)、6 検出情報処理部(検出情報処理手段)、7 記憶部(記憶手段)、10 アダプティブ信号処理部(信号処理手段)、11 出力制御部(出力制御手段)、61 距離方向CFAR部、62 周波数方向CFAR部、63 CW信号検出部、64 パルス列分類部、100 (第1)波源数情報、101 PRI情報、102 ECMフラグ情報、103 測角値情報、104 時刻・電力値情報、105 捜索範囲情報、106 第2波源数情報、107 第3波源数情報。
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッシブ測角装置およびその測角方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測角装置は自己に入射する電波信号の到来方向(角度)を検出する装置であり、方向探知や電波監視などの目的に使用される。その中でもパッシブ測角装置は自ら電波を放射することなく電波放射源が放射する電波を受信する装置と信号処理により、自己の設置位置情報を元にした電波放射源の存在角度を出力する装置である。このためパッシブ測角装置は他の電波監視装置などによる探知確率を低減し、周囲環境に何ら影響を与えない状態で監視を実行できることから秘匿性に優れ、さらに送信設備が不要になるため、装置全体の小型・軽量化を図れる利点がある。
【0003】
パッシブ測角装置が監視対象とする電波放射源には、防衛用レーダー装置、秘匿通信機などが挙げられる。レーダー装置は一般に自分と探索相手との距離を測るためにパルス波を放射信号として使用している。また、秘匿通信機もその性質上、キャリアとして用いる周波数を短時間に切り替える周波数ホッピングという送信方式を使用していることが多い。そのため、パッシブ測角装置は捜索空間に広がる複数の受信信号の中からこれらの検出対象であるレーダー装置や秘匿通信機が放射するパルス波やホッピング波を検出し、これらの存在角度を定めることになる。
【0004】
これに対し、例えば防衛用レーダー装置であれば、レーダー装置への相手側からの攻撃を回避し残存する確率を増加させるために、ジャミング信号発生装置(Jamming Transponder)や欺瞞信号発生装置(デコイ)をレーダー装置と離れた場所で動作させ、これらの偽目標にミスロックを発生させるECM(Electric Counter Measure)妨害を採用する場合がある。特に近年の複雑化した電波環境では、近接周波数、または近接角度内に複数信号が存在するケースは増えている。
【0005】
これらの複雑化する電波環境の中で、パッシブ測角装置では、受信アンテナのメインビーム幅内に2波以上の電波放射源が存在する場合に、これを別々の電波放射源によるものと検出し、それぞれの方向を分離・測角できることが必要になっている。これを実現するために、従来技術として例えば下記の特許文献1に記載されているように、受信アンテナのメインビーム幅内に2波以上の電波放射源が存在する場合に、例えばMUSIC(Multiple Signal Classification)法などの超分解能測角法を用いることで分離および測角が可能としている。
【0006】
またMUSICなどの超分解能測角法を用いる場合、電波放射源の数(波源数)を測角に先立ち推定する必要があるが、これについて下記の特許文献2では、モノパルス追尾方式の受信アンテナにおいて、Δ出力とΣ出力の比率によるモノパルス角度誤差信号から、放射信号源が単一かまたは複数かを判定するとしている。
【0007】
また下記の特許文献3では、MUSIC法で超分解能測角処理する際に、得られた受信信号共分散行列の固有値の大きさから入射信号個数(波源数)を推定する方法を示している。
【0008】
さらに、下記特許文献2の第4頁、段落0020に記載のとおり、MUSCI法などの超分解能測角手法は一般にモノパルス測角法よりも信号処理の演算量が多く、処理に要する時間が長くなる。これに対処するため、特許文献2では超分解能測角法とモノパルス測角法を目標数に応じて切り替える手法が紹介されている。
【0009】
【特許文献1】特開2000−81297号公報 第6頁、段落0015〜0016
【特許文献2】特開2003−14843号公報 第3〜4頁、段落0011〜0023
【特許文献3】特開平10−62506号公報 第4頁、段落0014
【非特許文献1】Joseph C.Liberti,JR , Theodore S.Rappaport,”SMART ANTENNAS FOR WIRELESS COMMUNICATIONS:IS-95 and Third Generation CDMA Applications,” Prentice Hall PTR,pp.279-280.1999.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記非特許文献1に記載されているように、「一般に超分解能測角法では測角処理を適用する前に、分離対象としている放射信号源の数(波源数)を早期に正確に推定することが重要なステップ」であることは公知の事実である。誤った波源数を設定すると、超分解能測角法は誤った角度推定値を出力するだけでなく、必要以上の計算時間を要する場合がある。
【0011】
上記特許文献1には、これらの波源数推定に関する具体的な方法については記載されていない。また上記特許文献2に記載の波源数推定手法では、放射信号源が単一か複数かを判定することは可能だが、電波放射源が複数存在する場合にその個数までは判定が困難である。特許文献2では目標数を最大2目標までと仮定しているが、近年の複雑化した電波環境では、捜索過程において1つの角度ステップ内に3個以上の電波放射源が存在する可能性も否定できない。
【0012】
さらに上記特許文献3に記載の波源数推定手法では、放射信号の受信電力とノイズ電力の比(Signal-to-Noise Ratio:SN比)が小さい場合、つまり受信環境が悪い場合には、受信信号共分散行列の各固有値間に大きな差が発生せず、固有値の大きさのみから入射信号個数を推定すると、目標とするべき信号を取り損ねてしまいかねない。
【0013】
また超分解能測角法は受信信号行列の固有値演算、および探索角度範囲内のスペクトル演算が主であり、モノパルス測角法よりも精密な角度分解能を有するが、一般的に信号処理部における演算負荷が高いことが知られる。したがって超分解能法による精密測角が必要なケースはできるだけ適用範囲(捜索角度)を限定し、演算負荷を抑えて応答速度を高めた測角処理手法が望まれる。
【0014】
この発明は、超分解能法による精密測角の適用範囲を制限して演算負荷を抑え、応答速度を高めたパッシブ測角装置およびパッシブ測角方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、自らは電波を放射せずに電波放射源からの放射信号による電波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナを制御して、電波放射源捜索の過程で捜索範囲を所定の角度ステップで分割し、各角度ステップにおいて所定の周波数範囲を所定の周波数ステップで分割した、各角度ステップの各周波数ステップ毎に受信された電波を受信信号として出力する受信機と、前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号に基づき電波放射源の測角を行う信号処理装置と、を備え、前記信号処理装置が、前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号の特性を評価して、各角度ステップの各周波数ステップ毎に電波放射源が検出対象か否かを示す放射信号の特性情報を生成する検出信号処理手段と、前記受信機からの受信信号を受け、前記検出信号処理手段の特性情報に基づき検出対象の電波放射源からの放射信号か否かを考慮しながら受信信号中の放射信号の電波放射源の測角を行う測角信号処理手段とを含む、ことを特徴とするパッシブ測角装置およびこれに関するパッシブ測角方法にある。
【発明の効果】
【0016】
この発明では、超分解能法による精密測角の適用範囲を制限して演算負荷を抑え、応答速度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
図1はこの発明によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。図1においてパッシブ測角装置は、受信アンテナ1、この受信アンテナ1に接続された受信機2、この受信機2に接続された測角信号処理部4、追尾信号処理部5、検出信号処理部6及び記憶部7を含む信号処理装置3を備える。
【0018】
次に動作について図2を用いて説明する。図2は捜索過程におけるパッシブ測角装置の動作について示した図であり、図2において、受信アンテナ1は自らは電波を放射せずに電波放射源からの放射信号による電波を受信する。受信機2は電波放射源捜索の過程では、捜索範囲を所定の角度ステップで分割し、さらにこれらの各角度ステップにおいて所定の周波数範囲を所定の周波数ステップで分割した、各角度ステップの各周波数ステップ毎に受信アンテナ1で受信された電波を受信信号として出力する。
