説明

パピローマウイルス・ウイルス様粒子(VLP)の解集合/再集合のインビトロ方法

【課題】パピローマウイルスVLPの解集合/再集合の方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、パピローマウイルスVLPの解集合/再集合の方法を提供する。得られるVLPは、立体配座中和エピトープを発現し、非常に均質であり、よって、パピローマウイルス感染を診断または予防するための有効な診断薬および予防薬である。また、本VLPは、所望の部分、例えば、診断薬または治療薬またはマーカーDNAを包含し、インビボ運送担体として、ワクチンの効果を評価するためのプソイドビリオンとしての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パピローマウイルスウイルス様粒子(VLP)をカプソメアおよび/またはより小さいサブユニットに解集合し、VLPに再集合する非常に効率的な手段を提供する。これらの再集合されたVLP含有組成物は、本発明により生成され、立体配座中和エピトープを発現し、非常に均質であり、よって、パピローマウイルス感染を診断または予防するための有効な診断薬および予防薬を含む。また、本発明は、所望の部分、例えば、診断薬または治療薬の包含のためのVLPの使用および推定されるワクチンまたは治療法の効果を評価するための“プソイドビリオン”としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
パピローマウイルスは、ヒトを含む様々な種の動物に感染する。その感染の典型的な特徴は、感染部位に良性表皮および線維性表皮の腫瘍あるいは疣贅(ゆうぜい)を誘発することである。脊椎動物は種別によって、種特異的なグループのパピローマウイルスに感染する。各グループは、いくつかの違った型のパピローマウイルスを含む。例えば、60種あまりのヒト・パピローマウイルス(HPV)の遺伝子型が単離されている。パピローマウイルスは高度に種特異的な感染病原体である。例えば、イヌおよびウサギのパピローマウイルスはヒトのような異種組織にパピローマを誘発させることができない。ある一つの型のパピローマウイルスに対する感染を中和する免疫は、たとえその型が相同種を感染するときでも、他の型に対する免疫を付与することは一般的にない。
【0003】
ヒト・パピローマウイルスは、流行の性感染症である陰部疣贅を引き起こす。HPV6型および11型は、良性の性器疣贅である尖形コンジローマともっとも一般的に関連している。性器疣贅は非常にありふれているが、準臨床的すなわち不顕性のHPV感染は臨床の感染症よりさらに広くみられる。たいていのHPV誘発の病変は良性であるが、その一方、ある型のパピローマウイルス、例えばHPV−16型およびHPV−18型による病変が悪性に進行することがある。さらに、悪性化関連パピローマウイルス型の一つによる感染は、子宮頚部癌の病状進行の重大な危険因子であると考えられている。子宮頚部癌は世界中で女性では第二番目に多い癌である。子宮頚部癌に含まれるHPVの遺伝子型の中で、HPV−16型が最も普通で、同癌の約50%に検出される。
【0004】
パピローマウイルス感染、特にヒト・パピローマウイルス感染によってもたらされる重大な健康危険性を考慮して、様々の研究グループが、組換型パピローマウイルス抗原の開発およびその診断薬および予防ワクチンとしての使用法を報告している。一般的にそれらの研究は、メジャーカプシドタンパク質(L1)のみ、あるいはマイナーカプシドタンパク質(L2)との組合わせを含有する予防ワクチンの生成に焦点をあてている。例えば、Ghins et al, Virology, 190: 548-552 (1992)では、立体配座エピトーブを示すCos細胞中での種痘疹発現を使用したHPV−1 L1タンパク質の発現、およびその種痘疹のワクチンとしての使用、あるいは血清分類、または検査のための使用が報告されている。この研究はまた、米国特許出願第07/903,109号(1992年6月25日に出願、1994年3月22日出願の同第08/216,506号のために放棄)の基本となっており、本出願の譲受人によりライセンスされている。また、Suzich et al, Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 92: 11553-11557 (1995)に、顆粒病ウイルス/昆虫細胞系に発現した組換えイヌ口頭パピローマウイルス(COPV)によるイヌの免疫についての報告がある。この系はウイルス性粘膜パピローマの進行が完全に阻害されている。これらの研究結果は、多数のHPVおよびCOPVの間の顕著な類似性が示されている点で重要である。例えば、COPVは、肛門性器および性器の癌に関連したHPVと類似しており、粘膜部位の損傷に感染して病変を誘発する。また、COPVのL1配列は、HPV L1配列との構造的類似性を有する。それらの類似性によって、ビーグル犬COPVモデルは、L1タンパク質含有ワクチンの研究、例えば感染防御免疫反応、自然感染予防、予防接種適化プロトコールなどの研究に有用である(同上出典)。
【0005】
また、ロチェスター大学の研究グループによるヒト・パピローマウイルスのメジャーカプシドタンパク質(L1)およびウイルス様粒子生成についての報告がある。これは顆粒病ウイルス/昆虫細胞発現システムを使用している(Rose et al, University of Rochester, WO 94/20137, published on September 15, 1994)。このグループは、特にHPV−6およびHPV−11型のL1メジャーカプシドタンパク質の発現およびHPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18型のウイルス様粒子生成について報告している。
【0006】
さらに、クイーンズランド大学研究グループもまた、パピローマウイルスL1および/またはL2タンンパク質およびウイルス様粒子の組換体形成と、それ
らの可能な利用法について報告している。(Frazer et al, WO 93/02189, published on February 4, 1993)。
【0007】
さらにまた、米国政府の研究グループが、立体配座抗原エピトープを含むカプソメア構造およびウイルス性カプシドに自己集合できる組換体パピローマウイルスカプシドタンパク質について報告している。(米国特許第5,437,951号、Lowy et al, issued on August 1, 1995)。この特許は、自己集合可能なL1タンパク質をコード化する特異的HPV−16DNA配列およびそれを使用した上記のHPV−16 L1タンパク質を含む組換体HPV−16カプシドの発現を対象としている。
【0008】
ワクチン含有のHPVカプシドタンパク質に関して当業者間で広く認識されているのは、HPV L1メジャーカプシドタンパク質依存のワクチンの効能に必要な要件としてのL1タンパク質が天然ヒト・パピローマウイルス メジャーカプシドタンパク質によって発現した立体配座エピトープを示すことである(例えば、Hines et al, Gynecologic Oncology, 53:13-20(1994); Suzich et al, Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 92: 11553-11557 (1995) 参照のこと)。
【0009】
天然立体配座HPV L1エピトープを呈する非粒子型および粒子型組換HPV L1タンパク質が研究文献に報告されている。L1は、さまざまなオリゴマー立体配置、例えば(i)L1タンパク質のペンタマーを成すカプソメアおよび(ii)T=7正二十面体構造で72のカプソメアで構成されたカプシドなどにおいて安定していることが知られている。また、L1タンパク質がそれだけで、またはL2と共に真核細胞中に発現した場合、効果的に自己集合して、ウイルス様粒子(VLP)と通常称せられカプシド様構造を呈することが知られている。
【0010】
VLPは、形態的、抗原的に真性ビリオンに類似すると報告されている。さらに、VLPによる免疫処理はウイルス中和抗体の生成を誘発すると報告されている。さらに具体的に、さまざまな動物のパピローマウイルス(イヌ・口腔内パピローマウイルスおよびウシ・パピローマウイルス−4)に関する研究は、VLPによる免疫処理が連続的パピローマウイルス感染に対する予防となることを示唆している。その結果、HPV L1タンパク質含有のVLPが、ヒト・パピローマウイルス感染症関連の疾患を予防するワクチンとして使用することが提案されている。
【0011】
例えば、L1タンパク質が、組換えバキュロウイルスベクターおよびワクシニアウイルスベクターを使用し、組換えイーストにおいて発現されるとき、VLPに集合し得ることが報告されている(Hagensee et al, J. Virol., 68:4503-4505 (1994); Hofmann et al, Virology, 209:506-518 (1995); Kirnbauer et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89-12180-12184 (1992); Kirnbauer et al, J. Virol., 67:6929-6939 (1993); Rose et al, J. Virol., 67:1936-1944 (1993); Sasagawa et al, Virology, 206:126-135 (1995); Suzich et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:11553-11557 (1995); Volpers et al, Virology 200:504-512 (1994); Zhou et al, J. Virol., 68: 619-625 (1994)。
【0012】
真核生物の細胞から単離される先の組換えL1製造物はたいてい、直径55nmに近いVLPの不定な個体群をもたらす。該VLPは、無傷のビリオンに外観が類似している。しかしながら、VLP集合は、ある程度細胞型に感受性である。例えば、Escherichia coliにおいて発現されたL1は、細胞においてまたは精製の際のいずれかで明らかなカプシドをわずかに有する、または全く有しないで、カプソメアまたはより小さい形態において、大いに発現される(Rose et al, J. Virol., 67:1936-1944 (1993); Li et al, J. Virol., 71:2988-2995 (1997))。類似の結果が、ポリオーマウイルスVP1タンパク質がE.coliで発現されたときに観察される(Salunke et al, Biophys. J., 56: 887-900 (1989))。
【0013】
現在まで、パピローマウイルスVLPの量的な解集合およびその結果の再集合の有効なインビトロ方法は、報告されていない。このような方法は、より安定なおよび/または均質のパピローマウイルスVLPの製造を潜在的に可能とするので、非常に好都合である。これは、均質性および安定性がともにワクチンの製造および製造の間の特徴化において重要な課題であるので、有益である。さらに、VLPを解集合および再集合する能力は、VLP精製への重要な適合性を有する。真核生物の細胞において発現されたHPV L1タンパク質は、上記のように、自然に集合してVLPを形成する。しかしながら、ほとんどのタンパク質精製工程は、タンパク質を−2000万ダルトン、55nmVLPよりもっと小さく精製するように設計されてきた。真核生物の細胞から抽出されたVLPをL1カプソメアまたはより小さいレベルまで解集合し、従来の技法によってより小さい成分を精製し、次いで再集合して精製工程の所望の段階でVLPを形成する能力は、非常に強力であり、下記するように、HPV−16Tr VLPの精製において現在使用されている(HPV−16 L1タンパク質の変異形態から構成される。C−末34アミノ酸がHPV−16 L1タンパク質から欠失された)。最後に、VLPをインビトロで解集合および再集合する能力は、再集合VLP内の所望の外因性化合物のパッケージングをもたらす。
