説明

パッチ様注入装置

【課題】皮膚に押し付けて好都合に着用し、1本または複数本の微小針を使用することによって所望の物質を注入し、かつ、苦痛を最小限に抑えることができるパッチ様注入装置を提供すること。
【解決手段】この装置100は、粘着接触表面を介して皮膚表面に取り付けることができ、次いで、押しボタン105の作動アセンブリを使用してインターロック135を取り外し、それによって、円板または皿ばね130のアセンブリにより、本質的に均一かつ一定の圧力が流体液溜めアセンブリの内容物に加えられる。この押しボタン作動アセンブリによりさらに、1本または複数本のばね荷重式患者用針141が解放されて皮膚表面に入り、患者用針141と加圧された流体液溜めの内容物150との間で流体連通経路が確立され、それによって、皮膚内に注入が行われる。使用後、この押しボタン作動アセンブリによりさらに、1つまたは複数の改良型安全機構が解放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、改良型の弁、ばね、および安全機構を有する物質送達装置、および様々な物質または薬剤を患者に送達するのに使用し得るパッチ様自己充足型物質注入装置に関する。本出願は、2003年8月12日出願のChris Cindrich他の「Patch-Like Infusion Device」という名称の米国特許仮出願第60/494,286号明細書と、2004年4月2日出願のChris Cindrich他の「Patch-Like Infusion Device With Improved Valve, Spring And Safety Mechanisms」という名称の米国特許仮出願第60/558611号明細書の,35 U.S.C.§119(e)に基づく利益を請求するものである。前記各出願の内容全体はそれらの参照によって本明細書に組み込まれるものである。本出願は、2003年7月22日出願のCharles D. Shermer他の「Patch-Like Infusion Device」という名称の米国特許正式出願第10/623702号明細書の主題に関係する主題を含む。この内容全体はその参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
糖尿病などの病気を患う人々など、極めて多くの人々が、ブドウ糖レベルの厳密な制御を維持するためにインスリンを日々注入するなど、何らかの形態の注入治療を利用している。現在、インスリン注入処置の例では、2つの主な日常インスリン治療モードがある。第1のモードの例には、注射器およびインスリンペンが含まれる。これらの装置は、使用法が簡単で、比較的コストが低いが、典型的には日に3回から4回の注射の度に針を刺す必要がある。第2のモードの例には、注入ポンプ治療が含まれ、寿命が約3年の高価なポンプを購入する必要がある。このポンプの初期コストは、このタイプの治療の大きな障害になっている。しかし、使用者の観点からすれば、ポンプを使用したことのある大多数の患者は、その後もずっとポンプを使い続けることのほうを好む。これは、注入ポンプは注射器およびペンよりも複雑ではあるが、それには、インスリンを連続して注入でき、投与量が精確であり、送達スケジュールをプログラムし得るという利点があるからである。それによって、ブドウ糖がより厳密に制御され、健康状態が改善して感じられる。
【0003】
経口剤の患者が最終的にはインスリンに移行し、集中治療に対する患者の関心が増すと、これらの利用者らは通常、インスリンポンプに目を向けるようになる。しかし、ポンプのコストが高く(注射器治療の日々のコストの約8倍から10倍)、その寿命が限られていることに加えて、インスリンポンプは、比較的旧式の技術であり、使用法が面倒である。また、生活様式の観点から、使用者の腹部の送達部位にポンプを接続する(「注入セット」として知られる)管を配することは極めて不都合であり、ポンプは比較的重く、そのため、ポンプの持ち運びが負担になる。
【0004】
したがって、よりよい治療法への関心が高まっており、そのため、ポンプ治療が目に見えて伸び、日々の注射の件数が増加している。このような例、また、類似の注入の例では、このような関心の高まりを完全に満たすのに必要とされるものは、日常の注射治療の最良の特徴(低コストおよび使い易さ)と、インスリンポンプの最良の特徴(連続注入および精確な投与量)とが組み合わされ、それぞれの欠点もないインスリンの送達すなわち注入の形態である。
【0005】
コストが低く、使い易い携帯型すなわち「着用し得る」薬物注入装置を提供するいくつかの試みがなされている。これらの装置には、部分的または全面的に使い捨てとすることを意図したものがある。理論的には、このタイプの装置は、注入ポンプの多くの利点を提供し、不随するコストがなく、不便さもない。しかし、遺憾ながら、これらの装置の多くは、(用いられる注射針のゲージおよび/または長さによる)使用者の苦痛、送達される物質と注入装置の構成に使用される材料との適合性および相互作用、ならびに、使用者が正しく作動させないと正しく機能しない可能性がある(例えば、装置の作動が早すぎることに起因する「湿潤」注射)という欠点を伴う。特に、短く、かつ/または細いゲージの注射針を使用するときには、製作上の難点および針の貫入深さの制御上の難点にも遭遇する。使用済み装置に触れる人々の針刺しによる怪我の可能性も問題である。
【0006】
したがって、製作が簡単で、インスリンおよび非インスリンの応用例での使用法が改善された、インスリン注入ポンプなどの現在の注入装置に代わる形態が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第10/396,719号明細書
【特許文献2】米国特許第6,569,143号明細書
【特許文献3】国際公開第02/083,214号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Biochem Biophys Acta、1989年、67、1007頁
【非特許文献2】Rubins他、Microbial Pathogenesis、25、337〜342頁
【非特許文献3】Ingenious Mechanisms for Designers、Industrial Press、251頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、皮膚に押し付けて好都合に着用し、1本または複数本の微小針を使用することによって所望の物質を注入し、かつ、苦痛を最小限に抑えることができるパッチ様注入装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、従来型注射器と異なり、使用前および使用中に、1本または複数本の隠れた患者用の針を提供するパッチ様注入装置を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、粘着表面を介して患者に固定することができ、その後、作動ステップによって、内容物溜めを加圧し、患者用の針を埋め込み、液溜の内容物を送達することができるパッチ様注入装置を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ブラダ(bladder)と皿ばねまたはその他の円板タイプのばねとのアセンブリを使用して内容物溜めを加圧するパッチ様注入装置を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、皿ばね保持円板を取り外すことによって内容物溜めの内容物を加圧し得るパッチ様注入装置を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、作動ステップにおいて垂直または水平な押込み表面に加えられる適度な力で作動させることができるパッチ様注入装置を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、使用前、使用中、および使用後に装置の内容物を目視検査し得るパッチ様注入装置を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、1つまたは複数の動作で患者用の針のキャップおよび/または粘着カバーを取り外すことができるパッチ様注入装置を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、自己注射を容易にし、使用者間の注射技術の変動を少なくするか、またはなくすパッチ様注入装置を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、1本または複数本の患者用の針が皮膚表面から意図して、または誤って取り除かれた後で、それらを保護する改良型遮蔽機構を含むパッチ様注入装置を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、装置の使用前および使用中に無菌障壁および圧力シールを提供する改良型弁機構を含むパッチ様注入装置を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、注入装置とともに使用する改良型の皿ばねおよびばね用ピンの機構を含むパッチ様注入装置を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、改善された成型技術を用いて構成材料をより良好に利用するパッチ様注入装置を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、微小針構成用の改善された技術および材料を含むパッチ様注入装置を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、旋回アームおよび磁気器具を有する改良型作動機構を含むパッチ様注入装置を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、改良型マニホールドばね機構を含むパッチ様注入装置を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、改良型充填機構、充填インジケータ、および無菌パッケージを含むパッチ様注入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
これらの目的およびその他の目的は、1本または複数本の実質的に隠れた患者用針を提供するパッチ様の着用可能な自己充足型物質注入装置用のシステムおよび方法を提供することによって実質的に達成される。これらの患者用の針は、金属化被膜などの非伸張性ブラダ被膜とともに使用する剛体ブラダ部分を含む内容物溜めアセンブリと流体連通して配置することができる。押込みタイプの作動機構アセンブリが設けられ、これを使用して保持ピンを取り外し、皿ばねアセンブリにより、液溜めアセンブリの内容物に本質的に均等かつ一定の圧力が加えられる。次いで、押込みタイプの作動アセンブリにより、1本または複数本のばね加重式患者用針が解除され、患者の皮膚内に置かれ、患者用針と加圧された液溜め内容物との間に流体連通経路が確立され、それによって、使用者の皮膚内に内容物が送達され注入される。注入が完了し、注入装置が取り外されると、いくつかの安全機構が作動して針を覆い、それによって使い捨てにすることができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態の様々な目的、利点、および新規な特徴は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せ読めば容易に理解されよう。
【0028】
これらの図面を通じて、同様の参照数字は、同様の部品、コンポーネント、または構造を指すと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】側方押しボタン表面を使用するパッチ様の注射器または注入器のシステムの第1実施形態の作動前の断面図である。
【図2】側方押しボタン表面を使用するパッチ様の注射器または注入器のシステムの第1実施形態の作動後の別の断面図である。
【図3】図1のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めサブアセンブリの断面図である。
【図4】図1のパッチ様の注射器または注入器のシステムの皿ばねサブアセンブリの断面図である。
【図5】図1のパッチ様の注射器または注入器のシステムの押込み弁サブアセンブリの第1実施形態の閉位置での断面図である。
【図6】図1のパッチ様の注射器または注入器のシステムの押込み弁サブアセンブリの第1実施形態の開位置での断面図である。
【図7】図1のパッチ様の注射器または注入器のシステムの引込み弁サブアセンブリの第2実施形態の断面図である。
【図8】図1のパッチ様の注射器または注入器のシステムのプッシュプル式弁サブアセンブリの第3実施形態の断面図である。
【図9】上部押しボタン表面を使用するパッチ様の注射器または注入器のシステムの第2実施形態の作動前の断面図である。
【図10】図9のパッチ様の注射器または注入器のシステムの第2実施形態の作動後の断面図である。
【図11】図9のパッチ様の注射器または注入器のシステムの第2実施形態の液溜めサブアセンブリを第1斜視角度から見た上面図である。
【図12】上部押しボタン表面を使用するパッチ様の注射器または注入器のシステムの第2実施形態の別のバージョンの分解図である。
【図13】上部押しボタン表面を使用するパッチ様の注射器または注入器のシステムの第2実施形態の別のバージョンの分解図である。
【図14】作動前の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムを第1斜視角度から見た上面図である。
【図15】作動前の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの断面図である。
【図16】作動前の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの側面図である。
【図17】作動前の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの別の断面図である。
【図18】作動後の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムを第1斜視角度から見た上面図である。
【図19】作動後の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの断面図である。
【図20】作動後の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの側面図である。
【図21】作動後の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの別の断面図である。
【図22】(a)、(b)、(c)、(d)および(e)は、図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めサブアセンブリの図である。
【図23】図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの弁サブアセンブリの閉位置での断面図である。
【図24】図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの弁サブアセンブリの開位置での断面図である。
【図25】パッチ様の注射器または注入器のシステムの第3実施形態の分解図である。
【図26】図25のパッチ様の注射器または注入器のシステムの作動前の断面図である。
【図27】図25のパッチ様の注射器または注入器のシステムの作動後の断面図である。
【図28】作動前のパッチ様の注射器または注入器のシステムの第4実施形態を第1斜視角度から見た上面図である。
【図29】作動後かつ後退前の図28のパッチ様の注射器または注入器のシステムを第2斜視角度から見た別の上面図である。
【図30】作動後かつ後退前の図28のパッチ様の注射器または注入器のシステムを第3斜視角度から見た別の上面図である。
【図31】後退後の図28のパッチ様の注射器または注入器のシステムを第4斜視角度から見た別の上面図である。
【図32】図28のパッチ様の注射器または注入器のシステムの弁サブアセンブリの閉位置での断面図である。
【図33】図28のパッチ様の注射器または注入器のシステムの弁サブアセンブリの開位置での断面図である。
【図34】パッチ様の注射器または注入器のシステムの第4実施形態の別のバージョンを第1斜視角度から見た上面図である。
【図35】図34のパッチ様の注射器または注入器のシステムを第2斜視角度から見た別の上面図である。
【図36】パッチ様の注射器または注入器のシステムの第4実施形態のさらに別のバージョンを第1斜視角度から見た別の上面図である。
【図37】パッチ様の注射器または注入器のシステムの第5実施形態の断面図である。
【図38】安全性が高められた図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの断面図である。
【図39】安全性が高められた図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの断面図である。
【図40】安全性が高められた図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの断面図である。
【図41】安全性が高められた図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの断面図である。
【図42】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めサブアセンブリの上面図である。
【図43】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めサブアセンブリの上面図である。
【図44】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めおよび弁のサブアセンブリの断面図である。
【図45】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めおよび弁のサブアセンブリの断面図である。
【図46】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めおよび弁のサブアセンブリの断面図である。
【図47】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めおよび弁のサブアセンブリの断面図である。
【図48】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めおよび弁のサブアセンブリの断面図である。
【図49】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの2ショット式患者用針マニホールドサブアセンブリの断面図である。
【図50】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの組立ステップを第1斜視角度から見た図である。
【図51】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの組立ステップを第1斜視角度から見た図である。
【図52】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの組立ステップを第1斜視角度から見た図である。
【図53】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの組立ステップを第1斜視角度から見た図である。
【図54】図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの組立ステップを第1斜視角度から見た図である。
【図55】皿ばねおよびフォロワの断面図である。
【図56】皿ばねおよびフォロワの断面図である。
【図57】皿ばねおよびフォロワの断面図である。
【図58】皿ばねおよびフォロワの断面図である。
【図59】皿ばねおよびフォロワの断面図である。
【図60】皿ばねおよびフォロワの断面図である。
【図61】改良型弁実施形態の第1変形の閉位置での断面図である。
【図62】改良型弁実施形態の第2変形の閉位置での断面図である。
【図63】改良型弁実施形態の第3変形の閉位置での断面図である。
【図64】改良型弁実施形態の第4変形の閉位置での拡大断面図である。
【図65】開口がテーパ付き表面を含む改良型弁実施形態の第5変形の拡大断面図である。
【図66】図65の改良型弁実施形態の閉位置での断面図である。
【図67】図65の改良型弁実施形態の閉位置での他の断面図である。
【図68】開口がテーパ付き表面および平坦な表面をともに含む、開位置での図65の改良型弁実施形態の断面図である。
【図69】改良型弁プランジャロッドの実施形態の図である。
【図70】改良型弁プランジャロッドの実施形態の図である。
【図71】改良型弁プランジャロッドの実施形態の図である。
【図72】重ねて成型された改良型弁プランジャロッドの実施形態の図である。
【図73】重ねて成型された改良型弁プランジャロッドの実施形態の図である。
【図74】重ねて成型された改良型弁プランジャロッドの実施形態の図である。
【図75】改良型回転弁実施形態の図である。
【図76】図75の改良型回転弁実施形態の詳細断面図である。
【図77】改良型回転弁実施形態および充填キャップの別のバージョンの断面図である。
【図78】別の改良型回転弁実施形態の斜視図である。
【図79】(a)は、図77の改良型回転弁実施形態の流路の第1段階の断面図であり、(b)は、図77の改良型回転弁実施形態の流路の第2段階の断面図であり、(c)は、図77の改良型回転弁実施形態の流路の第3段階の断面図である。
【図80】改良型弁サブアセンブリの閉位置での断面図である。
【図81】図80の改良型弁サブアセンブリの開位置での断面図である。
【図82】改良型の皿ばねおよびピンの実施形態の固定位置での断面図である。
【図83】図82の改良型の皿ばねおよびピンの実施形態の解放位置での断面図である。
【図84】(a)は、改良型の皿ばねおよびピンの第1実施形態構成の斜視図であり、(b)は、改良型の皿ばねおよびピンの第2実施形態構成の斜視図であり、(c)は、改良型の皿ばねおよびピンの第3実施形態構成の斜視図である。
【図85】改良型の皿ばねおよびピンの実施形態構成の力のベクトル図である。
【図86】ボタンに誘導されてピンが解放されるところを示すための、例示注入装置内での改良型の皿ばねおよびピンの実施形態の固定位置での断面図である。
【図87】図86の改良型の皿ばねおよびピンの実施形態の解放位置での断面図である。
【図88】改良型の皿ばねおよび割りリングピンの実施形態の断面図である。
【図89】図88の改良型の皿ばねおよび割りリングピンの実施形態の第2断面図である。
【図90】本発明の実施形態による、重ねて成型した皿ばねの斜視図である。
【図91】図90の重ねて成型した皿ばねの解放位置での断面図である。
【図92】図90の重ねて成型した皿ばねの撓み位置での断面図である。
【図93】皿ばねとピンの摩擦を利用して装置を作動前の状態で保持する装置の実施形態の断面図である。
【図94】装置の改良型液溜め実施形態の上面図である。
【図95】装置の改良型アーム/流路実施形態の上面図である。
【図96】図95の改良型アーム/流路実施形態の斜視図である。
【図97】図94および図95の改良型の液溜めおよびアーム/流路の実施形態の分解位置での組立図である。
【図98】図94および図95の改良型の液溜めおよびアーム/流路の実施形態の組立位置での組立図である。
【図99】図98の液溜めとアーム/流路のアセンブリの実施形態用の第1密封装置の断面図である。
【図100】図98の液溜めとアーム/流路のアセンブリの実施形態用の第2密封装置の断面図である。
【図101】患者用針マニホールド内の構造例の断面図である。
【図102】患者用針マニホールド内の構造例の断面図である。
【図103】患者用針マニホールド内の構造例の断面図である。
【図104】患者用針マニホールド内の構造例の断面図である。
【図105】患者用針マニホールド内の構造例の断面図である。
【図106】改良型の患者用針のハブおよびマニホールドの断面図である。
【図107】多孔性患者用微小針の図である。
【図108】いくつかの側方穴を有する患者用微小針の図である。
【図109】旋回アームアセンブリを有する装置の断面図である。
【図110】旋回アームアセンブリを有する装置の断面図である。
【図111】磁気作動アセンブリを有する装置の断面図である。
【図112】磁気作動アセンブリを有する装置の断面図である。
【図113】磁気作動アセンブリを有する装置の断面図である。
【図114】磁気作動アセンブリを有する装置の断面図である。
【図115】磁気作動アセンブリを有する装置の断面図である。
【図116】(a)、(b)および(c)は、スコッチヨーク機能による安全機構実施形態を示す図である。
【図117】後退くさび遮蔽部の後退状態での斜視図である。
【図118】図117の後退くさび遮蔽部の伸張状態での斜視図である。
【図119】図117の遮蔽部のキャリッジ戻り機構の斜視図である。
【図120】後退スロット遮蔽部の初期位置での斜視図である。
【図121】図120の後退スロット遮蔽部の使用位置での斜視図である。
【図122】図120の後退スロット遮蔽部の後退位置での斜視図である。
【図123】バケツ型遮蔽部の後退状態での斜視図である。
【図124】図123のバケツ型遮蔽部の伸張状態での斜視図である。
【図125】作動されていない装置内での図123のバケツ型遮蔽部の後退状態での内部斜視図である。
【図126】作動された装置内での図123のバケツ型遮蔽部の後退状態での内部斜視図である。
【図127】作動された装置内での図123のバケツ型遮蔽部の伸張状態での内部斜視図である。
【図128】ラチェット型係止遮蔽部の後退状態での斜視図である。
【図129】図128のラチェット型係止遮蔽部の伸張状態での斜視図である。
【図130】図128の遮蔽部のラチェット型係止機構の斜視図である。
【図131】引出し型遮蔽部の後退状態での斜視図である。
【図132】図131の引出し型遮蔽部の伸張状態での斜視図である。
【図133】別の引出し型遮蔽部の後退状態での斜視図である。
【図134】図133の引出し型遮蔽部の伸張状態での斜視図である。
【図135】捩りばね型遮蔽部の初期位置での斜視図である。
【図136】図135の捩りばね型遮蔽部の使用位置での斜視図である。
【図137】図135の捩りばね型遮蔽部の後退位置での斜視図である。
【図138】一体型ばねを伴うヒンジ式遮蔽部の斜視図である。
【図139】粘着剤駆動式ヒンジを伴うヒンジ式遮蔽部の斜視図である。
【図140】円形一体型ばねを伴うばね式遮蔽部の斜視図である。
【図141】曲げタイプの一体型ばねを伴うばね式遮蔽部の斜視図である。
【図142】余計に回転する遮蔽部を示す図である。
【図143】カム動作による安全機構を準備状態で示す断面図である。
【図144】図143のカム動作による安全機構の振上げ状態での断面図である。
【図145】図143のカム動作による安全機構の送出し状態での断面図である。
【図146】図143のカム動作による安全機構の安全状態での断面図である。
【図147】別のカム動作機構の断面図である。
【図148】フリップ式遮蔽部の斜視図である。
【図149】フリップ式遮蔽部の斜視図である。
【図150】改良型マニホールドばねの非作動位置での斜視図である。
【図151】図150のマニホールドばねの、典型的な装置における非作動位置での別の斜視図である。
【図152】図150のマニホールドばねの作動位置での斜視図である。
【図153】別の改良型マニホールドばねの、典型的な装置における非作動位置での斜視図である。
【図154】図153のマニホールドばねの作動位置での斜視図である。
【図155】別の改良型マニホールドばねの非作動位置での斜視図である。
【図156】図155のマニホールドばねの作動位置での斜視図である。
【図157】ボタンによって提供される充填穴を示す断面図である。
【図158】充填後の弁アセンブリを定位置で示す断面図である。
【図159】図158の弁アセンブリの充填後、ボタン窓を閉じるところを示す断面図である。
【図160】図158の弁アセンブリの窓が閉じられたところを示す断面図である。
【図161】弁、ボタンの弁用の穴、およびボタンの回転前の整列状態を示す図である。
【図162】弁、ボタンの弁用の穴、およびボタンの回転後の整列状態を示す図である。
【図163】弁、ボタンの弁用の穴、およびボタンの回転後の整列状態を示す断面図である。
【図164】注射前の目に見える標識を示す液溜めの上面図である。
【図165】注射前の目に見える標識を示す図164の液溜めの側面図である。
【図166】注射後に標識がなくなったことを示す液溜めの上面図である。
【図167】注射後に標識がなくなったことを示す図166の液溜めの側面図である。
【図168】ネストタイプのパッケージングシステムが空の状態で示す等角図である。
【図169】図168のネストタイプのパッケージングシステムが一杯になったところを示す等角図である。
【図170】図168のネストタイプのパッケージングシステムを、4つの充填すべき装置が入った状態で示す等角図である。
【図171】図168のネストタイプのパッケージングシステムを、4つの充填すべき装置が上側位置に置かれた状態で示す等角図である。
【図172】図168のネストタイプのパッケージングシステムの断面図である。
【図173】図168のネストタイプのパッケージングシステムを充填された状態で示す上面図である。
【図174】図168のネストタイプのパッケージングシステムを、2重バッグに入った状態で示す断面図である。
