説明

パネル取付構造

【課題】施工が容易で、雨漏りが発生し難いパネル取付構造を提供する。
【解決手段】パネル取付構造10においては、建築物の垂木11に固定された屋根下地材12上に遮水性及び撥水性を有するルーフィングシート13が敷設され、ルーフィングシート13上に屋根勾配方向に沿ってベースレール20が設置され、ベースレール20の両方の側縁部21,22を覆った状態で屋根下地材12上に遮水性の屋根材30が敷設され、ベースレール20の露出部分及び屋根材30の辺縁部31を覆った状態でキャッチレール40が嵌合連結機構Rを介してベースレール20上に取り付けられ、キャッチレール40には、パネル構造体Pを取り付けるためのパネル取り付け手段Pが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板や亜鉛鉄板などの金属板で葺かれた屋根に太陽光発電パネルや太陽熱温水器などのパネル構造体を取り付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電パネルや太陽熱温水器などのパネル構造体を屋根に取り付ける技術として、例えば、特許文献1記載の「ソーラパネル取付装置」あるいは特許文献2記載の「パネル構造体」などがある。
【0003】
特許文献1記載の「ソーラパネル取付装置」は、屋根の勾配方向に間隔を置いて固定される固定ボルト付きの複数の固定部材と、これらの固定部材により屋根の勾配方向に沿って固定される複数の縦フレームと、これらの縦フレーム上に当該縦フレームと直交して固定される複数の横フレームと、最上段の横フレームと屋根の棟との間に取り付けられる棟カバーと、を備え、複数の横フレームの間にソーラパネルが取り付けられる。
【0004】
特許文献2記載の「パネル構造体」は、外装材の目地部間隙に固定兼載置部材の固定面を挿入し、反対の目地部間隙にも他の固定兼載置部材の固定面を挿入して固定し、固定兼載置部材の係止面に係止兼カバー部材の係止溝を挿入し、固定兼載置部材の載置溝にパネルを挿入し、その後、係止兼カバー部材の下端部のカバー化粧面部分を下方に折り曲げてパネルを固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−91811号公報
【特許文献2】特開2002−220904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の「ソーラパネル取付装置」や特許文献2記載の「パネル構造体」は、これらを構成する部材の種類が多いので、施工の際には、資材の搬入作業及び取付作業に多大な労力と時間を要する。
【0007】
また、特許文献1記載の「ソーラパネル取付装置」においては、固定部材を固定するために屋根材(カラー鋼板やスレート板など)に開設されたビス孔部分に雨水浸入防止用のコーキングを施さなければならないので、施工時間の増大を招いている。さらに、コーキング経年劣化により、雨漏りが発生することがある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、施工が容易で、雨漏りが発生し難いパネル取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパネル取付構造は、屋根下地材上に設置されたベースレールと、前記ベースレールの側縁部を覆った状態で前記屋根下地材上に敷設された遮水性の屋根材と、前記ベースレールの露出部分及び前記屋根材の辺縁部を覆った状態で前記ベースレール上に嵌合連結機構を介して取り付けられたキャッチレールと、前記キャッチレールに設けられたパネル取り付け手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、ベースレール、キャッチレール及びパネル取付手段の3種類の部材によってパネルを屋根に取り付けることができるので、施工が容易である。また、屋根下地材上に敷設された屋根材に孔を開設する必要がないので、雨漏りも発生し難い。
【0011】
ここで、前記嵌合連結機構として、前記ベースレールの上面に起立状に設けられたフック付のベースリブと、前記ベースリブに接触嵌合させるため前記キャッチレールの下面に垂下状に設けられたフック付のキャッチリブと、を設けることができる。
【0012】
このような構成とすれば、キャッチレール下面のキャッチリブのフックを、ベースレール上面のベースリブのフックに接触嵌合させることにより、キャッチレールをベースレール上に取り付けることができるので、施工作業を容易化することができる。
【0013】
また、前記ベースレールの長手方向に沿って複数列の前記ベースリブを設け、前記キャッチレールの長手方向に沿って複数列の前記キャッチレールを設けることが望ましい。
【0014】
このような構成とすれば、複数列のベースリブとキャッチリブとによって嵌合連結構造が形成されるので、強固な連結状態を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、施工が容易で、雨漏りが発生し難いパネル取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態であるパネル取付構造を示す一部省略断面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】図2に示すパネル取付構造の施工手順を示す図である。
【図4】図2に示すパネル取付構造を構成するプロペラ座金を示す図である。
【図5】図2に示すパネル取付構造の施工手順を示す図である。