【0014】
パピローマVLP解集合における初期の試みには、ポリオーマウイルス、関連パポバウイルスで行われた初期の研究に基づいた実験が含まれる。その研究において、ジスルフィド還元およびカチオンのキレート化の両方ともがビリオン解集合に必要であることが示された(Brady et al, J. Virol., 23:717-724 (1977))。しかしながら、HPV VLPの場合、低レベルのキレート化剤(例えば、0.5−10mM EGTA)の存在下で最適なポリオーマウイルス解集合を提供する低レベルの還元剤(1−10mM DTT)が、パピローマウイルスVLPの解集合でほんのわずかしか有効でないことが示されている(参照、表1、Li et al, J. Virol., 71:2988-2995 (1997))。それに反して、部分的にトリプトシン処理されたHPV−11 L1 VLPは、このような条件下で効果的に解離することが報告されている(Li et al, J. Virol., 71:2988-2995(1997))。しかしながら、これは、プロテアーゼの使用が有害な作用、例えば、中和エピトープの除去をもたらすことがあるので、不都合である。
【0015】
また、Sappおよび共同研究者は、HPV−33 VLPの“部分的解集合”は、還元剤(20mM DTT)だけで処理することにより達成できることを明らかにした。しかしながら、VLP分解の範囲は、測定されなかった(Sapp et al, J. Gen. Virol., 76:2407-2412 (1995))。
【0016】
上記のように、HPVカプシド集合は、正確な折りたたみL1タンパク質を必要とする。しかしながら、VLP形成および安定性に重要な付加的要因はよく分かっていない。それに関して、VLP集合は、多くの要因に影響を受け得ることが一般的に知られている。例えば、他のウイルスについて集合に影響するとわかっている要因および条件には、例えば:pH、イオン強度、ウイルス性カプシドタンパク質の翻訳後の修飾、ジスルフィド結合および二価のカチオン結合などがある。例えば、ビリオン整合性の維持におけるカチオン結合、特にカルシウムの重要性が、ポリオーマウイルス(Brady et al, J. Virol., 23:717-724 (1977))およびロトウイルス(Gajardo et al, J. Virol., 71:2211-2216 (1997))について示されている。また、ジスルフィド結合は、ポリオーマウイルス(Walter et al, Cold Spring Har. Symp. Quant. Biol., 39:255-257 (1975); Brady et al, J. Virol., 23:717-724 (1977))およびSV40ウイルス(Christansen et al, J. Virol., 21:1079-1084 (1977))の安定化に重要なようである。また、pHおよびイオン強度などの要因が、おそらく静電相互作用に影響を及ぼすことによりポリオーマウイルスカプシドの安定性に影響することが分かっている(Brady et al, J. Virol., 23:717-724 (1977); Salunke et al, Cell, 46:895-904(1986); Salunke et al, Biophys. J., 56:887-900(1980))。また、いくつかのウイルス性カプシドタンパク質の翻訳後修飾は、カプシド安定性および集合、例えば、グリコシル化、リン酸化およびアセチル化に影響し得ることが分かっている(Garcea et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:3613-3617 (1983); Xi et al, J. Gen. Virol., 72:2981-2988 (1991))。従って、カプシドの安定性、集合および解集合に影響し得る多くの相互関連要因がある。これは関連ウイルスに関してさえも広範に変化するものである。
【0017】
従って、パピローマウイルスVLP集合および解集合に影響する要因を解明することが当業者において必要とされている。さらに、それに基づいて、パピローマウイルスVLPの解集合および再集合の効率的なインビトロでの方法が当業者において必要とされている。該方法は、良質の均質性、安定性および免疫原性特性、つまり、天然で無傷のパピローマウイルスビリオンの表面上で発現する立体配座エピトープ、特に中和エピトープを示すもの、を有するVLPをもたらす。さらに、パピローマウイルスVLPの解集合および再集合の方法、部分的なVLP解集合の問題を取り除き、パピローマウイルスVLPを生成する従来の方法におけるプロテアーゼの使用を回避する方法について重要な必要性がある。
【発明の開示】
【0018】
(発明の目的)
本発明の目的は、従来技術の問題を解決することである。
より具体的には、本発明の目的は、パピローマウイルスVLPの解集合および再集合についての新しい方法を提供することである。
【0019】
さらに具体的には、本発明の目的は、ヒト・パピローマウイルスVLPの解集合および再集合についての新しい方法を提供することである。
【0020】
本発明の目的は、多量のパピローマウイルスVLPの定量的解集合および再集合を可能にする方法を提供することでもある。
【0021】
本発明の他の目的は、パピローマウイルスVLP含有組成物を提供することであって、好ましくは、改善された質、例えば、均質性、免疫原性および/または安定性を有するヒト・パピローマウイルスVLP含有組成物を提供する。
【0022】
本発明の他の目的は、VLP精製の改善手段を提供するものであって、精製工程中にVLPの解集合/再集合を組み込むことによってなされる。
【0023】
さらに、本発明の他の目的は、パピローマウイルスVLP中に所望の部分、例えば治療薬または診断薬を包含する方法を提供する。
【0024】
本発明の他の目的は、パピローマウイルスVLP、好ましくはヒト・パピローマウイルスVLPを提供するものであって、このVLPは所望の治療薬または診断薬、例えば抗癌剤や抗ウイルス剤を含有する。
【0025】
本発明の別の目的は、HPVビリオンの再生可能量が現在得られていないHPVウイルス型についての“プソイドビリオン”を生成することである。この目的は、この目的は、L1およびL1/L2タンパク質を用いて構築されたHPVVLP中に外因性の化合物、特に該HPVのゲノムに対応するDNAまたはその断片、またはβ−ガラクトシダーゼなどの選択性マーカーをコードするDNAを、包含せしめることで達成される。
【0026】
本発明の他の目的は、望む部分、例えばDNAを望む細胞に運送する新しい方法を提供する。この細胞中で該部分、例えばセンスまたはアンチセンスDNAについての運送担体には、パピローマウイルスVLPが含まれる。
【0027】
本発明の他の目的は、可能性のあるHPVワクチンの効力をアッセイするためのインビトロアッセイにおいてHPV VLPに基づくプソイドビリオンを使用することである。このアッセイは、該HPVに普通に感染した細胞中への、包含されたDNAの挿入を阻害する中和抗体の効力を調べる。
【0028】
(発明の簡潔な記述)
本発明は、インビトロでのパピローマウイルスVLP、特にヒト・パピローマウイルスVLPの解集合および再集合についての新規方法に関する。
【0029】
上記したように、パピローマウイルスVLPは、構造性タンパク質L1から主に構成されている。このタンパク質は5量体カプソメアまたは72のカプソメアからなるカプシドとして安定である。該VLPはL2タンパク質も含み得る。
【0030】
特に、実験条件を適切に選択して、本発明者が驚くべき発見したのは、パピローマウイルスVLPの定量的な解集合(ほとんど完全にカプソメアのレベルまで、またはより小さい)および続く再集合が、VLPを少なくとも1つのスルフヒドリル還元剤を高濃度で含有する、中程度から低度のイオン強度の緩衝液に長時間接触せしめると、確実に達成されることである。特に、この方法は、非常に高均質性の再集合VLP含有組成物をもたらす。この組成物は主に完全サイズのVLP、平均56.5±7.0(n=5)と、非常に少量の部分的集合VLPすなわち小さい複合体を含む。収率も非常に高く、すなわち定量的であり、最適の解集合条件では、出発物質から再集合VLPへの全L1タンパク質としての収率は平均80−90%である。さらに、特に前に解集合したすべてのカプソメアが再集合して、溶解性の濾過可能な完全サイズのVLPを産生する。
【0031】
予期せざる結果として、このような条件の使用は均質性が増加したパピローマウイルスVLP組成物(VLP出発物質および入手可能なVLP組成物に比べて)が得られる。すなわち、均質組成物は、55nm、150SであるパピローマウイルスVLPからほとんどすべて構成される。さらに、判明したのは、これらの均質VLPが立体配座中和HPVエピトープ、効果的な予防的HPVのVLPに基づくワクチンに必要なものを提示する。また、驚くべきことに本発明で判明したのは、キレート剤がVLP解集合を高めないで、カプソメアのVLPへの再集合を阻害し得ることである。より詳細は後記するように、このような発見が驚くべきであるのは、関係パポバウイルス、ポリオマウイルスについて、低レベルのスルフヒドリル還元剤への接触およびカルシウムイオンのキレート化の両方がビリオン解集合に必須であるのが分かったからである。一方、このような条件はパピロマVLPの解集合についてはほとんど効果がない。
【0032】
さらに判明したことは、本発明により産生されたパピローマウイルスカプソメアおよびVLP組成物が、無傷のパピローマウイルスビリオンの表面にある構造特異的な(立体配座性)、特に中和エピトープを提示することである。このことは、ELISAアッセイにおける構造特異的抗L1パピローマウイルスモノクローナル抗体との反応性、およびRT−PCT感染アッセイにおけるパピローマウイルス感染を中和する抗体の合成を誘導する能力の両方によって示される。従って、これらは、PV感染を予防するための、および診断目的のための予防薬としての使用に適している。さらに、VLP解集合および再集合についての本方法は、種々の程度のVLP純度で使用できる。このことで、VLPの粗製混合物の解集合、より小さい可溶性VLP成分の精製(非常な減少サイズにより簡単である)、およびその後の、精製工程の望む段階での再集合が可能となる。
【0033】
また、詳しくは下記するが、本発明方法は、再集合での所望の部分のVLPへの導入を提供する。望ましい部分とは、例えば、DNA、タンパク質、ペプチド、ホルモン、放射核種、抗癌剤およびウイルス剤がある。これによって好都合にも、該VLPが、“運送担体”(望む部分を細胞中に挿入するため)として、およびパピローマウイルスワクチンの予防効果を判定するための“プソイドビリオン”として有用である。
【0034】
本発明者の仮定によると、埋没してアクセス不可能とみられる安定なジスルフィド結合が存在するので、パピローマウイルスVLP解集合のために、非常に高レベルの還元剤との長時間接触が必要となり、局在的構造上の変動によるこれらの結合の溶媒への暴露が非常に頻繁である。(この現象は詳しく、出願番号08/888,050、出願1997年7月3日に記載されている)明らかに、高い還元剤濃度および低から中程度のイオン強度での長時間接触で、これらの結合が時間を通じてアクセス可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
定義
メジャーカプシドタンパク質すなわちL1タンパク質
PVカプシド構造物のメジャー部分を形成するパピローマウイルス(PV)の構成タンンパク質を意味する。このタンパク質は、HPVワクチンの製造において、および診断薬として適用性を有すると報告されている。
【0036】
マイナーカプシドタンパク質すなわちL2タンパク質
PVウイルス性カプシド構造物のマイナー部分を形成するパピローマウイルスの構成タンパク質を意味する。
【0037】
ウイルス様粒子すなわちVLP