【図175】図168のネストタイプのパッケージングシステムを、ボックスおよびバッグに入った状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下で説明する本装置の実施形態は、粘着剤により取り付けられた注入装置を介してあらかじめ測定された投与量の薬物または薬剤などの物質を使用者に送達する好都合なパッチ様装置として使用することができる。この装置は、自己充足型であり、底面に配設された粘着剤によって使用者の皮膚表面に取り付けられる。一度、使用者によって適切に位置決めされ作動されると、装置内の液溜め表面上で解放された皿ばねまたはその他の円板タイプのばねの圧力を利用して、針マニホールドを介して1本または複数本の患者用の微小針により、可撓性液溜めの内容物を空にすることができる。次いで、液溜め内の物質が、皮膚に送り込まれた微小針によって使用者の皮膚を介して送達される。皿ばねまたは円板ばねの代わりに、本質的に機械的、電気的、かつ/または化学的なものとし得る異なるタイプのエネルギー蓄積装置を使用する他の実施形態が可能であることはもちろんである。
【0031】
当業者には理解されるように、本明細書で開示するパッチ様の注射または注入用のシステムを実施する多くのやり方がある。図面および以下の説明で示す実施形態を参照することになるが、本明細書で開示する実施形態は、ここで開示する本発明に含まれる様々な代替設計および代替実施形態を網羅するためのものではない。ここで開示する各実施形態では、その装置は注入器を指すが、この装置は、注入装置によって一般に実現されるよりもはるかに速い静注速度で物質を注射することもできる。例えば、数秒という短い期間で、または数日という長い期間で内容物を送達し得る。
【0032】
図1から図4に示す装置の第1実施形態では、この装置の作動および付勢が1つの多機能/ステッププロセスで実現される押しボタン構造100が示されている。図1は、側方押しボタンを使用するパッチ様の注射器または注入器のシステムの第1実施形態の非作動状態での断面図であり、図2は、この実施形態を作動状態で示す断面図、図3は、図1に示す実施形態の液溜めサブアセンブリの断面図、図4は、図1に示す実施形態の皿ばねアセンブリの断面図である。
【0033】
図1から図4の装置には、押しボタン105、上部ハウジング110、下部ハウジング115、液溜め用の弁アセンブリ120、皿ばね130、ばね保持円板135、マニホールドアセンブリ140、少なくとも1本の患者用の針141、および液溜め150が含まれる。この装置はさらに、針141を保護し、使用前に取り外される針遮蔽部111を含むことができる。この押しボタンは、作動中にボタン105が移動するときに、円板135の外径136と係合する傾いた表面107を有する少なくとも1つの斜面部材106を含む。ボタン105が、図2に示すように内向きに押されると、斜面107は、円板135の少なくとも1つの側を上向きに変位させ、その結果、この円板の内径137が下向きに変位する。その際、円板135の内径137は、皿ばね130の中心から引き抜かれてばね130を解放し、次いで、液溜め150の可撓性部材151に力が加わり、それによって、内容物が液溜め150の剛体部材152に押し付けられて圧縮される。図4に示すように、液溜め150には、皿ばね130に隣接した可撓性部材151および剛体部材150が含まれる。皿ばね130は、円板135の突出した内径137との締まりばめによって、可撓性部材151から離れて保持される。
【0034】
ボタン105にはさらに、液溜め150と患者用針141の間に流路を確立するための、弁アセンブリ120の弁部材121に接触する表面108が含まれる。図3に示すように、プッシュプル式の弁アセンブリ120により、弁部材121が内向きに押されたときに、液溜め出口153と外周流路154の間に流路が確立される。内向きに押されると、弁部材の拡大端部122がポケット123から変位し、それによって液溜め150からの流れが、弁部材121の小径の周りを流れて流路154に入り、マニホールドアセンブリ140およびその中の針141に向かう。流路154は、針マニホールド140を付勢するために使用することもできる流路アーム155内に設けられる。
【0035】
押しボタン105が内向きに押されると、支持部材109が移動してマニホールドアセンブリ140のショルダ142から離れ、マニホールドアセンブリ140が(図示しない)患者の皮膚表面に向かって下向きに駆動される。このマニホールドアセンブリは、コイルばねなどのいくつかの手段によって、あるいは、外径流路アーム155の屈曲性によって駆動することができる。流路アーム155は、マニホールドアセンブリ140が支持部材109によって解放されるときに、マニホールドアセンブリ140に力を加えるように構成されている。
【0036】
図1から図4に示す実施形態では、押しボタン105が押されると、3つの機能が、整然と、かつ/または同時に実現される。第1に、押しボタン105の動きによって、少なくとも1つの弁アセンブリ120が開き、液溜め150と患者用針141が流体連通する。第2に、押しボタン105の動きによって、ばね保持円板135を押しのけ皿ばね130を解放する。第3に、押しボタン105の動きによって、患者用針マニホールド140から支持部材109が取り外され、それによって、流路アーム155または(図示しない)マニホールドばねなどの手段によって付勢されたマニホールド140が移動する。
【0037】
具体的には、押しボタン105は一連の斜面107を含み、これら一連の斜面107は、押しボタン105がスライドして動くと、ばね保持円板135と係合して皿ばね130を解放し、それによって液溜め150の内容物を加圧する。押しボタン105は、押込み弁120とも係合して、この時点で加圧されている液溜め150とマニホールドアセンブリ140の間の流れを開始させる。押しボタン105はさらに、患者用針マニホールドアセンブリ140から1つまたは複数の支持部材109を取り外しないしは押しのけて、流路アーム155または(図示しない)1つまたは複数の駆動ばねなどの駆動手段によってマニホールド140を駆動して患者用針141を配置する。
【0038】
図1に示す実施形態のプッシュプル式の弁アセンブリ120は、押しボタン105によって開位置に押し込まれるまで、液溜めチャンバ(すなわち、要素151と152の間に設けられたもの、または液溜め150)と患者用針マニホールド140の間の流れを制限するように構成されており、以下でより詳細に説明するように、任意の数の弁アセンブリ120、222、ならびに242および262で構成できるものである。
【0039】
図5および図6に、押込み弁アセンブリの第1実施形態222を示す。図5は、閉位置での弁アセンブリ122の断面図であり、図6は、開位置での図5の弁アセンブリの断面図である。弁アセンブリ222には、液溜め150と流体連通するゴムストッパ224内でスライド可能に係合するプラスチックボタン223が含まれる。弁アセンブリ222は、初期状態と作動状態があり、遠位の径方向に突出したフィンないしリブ225の組を有した大径遠位端と、近位の移動止め226の組を有した小径近位端とを含む。初期状態では、弁222の遠位リブ225は、流路227に菌を侵入させない働きをし、近位移動止めは、液溜め150内に薬物を安全に閉じ込めるシールを形成する。リブ225および移動止め226の両方の組は、長期間にわたって液溜め内からの流体の損失を防ぎ、それと同じ期間にわたって液溜めの外部からの薬物の汚染を防ぐ極めて重要な役割を果たす。
【0040】
使用に際して、ボタン223は最終的に、押しボタン105の動きによって作動状態に押し込まれることになり、移動止めの組は、ゴムストッパ124との係合から前に抜け、それによって薬物が液溜め150から流れ、移動止め226を通過して弁流路154に入る。同時に、遠位リブ225の組も本来的に押し込まれ、液溜め150から弁流路227を介して、流路154を下り、(図示しない)患者用針マニホールドに流体を送る位置に、リブ225の位置自体が移動する。
【0041】
図5に示す位置では、プラスチックボタン223の、移動止め226を有する小径の近位端は、ゴムストッパ124内にしっかりと配置され、液溜め150から流体が漏れるのを防いでいる。押しボタン105によって、プラスチックボタン223がゴムストッパ224内で係合し変位すると、近位端のところに開口が形成され、それによって、図6に矢印で示すように、液溜め150から流体が連通する。液溜め内容物と患者用微小針141の間で、液溜めサブアセンブリ150によって連続流路154が設けられるように、液溜めサブアセンブリ150内に弁アセンブリ222を含めることができる。
【0042】
図7に、弁アセンブリの第2実施形態242を示す。図7は、開位置での第2実施形態に係る弁アセンブリの断面図である。弁アセンブリ242は、プラスチックボタン247を含み、引込み弁として動作するように構成されたものである。図7に示すように、前方に押し込まれると、プラスチックボタン247は、液溜め150の開口と対合式に係合し、液溜め150からの流体の連通を妨げる。液溜め150の開口から引き抜かれると、生成された隙間によって、ボタン247の円錐面に沿って流路154に流体が連通し、(図示しない)患者用針マニホールドに向かう。
【0043】
弁アセンブリ242は、その初期状態と作動状態があり、遠位の移動止め243の組を有する大径遠位端と、円錐部分244と、小径近位端245とを含む。初期状態では、弁242の遠位移動止め243は、流路246に菌を侵入させない働きをし、円錐部分244および近位端245は、液溜め150内に薬物を安全に閉じ込めるシールを形成する。移動止め243、円錐部分244、および小径近位端245はそれぞれ、長期間にわたって液溜め150内からの流体の損失を防ぎ、それと同じ期間にわたって液溜めの外部からの薬物の汚染を防ぐ。
【0044】
使用に際して、ボタン247は最終的に、(図示しない)代替押しボタンバージョンの動きによって作動状態に引き込まれることになり、円錐部分244および小径近位端245は、液溜め150の開口との係合から前に抜け、それによって薬物が液溜め150から流れ、小径近位端245を通過して弁流路246に入る。同時に、遠位の移動止め243の組は、液溜め150から弁流路246を介して、流路154を下り、(図示しない)患者用針に流体を送る位置に移動する。
【0045】
図8に、弁アセンブリ262の第3実施形態を示す。図8は、開位置での第3実施形態に係る弁アセンブリの断面図であり、この実施形態は、プラスチック部材263を含み、押込み弁または引込み弁として動作するように構成されている。図8に示すように、外向きに引かれると、プラスチック部材263は、液溜めの開口を塞ぎ、液溜め150からの流体連通を妨げる。前方に押されると、このプラスチック部材は開口と整列し、液溜め150と(図示しない)患者用針マニホールド140の間で流体を連通させることができる。
【0046】
弁アセンブリ262は、その初期状態と作動状態があり、遠位の移動止め264の組を有した遠位端と、大径近位端265とを含む。初期状態では、弁262の遠位移動止め264は、流路267に菌を侵入させない働きをし、拡大近位端265は、挿入栓部材270の端部266とともに、液溜め150内に薬物を安全に閉じ込めるシールを生成する。移動止め264および大径近位端265はそれぞれ、長期間にわたって液溜め150内からの流体の損失を防ぎ、それと同じ期間にわたって液溜めの外部からの薬物の汚染を防ぐ。
【0047】
使用に際して、部材263は最終的に、押しボタン105の動きによって作動状態に押し込まれることになり、拡大近位端265は、挿入栓部材270の端部266との係合から前に抜け、それによって薬物が液溜め150から流れ、拡大近位端265を通過して弁流路267に入る。同時に、遠位の移動止め264の組は、液溜め150から弁流路267を介して、開口268および269を通って流路154を下り、(図示しない)患者用の針に流体を導く位置に移動する。
【0048】
図9から図11に示すこの装置の第2実施形態では、押しボタン構造280は、この装置の作動化がやはり1つの多機能/ステッププロセスで実現されるが、針マニホールドおよび液溜めアセンブリが、針マニホールドの反対側のところに配設されたヒンジの周りを回転するように示されている。図9は、上部押しボタン表面を使用するパッチ様の注射器または注入器のシステムの第2実施形態の非作動状態での断面図であり、図10は、第2実施形態を作動状態で示す断面図、図11は、図9および図10に示す実施形態の液溜めサブアセンブリの上面図である。第1実施形態の場合と同様に、1ステップでこの装置を作動させることができる。
【0049】
図9から図11の装置は、上部ハウジング281、下部ハウジング282、皿ばね283、ばね保持円板284、マニホールドアセンブリ285、少なくとも1本の患者用の針286、ならびに可撓性部材289および剛体部材288を有した液溜め287を含んでいる。図9から図11に示す実施形態では、皿ばね283は、円板284によって保持されて次に解放され、図1のばね130、円板135、および液溜め150と実質的に同様に、ただし、反転位置で液溜め287を圧縮する。そのため、液溜め287の剛体部材288は、第1端部にマニホールドアセンブリ285を、第2端部にヒンジ機構291を含むように構成されている。
【0050】
図9から図11の実施形態では、(図示しない)ボタンなどの解放手段によって、ヒンジ式液溜め287が解放され、それによって、皿ばね283を解放し、次いで、液溜め287の可撓性部材289に力を作用し、液溜め287の剛体部材288に押し付けて内容物を圧縮する。図10に示すように、ばね290は、解放されると、(図示しない)患者の皮膚表面に向かって、円板284から離れるようにマニホールドアセンブリ285および液溜め287を下向きに駆動し、それによって、皿ばね283が解放され、液溜めの内容物が加圧される。任意の数の弁アセンブリを使用して、液溜め287とマニホールド285の間に流路を確立することができる。
【0051】
図9から図11に示す実施形態では、皿ばね283、マニホールドアセンブリ285、患者用の針286、および液溜め287を、解放すると、それらは回転して作動状態かつ使用中の位置に入り、所望の3つの機能が、整然と、かつ/または同時に実現される。第1および第2には、作動によって、ばね290が液溜め287およびマニホールド285を回転させ、それによってばね保持円板284が押しのけられて皿ばね283が解放され、液溜め287からの流れが開始される。第3には、この作動によってさらに、マニホールドばね290によって付勢されてマニホールド285が移動し、針286が配置される。
【0052】
図12から図24に、第2実施形態の別のバージョンを示す。図12から図24に示す第2実施形態のバージョンでは、押しボタン構造300は、装置の作動が1つの多機能/ステッププロセスで実現されるように示されている。図12および図13は、上部押しボタン表面を利用するパッチ様の注射器ないし注入器のシステムの第2実施形態の分解図である。この上部押しボタン表面により、使用者は、上部ハウジング305を押し下げ、装置を回転させて作動状態かつ使用中の位置にすることができる。図14から図17は、作動させる前の図12のパッチ様の注射器ないし注入器のシステムの第2実施形態の図である。図18から図21は、作動させた後の図12のパッチ様の注射器または注入器のシステムの第2実施形態の図である。図22(a)から図22(e)は、図12のパッチ様の注射器ないし注入器のシステムの液溜めサブアセンブリの複数の図である。図23および図24は、それぞれ閉位置および開位置での図12のパッチ様の注射器ないし注入器のシステムの液溜めサブアセンブリおよび弁サブアセンブリの図である。
【0053】
図12および図13に示すように、本発明の第2実施形態は、上部ハウジング305、皿ばね保持円板310、少なくとも1つの皿ばね315、液溜め被膜320、液溜めサブアセンブリ325、少なくとも1本の患者用の微小針340、および下部ハウジング350を有する注入装置300を含む。液溜めサブアセンブリ325はさらに、弁スプール326および弁シート328、ならびにピンなどの旋回機構327を含む。旋回機構327は、下部ハウジングに配設された少なくとも1つのピン開口329によって受けられ、それによって、上部ハウジング305、皿ばね保持円板310、皿ばね315、液溜め被膜320、液溜めサブアセンブリ325、および患者用の微小針340が回転して作動状態かつ使用の位置にくる。使用者は、上部ハウジング305を押して、円板310から皿ばね315を解放することができ、それによって、可撓性部材320に力を作用して、液溜めサブアセンブリ325に押し付けて内容物を圧縮する。使用者の動作によってさらに、患者用の微小針340が、(図示しない)患者の皮膚表面に向かって、円板310から離れるように下向きに駆動される。同時に、使用者は、図23および図24を参照して以下でより詳細に説明する押込みまたは引込みタイプの弁サブアセンブリ(すなわち、弁スプール326および弁シート328)を作動させて、液溜めと患者用微小針340の間に流路を確立する。
【0054】
図14から図17は、作動前の図12の装置300の図である。図14は、下部ハウジング350の周りで回転されて作動状態で使用中の位置になる前の回転コンポーネント(すなわち、上部ハウジング305、皿ばね保持円板310、皿ばね315、液溜め被膜320、液溜めサブアセンブリ325、および患者用の微小針340)を示す等角図である。図15は、作動し使用の位置に配置される前の回転コンポーネントの位置決めを示す断面図である。図16は、作動し使用の位置に配置される前に、回転コンポーネントが下部ハウジング350から離れているところを示す側面図である。
【0055】
図18から図21は、作動した後の図12の装置300の図である。図18は、下部ハウジング350の周りで回転されて作動状態かつ使用の位置になった回転コンポーネント(すなわち、上部ハウジング305、皿ばね保持円板310、皿ばね315、液溜め被膜320、液溜めサブアセンブリ325、および患者用の微小針340)を示す等角図である。図19は、作動し使用中の位置に配置された後の回転コンポーネントの位置決めを示す断面図である。図20は、作動され、作動し使用中の位置に配置された後の回転コンポーネントと下部ハウジング350の係合を示す側面図である。
【0056】
図22(a)から図22(e)は、図12の装置300の液溜めサブアセンブリの複数の図である。図22(a)は、図12の装置300の液溜めサブアセンブリの上面図である。図22(b)は、図12の装置300の液溜めサブアセンブリの第1側面図、図22(c)は第2側面図、図22(d)は、第3側面図である。図22(e)は、図12の装置300の液溜めサブアセンブリの底面図である。
【0057】
図23および図24は、それぞれ閉位置および開位置での図12の装置300の液溜めサブアセンブリ325および弁サブアセンブリ(すなわち、弁スプール326および弁シート328)の詳細図である。詳細には、スプール326は、いくつかの突出した移動止め332を含む。突出した移動止め332は、図23の場合のように閉位置にあるとき、液溜め経路330と患者用針経路331の間の流路333を遮断する。スプール326が内向きに押されて弁シート328に入ると、突出した移動止めは移動して流路から離れ、それによって、液溜めの内容物が液溜め経路330から移動し、経路333を介して針経路331に至る。
【0058】
本発明の図1の第1実施形態100の場合と同様に、本発明の第2実施形態300は、患者に様々な薬剤を送達するのに使用し得るパッチ様の着用可能な自己充足型物質注入装置が提供されるように構成できる。装置300は、使用前および使用中に、1本または複数本の隠れた患者用の針340を提供し、下部ハウジング350に配設された(図示しない)粘着表面を介して患者に固定することができるものである。液溜めの内容物(すなわち、液溜め被膜320と液溜めサブアセンブリ325の間に収容される内容物)の加圧は、上記で説明したように、ばね保持円板310を取り外すか、または変位させて、内容物を加圧することによって実現することができ、さらに、上部ハウジング305の上部押込み表面に加えられる適度な力によってこの装置を作動させて、患者用の針340を配置することができる。この際、装置300によって自己注射が容易になり、使用者間の注射技術の変動が少なくなるか、またはなくなる。
【0059】
図25から図27に示す装置の第3実施形態では、この装置の作動および付勢が、やはり1つの多機能/ステッププロセスで実現される押しボタン構造400が示されている。図25は、パッチ様の注射器ないし注入器のシステムの第3実施形態の分解図である。図26および図27は、作動される前および作動された後の図25のパッチ様の注射器または注入器のシステムの第3実施形態の断面図である。
【0060】
図25から図27に示す本発明の第3実施形態では、注入装置400は、押しボタン405、液溜めサブアセンブリ410、皿ばね保持ハンドル430、少なくとも1つの皿ばね435、液溜め被膜440、液溜め被膜表面442、T形ピン445、少なくとも1本の患者用の微小針460、および下部ハウジング470を含む。T形ピン445はさらに、弁アセンブリ450を含み、下部ハウジング470は、粘着表面475を含むことができる。
【0061】
図25から図27に示すように、本発明の実施形態400は、患者に様々な薬剤を送達するのに使用できるパッチ様の着用可能な自己充足型物質注入装置が提供されるように構成される。装置400は、使用前および使用中に、1本または複数本の隠れた状態の患者用の針460を提供し、粘着表面475を介して患者に固定することができる。液溜めの内容物(すなわち、液溜め被膜440と液溜め被膜表面442の間に提供される内容物)の加圧は、ばね保持ハンドル430を取り外すかもしくは変位させ、それによって皿ばね435を解放して液溜めの内容物を加圧することによって実現することができる。さらに、押しボタン405をこの装置に向かって内向きにスライドさせて係合させることによってこの装置を作動させることができる。押しボタン405が移動すると、ボタン405の段付き開口406が、T形ピン445の直角部材446を解放し、それによってT形ピン445が解放され、T形ピン445内の円形開口410に配設されたコイルばね408によって前方に駆動されて患者用の針460を落下させることができる。この際、患者用の微小針460が配置される。T形ピン445が落下すると、弁450の開口451は、液溜めと流体連通する流体チャネル452と整列し、それによって、液溜めの内容物と患者用針460の間に流路が形成される。
【0062】
図26および図27は、作動させる前および作動後の装置400の断面図である。(簡単にするために、ばね保持ハンドル430、下部ハウジング470、および粘着表面475なしで示す)図26では、T形ピン445は、段付き開口406によって上方で保持され、そのため、ばね408が圧縮される。ばね保持ハンドル430が取り外されて皿ばね435が解放されると、(図示しない)皮膚表面上の定位置に装置400を配置することができる。ボタン405が押されると、図27に示すように、段付き表面406はT形ピン445の直角部材446を解放し、それによってT形ピン445が解放され、患者用の針460が落下することができる。図27では、患者用の微小針460が配置され、弁450の開口451が、液溜めと流体連通する流体チャネル452に整列し、それによって、液溜めの内容物と患者用針460の間に流路が形成されている。
【0063】
図28から図31に示す第4実施形態の装置では、この装置の作動および付勢が、やはり1つの多機能/ステッププロセスで実現される押しボタン構造500が示されている。図28から図31は、パッチ様の注射器または注入器のシステムの第4実施形態の上面図である。図32および図33は、それぞれ閉位置および開位置での図28のパッチ様の注射器または注入器のシステムの弁サブアセンブリの部分断面図である。
【0064】
図28から図31に示すように、この装置は、ボタン505、ばね510、マニホールドアーム520、作動リング530、ポップオープナ(pop opener)540、液溜め550、弁アセンブリ560、および弁係合移動止め570を含む。ばね510は、第1タブ521および第2タブ522をそれぞれ対向する側に有し、第2タブが持ち上げられたときに第1タブを介して下向きの力が加わり、第1タブが持ち上げられたときに第2タブを介して下向きの力が加わるように装置500内に固定される。この力は、それぞれのタブの下の、リング530のコンポーネント(すなわち、511、513、514)、またはマニホールドのコンポーネント(すなわち、520)に加えられる。液溜め550の下には、(図示しない)皿ばねも設けられる。上記コンポーネントを覆う(図示しない)カバーも設けられるが、この説明では割愛する。図28の装置は、図28に示す荷重がかけられた位置と、図29および図30に示す作動位置または送出し位置と、図31に示す後退位置との間で動作するように構成される。
【0065】
具体的には、図28に示すように、上記で説明したのとほぼ同様に(図示しない)皮膚表面上にパッチ様装置500を貼り付けた後、押しボタン505に加えられる力によって、ポイント506の周りで、押しボタン505が旋回または屈曲する。ボタン505が旋回すると、押しボタン505の直線部材508は、第1移動止め509のところで作動リング530に接触し、それによって、矢印Aで示すようにリング530が回転する。リング530が回転すると、ばね510は、パーチ(perch)511から落下して溝512に入り、マニホールドおよびマニホールドアーム520を下向きに駆動する。また、リング530が回転すると、ポップオープナ540と、リング530上の斜面582(図35および図36参照)とが係合する。斜面582は、皿ばねからポップオープナ540を外して皿ばねを解放する働きをし、それによって、液溜め550の内容物が加圧される。一度押しボタン505が1回目に解放されると、図30に示すように、押しボタン505の直線部材508は、旋回点506のばねの力によって後退して、第1作動リング530の第1移動止め509を解放し、作動リングの第2移動止め516の後ろに位置する。この際、押しボタン505が2回目に押されると、図31に示すように、作動リング530がさらに回転し、それによってばね510の反対側のタブ521が解放されて開口517に入り、その前に下側にあったばねのタブ522が、斜面の上方の、パーチ513上に駆動され、そのため、マニホールドアーム520が持ち上がり、患者用の針541が後退する。
【0066】
これに加えて、押しボタン505は、移動止め570を介して弁アセンブリ560とも係合する。図32および図33を参照してより詳細に示し説明される弁は押し込まれて開位置に至り、それによって、弁560との間でマニホールドアーム520を介して連続経路561によって提供される流体連通が可能になる。図32および図33に示すように、弁アセンブリ560は、閉位置にあるときには、ゴムシール564内に配設され、かつ接触表面562と拡大近位端571の間を延びる軟質プラスチック部材572を含む。マニホールドアーム520内(すなわち、マニホールドアーム520と液溜め550の間の成型結合部内)に弁アセンブリ560を構成して、単一の液溜めアセンブリ内に連続的な流体連通経路を提供することができる。
【0067】
具体的には、図32に示すように、押込み弁アセンブリ560は、液溜め550と流体連通するゴムシール564内でスライド可能に係合する軟質部材572を含む。弁アセンブリ560は、その初期状態と作動状態があり、径方向に突出する遠位のフィンないしリブ573の組を有する大径遠位端と、拡大近位端571まで延びる小径ボディとを含む。初期状態では、弁560の遠位リブ573は、流路574に菌を侵入させない働きをし、拡大近位端571は、液溜め550内に薬物を安全に閉じ込めるシールを形成する。リブ573および端部571の両方の組は、長期間にわたって液溜め内からの流体の損失を防ぎ、かつ、それと同じ期間にわたって液溜めの外部からの薬物の汚染を防ぐ極めて重要な役割を果たす。
【0068】
使用中に、部材572は最終的に、押しボタン505の動きによって作動状態に押し込まれることになり、移動止め570と接触表面562の間で接触する。図33に示すように、部材572の動きによって、拡大近位端571は、ゴムシール564との係合位置から前に抜け、それによって薬物が、液溜め550から流れ、拡大近位端571を通過して弁流路574に入る。同時に、遠位リブ573の組も本来的に押し込まれ、リブ573の位置自体が、液溜め550から弁流路574を介して、流路561を下り、(図示しない)患者用針マニホールドに流体を送る位置に移動する。
【0069】
図34、図35、および図36に示す第4実施形態の第2バージョンでは、図28から図31のスタンプ加工した金属製の平坦ばね510および弁アセンブリ560の代わりに、ばねおよび弁の代替バージョンを利用することができる。図34および図35では、ばね581は、ほぼ円形の断面を有し、液溜め550およびマニホールドアーム520の上で巻かれるように示されている。さらに、図28の押込みタイプの弁アセンブリ560の代わりに、以下でより詳細に説明するものなど、任意の数の弁アセンブリ584を設けることができる。さらに、上記で説明した他の実施形態では、作動リングとばねの組合せを使用することができる。こうすると、複数の押しボタン機能について作動リングを有利に用いることができる。
【0070】
リング530が回転するときに、斜面582と係合するポップオープナ540を示すために、図35および図36をさらに示す。斜面582は、(図示しない)皿ばねからポップオープナ540を外して皿ばねを解放する働きをし、それによって液溜め550の内容物が加圧される。図36では、上記で説明したのとほぼ同様に斜面582と係合するポップオープナの第2バージョン583が示されている。
【0071】
図37から図41に示す装置の第5実施形態では、この装置の作動および付勢が、やはり1つの多機能/ステッププロセスで実現される押しボタン構造700が示されている。図37から図41は、パッチ様の注射器ないし注入器のシステムの第7実施形態の断面図である。図42から図44は、図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの液溜めサブアセンブリの断面図である。図46から図48は、閉位置および開位置での図37のパッチ様の注射器ないし注入器のシステムの弁サブアセンブリの断面図であり、図49は、図37のパッチ様の注射器ないし注入器のシステムの2ショット式患者用針マニホールドサブアセンブリの図である。図49から図53は、図37のパッチ様の注射器または注入器のシステムの組立ステップの例の図である。