【0019】
信号処理装置3は、受信機2からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号内に電波放射源からの放射信号が存在するかどうかを判定するための信号処理を行う。この時、前述の通り、検出対象であるレーダー装置以外にジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置が存在する電波環境においても、検出対象である電波放射源を正しく検出する対策が必要となる。
【0020】
例えばジャミング信号発生装置としては、ある決まった周波数帯にノイズを連続放射するCWノイズジャマータイプ、特定周波数帯を覆域としたノイズを放射する周波数スイープジャマータイプなどが存在し、欺瞞信号発生装置としては特定のタイミングに則りパルス状のノイズ信号を放射するタイプなどが存在する。しかし、パッシブ測角装置が目標すなわち検出対象と定めるべき電波放射源は多くの場合、ある特徴量を持った周期的なパルス波を放出しており、他のジャミング信号発生装置、または欺瞞信号発生装置と区別できる可能性がある。
【0021】
仮に、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置がレーダー装置や秘匿通信機と完全に同期したまったく同じ特徴量のパルス波を放出した場合、レーダー装置や秘匿通信機自身がこれらジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置の放射信号成分を受信してしまい、レーダー装置や秘匿通信機自身が観測したい情報が遮断、または欺瞞を受けるといった弊害を受けることになる。
【0022】
このようなレーダー装置や秘匿通信機に固有の特徴として、パルス波の繰返し時間間隔(Pulse Repetition Interval:以降、PRIと略す)をある一定に保ちながら、放射信号の周波数をある決まった法則に従うか又はまったくランダムに変化させる放射方式(周波数ホッピング)を採用する場合がある。パッシブ測角装置側がある特定の周波数にロックする周波数追尾方式の場合、周波数ホッピング方式を採用するレーダー装置などに対しては、追尾ロックが解除されてしまう、又はジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置の方へミスロックしてしまうなどの弊害がもたらされる。
【0023】
これに対し、受信信号の中から特徴のあるPRIを持った周期性信号を抽出し、それに対して測角、追尾処理を行うことで、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置による妨害効果を低減できる。
【0024】
受信信号の中から特徴のあるPRIを持った周期性信号を抽出する手法としては、パルス列分離装置(PRI変換法)が既に存在する。
【0025】
パルス列分離装置は、入射する信号の中にパルス波が存在する場合には、それらの到来時間(Time of Arrival:TOA)などを元にパルス波を分類するものである。受信信号の中に単一のパルスが存在する場合、パルス種類数:1という情報とこのパルスのPRIを、入力信号の中に複数のパルスが存在する場合、これらのTOAを頻度分類することでパルスの種類数とそれぞれのパルスのPRIを得ることが可能である。検出信号処理部6はこのパルス列分類装置とこのための前置処理回路を備え、受信信号の検出、分類を行う。
【0026】
図3は検出信号処理部6の構成の一例を示したものであり、これに従って処理手順について説明する。最初に受信機2からの受信信号は距離方向CFAR(Constant False Alarm Rate)部61と周波数方向CFAR部62に入力される。距離方向CFAR部61の出力はさらにCW信号検出部63に入力され、CW信号検出部63の出力がパルス列分類部64に入力される。CFARとは例えば閾値を設けて、特定の閾値以上の信号を抽出するものである。
【0027】
これにより検出対象としている防衛用レーダー装置からの放射信号が含まれる角度ステップ内の周波数ステップに、ジャミング信号発生装置等によるCW波が含まれている場合(CW信号検出部63)や、ノイズ電力が高くSN比が悪い状態(距離方向CFAR部61)でも、検出対象の誤検出による誤警報が発生する確率を低減することが可能となる。また捜索範囲としている角度ステップ内の全周波数範囲をスイープすることで、特定周波数範囲内を覆域とする周波数スイープジャマーを検出し(周波数方向CFAR部62)、必要に応じて除去することが可能である。
【0028】
これらの距離方向CFAR部61、周波数方向CFAR部62、CW信号検出部63による前置処理によりジャミング信号を検出、除去した場合、捜索対象とした角度ステップの周波数ステップには、信号処理装置3の記憶部7に図4に例示するようなECMフラグマップを格納し(図4は捜索過程一巡後の状態を例示)、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置による妨害措置が取られていることを記憶するECMフラグを”0”以外にセットし、他の捜索範囲のサーチに移行する。そして結果的にECMフラグが”0”の捜索範囲に対し、受信機2からの入力信号がパルス列分類部64に入力される。
【0029】
パルス列分類部64にて捜索対象としている角度ステップの周波数ステップ内にパルス波が存在するかどうかを検出し、1種又は複数種のパルス波が存在すると推定される場合には、各パルス種類とそれぞれのPRIを情報として記憶部7に記憶、パルス波が存在すると推定される角度ステップの周波数ステップに、パルス列分類部64でのパルス列分類処理が適用される。パルス種類の数が波源数となる。なお、これら波源数、各種類のパルスのPRI、ECMフラグ情報を放射信号の特性情報とする。
【0030】
図5には検出信号処理部6の動作を説明するための図を示し、以下、パルス列分類部64の詳細な動作を、図5を用いて説明する。図5の(f)に示す受信機2の出力点(A点)における信号は(a)の「A点における波形例」に示すとおり、検出対象としているパルス列の他にジャミング信号、雑音などが入り混じったものである。まず距離方向CFAR部61に通し、ノイズによる誤警報確率を抑えるために、予め設定したノイズ除去用の閾値を越える振幅(電力)値を有する信号成分のみを抽出する。
【0031】
次に、CW信号検出部63にて、例えば(c)の「C点における波形例」に示すように、時間軸方向に連続した所定値以上の振幅(電力)値を持った信号が存在するかどうかを検出する。もし検出された場合は、ジャミング信号発生装置が発生するCWジャマータイプの信号と認識できる。この時、記憶部7のECMフラグマップのこの角度ステップ、周波数ステップのECMフラグをCWジャマータイプを示す例えば”1”にセットする。
【0032】
一方、周波数方向CFAR部62では、例えば(b)の「B点における波形例」に示すように、特定の周波数帯域内で連続した所定値以上の振幅(電力)値を持った信号が存在するかどうかを検出する。もし検出された場合は、ジャミング信号発生装置が発生する周波数スイープジャマータイプの信号と認識できる。この時、記憶部7のECMフラグマップのこの角度ステップ、周波数ステップにおけるECMフラグを周波数スイープジャマータイプを示す例えば”2”にセットする。
【0033】
これらの操作により受信機2からの入力信号(信号素波)からノイズ成分、ジャミング成分(周波数スイープジャマー)、CW信号成分(CWジャマー)を除去し、(d)の「D点における波形例」に示すような信号波形を抽出する(ECMフラグマップの”0”以外の部分の入力信号を無視するので除去したことになる)。パルス列分類部64では、複数のパルスが混在した信号から、パルスの生成時間と消滅時間を組み合わせたPRIを元に複数種のパルスを分類し、(e)の「パルス列分類によるパルス素波の分離例」に示すように、それぞれのパルス波(パルス波繰返し時間間隔がPRI1とPRI2のパルス波)のみを抜き出す。ただし、双方のパルスが重なる部分においては、他方のパルスが消え残る場合もありうるが、時間軸方向に統計的に処理することで問題を回避できる。
【0034】
以上にように構成することで、捜索対象としている角度ステップの周波数ステップにおいて、電波放射源による放射信号が観測された場合には、この放射信号が検出対象の電波放射源であるレーダー装置や秘匿通信機に特有の特徴量(特徴のあるPRI)を持つパルス波または周波数ホッピング波か否かを判定でき、この検出信号処理部6の処理結果に基づいて図1の測角信号処理部4でこれらの重要な電波放射源が自らすなわちパッシブ測角装置の設置角度からどちらの方向に存在するかを検出(測角)し、測角信号処理部4の測角結果に基づいて追尾信号処理部5で電波放射源の方向を追尾する制御を行わせることができ(受信機2に追尾の方向を示す追尾指令を送る)、かつジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置などの不要な電波放射源による悪影響を軽減することが可能になる。
【0035】
実施の形態2.
