説明

パネルユニット

【課題】 本発明の目的は止水性と施工性との向上を図ることのできるパネルユニットを提供することにある。
【解決手段】オープンジョイントで配置されるパネルユニット10a,10bにおいて、支持本体18a,18bとパネル16a,16bとを備え、該支持本体18a,18bは、下地14への取付部22a,22b、該パネル16a,16bのパネル受部24a,24b及びジョイント部26a,26bが一体的に形成され、該取付部22a,22bは該支持本体18a,18bにおける下地対向部にて該支持本体18a,18bの側部よりも外側に張出し、該パネル受部24a,24bは該支持本体18a,18bにおける外装パネル対向部に形成され、該ジョイント部26a,26bは該支持本体18a,18bの側部における高さ方向中間位置にて該側部よりも外側に張出し、また隣合うジョイント部26a,26bの間隙30の大きさ(W)よりも大の幅(W)を持ち、該間隙30及び該ジョイント部26a,26bをパネル側より覆う止水カバー28を備えたことを特徴とするパネルユニット10a,10b。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパネルユニット、特に外装パネルの支持機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外壁、屋根等に複数のパネルを設ける際、隣り合うパネルとパネルとの間隙、つまり目地には、雨水等の進入を防ぐためシーリング材を充填するのが一般的であった。
これに対し、最近は、シーリング材を用いないオープンジョイント工法が注目されている(例えば特許文献1参照)。これは、パネルの目地をシーリング材で密閉せずに間隙をあけておき、別途、止水対策を行うものである。
【0003】
止水対策としては、例えば各パネルユニット間の外周囲にリング状のパッキンを設け、隣り合うパネルユニットのパッキンを側壁方向にしっかりつき合せることにより、隣り合うパネルユニットとパネルユニットとの間の止水を試みる技術がある。
【特許文献1】特開平7−3921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記オープンジョイント工法であっても、止水性のより一層の改善が望まれると共に、施工性の改善の余地も残されていたものの、従来は、これを同時に解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
すなわち、前記特許文献1等では、隣り合うパッキン同士を、しっかり側壁方向につき合せて設けることで隣り合うパネルユニット間を止水している。
【0005】
ここで、止水性を高めるために隣り合うパネルユニットの間隙をより狭めることが考えられるが、施工が難しくなってしまう。一方、施工性を高めるために隣り合うパネルユニットの間隙をより広げることが考えられるが、隣り合うパッキンとパッキンとの間に間隙が生じ、雨水等が進入してしまうことがある。
【0006】
さらに、パネルユニットにおいては、工事後も、その設置状態を良好に維持することも重要である。しかしながら、従来は、これを解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その第一の目的は、止水性の向上と施工性の向上とを同時に図ることのできるパネルユニットを提供することにある。 また本発明の第二の目的は、加えて設置状態を良好に維持することのできるパネルユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<一重箱構造>
前記第一の目的を達成するために本発明にかかるパネルユニットは、下地に対して複数の外装パネルをオープンジョイント工法で配置するのに用いられるパネルユニットにおいて、前記各パネルユニットは、それぞれ支持本体と、外装パネルと、を備える。前記支持本体は、取付部、パネル受部、及びジョイント部が一体的に形成される。また止水カバーを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記取付部は、前記支持本体における下地対向部にて該支持本体の側部よりも外側に張り出すように形成される。該取付部は、前記支持本体を前記下地に取り付けるためのものである。
また前記パネル受部は、前記支持本体における外装パネル対向部に形成される。該パネル受部は、隣り合うパネルユニットの外装パネルに対して間隙をおいて自身の外装パネルを保持するためのものである。
【0009】
前記ジョイント部は、前記支持本体の側部における高さ方向中間位置にて該支持本体側部よりも外側に張り出すように形成される。該パネル受部は、隣り合うパネルユニットのジョイント部に対して間隙を有すものである。