パピロウイルスL1 DNA配列の単独で、またはL2DNA配列との組合せで発現および集合するカプシド様構造物を意味する。VLPは形態的および抗原的に真正型ビリオンに類似する。VLPは生体内や適当な宿主細胞、例えば哺乳動物や昆虫の宿主細胞内で生成でき、あるいは組換えL1タンパク質の精製時において自然に形成する。
【0038】
プソイドビリオン
特異なPV型のL1およびL2タンパク質で構成される外因性マーカー化合物を含むVLPを意味する。プソイドビリオンは、本物のウイルスが入手できないとき、特異なウイルスの標的細胞への結合および/または摂取を遮断する抗体などの物質有効性の試験で使用することができる。
【0039】
正しく折り畳まれたL1タンパク質
L1タンパク質(単量体または、小さなオリゴマーの形態(二量体から四量体)カプソマー)を意味する。VLP再集合に適切な構造であり、ウイルスカプシドまたはVLPに存在するエピトープを保有する。
【0040】
カプソメア
L1ペンタマーから構成されるL1タンパク質のオリゴマー立体配置を意味する。
【0041】
カプシド
カプソメアを含むパピローマウイルスの構造部分を意味する。さらに詳しくいえば、カプシドは、T=7正二十面体構造における72カプソメアから成っている。
【0042】
立体配座L1 HPVエピトープ
正しく折り畳まれたL1タンパク質の表面上に発現されたエピトープを意味する。このエピトープは、相応する天然(野性型)感染性HPVのL1タンパク質によっても発現するものである。立体配座エピトープの提示が、HPV L1タンパク質免疫原の予防薬および診断薬としての両方の効能にとって重要不可欠であることは当業者によく認識されている。
【0043】
立体配座中和L1 HPVエピトープ
正しく折り畳まれたL1タンパク質の表面上に発現されたエピトープを意味する。このエピトープは、相応する野性型感染性HPVのL1タンパク質によっても発現し、かつ中和抗体を生成するものである。立体配座中和エピトープの提示が、HPV L1タンパク質免疫原の予防薬および診断薬としての両方の効能にとって重要不可欠であることは当業者によく認識されている。
【0044】
立体配座抗体
正しく折り畳まれたL1タンパク質であるが変性L1タンパク質ではないものによって発現したエピトープと特異的に結合する抗体を意味する。
【0045】
高濃度還元剤溶液
グルタチオン、β-メルカプトエタノールまたはジチオトレイトールなどのスルフヒドリル還元剤を少なくとも一種類含む溶液を意味し、この溶液は、VLPが長い時間、少なくとも2時間、さらに好ましくは少なくとも16時間接触するときに、少なくとも70%の解集合パピローマウイルスを提供するものである。個々の還元剤に基づいて還元剤の濃度を変えることができる。β-メルカプトエタノールの場合、好ましい量は少なくとも1重量%であり、さらに好ましくは少なくとも3〜5重量%である。ジチオトレイトールの場合は、好ましい量は少なくとも100mMである。
【0046】
VLPの高濃度還元剤溶液への長時間の露出または接触
VLPが高濃度還元剤溶液と接触する時間を意味し、これは少なくとも70%の解集合 VLPをカプソマー中に供給するのに十分なものである。好ましくは、これらの長時間露出は70〜90%の解集合をもたらし、および最適には実質的に全量VLP分解をもたらす。この時間はPVの型によって異なり、またVLP発現細胞(出発物質)、純度(集合体の有無)、pHおよびイオン強度に依存する。さらに変異または化学修飾L1タンパク質、すなわちC末切断L1タンパク質で形成されたVLPは、穏和な条件で分解することができる。一般的に、この露出時間は少なくとも2時間(HPV-16Tr VLPの場合)であり、さらに一般的に長い場合は、例えば少なくとも12時間であり、さらに好ましくは少なくとも16時間(HPV-11 VLPの場合)である。
【0047】
図の詳細な説明
図1:精製HPV−11 L1タンパク質のSDS/PAGE分析。タンパク質を2mM DTTの不存在下(レーン1)または存在下(レーン2)でサンプル製造緩衝液と混合し、ゲル電気泳動の前に2分間煮沸した。分子量標準物(Da×10-3で)が遊走した位置を左側に示す。
【0048】
図2:HPV−11 VLP解集合の30%スクロースクッション分析。HPV−11製造物を、テキストに記載のように4℃で処理し、ゲル電気泳動の前にサンプルをスクロースクッションの上部(T)または底部(B)で採取した。グループ1、非処置、PBSにおける精製HPV−11 VLP出発物質。グループ2、5%βMEで16時間インキュベートしたVLP。グループ3、5%βMEで1時間インキュベートしたVLP。グループ4、2%βMEで16時間インキュベートしたVLP。グループ5、0.5%βMEで16時間インキュベートしたVLP。グループ6、10mM DTT、5mM EDTAでで16時間インキュベートしたVLP。
【0049】
図3:解集合されたHVP−11 VLPの5−20%線状スクロース勾配分析。PBS中のVLPを5%βME(a)、または200mM NaHCO3、pH9.6(b)を用いて4℃で16時間インキュベートし、テキストに記載のように5−20%線状スクロース勾配上で遠心分離した。勾配を25フラクション(0.5ml)に集め、0.5ml PBSにパレット(P)を再懸濁した。勾配と交わったL1タンパク質の位置を示す免疫ブロットを表示する。また、分離勾配上で作動すると沈降標準が遊走するピーク位置を示す。
【0050】
図4:様々な状態の集合におけるHPV−11 VLPの10−65%線状スクロース勾配分析。精製VLP出発物質(a)のアリコットを5%βMEを用いて4℃で16時間インキュベートした(b)。βME処置VLPの一部を透析法によりPBS−0.5 NaClに再集合し、還元剤を除去した(c)。サンプルをテキストに記載のように10−65%線状スクロース勾配上で遠心分離した。各々の勾配を12フラクション(1ml)に集め、パレット(P)を1ml PBSで再懸濁した。異なる勾配上でL1タンパク質が遊走した位置を示す免疫ブロットを表示する。また、図3のように、沈降標準が遊走するピーク位置を表示する。
【0051】
図5:種々の状態の集合におけるHPV−11 VLPの電子顕微鏡写真。前述のように処置したVLPを2%リンタングステン酸で染色し、グリッドに適用し、15-25,000倍の培率で撮影した。a、精製VLP出発物質、b、5%βMEを用いて4℃16時間インキュベートしてカプソメアのレベルに解集合したVLP、c、透析法により解集合VLPからPBS−0.5NaClに再集合したVLP、d、拡大した画像Cの中心部分。スケールバー:a、c=200nm;b、c=100nm。
【0052】
図6:HPV−11構造特異的モノクローナル抗体を有する無傷および解集合VLPの反応。HPV−11 L1 VLP出発物質(A)、次いで透析法を行って(B)、または行うことなく(C)、5%βMEで処置し、還元剤を除去するためにPBS−0.5M NaClに解集合したVLP、および200mMカルボネート、pH9.6の存在下で解集合し、PBS−0.5 M NaClに透析されたVLP(D)が、マイクロタイタープレートのウエルに付着している。材料および方法に記載したように、HPV−11構造特異的モノクローナル抗体H11.F1(HPV−11中和性;▽)およびH11.A3(HPV−11非中和性;・)について、ELISAにおける結合抗原への免疫反応を調べた。HPV−11 L1上に見られる線状エピトープを認識するモノクローナル抗体AU1(■)での反応はマイクロタイタープレートへの抗原付着物を示すコントロールとして使用した。
【0053】
図7:HPV-11 ウイルスを中和する最初の精製HPV-11 VLPおよび再集合VLPに対する抗血清の性能比較。抗HPV-11血清をHPV−11ビリオンを用いてHaCaT細胞を添加する前に37℃で60分間インキュベートした。別法として、ウイルスを血清でプレインキュベーションしない細胞に添加した。感染後6日で、細胞を採取し、全RNAを抽出した。全RNAのうち10%分を逆転写に使用し、得られたcDNAの10%を整列PCRの鋳型に使用し、さらにHPV-11E1^E4スプライスメッセージに特異的なプライマーも使用した。PCR産物を2%アガロースゲルで分離した。ゲルを臭化エチジウムで染色し、紫外光下で0.6kb E1^E4バンドの存在を調べた(a)。βアクチンのPCR増幅を内部コントロールとして全cDNAサンプル上で行った(b)。β-アクチンバンドの予想サイズは−0.6kbである。レーンSは分子サイズマーカーを含む。レーンCは、ウイルスなしでインキュベートした細胞のRNAで行なった反応を意味し、レーンVは血清でプレインキュベートしていないウイルスの存在下でインキュベートした細胞のものを意味する。予想通り、ウイルス-感染のものでE1^E4バンドを検出したが、非感染細胞からは検出していない。隣りのレーンは、ウイルスに感染した細胞からのPCR産物を含む。この細胞は、最初の精製HPV-11 VLPおよび再集合VLPに対する連続log10希釈の抗HPV−11抗血清(10-3−10-7)でプレインキュベートされていた。
【0054】
図8:集合(−βME)および解集合(+βME、2運転)状態におけるHPV-16TrVLPのSDS/ページ比較であり、解集合状態において精製VLPの更なる精製を示している。HPV-16TrL1タンパク質移動の位置を矢印で示す。
【0055】
図9:解重合HPV-16TrVLPの5−20%線状スクロース勾配分析。PBS中の最終精製+βME 2運転VLP(表3参照)を、4% βMEと共に4℃で16時間インキュベートし、次いで、方法部分で記した5−20%線状スクロース勾配で遠心分離した。勾配を25画分(0.5ml)に集め、ペレット(P)をPBS 0.5mlに再懸濁した。HPV-16特異的モノクローナル抗体16-Eをブローブした免疫ブロットを示し、勾配と交わったL1タンパク質の位置を示す免疫ブロットを表示する。また、分離勾配上で作動すると沈降標準が遊走するピーク位置を示す。
【0056】
図10:様々な重合状態におけるHPV-16TrVLPの10−65%線状スクロース勾配分析。(a)精製VLP出発物質(+βME 2運転;表3参照)のアリコートを、4% βMEと共に4℃で16時間インキュベートした。(b) βME-処置VLPの位置を、PBS-0.5 NaClで透析して再集合し、還元剤を取り除いた。(c)サンプルを本明細書中で述べた10−65%線状スクロース勾配で遠心分離した。各勾配を12画分(1ml)に集め、ペレット(P)をPBS 1mlに再懸濁した。HPV-16特異的モノクローナル抗体16-Eをプローブした免疫ブロットを示し、異なる勾配上でL1タンパク質が遊走した位置を示す免疫ブロットを表示する。また、図9のように、沈降標準が遊走するピーク位置を表示する。
【0057】
(発明の詳細な記述)
上記したように、本発明は、パピローマウイルスVLPの高度に効果的な解集合、すなわち少なくとも70%の解集合、好ましくは70−90%の解集合、最も好ましくは完全なVLP解集合を提供する新しい方法に一般的に関する。解集合は、L1タンパク質またはL1とL2タンパク質との組合せを含むパピローマウイルスVLPの、高濃度スルフヒドリル還元剤溶液との長時間接触を含む。一般に、還元剤の濃度は1重量%、好ましくは約3−5重量%であって、還元剤含有溶液は、最大約0.5、好ましくはこれより低いイオン強度を有する。
【0058】
しかし、還元剤濃度およびイオン強度は、パピローマウイルスの型、元の宿主、L1タンパク質の変異および/または化学的変更形態、および純度によって異なる。より具体的には、本発明は、インビトロでの精製VLPの最大の解集合および続く効果的な再集合をもたらす条件を明らかにする。判明したことは、比較的高濃度の還元剤とパピローマウイルスVLPとを、最大0.5Mのイオン強度および好ましくはほぼ生理的イオン強度以下で長時間インキュベートするのが、精製VLPから均質で可溶性のカプソメアを産生するのに必要かつ十分であることである。さらに、還元剤の除去あるいはその酸化において、無傷の適当なサイズのVLPが得られることが見出された。
【0059】