図6はこの発明によるパッシブ測角装置の構成の別の例を示す図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。実施の形態1に記載した検出信号処理部6により検出され記憶部7に格納された、各角度ステップの各周波数ステップ毎のパルスの種類の数である波源数を示す波源数情報100と各パルスのPRIからなるPRI情報101、さらにECMフラグマップのECMフラグ情報102が追尾信号処理部5へ、波源数情報100が測角信号処理部4へそれぞれ送られる。103は測角信号処理部4から追尾信号処理部5へ送られる測角結果である測角値情報を示す。
【0036】
これにより測角信号処理部4と追尾信号処理部5は、各信号特性に応じた測角処理と追尾処理を選択するための判断基準を得ることができる。もし仮にこれらの判断基準となる情報が得られない場合、測角信号処理部4ではジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置の存在する角度ステップに対し超分解能測角法を適用してしまう場合がある。
【0037】
上述のように、超分解能測角法は一般的に信号処理部での演算負荷が大きく、長い処理時間を要する。パッシブ測角装置としては、これらの不要と思われるジャミング信号などへ処理時間を割かれるよりも、重要なレーダー装置や秘匿通信機の処理に時間を費やすべきであり、本実施の形態に記載のように検出信号処理部6による各入射信号の特性情報(100〜102)を受けることで、例えば測角信号処理部4であれば、測角処理に超分解能測角法を用いるのか又は分解能は劣るが演算負荷は小さな他の測角手法を採用するのかの判断が可能となり、パッシブ測角装置としての運用効率化を図ることができる。
【0038】
以上のように構成することで、捜索対象としている角度ステップの周波数ステップにおいて、電波放射源による放射信号が観測された場合には、検出信号処理部においてこの放射信号がレーダー装置や秘匿通信機に特有の特徴量を持つか否かを判定する基準を設定し、測角信号処理部と追尾信号処理部に情報として渡すことで、これらの電波放射源の存在方向を測角する測角信号処理部における測角手法の選択や追尾信号処理部における追尾手法の選択基準を定めることが可能になり、パッシブ測角装置全体としての処理の効率化を図ることが可能となる。
【0039】
実施の形態3.
図7はこの実施の形態によるパッシブ測角装置を説明するための図、図8はこの実施の形態によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。図7において(a)は通常状態、(b)はこの実施の形態によるアンテナのビームパターン補正後の状態を示す。Tは検出対象電波放射源、Jは妨害電波放射源を示す。図8において信号処理装置3はアダプティブ信号処理部10をさらに備える。
【0040】
次に動作について説明する。上記実施の形態2において、捜索過程にある、ある角度ステップでECMフラグが“1”にセットされる等の妨害電波放射源Jからの放射信号を検出した場合には、(b)に示すように該角度に対する受信アンテナ1の受信感度を低く設定することで、不要な放射信号による信号処理装置3への干渉や装置の感度低下などの弊害を低減させる。この時、信号処理装置3内部において、この角度方向に対して受信アンテナ1の感度パターンSPにナル(不感領域)を形成するようなアダプティブ信号処理を行う。これらのアダプティブ信号処理として、例えばMSN(Maximum Signal-to-Noise Ratio)アルゴリズム、DCMP(Directionally Constrained Minimization of Power)アルゴリズムが挙げられる。
【0041】
従って信号処理装置3は、記憶部7に格納された図4に示すECMフラグマップの情報を検出信号処理部6から得て、これに従ってアダプティブ信号処理を行い、受信機2にECMフラグマップの情報に従った角度方向に不感領域を形成させるための制御信号を出力するアダプティブ信号処理部10をさらに備える。
【0042】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップにおいて、電波放射源による放射信号が観測され、かつ検出信号処理部にてジャミング信号発生装置などによる妨害波と判断され、ECMフラグが”0”以外にセットされた場合、この方向の受信アンテナの感度パターンにナルを形成するようなアダプティブ信号処理を行うので、信号処理装置3におけるジャミング信号などの不要波(検出対象でない妨害電波放射源等を含む電波放射源からの放射信号)による干渉や感度低下を抑えることができる。
【0043】
実施の形態4.
図9はこの実施の形態によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。受信機2には出力制御部11が設けられている。次に動作について説明する。捜索過程のある角度ステップの周波数ステップでECMフラグが”0”以外にセットされる等、不要波の入射を検出した場合には、受信機2における当該周波数ステップに帯域阻止フィルタを構成し、この部分の受信機2の出力信号レベルを低下させることにより、信号処理装置3において不要波による干渉や感度低下などの弊害を低減させる。
【0044】
従って記憶部7に格納された図4に示すECMフラグマップの情報が検出信号処理部6から受信機2の出力制御部11に送られる。出力制御部11はECMフラグマップの情報に従って、不要波の入射を検出した周波数ステップに相当する周波数帯に帯域阻止フィルタを構成し、この部分の出力信号レベルを低下させる。帯域阻止フィルタや帯域通過フィルタとして具体的には、例えばチャネルフィルタ(Channelized Filter)などにより、捜索対象の周波数帯をいくつかの小さな帯域に分割し、それぞれの分割帯域に対して通過損失を任意に設定できるような装置とする。
【0045】
以上のように構成することで、捜索対象としている角度ステップの周波数ステップにおいて、電波放射源による放射信号が観測され、かつ検出信号処理部6にてジャミング信号発生装置などによる妨害波と判断し、ECMフラグが”0”以外にセットされた場合、受信機2内部でその周波数ステップに対する出力を低下させる帯域阻止フィルタを設けることで、信号処理装置3における不要波による干渉や感度低下を低減することができる。
【0046】
実施の形態5.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6と同様である。次に動作について説明する。この実施の形態では、上記実施の形態2において、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、以降の捜索過程において当該角度ステップに対する捜索や追尾処理を簡略化したものもとする。当該角度ステップから入射する放射信号は、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置によるものと判定されており、本パッシブ測角装置に誤動作を発生させようとするものである。
【0047】
これらの不要波に多くの処理時間を費やし、他の重要なレーダー装置や秘匿通信機による放射信号を処理する物理的リソース(時間・内部メモリなど)を失うことは、運用上問題がある。不要波に対する捜索や追尾処理を簡略化するとは、例えば、追尾信号処理部5で検出信号処理部6からECMフラグが”0”以外にセットされた情報を含むECMフラグ情報102を受けた場合に、ECMフラグが”0”以外にセットされた角度ステップに関して、毎回の捜索過程で当該角度をサーチ(捜索)するのではなく、2回毎、または5回毎など、サーチする時間間隔を広げる、言い換えると捜索、追尾頻度を下げた簡略化した処理を行うようにする。これにより捜索、追尾に要する処理負荷を低減することができる。
【0048】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、以降の捜索過程において当該角度ステップに対する捜索や追尾処理を簡略化したものとすることで、不要波に対する信号処理の演算負荷を下げ、パッシブ測角装置全体として効率的な負荷分散と運用を図ることができる。
【0049】
実施の形態6.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6と同様である。但し本実施の形態では、測角信号処理部4にも検出信号処理部6からECMフラグ情報102が送られる。次に動作について説明する。上記実施の形態2において、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、当該角度ステップから入射する放射信号は、ジャミング信号発生装置や欺瞞信号発生装置などの不要波によるものと判定されており、測角信号処理部4は演算負荷が超分解能測角法より比較的小さなモノパルス測角法を採用する。
【0050】
不要波に多くの処理時間を費やし、他の重要なレーダー装置や秘匿通信機による放射信号を処理する物理的リソース(時間・内部メモリなど)を失うことは、運用上問題がある。さらに不要波の到来方向探知であれば、超分解能測角法のような数度程度の測角精度は不要であり、これより精度は悪化するが演算負荷の小さなモノパルス測角法であっても、その後に続く信号処理に対しては実用上大きな問題は発生しない。
【0051】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、測角信号処理部4における当該角度ステップに対する測角手法にモノパルス測角法等を適用することで、不要波に対する信号処理の演算負荷を下げ、パッシブ測角装置全体として効率的な負荷分散と運用を図ることができる。
【0052】
実施の形態7.