前記止水カバーは、隣り合うパネルユニットのジョイント部とパネルユニットのジョイント部との間隙の大きさよりも大きい幅を持つ。該止水カバーは、該間隙及びこれらのジョイント部を外装パネル側より覆う、止水を行うためのものとする。
ここにいう下地とは、例えば建築物の壁、屋根等の一次下地の場合と、該一次下地に対して設けられた二次下地の場合とを含めていう。
【0010】
なお、本発明においては、取付部材と、取付穴と、を備える。前記取付部は、前記支持本体側部よりも外側に向けて下り勾配が形成されている。前記取付穴は、前記下り勾配部と略直交する方向に向けて形成されている。前記取付部材は、前記取付穴に対し前記下り勾配部と略直交する方向より通され、前記下地に対して前記支持本体を取り付けていることが好適である。
【0011】
ここで、前記取付部材は、前記下地に対して前記支持本体を取り付けるためのものとする。
また前記取付穴は、前記取付部に設けられ、前記取付部材を通すためのものとする。
【0012】
<層間変形対応固定機構>
また前記第二の目的を達成するために本発明にかかるパネルユニットおいては、取付部材と、取付穴と、を備える。前記取付穴の径は、前記下地に対し前記支持本体が、隣りのパネルユニット方向に所定の許容距離だけ動き得るように、該許容距離に基づいて定められた分だけ、前記取付部材の軸径よりも大きくする。前記支持本体のジョイント部は、前記止水カバーに対し摺動自在であることが好適である。
ここで、前記取付部材は、前記下地に対して前記支持本体を取り付けるためのものとする。
また前記取付穴は、前記取付部に設けられ、前記取付部材を入れるためのものとする。
【0013】
なお、本発明においては、前記止水カバーの幅が、前記取付穴の大きさ、及び前記隣り合うパネルユニットのジョイント部とパネルユニットのジョイント部との間隙の大きさに基づいて定められることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
<一重箱構造>
本発明にかかるパネルユニットによれば、下地への取付部、外装パネルのパネル受部、及びジョイント部が一体的に形成された支持本体と、隣り合うパネルユニットのジョイント部とジョイント部との間隙よりもやや大きい幅を持つ止水カバーとを備えることとしたので、オープンジョイント工法における、止水性の向上と施工性の向上を同時に図ることができる。
なお、本発明においては、取付部材が、取付穴に対し下り勾配部と略直交する方向より
通され、下地に対して支持本体を取り付けることにより、さらに施工性の向上を図ることができる。
【0015】
<層間変形対応固定機構>
本発明においては、下地に対して支持本体が、隣りのパネルユニット方向に所定の許容距離だけ動き得るようにしていることにより、パネルユニットの良好な設置状態を確実に維持することができる。
なお、本発明においては、止水カバーの幅を、取付穴の大きさ及び隣り合うパネルユニットのジョイント部とジョイント部との間隙の大きさに基づいて定めることにより、パネルユニットの良好な設置状態を、より確実に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
<一重箱構造>
図1には本発明の一実施形態にかかるパネルユニットの概略構成が示されている。
なお、同図(A)は複数のパネルユニットの配置状態をパネル側より見た図、同図(B)は同図(A)に示したパネルユニット群の一部の断面図である。
また本実施形態においては、複数のパネルユニット、例えば同図(A)に示されるようにパネルユニット10a,10b,10c,10dが、オープンジョイントで配置されているが、各パネルユニットは同じものを用いているので、例えばパネルユニット10a,10bを用いて説明する。
【0017】
すなわち、同図(B)に示すパネルユニット10a,10bは、壁、屋根等の一次下地12に設けられた二次下地(下地)14に対して、複数の外装パネル16a,16bをオープンジョイント工法で配置するのに用いられる。
前記各パネルユニット10a,10bは、それぞれ支持本体18a,18bと、外装パネル16a,16bとを備える。
前記支持本体18a,18bは、それぞれ取付部22a,22b、パネル受部24a,24b、及びジョイント部26a,26bが一体的に形成される。前記支持本体18a,18bは、例えば軽量で、強度や耐久性にも優れたアルミニウム等の金属製のものを用いている。
【0018】
前記取付部22a,22bは、それぞれ支持本体18a,18bにおける下地対向部にて、支持本体18a,18bの側部よりも外側に張り出すように形成される。取付部22a,22bは、支持本体18a,18bを二次下地14に取り付けるためのものである。