このことは具体的には、全HPV−11 L1 DNA配列を含有する組換えバキュロウイルスで感染したTrichoplasia ni(High Five(商標))において、バキュロウイルス/昆虫細胞系において産生したHPV−11 VLPを用いる。しかし、これらの結果に基づき、理論的に結論されるのは、他の型および種、特に他のヒト・パピローマウイルス型から産生されたパピローマウイルスVLPを用いても同種の結果が得られるであろうことである。この結論は、多数のパピローマウイルスL1タンパク質が適当な組換え発現ベクター系で発現されたときに、VLPをもたらすことが示されたので、理にかなっている。
【0060】
同様に、合理的に推測されるのは、類似の結果がL1およびL2タンパク質の組合せを含むパピローマウイルスVLPを用いて達成できるであろうことである。なぜなら、このVLPはL1タンパク質のみからつくられたVLPと実質的に同じである。〔しかし、L2が有意の安定化の役割を有すると推定して、本発明者の考えでは、解集合中において、より高い濃度の還元剤、より長時間の接触、高いpHおよび/または低いイオン強度を解集合に必要とする。〕さらに期待されるのは、本発明方法が、パピローマウイルスVLPの産生をもたらす宿主系から得られた解集合/集合に適していることである。出願人はいくつかの宿主細胞に差異が存在することを認識しているが、後記するように、多くの宿主細胞がVLPの形態でパピローマウイルスVLPを発現すると報告されている。
【0061】
一般に、望むVLP出発物質は適当な宿主細胞系、例えばバキュロウイルス/昆虫細胞系で産生され、既知技術を用いて、それから抽出される。抽出技法は、用いた特定の宿主細胞、濃度(タンパク質が細胞内に残留しているか、分泌されたか)などの因子によって相違する。
【0062】
VLPの解集合は、VLP純度の種々のレベルで行うことができる。精製と合わせて行うと、VLPは細胞から抽出され、解集合され、通常の技法で精製され、そして望む純度程度に再集合される。VLPが外因化合物をパッケージするのに用いられる場合、または解集合/再集合が最終産物の均質性を改善するため行われるとき、用いられたVLPはかなり高純度である。これらの場合において、解集合に用いられるVLPは、好ましくは少なくとも10−30重量%、さらに好ましくは50重量%、最も好ましくは少なくとも70−90重量%である。VLP純度の測定法はよく知られており、SOS−PAGE比密度法などがある。
【0063】
材料および方法などを後に詳記するように、本発明者は、スクロース勾配系を用いるVLP解集合の研究のための迅速スクリーニングアッセイを開発した。この系において、無傷のVLPは30%スクロールクッションを介して沈降し、非凝集カプソメア、より小さいL1オリゴマーまたはL1モノマーはクッションの上部に止まっている。従って、このアッセイ法の有利な点は、最大のVLP解集合を結果として生じる条件の正確な同定を容易にすることである。
【0064】
一般に、最大VLP解集合には、非凝集VLPの、高濃度スルフヒドリル還元剤含有の溶液への長時間接触を要することが分かった。上に説明したように、長時間接触は、VLPの少なくとも70%の解集合、より好ましくは70−90%のVLP解集合、理想的には実質的に全VLP解集合をもたらすのに十分な期間である。例示した昆虫細胞系において産生される組換えHPV−11L1VLPの場合、最大解集合は4℃で16時間後に起きた(5重量%のβ−メルカプトエタノールを含有する溶液を用いて)。しかし、各接触時間は別の出発物質、異なるpH条件、より高い還元剤濃度、より低いイオン強度を用いて、大きく減少することができる。例えば、HPV−16L1タンパク質のC末切断形により形成されたVLPの実質的な解集合は、このようなVLPをβ−メルカプトエタノール液(4%)に4℃で約2時間接触させた後に効果的となる。
【0065】
本VLP解集合方法は、還元剤としてβ−メルカプトエタノールおよびジチオトレイトールを用いて効果的であることが示された。しかし、他の既知の還元剤も同様の結果を提供すると考えられる。本発明で有用である適当な還元剤の例には、グルタチオン、β−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、ジチオエリトリトール、システイン水素スルフィドおよびこれらの混合物がある。
【0066】
本発明方法では、高濃度のスルフヒドリル還元剤を有する溶液にVLPを接触せしめる。ここでは、VLPの実質的な解集合、すなわち少なくとも70%、好ましくは少なくとも70−90%、より好ましくは実質的に全VLP解集合を長い接触の後にもたらす還元剤の濃度と定義される。
【0067】
これらの還元剤濃度は、特定の還元剤または組合せによって異なる。β−メルカプトエタノールの場合、少なくとも約5重量%(713mM)の濃度が生理的イオン強度での最適のHPV−11 L1 VLP解集合をもたらす。還元剤の濃度が低いと、接触期間が減少すると、VLP解集合が効果的でなくなる。例えば、4%β−メルカプトエタノール液も効果的な解集合(少なくとも70%)を提供することが分かった。
【0068】
解集合方法においてイオン強度が重要なパラメーターであることも分かった。好ましくは解集合を効果的にするには、用いる溶液のイオン強度が最大で0.5、好ましくはこれより低い。さらに好ましくはほぼ生理的な“イオン強度”(すなわち0.15NaCl)またはこれ以下で、より好ましい解集合が起きる。高いイオン強度はVLP解集合方法を効果的でなくすることが分かった。一般に、イオン強度は最大で約0.5、好ましくは約0.25、最も好ましくは最大で0.15である。
【0069】
VLP凝集の存在が解集合に対して有害作用を与えることも分かった。この作用は凝集物質の除去により回避される。また、高濃度の還元剤溶液にVLPを長時間接触せしめることにより回避される。これは、ジスルフィド結合が凝集体中に埋没して還元剤にアクセスできず、それによって解集合を妨げるので、起きるようである。
【0070】
また、述べたように、驚くべきことに、キレート剤が高濃度ですらもHPV−11 VLP解集合に有意な作用を及ぼさないことが分かった。これはEGTAおよびEDTAの両方でみられ、両者ともよく知られたキレート剤であり、単独またはジチオトレイトールと併せて用いられる。上述したように、キレート剤が関連パポバウイルスのVLP解集合に必要と報告されていたことからすると、驚くべきことである。
【0071】
さらに、炭酸緩衝液(0.2M NaHCO3、pH9.6)がHPV−11VLPの顕著な解集合を起こすことが分かった。しかし、スルフヒドリル還元剤への長時間接触による解集合と異なり、炭酸処理VLPを再集合するのは不可能であった。仮説として、炭酸処理はL1タンパク質を部分的に変性すると考えられる。これから言えるのは、正しく折りたたまれたL1タンパク質構造を維持しながらVLPを解集合する本発明方法(スルフヒドリル還元剤の効果的な濃度に長時間接触)のみが、完全なサイズで可溶性のVLPに再集合し得る物質を産生する。
【0072】
HPV−11VLPの本解集合は、立体配座中和エピトープを表わす高均質性のカプソメアをもたらす。このエピトープは特定のパピローマウイルス(HPV−11例示)に対応する立体配座中和モノクローナル抗体により表示される。さらに最適条件で、本発明方法は、VLPがすべてカプソメアに分解する組成物をもたらす。逆に、HPV−16TrVLPの本解集合は、カプソメアの混合物、小さいL1オリゴマーとL1モノマーとなるようである。しかし、L1オリゴマーのこの混合物は定量的な再集合をつくり得る。これから示されるのは、本発明方法が正しく折りたたまれたL1タンパク質をカプソメアの形態でVLP再集合が可能な小さいL1オリゴマーまたはL1モノマーをつくることである。
【0073】
上記したように、本発明の特定の利点は、カプソメアが単に還元剤の除去によりVLPに定量的に集合することである。還元剤の除去は、種々の方法、例えば透析またはカラム・クロマトグラフィーによって行い得る。あるいは、過剰の酸化物の添加が適当なジスルフィド結合の再形成を強力に促進し、VLP再集合に導く。上記したように、再集合は、正しく折りたたまれたL1タンパク質出発物質の構造的統合性により影響される。また、出発物資の溶解性も再集合に影響を及ぼし、凝集物質が定量的に再集合しない。
【0074】
一般的に、再集合は、スルフヒドリル還元剤の除去、酸化物の添加、正しく折りたたまれたL1タンパク質出発物質の高イオン強度条件(例えば、少なくとも約0.5以上)での接触により影響される。塩の高濃度はVLPを安定化するのに働く。しかし、キレート剤の添加は逆の作用を有する、すなわち再集合を緩やかに阻害する。
【0075】
驚くべきことに、このような再集合は、元のVLP出発物質よりも粒子サイズが非常に均質のVLPをもたらす。これが分かるのは、出発VLP物質と再集合VLP産物との、10−65%直線スクロース勾配での比較であり、電子顕微鏡で検査する。明らかに、完全サイズVLPの範囲の粒子が検出され、平均56.5±7.0nmであり、部分的集合VLPまたは小さい複合体は非常に少ない。また、収率は非常に高く、最適の再集合条件を用いて、出発物質から再集合VLPの全L1タンパク質比での収率は平均約80−90%である。基本的に解集合された出発物質のすべてが可溶性の濾過性の完全サイズVLPを再形成するようである。また、これらのVLPは、真正のパピローマウイルスビリオンの表面に立体配座中和エピトープを表わし、VLP出発物質のように強力な中和抗体をつくり出す。
【0076】
これらの結果は新規で予想できなかったものであるが、本出願の教示に基づき、当業者は、タンパク質濃度、pH、イオン強度および/または反応速度を変えることにより、さらに大きいVLP収率を得ることができる。
【0077】
上記のように、本発明は、望む部分を包含するパピローマウイルスVLPをつくるための方法を提供する。これは以下の工程によって一般的に達成される。
(i)所望のパピローマウイルスのVLPを得る。これはL1タンパク質またはL1とL2タンパク質の組合せから構成される。
(ii)最大0.5のイオン強度を有する高濃度のスルフヒドリル還元剤含有の溶液に、該VLPを接触せしめて、該VLPを解集合する。
(iii)包含されるべき部分を含有の、および選択的に精製L2タンパク質(例えば、解集合VLPがL2タンパク質を含有していない場合)を含有の溶液に解集合VLPを接触せしめる。
(iv)スルフヒドリル還元剤の除去または過剰の酸化物の添加によって該解集合VLPを再集合し、それによって所望の部分を含有するVLPをつくる。
【0078】
解集合および集合の工程は上記したようにしてなされる。すなわち、解集合が行われるには、高濃度のスルフヒドリル還元剤を、典型的には少なくとも1重量%またはそれ以上で、長時間、すなわち少なくとも2時間、典型的にはさらに長く、少なくとも16時間使用する。接触時間および還元剤の濃度は、パピローマウイルスVLPの型、そのつくられる宿主細胞系、L1タンパク質中での変異(例えば、C末切断)、純度のレベル、凝集体の存在の有無、VLPによるL1またはL1とL2の組合せの含有の有無によって影響される。再集合はスルフヒドリル還元剤の除去または酸化により生じる。
【0079】
上記したように、L1およびL2からなるVLPがL1に基づくVLPと同様の条件で解集合すると考えるのは合理的であるが、L2タンパク質は安定機能として働く。従って、L1およびL2からなるVLPの解集合には、より高濃度の還元剤、より長時間の接触、低いイオン強度、高いpHまたはこれらの組合せを非常に必要とする。あるいは、PVL1タンパク質から完全に構成されているVLPは、本明細書に述べるように、解集合され得、そして精製L2タンパク質(組換え法でつくられる)が再集合工程中に加えられる。
【0080】
VLP中に包含され得る部分は、治療的および診断的部分を含む。例えば、核酸配列、放射核種、ホルモン、ペプチド、抗ウイルス剤、抗癌剤、細胞生長調節剤、細胞生長阻害剤、サイトカイン、抗原、トキシンなどを含む。
【0081】