図10はこの発明によるパッシブ測角装置の構成のさらに別の例を示す図である。上記図6に示すものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。検出信号処理部6は検出信号処理部6で最初に不要波が検出された時刻や不要波の電力値を他の情報と共に記憶部7に格納すると共に、時刻・電力値情報104を追尾信号処理部5に出力する。次に動作について説明する。上記実施の形態2において、捜索過程のある角度ステップの周波数ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合には、検出信号処理部6からの波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4からのモノパルス測角法による測角値情報103に加え、検出信号処理部6で最初に不要波が検出された時刻や不要波の電力値を記述した時刻・電力値情報104が付加されて追尾信号処理部5へ出力される。
【0053】
追尾信号処理部5ではこれらを時系列に内蔵するメモリ(図示省略)に記録する。これにより追尾信号処理部5内での不要波の継続時間や電力レベルの変動などの追尾パラメータが増加し、より柔軟性の高い捜索・追尾処理選択が可能となる。もし、所定時間以上不要波の継続が確認された場合には、当該角度ステップの周波数ステップに対する捜索や追尾処理をさらに簡略化するなどの措置を取ることも考えられる。また、時刻・電力値情報104が備わっているため、パッシブ測角装置の運用とは別にオフラインでデータを処理した際の分類要素が増加し、より細かな運用管理を設定することができる。
【0054】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合に、検出信号処理部6からの波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4からのモノパルス測角法による測角値情報103に加え、検出信号処理部6で最初に不要波が検出された時刻や不要波の電力値を記述した時刻・電力値情報104を付加して追尾信号処理部5へ出力して追尾信号処理部5で記憶しておくことで、追尾信号処理部5における捜索・追尾過程の動作選択に対する判断基準指標が増加し、より柔軟性の高い捜索・追尾処理選択が可能となる効果が得られる。
【0055】
実施の形態8.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図10の実施の形態7のものと同様である。次に動作について説明する。捜索過程のある角度ステップの周波数ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合に、検出信号処理部6からの波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4からのモノパルス測角法による測角値情報103に加え、検出信号処理部6での時刻・電力値情報104を付加して追尾信号処理部5へ出力し、追尾信号処理部5ではこれらを時系列に内蔵するメモリ(図示省略)に記録するまでは、上記実施の形態7と同様である。
【0056】
この実施の形態ではさらに、追尾信号処理部5にて入力された測角値情報103やその他の情報をメモリに記録された過去の同一電波放射源に対する記録データと比較し、測角値情報103やその他の情報の時間変化などを検証する。この結果、今回入力(取得)されたデータと過去の累積データ間に大きな(所定値以上の)相違が発見されなかった場合は、当該電波放射源は不要波によるものという判定を変更せずに、当該電波放射源に対する処理には、実施の形態5に記載の簡略化された処理を引き続き採用する。
【0057】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合に、追尾信号処理部5に記録された当該電波放射源に対する過去の累積情報を元に、今回取得された受信データの真偽を判定することが可能になるため、電波放射源の特性や重要度に応じた負荷分散と処理選択精度の向上が図れる。
【0058】
実施の形態9.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図10の実施の形態7及び8のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態8において、追尾信号処理部5にて今回の測角値情報103やその他の情報を過去の同一電波放射減に対する記録データと比較し、情報の一部もしくは全てにおいて大幅な相違点が発見されたとする。この場合、当該電波放射源は不要波によるものとこれまで判定していたが、長時間観測の結果、実際にはパッシブ測角装置が重要と位置づけるレーダー装置や秘匿通信機からのものであったと判明する可能性が考慮される。
【0059】
したがってこの場合、現在割り当てている当該電波放射源に対する捜索や追尾の処理簡略化から通常の処理に復帰させる必要性が発生する。ただし、相違点が発見された後、ただちに復帰するのではなく、数回連続で大幅な相違点が発見された後に復帰する措置が望ましい。なぜなら、瞬間的なノイズ電力や周囲環境の変動などにより、一時的に測角値情報103や時刻・電力値情報104に含まれる誤差が大きくなる可能性があるためである。
【0060】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでECMフラグが”0”以外にセットされるなど不要波の入射を検出した場合に、追尾信号処理部5に記録された当該電波放射源に対する過去の累積情報を元に、今回取得された受信データの真偽を判定し、現在割り当てている当該電波放射源に対する処理簡略化などの選択が正しいかどうかの検証を行うことで、電波放射源の特性や重要度に応じた処理選択の精度と信頼性を向上させ、さらに重要な電波放射源に対するデータ欠落を抑止することができる。
【0061】
実施の形態10.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6の実施の形態2,5,6のものと同様である。図11はこの実施の形態の動作を説明するためのECMフラグマップの一例を示す図である。次に動作について説明する。実施の形態1で説明したように、捜索過程が一巡した後に図4に示すECMフラグマップを作成する。捜索過程のある角度ステップ、周波数ステップでパルス波または周波数ホッピング波が検出された場合、この放射信号はパッシブ測角装置が重要度が高いと位置づけるレーダー装置や秘匿通信機によるものと判断される。
【0062】
そこでこの場合、これらの電波到来角方向に追尾処理を割り当て、図4と同じ図11の(a)に示すマップを(b)に示すようなマップに更新して監視体制に移行する措置をとる。すなわち記憶部7に格納されたECMフラグマップのPRI情報が追尾目標情報に更新されて、PRI情報101が追尾目標情報として追尾信号処理部5に送られる。これにより追尾信号処理部5は、追尾目標情報に基づく目標を追尾するよう追尾指令を受信機2へ送り、捜索過程から追尾過程へ動作モードが遷移する。また、図11の(b)に示すようなマップを生成して表示部(図示省略)に表示することで、例えばオペレータはどの電波放射源にどのような処理を選択しているかが視覚的に把握しやすく、運用の効率化と信頼性向上が図れる。
【0063】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップ、周波数ステップで重要度の高い電波放射源が検出された場合、当該角度、周波数方向に追尾処理を割り当てることで監視体制に移行することができる。
【0064】
実施の形態11.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6の実施の形態2,5,6,10のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態10において、捜索過程にある、ある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高い、すなわち検出対象の電波放射源からの放射信号の可能性有りと判定される放射信号(電波)が検出された場合、検出信号処理部6から追尾信号処理部5にPRI情報101に変わって追尾目標情報が送られることで、追尾信号処理部5は測角値情報103に基づく電波到来角方向に追尾処理を割り当て、監視体制に移行する措置をとる。
【0065】
この時、捜索過程から監視体制すなわち追尾過程に遷移したことを示す動作モード信号を検出信号処理部6から測角信号処理部4に送ることで、測角信号処理部4が追尾過程への遷移を認識して測角手法にMUSIC法などの超分解能測角法を適用する。これにより、重要性の高い電波到来角方向に対し、モノパルス測角法よりも高精度な測角が可能となり、精密な方向探知および追尾処理を実現できる。
【0066】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップで重要度の高い電波が検出された場合、当該角度方向に対する測角手法にMUSIC法などの超分解能測角法を適用することで、重要かつ優先度の高い電波放射源の精度の高い方向探知および追尾処理を実現でき、測角精度や追尾精度を向上させることができる。