前記パネル受部24a,24bは、支持本体18a,18bにおける外装パネル対向部に形成される。パネル受部24aは、隣り合うパネルユニット10bの外装パネル16bに対して間隙をおいて自身の外装パネル16aを保持するためのものである。
【0019】
前記ジョイント部26a,26bは、支持本体18a,18bの側部における高さ方向中間位置にて、支持本体18a,18bの側部よりも外側に張り出すように形成される。 このジョイント部26aは、隣り合うパネルユニット10bのジョイント部26bに対して間隙30の大きさ(W)を有するものである。
また本実施形態においては、止水を行うための、止水カバー28を備える。
この止水カバー28は、隣り合うパネルユニット10aのジョイント部26aとパネルユニット10bのジョイント部26bとの間隙30の大きさ(W)よりも大きい幅(W)を持つ。
【0020】
止水カバー28は、軽量で、強度や耐久性にも優れたアルミニウム等の金属製等よりなり、間隙30及びこれらのジョイント部10a,10bをパネル側より覆う。止水カバー28のVミゾは、二次下地14に対して、皿ビス(固定部材)32により固定されている。止水カバー28のVミゾに、皿ビス等の皿ビス32を設けることにより、止水ラインとパネル固定とを同時に行う。
【0021】
なお、本実施形態においては、二次下地14に支持本体18a,18bを取り付けるため、パネルユニット10a,10bは、それぞれ取付ねじ(取付部材)34a,34bと、本体側取付穴(取付穴)36a,36bとを備える。
ここで、本体側取付穴36a,36bは、それぞれ取付部22a,22bに設けられ、取付ねじ34a,34bを通すためのものとする。
【0022】
また二次下地14には下地側取付穴38a,38bが形成されている。
取付ねじ34a,34bは、それぞれ本体側取付穴36a,36bに通され、下地側取付穴38a,38bに支持本体18a,18bを取り付けている。
【0023】
本実施形態にかかるパネルユニット10a,10bは概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
施工性と止水性
<一重箱構造>
本実施形態においては、二次下地14への取付部22a、外装パネル16aのパネル受部24a、及びジョイント部26aが一体的に形成された支持本体18aと、隣り合うパネルユニット10aのジョイント部26aとパネルユニット10bのジョイント部26bとの間隙30の大きさ(W)よりも、やや大きい幅(W)を持つ止水カバー28とを備えている。
【0024】
この結果、本実施形態においては、施工性の向上と止水性の向上とを同時に図ることができる。特に取付部22a、パネル受部24a、及びジョイント部26aが一体的に形成された支持本体18aを用いているので、施工性の向上が図られる。
すなわち、通常は、支持本体を、二次下地への取付体と、外装パネルのパネル受体とに別体化しておくことが考えられる。これを、二重箱構造という。このような二重箱構造において、パネルユニットの設置の際は、二次下地に対して取付体を取り付ける第一取付工程を行う。次にこの取付体に対してパネル受体を設ける第二取付工程を行うことにより、二次下地に対するパネルユニットの設置が行える。
【0025】
これに対し、本実施形態においては、取付部22a、パネル受部24a、及びジョイント部26aが一体的に形成された支持本体18aを用いている。これを、一重箱構造という。本実施形態においては、このような一重箱構造を採用しているので、二次下地14に支持本体18aの取付部22aを取り付けることにより(第一取付作業のみ)、二次下地14に対するパネルユニット10aの設置が行える。
したがって、本実施形態においては、二重箱構造のものに比較し、作業数を大幅に低減しており、オープンジョイント工法によるパネルユニットの設置工事が楽となる。
【0026】
さらに、本実施形態においては、隣り合うパネルユニット10aのジョイント部26aとパネルユニット10bのジョイント部26との間隙30の大きさ(W)よりもやや大きい幅(W)を持つ止水カバー28を備えている。このような止水カバー28により、間隙30及びこれらのジョイント部10a,10bをパネル側より覆うので、間隙30を確実に閉塞している。
このため本実施形態においては、例えば従来方式に比較し、オープンジョイント工法によるパネルユニットの止水性を、より確実に得ることもできる。
【0027】
<取付部材>
ところで、一重箱構造において、より施工性を向上させるために、取付ねじ34a,34bによる支持本体18a,18bの取付けについては、以下に示されるような工夫をすることも重要である。
すなわち、通常は、取付ねじを、下地に対し直交する方向より設けることが考えられるが、二重箱構造では、この段階でパネル受材が設けられていないので、作業性に問題はない。