【0072】
本発明の第5実施形態では、注入装置700は、上部ハウジング705、液溜め710、皿ばね保持ハンドル730、少なくとも1つの皿ばね735、液溜め被膜740、患者用針マニホールド745、少なくとも1本の患者用の微小針760、および下部ハウジング770を含む。液溜め710は、図42から図44により詳細に示されており、弁アセンブリ750からマニホールド745に延びる流体連通経路713を有する外周アーム711をさらに含むものである。液溜め710はさらに、被膜740の反対側に配設された剛体部分712を含み、それらの間で物質を捕らえ、この物質を弁アセンブリ750と流体連通するように配置する。マニホールド745には、図101を参照して以下でより詳細に説明する異種材料のアリ結合部746を組み込むことができる。この装置はさらに、押しボタン780に隣接する弁アセンブリ750を含む。図45および図46に、弁アセンブリ750をより詳細に示す。最後に、微小針を作動させ、使用後にそれらを遮蔽するために、改良型安全アセンブリが設けられている。この安全アセンブリは、以下でより詳細に説明し例示する。
【0073】
図37から図41に示すように、本発明の実施形態700は、患者に様々な薬剤を送達するのに使用し得るパッチ様の着用可能な自己充足型物質注入装置が提供されるように構成できるものである。装置700は、使用前および使用中に、1本または複数本の隠れた患者用針760を提供し、下部ハウジング770に配設された(図示しない)粘着表面を介して患者に固定することができる。装置700を適切に配置した後で、押しボタン780の簡単な動作によって装置700を作動することができる。具体的には、押しボタン780がスライドして係合すると、それが皿ばね735を解放する働きをし、それによって液溜め710の内容物が加圧される。この押しボタン780の係合はさらに、弁アセンブリ750を開く働きもし、それによって、液溜め710の内容物と患者用微小針760の間で連続的な流体連通経路が確立される。最後に、この押しボタン780の係合は、患者用針マニホールド745から(図示しない)支持部材を解放する働きをし、それによって患者用針760が配置され、装置の作動が完了する。上記機能が実現される際、この押しボタン780の係合はさらに、以下でより詳細に説明する安全アセンブリを解放する働きをし、それによって、患者用針760によって刺される危険性が小さくなる。上記で説明した実施形態の大きな利益は、1回の押しボタン動作でこれら各機能を実現し得ることである。さらに、別の大きな利益は、液溜めサブアセンブリからなる連続的な流体連通経路を使用することである。
【0074】
図37に戻ると、上記で説明したのとほぼ同様に装置700が適切に位置決めされた後で、装置700は、押しボタン780をこの装置に向かって内向きにスライドさせることによって作動される。このスライド式係合によって、斜面782が保持ハンドル730に向かって駆動される。斜面782と保持ハンドル730が係合すると、保持ハンドル730は、皿ばね735を固定する位置から変位して、ばね735により液溜め710が加圧される。具体的には、このステップによって、皿ばね735が解放され、それによって皿ばね735が液溜め710の可撓性被膜740に押し付けられて、被膜740と剛体部分712の間の液溜めの内容物を加圧する。この作動ステップはまた、マニホールド745の下からの支持を外して、患者用針マニホールド745を解放する働きもする。患者用針マニホールド745は、外周アーム711(または、上記で説明した任意の数のばね)の圧縮によって下向きに付勢され、患者用の針760が配置される。最後に、この作動ステップは、弁アセンブリ750を開く働きもし、それによって、液溜め710と患者用針760の間で流体連通経路が確立される。
【0075】
具体的には、図45、図46、および図47の断面図に示すように、弁アセンブリ750は、液溜め710と流体連通するゴムストッパ752内でスライド可能に係合するプラスチックボタン751を含む。弁アセンブリ750は、その初期状態と作動状態を有し、径方向に突出した遠位のフィンないしリブ753の組を有する大径遠位端と、近位の移動止め754の組を有する小径近位端とを含む。使用中に、ボタン751は、最終的に、押しボタン780の動きによって作動状態に押し込まれることになり、移動止め754の組は、ゴムストッパ752との係合から前に抜け、それによって薬物が、液溜め710から流れ、移動止め754を通過して流路713に入る。先に述べたように、上記で説明した各実施形態の大きな利益は、1回の押しボタン動作で各ステップを実現し得ることである。さらに、別の大きな利益は、液溜めサブアセンブリからなる連続的な流体連通経路を使用することである。
【0076】
一連の組立図50から54に、上記装置の組立工程の例を示す。図50では、下部ハウジング770、固定された皿ばね730、押しボタン780を準備して、液溜めおよび上部ハウジングを受ける。図51では、液溜め710、および(任意選択の針キャップ719を含む)マニホールド745を準備して、下部ハウジング770内に落とし込む。次いで、図52では、上部ハウジング705を準備して、下部ハウジング770上に落とす。
【0077】
上記で説明した各実施形態では、注入装置の液溜め(すなわち、図4の150)は、1つまたは複数の金属化被膜などの非伸張性可撓性被膜(すなわち、図4の151)とともに使用される剛体部分(すなわち、図4の152)からなり、いずれかが剛体部分にも押し付けて位置決めされる第1被膜と第2被膜の間か、または第1被膜と剛体部分の間に任意の数の物質を含むことができる。この剛体部分または液溜め基部は、可撓性被膜を押し付けることができる液溜めの硬質部分からなり、そのような硬質部分として働くことができる。この剛体部分は、くぼんだ中央部分およびフランジを含むことができる。このフランジは、剛体部分の周囲に設けられ、それによって、剛体部分に対して可撓性被膜または被膜蓋を熱遮蔽し、これらの間に内容物用の液溜めまたはチャンバを形成する。このチャンバの少なくとも1つの壁は可撓性被膜を含み、このチャンバの少なくとも1つの壁は剛体表面を含むので、この可撓性被膜に隣接して1つまたは複数の皿ばね(すなわち、図4の130)を配置することができ、これらの皿ばねを使用して、可撓性被膜にほぼ一定の圧力を加え、液溜めチャンバおよび内容物を加圧することができる。
【0078】
以下でより詳細に説明するばねフォロワをさらに備えように提供し得る皿ばねが設けられ、それによって、ほぼ均一かつ一定の圧力が液溜めの可撓性被膜に加えられて、可撓性被膜と剛体部分の間で液溜めの内容物が圧縮され、これらの内容物が液溜めから、弁アセンブリ(すなわち、図1の120)を介して1つまたは複数の流路を通って所望の場所に押し出される。先に述べたように、この液溜めは、2つ以上の可撓性非伸張性被膜で構成することもできる。ここで、内容物は、これらの被膜間に収容することができ、少なくとも1つの被膜は、液溜めの内容物を圧縮し加圧する剛体基部を提供する剛体部分に取り付けられる。液溜めサブアセンブリの別の実施形態では、流量が、初期大流量から小流量に、1度にまたは多段階に自動的に少なくなるように調節される。流量調節の追加の細部は、文献にさらに論じられている。(例えば、Jim Fentress他の2003年3月26日出願の「Multi-Stage Fluid Delivery Device And Method」という名称の特許文献1参照。この内容全体を参照により本明細書に組み込む。)
液溜めサブアセンブリの可撓性被膜(すなわち、図4の要素151)は、金属を被覆した被膜またはその他の類似の物質など、非伸張性材料または積層物で作製することができる。例えば、第1実施形態の液溜めで使用し得る1つの可能な可撓性積層被膜(すなわち、図4の要素151)は、第1ポリエチレン層と、第3金属層に対する付着機構が得られる当業者に周知の第2化学層と、障壁特徴に基づいて選択される第3金属層と、後続のポリエステルまたはナイロンからなる第4層とからなり得る。金属を被覆した被膜または金属化した被膜を剛体部分とともに使用することによって液溜めの障壁特性が改善され、それによって、液溜め内に収容された内容物の貯蔵期限が延長または改善される。例えば、液溜めの内容物がインスリンを含む場合、上記で説明した実施形態の液溜め内で接触する主な材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、およびテフロン(登録商標)が含まれる。以下でより詳細に説明するように、液溜め内容物が残りの流路内で接触する主な材料には、ポリエチレン(PE)、医療用アクリル、およびステンレス鋼が含まれる。液溜めの内容物と長期間接触するこのような材料は、ISO 10−993およびその他の該当する生物学的適合性試験に合格したものが好ましい。
【0079】
液溜めはさらに、該当する制御された環境内で、液溜め内容物に悪影響を及ぼすことなく、この内容物の規定貯蔵期間にわたって保管することができ、様々な環境条件に適用し得ることが好ましい。さらに、所望の貯蔵期間を満足するのに許容し得るよりも速い割合で、内容物中に気体、液体、および固体状の材料が出入りすることがない障壁が、この液溜めのコンポーネントによって提供される。先に示した実施形態では、液溜めの材料は、華氏約34(1℃)から華氏120度(49℃)の温度範囲で保管し動作させることができ、貯蔵期間を2年以上とすることができる。
【0080】
安定性要件を満足することに加えて、30psi(21g/mm)のサンプルを20分間漏れなしに保持するなど、任意の数の漏れ試験に連続して合格することによって、この液溜めの動作をさらに保証することができる。液溜めの構成に起因する充填、保管、および送達の追加の利益は、上部空間が最小限に抑えられることおよび適合性であるが、これらは以下でより詳細に説明する。
【0081】
以下でより詳細に説明するように、液溜めは、充填する前に空にすることが好ましい。充填する前に液溜めを空にし、剛体部分の硬い床面にはわずかなくぼみしかないようにすることによって、液溜め内の上部空間および過度の無駄を最小限に抑えることができる。さらに、液溜めの形状は、用いられる付勢機構、例えば様々な寸法の直径および高さの円板または皿ばねのタイプに適合するように構成できる。さらに、充填時に、空にした可撓性の液溜めを使用することによって、充填した内容物内の空気または泡が最小限に抑えられる。可撓性の液溜めを使用することは、この装置が外部の圧力または温度の変動を受け、それによって、液溜めの内圧が増加し得るときにも極めて有益である。このような場合、可撓性の液溜めは、内容物とともに膨張収縮し、そのため、膨張収縮力により生じ得る漏れがなくなる。
【0082】
この液溜めの別の特徴は、充填時に自動的に、あるいは使用時に使用者によって、粒子の検査を行うことができることである。剛体部分など、1つまたは複数の液溜めの障壁は、透明かつ明瞭なプラスチック材料で成型することができ、それによって、液溜め内に含まれる物質を検査することができる。好ましくは、この透明かつ明瞭なプラスチック材料は、透明度および明瞭度が高く、抽出物が少なく、液溜めに収容される物質と生物学的に適合することを特徴とする環状オレフィンコポリマーである。このような応用例では、検査を妨げ得る液溜めの形状は最小限に抑えられる(例えば、検査中に回転することが可能である)。
【0083】
上記で説明した実施形態における液溜め(すなわち、図4の150)と、患者用の微小針(すなわち、図1の141)との間の流路は、多くの生物学的な適合性試験および保存試験を満足する、液溜めについて上記で説明したものに類似の、または全く同じ材料で構成される。例えば、下記の表1に示すように、装置の内容物がインスリンを含む場合、これらの実施形態の液溜め内で接触する主な材料には、直鎖状低密度ポリエチレン、環状オレフィンコポリマー、およびテフロン(登録商標)が含まれ、また、透明かつ明瞭なプラスチックも含めることができる。液溜めと患者用針マニホールドの微小針との間の残りの流路内で接触する主な材料には、ポリエチレン、医療用アクリル、および/またはステンレス鋼が含まれる。
【0084】
【表1】

【0085】
具体的には、患者用の針(すなわち、図1の141)は、ステンレス鋼で構成することができ、患者用針マニホールド(すなわち、図1の140)は、ポリエチレンおよび/または医療用アクリルで構成することができる。このような材料は、液溜めの内容物と長期間接触する際には、ISO 10−993の生物学的な適合性試験に合格したものが好ましい。
【0086】
上記の各実施形態で示すように、本質的に均一かつ一定の力を液溜めに加えて液溜めから内容物を押し出すための円板または皿ばね(すなわち、図1の130)は、装置内に収容され、以下、定荷重ばねと称することがある。定荷重ばねを使用してエネルギーを蓄えることができ、このエネルギーは使用時に、装置による付勢によって解放されると、液溜めを加圧する。皿ばねは、複数のばねフィンガの中央に位置決めされた保持用の円板またはハンドル(すなわち、図1の135)によって撓んだ状態で保持される。こうすると、保管中に、この皿ばねが、液溜めの被膜(すなわち、図4の151)またはこの装置の残りのコンポーネントに応力を作用することがなくなる。保持円板は、ばねの張力および変形に抵抗するのに十分な剛性のあるものであり、通常の引張荷重下で降伏するものではない。
【0087】
保持円板が引き込まれて皿ばねから離れると、これらのばねのフィンガが落下し、その際に液溜めの被膜蓋に力を加える。皿ばねの縁部は、液溜めの外周のところで捕らえられる。好ましくは、この皿ばねは、液溜め内容物を皮内送達する場合、液溜め内で、約1psi(0.7g/mm)から50psi(35g/mm)、より好ましくは約2psi(1.4g/mm)から約25psi(18g/mm)、最も好ましくは約15psi(11g/mm)から約20psi(14g/mm)の圧力を生成するように構成し得る。皮下注射ないし皮下注入の場合には、約2psi(1.4g/mm)から5psi(3.5g/mm)の範囲で十分なことがある。皿ばねは、直径約1.15インチ(29.2mm)から1.50インチ(38.1mm)、好ましくは1.26インチ(32.0mm)に寸法設定することができ、600μlを完全に送達し得るようにばねフォロワをさらに含む。
【0088】
図55から図60に、上記で説明した実施形態で、それぞれ皿ばね802とともに使用し得る皿ばねフォロワ800(a)から800(c)の様々なバージョンの例を示す。各バージョンでは、変位部材800は、皿ばね802に隣接して設けられ、そのため、皿ばね802が撓み位置と弛緩位置(すなわち、保持部材によって解放された位置)の間を移動すると、ばね802は、直接、液溜めの可撓性被膜(すなわち、図4の151)にではなく、変位部材すなわちフォロワ800にほぼ一定の力を加える。次いで、フォロワ800は、液溜め被膜804に、より均一に分散された力を加える。
【0089】
例えば、皿ばね802の撓み位置および解放位置をそれぞれ示す対になった図55と図56、図57と図58、図59と図60に示すように、フォロワの例800(a)、800(b)、および800(c)は、液溜め剛体壁806(a)、806(b)、および806(c)の形状と一致する。したがって、図56、図58、および図60に示すように皿ばね802が解放されると、皿ばね802は、フォロワ800(a)、800(b)、および800(c)を液溜め剛体壁806(a)、806(b)、および806(c)にそれぞれ緊密に押し付けて、空所による損失を最小限に抑える。このような損失をさらに最小限に抑えるために、図90から図92を参照して以下でより詳細に説明する、重ねて成型した皿ばねを提供することもできる。
【0090】
上記で説明した各実施形態は、少なくとも1本の患者用の針または微小針(すなわち、図1の141)も含むが、数本、例えば3本の微小針を含むこともある。好ましくは、各微小針は、少なくとも31番ゲージ以下、例えば34番ゲージとし、液溜めと流体連通して配置し得る患者用針マニホールド(すなわち、図1の140)内に固定する。これらの微小針は、装置に2本以上含めるときには、長さまたはゲージを異なるものとすることもできるし、あるいは長さおよびゲージがともに異なるものの組合せとすることもできる。これらの微小針は、本体の長さに沿って、好ましくは針の先端近く、または針が先端面取り部を有する場合にはその付近に配置された1つまたは複数のポートを含むことができる。
【0091】
上記で説明した実施形態では、34番ゲージの針を複数本使用して液溜めの内容物を送達するほうが、はるかに大きなカニューレまたは針を必要とする注射器による直接注射に一般に関連するよりも長い期間にわたって注入を行うときには実際的である。ここで開示する実施形態では、皮内または皮下の空間を対象とする任意の微小針を使用し得るが、上記実施形態は、長さ1mmから4mmの間(すなわち、2mm)の皮内微小針を含み、これらの患者用針の配置は、直線または非直線の配列とすることができ、特定の応用例の必要に応じて任意の数の針を含むことができる。
【0092】
患者用針は、患者用針マニホールド内で位置決めされる。上記で説明した各実施形態の患者用針マニホールド(すなわち、図1の140)では、各患者用針に少なくとも1つの流体連通経路または供給チャネルが設けられる。このマニホールドは、1本または複数本の患者用針に対して経路を1つだけ設けることもできるし、各針に別々に内容物を送る複数の流路またはチャネルを設けることもできる。これらの経路またはチャネルはさらに、内容物を移動させるための蛇行経路を含むことができる。この蛇行経路は、流体の送達圧力および送達速度に影響を及ぼし、流れを制限するものとして動作する。患者用針マニホールド内のチャネルまたは経路は、応用例に応じて、幅、深さ、および構成を変えることができ、チャネル幅は典型的には、約0.015インチ(0.38mm)から0.04インチ(1.02mm)、好ましくは0.02インチ(0.51mm)であり、マニホールド内の空所が最小限に抑えられるように構成される。
【0093】
上記で説明した装置は、医薬品および薬剤を含めて様々な物質を患者に、特に人間の患者に投与するのに使用するのに適している。本明細書では、薬剤は、体膜および体表面、特に皮膚を介して送達し得る生物活性を有する物質を含む。以下でより詳細に列挙する例には、抗生物質、抗ウィルス剤、鎮痛剤、麻酔薬、食欲抑制剤、抗関節炎薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗悪性腫瘍薬、DNAワクチンなどのワクチンなどが含まれる。患者の皮内または皮下に送達し得る他の物質には、ヒト成長ホルモン、インスリン、タンパク質、ペプチドおよびその断片が含まれる。タンパク質およびペプチドは、自然に存在するもの、合成生成物、または組換え生成物とし得る。さらに、この装置は、細胞治療での樹状細胞の皮内注入時に使用することができる。本発明の方法に従って送達し得る他の物質は、病気の予防、診断、軽減、処置、治療で使用する薬物、ワクチンなどからなる群から選択し得る。これらとともに用いる薬物には、α1−アンチトリプシン、抗血管形成剤、アンチセンス、ブトルファノール、カルシトニンおよび類似物、セレデース、COX−II阻害剤、外皮用薬、ジヒドロエルゴタミン、ドーパミン作用薬およびドーパミン拮抗薬、エンケファリンおよびその他のオピオイドペプチド、上皮成長因子、エリスロポエチンおよび類似物、卵胞刺激ホルモン、G−CSF、グルカゴン、GM−CSF、グラニセトロン、成長ホルモンおよび類似物(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモン拮抗剤、ヒルジンおよびヒルログなどのヒルジン類似物、IgE抑制剤、インスリン、インシュリノトロピンおよび類似物、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモンおよび類似物、低分子量ヘパリン、M−CSF、メトクロプラミド、ミダゾラム、モノクローナル抗体、麻薬性鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド系抗炎症剤、オリゴ糖、オンダンセトロン、上皮小体ホルモンおよび類似物、上皮小体ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プロスタグランジン、組換え可溶性受容体、スコポラミン、セロトニン作用薬およびセロトニン拮抗薬、シルデナフィル、テルブタリン、血栓溶解剤、組織プラスミノーゲン活性化因子、TNFおよびTNF拮抗薬、予防薬および治療抗原を含めて、キャリア/アジュバントを含むワクチンまたはキャリア/アジュバントを含まないワクチン(サブユニットタンパク質、ペプチドおよび多糖体、多糖結合体、トキソイド、遺伝組換えワクチン、弱毒生再集合体不活化全細胞、ウィルスおよび細菌のベクタを含むが、これらに限定されるものではない)がある。これらは、依存症、関節炎、コレラ、コカイン依存症、ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、髄膜炎、麻疹、おたふく風邪、風疹、水痘、黄熱病、呼吸器多核体ウィルス、ダニ媒介日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、A型、B型、C型、およびE型を含む肝炎、中耳炎、狂犬病、ポリオ、HIV、パラインフルエンザ、ロタウィルス、エプスタインバーウィルス、CMV、クラミジア、型別不能ヘモフィルス、モラクセラカタラーリス、ヒトパピローマウィルス、BCGを含む結核、淋疾、喘息、アテローム硬化性マラリア、大腸菌、アルツハイマー、ヘリコバクターピロリ、サルモネラ症、糖尿病、癌、単純ヘルペス、ヒトパピローマなどに関連するものである。他の物質には、感冒用の作用剤など、あらゆる主要な治療薬、抗依存症薬、抗アレルギー剤、制吐剤、抗肥満症薬、抗骨粗鬆症薬、抗感染症薬、鎮痛剤、麻酔薬、食欲抑制剤、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗片頭痛薬、乗物酔い治療薬、制嘔吐剤、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、鎮痒薬、精神病治療薬、解熱剤、抗コリン薬、ベンゾジアゼピン拮抗薬、全身血管、冠動脈、末梢血管、脳血管を含む血管拡張剤、骨作動薬、中枢神経興奮薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドその他の巨大分子、覚醒剤、鎮静薬、性機能低下および精神安定薬、ならびにツベルクリンその他の過敏症薬などの主要な診断薬が含まれる。これらは文献に記載されているものである(例えば、「Method of Intradermally Injecting Substances」という名称の特許文献2参照。この内容全体を参照により明示的に本明細書に組み込む)。
【0094】
本発明のシステムおよび方法に従って送達し得るワクチン製剤は、ヒト病原体に対して免疫反応を誘発し得る抗原または抗原組成物からなる群から選択し得る。これらの抗原または抗原組成物は、HIV−1(tat、nef、gp120またはgp160など)、gDまたはその誘導体あるいはHSV1またはHSV2からのICP27などの前初期タンパク質などのヒトヘルペスウィルス(HSV)、サイトメガロウィルス((特にヒト)CMV)(gBまたはその誘導体など)、ロタウィルス(弱毒生ウィルスを含む)、エプスタインバーウィルス(gp350またはその誘導体など)、水痘帯状疱疹ウィルス(VZV:gpl、II、およびIE63など)由来のもの、または、B型肝炎ウィルス(例えば、B型肝炎表面抗原またはその誘導体)、A型肝炎ウィルス(HAV)、C型肝炎ウィルス、およびE型肝炎ウィルスなどの肝炎ウィルス由来のもの、または、パラミクソウィルス、すなわち、呼吸器多核体ウィルス(RSV:Fタンパク質およびGタンパク質またはそれらの誘導体など)、パラインフルエンザウィルス、麻疹ウィルス、ムンプスウィルス、ヒトパピローマウィルス(HPV:例えば、HPV6、11、16、18)、フラビウィルス(例えば、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、ダニ媒介脳炎ウィルス、日本脳炎ウィルス)、あるいはインフルエンザウィルス(生ウィルスまたは不活化ウィルスの全体、卵またはMDCK細胞内で成長させた分離インフルエンザウィルス、あるいは、インフルエンザビロゾーム全体、またはその精製タンパク質または組換えタンパク質、例えば、HA、NP、NAまたはMタンパク質あるいはこれらの組合せ)などの他のウィルス病原体由来のもの、ナイセリアゴノレエおよびナイセリアメニンジティディス(例えば、莢膜多糖体およびその結合体、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、付着因子)を含むナイセリア属、ストレプトコッカスピオジェネス(例えば、Mタンパク質またはその断片、C5Aプロテアーゼ、リポタイコ酸)、ストレプトコッカスアガラクティエ、ストレプトコッカスミュータンス、ヘモフィルスデュクレイ、ブランハメラカタラーリスとしても知られるモラクセラカタラーリス(例えば、高分子量および低分子量の接着因子および侵入因子)を含むモラクセラ属、ボルデテラペルツーシス(例えば、パータクチン、百日咳毒素またはその誘導体、糸状ヘマグルチニン、アデニル酸シクラーゼ、卵管采)、ボルデテラパラパータシス、およびボルデテラブロンキセプチカを含むボルデテラ属、マイコバクテリウムテュバキュローシス(例えば、ESAT6、抗原85A、抗原85B、または抗原85C)、マイコバクテリウムボビス、マイコバクテリウムレプレ、マイコバクテリウムアビウム、マイコバクテリウムツベルクローシス、マイコバクテリウムスメグマチスを含むマイコバクテリウム属、レジオネラニューモフィラを含むレジオネラ属、毒素原性大腸菌(例えば、定着因子、易熱性毒素またはその誘導体、耐熱性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸管病原性大腸菌(例えば、志賀毒素様毒素またはその誘導体)を含むエシェリキア属、ビブリオコレラ(例えば、コレラ毒素またはその誘導体)を含むビブリオ属、シゲラソンネ、シゲラディッセンテリイ、シゲラフレックスネリを含むシゲラ属、エルシニアエンテロコリチカ(例えば、Yopタンパク質)、エルシニアペスチス、エルシニアシュードツベルクローシスを含むエルシニア属、カンピロバクタージェジュニ(例えば、毒素、接着因子、および侵入因子)およびカンピロバクターコリを含むカンピロバクター属、サルモネラチフィ、サルモネラパラチフィ、サルモネラコレラスイス、サルモネラエンテリティデスを含むサルモネラ属、リステリアモノサイトゲネスを含むリステリア属、ヘリコバクターピロリ(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含むヘリコバクター属、シュードモナスアルギノーサを含むシュードモナス属、スタフィロコッカスオーレウス、スタフィロコッカスエピデルミデスを含むスタフィロコッカス属、エンテロコッカスファカリス、エンテロコッカスフェシウムを含むエンテロコッカス属、クロストリジウムテタニ(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、クロストリジウムボツリナム(例えば、ボツリナム毒素およびその誘導体)、クロストリジウムディフィシル(例えば、クロストリジウム毒素AまたはBおよびそれらの誘導体)を含むクロストリジウム属、バチルスアンスラシス(例えば、ボツリナム毒素およびその誘導体)を含むバチルス属、コリネバクテリウムジフセリエ(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)を含むコリネバクテリウム属、ボレリアブルグドルフェリ(例えば、OspA、OspC、DbpA、DpbB)、ボレリアガリニ(例えば、OspA、OspC、DbpA、DpbB)、ボレリアアフゼリ(例えば、OspA、OspC、DbpA、DpbB)、ボレリアアンダーソニー(例えば、OspA、OspC、DbpA、DpbB)、ボレリアハームシーを含むボレリア属、エーリキアエクイおよびヒト顆粒球エーリキア病原体を含むエーリキア属、リケッチシアリケッチーを含むリケッチア属、クラミジアトラコマチス(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、クラミジアニューモニエ(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、クラミジアシッタシを含むクラミジア属、レプトスピラインタロガンスを含むレプトスピラ属、トレポネーマパリダム(例えば、希薄外膜タンパク質)、トレポネーマデンティコーラ、トレポネーマハイオディセンテリーを含むトレポネーマ属などの細菌病原体由来のもの、または、プラスモジウムファルシプラムを含むプラスモジウム属、トキソプラズマゴンディ(例えば、SAG2、SAG3、Tg34)を含むトキソプラズマ属、エントアメーバヒストリテカを含むエントアメーバ属、バベシアミクロッティを含むバベシア属、トリパノソーマクルジイを含むトリパノソーマ属、ジアルジアランブリアを含むジアルジア属、森林型熱帯リーシュマニアを含むリーシュマニア属、ニューモシスティスカリニを含むニューモシスティス属、トリコモナスヴァジナリスを含むトリコモナス属、マンソン住血吸虫を含むシストソーマ属などの寄生生物由来のもの、カンジダアルビカンスを含むカンジダ属、クリプトコッカスネオフォルマンスを含むクリプトコッカス属などの酵母菌由来のものである。これらは文献に記載されているものである(例えば、「Vaccine Delivery System」という名称の特許文献3参照。この内容全体を参照により明示的に本明細書に組み込む)。
【0095】