【0067】
実施の形態12.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6の実施の形態2,5,6,10,11のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態11では、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、即座にMUSIC法など超分解能測角法による測角処理を採用した。しかし前述のように、超分解能測角法は一般的に演算負荷が高いため、適用範囲をできるだけ限定した方が信号処理装置の応答性を高めるためにも望ましい。このため測角信号処理部4では、まずは演算負荷の比較的小さなモノパルス測角法により、重要電波放射源のおおよその存在範囲を特定した後、この特定範囲内を超分解能測角法により精密測角する。
【0068】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップで重要度の高い電波が検出された場合、最初は演算負荷の比較的小さなモノパルス測角などでおおよその存在範囲を特定し、次にこの範囲内を超分解能測角法で精密測角することにより、超分解能測角法による演算負荷の上昇を抑え、かつ精密な角度分解能を得ることができる。
【0069】
実施の形態13.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図6の実施の形態2,5,6,10,11,12のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態11では、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、測角信号処理部4における測角手法にMUSIC法などの超分解能測角法を適用する。しかし、前述のように、超分解能測角法を適用する際には、事前にその適用角度範囲内での波源数(電波放射源の数)を正確に推定する必要がある。
【0070】
波源数を誤って指定したまま超分解能測角法を適用した場合、真値と異なる方向に測角値を推定するだけでなく、不要な長い演算時間が費やされる場合がある。例えばMUSIC法の場合、受信信号の相関特性を示す共分散行列を固有値展開し、大きい固有値の順に並べる。次にこれらの固有値を大きい値から波源数分だけ取り除く。MUSIC法の角度スペクトルは、残りの小さな固有値に対応する固有ベクトルが電波到来方向ベクトルと直行する関係を用いており、電波到来方向に対して高いピークを示す。
【0071】
しかし、上記の波源数が正しい値でなく、本来取り除かれる固有値が除外されない、またはその逆に重要な固有値を取り除くなどの処理を行った場合、正しい角度スペクトルが得られない。さらに角度スペクトルの演算負荷は波源数に影響を受ける。したがって、超分解能測角法における波源数の推定には細心の注意を払う必要がある。
【0072】
本実施の形態では、検出信号処理部6において、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、それらの放射信号(受信素波)が複数電波源による合成信号かどうか、およびいくつの信号の合成によるかをパルス列分類部64に準じた方法で検出・分類を行う。これは、上述の特許文献3に記載の固有値の大きさを比較することにより波源数を推定する手法とは異なり、受信素波の波形自体に着目した分類方法であるため、所望信号とノイズ信号の電力比であるSN比や周囲環境のノイズによる変動の影響を軽減する効果がある。このパルス列分類部64により検出された波源数情報100を用い、測角信号処理部4で超分解能測角法を使用することにより、より高精度な測角値を得ることが可能になる。
【0073】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップで重要度の高い電波が検出された場合、検出信号処理部6にて波源数情報100を検出し、測角信号処理部4に渡す。測角信号処理部4ではこの波源数情報100を用いて超分解能測角法の計算精度を向上させ、演算負荷を最適化することができる。
【0074】
実施の形態14.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図10の実施の形態7,8,9のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態13において、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、検出信号処理部6における波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4における測角値情報103に加え、パルス波や周波数ホッピング波の検出時刻や電力値データなどの時刻・電力値情報104が付加されて、追尾信号処理部5へ出力される。
【0075】
追尾信号処理部5ではこれらを時系列に内蔵するメモリ(図示省略)に記録する。これにより追尾信号処理部5は検出対象の可能性のある重要な電波放射源の追尾処理に用いるパラメータが増加する利点を獲得し、より柔軟で精密な追尾処理を選択、実行することが可能になる。特に時刻・電力値情報104を追尾情報として用いることにより、その他の情報の時系列変化を知ることができ、重要な電波放射源の特性をより細かく評価することが可能になる。
【0076】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、検出信号処理部6における波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4における測角値情報103に加え、パルス波や周波数ホッピング波の検出時刻や電力値データなどの時刻・電力値情報104を付加し、追尾信号処理部5へと渡すことにより、追尾信号処理部5において追尾処理に用いる情報が増加し、より柔軟で精密な追尾処理を選択、実行することが可能になる。
【0077】
実施の形態15.
図12はこの発明によるパッシブ測角装置の構成のさらに別の例を示す図である。上記図10に示すものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。追尾信号処理部5は測角信号処理部4に捜索範囲情報105を供給する。
【0078】
次に動作について説明する。上記実施の形態14において、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、検出信号処理部6における波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102、および測角信号処理部4における測角値情報103に加え、パルス波や周波数ホッピング波の検出時刻や電力値データなどの時刻・電力値情報104を付加し、追尾信号処理部5へ供給する。追尾信号処理部5ではこれらをメモリ(図示省略)に記録する。
【0079】
この際、測角信号処理部4においてはMUSIC法などの超分解能測角法が適用されているが、上述のように超分解能測角法は捜索対象としている角度範囲内で角度スペクトルを計算するため、一般的にモノパルス測角法に比較して演算負荷が大きいという欠点を持つため、捜索角度範囲が大きいほど演算負荷が増大する。
【0080】
しかし、追尾信号処理部5において、測角信号処理部4からの測角値情報103と当該電波放射源に対する過去の測角値の累積情報を比較し、当該電波放射源が移動する場合に到来角度の時間変化を監視することで、移動速度や移動方向などの傾向を情報として得ることができる。したがってこれらの傾向を元に、次回の捜索・追尾過程における当該電波放射源の存在エリアを想定し、次回の超分解能測角法の捜索範囲をこの存在エリアを含む部分に設定する。
【0081】
すなわち追尾信号処理部5は、放射信号の特性情報に基づき、放射信号が検出対象の電波放射源によるものと検出された場合に、過去の記憶情報からその放射信号源の移動速度、移動方向を求め、次回の追尾過程動作時の未来位置を予想し、その角度ステップ、周波数ステップの周辺に次回の追尾過程における測角信号処理部4による超分解能測角法の捜索範囲を設定する。設定された捜索範囲は捜索範囲情報105として測角信号処理部4へ供給する。測角信号処理部4はこの情報を用いることにより超分解能測角法で捜索する角度範囲を最適化できる。
【0082】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、追尾信号処理部5内の過去の累積情報を元に次回の捜索・追尾過程における当該電波放射源の存在エリアを想定し、測角信号処理部4における超分解能測角法の捜索範囲を最適に設定することで、超分解能測角法で問題となる不要な演算負荷の増大を低減し、パッシブ測角装置全体としての処理速度や反応速度を向上させることが可能になるという効果が得られる。
【0083】