【0028】
一方、一重箱構造においては、これらが一体的に形成されているので、取付部22a,22bに対して取付ねじ34a,34bを設ける際は、ジョイント部26a,26bの張り出しや、パネル受部24a,24bの張り出しが邪魔となることがある。これにより、作業性を低下させることがあり、またパネルユニット10a,10bに傷を付けてしまうこともある。
【0029】
ここで、一重箱構造においては、隣り合うパネルユニット10a,10bの間隔を広げ、これらの不具合を解消することも考えられるが、設計の自由度が低くなることがある。
そこで、本実施形態のような一重箱構造においては、下地に支持本体を取り付けるための取付ねじ34a,34bを、一般的な直交方向(外装パネル面に対して直交する方向である外装パネルの厚み方向)に対しやや斜め方向より設けている。
【0030】
このために本実施形態においては、取付部22a,22bは、それぞれ支持本体18a,18bの側部よりも外側に向けて下り勾配部40a,40bが形成されている。
また支持本体18a,18bの取付穴36a,36bと、二次下地14の取付穴38a,38bとは、それぞれ下り勾配部40a,40bと略直交する方向に向けて形成されている。
【0031】
この結果、本実施形態においては、取付ねじ34a,34bを、それぞれ斜め方向(下り勾配部40a,40bと略直交する方向)より、取付部22a,22b及び二次下地14に通すことにより、二次下地14に対して支持本体18a,18bを取り付けることができる。
これにより、本実施形態においては、取付ねじ34a,34bを直交方向より設けるものに比較し、特に施工性が向上されるので、パネルユニット10a,10bに傷を付けることなく、施工性と設計の自由度とを、より高いレベルでバランスさせることができる。
【0032】
<下地>
ところで、パネルユニットにおいて、より施工性を向上させるために、下地の選択については、以下に示されるような工夫をすることも重要である。
すなわち、通常は、建築物の壁や屋根等の一次下地12に直接、パネルユニット10a,10bを設けるのではなく、一次下地12に二次下地14を設け、この二次下地14上にパネルユニット10a,10bを設けている。この二次下地14としては、通常、断面略口字型のフレーム(通し目地となる例えばアルミ型材等の目地材)を用いているが、これを一次下地12上で両端支持する必要がある。
【0033】
これに対し、本実施形態においては、二次下地14として、断面略L字型のフレームを用いている。
このため、本実施形態においては、二次下地14が軽くなるので、二次下地14を一次下地12上に片持ち支持することができる。また本実施形態においては、二次下地14の軽量化に伴い、一次下地12に二次下地14を固定するためのボルト等の固定部材を設ける間隔を、一般的な両端支持のものに比較し広く設定することができる。
これにより、本実施形態においては、パネルユニット10a,10bの取付強度を充分に確保しながら、工事の負担が大幅に軽減される。
【0034】
<配置>
パネルユニットの設置の際は、作業性を向上させるために、設置者の足場を確保することも必要である。
このため本実施形態においては、設置者の足場を確保するのに必要なボルト等の固定部材50を、一次下地12に設ける際、例えば同図(A)に示されるような四のパネルユニット10a,10b,10c,10dの中心に、固定部材50を設けている。
【0035】
また各止水カバー28も、固定部材50に対応する位置を除いて略十字状に設けている。
これにより、通常は足場の確保が困難なオープンジョイント工法においても、本実施形態においては、充分に足場を確保しながら、パネルユニットの設置が容易に行えるので、施工性が向上される。
【0036】
<支持本体>
また本実施形態においては、前記パネルユニットの設置工事の前段において、支持本体を予め以下のようにして構成しておくことも、前記パネルユニットの設置工事の際の効率化を図る上で重要である。
図2には支持本体の主要な構成部材の概略構成が示されている。なお、同図(A)は主要な構成部材の横断面図、同図(B)は主要な構成部材の縦断面図である。
【0037】
まず同図(A)に示されるように、一の支持本体18aは、四の構成部材52,54,56,58より構成されている。これらの構成部材52,54,56,58を組み立てる際は、以下の固定具を用いることが好適である。
例えば二の構成部材52,54の内壁の角部には、それぞれ凹部60を設けられている。この凹部60に、一のL字型固定具(補強材)62を設ける。
【0038】