本VLPは、包含された望む部分を含有し、望む宿主、好ましくはヒトに投与されたときに、特定のパピローマウイルスによって普通感染した細胞、例えば上皮細胞や角化細胞に取り込まれ、それによって該包含部分のこれらの細胞への強力な内部移行がなされる。このことで本VLPの治療(予防に対して)ついての利用が容易になる。治療薬を望む細胞部位、例えば頚管癌部位へ運送し得るからである。一般にPVが難しいと、望む部分を標的細胞に運送する高度に選択性の手段を提供する。例えば、核酸配列、例えば薬効ポリペプチドをコードするDNA、またはアンチセンス配列を運送する手段を提供する。
【0082】
包含された部分は、もちろんVLP集合および/または安定性に有害な作用を与えるものであってはならない。この決定には、望む部分含有のVLPをつくり、VLP集合および/または安定性に対する作用があるかを評価する。
【0083】
DNAまたはRNAの場合、包含された核酸の配列は、8キロ塩基、PVゲノムのサイズまであり得る。しかし、典型的には、包含配列はより小さく、例えば1−2キロ塩基程度である。典型的には、これらのDNAは望むポリペプチド、例えば酵素、ホルモン、生長因子などの薬効のあるポリペプチドをコードする。この配列は、標的宿主細胞中でその発現を容易にする配列と操作的にさらに連結される。
【0084】
包含DNA含有のVLPの別の用途は、“プソイドビリオン”としてである。この点について、ヒト疾患に関与するパピローマウイルスを含む多くのパピローマウイルスは稀であり、インビトロで容易に繁殖さすことができず、抗体中和アッセイでの使用を容易にする量でヒト細胞源からたやすく精製できない。このことは、これらの特異的HPVウイルスを防ぐためのワクチンなどの治療薬の実現性を評価するのを妨げたり、困難にしている。保存が現在なされ得ないHPV型の例には、HPV−31、33、35および45がある。
【0085】
本発明は、かかる問題を失くす、少なくとも減少する。基本的に“プソイドビリオン”は、これらのウイルスに対応して構築される。これは、特定のPVのL1タンパク質またはL1とL2タンパク質の組合せから構成され、そしてさらに、該パピローマウイルスゲノムまたは選択し得るマーカーが包含されているVLPを含む。
【0086】
このプソイドビリオンは、対応VLPワクチンの効力を調べるインビトロ細胞の“感染能”アッセイで用いられる。基本的に、細胞を該プソイドビリオンに接触することでなされる。これらのプソイドビリオンはこのような細胞を結合し、該DNAの挿入を提供する。その後、該DNAの挿入は、既知方法、例えばハイブリダイゼーション法や、β−ガラクトシダーゼなどの選択性のマーカーの発現を基にする方法によって調べられる。
【0087】
これは、特定のHPVに特異的なL1またはL2タンパク質に対する抗体の存在または不存在の両方で行われる。挿入が阻害され、例えば選択性マーカーの発現低下に基づいて測定されると、L1またはL2タンパク質がウイルス中和抗体の産生を誘導した徴候である。
【0088】
本発明は、パピローマウイルスおよび特にヒトパピローマウイルスについてのVLPをつくるに用いられる。多くのHPV L1 DNAが文献に報告され、公に入手可能である。(参照、例えば、Baker, Sequence Analysis of Papillomavirus, Genomes, pp. 321-384; Long et al, 米国特許第5,437,931号, Cole et al, J.Mol Biol., 193:599-608(1987); danos et al, EMBO J., 1:231-236 (1982); Cole et al J.Virol., 38(3):991-995(1986)。)また、HPV L1 DNAが顕著に相同性を示すこともよく知られている。従って、所望のHPV L1 DNAは、例えば、既に報告されたHPV L1 DNAまたはそのフラグメントをポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)増幅におけるハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして使用して、容易に得られる。実際、多くのHPV L1 DNAがクローン化および発現されている。
【0089】
好ましくは、本発明における該HPV L1 DNAは、癌または尖圭コンジローマ関連のHPV由来であり、例えばHPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−45、HPV−51、HPV−52およびHPV−56は癌関連であり、HPV−6、HPV−11、HPV−30、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−54、HPV−55およびHPV−70は疣贅に関係している。しかしながら、対象の安定なカプソメアはいかなる所望のHPV L1 DNAからも産生し得る。
【0090】
一般に、選択されたHPVL1および選択的なL2配列は、所望の組換え宿主細胞系において発現され、解集合のためのHPVVLPを産生するのに用いられる。
【0091】
選択された宿主と発現ベクターは、VLPの産生を促進する条件で培養される。これは、選択された宿主系とベクターに含まれる調節性配列に大いに依存している、例えば、発現に誘導が必要かどうか。発現後、HPV VLPは宿主細胞から抽出される。抽出の方法もまた、宿主/ベクター系にある程度依存する。
【0092】
例えば、細胞内発現ベクターが選択されるとき、宿主細胞は溶解される必要があり、HPV VLPは溶解液から回収される。反対に、発現ベクターが分泌を容易にする配列を含んでいるとき、HPV VLPは培地から直接回収される。異形タンパク質を組換え宿主細胞および培地から回収する方法は、当業者によく知られている。
【0093】
HPV L1配列は、HPV VLPを再生可能の収率で発現するために提供されるいかなる宿主細胞においても発現される。組換えタンパク質の発現に適切な宿主系は、よく知られており、例として、細菌、哺乳動物細胞、イースト菌および昆虫細胞がある。好ましい発現系には、実施例に使用されるバキュロウイルス/昆虫細胞系が含まれる。この系は高いタンパク質収率を提供する。しかしながら、HPV L1およびL2タンパク質は、他の系、特に細菌およびイースト菌でも産生される。
【0094】
DNA配列をコードする対象のHPV L1の発現をクローン化するのに適切なベクターは、当業者によく知られており、商業的に入手可能である。さらに、クローニングと発現を達成するのに適切な調節配列、例えば、プロモーター、ポリアデニル化配列、エンハンサー、選択的マーカーなどもよく知られている。再生可能なタンパク質収率を得るための適切な配列の選択は、当業者の日常的業務である。
【0095】
VLPは、HPV予防ワクチンおよび診断に用いられる。解集合によりつくられたカプソメアも有用であり、配座性中和エピトープを提示し、中和抗体を誘導することが分かった。本発明VLPは、均等性を高め、潜在的に安定性を増すので利点がある。
【0096】
既に述べたように、本発明はいかなるHPV L1配列にも広く適用される。当業者に既知の種々のHPV型がある。さらに、特定の型のHPVが特定の感染症、例えば、扁平疣贅、皮膚疣贅、表皮異形成疣贅、病変および頚部癌に関係している。60以上の異なるHPV型がウイルス性ヌクレオチド配列相同性検査により臨床病変で同定されてきた。参照、例えば、Jenson et al, "Human papillomaviruses" In: Belshe, R. ed., Textbook of human virology, Second Edition, MASS:PSG, 1989:951およびKremsdorf et al, J. Virol., 52:1013-1018(1984)。HPV型は、感染部位、病理的特徴および臨床的外見および関係病変の臨床過程を部分的に決定づける。
【0097】
HPV型についての交差免疫がほとんどまたは全くなく、感染症に対する免疫がHPV型特異性と考えられるので、予防または処置を行おうとする各々の特異的HPV型について、組換えHPVVLPを産生する必要がある。しかしながら、L1タンパク質と遺伝子の相同性のため、ハイブリダイゼーション法が所望の特定L1遺伝子を単離するために使用できる。配列相同性を示すL1タンパク質の領域から選択されたヌクレオチドプローブは、他のL1遺伝子を単離するために使用し得る。ハイブリダイゼーション法は、当業者に既知である。参照、例えば、Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press, Washington, D.C. (1985); Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Maniatis et al, eds., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1982);およびMolecular Cloning, A Laboratory Manual, Sambrook et al, eds., Cold Spring Harbor Laboratory, Second Edition, Cold Spring Harbor, NY (1989)。別法として、PCR法をL1遺伝子または遺伝子フラグメントを増幅するのに使用し得る。参照、例えば、米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;および4,800,159号。
【0098】
ウイルス粒子はまた、特定のパピロ−マウイルス型、クローニングされたDNAおよび単離されたL1タンパク質をコードする核酸配列について単離される。ウイルス粒子の単離法とウイルスDNAのクローニング法が報告されている。参照、例えば、Heilman et al. J. Virology, 36:395-407 (1980); Beaudenon et al, Nature, 321:246-249(1986); Georges et al, J. Virology, 51:530-538 (1984); Kremsdorf et al, J. Virology, 52:1013-1018 (1984); Clad et al, Virology, 118:254-259 (1982); DeVilliers et al, J. Virology, 40:932-935 (1981); およびヨーロッパ特許出願第0133123号。
【0099】
別法として、特にヒトパピローマウイルスに関するL1タンパク質が単離され、予測したDNA配列に基づいてアミノ酸配列が決定され、核酸プローブが集合される。このプローブはL1遺伝子をパピローマウイルスDNAライブラリーから単離するのに使用される。参照、例えば、Suggs et al, PNAS, 78(11):6613-6617 (1981)。参照、Young and Davis, PNAS, 80:1194(1983)。
【0100】
上記したように、VLP形成は、発現なされる細胞型に何らか敏感である。従って、VLP解集合について出発物質として多量のVLPを産する系を選択することは利点がある。一般にこの発現系は、所望のL1タンパク質を有するベクター、適当な調節領域および適当な宿主細胞を含む。
【0101】
既に述べてきたように、バキュロウイルスベクターが好ましくは使用される。バキュロウイルス系がもたらす有利性は、細胞の大部分がトランスフェクション法よりも感染を利用するためにタンパク質を発現するように誘発される点である。バキュロウイルスは昆虫ウイルスであり、昆虫細胞(SF9)において成長するが、これらの細胞は、適切な立体配座のタンパク質を産生するのに重要となり得る糖鎖形成およびリン酸化を含むタンパク質を処理するための多くの真核細胞性メカニズムを保持している。バキュロウイルスベクター系は当業者に既知である。参照、例えば、Summers and Smith, Texas Agricultural Experimental Bulletin No. 1555 (1987); Smith et al, Mol. Cell Biol., 3:2156-2165 (1985); Posse, Virus Research, 5:4359 (1986); およびMatsuura, J. Gen. Virol., 68:1233-1250 (1987)。また、バキュロウイルス/感染細胞が、適切な立体配座を提示するHPV L1タンパク質を発現することが報告されている。