実施の形態16.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図12の実施の形態15のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態15において、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、追尾信号処理部5内の過去の累積情報を元に次回の捜索・追尾過程における当該電波放射源の存在エリアを想定し、測角信号処理部4における超分解能測角法の捜索エリア(範囲)を設定したが、最新の測角値が過去の累積情報と比較して大きく相違した場合、次の原因が考えられる。
(1):上記の捜索エリアの設定が誤っていた可能性、
(2):電波放射源が移動体の場合、想定以上に早い速度で移動していた可能性、
(3):周囲環境やノイズ電力が一時的に変動したことによる影響、
(4):超分解能測角法における波源数設定値が誤っていた可能性。
【0084】
(1)に対しては探索エリアの設定を見直すことが必要となるため、各想定原因に対してそれぞれ次の対策が考えられる。
(1)に対しては、
(1-1)より広い捜索範囲を設定して再度測角する、
(1-2)一時的に現在使用している当該電波放射源に対する追尾情報(存在角度、速度、移動方向)などのデータを破棄して、捜索の過程に戻す。
(2)に対しては、
(2-1)より広い捜索範囲を設定して再度測角する、
(2-2)高速で移動する電波放射源に対しては、一時的に高速に演算可能なモノパルス測角法を使用する。
(3)に対しては、(3-1)さらに数回の測角値データを観察し、時間平均の効果でノイズなどの影響を低減する。
(4)に対しては、(4-1)波源数設定を変えて再度超分解能測角する、などが考えられる。
【0085】
上記の種々の対策を施しても、同様に想定捜索エリア内に当該電波放射源が測角できなかった場合には、電波放射源側の放射が停止された可能性も考慮し、再度捜索の過程に戻すことも考えられる。これらの措置はすべて、複雑に変動する電波環境において、パッシブ測角装置により得られる推定値の真偽を判定し、重要目標への追尾性能維持、偽目標へのミスロックなどの弊害を低減するための動作である。
【0086】
すなわち追尾信号処理部5は、上述のようにして次回の追尾過程における測角信号処理部4による超分解能測角法の捜索範囲を設定するが、次回の追尾過程において測角信号処理部4から目標とする放射信号の電波放射源の測角値が得られなかった場合には、一旦追尾過程動作を中止し、捜索過程へ動作モードを切り替える。
【0087】
以上のように構成することで、捜索過程のある角度ステップでパルス波または周波数ホッピング波など重要性が高いと判定される電波が検出された場合、追尾信号処理部5内の過去の累積情報を元に次回の捜索・追尾過程における当該電波放射源の存在エリアを想定し、測角信号処理部4における超分解能測角法の捜索範囲を設定したが、最新の測角値が過去の累積情報と比較して大きく相違した場合に、早急に次の動作を選択することが可能になり、複雑に変動する電波環境において、パッシブ測角装置により得られる推定値の真偽を判定し、重要目標への追尾性能維持、偽目標へのミスロックなどの弊害を低減することができる。
【0088】
実施の形態17.
図13はこの発明によるパッシブ測角装置の構成のさらに別の例を示す図である。上記図12に示すものと同一もしくは相当部分は同一符号で示す。106、107は測角信号処理部4、追尾信号処理部5がそれぞれ検出信号処理部6に出力する第2、第3波源数情報(100を第1波源数情報とする)である。
【0089】
次に動作について説明する。上記実施の形態2に記載したように、検出信号処理部6により検出された波源数情報100、PRI情報101、ECMフラグ情報102がそれぞれ測角信号処理部4と追尾信号処理部5へ供給される。この情報に基づき測角信号処理部4は測角処理を、追尾信号処理部5は追尾処理を行うが、測角信号処理部4および追尾信号処理部5でも検出信号処理部6とは違った物理量に基づく波源数推定や電波放射源の特性評価を行うことができる。
【0090】
測角信号処理部4においては、例えば上記特許文献3にも記載の「受信信号共分散行列の固有値の大きさから入射信号個数(波源数)を推定する方法」を用いる。また、追尾信号処理部5においては、「過去の累積情報を元にした追尾航跡の連続性による評価方法」を用いる。これらの各方式は、検出信号処理部6において波源数推定に用いる「パルス列分類法」とは異なる観点による情報を与える。「パルス列分類法」は受信素波の波形自体に着目した手法である。測角信号処理部4における「固有値の大きさによる分類法」は、各電波放射源が放射する電波の、受信アンテナ1における受信電力値に着目している。また、追尾信号処理部5における「追尾航跡の連続性評価法」は、過去から現時点までに追尾している電波放射源の移動航跡に基づく未来の予想位置と実際の測角結果が、現実的以上(所定値以上)に乖離することは無いとする評価法である。
【0091】
つまりそれぞれの評価基準は独立であり、個別の情報として用いることができる。測角信号処理部4で得た第2波源数情報106、および追尾信号処理部5で得た第3波源数情報107を検出信号処理部6へフィードバックする。これにより、検出信号処理部6における電波放射源の波源数や重要度などの推定に用いる情報量が増加する。
【0092】
なお、測角信号処理部4および追尾信号処理部5から検出信号処理部6へフィードバックする情報は波源数に限定されず、それぞれの電波放射源の特性評価結果に基づくその他の情報も併せて電波放射源の特性評価情報としてフィードバックするようにしてもよい。さらに図13中の矢印に示すものに限定されることなく、測角信号処理部4、追尾信号処理部5、検出信号処理部6の間で必要な情報の交換を行うようにしてもよい。
【0093】
以上のように構成することで、測角信号処理部4および追尾信号処理部5の各装置内部で独立の波源数推定を行い、検出信号処理部6へフィードバックすることで、検出信号処理部6における電波放射源の波源数や重要度などの推定に用いる情報を増やすことができる。
【0094】
実施の形態18.
本実施の形態によるパッシブ測角装置の構成は基本的に図13の実施の形態17のものと同様である。次に動作について説明する。上記実施の形態17に記載した検出信号処理部6、測角信号処理部4、追尾信号処理部5の各装置間でそれぞれ独立の波源数推定や電波放射源の特性評価を行い、これらの情報のやり取りを行うことで、互いの間で推定精度を補完しあい、電波放射源の波源数や重要度などの情報をより高精度に推定することが可能になる。
【0095】
測角信号処理部4からの第2波源数情報106および追尾信号処理部5からの第3波源数情報107によるフィードバック情報を受け、検出信号処理部6では次回の検出、分類処理の検証を自己的に行うことが可能になり、他部の推定結果と極端に異なる推定値を棄却するなどの処理を選択することも可能になる。これらの動作を実現するために、各装置又は各部にはカルマンフィルタなどの再帰的アルゴリズムを搭載することも考えられる。
【0096】
以上のように構成することで、検出信号処理部6、測角信号処理部4、および追尾信号処理部5の各部で独立の波源数推定や電波放射源の特性評価を行い、これらの情報のやり取りを行うことで、互いの間で推定精度を補完しあい、電波放射源の波源数や重要度などの情報をより客観的に高精度に推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の実施の形態1によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図2】この発明のパッシブ測角装置の捜索過程における動作を説明するための図である。
【図3】この発明における検出信号処理部の構成の一例を示した図である。
【図4】この発明によるパッシブ測角装置におけるECMフラグマップの一例を示す図である。
【図5】この発明における検出信号処理部の動作を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態2,5〜6,10〜13によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるパッシブ測角装置を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態3によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態4によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態7〜9、14によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図11】この発明によるパッシブ測角装置におけるECMフラグマップの別の例を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態15、16によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態17、18によるパッシブ測角装置の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1 受信アンテナ、2 受信機、3 信号処理装置、4 測角信号処理部(測角信号処理手段)、5 追尾信号処理部(追尾信号処理手段)、6 検出情報処理部(検出情報処理手段)、7 記憶部(記憶手段)、10 アダプティブ信号処理部(信号処理手段)、11 出力制御部(出力制御手段)、61 距離方向CFAR部、62 周波数方向CFAR部、63 CW信号検出部、64 パルス列分類部、100 (第1)波源数情報、101 PRI情報、102 ECMフラグ情報、103 測角値情報、104 時刻・電力値情報、105 捜索範囲情報、106 第2波源数情報、107 第3波源数情報。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自らは電波を放射せずに電波放射源からの放射信号による電波を受信する受信アンテナと、