次にボルト64を締めると、固定具62が矢印A方向に移動して押される。さらに、ボルト64を締め、固定具62が矢印A方向に押されると、固定具62が、構成部材52,54の突起部66に当たり、矢印B方向の力もかかる。
これを、構成部材52のボルト64と構成部材54のボルト64とについて行うことにより、固定具62が構成部材52,54の角部にて突っ張られた状態で固定されるので、構成部材52,54をしっかり固定することができる。これを、他の各角部について行うことにより、構成部材52,54,56,58から、一の支持本体18を容易に構成することができる。
【0039】
<排水性>
本実施形態においては、ジョイント部26a及び止水カバー28により形成されるオープンジョイント70aが、雨水等の水や空気をパネルユニットより速やかに排出する役割を果たしている。
ここで、ジョイント部の周縁部は、それぞれ内側に突出させることにより、つまりジョイント部26aの周縁部を前記図1(B)中、上方に突出させることにより、樋の形状をより顕著に構成するので、前記パネルユニットの排水性が更に向上されるものと考えられる。
【0040】
これに対し、本実施形態においては、以下の理由から、前記図1(B)に示されるように、各ジョイント部の周縁部をやや外側に突出させること、つまりジョイント部26aの周縁部を、前記図1(B)中、下方にやや突出させることが好ましい。
第一に、前記図1(B)に示されるようなジョイント部26a,26bの周縁部を外側に突出させたものでも、充分な排水性が得られることがわかったからである。
第二に、ジョイント部26a,26bの周縁部を内側に曲げると、それに合わせて、止水カバー28の幅(W)も大きくなる。
【0041】
ここで、止水カバー28をジョイント部26a,26bに設置する際は、隣り合うパネルユニット10aのパネル受部24aとパネルユニット10bのパネル受部24bとの間を通す必要があるので、止水カバー28が大きくなると、パネル受部24a,24bやジョイント部26a,26bに接触してしまうことがある。
そして、ジョイント部26a,26bの周縁部をやや外側に突出させることにより、前述のような不具合の発生を大幅に低減することのできる効果が、前記排水性の効果に比較し、非常に大きくなるからである。
【0042】
パネルユニットの取付状態
<層間変形対応固定機構>
またパネルユニットにおいては、工事後も、その設置状態を良好に維持することも重要である。
すなわち、従来は、パネルユニットの良好な設置状態を維持するためには、工事の際に下地に対してパネルユニットが全く動かないようにしっかり固定することが重要であると考えられてきた。
【0043】
しかしながら、工事後の、使用中において、風や下地の変形等により、パネルユニットに対して幅方向(隣りのパネルユニット方向)の力がかかると、パネルユニットと下地との取付部分に無理な力がかかり、パネルユニットの設置状態に不具合を生じることがある。
そこで、本実施形態においては、下地に対する支持本体の固定に、前述のように下り勾配部40a,40bの取付穴36a,36b等を含む層間変形対応固定機構74を採用している。
すなわち、下り勾配部40a,40b(パネルビス打ち部ともいう)に、取付穴36a,36b(ルーズホールともいう)を設けており、例えば4〜6ヶ所で取付ねじ(斜め打ち用のコマともいう)を使用して仮固定を行う。本実施形態においては、層間変形対応固定法の採用により、一般的な固定法に比較し、仮固定のビス打本数が大幅に軽減される。
【0044】
このために本実施形態においては、二次下地に対して支持本体が、隣りのパネルユニット方向に所定の許容距離だけ動き得るように構成している。
本実施形態においては、図3(A)に示されるように、例えば取付穴36aの径φを、前記許容距離に基づいて定められた分だけ、取付ねじ34aの軸径φよりも大きくしている。
【0045】
また本実施形態において、止水カバー28は、二次下地14に固定されているのに対し、パネルユニット10a,10bは、二次下地14と止水カバー28との間で摺動自在としている。
この結果、本実施形態においては、初期状態では、同図(B)に示されるような配置であるが、風や下地の変形等により、例えばパネルユニット10aに対して図中右方の力がかかると、同図(C)に示されるような配置となる。
【0046】
すなわち、二次下地14と止水カバー28とに対し支持本体18aが、前記パネルユニット10aにかかる図中右方の力を吸収することのできる方向、つまり隣りのパネルユニット10bの方向(図中右方)にやや動く。これにより、パネルユニット10aと二次下地14との取付部分にかかる無理な力を吸収することができるので、工事後も、その良好な設置状態を、より確実に維持することができる。
【0047】
<止水カバー>