【図6】パネルを取り付けない部分の施工形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1,図2に示すように、本実施形態のパネル取付構造10においては、建築物の垂木11に固定された屋根下地材12上に遮水性及び撥水性を有するルーフィングシート13が敷設され、ルーフィングシート13上に屋根勾配方向に沿ってベースレール20が設置され、ベースレール20の両方の側縁部21を覆った状態で屋根下地材12上に遮水性の屋根材30が敷設され、ベースレール20の露出部分及び屋根材30の辺縁部31を覆った状態でベースレール20上に嵌合連結機構Rを介してキャッチレール40が取り付けられ、キャッチレール40には、パネル構造体Pを取り付けるためのパネル取り付け手段50が設けられている。屋根材30は、鋼板32下面の辺縁部31を除く領域に発泡ポリスチレン材33が貼着された構造であり、発泡ポリスチレン材33の厚さはベースレール20の側縁部21の厚さと同等である。
【0018】
図3(a)に示すように、ベースレール20は、板状の本体部22と、その上面に起立状に設けられた2列のベースリブ23と、を備えている。2列のベースリブ23は、本体部22の長手方向に沿って互いに平行に設けられ、それぞれの外面(互いに対向する面と反対側の面)に横断面が半矢印形状のフック23aが形成されている。ベースレール20の側縁部21にはそれぞれ波形の突条21aと辺縁リブ21bとが設けられている。屋根材12(図)に設置する前のベースレール20の本体部22は平板形状ではなく、その横断面が上に凸の円弧形状をなすように反った形状をしている。
【0019】
図3(a)に示すように、キャッチレール40は、横断面がC形状の本体部41と、本体部41の下面に垂下状に設けられた2列のキャッチリブ42と、本体部41とキャッチリブ42基端との境界部分からそれぞれ外側へ広がるように設けられたスカート部43と、を備えている。2列のキャッチリブ42は、本体部41の長手方向に沿って互いに平行に設けられ、それぞれの内面(互いに対向する面)に横断面が半矢印形状のフック42aが形成されている。本体部41の上面において対向する上縁部41bには、開口部41aを閉塞する略平板状のトップカバー44を取り付けるための溝41がそれぞれの長手方向に沿って設けられている。
【0020】
図3(a)に示すように、ベースレール20の上面に向かってキャッチレール40の下面を接近させ、ベースレール20上面の2列のベースリブ23を、キャッチレール40下面の2列のキャッチリブ42の間に挟み込むように配置し、キャッチレール40をベースレール23に向かって押圧すると、図3(b)に示すように、ベースリブ23のフック23aと、キャッチリブ42のフック42aと、が接触嵌合して嵌合連結機構Rが形成され、キャッチレール40がベースレール20上に固定される。
【0021】
また、図3(b)に示すように、本体部41の内側(対向する上縁部41bの下面側)には、図2に示すパネル構造体Pを固定するためのボルト51と螺合するプロペラ座金52が配置される。図4に示すように、プロペラ座金52は、略平行四辺形の平板材で形成され、その中央部分にボルト51が螺合する雌ネジ孔52aが開設されている。プロペラ座金52の長辺間距離52bはキャッチレール40の開口部41aの横幅W1より小さく設定され、短辺間距離52cはキャッチレール40の開口部41aの横幅W1より大きく且つ本体部41の内側面41d間の距離W2とほぼ同等に設定されている。
【0022】
従って、プロペラ座金52は、キャッチレール40の開口部41aを通して本体部41内に配置することができ、本体部41内に配置した後のプロペラ座金52の二つの短辺部52dをそれぞれ本体部41の内側面41dに当接させれば、後述するボルト51(図2参照)の締め付け作業を行う際に、ボルト51とプロペラ座金52とが供回りするのを防止することができる。
【0023】
図2〜図5及び図6に基づいて、パネル取付構造10の施工手順について説明する。建築物の屋根下地材12上にルーフィングシート13が敷設されたら、垂木11上方のルーフィングシート13上にベースレール20を載置し、ベースレール20の上面から本体部22、ルーフィングシート13及び屋根下地材12を貫通して垂木11まで到達するネジ60を用いて締め付け固定する。図3(a)で示したように、締め付け前のベースレール20の本体部22は上に凸をなすように反った状態にあるが、ネジ60によって締め付けることによって弾性変形し平板状となる。これにより、本体部22のベースレール20の側縁部21が屋根下地材12に向かって強く押圧されるので、密着性が良好となる。
【0024】
ベースレール20の取り付けが終わったら、ルーフィングシート13及びベースレール20の両方の側縁部21を覆うように屋根材30を敷設する。このとき、屋根材30の発泡ポリスチレン材33をルーフィングシート13に密着させ、辺縁部31の鋼板32部分がベースレール20の側縁部21を覆うように敷設する。前述したように、屋根材30を構成する発泡ポリスチレン材33の厚さはベースレール20の側縁部21の厚さと同等であるため、ベースレール20とルーフィングシート13との間に段差があっても、敷設後の屋根材30の表面は凹凸のない平面状態となる。
【0025】
屋根材30の敷設が終わったら、図3(a)で示したような手順により、キャッチレール40を、嵌合連結機構Rを介して、ベースレール20に取り付け、ベースレール20の露出部分及び屋根材30の辺縁部31をキャッチレール20の本体部41及びスカート部43で覆った状態にする。
【0026】
キャッチレール20の取り付けが終わったら、図5に示すように、キャッチレール40の本体部41にプロペラ座金52及びトップカバー44を取り付ける。このとき、パネル構造体Pの固定用のボルト51の位置に対応させてトップカバー44に貫通孔44を開設する。
【0027】