【0102】
適切な発現系における発現のために、L1遺伝子または修飾L1遺伝子を、操作できるように発現ベクターに結合し、宿主細胞に導入して、その細胞によりL1タンパク質を発現させる。適切な調節領域を有する遺伝子は、発現のための適切な方向および読み取り枠において提供される。遺伝子構築法は当業者に既知である。参照、特に、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Sambrook et al, eds., Cold Spring Harbor Laboratory, Second Edition, Cold Spring Harbor, NY (1989)およびそこに引用されている文献。
【0103】
非常に様々な転写および調節配列が使用される。シグナルはウイルス源由来である。ウイルス源において、調節シグナルは高レベルの発現を有する特定の遺伝子に関係している。つまり、例えば、ウイルス源または哺乳動物源などの強いプロモーターが使用される。この方法で、本発明を実行するための最高の条件には、L1遺伝子を発現ベクターにクローニングすることを含む。発現ベクターは、形質導入または感染標的細胞におけるL1タンパク質の立体配座依存性ウイルス中和性エピトープを過発現する。
【0104】
本発明によって産生された特定の安定なHPVVLPのワクチンまたは診断試薬としての適合性は、無傷のビリオン上に存在する立体配座エピトープに反応または認識する抗体またはモノクローナル抗体との反応によって確認され、中和抗血清の産生を促進する能力に基づいている。中和抗体が産生されるかどうかを決定する適切なアッセイは、当業者に既知である。これはHPVワクチンに使用されるべきHPVカプソメアの本質的特徴である。この方法において、HPVVLPが抗HPV中和抗体をつくるかどうか証明される。このように、他の発現ベクターおよび発現系は本発明において利用するために検査される。
【0105】
既に述べてきたように、本発明のVLPは、パピローマウイルス感染について検出、診断、血清型判定および治療に利用され得る。診断または血清型判定に利用されるとき、本発明によるVLPは、種々の標識および標識法のいずれを用いても標識される。本発明において使用され得る標識型の例には、限定するわけではないが、酵素標識、放射性同位体標識、非放射性同位体標識、蛍光標識、毒素標識、化学発光標識が含まれる。
【0106】
適切な酵素標識の例には、リンゴ酸ヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、イースト菌アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどがある。
【0107】
適当な放射性同位体標識の例には3H、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、211At、212Pb、47Sc、109Pdがある。
【0108】
適切な放射性蛍光標識の例には、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、およびアロフィコシアニン標識、o−フタルデヒド標識、フルオレサミン標識などがある。
【0109】
適切な毒素標識の例には、ジフテリア毒素、リシンおよびコレラ毒素がある。化学発光標識の例には、ルミナル標識、イソルミナル標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識およびアクリジニム塩標識、シュウ酸塩標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、エクオリン標識などがある。
【0110】
当業者は、本発明において使用し得る他の適切な標識が分かるであろう。これらの標識の被標識物との結合は、当業者が通常知っている標準的技法を用いて達成し得る。典型的は技法は、Kennedy, J. H., et al, Clin. Chim. Acta, 70:1-31 (1976)および Schurs, A. H. W. M., et al, Clin. Chim. Acta, 81:1-40 (1977)に記載されている。後者に記載されているカップリング技法は、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸塩法、ジマレイミド法、m−マレイミド−ベンジル−N−ヒドロキシ−コハク酸イミドエステル法であり、これらの方法はすべて参照することにより、本明細書の一部とする。
【0111】
本VLPを用いる抗HPV抗体の検出は、担体の使用を通して改良され得る。よく知られた担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよび四三酸化鉄がある。担体の特性は、本発明の目的のためある程度可溶性であるかまたは不溶性であるかのどちらかである。当業者は、結合タンパク質に適切な多くの他の担体に留意し、また通常の実験を行うことにより、それを確かめることができるであろう。
【0112】
しかしながら、最も重要な本発明の態様は、PVワクチンの開発である。本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体中に含まれる宿主における中和抗体の形成を誘導するのに充分な、本HPV VLPの量を含む。
【0113】
ワクチンを含有する本VLPの投与は、薬学的に許容されるいかなる方法、例えば、経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、局所的投与を例として含む、非経口的、局所的、全身的方法によって達成される。投与方法は、感染の天然経路を含む要因に依存する。投与用量は、年齢、健康状態、体重、もしあれば同時期の治療の種類および特定ヒトパピローマウイルスの特性と型を含む要因に依存する。ワクチンは、経口投与にはカプセル、溶液、懸濁液またはエリキシル、非経口または鼻腔内使用には溶液または懸濁液などの無菌性液体製剤などの用量形態で使用される。生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水などの不活性な免疫学的に許容される担体が好ましくは使用される。
【0114】
ワクチンは、治療に効果的な量で投与される。つまり、保護的免疫応答を産生するのに充分な量ということである。一般的に、約0.1mg−約20mgタンパク質の範囲の用量で、もっと一般的には、約0.001mg−約100mgタンパク質の範囲の用量で投与される。単回または多回用量で投与される。
【0115】
本発明の方法は、パピローマウイルス感染を防止するためのワクチンを含むHPVVLPの製造を可能とする。さらに、本発明の方法に従って、ヒト特異的パピローマウイルスのいかなる免疫原性型に対してもワクチンをつくり得る。
【0116】
1以上のPV型がPV感染に関係しているので、ワクチンは1以上のPV型由来の安定なHPVVLPを含み得る。例えば、HPV16および18は子宮頚癌に関係しているので、子宮頚部異常増殖のためのワクチンはHPV16;HPV18;またはHPV16および18の両方のVLPを含み得る。
【0117】
実際、種々の異常増殖がPV感染に関係していることが分かっている。例えば、HPV3aおよび10は、扁平疣贅に関係している。HPV3a、5、8、9、10および12を含む多くのHPV型が表皮異形成疣贅(EV)に関係していることが報告された。HPV1、2、4および7が扁平疣贅に、HPV6b、11a、13および16が粘液細胞膜の病変に関係していることが報告された。参照、例えば、Kremsdorf et al, J. Virol., 52:1013-1018 (1984); Beaudenon et al, Nature, 321:246-249 (1986); Heilman et al, J. Virol., 36:395-407 (1980); およびDeVilliers et al, J. Virol., 40:932-935 (1981)。従って、対象のワクチン製剤は、所望の保護により異なるHPV型からの再集合VLPの混合物を含む。
【0118】
指摘したように、本発明のHPVVLPはまた、血清型判定に、および血清型判定キットに組み入れて使用される。
【0119】
血清学的検査において、キットは、対象のHPVVLPと酵素基質、標識抗体のような検出手段とを含む。
【0120】
これまで本発明について一般的に記載してきたが、下記の実施例によって、より詳細に述べる。特に記さない限り、限定するわけではない。
【実施例】
【0121】
実施例では、下記の原材料および方法を使用した。
【0122】
材料および方法
HPV−11 VLP
精製タンパク質を用いるVLP−解集合および再集合の研究に使用のため、HPV−11 L1タンパク質は、Ghim et al,In M. A. Stanley (ed.) Immunology of Human Papillomaviruses, Plenum, New York, pp 147-152 (1994)に記載された多面体プロモーターの完全L1読取り枠下流をコード化する組換えバクロウイルスにより感染させたトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni、ハイ・ファイブ(商標))細胞で異種発現させた。感染の約72時間後に細胞を採取し、遠心分離により沈殿させ、冷凍した。VLPを製造するため、細胞ペーストを、ホモジナイゼーション緩衝液(20ミリモルNaH2PO4、150ミリモルNaCl、pH7.4、10mg/mlロイペプチン、1mg/mlアプロチニン、および1mg/mlペプスタチンA含有)に再懸濁し、マイクロフルーイダイザー(マイクロフルーイディックスHC8000/3A型)中に溶解した。次いで、ホモジネート化したライゼートを100000×gで90分間遠心分離し、HPV−11 VLP含有ペレットをCsCl(405g/L)含有PBSに再懸濁した。次いで、澄明化したライゼートを83000×gで一夜遠心分離し、VLPバンドを集めた。VLPをPBS−0.5モルNaCl中に希釈することにより、30%および63%スクロースで構成される2成分段階勾配で層状に重ねた。勾配を167000×gで3時間遠心分離し、精製したVLPバンドを30%および63%スクロース溶液間の界面で集めた。次に、VLPを選ばれた緩衝液(PBS、またはPBSにNaClを加えて0.3モルまたは0.5モルの最終濃度にする)に透析し、4℃で貯蔵した。参考タンパク質として牛血清アルブミンを用いるブラッドフォード検定法(Bradford et al., Anal. Biochem., 72: 248-254 (1976))によりタンパク質濃度を測定し、(Suzich et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:11553-11557 (1995))による記載に従いL1含有率を測定した。含水細胞ペースト25−30gから出発し、上記プロトコルにより15−25mgのHPV−11 VLPを生成した。
【0123】
HPV−16Tr VLPs