なお、本実施形態においては、前述のようにパネルユニットを移動自在としても、パネルユニットにおける止水性を、充分に維持することも非常に重要である。
そこで、本実施形態においては、止水カバー28の幅(W)を、取付穴36a,36bの径の大きさ(許容距離)、及び隣り合うパネルユニット10aのジョイント部26aとパネルユニット10bのジョイント部26bとの間隙30の大きさ(W)に基づいて定められたものとしている。
【0048】
例えば止水カバー28の幅(W)は、ジョイント部26aとジョイント部26bとの間隙30の大きさが、最大値を示す状態においても、間隙30、及びこれらのジョイント部26a,26bを完全に閉塞するように設計されている。
このため、本実施形態においては、二次下地14に対し支持本体18aが、隣りのパネルユニット10bの方向に、許容距離内で動いても、止水カバー28と支持本体18aのジョイント部26aとの間に摺動が生じるだけであり、止水カバー28はしっかり固定されている。これにより、本実施形態においては、必ずジョイント部26aとジョイント部26bとの間隙30を完全に閉塞している。
したがって、本実施形態においては、パネルユニットの設置状態の維持と止水性の維持とを、より確実に得ることができる。
【0049】
変形例
本発明は前記構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内であれば、種々の変形が可能である。
本実施形態において特徴的な層間変形対応固定機構74の設置場所としては、例えば図4に示されるようなところが、より好ましい。
すなわち、同図に示されるように層間変形対応固定機構74を、例えばパネルユニット10aの4箇所に設置する。これにより、同図では、図中、紙面と平行方向の層間変形に対応することができる。
なお、一体型パネルが図中破線で示される90度曲げパネル10となった場合は、図中破線で示される層間変形対応固定機構74が発生する。
【0050】
<パネル目地交差部>
パネル目地交差部の形状は、任意のものを採用することができる。例えば図5に示されるような十字型のパネル目地交差部76を用いることができる。このパネル目地交差部76は、その中央部をビス50を露出させた状態で、ビス止めする。またこのパネル目地交差部76の止水に関しては、シリコンスポンジゴムを併用することも好ましい。
なお、このパネル目地交差部76の形状は、そのほか、T型、L型等のものを用いることができる。
【0051】
<ビス隠し部材>
また止水カバー28に皿ビス32の打ち込み後、さらにビス隠し部材80を設けることも好ましい。
このビス隠し部材80は、図1に示されるように止水カバー28とは別体化とすることもできるが、一体型とすることが、より好ましい。
この一体型のものは、止水カバー28に対し、ビス隠し部材80が開閉(曲げ込み)自在に設けられている。また皿ビス32の打ち込み後、ビス隠し部材80を閉の状態とする時は、止水カバー28とビス隠し部材80とがかんだ状態となるように、ビス隠し部材80を止水カバー28にきっちり止めている。このようにビス隠し部材80を止水カバー28に対し曲げ込み自在なタイプとすることが、ビス隠し設置作業の容易化の点で、より好ましい。
【0052】
<補強材>
前記構成では、支持本体18aの補強材として、すみ金具を用いた。すなわち、支持本体18aを構成する四の構成部材52,54,56,58の各四隅(側壁側)に、すみ金具等よりなるL字型固定具(補強材)62を設けた例について説明した。しかしながら、本発明における、支持本体18aの補強材としては、これに限定されるものでなく、構成部材52,54,56,58の各角部(正面側ないし背面側)に、例えば直角金具等よりなる補強材を設けることも、支持本体18aの強度向上の点で、より好ましい。
【0053】
<使用例>
実際に本実施形態のオープンジョイントパネルゾーン(本実施形態のオープンジョイントパネル群)を建物に設ける際は、オープンジョイントパネルゾーンのみで構成するよりも、一般パネルゾーン(シーリングタイプパネル群)と同時に使用することが好ましい。
本実施形態においては、例えば図6に示されるように、前記オープンジョイントパネルゾーン84と、前記一般パネルゾーン86と、これらのパネル84,86間の取り合を行う中間パネルゾーン88とを共通化して、建物への使用を現実化することが好ましい。
なお、同図(A)はパネルゾーンを上方より見た図、同図(B)は同図(A)に示したパネルゾーンのA−A´断面図、同図(C)は同図(A)に示したB−B´断面図である。 同図において特徴的な中間パネルゾーン88は、中間パネル90と、オープンジョイントパネル対応アタッチメント92と、一般パネル対応アタッチメント94とを備える。
ここで、前記中間パネル90は、例えば枠材で四周を回して作成されたパネルとする。