これらには、例えば、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38−1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2、およびhTCC1など、マイコバクテリウムテュバキュローシス用の他の好ましい特定の抗原も含まれる。マイコバクテリウムテュバキュローシス用のタンパク質には、融合タンパク質およびその変異体も含まれる。これらは、マイコバクテリウムテュバキュローシスの少なくとも2つの、好ましくは3つのポリペプチドが融合してより大きなタンパク質になったものである。好ましい融合体には、Ra12−TbH9−Ra35、Erd14−DPV−MTI、DPV−MTI−MSL、Erd14−DPV−MTI−MSL−mTCC2、Erd14−DPV−MTI−MSL、DPV−MTI−MSL−mTCC2、TbH9−DPV−MTIが含まれる。クラミジア用の最も好ましい抗原には、例えば、高分子量タンパク質(HWMP)、ORF3、および推定上の膜タンパク質(Pmps)が含まれる。好ましい細菌ワクチンは、ストレプトコッカスニューモニエ(例えば、莢膜多糖体およびその結合体、PsaA、PspA、ストレプトリジン、コリン結合タンパク質)ならびにタンパク質抗原ニューモリジン(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)およびその突然変異解毒誘導体を含むストレプトコッカス属由来の抗原を含む。他の好ましい細菌ワクチンは、ヘモフィルスB型インフルエンザ(「Hib」、例えば、PRPおよびその結合体)、型別不能ヘモフィルスインフルエンザ、例えばOMP26、高分子量接着因子、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびペプチド由来のフィンブリンあるいはその多数の複製変異体または融合タンパク質を含めて、ヘモフィルス属由来の抗原を含む。B型肝炎表面抗原の誘導体は、当技術分野ではよく知られており、とりわけ、PreS1、PreS2のS抗原を含む。好ましい一態様では、本発明のワクチン製剤は、特にCHO細胞内で発現させるときには、HIV−1抗原、gp120を含む。別の実施形態では、本発明のワクチン製剤は、上記で定義したgD2tを含む。
【0096】
上記で列挙した物質の送達に加えて、この装置および方法は、患者から物質を抜き取り、また、患者内の物質のレベルを監視することに用いることもできる。監視し、また抜き取ることができる物質の例には、血液、組織液、または血漿が含まれる。次いで、抜き取った物質を、分析物、グルコース、薬などについて分析することができる。
【0097】
上記で説明した本発明の実施形態は、好ましくは、押込み表面(すなわち、押しボタン)構造を含む。押しボタンまたは押込み表面を軽く押すことによって、この装置を位置決めし、皮膚表面に貼り付け、付勢し、かつ/または作動させることができる。具体的には、第1ステップで使用者は、無菌パッケージから装置を取り出し、(図示しない)粘着カバーおよび/または針キャップを取り外す。パッケージから装置を取り出した後、使用する前に、上記で説明した特徴によって、使用者は、装置およびその中の内容物をともに検査することができる。これには、コンポーネントがなくなっていないか、または損傷していないか、1つ(または複数)の有効期限、薬物のくもりまたは色の変化などの検査が含まれる。使用後、使用者は再度、投与量が全部送達されたことを保証するために装置を検査することができる。この点で、この装置は、投与量終了を示すものを含み得る。これを以下でより詳細に説明する。あるいは、この装置は、投与された量を示すものを含み得る。例えばこれは、装置のハウジングの表面積の少なくとも20%を占める読取り式のゲージ区域からなり、その精度は、標示された投与量の±10%以内である。
【0098】
次のステップは、この装置を使用者の皮膚表面に位置決めし、貼り付けることである。パッチのように、使用者は、この装置を皮膚にしっかりと押し付ける。この装置は、使用者の皮膚にこの装置を固定するための粘着層を有する底面を含んでいる。この底面は、平坦にすることもできるし、身体の形に合わせるか、または任意の適切な形状にすることもでき、その上に粘着層を備える。この粘着層は、出荷前にまず間違いなく覆うことになる。使用する前に、使用者は、粘着剤を覆っている被膜などの粘着性の覆いを剥がして、皮膚に押し付けて配置するために粘着剤を露出させる。
【0099】
一度取り外すと、使用者は、この装置を皮膚に配置し、押し付けて粘着が適切に行われるようにすることができる。先に述べたように、この装置は、適切に位置決めされた後で、ボタン(すなわち、図1の105)をスライドさせるか、または上部ハウジングの押込み表面(すなわち、図12の305)を押すことによって作動される。この作動ステップにより皿ばねが解放され、この皿ばねによって液溜めの可撓性被膜が押され、液溜めが加圧される。また、この作動ステップは、患者用針マニホールドを解放し、患者用の針を配置する働きもする。最後に、この作動ステップは、上記で説明したように、1つまたは複数の弁アセンブリまたは流路を開いて、液溜めと患者用針の間に流体連通経路を確立する働きもする。上記で説明した各実施形態に対して大きな利益になるのは、1回の押込み動作で各ステップを実現し得ることである。さらに、別の大きな利益は、液溜めアセンブリ内に完全に含まれる連続的な流体連通経路を使用することである。
【0100】
作動されると、使用者は通常、ある期間にわたって、例えば10分から72時間、この装置を定位置に残し、すなわちこの装置を着用して、この装置の内容物が完全に送達されるようにし、次いで、この装置を取り外し、破棄する。このとき、下にある組織にはなんの損傷も加えられない。ただし、意図して取り外すか、または誤って取り外されると、以下でより詳細に説明するように、1つまたは複数の安全機構が展開されて、作動により露出した針を遮蔽する。ただし、これらの安全機構は、ボタンおよびボタン用のスライダが押されておらず、患者用針が延びていない場合には展開されないように構成することができ、それによって使用前に安全機構が展開されないようにする。
【0101】
意図せず、または誤って針が刺さらないように、また、意図的に装置が再利用されないように、さらに、露出した針を遮蔽するために、係止式の針安全機構を設け、皮膚表面から装置を取り外した直後に自動的に作動させることができる。以下でより詳細に説明する安全機構実施形態の第1バージョンでは、可撓性安全部材を設けることができる。この部材は、1つには、患者の皮膚に接触する粘着剤で覆われた平坦な表面部分を提供する。この部材は、解放されると、皮膚表面に定位置で保持される。装置が皮膚表面から取り外されると、この部材は、患者用の微小針を遮蔽する位置に延びる。次いで、このように延びた安全部材は、定位置で係止され、患者用針による不測の怪我、または患者用針への露出を防止する。安全機構実施形態の他のバージョンは、患者用針の可撓性キャップを含む(すなわち、図1の111)。このキャップは、患者用針を保護する働きをし、無菌障壁を提供する。この針キャップは、装置の製作中に患者用針を保護し、使用前に使用者を保護し、取り外す前の任意の時点で無菌障壁を提供する働きをし得る。この針キャップは、患者用針マニホールドに圧入して取り付けることができる。
【0102】
上記で説明した性能上の利点に加えて、上記で説明した実施形態の別の利点は、2つ以上の別個の自己充足型サブアセンブリ(すなわち、液溜めサブアセンブリおよび本体サブアセンブリ)に分けて、組立を柔軟にし得ることである。各サブアセンブリは、自己充足型の安定なものであり、液溜めサブアセンブリを残りのコンポーネントから分離することができ、それによって、液溜めの充填および検査を別に行うことができ、残りのコンポーネントの不必要な取扱いがなくなる。さらに、追加のコンポーネントのいずれかを破棄する場合、高価な液溜めの内容物を除外することができる。また、液溜めサブアセンブリは不必要な部分を含まず、その結果、充填操作に混入する粒子が少なくなる。また、エネルギーが蓄えられたコンポーネントはすべて、本体サブアセンブリ内にあり、そのため、液溜めの充填中にこれらのコンポーネントが誤って展開される恐れはない。具体的には、液溜めサブアセンブリ内にはばねが含まれず、そのため、充填中に、望まないのにばねが解放される可能性はない。先に述べたように、液溜めサブアセンブリ内の外部コンポーネントの数は最小限に抑えられているので、粒子の混入が減り、液溜めおよび蓋などの必要なコンポーネントだけが含まれている。垂れ下がる部分は存在せず、典型的には、アセンブリを落とし込むステップしか必要とされない。さらに、この液溜めは、装置の上部に配置することができ、それによって、透明なコンポーネントを通して薬物の液溜めを完全に、かつ遮られずに見ることができ、そのため、使用者または製造業者が液溜めの内容物を見ることができる。
【0103】
所望の結果をより良好に実現するための追加の機能および特徴を有するように、上記の実施形態の例で提供されるコンポーネントを任意の数だけ設けることができる。具体的には、以下でより詳細に説明するように、所望の結果を実現するために、これらの実施形態の例とともに、改善された材料、弁および皿ばねの構造、安全機構、ならびにパッケージング用の方法および材料を利用することができる。例えば、図1に戻ると、押しボタン105は、押込み弁120と係合し、それによって、この時点で加圧されている液溜め150とマニホールドアセンブリ140の間で流れが開始される。図1に示す実施形態のプッシュプル式の弁アセンブリ120は、押しボタン105によって開位置に押し込まれるまで、液溜め150と患者用針マニホールド140の間の流れを制限するように構成され、以下でより詳細に説明する任意の数の改良型弁アセンブリからなり得る。
【0104】
図61に示すように、改良型弁アセンブリ1200は、経路1202を介して(図示しない)液溜めと流体連通するハウジング1203内の開口1201内に配置されたプッシュプル式の弁ロッド1206からなり得る。図61および図62には、引込み弁1200および1300を閉位置で示し、図63および64には、押込み弁1400および1500を閉位置で示す。
【0105】
従来型の弁アセンブリは一般に、液溜めと流体連通するゴムストッパ内でスライド可能に係合したプラスチック部材を含み、このプラスチック部材は、液溜めから流体が漏れないようにゴムストッパ内にしっかりと配置された近位端を含む。このプラスチック部材が押しボタンによってゴムストッパ内で係合し変位すると、プラスチック部材の近位端のところに開口が形成され、それによって液溜めから流体が連通することができる。ただし、このようなアセンブリは、プラスチック部材の近位端を配置するための別のゴム製の栓またはストッパを必要とする。
【0106】
図61から図63に、弁本体1206、1306、および1406がエラストマで構成される弁の実施形態1200、1300、および1400を示す。これらの弁および弁のリブ1207、1307、および1407は部分的にエラストマで構築され、それによって、別のゴム製の栓またはシール(すなわち、図6の224)が不要になる。さらに、図62および図63の弁は、リブ1307および1407が、流路逃げ開口1304および1404と接触して、おそらくは損傷が加えられない程度に十分な直線寸法を有する。
【0107】
具体的には、図61から図63の各図で、(図示しない)液溜めと流体連通する開口1202、1302、および1402が設けられる。(図示しない)患者用針マニホールドと流体連通する第2の開口1204、1304、および1404が設けられる。弁本体1206、1306、および1406が閉位置から開位置まで移動すると、弁本体1206、1306、および1406の密封用の部材またはリブ1207、1307、および1407がそれぞれ移動して、開口1202と1204、開口1302と1304、および開口1402と1404の間にそれぞれ流体連通経路を提供される。ただし、このような密封部材が、これらの開口、具体的には、開口1204、1304、および1404に接触し、それによって、これらの開口の縁部が、弁本体1206、1306、および1406、または密封部材1207、1307、および1407を削るように作用することは許されない。これは、弁の各実施形態1200、1300、および1400において、弁の開位置または閉位置のいずれかで、密封部材1207、1307、および1407と、開口1204、1304、および1404との間に十分な間隙を設けることによって防止される。例えば、図62のリブ1307は、弁が閉じているとき、または開いているとき、あるいはこれらの中間にあるときに、開口1304と接触しない十分な間隔で配置される。以下でより詳細に説明する弁本体によって、これらの密封部材のさらなる改善および説明が提供される。
【0108】
図64から図68に示す弁アセンブリではさらに、低圧時の流体密封、高圧時の流体密封、および菌侵入防止用の制限をすべて1つの部分で行うという複雑な役割が実現される。弁の実施形態1500は、2つのコンポーネントを必要とし、これらが合わさって流体弁システムが形成される。第1のコンポーネントは弁プランジャロッド1502であり、第2のコンポーネントは、円筒形の本体開口1504であり、この中に弁プランジャロッド1502が収容される。この流体弁システム全体を、図1の注入装置100内で液状の薬物を保持するのに使用し得る流体溜めに組み込む。
【0109】
図64から図68でわかるように、弁1500は、初期状態および作動状態を有し、径方向に突出した近位のフィンないしリブ1506の組と、径方向に突出した遠位のフィンないしリブ1508の組とを含む。初期状態では、この弁の近位リブ1506は、(図示しない)液溜め内に薬物を安全に閉じ込めるシールを形成し、遠位リブ1508は、流路1510に菌を侵入させない働きをする。リブ1506および1508の両方の組は、長期間にわたって液溜め内からの流体の損失を防ぎ、かつ、それと同じ期間にわたって液溜めの外部からの薬物の汚染を防ぐ極めて重要な役割を果たす。
【0110】
使用中に、弁プランジャロッド1502は、最終的に、(図示しない)押しボタンの動きによって作動状態に押し込まれることになり、リブ1506および1508が新しい役割を果たすようにそれらの機能が変化する。押し込まれると、近位のリブ1506の組は前に進んで、液溜めと流体連通する広いキャビティ1512内に入り、それによって薬物が、液溜めから流れ、近位リブ1506を通過して弁流路1510に入る。同時に、遠位リブ1508の組も本来的に押し込まれ、リブ1508の位置自体が、液溜めから、弁流路1510を通って側方の穴1514から出て、(図示しない)最終流路を下り、(図示しない)患者用の針に流体を送る位置に並進移動する。
【0111】
側方の穴1514から出るように流体を方向づけるときに、この時点で、遠位リブ1508の組は、流体が、遠位リブ1508自体を通過して漏れ、そのため、流体が失われることになるのではなく、適切な側方の穴1514から正しく出るように高圧シールとして機能しなければならない。これがうまく実現されるようにするために、図65から図68に示すように、この弁アセンブリにさらに、わずかにテーパのついた円筒形の弁本体開口1504を組み込み、その中を弁プランジャロッド1502が移動するようにする。このテーパのついた本体開口1504により、図65から図67に示す初期状態すなわち閉状態で、流体シールを形成する遠位リブ1508の「すわりが安全に許容される」。すなわち、プランジャロッド1502のリブ1508は一般に、閉位置にあるときに時間がたつと、円筒形の弁本体開口1504の内径の中でたるむことになる。したがって、時間がたつと、最終的に開位置に移動したときに、所望の径方向圧力を本体に加えるリブ1508の能力がいくらか失われることになる。
【0112】
図67の矢印Aで示すように、遠位リブ1508が菌侵入障壁として働いているとき、この径方向圧力の減少は許容範囲であり、この弁は依然として完全に機能する。しかし、図68に示すように、遠位リブ1508が前方に並進移動し、その主な機能が、菌侵入障壁ではなく、矢印Bの流れに対する高圧シールの機能に変わると、遠位径方向リブ1508は、流体シールとして最適に働くことを必要とされる。そのため、遠位リブ1508が、閉じているときに「そのすわりが許容され」、テーパが付いていない開口内を移動する場合、開いているときの遠位リブ1508の役割があまり効率よく実施されないことになる。したがって、図65から図68に示す実施形態では、アセンブリ1500はさらに、円錐状にテーパがつけられた本体開口1504を備え、したがって、遠位リブ1508が初期状態から前方に移動して作動状態になると、遠位リブ1508は、円錐状のテーパ付き開口1504によって内径が小さくなっているために「再加圧」されることになる。このように、遠位リブ1508は、弁1500が閉じた期間中に「すわりが許容された」かどうかに無関係に、効率よく働き得る。
【0113】
円錐状のテーパ付き本体開口1504を設けることの利点は、1つの成型部分だけで、密封し、かつ流体を流すという複数の目的が実現されることである。このようなシステムで使用する典型的な弁には、エラストマ製のシールまたは栓が、プランジャロッドとともに組み込まれ、それによって、図64および図65に示す実施形態の例と同じ密封特性が実現される。すなわち、図64および図65に示す実施形態では、用いられる弁プランジャロッド1502が剛体の部分または部材と、図69および図72を参照して以下でより詳細に説明する、より柔らかい重ねて成型した部分とからなるので、このシールまたは栓がなくなる。図69および図72の実施形態は、より少ない部品で必要とされる役割をすべて実現するので、全体の部品点数が少なくなるためにコストがかなり削減され、製作および組立の工程が簡略化される。
【0114】
このような弁プランジャロッド1502を構成してエラストマ製の栓を不要にする一方法は、図69から図74に示す1/2ショット成型工程によるものである。図69、図70、および図71では、ポリエチレン剛体部材1520は、弁1502のコア部材として構成され、剛体構造が形成される。部材1520は、拡大遠位端1521と、後でいくつかの遠位フィンを支持する本体1522と、流路用の間隙を提供する小径本体1523と、後でいくつかの近位フィンを支持する最小拡大近位端1524とを含む。図69に、コア部材1520の斜視図を示し、図70に、コア部材1520の側面図、図71に、コア部材1520の断面図を示す。ある実施形態の例では、拡大遠位端1521の直径は約0.288インチ(7.32mm)であり、その厚さは約0.030インチ(0.762mm)である。本体1522の直径は約0.099インチ(2.51mm)であり、端部1521と本体1523の間の長さは約0.25インチ(6.35mm)である。この小径本体の直径は約0.040インチ(1.02mm)であり、端部1524と本体1522の間の長さは約0.023インチ(0.584mm)である。拡大近位端1524の直径は約0.10インチ(2.54mm)であり、その厚さは0.01インチ(0.254mm)であり、45°のテーパがつけられた軸方向に延びる端部を有する。
【0115】
図72、図73、および図74に示す2回目の成型工程では、エラストマ重ね成型部1530が、図69から図71のコア部材1520の上に設けられる。図72に、重ねて成型したコア部材1520の斜視図を示し、図73に、重ねて成型したコア部材1520の側面図、図74に、重ねて成型したコア部材1520の断面図を示す。得られた弁部材または弁プランジャロッドは、遠位密封フィン1531および近位密封フィン1532を含み、これらは、弁開口内で、別個の栓によって提供されるものと同じシールを形成し得る表面を提供する。こうすると、この弁により、弁内で別個のゴム製の栓またはストッパが不要になる。ある実施形態の例では、重ねて成型した遠位フィン1531の直径は約0.177インチ(4.32mm)であり、その厚さは約0.016インチ(0.406mm)である。重ねて成型した近位フィン1532の直径は約0.114インチ(2.90mm)であり、その厚さは約0.02インチ(0.508mm)であり、45°のテーパがつけられた軸方向に延びる端部を有する。
【0116】
改良型の弁プランジャロッドおよび開口は、本発明の実施形態が提供する改良機構の1つにすぎない。別の改良型弁の実施形態では、この注入装置は、回転弁1535を使用して、注入装置に流体を連通させることができる。図75は、回転弁の側面図であり、図76は、回転弁の断面図である。いずれも使用前位置および使用中位置を示すものである。弁1535は、経路1536と1537の間の簡単な弁位置合わせ機能を有し、そのため、この弁が矢印Aで示す方向に回転したときに、(図示しない)液溜めから針1538に流体が連通することができる。図77、図78、および図79に、別の回転弁の実施形態1540を示す。図79には、充填位置、注射位置、および閉位置、あるいはそれぞれの状態を別個に示す。図77から図79に示すように、この回転弁は、アーム1548から延び、第2チューブ1544に回転可能に嵌合する第1チューブ1542を含むことができる。第1チューブ1542には、レバーアーム1548によって注入針1546が取り付けられる。各チューブは、以下でより詳細に説明するように、充填位置、閉位置、および注射位置を提供する位置合わせ用のいくつかの開口を含む。
【0117】
図79(a)に示すように、充填位置では、第2チューブ1544の充填開口1541は、第1チューブ1542の充填開口1543に整列し、それによって、第2チューブ1544の液溜め開口1554を介して液溜めと流体連通する。こうすると、充填開口1541と液溜めの間だけで流体連通させることができる。図79(b)に示す注射位置では、第1チューブ1542の充填開口1543は遮断され、第1チューブ1542の注射開口1552が、第2チューブ1544の液溜め開口1554に整列する。図79(c)に示す閉位置では、第1および第2のチューブのすべての開口が遮断される。
【0118】
図79(c)に示すように、この装置が充填され、弁が閉位置にあるとき、流体は、第2チューブ1544の側面の穴1554を通って中に入るが、第1チューブ1542の側壁によって止められる。この位置で、針1546は、レバーアーム1548によって第1チューブ1542に取り付けられるが、針と第1チューブ内部の間の経路は、第2チューブ1544の流路から閉ざされており、レバーアーム1548は、使用者の皮膚の上で針1546を保持する角度で位置決めされる。
【0119】
この装置が作動されると、レバーアーム1548は、針1546が皮膚に入るように回転する。この回転により、第1チューブ1542の注入穴1552が第2チューブ1544の液溜め穴1554に整列するまで、第2チューブ内で第1チューブ1542が回転し、それによって流体が流れる。この流体は、第2チューブ1544の液溜め穴1554から、第1チューブ1542の注入穴1552を介して、第1チューブの中央に流れ込み、レバーアーム1548の流路に入り、レバーアームを下って針1546に入り、針1546を出て使用者の皮膚に入る。第1チューブ1542の注入穴1552は、針1546が所望の深さで皮膚に入ったときのみ流路を開くように配置される。
【0120】
剛体レバーアーム1548は流路として働くので、この回転弁の実施形態は、弁と針の間の可撓性流路を必要としない。また、弁が開くタイミングは、皮膚内の針の位置に直接結びついており、そのため、針が皮膚内で適切に位置決めされる前に弁が開く恐れがない。
【0121】
図75から図79に示す実施形態の流路および弁操作は、弁を開く動作と、針を挿入する動作とを同じ動作および部品に統合することによって簡略化されており、部品がより少なくなっている。さらに、チューブ1542および1544は、完全な円形にする必要はなく、単なる円弧とすることができる。この流路は、第2チューブ1544の液溜め穴1554に整列し、第1チューブ1542の外側を下る(図示しない)溝とすることができる。この流路は、第1チューブ1542の注入穴1552に整列し、第2チューブ1544の内側を下る(図示しない)溝とすることもできる。この流路はさらに、第2チューブ1544の内壁および第1チューブ1542の外壁の(図示しない)溝からなるものとすることもできる。別の変形形態では、レバーアーム1548は、内側のチューブ、すなわち第1チューブ1542が静止した状態で、回転する外側のチューブ、すなわち第2チューブ1544に取り付けることができるはずであり、そのため、流体は第1チューブ1542から第2チューブ1544に流れる。各変形形態では、弁のタイプは、針を挿入する動きと、流路を開く弁とを統合することによって整列用の穴および/または溝の1つになる。
【0122】
図80および図81に示す別の回転弁実施形態では、注入装置は、液溜めチャネルと患者用針流路の間で改良型回転弁機構を使用することもできる。図80および図81に、それぞれ閉位置および開位置の弁アセンブリを示す。図80では、アーム1559の回転位置のために、流路開口1557と1558は整列していない。患者用の針が配置されたときなど、アーム1559が矢印Aの方向に回転すると、部材1555が部材1556内で回転し図81に示す位置に来て、流路開口1557と1558が整列し、流体が流れる。
【0123】
図1に戻ると、装置100には、本質的に均一かつ一定の力を液溜めに加えて液溜めから内容物を押し出すための、したがって、定荷重ばねと称する円板または皿ばね130も含まれる。先に述べたように、定荷重ばね130を使用してエネルギーを蓄える。このエネルギーは、使用時に、この装置を付勢することによって解放されたときに液溜めを加圧する。図1では、皿ばねは、複数の皿ばねフィンガの中央に位置決めされた保持用の円板、ハンドル、またはピン135によって撓んだ状態で保持される。こうすると、保管中に、皿ばね130が液溜め150の被膜151または残りの装置コンポーネントに応力を加えることがなくなる。
【0124】
保持ピン135が引かれて皿ばね130から離れると、このばねのフィンガが解放され、液溜め150の被膜蓋151に力が加えられる。皿ばね130の縁部は通常、液溜め150の外周のところで捕捉されており、好ましくは、液溜め内で、約1psi(0.7g/mm)から50psi(35g/mm)、より好ましくは約2psi(1.4g/mm)から約25psi(17.5g/mm)、最も好ましくは約15psi(10.5g/mm)から約20psi(14g/mm)の圧力を生成して、液溜めの内容物が皮内送達されるように構成することができる。皮下の注射または注入では、約2psi(1.4g/mm)から5psi(3.5g/mm)の範囲で十分なことがある。
【0125】
これらの値に関して、処置の継続中は、一定の、またはほぼ一定の注入圧を保持することが望ましい。皿ばね機構130は、このようなほぼ一定の力を提供する一手段であり、この力は、ほぼ一定の圧力に変換することができる。先に述べたように、皿ばねに荷重をかける一方法は、このばねのフィンガを撓ませ、形成された開口の大きくなった内径を通してピンを挿入することである。撓まない位置に戻すには、まず、内径が小さくなる距離だけこれらのフィンガを移動させなければならない。これは、ピンが定位置にある間は不可能であり、そのため、ばねは荷重がかかった状態で保持される。次いで、皿ばねを作動させることは、単にこのピンを取り外すことであるが、皿ばねのフィンガにより、かなりの摩擦荷重がピンに生じているので、このピンを引くのに必要とされる力は、レバーアームを使用するとしてもかなり大きくなることがある。これらのフィンガとピンの間で、レバーアームに「モーメント」を加えると、取外しがはるかに容易になる。
【0126】
図82に示す改善実施形態に、いくつかのフィンガ1562、ピン1564、レバーアーム1566、および支点1568を含む皿ばね1560を示す。レバーアーム1566の遠位端に力を加えると、支点1568のところで、皿ばねのフィンガ1562に反力が生じる。さらに力を加えると、図83に示すように、ピン1564が持ち上がり、皿ばね1560から離れるまで回転し、それによってピン1564が外れる。
【0127】
図84(a)、図84(b)、および図84(c)に、この基本原理を利用し得るピン1564の幾何形状構成について、全部ではないがいくつかの例を示す。これらの構成の例には、円形ピン(a)、広いレバーピン(b)、および狭いレバーピン(c)が含まれ、それぞれ回転による持上げを提供する。構成(a)に示す丸い幾何形状では、図85に示すように、部分(a)の外周の任意の場所の上部または底部に解放力F...Fを加えてピン84(a)を解放することができる。構成(b)に示す広いレバーの幾何形状では、かなり狭い周囲部分に、典型的には押しボタンによって提供される解放力を加えて、ピン(b)を解放することができる。構成(c)に示す狭いレバー幾何形状では、端部ではなくレバー(c)の側面に解放力を加えることができる。図84の構成(a)に関して、図85の示力図に示すように、円形ピン(a)の縁部末端に解放力を加えると、有効レバーアーム長がより大きくなり、そのため、必要とされる力が小さくなる。
【0128】
力を加える場所に影響を及ぼし得る2つの要因は、装置の全体的な高さおよび製作時の組立のし易さである。図86および図87の断面図に、力を加え、皿ばねを解放するための一方法を示す。ボタン1570がボタン作動式注入装置内の定位置にあるとき、ボタン1570は典型的には、図の右側に押され、傾斜1572により、レバーアーム1566を介してピン1564に力が加えられ、それによって皿ばね1560からピン1564が取り外される。この改善された実施形態の別のバージョンでは、必要とされる引抜き力をさらに小さくすることができ、図88および図89の斜視図に示すように、ピン1564の外側に割りリング1574が設けられる。割りリング1574は、割りリング1574の内径からピン1564を取り外すことができるように必然的に摩擦係数が小さく、図89に示すように、ピン1564が取り外され、それによって皿ばね1560が作動されるときに割り間隙がなくなるのに十分に適合したものである。
【0129】