プロペラ座金52及びトップカバー44の取り付けが終わったら、キャッチレール40上にパネル構造体P(例えば、太陽光発電パネルや太陽熱温水器など)を載置した後、パネル構造体Pに係合する座金部材53の上方からプロペラ座金52に向かってボルト51を差し込んで締め付ければ、パネル構造体Pがキャッチレール40上に固定され、図2に示すパネル取付構造10が完成する。
【0028】
一方、パネル構造体Pが配置されない領域に位置するベースレール20についてはキャッチレール40を取り付ける必要がないので、図3(a)に示すように、孔のないトップカバー44を本体部41に取り付けることによって開口部41aを閉塞することができるが、図6に示すように、ジョイントキャップ70を取り付けることもできる。図6(a)に示すように、ジョイントキャップ70は、平板状の本体部71と、本体部71の下面に垂下状に設けられたフック72a付のキャップリブ72と、キャップリブ72の基端部と本体部71の境界部分から外側に広がるように形成されたスカート部73と、を備えている。フック72a付のキャップリブ72及びスカート部73はそれぞれ、図3(a)に示すキャッチレール20のフック42a付のキャッチリブ42及びスカート部43と同じ形状、機能を有している。
【0029】
図6(a)に示すように、ベースレール20の上面にジョイントキャップ70を取り付ければ、図6(b)に示すように、嵌合連結機構Rによってジョイントキャップ70がベースレール20に固定されるので、雨漏りなどが生じることもない。
【0030】
図1,図2に示すパネル取付構造10においては、ベースレール20、キャッチレール40及びパネル取付手段(ボルト51、プロペラ座金52及び座金部材53)の3種類の部材によってパネル構造体Pを屋根に取り付けることができるので、施工が容易である。また、屋根下地材12上に敷設された屋根材30に孔を開設する必要がないので、雨漏りも発生し難い。
【0031】
また、嵌合連結機構Rとして、ベースレール20の上面に起立状に設けられたフック23a付のベースリブ23と、ベースリブ23に接触嵌合させるためキャッチレール40の下面に垂下状に設けられたフック42a付のキャッチリブ42と、を設けているため、キャッチレール40下面のキャッチリブ42のフック42aを、ベースレール20上面のベースリブ23のフック23aに接触嵌合させるだけで、キャッチレール40をベースレール20上に取り付けることができ、施工作業は容易である。
【0032】
さらに、ベースレール20の長手方向に沿って2列のベースリブ23を設け、キャッチレール40の長手方向に沿って2列のキャッチリブ42を設けたことにより、各2列のベースリブ23とキャッチリブ42とによって嵌合連結構造Rが形成されるので、強固な連結状態を得ることができる。
【0033】
また、本実施形態のパネル取付構造10を構成する屋根材30は折り曲げ部分がなく、施工前は、円筒状に丸めておくことが可能であるため、保管性及び搬送性も良好である。なお、図1〜図6を用いて説明したパネル取付構造10は、本発明の一例であり、本発明に係るパネル取付構造を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のパネル取付構造は、一般住宅などの建築物の屋根に太陽光発電パネルや太陽熱温水器などのパネル構造体を取り付ける技術として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 パネル取付構造
11 垂木
12 屋根下地材
13 ルーフィングシート
20 ベースレール
21 側縁部
21a 突条
21b 辺縁リブ
22,41 本体部
23 ベースリブ
23a,42a,72a フック部
30 屋根材
31 辺縁部
32 鋼板
33 発泡ポリスチレン
40 キャッチレール
41a 開口部
41b 上縁部
41c 溝
41d 内側面
42 キャッチリブ
43,73 スカート部
44 トップカバー
44a 貫通孔
50 パネル取付手段
51 ボルト
52 プロペラ座金
52a 雌ネジ孔
52b 長辺間距離
52c 短辺間距離
52d 短辺部
60 ネジ
P パネル構造体
R 嵌合連結機構
W1 横幅
W2 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根下地材上に設置されたベースレールと、前記ベースレールの側縁部を覆った状態で前記屋根下地材上に敷設された遮水性の屋根材と、前記ベースレールの露出部分及び前記屋根材の辺縁部を覆った状態で前記ベースレール上に嵌合連結機構を介して取り付けられたキャッチレールと、前記キャッチレールに設けられたパネル取り付け手段と、を備えたことを特徴とするパネル取付構造。
【請求項2】
前記嵌合連結機構として、前記ベースレールの上面に起立状に設けられたフック付のベースリブと、前記ベースリブに接触嵌合させるため前記キャッチレールの下面に垂下状に設けられたフック付のキャッチリブと、を設けた請求項1記載のパネル取付構造。
【請求項3】
前記ベースレールの長手方向に沿って複数列の前記ベースリブを設け、前記キャッチレールの長手方向に沿って複数列の前記キャッチレールを設けた請求項2記載のパネル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−53440(P2013−53440A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191797(P2011−191797)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(396026570)株式会社栄住産業 (21)
【Fターム(参考)】