電波放射源捜索の過程で捜索範囲を所定の角度ステップで分割し、各角度ステップにおいて所定の周波数範囲を所定の周波数ステップで分割した、各角度ステップの各周波数ステップ毎に前記受信アンテナにより受信された電波を受信信号として出力する受信機と、
前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号に基づき電波放射源の測角を行う信号処理装置と、
を備え、
前記信号処理装置が、前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号の特性を評価して、各角度ステップの各周波数ステップ毎に電波放射源が検出対象か否かを示す放射信号の特性情報を生成する検出信号処理手段と、前記受信機からの受信信号を受け、前記検出信号処理手段の特性情報に基づき検出対象の電波放射源からの放射信号か否かを考慮しながら受信信号中の放射信号の電波放射源の測角を行う測角信号処理手段とを含む、
ことを特徴とするパッシブ測角装置。
【請求項2】
信号処理装置が、検出信号処理手段からの特性情報及び測角信号処理手段での測角結果に基づき電波放射源の方向を追尾させるよう制御信号を出力する追尾信号処理手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパッシブ測角装置。
【請求項3】
検出信号処理手段が、特性情報として電波放射源からの放射信号のパルス繰返し時間間隔を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のパッシブ測角装置。
【請求項4】
測角信号処理手段が、検出信号処理手段からの特性情報に従って分解能の異なる測角を行うことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッシブ測角装置。
【請求項5】
信号処理装置が、検出信号処理手段から各角度ステップの各周波数ステップ毎の検出対象ではない電波放射源があることを示す特性情報を受けると、受信機に該特性情報に従って不感領域を形成させる制御信号を出力する信号処理手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッシブ測角装置。
【請求項6】
受信機が、検出信号処理手段からの特性情報を受け、検出対象ではない電波放射源があることを示す特性情報を受けると、前記特徴情報に従って、検出対象ではない電波放射源がある周波数ステップに相当する周波数帯での出力信号レベルを低下させる出力制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッシブ測角装置。
【請求項7】
追尾信号処理手段が、検出信号処理手段から検出対象ではない電波放射源があることを示す特性情報を受けると、該角度ステップに関する追尾処理を簡略化されたものにすることを特徴とする請求項2又は3に記載のパッシブ測角装置。
【請求項8】
測角信号処理手段が、検出信号処理手段から検出対象ではない電波放射源があることを示す特性情報を受けると、該放射信号に対する測角処理に低演算量の測角法を選択することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッシブ測角装置。
【請求項9】
検出信号処理手段が、検出対象ではない電波放射源からの放射信号を含む受信機からの受信信号を受けると、該放射信号の時刻情報及び電力値情報を付加した放射信号の特性情報を生成し、追尾信号処理手段が測角信号処理手段での測角結果と共に前記放射信号の特性情報を記憶することを特徴とする請求項2又は3に記載のパッシブ測角装置。
【請求項10】
追尾信号処理手段が、同一電波放射源からの放射信号に対する測角信号処理手段からの測角結果を過去の記録と比較し、比較結果が所定値以上異なるものでない場合は、該電波放射源に対する追尾処理を簡略化しこれを続けることを特徴とする請求項9に記載のパッシブ測角装置。
【請求項11】
追尾信号処理手段が、比較結果が所定値以上異なる場合は、該電波放射源に対する簡略化した追尾処理を中止することを特徴とする請求項10に記載のパッシブ測角装置。
【請求項12】
追尾信号処理手段が、検出信号処理手段から検出対象の電波放射源からの放射信号があり追尾過程に入ることを示す特性情報を受けると、捜索過程から追尾過程へ動作モードを遷移させることを特徴とする請求項2又は3に記載のパッシブ測角装置。
【請求項13】
検出信号処理手段が、捜索過程から追尾過程に遷移することを示す動作モード信号を測角信号処理手段に送ることで、測角信号処理手段が該電波放射源からの放射信号に対する測角処理に超分解能測角法を適用することを特徴とする請求項12に記載のパッシブ測角装置。
【請求項14】
検出信号処理手段が、捜索過程から追尾過程に遷移することを示す動作モード信号を測角信号処理手段に送ることで、測角信号処理手段が該電波放射源からの放射信号に対する測角処理を、最初に低演算量の測角法を適用し、捜索範囲を絞り込んだ後、超分解能測角法を適用することを特徴とする請求項12に記載のパッシブ測角装置。
【請求項15】
検出信号処理手段が、検出対象の電波放射源からの放射信号を含む受信機からの受信信号を受けると、受信信号の中に含まれる放射信号源の数を検出し、その波源数を放射信号の特性情報として測角信号処理手段と追尾信号処理手段に送り、測角信号処理手段が波源数を用いて超分解能測角処理を行うことを特徴とする請求項13に記載のパッシブ測角装置。
【請求項16】
検出信号処理手段が、検出対象の電波放射源からの放射信号を含む受信機からの受信信号を受けると、該放射信号の時刻情報及び電力値情報を付加した放射信号の特性情報を生成し、追尾信号処理手段が測角信号処理手段での測角結果と共に前記放射信号の特性情報を記憶し、追尾情報として使用することを特徴とする請求項13に記載のパッシブ測角装置。
【請求項17】
追尾信号処理手段が、放射信号の特性情報に基づき、放射信号が検出対象の電波放射源によるものである場合に、過去の記憶されている情報から該放射信号源の移動速度、移動方向を求め、次回の追尾過程動作時の位置を予想し、その角度ステップ、周波数ステップの周辺に測角信号処理手段による超分解能測角法の捜索範囲を設定し、捜索範囲情報を測角信号処理手段に出力し、前記測角信号処理手段が、前記捜索範囲情報に従って捜索範囲を決めることを特徴とする請求項16に記載のパッシブ測角装置。
【請求項18】
追尾信号処理手段が、次回の追尾過程において測角信号処理手段から目標とする放射信号源の測角値が得られなかった場合には、一旦追尾過程動作を中止し、捜索過程へ動作モードを切り替えることを特徴とする請求項17に記載のパッシブ測角装置。
【請求項19】
検出信号処理手段から電波放射源の波源数を含む放射信号の特性情報を測角信号処理手段および追尾信号処理手段に供給し、前記測角信号処理手段および追尾信号処理手段において前記検出信号処理手段とは独立の電波放射源の波源数推定を含む電波放射源の特性評価を行い、それぞれの電波放射源の特性評価情報を検出信号処理手段へフィードバックすることを特徴とする請求項2又は3に記載のパッシブ測角装置。
【請求項20】
検出信号処理手段が、フィードバックされた電波放射源の特性評価情報を次回の放射信号の検出、分類に使用することを特徴とする請求項19に記載のパッシブ測角装置。
【請求項21】
自らは電波を放射せずに電波放射源からの放射信号による電波を受信する受信アンテナおよび受信機を制御し、電波放射源捜索の過程で捜索範囲を所定の角度ステップで分割し、各角度ステップにおいて所定の周波数範囲を所定の周波数ステップで分割した、各角度ステップの各周波数ステップ毎に受信された電波を受信信号として得て、受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号に基づき電波放射源の測角を行うパッシブ測角方法であって、
前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号の特性を評価して、各角度ステップの各周波数ステップ毎に電波放射源が検出対象か否かを示す放射信号の特性情報を生成する工程と、