上記の各実施形態では、ピン1564の中心線および高さに対する相対的な支点1568の位置および高さがこの機能に極めて重要である。効率を最大にするために、必要とされる解放力の大きさは最小であるが、ピン1564が皿ばね1560から離れるのに十分なピン変位が生じるように、支点1568を位置決めし、かつ寸法設定するべきである。ピン1564の中心線から離して支点1568を配置すると、ピンの変位は大きくなるが、ピン1564を外すのにレバーアームに必要とされる解放力は大きくなる。同様に、ピン1564の中心線に近づけて支点1568を配置すると、ピンの変位は小さくなるが、ピン1564を外すのにレバーアームに必要とされる解放力は小さくなる。
【0130】
ある種の応用例では、特にばねフィンガが極めて柔軟な応用例では、信頼性の高い動作が保証されるように、支点が、皿ばねの2つ以上のフィンガにかかるようにこの機構を設計しなければならない。したがって、図84の構成(a)および(b)はこの点で、構成(c)よりもこのような応用例に良好に適している。概念的には、構成(c)は、かなり多くの、密に配置された狭いフィンガとともにうまく働く。あるいは、単に支点1568だけを広くすることによって、構成(c)をうまく働くようにすることができる。場合によっては、皿ばね1560の2つ以上のフィンガにかかっていないと、接触する1つのフィンガは、他のフィンガに無関係に撓み、他のフィンガに対して相対的にこのピンをスライドさせることなく、ピン1564に沿ってスライドし、その結果、ばねの解放に失敗することがある。
【0131】
図90から図92に、上記で説明した改良型ピン解放機構に関連して、皿ばね1560の代わりに使用し得る改善された皿ばね1580の実施形態を示す。改良型皿ばね1580は、典型的には、直径約1.15インチ(29.2mm)から1.50インチ(38.1mm)、好ましくは1.26インチ(32.0mm)で寸法設定され、図55から図60を参照して上記で説明したのとほぼ同様に、液溜めの内容物を完全に送達し得るように、ばねフォロワ1592をさらに含むことができる。以下で説明する改良型ばねの実施形態1580では、この皿ばねは、従来型のばね本体1581と、本体1581を覆う、重ねて成型したエラストマ1582とを含む。重ねて成型したエラストマ1582は、ばねフィンガ間の普通なら開いたスペースを埋め、そのため、皿ばね1580が、撓み位置と弛緩位置の間を移動するときに、このばねにより、液溜め被膜表面全体にわたってほぼ均一かつ一定の力が加えられる。この重ねて成型した成型エラストマは、皿ばねの性能を損なうことなく、このばねのフィンガ間の「空所」を埋める。
【0132】
図90から図92に示す皿ばねの改善実施形態1580は、主な流体チャンバ加圧機構として設けることができる。上記の注入装置には一般に、皿ばねが組み込まれる。この皿ばねは、流体を充填したチャンバに、このチャンバ上で皿ばねが撓まされるときに所望の圧力をかけ、その後、変位によってチャンバ内の流体を押し出すのに適したものである。図91および図92に示すように、チャンバの設計では本来、チャンバの剛体側面1598は、チャンバの構造を形成するため設けられ、変形可能なチャンバの可撓性被膜側面1594は、チャンバ内にバイアスされる皿ばねのアームを受けて、チャンバ内の流体を変位させる。皿ばねおよびチャンバは、チャンバを加圧し、流体を送達するのに適したものとできるが、チャンバおよび皿ばねがともに本質的に剛体であるために、皿ばねは、最終的には、チャンバ1598の剛体側面の形状に完全に一致することはできない。このように一致しないことにより、ばねがチャンバの底に達したときに、流体の一部がチャンバから完全に押し出されない。このような流体の損失は望ましくない。
【0133】
本発明の改良型皿ばねの実施形態1580は、皿ばね1580に、特に皿ばね1580のフィンガ間にエラストマ材料を重ねて成型して、このエラストマにより、皿ばね1580がより完全にチャンバに一致するようにすることよって、この流体の損失にある程度対処しようとするアセンブリを含むものである。こうすると、もはやフィンガ間の隙間は存在しないので、皿ばね1580により、より多くの流体が移動し、流体の損失が減少する。図91および図92に、重ねて成型した皿ばね1580のこのような使用例を示す。ばね1580のエラストマが充填された区域1582によって、性能を損なわずに、ばねのフィンガ間の「空所」が埋められる。
【0134】
皿ばね1580全体の上にエラストマを成型して、適合した表面を伴うばねを形成することができる。この適合した表面は、皿ばね1580がチャンバを加圧し、チャンバの輪郭に完全に一致するようにすることができ、そのため、チャンバ内の流体がすべて移動する。液溜めの断面図91および92に示すように、皿ばね1590はさらに、重ねて成型したエラストマフォロワ1592を含む。エラストマフォロワ1592は、図55から図60のフォロワに類似しているが、皿ばね1590に対して、重ねて成型した表面として形成される。フォロワ1592が設けられ、フォロワ1592は、液溜め内の形状に、特にチャンバの剛体側面1598により緊密に一致し、そのため、空所がなくなる。というのは、皿ばね1590が移動するときに、フォロワ1592によって空所が埋められるからである。
【0135】
剛体チャンバ壁1598に対して位置決めされた流体ポケット1596を覆う可撓性被膜シール1594が、皿ばね1590に隣接して設けられる。図91に示すように、皿ばね1590は、解放されると、チャンバから内容物を押し出す。図91に示す実施形態では、ばね1590は、重ねて成型したエラストマフォロワ1592によってポケットを「つぶす」ことによってポケット内の流体を完全に移動させる。上記で説明したエラストマで覆ったこのような皿ばね1590およびばねフォロワ1592の利点は、チャンバの加圧器としての性能を損なうことなく、「つぶし器」としての皿ばねの性能が高められ、そのため、その同じチャンバ内の流体が確実に完全に排出されることである。
【0136】
皿ばねアセンブリを使用することに関連する別の利益は、皿ばねによって生成される摩擦を有意義に利用し得ることである。例えば、装置の断面図93に示すように、保持ピン1635と皿ばね1630の間の摩擦を利用して、装置1600を解除されない状態で保持することができる。図93に示すように、装置の例1600は、装置1600の作動および付勢が1つの多機能/ステッププロセスで実現される押しボタン構造を有するように示されている。図93は、側方押しボタン1605を使用して作動させるパッチ様の注射器または注入器のシステムの例の断面図である。
【0137】
図93の装置は、押しボタン1605、上部ハウジング1610、下部ハウジング1615、液溜め用引込み弁アセンブリ1620、皿ばね1630、ばね保持ピン1635、マニホールドアセンブリ1625、および液溜め1650を備える。この装置はさらに、可撓性ばねフォロワ1655を備える。この装置はさらに、カバー1617を有する粘着表面1616を備える。カバー1617は、針キャップ1618で固定され、1つのステップで取り外される。図93に示す装置では、押しボタン1605が押し込まれると、図1の装置の3つの機能ではなく、2つの機能が整然と、かつ/または同時に実現される。第1に、押しボタン1605の動きにより、引込み弁1620が開いて、液溜め1650とマニホールド1625の患者用微小針1640との間で流体が連通し得る。上記で説明したように、弁1620は、任意の数の引込み弁からなり得る。第2に、押しボタン1605の動きにより、ばね保持用の円板またはピン1635が移動して、皿ばね1630が解放される。ただし、ピン1635とばね1630の摩擦を利用して、回転式液溜め1650を後退位置で保持することもできる。この押しボタンが皿ばね1630を解放すると、1つまたは複数のマニホールド駆動ばね1660が液溜め1650を下向きにヒンジ機構1652の周りで回転させ、針1640を患者の皮膚に送り込む。
【0138】
押しボタン1605は、テーパが付けられた表面1606を備える。テーパ付き表面1606はさらに、テーパ付き表面1606の中心に沿って延びる(図示しない)スロット1608を含み、この中を通ってピン1635が移動することができる。押しボタン1605が押されると、スロット付きのテーパ表面1606は、ピン1635を通過して強制的に移動し、それによってピン1635がテーパ付き表面1606の上に持ち上げられ、ばね1630から離れる。押しボタン1605の動きはさらに、引込み弁1620を開く働きをする。引込み弁1620を開くのに十分な短い距離の後で、ピン1635は、ばね1630および液溜め1650を解放するのに十分に持ち上げられる。
【0139】
具体的には、皿ばね1630は、保管中にピン1635による張力下で保持される。ピン1635は、ばね1630の内側のフィンガの邪魔をし、それらが移動して互いに近づかない(すなわち、皿ばねの中心開口の内径が小さくならない)ようにする。これらのフィンガは、それらが中心を通過するときに互いに近づくように移動するはずであり、それによって弛緩する。このように、単純なピン1635を、それが中心を通過して撓むときに、フィンガ間(すなわち、皿ばね1630内の中心開口の内径)に配置することができ、それによってばね1630の張力が保持される。ただし、この装置はまた、1つまたは複数の別の駆動ばね1660によって、液溜めに取り付けられた注入用微量針1640を自動的に挿入しなければならない。これらの駆動ばね1660は、装置1600が使用されるときまで、圧縮して保管される。装置1600の使用時に、液溜め1650全体は、微小針1640が挿入されるときにこれらの針とともに移動する。
【0140】
図93に示す実施形態では、ピン1635と皿ばね1630の間の摩擦は、圧縮された駆動ばね1660および非作動状態の装置1600を保持する手段として使用される。使用者は、ボタン1605の動きによって皿ばね1630からピン1635を取り外すことにより装置1600を作動させる。ピン1635を取り外すと、解放された皿ばね1630により液溜め1650が加圧されるだけでなく、液溜め1650も解放され、駆動ばね1660の力によって針1640が下向きに回転する。この動きは、針1640が(図示しない)患者の皮膚に挿入されるのに十分なものである。ピン1635は、皿ばね1630および駆動ばね1660の両方に対して張力を保持し、それにより、2つの完全に異なる動作を開始させるのに1つの動きしか必要としない。
【0141】
他の装置では、使用者は、液溜めを加圧し、患者用の針を解放するのに2つ以上の異なるステップを実施する必要がある。さらに別の装置では、使用者による1回の押込みで、ボタンが2つのステップを実施するが、これらの動作の正しいタイミングを実現するには、より複雑なボタンアセンブリを必要とする。図93に示す実施形態では、このタイミングは、装置と一体になっている。これは、液溜め駆動ばね解放機構として、皿ばねおよびピンのシステムを使用することによって実現される。このシステムは、駆動ばねの圧縮を保持する手段として、ピン1635に対する皿ばね1630のフィンガの摩擦を利用する。この摩擦は、皿ばね1630からピン1635が取り外されるとなくなり、それにより、駆動ばね1660によって針1640が患者に押し込まれる。
【0142】
先に述べたように、この皿ばねは、液溜め上で撓んで、変位により液溜め内の流体を押し出すことができる。先に述べたように、この液溜め自体は、剛体側面と、ばねのアームを受けるように変形可能な可撓性被膜側面とを含むことができる。ただし、以下でより詳細に説明するように、材料および構成技術に関して、液溜めを改善することができる。
【0143】
典型的な注入装置では、液溜めは一般に、耐化学特性および/または耐薬物特性が強い材料でできている。この材料は、遺憾ながら、他の材料と良好に結合しない。図94から図100に示す本発明の改良型液溜め実施形態では、針などの他の材料と良好に結合する少なくとも1種類の他の材料が導入される。この場合、この実施形態は、この新しい材料に非結合性材料を機械的に係止する手段を含む。こうすると、強い耐薬物特性を有する液溜め1700などの非結合性材料が、図95の針のハブ/ばねのアーム1720などの結合性材料から分離される。これにより、これらの2つの別々の部品が接続され、それぞれ図99および図100に示すように、Oリング密封ロック1730またはエラストマ密封ロック1740などの密封インターロックによって互いに1つとして働く。図94は、液溜めの図であり、図95は、流路を提供する液溜めアームの図である。図96は、図95の液溜めアームの斜視図である。図97は、図94および図95の液溜めおよびアームの組立図である。図98に、組み立てられたコンポーネントを示す。
【0144】
本発明の改良型液溜め実施形態は、液溜め1700と、針のハブ/ばねのアーム1720を含む流路とを提供することを含む。これらはそれぞれ、2つの別々の成型部品で構成される。図94、図97、および図98の液溜め1700は、耐化学特性および/または耐薬物特性が強い材料でできている。図95、図96、図97、および図98の針のハブ/ばねのアーム1720および得られる流路1724は、任意の数のプラスチック材料製とすることができ、弁出口穴1722と針開口1726の間の流路1724に沿った単一の被膜シールを含むことができる。次いで、図99および図100に示す互換性のある弁機構1730または1740によって、針のハブ/ばねのアーム1720とともに液溜め1700を組み立てることができる。図99および図100には、図94から図98のアセンブリとともに使用する第1の弁1730および第2の弁1740を示す。
【0145】
典型的な注入装置では、液溜めと、針のハブ/ばねのアームとの構成は、1つの部分で構成された液溜めおよび流路を含む。ただし、先に述べたように、液溜め1700は通常、耐化学特性および/または耐薬物特性が強い材料でできている必要がある。この材料は、遺憾ながら、他の材料(すなわち、針)とあまり良好に結合しない。図94から図97に示すように、2つの部品に分けることの利点によって、針1728とばね−アームハブの組立がより簡単になる。これらは、非結合性材料に機械的に固定する代わりに、挿入式に成型または結合することができる。
【0146】
図99および図100に、図98に示すアセンブリを完成させるための密封インターロックの例を示す。図99では、ばねアーム/流路ハウジング1720の円筒形開口1734内で、弁プランジャロッド1732を位置決めする。ばねアーム/流路ハウジング1720は、液溜め1700の開口1702と対合し、かつOリング1738によって密封される小径部材1736を含む。ロッド1732は、いくつかのリブ1733と、図5および図6を参照して上記で説明したのとほぼ同様に機能する拡大近位端1739とを含む。図100では、小径部材1736の外部表面の周りで、Oリングシール1738の代わりに、エラストマ外部シール1748を使用する。残りの弁機能は、図99に関して上記で説明したのとほぼ同様である。
【0147】
以下の本発明の針のハブの改善された追加の実施形態では、このように非結合性材料と結合性材料を係合させて使用することをさらに組み込む。これらの実施形態では、性質が異なる2種類以上の熱可塑物質で流体シールを形成できる2ショット成型工程を利用する。対象となる材料はそれぞれ異なるので、これらは、本来互いに結合しにくいものである。通常の2ショット成型工程では、典型的には、用いられるプラスチックの粘着性によってシールが形成される。以下で説明する改良型ハブ実施形態の場合には、プラスチック間には粘着性がなく、したがって、いくつかの独特な設計を用いて、圧力嵌めすなわち流体シールを形成する。
【0148】
図101に、完成した結合部1750の断面図を示す。図101には、流路1752、被膜シール1754、および1回目の成型部1760が含まれる。次いで、1回目の成型部1760の周りに2回目の成型部1758を配設し、針1756を固定する。図101に示すように、1回目の成型部1760は、突出したアリ構成になるように成型され、それにより、2回目の成型部1758が冷却され、各アリの周りで収縮するときに、2回目の成型部1758に機械的に係止される。
【0149】
具体的には、適切な冷却および標準的な多ショット成型手順の後で、ポリカーボネートなどの望ましい処理特性を有する材料で2回目の成型1758が行われる。この場合、1回目は、透明で明瞭なプラスチック材料で行われる。好ましくは、この透明かつ明瞭なプラスチック材料は、透明度および明瞭度が高く、抽出物が少なく、液溜めに収容される物質と生物学的に適合することを特徴とする環状オレフィンコポリマー(CCP)である。この材料は、本質的に、ポリカーボネートなどの別の材料に粘着により結合することができない。
【0150】
完成した成型アセンブリ1751、1753、1755、および1757の断面図である図102から図105に示すように、CCPの1回目の幾何形状は、任意の数のアリと係止の構成を含み得るものである。それぞれの場合、1回目を適切に冷却した後で、ポリカーボネートなどの材料で2回目を行う。2回目は、各アリが取り囲まれるようにアリの周りに射出される。あらゆるプラスチックがある程度収縮するのと同様に、2回目の材料が収縮するとき、アリの傾いた表面に圧力がかかり、アリを「締め付ける」効果が得られる。この締付け作用により、普通なら流体シールを形成することができない2種類の異なる材料間で緊密な流体シールが形成される。
【0151】
上記で説明した本発明の改善された実施形態はさらに、2つの異なる材料のタイプ(すなわち、1760および1758)についての単一部品内で連続流路を形成することができる。こうすると、部品点数が少なくなり、そのため、コストが削減される。というのは、そうしない場合には、スナップ式の嵌め合いで、おそらくはOリングなどの密封部材によって行わなければならないからである。こうなると、部品点数のためにコストが増加するだけでなく、製作の複雑さも増すことになる。さらに、この構造により、2種類の以上の異なる材料の望ましい特徴を利用することができ、どれか1種類の材料のみで構成する場合にしなければならない妥協が少なくなる。
【0152】
例えば、CCPなどの材料で1回目(すなわち、1760)を成型することによって、この実施形態は、この材料の有益な薬物担持特性を利用することができる。遺憾ながら、この材料は、実際には、他の一般的な製作または処理上のプラスの性質を示さない。例えば、CCPは、針と結合させるのが難しい。したがって、2回目(すなわち、1758)は、ポリカーボネートなどの材料で行うことができ、そのため、針が容易にポリカーボネートに結合され、さらに、CCPでできている部品に収容される薬物への悪影響がなくなる。
【0153】
2種類のいくらか異なる材料の間に流体シールを形成するというこの考え方は、いくつかのやり方で実現できることは明らかである。基礎となる原理は、1つの材料の、第2の材料の表面に対する収縮を促し、すなわち利用して、これらの材料の間に緊密な圧力誘起シールを誘起するというものである。これは、本発明の改善された形状の実施形態において、アリの考え方の変形を利用することによって実現される。図103から図105に示すように、改変された係止部では、垂直な直交表面に対する収縮を利用して、十分な流体シールを形成することもできる。
【0154】
この考え方をさらに改善して、大量の成型、組立、および自動化の工程を改善することができる。このアリ構成では、以前の考え方に比べて、成型工程が簡略化され、熱可塑性成型操作における収縮を利用して異なる材料間で圧力シールを形成することを含めて、いくつかの点で改善が示されている。患者用針との結合性は、以下でより詳細に説明する改良型ハブ実施形態においてさらに高められる。
【0155】
上記で説明した注入装置の各実施形態は、少なくとも1本または複数本の患者用の針または微小針を含む。好ましくは、各微小針は、少なくとも31番ゲージ以下、例えば34番ゲージとし、患者用針マニホールド内に固定する。この微小針を使用して、特定の応用例の必要に応じて、皮内または皮下のスペースを標的とすることができる。
【0156】
これらの患者用の針は、各患者用針と流体連通する少なくとも1つの経路を含む患者用針マニホールド内に位置決めされる。このマニホールドは、1本または複数本の患者用針に対して経路を1つだけ設けることもできるし、各針に別々に内容物を送る複数の流路を設けることもできる。図106に示す改善実施形態では、微小針のハブ1770は、針1772を固定し、次いで、対応する針マニホールド1771にスナップ式に嵌るように構成される。
【0157】
微小注入装置では、薬物の液溜めは一般に、液状の薬物を蓄え、それを保持するのに適した性質を有する。しかし、この同じ液溜めには、この薬物を蓄える性質のために、堅固な薬物送達装置を生成するのに必要な周辺の製作プロセスにあまり適さないという特徴がある。この流体液溜めを、最終的に患者に薬物を送達することになる針と直接連通させることが望ましいが、薬物を蓄えるのに使用する熱可塑性物質は、他の材料と容易には結合しない。そのため、先に述べたように、強い結合が得られないために針が落下するという潜在的な恐れなしに、これらの針をこの同じ液溜め材料に結合し、所望の流路を形成することはほとんど不可能である。
【0158】
図106に示す本発明の改良型ハブ実施形態では、液溜めの針のハブ部分1770を別の部品として分離することによってこの問題が解決される。このようにすることによって、分離したハブ1770は、(図示しない)薬物の液溜めとなり得るように(すなわち、生物学的に適合した液溜めとして)適切に(すなわち、確実な針マニホールドとして)機能するように構成することができる。遺憾ながら、1つの複雑な部品を2つのより簡単な部品として構成すると、実際には、工具、取扱い、保管(すなわち、最小在庫管理単位またはSKU)などが増加するために全体的なコストが増える。しかし、図106に示す改善実施形態では、製作が簡単であるという性質によって、長期的には資源を節約することができる。
【0159】
ハブ1770は、標準の複雑でないキャビティ数の多い成型ツールで成型することができる。ハブ1770の成型は、高速度で自動化することができ、針1772などの針と結合するのに適した材料で成型することができる。ハブ1770はさらに、向きの要件のために手間がかからず、テーパ付き表面1773によって実現されるスナップ式の嵌め合いによってマニホールド1771に機械的に取り付けることができ、それにより、高価な材料および工程が不要になる。さらに、この実施形態では、マニホールド1771にハブ1770を実際に挿入する前に、流路の連続性を簡単に試験することができる。
【0160】
先に述べたように、この装置の微小針は、それぞれ異なる長さまたはゲージのものとすることができ、本体の長さに沿って、または針の先端に、あるいは針の先端面取り部に1つまたは複数のポートを含み得るものである。このような微小針を薬剤の送達に使用すると、様々な理由からそれらが閉塞することがある。本発明の別の改良型の針の実施形態では、生じ得る閉塞に関わらず、薬剤の送達の助けとなることができる微小針が提供される。
【0161】
図107の針の側面図に、改善実施形態の第1の変形を示す。針1811は、針本体の少なくとも一部に沿って多孔性材料を使用して構成され、そのため、針の内部と外部の間で流体が所望の程度で連通する。したがって、針1811の先端が詰まった場合でも、多孔性材料を通して依然として流れを実現することができる。図108に、この改善実施形態の第2の変形を示す。針1813は、針本体の少なくとも一部に沿って、好ましくは主要出口開口部1819を除き針1813の先端の周りに、いくつかの微小穴1817を有する。こうすると、先端が詰まった場合でも、微小穴1817を介して流すことができる。各変形形態は、多孔性材料を使用して構築することによって、あるいは、後で孔を追加することによって実現することができる。
【0162】
針の改善、皿ばねの改善、および材料の使用法の改善は、以下でより詳細に説明する作動の改善を含む装置においても適用できる。図109および図110に示す別の装置の改善では、1つの多機能/ステップで、装置の作動および付勢が改善され、旋回アーム2770を使用して液溜めおよび患者の皮膚表面にほぼ同時にアクセスすることによってタイミングが精確に制御される。図109は、このようなパッチ様の注射器ないし注入器のシステムの第1実施形態の非作動状態での断面図であり、図110は、この実施形態の作動状態での断面図である。
【0163】
図109の装置は、(図示しない)上部および下部のハウジング、液溜め隔壁アセンブリ2740、患者用針マニホールドアセンブリ2750、および液溜め2760を備える。マニホールド2750と弁操作針2780の間を延びる旋回アーム2770も設けられる。図1の押しボタンなど、任意の数の装置からなり得る作動機構2790を示す。
【0164】
図109および図110に示す実施形態では、装置が作動されると、2つの機能が整然と、かつ/または同時に実現される。第1に、作動機構2790により、マニホールド2750が解放され、次いで、1つまたは複数のマニホールドばね2795によってマニホールド2750が駆動され、それによって、旋回アーム2770が旋回点2775の周りを回転できる。第2に、回転する旋回アーム2770により、患者用針マニホールド2750が患者の皮膚2751に押し付けて配置され、また、弁操作針2780が液溜め隔壁2740内に送り込まれる。この際、この回転旋回アームは、液溜め2760と患者用針マニホールド2750の間の流体連通経路として働く。したがって、この実施形態では、(図示しない)装置ボタンを単に押し込むなどの1つの動作で、微小針が患者の皮膚2751に貫入し、弁が開いて薬物が注射され、さらに、液溜めと患者の間で流体が移送される。
【0165】
図109および図110に示す改善実施形態は、旋回アーム2770またはチューブを含む。この旋回アームは、一端に、ほぼ直交する角度で何本かの注入針2753と、他端に、反対方向を向いた1本の弁用の針2780とを含む。旋回アーム2770のチューブは、これらの2つの端部間に旋回点2775を有し、それによって、患者の皮膚2751に貫入するのに必要な注入針2753のある範囲の動きが可能になり、弁操作針2780も隔壁アセンブリ2740を貫通して液溜め2760に入ることができる。この旋回動作は、1つまたは複数のばね2795によって動力が与えられ、作動機構2790によって作動位置で保持される。
【0166】
図110に示すように、作動機構2790が作動されると、ばね2795は、旋回アーム2770のチューブを旋回点2775の周りで回転させ始める。旋回アーム2770のチューブが旋回すると、このチューブの端部は注入器の針マニホールド2750とともに下に移動して、患者の皮膚2751に針2753を押し込む。旋回アーム2770のチューブの他方の端部は上向きに移動し、隔壁2740を貫通して弁操作針2780を押し込む。弁操作針2780が反対側の隔壁2740を貫通すると、薬物は、液溜め2760から解放され、弁操作針2780を通過し、旋回アーム2770のチューブを下り、マニホールド2750の注入針2753から出て患者に入る。薬物は、作動機構2790が押し込まれるいくらか前の時点で、またはそれと同時に、上記で説明した加圧技法のいずれかを利用して液溜め2760が加圧されるために流れることになる。
【0167】
本発明のこの改善された作動実施形態は、より簡単な装置であり、従来型装置に対して相対的に部品点数が少なく、したがって、組立がより容易である。例えば、従来型装置では、注入針および弁操作針は、互いに直交して移動し、典型的にはチューブによって接続される。この改善実施形態では、他の実施形態で共通に見られる流路の3つの可動部分、すなわち、直角にスライドする2つの部品および可撓性部品の代わりに、1つの連続的な剛体回転部品2770からなる1つの可動部品を使用する。組立が難しいことがある可撓性チューブの代わりに、組立がより簡単な剛体部品を使用する。
【0168】
図111から図115に示す別の改善された作動実施形態では、この装置は、磁石の引力または反発力を利用して流体に力を加え、この流体を流路を介して送り出すことができる。これらの実施形態を利用して、皮膚に針を送り込むのに必要とされる力を磁気により加えることができる。このシステム内の磁石の位置エネルギーは経時的に散逸せず、これらの磁石は、これら磁石の互いの引力、およびこれら磁石を収容するポリマーに加えられるこれら磁石の力が小さくなるのに十分に離すことができ、そのため、クリープが小さくなる。磁石の分離間隔およびこれらの磁石の強さを強さの点で調整して、この機構を最適化することができる。
【0169】
図111の装置断面図に示すように、装置1800は、上部ハウジング1805、下部ハウジング1810、被膜で覆われた流体液溜め1815、流路1820、および作動機構1825を備える。作動すると(すなわち、ボタンまたは類似の手段によって機構1825が磁石1805から移動して離れると)、上部磁気ハウジング1805と下部磁気ハウジング1810の引力が協働して、液溜め1815から流路1820を介して内容物を押しだし、針1822を介して患者に入れる。図112の装置断面図では、第1磁石と第2磁石の反発力を利用して、これら係合した磁石の上に位置決めされた液溜めから内容物を押し出す。
【0170】
図112に示すように、透明な覆いが設けられた流体チャンバ1830は、(この例では、上がN極であり、下がS極である)上部磁石1840と係合したピストン1835の上に位置決めされる。この上部磁石は、作動すると、(この例では、上がS極であり、下がN極である)下部磁石1845の反発力を受け、それによって、ピストン1835がチャンバ1830の内容物に押し込まれる。この内容物は、(上記で説明したように、別に弁で操作することができる)開口1850を介してマニホールド1855に押し出される。このマニホールドは、マニホールドばね1860によって駆動されるときの移動抵抗が小さい材料、例えばポリプロピレンまたはポリエチレンで構成することができる。
【0171】
図113の装置断面図に示す別の作動改善実施形態は、この装置は、上部ハウジング1865、下部ハウジング1870、流体液溜め1875(すなわち、透明な流体チャンバ)、流路1880、ならびに上部磁石1882および下部磁石1884を備える。磁石1882または1884の代わりに、やはり必要とされる引力を実現し得る(図示しない)鋼製プレートを使用することができる。作動すると(すなわち、ボタンまたは類似の手段によって)、上部磁石1882と下部磁石1884、または磁石とプレートの引力が協働して、液溜め1875から流路1880を介して内容物を押し出し、針1881を介して患者に入れる。上記で説明した任意の数の機構を組み込んだ中央送出し式患者用針機構を使用して、作動時に針1881を配置することができ、その結果、空所が最小限に抑えられる。