精製時におけるVLP−解集合および再集合の研究に使用のため、HPV−16Tr L1タンパク質(C末端の34アミノ酸が欠失している変異形HPV−16 L1タンパク質を含む)は上記のようにハイ・ファイブ(商標)細胞で発現させた。細胞ペーストを、抽出緩衝液(10ミリモルTris、1.0%トライトン X−100、pH6.0)に再懸濁し、攪拌により混合し、そして1,000×gで短時間遠心分離した。HPV−16Tr VLP含有ペレットを20ミリモルTris、0.1M NaCl、pH8.0緩衝液に再懸濁し、短時間ボルテックスし、そして3,000×gで30分間遠心分離した。上清を回収し、0.45μ酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、次いで4%βMeの存在下または非存在下で2時間以上4℃でインキュベーションし、その後、カラム精製を試みた。透明の、濾過した上清(+/−βME)を別のイオン交換樹脂に低導電率値(5−15ミリオーム)で適用し、数カラム体積の平衡緩衝液で洗浄し、そして上昇するNaClの勾配で溶出した。残存DNAおよびタンパク質汚染を取り除くHICの利用性を試験するため、IECからの溶出L1タンパク質のピークを含む画分をプールし、硫酸アンモニウムを0.7Mに調節し、同緩衝液で平衡化したHICカラムに適用した。カラムを数カラム体積の平衡緩衝液で洗浄し、次いで、L1タンパク質をHICカラムからより低い硫酸アンモニウム濃度で溶出させた。精製工程の最終産物(+/−βME)をPBS(0.5M NaCl)で大量に透析し、純度、収率および残存DNAについて比較した。VLPsの様子を電子顕微鏡および直線状スクロース勾配分析により特徴付けた(以下参照)。
【0124】
スクロース密度勾配遠心分離
これらの実験では、3タイプのスクロース密度勾配を用いた。第一に、30%スクロースクッションでの遠心分離を用いることにより、小さな可溶性成分へVLPを解集合するのに適した条件を同定した。VLP(50−100μg総タンパク質)プラスまたはマイナス可能な崩壊剤を含む100−200μlの反応混合物を、4.8mlの30%スクロース(PBS−0.5モルNaCl中w/w)を充填した5ml遠心管上部に層状に重ね、スイングバケットローター中4℃で2時間197000×gで遠心分離した。50μlアリコートを管の極上部から採取し、2Xラエムリ試料調製緩衝液(Laemmli, U.K. Nature, 227:680-685 (1970))と混合した。30%スクロースクッションの残りをピペットで除去し、「ペレット」(一般的には何も見えない)を100μlの1Xラエムリ試料調製緩衝液に再懸濁した。次いで、30%スクロースクッションの上部または下部でのHPV−11 L1タンパク質の存在を、SDS/PAGEにより測定し、ディジタル化されたゲル分析によりL1の相対量を定量化した。第二に、5−20%直線スクロース密度勾配でのレートゾーン遠心分離法により、解集合されたVLPの状態を測定した。解集合されたVLP(400ml中100−200μg総タンパク質)を、5−20%スクロース(PBS−0.5モルNaCl中w/v)から成る前調製11.6ml勾配上部に層状に重ね、スイングバケットローター中4℃で24時間111000×gで遠心分離した。勾配全体からフラクション(0.5ml)を集め、「ペレット」(一般的には何も見えない)を、ダウンスホモジナイゼーションにより0.5mlのPBSに再懸濁した。勾配全体に及ぶHPV−11 L1タンパク質の位置を、イムノブロッティングにより測定した。沈降係数が確立された標準タンパク質(エシェリヒア・コリ(E.coli)β−ガラクトシダーゼ、19S、ウシ肝臓カタラーゼ、11.3S、牛血清アルブミン、4.3S)を用いて勾配を検定し、フラクションにおけるスクロースのパーセンテージを屈折率測定により決定した。
【0125】
第三に、初期、解集合および再集合VLPの状態を、10−65%直線スクロース勾配でのレートゾーン遠心分離法により測定した。様々な集合状態におけるHPV−11 L1タンパク質(400μl中100−200μg総タンパク質)を、10−65%スクロース(PBS−0.5モルNaCl中w/v)から成る前調製11.6ml勾配上部に層状に重ね、スイングバケットローター中40℃で2.5時間188000×gで遠心分離した。勾配を集め(1.0mlフラクションで)、分析し、上記要領で、ただし追加の検定標準物質としてパルボウイルスB19(70S)およびHPV−18 L1 VLP(160S)を用いて検定した。
【0126】
ゲル電気泳動
「SDS/PAGE」 SDS/PAGEを、主にLaemmli(Laemmli, U.K., Nature, 227:680-685 (1970))の方法に従って行った。試料を試料調製緩衝液と混合し、2分間沸騰させ、ミニフュージ中で短く回転させ、4%濃縮用ゲルと共に7.5%(図1)または10%(図2−4)ミニゲルに充填した。ゲルを室温で約1時間20mAの一定電流で泳動させ、タンパク質をクーマシーブリリアントブルーR250染色により明視化した。
【0127】
イムノブロッティング
SDS/PAGEゲルからのHPV−11 L1のエレクトロブロットを、主としてTowbin et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:4350−4354 (1979))の方法に従い製造した。4℃で一夜PBS中1%の脱脂乳タンパク質によりブロットを遮断した。ブロットをAU1(Berkely Antibody Co.)、パピローマウイルスL1タンパク質の線形エピトープに対し指向したマウスモノクローナル抗体(25)で90分間プローブし、PBS、0.1%トライトン X−100で洗浄し、次いで30分間再遮断した。次に、ブロットを40分間HRP−標識ヤギ抗マウスIgG(Southern Biotechnology Associates, Inc.)とインキュベーションし、上記と同様に洗浄した。次に、ブロットをECLウェスタンブロッティング試薬(Amersham)で展開し、エックス線フィルムに暴露した。
【0128】
ゲルの分析
モノマーおよびオリゴマーL1の分子量を、標準タンパク質(See, Jackowski et al., In T. E. Creighton (ed) Protein structure: a practical approach, IRL Press, NY, pp1-21, (1989))と比較して、7.5%SDS/PAGEでのRf値から決定した。指示された場合、ゲルをヒューレット・パッカード・スキャンジェット・プラス平床濃度計でディジタル化し、スキャン分析ソフトウェア(バージョン2.2、;スペコム・リサーチ)を用いてバンドの相対強度を測定した。
【0129】
電子顕微鏡法
タンパク質試料をホルムバールおよび炭素被覆銅グリッド(Electron Microscopy Sciences)に定着させ、ブロット乾燥し、新たにろ過した2%ホスホタングステン酸(pH6.8)で染色した。100KVの加速ボルト数でJEOL1005型透過型電子顕微鏡によりグリッドを調べ、15−25000倍の名目倍率で撮影した。
【0130】
固相酵素免疫測定法(ELISA)
PBS−0.3モルNaCl中HPV−11 L1 VLP(0.5−1.0mg/ml L1)を4℃で処理せずに貯蔵するか、またはβME(5%の最終濃度まで)または2.0モル炭酸緩衝液、pH9.6(200ミリモル炭酸の最終濃度まで)の追加後4℃で一夜インキュベーションした。次いで、処理試料の一分量を、4℃で24時間以上4×1L PBS−0.5モルNaClに対して透析した。試料を全て0.8μg L1/mlの濃度に希釈し、マイクロタイタープレートのウェル(1ウェル当たり80ng L1)中に分配した。未処理VLPおよび透析物質をPBS中へ希釈した。後続の透析を行わなかったβME処理試料を、5%βME含有PBSに希釈し、200ミリモル炭酸中でインキュベーションした非透析試料を200ミリモル炭酸(pH9.6)に希釈した。37℃で1時間インキュベーション後、プレートを0.1%トウィーン20含有PBS(PBS−Tw)で洗浄し、PBS中5%脱脂乳タンパク質で遮断した。モノクローナル抗体(ペンシルバニア州立大学より購入した腹水から精製した、AU1、またはH11.F1およびH11.A3(Christensen et al., J. Virol., 64: 5678-5681(1990)))をPBS中1%脱脂乳で希釈し、ウェルに加えた。室温で2時間インキュベーション後、プレートをPBS−Twで洗浄し、HRP−標識ヤギ抗マウスIgGを加えた。室温で1時間後、プレートを上記と同様に洗浄し、HRP基質で展開した(Kirkegaard and Perry Laboratories)。15分終点で光学密度測定を405nmで行った。デュプリケイトのウェルの平均を最終光学密度値として計算した。
【0131】
HPV−11中性化アッセイ
オリジナル精製HPV−11 VLPに対する抗血清、および長時間メルカプト還元剤にさらし、次いで透析による還元剤除去中に再集合するHPV−11 VLPがBALB/cマウスで生じた(グループ5)。マウスに、1mg/mlアルヒドロゲル添加剤に吸着させたVLPs1μgを、0、4および9週間、最後には死ぬ13週間目まで注射した。マウスに抗血清が生ずるかどうかを決定することにより、HPV−11ウイルスを中性化し得、ヒトセルライン(HaCat)で特異的HPV−11スプライスmRNAの発現を防ぐ抗血清能を試験した。
【0132】
HaCat、不滅のケラチン生成セルライン(Boukamp et al., J. Cell Biol., 106: 761-771 (1988))はDr.Norbert Fusenigにより提供された。細胞は、ペニシリン(100 units/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を添加した154/HKGS(Cascade Biologics, Inc.)で、24ウェルプレートで増殖し集合した。Dr.John Kreiderから購入したHPV−11Heraheyショックウイルス(Kreider et al., J. Virol., 61: 590-593 (1987))を氷上で25秒間超音波処理し、154/HKGS培地で希釈し、1時間37℃でインキュベーションした。培地をHaCaT細胞から吸い取り、希釈ウイルス0.5mlをウェルあたり加えた。対照として、各プレートにつき1つの細胞ウェルにウイルスのない培地0.5mlを入れた。抗体を介する中性化のために、抗血清を154/HKGSで希釈し、固定量のHPV−11ストックウイルスと共に最終体積0.5mlで1時間37℃でインキュベーションし、その後、HaCaT細胞に加えた。新鮮培地を、感染4日後細胞の各ウェルに添加し、6日目に細胞を回収し、総細胞性RNAをTri Reagent(Molecular Research Center, Inc.)を用い調製した。最終RNAペレットをDEPC処理水20μlに再懸濁し、分光光度計で定量した。
【0133】
HPV−11特異的スプライスmRNAの発現を防ぐ抗血清能を逆転写酵素(RT)−PCRで決定した。RT反応は、鋳型として総RNA 2μgおよびプライマーとしてオリゴdTと共にFirst Strand cDNAキット (Boehringer Mannheim)を用い行った。繰り込みPCRはHPV−11 E1∧ E4 cDNAの検出に必要であった。初回増幅により、各RT反応から25%のcDNAが生じ、フォーワード・アウトサイド・プライマーとして5'−TACAAGACCTTTTGCTGGGCACA−3'(HPV−11ゲノム配列中の塩基765−787に位置)およびリバース・アウトサイド・プライマーとして5'−AAAGGCAGGAAAATAGCACAC−3'(HPV−11ゲノム配列中の塩基4088−4110に位置)で30サイクルのPCRを行った。10%の初回PCR混合物を繰り込み反応に使用し、繰り込みフォーワード・プライマーとして5'−ATATTGTGTGTCCCATCTGCG−3'(塩基792−812に位置)および繰り込みリバース・プライマーとして5'−CAGCAATTTGTACAGGCACTAC−3'(HPV−11ゲノム配列中の塩基3877−3898に位置)で30サイクルのPCRを行った。初回および繰り込みPCR反応は、Hot Wax beads(1.5mM)、および200μM dNTPs、フォーワードおよびリバースプライマーそれぞれ125ngおよび2.5単位のTaqポリメラーゼ(Perkin-Elmer)を伴うpH9.5緩衝液(InVitrogen)で、最終体積50μlで行った。初回および繰り込みPCRは両方とも温度プロファイルは、80℃/5分間、95℃/30秒間、72℃/30秒間であり、最後の伸張は72℃で10分間であった。