また前記オープンジョイントパネル対応アタッチメント92は、中間パネル90のオープンジョイントパネル対応部に設けられ、オープンジョイントパネルゾーン84との取り合いを行う。
前記一般パネル対応アタッチメント94は、中間パネル90の一般パネル対応部に設けられ、一般パネルゾーン86との取り合いを行う。
なお、同図においては、一般パネルゾーン86と中間パネルゾーン88との間にシール96を設け、オープンジョイントパネルゾーン84と中間パネルゾーン88との間にオープンジョイント用目地棒28を設けることで、各パネルゾーンを一体的に取り扱えるようにしてあることも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態にかかるパネルユニットの概略構成の説明図である。
【図2】前記図1に示したパネルユニットの支持本体の説明図である。
【図3】前記図1に示したパネルユニットの層間変形対応固定機構の作用の説明図である。
【図4】前記図1に示したパネルユニットの層間変形対応固定機構の設置場所の説明図である。
【図5】前記図1に示したパネルユニットのパネル目地交差部の説明図である。
【図6】前記図1に示したパネルユニットの使用例の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
10a,10b パネルユニット
14 二次下地(下地)
16a,16b 外装パネル
18a,18b 支持本体
22a,22b 取付部
24a,24b パネル受部
26a,26b ジョイント部
28 止水カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に対して複数の外装パネルをオープンジョイント工法で配置するのに用いられるパネルユニットにおいて、
前記各パネルユニットは、それぞれ支持本体と、外装パネルと、を備え、
前記支持本体は、取付部、パネル受部、及びジョイント部が一体的に形成され、
前記取付部は、前記支持本体における下地対向部にて該支持本体の側部よりも外側に張り出すように形成され、前記支持本体を前記下地に取り付けるためのものであり、
前記パネル受部は、前記支持本体における外装パネル対向部に形成され、隣り合うパネルユニットの外装パネルに対して間隙をおいて自身の外装パネルを保持するためのものであり、
前記ジョイント部は、前記支持本体の側部における高さ方向中間位置にて該支持本体側部よりも外側に張り出すように形成され、隣り合うパネルユニットのジョイント部に対して間隙を有すものであり、
また隣り合うパネルユニットのジョイント部とパネルユニットのジョイント部との間隙の大きさよりも大きい幅を持ち、該間隙及びこれらのジョイント部を外装パネル側より覆う、止水を行うための止水カバーを備えたことを特徴とするパネルユニット。
【請求項2】
請求項1記載のパネルユニットにおいて、
前記下地に対して前記支持本体を取り付けるための取付部材と、
前記取付部に設けられ、前記取付部材を通すための取付穴と、
を備え、
前記取付部は、前記支持本体の側部よりも外側に向けて下り勾配部が形成され、
前記取付穴は、前記下り勾配部と略直交する方向に向けて形成され、
前記取付部材は、前記取付穴に対し前記下り勾配部と略直交する方向より通され、前記
下地に対して前記支持本体を取り付けていることを特徴とするパネルユニット。
【請求項3】
請求項1記載のパネルユニットにおいて、
前記下地に対して前記支持本体を取り付けるための取付部材と、
前記取付部に設けられ、前記取付部材を通すための取付穴と、
を備え、
前記取付穴の径は、前記下地に対して前記支持本体が、隣りのパネルユニット方向に所定の許容距離だけ動き得るように、該許容距離に基づいて定められた分だけ、前記取付部材の軸径よりも大きくし、
前記止水カバーは、前記下地に固定され、
前記ジョイント部は、前記止水カバーに対して摺動自在であることを特徴とするパネルユニット。
【請求項4】
請求項3記載のパネルユニットにおいて、
前記止水カバーの幅は、前記取付穴の大きさ、及び前記隣り合うパネルユニットのジョイント部とパネルユニットのジョイント部との間隙の大きさに基づいて定められたことを特徴とするパネルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−57246(P2006−57246A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237576(P2004−237576)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(500553372)株式会社クロサキ (8)
【Fターム(参考)】