【0172】
使用前および使用後の側面図である図114および図115に示す別の作動改善実施形態は、この装置は、何本かの針1894を含む上部磁気ハウジング1890と、それぞれ針1894と同心であり、各針1894が通るのに十分な直径を有するいくつかの(図示しない)開口を有する下部磁気ハウジング1892とを備える。この場合も、磁石1890または1892の代わりに、やはり必要とされる引力が実現される鋼製プレートを使用することができる。図115に示すように、(押しボタンまたは類似の手段によって変位可能な)機構1896を使用して作動されると、上部磁石1890と下部磁石1892、または磁石とプレートの引力が、下部ハウジング1892の開口を介して針1894を押し出し、患者の皮膚表面1895に押し込む。
【0173】
上記装置はそれぞれ、パッチ様の装置により物質を注入するように機能する。使用者に対して位置決めされ、作動されると、使用者は通常、ある期間にわたってこの装置を定位置に残し、すなわちこの装置を「着用」し、次いで、この装置を取り外し、破棄する。このとき、下にある組織にはなんの損傷も加えられない。ただし、意図して取り外すか、または誤って取り外されると、以下でより詳細に説明するように、1つまたは複数の安全機構が展開されて、作動により露出した針を遮蔽する。
【0174】
一般に、受動的な安全システムが最も望ましい。こうすると、誤って取り外された場合、または使用者が安全ステップがあることを「忘れた」場合、この装置はそれ自体で保護される。この装置の典型的な使用法は、ヒト成長ホルモンを提供することであり、これは通常夜間に行われるので、この装置を着用した子供などの使用者が、たとえ、この場合の送達に10分もかからないことが予想される場合でも、実際には、一晩中この装置を着用することが予想される。この間に、受動的なシステムをもたない装置が落下すると、針が使用者または介護者を再度刺す恐れがある。この解決策は、使用中の活動を制限するか、あるいは受動的な安全システムを含めることである。
【0175】
安全システムに関して、典型的には3つの任意選択肢がある。第1の任意選択肢は、装置内に針を後退させることである。第2の選択肢は、アクセスできないように針を遮蔽することである。第3の任意選択肢は、針が刺さらないように針を破壊することである。それぞれのバージョンを構成することができるが、実質的に、針を折る危険を冒さずに、また、針刺しの危険に使用者をさらさずに針が破壊される実質的に実行可能な方法または装置は存在しない。能動的なシステムなどの他のシステムでは、手動の遮蔽および/または破壊、あるいは、追加の押しボタンまたは類似の動作による安全機構の手動解放が模索されている。以下、本発明の受動的な実施形態の詳細な説明を概説し、その後、本発明の能動的な実施形態を詳細に説明する。
【0176】
意図せず、または誤って針が刺さらないように、また、意図的に装置が再利用されないように、さらに、露出した針を遮蔽するために、係止式の針安全機構を設け、皮膚表面から装置を取り外した直後に自動的に作動させることができる。この改良型安全機構の実施形態は、「ネズミ捕り」タイプの安全機構(受動的)、針を持ち上げて覆うタイプの安全機構(能動的または受動的)、および回転式針マニホールドタイプの安全機構(能動的または受動的)を含めて、いくつかのバージョンで実現できる。
【0177】
以下で説明する他の改良型安全機構の実施形態には、「ラチェット」式の係止機能付き、またはこのような機能が付かないばね荷重式旋回横断障壁機構(受動的)、手動引上げ蓋式の、スナップタイプまたは接着タイプの横断障壁機構(能動的)、引出し係止式遮蔽機構(受動的)、ばね荷重による持上げの横断障壁への変換(受動的)、ばね支援式のスロット付き針後退「スレッド(sled)」(能動的または受動的)、捩りばねによる針の持上げ(受動的)、粘着剤付きまたは粘着剤なしヒンジ式平坦遮蔽部(受動的)、および使用後に針を曲げる安全機構(能動的または受動的)、ならびに双安定性板ばね(能動的または受動的)が含まれる。
【0178】
図37から図41に、本発明の第1の改良型安全機構の実施形態すなわちネズミ捕り式安全機構を示す。この安全装置実施形態では、準備状態またはバイアスされた状態において、ばね(すなわち、安全ばね)に一体化されたスリーブが後退し、それによって針が露出され、針の使用が可能になる。皮膚からこの装置を取り外すと、このばねはそのバイアスされない状態に撓み、針が包まれ遮蔽されるように針の周りでスリーブを後退させ、それを位置決めする。
【0179】
図37に示すネズミ捕り式安全装置の第1の例では、この装置の作動および付勢が、上記で説明したように1つの多機能/ステッププロセスで実現される押しボタン装置700が示されている。図37は、本発明の第1の改良型安全機構の実施形態を含む、側方押しボタンを使用して作動するパッチ様の注射器または注入器のシステムの例の断面図である。
【0180】
図37の装置は、押しボタン780、上部ハウジング705、下部ハウジング770、ネズミ捕りドア790、ドアラッチ791、およびドア旋回点792を備える。板ばね793および遮蔽部794も設けられる。これらは、図38により明確に示されている。押しボタン780が押されると、ボタン780の動きによって、少なくとも1つの弁750が開き、ばね保持用の円板またはピン730が変位し、患者用針マニホールド745から(図示しない)支持部材が取り外され、それにより、マニホールド745が移動することができる。押しボタン780の動きによって、ドアラッチ791も解放されるが、この装置は使用者の皮膚に押し付けられて粘着により位置決めされているので、ドア790は動かない。
【0181】
本発明のこの実施形態の一態様は、この状態で、安全ばね793が、バイアスされない状態に向かう定常作用状態(すなわち、図38から図41に示す状態)になることである。この定常作用状態は、この装置が取り付けられる表面(すなわち、患者の皮膚)およびこの装置を取り付けるのに使用する粘着剤によって反力を受ける。したがって、安全ばね793は、患者に針760を埋め込み、これらの針を所望の長さの時間にわたって埋め込まれたまま保つのに反して働くことがわかる。しかし、この力は、この機構の機能に必要なものである。というのは、この装置が皮膚表面から取り外されるときに、針760を最終的に遮蔽するようにするのが、このばね793により加えられる力であるからである。したがって、この力に対抗するために、本発明の実施形態の別の態様は、ネズミ捕りドア790と称することが最良であるものを含む。
【0182】
ネズミ捕りドア790は、安全ばね793を捕らえて、安全ばね793によって皮膚表面に実際に伝達される力の大きさを小さくするように働く。ネズミ捕りドア790は、(一般のネズミ捕りで見られるものなど)てこの原理を利用して、安全ばね793に対してドア790を機械的に有利にする。それにより、ドア790が安全ばね793の上に折り畳まれると、安全ばね793は、ドアヒンジ792から所定の距離のところにあるドア790の所定の箇所に圧力をかけ、それによって、安全ばね793の力が、安全ばね793の圧力点とドア790のヒンジ792の距離の比の乗数だけ小さくなる。使用中、皮膚表面には、安全ばね793の全荷重ではなく、その実際の力の何分の一かしかかからないことになる。
【0183】
しかし、皮膚表面からこの装置が取り外されると、ネズミ捕りドア790は、図38から図41に示すように、安全ばね793がその完全に展開された状態に移行するときに、安全ばね793によって付勢されてこの装置から離れる。ドア790にかかる安全ばね793の初期荷重は、792のところでヒンジ式に取り付けられたドア790の機械的な利点のために軽くなっている。しかし、ドア790が付勢され、旋回して装置から離れると、この機械的な利点はそれに比例して小さくなる。その結果、安全ばね793は加速され、それによって、安全ばね793の移動長の終端またはその付近で安全ばね793の強さが最大になる。この安全ばね793の強さは、安全ばねスリーブ794の(図示しない)第1移動止め手段および(図示しない)任意の第2移動止め手段などの係止機構を、これらの移動止め手段の抵抗に打ち勝つために安全ばね793の力を利用して係合し係止するようにするのに必要なものである。最終的に、安全ばね793が完全に展開されると、ばねスリーブ794によって針760が遮蔽され、移動止め手段は後退することができず、その後、針760へのアクセスまたは針760の再利用が妨げられる。
【0184】
図116に、第2の改良型安全機構の実施形態、すなわち針を持ち上げて覆う機構を示す。この実施形態には、スコッチヨーク(scotch−yoke)1950または「クランクおよびスロット付きクロスヘッド(cross head)」として一般に知られているものを組み込むことができる。このような方法のさらなる細部が教科書に開示されている(例えば、非特許文献3参照。この該当する内容を参照により本明細書に組み込む)。この実施形態では、針マニホールド1956は、ばね荷重式クランク1952に連結される。クランク1952は、マニホールド1956に接続されたピン1954を有し、それによって、クランク1952が回転すると、マニホールド1956は下向きに駆動されて(図示しない)針を埋め込む。クランク1952は、針の全埋込深さを示すポイントに一致して回転を停止し、それによって流体が送達される。使用者の皮膚から装置が取り外されて、マニホールド1956がさらにわずかに下向きに移動した後で、クランク1952が「解除」され、回転が継続し、スコッチヨークの原理に従って、針マニホールド1956が皮膚から引き抜かれ、安全な位置に戻ることになる。
【0185】
図116に示すように、この持上げは、患者用針マニホールド1956と係合するスコッチヨーク機構を使用して実現される。このスコッチヨーク機構を、使用前位置(a)、実質的に使用中の位置(b)、および使用後の位置(c)で示す。捩りばね1952は、ピンまたはカム用のアーム1954を備える。アーム1954は、スロット付きマニホールド部材1956を介して駆動されるカムを有する。ばね1952が回転力を加えると、アーム1954は、(図示しない)皮膚表面内にマニホールド1956を送り込み、それによっても、アーム1954のさらなる移動が妨げられる。取り外されると、アーム1954は自由に移動でき、その際、マニホールド1956を持ち上げ、後退させる。
【0186】
ネズミ捕り式およびスコッチヨーク式の安全機構の実施形態は、受動的なシステムであり、針を安全な状態にするのに使用者による追加のステップを必要としない。このような受動的なシステムでは、安全機構の展開を作動させる何らかの手段を用いなければならず、大部分の有効な受動システムは、皮膚表面の近くにいることを感知し、皮膚表面から取り外されるときに、安全機構を展開するものである。このような皮膚の「感知」は、感知する要素と展開される要素との直接的な関係を暗に意味する。上記で説明した実施形態では、使用者が皮膚上で実感する安全機構の力を、感知できないほど低い値に小さくすることによって、従来方式の受動的な安全設計が改善される。
【0187】
1本または複数本の針が展開された後でそれらを皮膚から持ち上げる本発明の別の実施形態は、図117から図122に示す傾斜機構を利用する。先に述べたように、この微小注入器は、使用者の皮膚に針または針のアレイを埋め込む働きをする少なくとも1つの駆動ばねを含む。この駆動ばねは、設計によって、皮膚内に針を送り込むことができるように位置決めされる。図117および図118に示す実施形態では、注入が完了すると、使用者が、マニホールド1000、すなわち針または針のアレイの頭部を係合することができる傾斜1004などの機構を提供し、位置決めすることができ、マニホールド1000に向かって傾斜1004を押し込むことによって、使用者の皮膚から(図示しない)針を傾斜させ、また持ち上げることができる。ただし、(図示しない)駆動ばねが、針のマニホールド1000に力を加える位置に留まる場合には、この駆動ばねの力に対抗して針を持ち上げる。
【0188】
図117および図118に示すように、受動的な後退くさび構造の患者用針マニホールド1000は、ばね1008によって傾斜1004がマニホールド1000に向かって駆動されるときに、この傾斜の斜面と係合するほぼ円形のマニホールド1000の両側から延びるピン1002を有する。傾斜1004は、粘着式皮膚感知引抜き部材1006により固定されたスロット1012によって、マニホールド1000の持上げが早すぎないように保証される。このアセンブリ全体は、上記で説明した注入装置内に配設される。使用後、この装置は皮膚から取り外され、粘着式引抜き部材1006は、(図示しない)皮膚表面に張り付いているので、この装置から下向きに引き出される。この際、図118に示すように、くさび1004のスロット1012が引抜き部材1006から解放され、くさび1004がマニホールド1000のピン1002に押し付けられる。このため、マニホールド1000が持ち上げられ、(図示しない)針が装置内に後退し、くさび1004によって針の開口が内部で覆われる。
【0189】
この実施形態では、くさび1004または遮蔽部は成型部品であり、(図示しない)作動ボタンとマニホールド1000の間で位置決めされる。ばね1008も、くさび1004とこのボタンの間で位置決めされる。ばね1008は、このボタンと後退に必要な移動との移動差を補償するのに十分なだけあらかじめ荷重がかけられる。くさび1004は、皮膚感知引抜き部材1006によって定位置で保持される。皮膚感知引抜き部材1006は、引抜き部材1006の側面切欠き1014内を(図示しない)スライド可能なボタンコンポーネントによって保持される。
【0190】
このボタンは、押されると、皮膚感知引抜き部材1006コンポーネントの側面切欠き1014が解放され、同時に、ばね1008が圧縮されて完全に変位する隙間ができるまで移動する。皮膚感知引抜き部材1006は、皮膚の存在のために定位置に留まる。マニホールド1000が解放され、皮膚の中に針が配置される。皮膚から取り外されると、皮膚感知引抜き部材1006の大きな表面積上の粘着剤は外向きに引かれ、それによって、この時点でばね荷重下にあるくさび1004が解放される。くさび1004は、前方に移動し、マニホールド1000を持ち上げ、針を後退させ、アクセス穴を覆う。
【0191】
この実施形態では、力の均衡の問題があるが、これは制御することができる。くさび1004を駆動するばね1008は、延びるときに力が小さくなる。マニホールド1000の上に配設され、マニホールド1000を下向きに押す(図示しない)マニホールド駆動ばねは、駆動されるくさび1004によってマニホールド1000が持ち上がることによって圧縮されるにつれ力が増加する。これには、くさびばね1008を極めて強くバイアスすることによって打ち勝つことができるが、こうすると、押しボタンを押すのに必要とされる力に悪影響を及ぼす。
【0192】
したがって、図119に、上記実施形態の別のバージョンを示す。この実施形態の考え方は、ともに前方に送り出されるマニホールド1000およびキャリッジ1005を含むことである。(図示しない)マニホールド駆動ばねは、キャリッジ1005を直接駆動し、マニホールド1000は、キャリッジ1005に連結される。この場合、くさび1004を使用して、安全機構が解放された後で、マニホールドを押して移動止め1007から離すことによって、キャリッジ1005からマニホールド1000を分離する。それによって、マニホールドの駆動ばねに打ち勝つ必要はない。というのは、駆動ばねは、この時点で独立なキャリッジ1005に押し付けられて作用したままだからである。
【0193】
改善された設計の別のバージョンでは、くさび1004の初期移動を利用して、マニホールド1000の駆動ばねを押して直線から外し、その結果、それらが曲がり、後退中、もはやマニホールド1000に通常の荷重がかからないようにする。これらのバージョンはいずれも、マニホールド1000が再度押し出されず、再利用されないという点でも有益である。
【0194】
図117、図118、および図119の実施形態では、遮蔽操作は受動的であり、針は材料で完全に覆われる。この遮蔽部は、高強度成型部分で構成され、注射中に皮膚表面に力を加えず、針区域における粘着剤の存在にも影響を及ぼさない。針は使用後に内部で保持され、ばね1008が受ける荷重は、ばねの寿命中、最小限に抑えられる。この実施形態は、力の均衡を必要とせず、そのため、伸張するばね1008は駆動ばねを圧縮し、皮膚粘着区域は安全遮蔽部を解放することを必要とする。したがって、皮膚の粘着が弱いか、摩擦が大きいことが問題となり得る。さらに、3つの部品が含まれるので、組立が複雑になる一因となり、機能するのに長い行程を必要とする(すなわち、装置のサイズが増加する)。また、大部分の圧縮ばね機構の場合と同様に、このようなばねはクリープの影響を受けやすい。
【0195】
本発明のこの実施形態に含まれる傾斜要素1004が有する傾斜プロフィールは、傾斜部上の摩擦(すなわち、マニホールド1000を持ち上げている間のピン1002と傾斜1004の間の摩擦)と、駆動ばねの力(すなわち、マニホールド1000を下向きに付勢する力)とにともに打ち勝つのに十分に浅いが、ボタンの「行程」すなわち並進移動が逆に長くならない程度に浅くする。先に述べたように、この実施形態の別の態様では、傾斜の並進移動を利用して、例えば、マニホールド1000の上の「駆動ばねに打ち勝つ」ためにマニホールドばねに影響を及ぼす。この実施形態では、皮膚から針を持ち上げるだけでなく、(図示しない)駆動ばねを針マニホールド1000との係合から変位させるのに必要な(図示しない)構造を採用し、そのため、駆動ばねによって加えられる力がなくなり、それに対応して針の持上げがより容易になる。
【0196】
この実施形態の別の態様では、針が皮膚からうまく持ち上げられ、装置内に戻ったときに、これらの針の上に横断障壁を提供することになる構造を含める。これらの針は一般に、これらが使用者の皮膚内に適切に埋め込まれるようにするための特別な形状を必要とするほど小さい。これらの針の形状は、本質的に、この装置の底面の先まで延び、完全に後退しない限り、簡単な横断障壁で覆うことは難しく、そうでない場合には、これらの針を曲げ、折ってしまうことがある。したがって、本発明のこの実施形態では、横断障壁、この場合には傾斜自体を、針を折らずに展開し得るように針を持ち上げる。というのは、折れた針は、この環境では危険なことがあるからである。
【0197】
スコッチヨークタイプに類似の本発明のさらに別の実施形態は、図120、図121、および図122に示すV形スロット機構を使用して、1本または複数本の針が展開された後で、それらを皮膚から持ち上げる機構を含む。本発明のこの実施形態の受動的な後退スロット設計では、使用者は、マニホールドを押して装置を作動させることによって装置の操作を開始する。送達後、使用者は、皮膚から装置を取り外し、粘着剤が主スライダの経路から小型係止部を引っ張る。次いで、マニホールドが装置内に後退し、このスライダによって針が突き出る穴が覆われる。
【0198】
図120に示すように、受動的な後退スロット設計のスライダ1015は、その両側から延び、部材1022に形成されたV形スロット1020と係合するピン1016を有する。ピン1016は、スロット1020内で、1対のばね1025によって駆動される。このアセンブリ全体は、上記で説明した注入装置内に配設される。先に述べたように、使用者は、上記実施形態で説明したのとほぼ同様に、図120に示すばね1025を圧縮する(図示しない)マニホールドまたはボタンなどの手段を押すことによって装置の操作を開始する。使用者用の押しボタンなどの解放手段によってこの装置が作動されると、ばね1025が解放され、駆動部材1022により、スライダ1015が、スロット1020によって案内されて皮膚表面に向かって押し出される。スライダ1015は、針の挿入が最大になるところに移動し、(図示しない)皮膚表面によってそれ以上下向きに移動しないように止められ、ばね1025によって後方に移動しないように止められ、スロット1020の傾斜突起によってそれ以上前方に移動しないように止められる。この装置がもはや皮膚に接触していないとき、スライダ1015は下向きに自由に押され、さらに前方に移動し、スロット1020の上向きの斜面に入る。このとき、スライダ1015の移動により、スライダ1015の下に配設された(図示しない)マニホールドに上向きの力が加えられ、針が装置内に後退し、穴が覆われ、針が完全に封入される。
【0199】
この実施形態では、針が材料で完全に覆われる。この実施形態は、極めて大きな強度を有するように成型することができる。注射中、皮膚には極めて小さな力しかかからず、この機構は、針のところの粘着剤の存在に影響を及ぼさない。使用後、これらの針は内部で安全に保持され、そのため、この実施形態では、「使用中」か「使用済み」かの状態の目に見えるフィードバックが明確に得られ、余計な部品を必要としない。しかし、安全機構を解放するために皮膚に粘着されることを必要とし、したがって、低粘着または高摩擦により、難点が生じることがある。さらに、上記実施形態の場合と同様に、機能するのに長い行程が必要である(すなわち、装置のサイズが大きくなる)。また、大部分の圧縮ばね機構の場合と同様に、このようなばねはクリープの影響を受けやすいことがあり、装置寿命の間保持される強い力および展開される率についての懸念が存在し得る。
【0200】
本発明の別の改良型安全機構の実施形態は、以下で説明する受動的な完全に取り囲まれた遮蔽部である。図123は、作動前の注入装置のバケツタイプの安全遮蔽機構の実施形態の図を示す装置の斜視底面図であり、図124は、作動後のバケツタイプの安全遮蔽機構の図を示す装置の斜視底面図である。
【0201】
回転遮蔽部1030は、あらかじめ荷重がかけられた捩りばね1032によって動力が与えられ、押しボタン1042が押されるまで、「上側」回転位置で荷重がかけられたままになる。次いで、遮蔽部1030は解放され、自由に回転するが、粘着剤で覆われた装置表面1045に押し付けられた使用者の皮膚が存在するために、完全に展開される位置まで回転することはできない。この装置が取り除かれるか、自然落下するなど、この装置がもはや使用者の皮膚に当てられていない場合、遮蔽部1030はもはや皮膚表面によって妨げられず、約180度回転し、その後、定位置で係止され、患者用針1040を完全に覆い、針刺しによる怪我を防止する。
【0202】
図123に示すように、針1040は当初、粘着剤で覆われた装置下部表面1045の開口1035内に引っ込んでいる。使用者は、粘着表面1045で皮膚に装置を固定し、次いで、作動ボタン1042を押して、注入装置を作動させる。この装置が取り外されると、遮蔽部1030は下に返り、針1040の上の定位置で係止され、そのため、使用者は、針を見ることも、針に触れることもできない。
【0203】
遮蔽部1030は、スタンプ加工で形成されたシートメタル部品であり、捩りばね1032によってあらかじめ荷重がかけられる。この装置内に後退した遮蔽部1030を示すこの装置の開いた下部ハウジングの斜視図を示す図125でわかるように、遮蔽部1030の前縁は、係止アーム1034を含む。係止アーム1034は、この装置のクロスバー部材1036上に置かれ、そのため、係止アーム1034は、固定状態で保持される。回転する準備が整った遮蔽部1030を示すこの装置の開いた下部ハウジングの斜視図を示す図126に示すように、ボタン1042が作動されると、ボタン1042のタブ1044により、係止アーム1034がクロスバー部材1036から押され、それによって遮蔽部1030は、皮膚表面から離れているときにはばね1032の荷重下で回転することができる。図127に、遮蔽部1030が回転した後のこの装置の開いた下部ハウジングの斜視図を示す。タブ1044は、作動中に押しボタンとクロスバー部材1036の間で皮膚が挟まれない助けにもなるように押しボタン1042から延びている。
【0204】
別の解放実施形態では、係止アーム1034に対してほぼ90°の角度で(図示しない)追加のアームが設けられる。このアームは、ボタンの移動軸に沿った向きのものであり、使用前に遮蔽部1030を固定状態で保持する。ボタン1042が押されると、ボタン1042の1つ(または複数)の(図示しない)カム形状がこの追加のアームを横向きに押し、そのため、この追加のアームは、小さな力が加わるだけでスロットを通って落下し、遮蔽部1030が解放される。こうすると、ボタン1042の位置が公差の影響を受けにくくなる助けにもなり、遮蔽部1030を装置内のより下部に置くことができる。また、こうすると、捩りばね1032用の場所が広くなり、装置が必要とする高さが低くなる。
【0205】
この注入装置が1回分の量を投与している間、図123から図127の遮蔽部1030は皮膚表面の上に載っている。この装置を意図して取り外すか、あるいはこの装置が誤って取り外されると、捩りばね1032によりバケツタイプの防護部1030は開口1035を通って返り、作動中にばねのピンが取り外されたところである穴1048内のタブ1046の上で係止される。
【0206】
この実施形態では、この係止は、遮蔽部1030の前に配置されたアーム1034および/またはスナップ構成によって実現される。遮蔽係止部を係合させる力は、断面短寸法を横切ってアーム1034を外向きに押し、そのため、この力が弱く保たれる。遮蔽部1030に打ち勝つ力は、断面長寸法を横切って係止部の移動に直角に加えられる。こうすると、係止部を係合させる力を弱く抑えながら、係止部に打ち勝つ力をはるかに大きくすることができる。
【0207】
捩りばね1032は、遮蔽部1030の(図示しない)ピンに対して荷重をかけることができ、ばねのアームは、ばねの後側の(図示しない)タブの下で係止することができ、そのため、このばねにあらかじめ荷重がかけられ、安定なサブアセンブリが形成される。この遮蔽アセンブリは、ボタンサブアセンブリの前に、遮蔽部1030の(図示しない)メインバーなどの旋回手段を押して、下部ハウジング内で旋回点を形成する(図示しない)2組のスナップ部内に入れることによって、注入装置の下部ハウジング内に逆さまに組み付けられる。このばねの一方のアームを解放して下部ハウジングに押し付け、このばねのもう一方のアームはばねの後側のタブの下で係止することができ、それによって安全機構の遮蔽部が「付勢」される。
【0208】
図123から図127に示す安全機構の実施形態は、針1040を材料で完全に覆う受動的な安全システムの別の例である。この材料は、金属スタンプ加工部として構成され、そのため、壁の厚さがより薄くなる。この際、この実施形態では、降伏させるのに強い力が要る部品を2つ追加するだけでよい。また、遮蔽部によって皮膚に加えられる最小限の力は、他の実施形態よりも針の接触点から遠くに離れる。ただし、遮蔽部1030は、装置内である程度のスペースを必要とし、そのため、装置がより長くなることがあり、送達中に、遮蔽部1030により皮膚が押される。さらに、遮蔽開口1035により、針1040の近くの粘着表面が大きく取り除かれる。また、大部分の圧縮ばね機構の場合と同様に、このようなばねはクリープの影響を受けやすく、必要に応じて、ばねの選択および旋回チューブの構成能力に関する懸念が生じることがある。
【0209】
上記実施形態にはさらに、バケツ部すなわち遮蔽部1030が後退位置から伸張位置に移動するときに、改良型係止機構を備えることができる。この場合の遮蔽部は、可撓性係止部を有する代わりに成型部品であり、遮蔽部の旋回は「ラチェット式」とすることができ、それによって逆回転が防止される。図128は、作動前の注入装置の改良型安全遮蔽部の実施形態の斜視図であり、図129は、作動後の安全遮蔽機構の斜視図である。
【0210】
図128に示すように、ハウジングではなく、ボタン1050が遮蔽部1055を保持する。ボタン1050が押されると、遮蔽部1055が解放され、上記で説明したのとほぼ同様に、皮膚の上に置かれる。装置が皮膚表面から取り外されると、(図示しない)ばねが、旋回点のところで遮蔽部1055およびラチェット機構1060を返し、遮蔽部1055が回転しながら装置本体上のキャッチ1061と係合し、それによって、ラチェット機構1060により遮蔽部1055が定位置で保持される。図130に、ラチェット機構1060をより詳細に示す。ラチェットの歯1059は、遮蔽部1055のアーム1057上に存在し、それに対応するくさびまたはキャッチ1061は、装置上に配置される。いかなる部分的な回転もこの時点で係止される。
【0211】
このラチェットは、打破荷重に抵抗するのに十分に大きい歯1059を提供することができるが、これらの歯は、装置の底面から突出して使用者に当たるほど大きくはしない。さらに、これらの目標を達成するために、ラチェット1060は、遮蔽部1055を装置内に陥凹させることを必要とせず、そのため、装置の高さが高くなる。ラチェット1060に対して遮蔽部1050を漸進的に駆動するのに十分なばね力が提供されるが、完全に移動させることとクリープの問題との力の均衡に配慮しなければならない。また、ばねを保持する理にかなった場所がなく、組立時に装置内でばねに荷重をかけなければいけないので、最終組立はいくらか複雑であり、そのため、マニホールドと遮蔽部の間にボタンを挟む必要がある。
【0212】
このラチェット係止部によれば、高強度部品で成型することができ、材料で針を完全に覆う別の受動的な安全機構の実施形態が提供される。この実施形態は、追加の部品を2つしか必要とせず、完全な、または部分的な展開に追従して堅固な安全機構を実現する。皮膚表面に加えられる力は、他の実施形態の場合よりも針の場所から遠くに離れるが、この実施形態は、装置内にある程度のスペースを必要とし、そのため、装置がより長くなることがある。上記実施形態の場合と同様に、送達中に、遮蔽部1055により皮膚が押され、遮蔽開口により、針の近くの粘着表面が大きく取り除かれる。また、大部分の圧縮ばね機構の場合と同様に、このようなばねはクリープの影響を受けやすく、ばねには、装置内への組立中に荷重をかけなければならない。ラチェット係止部が旋回点にかなり近いので、極めて大きな強度も必要とされる。