前記放射信号の特性情報に基づき検出対象の電波放射源からの放射信号か否かを考慮しながら受信機からの受信信号中の放射信号の電波放射源の測角を行う工程と、
を備えたことを特徴とするパッシブ測角方法。
【請求項1】
自らは電波を放射せずに電波放射源からの放射信号による電波を受信する受信アンテナと、
電波放射源捜索の過程で捜索範囲を所定の角度ステップで分割し、各角度ステップにおいて所定の周波数範囲を所定の周波数ステップで分割した、各角度ステップの各周波数ステップ毎に前記受信アンテナにより受信された電波を受信信号として出力する受信機と、
前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号に基づき電波放射源の測角を行う信号処理装置と、
を備え、
前記信号処理装置が、前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号の特性を評価して、各角度ステップの各周波数ステップ毎に電波放射源が検出対象か否かを示す放射信号の特性情報を生成する検出信号処理手段と、前記受信機からの受信信号を受け、前記検出信号処理手段の特性情報に基づき検出対象の電波放射源からの放射信号か否かを考慮しながら受信信号中の放射信号の電波放射源の測角を行う測角信号処理手段とを含む、
ことを特徴とするパッシブ測角装置。
【請求項2】
信号処理装置が、検出信号処理手段からの特性情報及び測角信号処理手段での測角結果に基づき電波放射源の方向を追尾させるよう制御信号を出力する追尾信号処理手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパッシブ測角装置。
【請求項3】
検出信号処理手段が、特性情報として電波放射源からの放射信号のパルス繰返し時間間隔を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のパッシブ測角装置。
【請求項4】
測角信号処理手段が、検出信号処理手段からの特性情報に従って分解能の異なる測角を行うことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッシブ測角装置。
【請求項5】
信号処理装置が、検出信号処理手段から各角度ステップの各周波数ステップ毎の検出対象ではない電波放射源があることを示す特性情報を受けると、受信機に該特性情報に従って不感領域を形成させる制御信号を出力する信号処理手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッシブ測角装置。
【請求項6】
受信機が、検出信号処理手段からの特性情報を受け、検出対象ではない電波放射源があることを示す特性情報を受けると、前記特徴情報に従って、検出対象ではない電波放射源がある周波数ステップに相当する周波数帯での出力信号レベルを低下させる出力制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッシブ測角装置。
【請求項7】
追尾信号処理手段が、検出信号処理手段から検出対象ではない電波放射源があることを示す特性情報を受けると、該角度ステップに関する追尾処理を簡略化されたものにすることを特徴とする請求項2又は3に記載のパッシブ測角装置。
【請求項8】
測角信号処理手段が、検出信号処理手段から検出対象ではない電波放射源があることを示す特性情報を受けると、該放射信号に対する測角処理に低演算量の測角法を選択することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のパッシブ測角装置。
【請求項9】
検出信号処理手段が、検出対象ではない電波放射源からの放射信号を含む受信機からの受信信号を受けると、該放射信号の時刻情報及び電力値情報を付加した放射信号の特性情報を生成し、追尾信号処理手段が測角信号処理手段での測角結果と共に前記放射信号の特性情報を記憶することを特徴とする請求項2又は3に記載のパッシブ測角装置。
【請求項10】
追尾信号処理手段が、同一電波放射源からの放射信号に対する測角信号処理手段からの測角結果を過去の記録と比較し、比較結果が所定値以上異なるものでない場合は、該電波放射源に対する追尾処理を簡略化しこれを続けることを特徴とする請求項9に記載のパッシブ測角装置。
【請求項11】
追尾信号処理手段が、比較結果が所定値以上異なる場合は、該電波放射源に対する簡略化した追尾処理を中止することを特徴とする請求項10に記載のパッシブ測角装置。
【請求項12】
追尾信号処理手段が、検出信号処理手段から検出対象の電波放射源からの放射信号があり追尾過程に入ることを示す特性情報を受けると、捜索過程から追尾過程へ動作モードを遷移させることを特徴とする請求項2又は3に記載のパッシブ測角装置。
【請求項13】
検出信号処理手段が、捜索過程から追尾過程に遷移することを示す動作モード信号を測角信号処理手段に送ることで、測角信号処理手段が該電波放射源からの放射信号に対する測角処理に超分解能測角法を適用することを特徴とする請求項12に記載のパッシブ測角装置。
【請求項14】
検出信号処理手段が、捜索過程から追尾過程に遷移することを示す動作モード信号を測角信号処理手段に送ることで、測角信号処理手段が該電波放射源からの放射信号に対する測角処理を、最初に低演算量の測角法を適用し、捜索範囲を絞り込んだ後、超分解能測角法を適用することを特徴とする請求項12に記載のパッシブ測角装置。
【請求項15】
検出信号処理手段が、検出対象の電波放射源からの放射信号を含む受信機からの受信信号を受けると、受信信号の中に含まれる放射信号源の数を検出し、その波源数を放射信号の特性情報として測角信号処理手段と追尾信号処理手段に送り、測角信号処理手段が波源数を用いて超分解能測角処理を行うことを特徴とする請求項13に記載のパッシブ測角装置。
【請求項16】
検出信号処理手段が、検出対象の電波放射源からの放射信号を含む受信機からの受信信号を受けると、該放射信号の時刻情報及び電力値情報を付加した放射信号の特性情報を生成し、追尾信号処理手段が測角信号処理手段での測角結果と共に前記放射信号の特性情報を記憶し、追尾情報として使用することを特徴とする請求項13に記載のパッシブ測角装置。
【請求項17】
追尾信号処理手段が、放射信号の特性情報に基づき、放射信号が検出対象の電波放射源によるものである場合に、過去の記憶されている情報から該放射信号源の移動速度、移動方向を求め、次回の追尾過程動作時の位置を予想し、その角度ステップ、周波数ステップの周辺に測角信号処理手段による超分解能測角法の捜索範囲を設定し、捜索範囲情報を測角信号処理手段に出力し、前記測角信号処理手段が、前記捜索範囲情報に従って捜索範囲を決めることを特徴とする請求項16に記載のパッシブ測角装置。
【請求項18】
追尾信号処理手段が、次回の追尾過程において測角信号処理手段から目標とする放射信号源の測角値が得られなかった場合には、一旦追尾過程動作を中止し、捜索過程へ動作モードを切り替えることを特徴とする請求項17に記載のパッシブ測角装置。
【請求項19】
検出信号処理手段から電波放射源の波源数を含む放射信号の特性情報を測角信号処理手段および追尾信号処理手段に供給し、前記測角信号処理手段および追尾信号処理手段において前記検出信号処理手段とは独立の電波放射源の波源数推定を含む電波放射源の特性評価を行い、それぞれの電波放射源の特性評価情報を検出信号処理手段へフィードバックすることを特徴とする請求項2又は3に記載のパッシブ測角装置。
【請求項20】
検出信号処理手段が、フィードバックされた電波放射源の特性評価情報を次回の放射信号の検出、分類に使用することを特徴とする請求項19に記載のパッシブ測角装置。
【請求項21】
自らは電波を放射せずに電波放射源からの放射信号による電波を受信する受信アンテナおよび受信機を制御し、電波放射源捜索の過程で捜索範囲を所定の角度ステップで分割し、各角度ステップにおいて所定の周波数範囲を所定の周波数ステップで分割した、各角度ステップの各周波数ステップ毎に受信された電波を受信信号として得て、受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号に基づき電波放射源の測角を行うパッシブ測角方法であって、
前記受信機からの各角度ステップの各周波数ステップ毎の受信信号中の電波放射源からの放射信号の特性を評価して、各角度ステップの各周波数ステップ毎に電波放射源が検出対象か否かを示す放射信号の特性情報を生成する工程と、
前記放射信号の特性情報に基づき検出対象の電波放射源からの放射信号か否かを考慮しながら受信機からの受信信号中の放射信号の電波放射源の測角を行う工程と、
を備えたことを特徴とするパッシブ測角方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−202965(P2008−202965A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36557(P2007−36557)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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