【0213】
本発明の別の改良型安全機構の実施形態は、以下で説明するように、受動的な完全包囲型引出し構造の実施形態である。図131および図133は、作動前の注入装置の安全遮蔽機構の実施形態を示す装置の斜視底面図であり、図132および図134は、作動後の安全遮蔽機構を示す装置の斜視底面図である。
【0214】
図131から図134の実施形態を使用する際に、使用者は、上記で説明したのとほぼ同様に注入装置1060を準備し使用する。この装置が皮膚から取り外されると、遮蔽部1065に取り付けられた粘着パッチ1062により、遮蔽部1065が引き出され、粘着パッチ1062が皮膚表面から解放される前に、定位置で係止される。患者の皮膚に接触する平坦な表面部分を含む安全ハウジングまたは遮蔽部1065が設けられる。この平坦な表面の上には粘着パッチ1062が配設され、それによって、患者がこの装置を皮膚から取り外したときに、粘着パッチ1062は、装置の内部から遮蔽部1065を展開する(すなわち、後退させるか、または引き出す)ように働き、それによって、そうしない場合には患者から装置が取り外された後で露出することになる患者用の針1067が遮蔽される。次いで、引き出された安全遮蔽部1065は定位置で係止され、誤って怪我をすることや、患者用針に曝されることがなくなる。
【0215】
遮蔽部1065は、装置1060内に嵌るスタンプ加工金属部品であり、使用前に、(図示しない)粘着ライナおよび針キャップが取り外されたときに、遮蔽部1065が作動されないようにボタン1064によって定位置で保持される。粘着パッチ1062は、実質的に2つの部分で設けられる。一方は、装置1060の底面の大部分に設けられ、もう一方は、遮蔽部1065の底面上に設けられる。装置1060が取り外されると、これら2つのパッチはそれぞれ独立に移動し、ボタン1064が押されているので、この時点で遮蔽部1065は移動可能である。図133および図134に示す実施形態では、遮蔽部1065にいくつかの案内スロットおよびタブ1063がある。遮蔽部1065は、上部のスロットとタブ1063の間で捕らえられるまで引き出され、そのため、遮蔽部1065上の角度の付いたタブによって定位置で係止される。
【0216】
この実施形態のアセンブリは、底面から装置内にスナップ式に嵌めることができる。ボタンも、初期係止部と係合する必要があるので、定位置にスナップ式に嵌められる。この引出し型の実施形態は、単一部分として設けられ、人間による荷重下ではつぶれることのない良好な係止部を提供する別の受動的な安全機構の実施形態である。ただし、この実施形態は、装置内である程度のスペースを必要とし、露出させることが難しいことがある。というのは、この実施形態は、底部に少なくとも1つの粘着剤で覆われていない穴を含み、かつ針のところで浮いている大きな粘着区域を必要とするからである。こうすると、必要とされる移動距離も長くなり、背面での適用範囲も制限される。また、指などの干渉によっても、取外し後の展開が妨げられることがある。
【0217】
本発明の別の改良型安全機構の実施形態は、以下で説明する受動的な捩りばね式後退設計である。図135は、初期位置での注入装置の安全遮蔽機構の実施形態の斜視図であり、図136は、使用位置での安全遮蔽機構の斜視図、図137は、最終後退位置での安全遮蔽機構の斜視図である。
【0218】
この実施形態は、マニホールド1076のペグ1074上に置かれたあらかじめ荷重がかけられた内部捩りばね1070を含む。必要な場合には2つのばねを使用することができる。ボタン1075が押されると、マニホールド1076が解放され、ばねがブロック1071から落下してマニホールド1076の駆動ペグ1072を押し、それによって、マニホールド1076が下向きに押されて適切な速度で配置位置に至る。この装置が空になり、皮膚から取り外されると、2つのことの一方が起こる。第1に、余分に移動するように設計されたマニホールド1076が、継続して進み、ばね1070が駆動ペグ1072から滑り落ち、180度反転し、マニホールド1076の後退ペグ1074を捕らえてマニホールド1076を持ち上げ、それにより、(図示しない)針が後退する。この実施形態の代替バージョンでは、マニホールド1076はわずかに横方向に移動することができ、それにより、ばね1070が(後退ペグ1074よりもいくらか短い)駆動ペグ1072から解放されてマニホールド1076の後退ペグ1074に返り、それによってマニホールド1076が持ち上げられ、針が後退する。
【0219】
ばね1070の移動端は、180°回転するのに十分な間隙を有するべきであるが、このばねのアームが駆動ペグ1072から後退ペグ1074に移るときに、怪我をする危険性をなくす必要がある。ただし、ばね1070は後退後、マニホールド1076および針を上で保持し、装置を使用不可にする。この実施形態も追加の部品を必要としない。
【0220】
上記で説明した実施形態の場合と同様に、これは、マニホールドにより作動され、追加の部品を必要としない受動的な安全機構である。注射中、皮膚には追加の力がかからず、使用後、針は内部で安全に保持される。引出し設計と異なり、この実施形態は、針のところの粘着剤の存在に影響を及ぼさない。しかし、ばね1070の可動アームのために使用者が怪我をする可能性をなくすために間隙が必要とされる。また、大部分の圧縮ばね機構の場合と同様に、このようなばねはクリープの影響を受けやすく、ばねの寸法および力のプロフィールに関する懸念が生じ得る。
【0221】
本発明の他の改良型安全機構の実施形態には、以下で説明する受動的なヒンジ式遮蔽部設計の実施形態が含まれる。図138は、ばね駆動によるヒンジ位置での注入装置の安全遮蔽機構の実施形態の斜視図であり、図139は、粘着剤駆動によるヒンジ位置での安全遮蔽機構の斜視図、図140は、後退位置で保持された円形一体型曲がりばねを伴う安全遮蔽部の斜視図、図141は、作動位置での曲がりばねの斜視図である。
【0222】
図138および図139に、それぞれヒンジ式遮蔽部1080および1085を示す。ヒンジ式遮蔽部1080および1085は、それらが装置上にあるときには平坦である。遮蔽部1080および1085は、ボタン1082および1086がそれぞれ押されるまで平坦な状態で係止され、ボタンが押された場合、遮蔽部1080および1085は解放されるが、装置を身体に保持する粘着剤により、遮蔽部1080および1085は、平坦位置で皮膚に押し付けられて固定される。この装置が皮膚から取り外されると、ばね要素1081および/または粘着表面1083によってそれぞれ付勢されて遮蔽部1080および1085が「持ち上がり」、タブ1087によって定位置で係止される。
【0223】
これら各実施形態では、遮蔽部1080および1085は、装置から回転しない程度に十分に1点1089でヒンジ式に取り付けられた金属部品とすることができる。ヒンジ式金属遮蔽部1080は、ばね要素1081によって、伸張係止位置に駆動される。具体的には、遮蔽部1080は、装置の表面に押し付けられるばねとして働くいくつかの、ばね要素1081の曲がりアームを有するように構成できる。ばね要素1081の曲がりアーム1081は、装置の下部ハウジングに押し付けられて荷重がかけられ、ボタン1082は、後退位置で、これらのばねの前側、典型的にはヒンジ1089から最も離れた箇所で係止する。ボタン1082が押されると、遮蔽部1080は、ヒンジ1089の周りで自由に回転するが、皮膚により平坦に保たれる。皮膚から注入装置が取り外されると、ばね要素1081の曲がりアームは単独で、または、ばね1085に設けられる粘着剤1083と組み合わされて、遮蔽部1080および1085を外向きに引き、装置前方のいくつかのタブ1087を用いて定位置で係止する。
【0224】
上記で説明したばねの実施形態は、それぞれ長くかつ/または薄い部品とすることができるので、典型的には、打破荷重に抵抗することができるように構成される。さらに、ばね1080および1085は、荷重が長期間にわたり、移動距離が長い場合でさえ、適度に保全されるように適合される。係合後も、ばね1080および1085は、必要に応じて、ヒンジ1089のところで維持されるのに十分なものである。
【0225】
図140に示すように、上記実施形態の代替バージョンは、ばねとして働くナチュラルヒンジを有する遮蔽部1090を含む。遮蔽部1090は、押しボタン1091によって図140に示す位置で保持される。解放されると、遮蔽部1090は、図141に示す形状にバイアスされる。したがって、装置を作動し、取り外すと、ナチュラルヒンジの動作により、ばね1090が作動されて図141に示す形状になり、(図示しない)針を覆う。この装置の基部はさらに、遮蔽部1090が移動するときに、その後縁を係止し得る少なくとも1つの切欠きを含むことができる。
【0226】
上記で説明したヒンジ式遮蔽部の実施形態では、組立が簡単であり、ボタンのスナップ動作で作動される別の完全に受動的な単一片安全遮蔽部が提供される。このような形状により、装置の輪郭も確実に低く維持される。しかし、この実施形態は、可撓性要素を含み、視界が妨げられることと、部品の剛性との間でバランスを取ることを必要とする。開口を通して依然としていくらか針にアクセスでき、場合によっては、ばねが容易に屈することがある。また、この実施形態では、送達中に針のところで皮膚に荷重がかかり、ヒンジの完全性に大きく依存する。
【0227】
微小注入装置において針を遮蔽する別の受動的な設計は、使用者が装置を皮膚から取り外したときに、使用者から離れるように針が回転するか、安全位置まで針が「余計に回転」し得るものである。図142に示す改良型回転遮蔽部の実施形態では、主な特徴は、回転を利用して針1101を埋め込み、皮膚表面1104が取り除かれた後で、同じまたは類似の回転「経路」を利用して針1101を取り除くことである。図142に示す実施形態では、単一の針固定アーム1100が第1の軸1102の周りで回転する。針1101が皮膚表面1104に接触すると、針1101が配置され、軸1102の周りの動きが停止する。完了後、皮膚表面1104から装置が取り外されると、軸1102の周りの動きが再開され、針固定アーム1100が(図示しない)装置内に戻る。針固定アーム1100は、第2の軸1106の周りでも回転して、使用後に針1101をさらに遮蔽することができる。
【0228】
先に述べたように、注入装置の1つの望ましい特徴は、流路が連続的なことである。これは、無菌障壁の数が少なくなり、装置の製作が簡略化される潜在的な可能性があることから好ましい。そのため、針1101を回転させて針固定アーム1100を介して使用者の皮膚1104に入れることを含む実施形態では、これらの利点が容易に実現される。この実施形態ではさらに、皮膚1104に針1101を回転させてそれらを埋め込み、次いで、使用者の皮膚1104から装置が取り外されたときに、安全位置まで針1101を「余計に回転」させる。この余計な回転は、針1101が移動する単一経路を利用し、受動的または能動的な安全システムとして採用し得るものである。さらに、この機構は、薬物の液溜めから針1101までの流路の完全性または製作のし易さを損なうことなく安全性が得られる潜在的な可能性を有する。
【0229】
微小注入装置用の受動的な安全機構の別の実施形態では、装置が取り除かれた後で、作動ばねの荷重が解除される。先に述べたように、このような注入装置は、針のアレイを使用して皮下に注入物を送達する。これらの注入物は、ばねによって、皮膚層を貫通するのに必要な速度で患者に送り込まれる。注入が行われた後で、患者から装置を取り外し、この時点で露出している針を何らかのやり方で遮蔽して、その後の取扱い中に針刺しによる怪我をなくすことが望ましい。駆動ばねの荷重を取り除くか、駆動ばねを何らかのやり方で改変することができれば、これらの針は、装置のハウジング内に容易に戻ることができ、もはや危険をもたらすことはない。この実施形態では、曲げることができる梁からなるアームが設けられる。この梁は、カムによって荷重をかけることができ、針を送り出すためのばねとして機能させることができる。図143から図146に、1つの追加の部品でこの役割を実現する実施形態を示す。
【0230】
図143から図146に、カム−アーム機構を含む装置の断面図を示す。この機構は、少なくとも1つのフォロワ1112を有するアーム1110を含む。フォロワ1112は、このアームから延び、カム開口1114にスライド可能に結合される。このアームはさらに、遠位端に、作動機構1118によって解放可能に定位置で保持される患者用針マニホールド1116を含む。カム開口1114は、スライド可能な部材1124内に設けられる。使用中にこの実施形態が遭遇する4つの基本的な状態があり、これらをすべて、以下でより詳細に示し説明する。
【0231】
図143に示す第1位置、すなわち準備位置では、アーム1110は静止しており、このアセンブリは、使用者によって作動される準備が整っている。これは典型的には、製品の組立済みの構成および出荷される構成である。図144に示す第2位置、すなわちばねによる振上げ位置では、使用者によって(図示しない)ボタンが作動され、部材1124が右側に移動する。ピン1120によって加えられる力によって部材1124が右側に移動すると、アーム1110は、静止状態のまま、静止フォロワ1112の周りのカム開口1114の動きによって撓み位置に駆動される。ピン1120および作動部(trigger)1118はいずれもボタンに取り付けられているので、それぞれ移動して、カム開口1114およびフォロワ1112によってアーム1110は、この曲がった状態に置かれる。このようにしてばねには、使用時に使用者によって荷重がかけられる。これには、あらかじめ荷重がかけられたアセンブリに比べて、荷重がかけられたばねに関連する応力およびクリープがなくなるという利点がある。この状態で、作動部1118とラッチ1122が係合し、使用直前に使用者によって送り出される準備が整う。
【0232】
図145に示す第3位置、すなわち送出し位置では、ボタンのさらなる動きにより、作動部1118が、ばねの荷重を解除する(すなわち、アーム1110を解放する)のに十分に前方に移動しており、そのため、針1116が皮膚表面1117に送り込まれる。ラッチ1122もこの時点で、部材1124内に設けられた開口によって作動されており、そのため、アーム1110および部材1124がともに皮膚表面1117に置かれる。フォロワ1112、カム開口1114、およびアーム1110内の残りのばねのモーメント結合により、皮膚表面1117に軽い圧力が加えられる。
【0233】
図146に示す第4位置、すなわち安全位置では、この装置は、皮膚表面1117から取り外されており、部材1124は、フォロワ1112とカム開口1114が結合しているために回転している。このため、アーム1110は緩められて再度その元の状態になり、針1116は後退してハウジング内に入る。上記の機構全体を注入装置内に配設することができる。図147に、装置とともに使用する際に、カム/フォロワの動作をさらに利用するところを示す。図147には、ねじ込み部材を使用して、患者用針をカム動作させて患者に入れ、取り出し、さらに液溜めの内容物を加圧するのに使用するばねに荷重をかける例を示す。
【0234】
具体的には、図147に、装置内の1つ(または複数)のばね1126に荷重をかけるための捩れ部材ないしねじ込み部材1125を有する実施形態を示す。ばね1126は、ピンまたはボタン1127によって固定され、解放されると、要素1129を前方に押し出す。要素1129のスロットを移動するピン1131は、要素1129のスロットに対応して、下向きに、次いで、上向きに送られる。ピン1131が下向きに送られると、旋回式液溜めおよび針アセンブリ1133がさらに下向きに押し出される。要素1129がさらに移動すると、ピン1131は上向きに送られ、アセンブリ1133に接触するばね1126に助けられて、アセンブリ1133は上向きに押し出される。
【0235】
先に述べたように、受動的な安全システムが最も望ましいが、能動的な安全システムも機能しうるものであり、いくつかの応用例で使用することができる。やはり先に述べたように、安全システムに関して一般に3つの任意選択肢があり、それには、装置内に針を後退させること、針を遮蔽してアクセスできなくすること、および針刺しによる怪我がなくなるように針を破壊することが含まれる。上記では、いくつかの受動的な安全機構を詳細に説明した。次に、本発明のいくつかの能動的な安全機構の実施形態を以下により詳細に説明する。
【0236】
図148および図149に、本発明の改良型フリップ式遮蔽安全機構の実施形態を示す。この装置の機能は、装置が取り外されたときに、使用者が遮蔽部1130を下に返し、遮蔽部1130を定位置で係止して、針1135にアクセスできないようにすることを除き、上記と実質的に同じである。
【0237】
図148および図149に示すように、遮蔽部1130は、プラスチックまたは金属のほぼ平坦な部品であり、この装置の縁部のところの移動止め1137を使用して押すことによって定位置で保持される。この装置が使用中に皮膚表面上にあるとき、遮蔽部1130は、本質的に平坦である。装置が取り外された後で、使用者は、遮蔽部1130の移動止め1137の延長タブをつかみ、ヒンジ1139の周りで遮蔽部1130を返して、針1135を「つぶし、かつ、覆う」。使用後、閉じられたときに、遮蔽部1130が装置に固定されて移動できないように、(図示しない)係止部も設けることができる。遮蔽部1130が定位置で係止されると、針1135および針開口はともに完全に覆われ、係止される。
【0238】
この実施形態のアセンブリは、旋回部に対してはスナップ式嵌合部を含み、初期位置には圧入することができる。これは、このアセンブリを装置底部の定位置に置き、この装置の残りの部分が組み立てられるように、製作の極めて早い時期に行うことができる。遮蔽部1130の上部に粘着剤も配設することができる。このような能動的な安全機構は、単一の部品によって形成することができ、断面形状が低く、堅固な保護を提供する単純なアセンブリである。ただし、この機構は能動的であり、使用者による余分なステップを必要とする。また、遮蔽部1130上の粘着剤により装置が浮くことがあり、針1135をつぶすのに問題になることがある。さらに、旋回部1139は、回転が完全に行われ、係止が不完全にならないように注意深く配置しなければならない。
【0239】
先に述べたように、安全機構の改善実施形態は、ネズミ捕りタイプの安全機構、針を持ち上げて覆うタイプの安全機構、および回転針マニホールドタイプの安全機構を含めて、いくつかのバージョンで提供することができる。上記で受動的および能動的な機構をともに詳細に説明したが、いくつかの機構は、能動的または受動的のいずれでも提供することができる。以下、本発明のいくつかの能動的/受動的安全機構の実施形態をより詳細に説明する。
【0240】
上記で説明した受動的な安全機構の実施形態に関して、針を持ち上げて覆う実施形態など、いくつかの実施形態は、使用者が使用する能動システムとして提供することもでき、これらは製作にコストがかからず、使用に際して極めて堅固なものである。例えば、針を持ち上げて覆う実施形態では、駆動ばねによって針を埋め込むのに必要とされる力は潜在的に大きい。したがって、通常の能動的な安全システムにおいて、使用者による打破力は同様に大きくなることがあり、針が不完全に遮蔽される潜在的な可能性がある。しかし、受動型安全機構の実施形態として上記で説明した、持ち上げて覆う実施形態のいくつかは、それぞれが傾斜を提供するという点で有利である。したがって、能動的安全機構として適用可能な場合、持ち上げて覆う各実施形態では、駆動ばねに対して機械的な利点を得るために傾斜を提供して針を持ち上げることができる。また、これらの実施形態には、駆動ばねを完全に取り除く潜在的な可能性もあり、それによって、装置を遮蔽するために使用者が必要とする力が大きく緩和される。能動的および受動的な機構の最後の利点は、これらの考え方によって、傾斜構造に一体化される横断障壁の展開を容易にすることができ、したがって、製作が安価であり、使用法が簡単、かつ使用に際して堅固であることである。
【0241】
能動的または受動的な機構のいずれかとして提供し得る別の改良型安全機構の実施形態では、針を曲げる安全機構を提供することができる。(図示しない)この実施形態では、この機構は、使用中および送達中に、針を通す穴を伴うプレートを含むことができるものである。使用後、能動的または受動的にこのプレートを移動して、プレートの穴の縁部が、極めて小さいゲージの針に剪断荷重を加え、それらを横方向に曲げ、同時にそれらを覆うことができる。
【0242】
ただし、針を折らないように配慮しなければならず、これらの針を曲げるのに様々な程度の力が必要とされることがある。というのは、モーメントの腕の長さが極めて短い装着箇所の極めて近くでこれらの針を曲げるべきだからである。この実施形態は、能動的または受動的な機構のいずれでも実現することができ、断面形状が低い簡単な単一片アセンブリを含む。
【0243】
能動的または受動的な機構のいずれかとして実現し得る、さらに別の改良型安全機構の実施形態では、針の駆動および後退をともに行うことができる単一ばねを有する双安定性板ばね機構を提供することができる。薄いプラスチック片または金属片を使用することによって、いずれの方向にも働くバイアスされたシステムを形成することができる。双安定性ばねによれば、使用者は、安定な抵抗力に打ち勝つだけでよく、他方の安定状態に「スナップ」することにより、高速な配置が実現される。逆に、装置が空になったとき、使用者は、同じ小さな力を加えるだけでよく、この装置が針を後退させる。
【0244】
この実施形態の、さらに別のバージョンでは、(図示しない)薄いプラスチックのコンポーネントを設け、一端でそれを支持し、他端からわずかに圧縮することができる。圧縮側にモーメントが加わると、このプラスチックは、より安定な形態にスナップ式に移行することになる。モーメントが解除されると、このプラスチックコンポーネントは元に返る。このような双安定性ばねは、能動的または受動的な機構として実現することができ、断面形状が低く高速な簡単な単一片アセンブリとして構成できるものである。
【0245】
上記設計実施形態の大部分は、能動的なものにすることができ、それによってそれらを、使用者が展開力を加えることによって、作動部を用いて皮膚を感知することが不要になるという点で簡略化することができる。ボタンその他のそのようなコンポーネントにかかる使用者からの直接の力が、中間ばねその他のコンポーネントなしにマニホールドを移動させることによって後退が実現される極めて多くの考え方がある。
【0246】
上記で説明した改良型安全機構の実施形態に加えて、本発明の別の改善実施形態には、改良型マニホールドばね、改良型充填機構、改良型パッケージ機構、および改良型投与量完了指示機構が含まれる。
【0247】
先に述べたように、患者用針マニホールドは典型的には、注入装置内に配設された1つまたは複数の患者用針マニホールドばねによって解放されたときに前方に付勢される。装置の例が、図37、図38、および図39に関連して示され、説明されている。しかし、図37、図38、および図39のマニホールドばねはさらに、以下でより詳細に説明する図150から図156の改良型ばねを含むことができる。
【0248】
図150から図156に、いくつかの改良型マニホールドばねの実施形態を示す。図150、図151、および図152には、改良型マニホールドばねの第1実施形態の斜視図を示す。図150および図151に、荷重位置または撓み位置でのばねを示し、図152に、解放位置または弛緩位置でのばねを示す。ばね1140は、第1隣接部材1148および第2隣接部材1145を含む。これらの部材は、互いに結合して、図152に示すように弛緩したときにかなりの鋭角を作る。荷重位置にあるとき、第1部材1148は、第2部材1145によって形成された弓形部1144内で固定される。第1部材1148上には大型の直交部材1142が設けられ、装置内の押しボタンと係合して、弓形部1144から第1部材1148を解放し、大きく湾曲した要素1146を介して圧力を加える。
【0249】
動作においては、荷重がかけられたばね1140は、装置内でマニホールド1151の上に位置決めされる。ばね1140は、図34のマニホールド520などの針マニホールド1151の上に位置決めされる。図34では、ばね581は、マニホールド520に力を加えるように設けられるが、ばね1140は、マニホールド520の上に位置決めされ、このマニホールドに力を加えることができる。図150および図151では、ばね1140は、第1部材1148と第2部材1145の係合によって荷重がかけられた状態で保持される。(図示しない)押しボタンが作動されると、直交部材1142は、ボタン部材1159との接触によって係止して、第2部材1148をそれが解放されるまで移動させ、静止している第1部材の弓形部1144から離す。解放されると、第2部材1148のほぼ円形の接触区域1146は、マニホールド1151を駆動する。円形の接触区域1146により、マニホールド1151の中心点のところで、ばね1140の幅全体にわたってばねとマニホールドが確実に接触する。さらに、このように接触することにより、確実にマニホールドが適切に移動する。図153から図156に、改良型マニホールドばねの、さらに他の実施形態を示す。これらのばねは、上記で説明したのとほぼ同様に動作する。
【0250】
図153では、図150の固定用弓形部1144の代わりに、ボタン係合部材1149から延びるかなり大型の部材1147を使用する。ボタンが部材1149と係合すると、上記で説明したのとほぼ同様に、部材1147はばねを解放し、マニホールド1151を前方に押す。同様に、図155では、図150の固定用弓形部1144の代わりに、部材1141と1143の係合を利用し、これらは、解放されたときに、上記で説明したのとほぼ同様に動作する。これらはそれぞれ、誤って解放されないように小型の移動止め手段を含む。
【0251】
図157から図163に、改良型の「ボタンを通して」充填する機構および方法を示す。これは、上記で提示した注入装置の実施形態および改善形態のいずれかとともに利用することができる。
【0252】
図157に示すステップ1に、充填プロセスを示す。装置1150の部分断面図に、液溜め開口1154に隣接して位置決めされた押しボタン1153を示す。穴2153は押しボタン1153に含まれ、そのため、組立後でも、液溜め開口1154を介して装置1150を充填することができる。図158に示すステップ2では、ボタンの穴2153を介して充填した後で、弁アセンブリ1156が液溜め開口1154内で組み立てられる。弁アセンブリ1156は、穴2153を通して組み立てることができ、したがって、ボタン1153を使用して弁1156を作動させるために、穴2153は、何らかのやり方で制限する必要がある。ステップ3では、図159に示すように、ボタン穴2153によるアクセスまたは窓を閉じて弁1156を作動させることができるように、部材1158が設けられる。閉じられると、図160に示すように、押しボタン1153を押して弁アセンブリ1156を作動する準備が整う。
【0253】
本発明の代替実施形態では、開口2153を通して弁1156を挿入し、次いで回転させ、それによってステップ3が完了する。図161および図162のボタン1153の上面図に示すように、弁1156は、ほぼ楕円の断面形状を有するように構成され、そのため、ボタン1153に設けられた同様な形状の穴2153にスライド式に挿入することができる。この楕円断面形状は、図163の断面図に示すように非回転対称になるように設計され、そのため、液溜め開口内で定位置に置かれた後で、弁1156を回転させることにより、弁のフランジがこの開口に対して直角になる。こうすると、押しボタン1153が前方に移動したときに、ボタン1153により、開口2153とともに弁1156が押される。この任意選択肢により、図157から図160で、ボタン窓2153を閉じて弁を作動させるために設けられる部材1158が不要になる。
【0254】
さらに他の改善実施形態は、装置の充填および内容物の指示に関係するものである。図164から図167に示すように、上記で説明した注入装置に投与量終了インジケータを設けることができ、それによって使用者は、薬物が投与されたか、全部でない場合には、どの程度投与されたかどうかがわかる。
【0255】
ある種の注入装置では、使用者が液溜めを通して完全に見ることができるように液溜めを透明することができない。一般に、化学的な相互作用のために、または、水/ガスの透過率が大きいために、液体と合わせて透明な材料を使用することができないとき、解決策の例として、透明材料と非透明材料の組合せを使用することできる。これらの非透明材料は、可撓性の要件のためにアルミニウムで積層した材料、または剛性の要件のために被覆した材料など、任意の数の材料とすることができる。以下で説明する本発明の実施形態は、膜1162用の可撓性非透明材料および剛体透明材料1164からなる液溜め1160を含む。薬物投与の開始と終了を区別する可視インジケータ1166も設けられる。この可視インジケータは、注入の終了時に標識が現れるか、または消えるものとすることができる。
【0256】
図164および図165に示すように、インジケータ1166上に軟質材料で構成された突出浮上り部1168は、可撓性膜1162と接触し、液溜めの内容物のために剛体透明材料1164からはいくらか離れている。しかし、突出浮上り部1168により、可撓性膜1162に目に見える歪みまたは輪郭1169が形成され、それを透明材料1164を通して見ることができる。図164に、このような輪郭1169の例を示す。図166および図167に示すように液溜め1160が空になると、液溜め1160内に内容物がないために剛体透明材料1164と接触することによって突出浮上り部1168は平らになる。そのため、図166に示すように、可撓性膜1162の歪み1169はなくなる。したがって、この実施形態を利用して、分注された流体を直接可視化することができるが、さらに他の実施形態によっても、タイマおよび圧力制御装置/センサを含めて任意の数のやり方で、投与量の終了を示すことができる。
【0257】
上記で説明した本発明の実施形態を提供するために、膜1162として可撓性膜を設ける。注射の開始時に、可撓性膜1162に突出浮上り部1168の「可撓性標識」が当てられ、したがって、突出浮上り部1168に加えられる力は、被膜1162に加えられる力になり、液溜めの内容物は大きくへこみ、したがって、浮上り部1168はわずかしか変形しない。注入マタは注射の終了時または終了時近くで、膜ないし被膜1162は、液溜め1160の硬質透明部分1164と接触し、突出浮上り部1168は、液溜めに押し付けられて圧縮され、突出浮上り部1168の標識は消える。
【0258】
本発明のさらに別の改良型可視インジケータの実施形態では、微小注入装置に別の特徴を組み込んで、薬剤の送達が完了したときに、目に見えるように指示することができる。先に述べたように、注入装置のいくつかの設計には、針マニホールドと、それと組み合わせた類似のコンポーネントとが含まれる。これらは、患者の皮膚の全体的な挿入方向に移動する。次いで、針マニホールドは、患者の皮膚から離れるように移動して後退する。この特徴を、装置の外郭の上部ケースおよび下部ケースに関連させて、このような改良型可視インジケータを提供するために利用することができる。
【0259】
注入プロセス中、下部ケースは患者の皮膚に取り付けられ、上部ケースは、皮膚から最も離れた外郭コンポーネントである。患者または注入装置を使用している人に普通見えるのはこの上部外郭である。注入装置内には、上記で説明したのとほぼ同様に、一般に針マニホールドと称するコンポーネントが配置される。この針マニホールド内には、1本または複数本の微小針または極めて小型のカニューレが恒久的に固定される。この針マニホールドは、様々なやり方で流体液溜めにも取り付けられ、それによって連続的な漏れのない流路が形成される。この経路は、流体が、流体液溜めから1つまたは複数の流体制御装置を介して、針マニホールドおよび微小針の遠位端を通って患者に移動し得るように形成される。
【0260】
薬物送達の注入プロセスの開始時またはその近くで、カニューレが刺され、患者の皮膚に入って、液溜めによって提供される流体、液体、気体、または蒸気の薬剤を送達する。この薬剤は、患者の表皮下の目標領域に送達されるように選択することができる。皮膚を穿刺して薬物を送達し得るように、針マニホールドは、患者の皮膚表面にほぼ直交し、それに向かう方向に、かつ、カニューレの長軸にほぼ平行な方向に、マニホールドばねによって付勢される。先に述べたように、針マニホールドの動きは、回転機構としても設計することができるが、その場合でも、この改良型可視インジケータの実施形態の突出インジケータ要素を組み込むことができる。注入プロセスの終了時またはその近くで、カニューレは、全体的に皮膚から離れる方向に針マニホールドを移動させることによって、かつ/または、前の動きと反対方向に針マニホールドを移動させることによって患者から引き抜かれる。
【0261】
ある実施形態の例での針マニホールドの総移動距離は、約3から6ミリメートル(3mmから6mm)になることがある。しかし、好ましい設計の特徴は、このように移動させる注入装置の高さすなわち「背の高さ」を最小限に抑えることである。他の機能的な要件に関して、針マニホールドは一般に、注入装置内で最も背の高いコンポーネントの1つである。この意味で、「背の高い」方向とは、注入装置が配置される区域において皮膚表面に直交する方向である。これらの理由から、また、必要な動きに対処するために、保管時、使用前、および針マニホールドの移動によりカニューレが皮膚に挿入される前、針マニホールドの上面は、上部ケースの内面の近くにあるか、あるいはそれに接触することになる。注入プロセスが開始されると、針マニホールドは、カニューレの挿入中に、上部ケースの内面から離れるように移動して、上部ケースと針マニホールドの間に隙間または間隙ができる。流体の注入が完了すると、針マニホールドおよびカニューレは後退し、そのため、それらの開始位置に戻る。本発明の実施形態は、針マニホールドの上部に配設された形状を含み、これは、上部ケースの形状を介して患者または使用者の目に見えるものである。
【0262】
第1実施形態では、針マニホールドは、針マニホールドの上面から、かつ/または、上面の上で突出し得る円筒形のプリズム形状またはプリズムに類似の形状とすることができる。この突出形状は、針マニホールド本体と一体に成型することもできるし、針マニホールド本体に取り付けられた別の部分とすることもできる。この突出形状は、可視性を最適化するために、極めて反射率の高いものであり、かつ/または、明るいコントラストの色のものである。
【0263】
全体的な場所および概ねのサイズの点で上記で説明した針マニホールドの突出形状に対応して、開口を、上部ケースを貫通して設けることもできるし、上部ケース内に、またはそれを貫通して嵌められた透明な窓または成型レンズ形状の装置として設けることもできる。針マニホールド上の突出形状は、上部ケース開口内に、またはそれを貫通してスライド式に嵌めるか、透明窓の内部領域上のへこんだポケット区域内にスライド式に嵌ることになる。旋回タイプまたは文字タイプのインジケータに対処するために、より大型の矩形または楕円の形状の窓を上部ケースに設けることができる。
【0264】
先に述べたように、針マニホールド上の突出形状は、可視性を最適化するために、極めて反射率の高いものであり、かつ/または、明るいコントラストの色のものである。さらに他の実施形態では、単純な色のインジケータに、「準備完了」、「OK」、または「開始」などの単語の文字を含めることができる。これらは、ケースの開口または窓のところで見ることができる。
【0265】
さらに、少なくとも1つの追加の部品を追加することによって、2位置式インジケータを有する別の実施形態が可能である。この2位置式または旋回式のインジケータは、注入前には、引用符内の上記テキスト(すなわち、印)を含むことができ、針マニホールドが下まで移動し、戻り行程にあるとき、旋回式インジケータに一体化された、または取り付けられたばねがインジケータを反転させて、「終了」、「完了」、または「除去」の単語などの追加の文字を目に見えるようにすることができる。これらの印を伴う可動形状は、旋回ではなく、針マニホールドに対して相対的にスライドさせることもできる。
【0266】
使用中に、上記で説明した本発明の実施形態では、上部ケースの透明なレンズまたは窓に周囲光を通過させることができ、それが、この窓のくぼんだポケットの近くに、またはその中に配置された突出インジケータ表面から反射する。次いで、この反射光は、窓を通過して戻り、その後、使用者の目がそれを受ける。本質的には、針マニホールドが上部位置または後退位置にあるとき、注入装置のインジケータ窓は、透明なレンズに取り囲まれた明るい物体として見える。このインジケータは、上部ケースの周囲の表面と明確に対比された色として見える。
【0267】
針マニホールドが下がると、または「カニューレ挿入」位置にくると、突出インジケータ形状は、この窓からある程度離れる。この動作モードの間にこの窓を通過する光は、注入装置から全く反射されず、その中で散乱し、したがってこの窓は暗く見える。この際、本発明のこの実施形態は、実際には、流体が注入装置から患者に部分的に、または完全に放出されたかどうかではなく、針マニホールドおよびカニューレの位置を示している。しかし、使用者は他の使用法を用いて、インジケータ窓の目に見える変化を解釈することができる。
【0268】
上記で説明した実施形態は通常、便宜上かつ保護のためにパッケージされる。したがって、本発明のさらに別の改善実施形態では、上記で説明したものなどの事前充填可能な装置を滅菌し、輸送し、除染し、薬品などの内容物を、液体、気体、粉体などとして充填することができるパッケージングシステムが提供される。この装置自体は除染されないが、パッケージ表面は除染される。
【0269】
図168から図175に示すパッケージングシステムは、アレイタイプのパッケージまたはネスト(nest)1170を含む。このパッケージングシステムは、いくつかの事前充填可能な装置1175を規定位置で(すなわち、垂直に)維持し、例えば、柔軟なバッグ1185および1190のような可撓性のもの、またはボックス1180のような剛体のものとし得る外部パッケージを提供する。
【0270】
上記で説明した改善された実施形態を含めて、注入装置の製作後、これらの装置は、図168の空のネスト1170の開口1171に、図169に示すように一杯になるまで、あるいは、図170に示すように部分的に一杯になるまで集めることができる。以下でより詳細に説明するように、各開口はさらに、いくつかのリブ1196を含む。次いで、(完全なパッケージングの例を示す図174に示す)バッグ1185およびバッグ1190、または(完全なパッケージングの例を示す図175に示す)ボックス1180およびバッグ1190などの外部パッケージを提供して、細菌汚染に対する保全性を保証する。バッグ1185の内部は真空にすることができ、バッグ1190の内部は真空にすることもできるし、しなくてもよい。剛体ボックス1180は、Tyvek、紙、被膜、または剛体カバーが含まれるように形成することができ、バッグ1190の内部は真空にすることもできるし、しなくてもよい。典型的には、外部パッケージは、ほこりがこれらのボックスまたはバッグに接触するのを防ぐために追加される、さらに別のパッケージ(すなわち、ほこりカバー)を含むことができる。完全なパッケージ(すなわち、ネスト1170および外部パッケージ)は、γ線放射、エチレンオキシド、電子ビーム、または他の適切な滅菌方法によって滅菌することができる。
【0271】
装置1175を充填する必要があるとき、この完全なパッケージは、無菌環境である充填室に細菌が入らないように外部が除染される。次いで、外部バッグ1190(すなわち、ほこりカバー)を取り外し、外部パッケージング用のボックスまたはバッグ(すなわち、1180または1185)を開いてネスト1170を取り出し、装置1175が入ったネストを(図示しない)充填機械に配置し、次いで、装置1175を充填する。
【0272】
充填プロセスを容易にするために、充填機械は、図173のネストの上面図に示すネスト1170の各開口1171の底面に設けられたリブ1195および1196、ならびに大型開口1198を利用して、図171に示すように装置1175を持ち上げることができる。リブ1195および1196、ならびに開口1198は、装置1175の周りの層流(laminar)の空気の流れを改善し、装置の上部にかかる力が必要とされる場合に装置1175の支持部を提供するために設けられる。さらに、リブ1195を使用して装置1175を保持することができ、リブ1196を使用して装置の中心を出すことができる。特定の充填プロセスでは、図171の矢印で示すように、(図示しない)充填機械の充填ヘッドと装置1175とを整列させるために、正確な位置で装置1175を維持することが必要とされる。図171に示すように装置を上向きに移動させると、装置1175を注意深く整列させるための追加の固定具を充填機械に設けることができる。
【0273】
現在、注射器とともに用いるパッケージが存在する。この場合、注射器は、プラスチックプレートおよび煙突状の部分からなるネスト内に配置され、剛体ボックスで構築された外部パッケージが提供される。本発明の実施形態は、プレートまたは煙突状の部分を含まず、リブ1195および1196の構成しか含まない。リブ1195および1196を使用することにより、確実に前面が低くなり、層流の空気の流れを室内に存在させて装置1175の周りを流すことができ、上記で説明した持上げが可能になることに加えて充填の質が改善される。
【0274】
上記で説明した実施形態に関連する他の利益は、外部パッケージの一部として、剛体ボックス1180の代わりに可撓性バッグ1185を設けることができ、次いで、バッグ1185内を真空にして、パッケージの完全性の可視インジケータを提供できることである。このバージョンでは、真空が失われることは、完全性が失われることを示す。さらに、可撓性バッグ1185は、ボックス1180よりも形成するのにコストがかからない。好ましい実施形態では、ネスト1170および真空化されない外部バッグ1185、ならびに、ごみが第1のバッグに接触するのを防止するための、やはり真空化されない追加の第2のバッグ1190による構成が提供される。
【0275】
以上、本発明の実施形態のいくつかの例だけを詳細に説明してきたが、これらの実施形態の例において、本発明の新規な教示および利点から大きく逸脱することなく、多くの改変形態が可能であることが当業者には容易に理解されよう。したがって、本発明の範囲には、このようなすべての改変形態が含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚内に、または患者の皮膚を貫通して注射することによって患者の身体に薬剤を送達する装置であって、
底面および上面ならびに長軸を有するハウジングと、
組織に貫入するように適合された注射針と、
前記ハウジング内に配設され、前記薬剤を収容するチャンバ(150、287、710)を形成する液溜めであって、前記注射針と選択的に流体連通する液溜と、
中央開口を有し、前記液溜めと選択的かつ動作可能に係合する円板状のばねと、
前記ハウジング内に配設され、第1端部および第2端部ならびに長軸を有する作動部材であって、前記第2端部が、前記円板状のばねの前記中央開口に対して出し入れされるように適合されたピンを有し、当該作動部材が、前記ピンが前記円板状のばねの前記中央開口内に配設される第1位置と、前記ピンが前記円板状のばねの前記中央開口から取り外される第2位置とを有する、作動部材と、
を具え、
前記作動部材は、取り外す力を加えることによって前記第2位置に移動することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記作動部材が前記第2位置にあるとき、前記円板状のばねは、前記液溜めを加圧することができ、それによって前記薬剤が放出されて前記針を通って前記患者に入ることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記液溜めは、実質的に剛体のプレートおよび前記剛体プレートに結合された実質的に可撓性の膜からなることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記ピンは、前記円板状のばねの前記中央開口内で、摩擦によって少なくとも部分的に保持されることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記ピン上に配設され、前記円板状のばねと係合する移動止めをさらに具えたことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記ピンおよび移動止めは分割され、それによって、前記円板状のばねの前記中央開口から前記ピンを取り外す前記力が小さくなることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記ピンは分割され、それによって、前記円板状のばねの前記中央開口から前記ピンを取り外す前記力が小さくなることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記作動部材の前記第1端部と前記第2端部の間に配設された支点をさらに具え、それによって前記作動部材がレバーになり、前記作動部材の前記第1端部に加えられる第1の力が前記作動部材に伝達されて、前記円板状のばねから前記ピンを取り外す前記力が生成されることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記作動部材の前記長軸にほぼ平行な経路内で移動可能なボタンをさらに具え、前記ボタンは、前記作動部材の前記第1端部と係合する傾斜を有し、それによって、前記傾斜が、前記作動部材の前記第1端部が係合する傾いた面を形成し、前記作動部材に向かう前記傾斜の移動が、前記作動部材の前記第1端部に反力を加え、該反力が、前記作動部材を介して伝達されて前記円板状のばねから前記ピンを取り外す前記力が生成されることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記支点は、前記作動部材上に配設されることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記支点は、前記作動部材上に配設され、前記円板状のばねと係合することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記支点は、弓側経路に沿って配設されることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記支点は、前記円板状のばねの放射状部分に沿って少なくとも20度で配設されることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記支点は、前記作動部材の前記第2端部と、前記作動部材の前記第1端部と第2端部の中点との間に配設されることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記円板状のばねは、当該円板状のばねの前記中央開口から延びる複数の放射状の空隙を有し、支点は、少なくとも1つの空隙にかかるように放射状に配設されることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項16】
患者の皮膚内に、または患者の皮膚を貫通して注射することによって患者の身体に薬剤を送達する装置であって、
患者の皮膚に接触するように適合された底面、前記装置の使用中に前記患者が見ることができる上面、および長軸を有するハウジングと、
組織に貫入するように適合された注射針と、
前記ハウジング内に配設され、前記薬剤を収容するチャンバ(150、287、710)を形成する液溜めであって、前記注射針と流体連通する液溜めと、
円板状のばねであって、該円板状のばねが、第1の面および第2の面、中央部分、ならびに前記円板状のばねの前記中央部分から延びる少なくとも1つの放射状の空隙を有し、前記円板状のばねが、開始位置および終了位置を有する、円板状のばねと、
前記中央部分から放射状に延び、前記円板状のばねの少なくとも前記第1の面上で前記円板状のばね内の前記少なくとも1つの空隙をほぼ覆うばねカバーと、
を具えたことを特徴とする装置。
【請求項17】
前記液溜めは、実質的に剛体のプレートおよび前記剛体プレートに結合された実質的に可撓性の膜からなり、前記ばねカバーは、前記可撓性膜と接触することを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記ばねカバーは、エラストマ材料からなることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ばねカバーは、前記剛体プレートの幾何形状に一致するように適合され、それによって、前記円板状のばねが第2位置にあるときに、前記液溜め内の空所がなくなることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記剛体プレートは、ほぼ透明な材料からなることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記ばねカバーは、エラストマ材料からなることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記ばねカバー上に配設された少なくとも1つの指示突起をさらに具え、前記円板状のばねが前記開始位置にあるとき、前記指示突起は、前記可撓性膜に接触して、前記可撓性膜内に前記剛体プレートを通して見ることができるくぼみを形成し、前記円板状のばねが前記終了位置にあるとき、前記指示突起によって形成された前記くぼみは、前記剛体プレートに押し付けられて、前記剛体プレートを通して見えなくなることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの指示突起は複数の突起であることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記複数の突起は印を形成して、前記装置の状態を示すことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
患者の皮膚内に、または患者の皮膚を貫通して注射することによって患者の身体に薬剤を送達する装置であって、
患者の皮膚に接触するように適合された底面、および目視窓を有する上面を有するハウジングと、
組織に貫入するように適合された注射針と、
前記ハウジング内に配設され、ほぼ透明な材料および前記ほぼ透明な材料に結合された実質的に可撓性の膜から構成される上部膜からなり、前記薬剤を収容するチャンバ(150、287、710)を形成する液溜めであって、前記注射針と流体連通する、液溜と、
液溜めに接触する表面を有する圧力生成システムであって、開始位置および終了位置を有し、前記液溜め接触表面が弾性部分を有する、圧力生成システムと、
前記弾性部分上に配設された少なくとも1つの指示突起であって、前記圧力生成システムが前記開始位置にあるとき、当該指示突起が、前記可撓性膜に接触して、前記可撓性膜内に前記上部膜および前記目視窓を通して見ることができるくぼみを形成し、前記圧力生成部材が前記終了位置にあるとき、前記くぼみは見えなくなる、少なくとも1つの指示突起と、
を具えたことを特徴とする装置。
【請求項26】
前記指示突起によって形成された前記くぼみは、前記上部膜に押し付けられ、前記上部膜を通して見えなくなり、それによって、前記圧力生成システムが第2位置にあることを示すことを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記少なくとも1つの指示突起は複数の突起であることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記複数の突起は印を形成して、前記装置の状態を示すことを特徴とする請求項27に記載の装置。
【請求項29】
患者の皮膚内に、または患者の皮膚を貫通して注射することによって患者の身体に薬剤を送達する装置であって、
患者の皮膚に接触するように適合された底面、前記底面内の針開口、および上面を有するハウジングと、
組織に貫入するように適合された注射針と、
前記ハウジング内に配設され、前記薬剤を収容するチャンバ(150、287、710)および旋回軸を形成する液溜めであって、前記注射針と流体連通する、液溜めと、
前記液溜めを加圧する加圧システム(130、283、435、735)と、
前記ハウジング内に配設され、前記液溜めを保持する旋回機構であって、該旋回機構が、前記ハウジング内で当該旋回軸の周りで前記液溜めを回転させることができ、また、前記旋回機構が、前記注射針が前記ハウジング内にある第1位置と、前記注射針が前記ハウジングの前記針開口から突き出る第2位置とを有する、旋回機構と、
を具え、
前記旋回機構は、前記第1位置から前記第2位置に移動し、前記加圧システムは、前記液溜めを加圧することができ、それによって、前記薬剤が放出されて前記針を通って前記患者に入ることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図49】
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【図64】
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【図76】
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【図78】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92】
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【図94】
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【図96】
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【図97】
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【図98】
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【図99】
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【図100】
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【図101】
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【図102】
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【図103】
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【図104】
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【図105】
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【図106】
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【図107】
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【図108】
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【図109】
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【図110】
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【図111】
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【図112】
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【図113】
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【図114】
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【図115】
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【図116】
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【図117】
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【図118】
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【図119】
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【図120】
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【図121】
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【図122】
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【図123】
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【図124】
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【図125】
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【図126】
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【図127】
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【図128】
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【図129】
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【図130】
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【図169】
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【図170】
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【図171】
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【図172】
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【図173】
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【図174】
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【図175】
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【公開番号】特開2012−71154(P2012−71154A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248925(P2011−248925)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2006−523355(P2006−523355)の分割
【原出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】