【0134】
対照として、アッセイがHaCaT細胞から抽出したmRNAを検出できることを説明するため、全cDNAサンプルを、分離PCR反応に、上記(Smith et al., J. Invest. Dermatol., 105:1-7 (1995))同様記載し増幅したスプライス細胞性β-アクチンmRNAに特異なプライマーと共に使用した。
【0135】
すべてのPCR産物を2%アガロースゲルの電気泳動で分離し、臭化エチジウム蛍光発光により視覚化した。
【0136】
実施例1
HPV−11 VLPの定量的な解集合
比較的多量のHPV−11 L1 VLPをVLPの解集合および再集合の試験のための出発物質として製造した。HPV−11 L1 VLPをCsClおよびスクロースの勾配遠心分離により組換えバキュロウイルスを感染させたHigh Fivet(商標)細胞から分離した。SDS/PAGEの比密度分析に基づいて計算されたこれらのL1調製物の純度は、70−90%の範囲であった(図1、レーン2を参照)。加えて、直線スクロース勾配では、個々のVLPおよび凝集したVLPの混合物に関して予想されるように、大部分のタンパク質が移動し(図4a)、電子顕微鏡では、中程度および完全な大きさ(50−55nm)の粒子の混合物がはっきり見えた(図5a)。
【0137】
集合L1 VLPを安定化する共有結合的相互作用および非共有結合的相互作用は完全に知られていないが、パピローマウイルスのVLPおよび関係のあるポリオーマウイルス ビリオンおよびVLPに関する初期の研究は、イオン強度、二価カチオン(Bradyら,J. Virol.,23:717−724(1977);Salunkeら,Biophys. J.,56:887−900(1987))、およびジスルフィド結合(Sappら,J. Gen. Virol.,76:2407−2512(1995);Volpersら,Virology,200:504−512(1994))の重要性を提唱した。特に、Sappおよび共同研究者達は、HPV−33 VLPのL1タンパク質の50パーセント以下が、見掛けMrがL1のトリマーと一致する、ある範囲のより大きなオリゴマーにジスルフィド結合すること、そして穏やかな還元条件が、HPV−33 VLPをカプソメアのレベルまで部分的に分解することを免疫ブロッティングにより実証した(Sappら,J. Gen. Virol.,76:2407−2412(1995);Volpersら,Virol.,200:504−512(1994))。我々の研究では、還元剤の不存在下において、Mrが55,000DaであるHPV−11 L1タンパク質の一部分のみがSDS/PAGEを移動した(図1、レーン1)。HPV−11 VLPのL1タンパク質の約40%(パーセンテージは、様々なVLP調製物の間で変わった)は、推定されるMr値が約144,000Da(恐らくは、L1トリマー)および210,000Da(恐らくは、テトラマー)である、より大きなオリゴマーにジスルフィド結合した(図1、レーン1)。L1オリゴマーは、シングルバンドとしては移動せず、大きさが不均一であるようだった。〜200,000Daのオリゴマーもまた、Sappおよび共同研究者達による免疫ブロット(Sappら,J. Gen. Virol.,76:2407−2412(1995);Volpersら,Virol.,200:504−512(1994))で、広くてより高い分子量のバンドの一部分として観察された。これらの結果は、HPV−11 VLPにおけるL1タンパク質の一部分がより高いオリゴマーにジスルフィド結合することを示す。VLPの安定性におけるジスルフィド結合および他の相互作用の役割を研究するため、VLPの解集合に関する迅速スクリーニングアッセイを開発した。精製HPV−11 L1 VLPを、様々な処理の前および後の両方ともに、30% スクロースクッションの上部に重層し、遠心分離して、30% クッションの上部および下部でのL1タンパク質の分布をSDS/PAGEにより視覚化した。無傷のVLPは、30% スクロースクッションを通ってペレットとなることが予想された。凝集しないカプソメアおよびL1モノマーは、クッションの上部に残留することが予想された。このアッセイの一例を図2に示す。L1タンパク質の相対分布を定量するために、ゲルをデジタル化し、クッションの上部および下部でのL1のバンドの全強度を測定した後、いずれかの位置で見出されるL1染色強度のパーセンテージを計算した。数多くのそのような測定の結果を表1および2に作表する。図2で実証されるように、精製VLP出発物質は、30% スクロースを通って沈降し、推定されるように、L1は上部では見られなかった。しかしながら、高濃度の還元剤 β−メルカプトエタノール(βME)とインキュベーションすると、L1タンパク質は、主として、30% スクロースクッションの上部に見出されたことにより、還元剤は、HPV−11 VLPをより小さくて凝集しない成分に解集合したことが示された。興味深いことに、VLPの最大解集合は、典型的には、非常に高濃度の還元剤(この場合、5%、または713mM、βME)への暴露を比較的長い時間(4℃で16時間以上)必要とした。より低い濃度の還元剤、またはより短い時間の還元は、VLPの解集合で確実に有効なものではなかった。低濃度のキレート化剤の添加は、解集合を高めなかった(図2および表1)。
【0138】
還元剤に加えて、VLPの定量的な解集合に関する他の重要な変数は、解集合反応の間のイオン強度およびVLP出発物質の溶解度であることが見出された。以前、ポリオーマウイルスビリオンに関して観察されたように、より低いイオン強度条件は、VLPを不安定にする(Bradyら,J. Virol.,23:717−724(1977))が、Sappら(J. Gen. Virol.,76:2407−2412(1996))は、VLPからのHPV−33カプソメア生成が0.15Mおよび0.6M NaClの間の塩濃度には感化されないことを報告した。HPV−11 VLPの場合、5% βMEに16時間暴露したVLPの最大解集合(〜90%)は、「生理的」イオン強度(すなわち、0.15M NaCl)で観察されたが、イオン強度が増大するにつれて、それ相応にあまり有効ではなくなった(表1)。イオン強度の増大による安定化効果は、VLPを還元剤とより長い時間または高温でインキュベートすることで部分的に抑制され得た。しかしながら、VLPを5% βMEと4℃で120時間または24℃で24時間インキュベートすると、解集合の範囲は、0.5M NaClで60−70%まで増大したが、解集合はまだ少しも完全ではなかった(データは示していない)。さらにまた、定量的な解集合のためには、VLP出発物質の凝集の程度もまた重要であった。ここに報告する実験では、VLP溶液を様々なイオン強度の緩衝液に透析して、解集合試験で使用するまで4℃で保存した。数日後、特に0.15M NaClでは、溶液が僅かに濁るようになり、ある程度の凝集を示した(沈殿は、ほとんどまたは全く観察されなかったが)。その濁ったVLP溶液の還元剤での処理は、最初の可溶性VLP溶液で観察されたのと同程度の解集合を与えず、凝集したVLPが解集合に抵抗することを示した。しかしながら、凝集した物質(製造年月日により、全VLPの10−50%の範囲である)を濾過により除去すると、残留する可溶性VLPは、最初の可溶性VLP出発物質と同程度に再び解集合され得た。
【0139】
興味深いことに、高濃度のキレート化剤でさえも、カチオンのキレート化は、VLPの解集合に著しく影響を及ぼさなかった。VLPの200mM EDTAまたはEGTA緩衝液(PBS−0.3M NaC、pH 7.4)への透析は、明らかな解集合を全くもたらさず、10mM ジチオトレイトール(DTT)の透析緩衝液への添加は、ほとんど効果がなかった(表2)。高濃度のキレート化剤がVLPを解集合できないことは、電子顕微鏡分析により確認されたが、EDTA(しかし、EGTAではない)は、VLPを僅かに膨潤させるようであった(データは示していない)。これらの濃度のキレート化剤はいずれも、強固に結合した構造的に重要なイオンを抽出するには不十分であり、またはカチオンは、VLPの構造的完全性を維持するのに必須ではない。逆に、NaHCO3緩衝液(pH 9.6)の濃縮したアリコートをVLP溶液に最終濃度が200mM カーボネート(PBS−0.3M NaCl)となるまで加えると、VLPの著しい破壊が引き起こされた(表2)。DTTを(最終濃度が10mMとなるまで)加えても、カーボネートが誘発する分解はさらに高められなかった。VLPと200mM カーボネート/10mM DTTとのインキュベーションは、ELISAにおいてHPVビリオンまたはVLPを変性させるために一般に使用される(Favreら,J. Virol.,15:1239−1237(1975);Christensenら,J. Virol.,64:3151−3156(1990);Christensenら,J. Gen. Virol.,75:2271−2276(1994))。30% スクロースクッションアッセイにより測定されるように、HPV−11 VLPとpH 9.6のグリシン緩衝液(最終濃度200mM)とのインキュベーションは、VLPの破壊をほとんど引き起こさなかったので、カーボネートの効果は緩衝液に特異的であって、単にpHの関数ではないようである(表2)。同様に、Bradyら(J. Virol.,23:717−724(1977))は、アルカリ性のpHだけではなく、アルカリ性のpHでのカーボネート緩衝液がポリオーマウイルスのビリオンを解離することを観察した。しかしながら、Bradyら(J. Virol.,23:717−724(1977))により提示されたように、pH 9.6での200mM EDTA(+/− 10mM DTT)がVLPの解集合で全く効果がなかったように(データは示していない)、pH 9.6でのカーボネートの特異的な効果は、カーボネートの可能性のあるキレート化能力によるものであるとは思われない。
【0140】
実施例2
解集合HPV−11 VLPの特性決定
高濃度の還元剤に長期間暴露した後、精製VLPは、カプソメアのレベルまで分解されるようである。図3aに示すように、5% βMEとの4℃で16時間のインキュベーションにより生成した解集合VLPは、5−20% 直線スクロース勾配で移動し、沈降標準と比較して測定された平均沈降係数は、11.3±1.5S(n=5)であった。計算された沈降係数が16−18Sであるより大きな種(恐らくは、ダイマーのカプソメア)、およびペレット化された物質でさえも時折観察された。しかしながら、L1の10%未満は、勾配の上部(L1モノマーに関して予想される位置)またはペレット中(無傷のVLPまたは凝集したカプソメアに関して予想される場所)で検出されることは、精製VLP出発物質が主として長期間還元後に個々のカプソメアレベルまで解集合されることを提示した。この結論は、5% βMEと長期インキュベーションした後のVLPの電子顕微鏡分析により裏付けられ、平均して直径が9.7±1.2nm(n=15)である均一なカプソメアの視野(図5b)が描かれ、時折数個の大型凝集構造が見られた(この技術では、モノマーL1は検出されない)。推定されるカプソメアの直径は、低温電子顕微鏡法(11−12nm)で観察されたものより僅かに小さく(Bakerら,Biophys. J.,60:1445−1456(1991);Hagenseeら,J. Virol.,68:4503−4505(1994);Belnapら,J. Mol. Biol.,259:249−263(1996))、恐らく電子顕微鏡グリッド調製中における収縮に起因すると思われる。図3aおよび5bに示されたデータは、高濃度の還元剤への暴露時間が長いとき、精製された可溶性VLPはカプソメアの均一な集団に定量的に解集合されることを実証した。
【0141】
高濃度の還元剤に長期間暴露してHPV−11 VLPから生成されたカプソメアは、無傷のVLPから見出される構造的エピトープを含む。HPV−11−特異的モノクローナル抗体のパネルで、「変性」L1ではなく無傷のHPV−11 L1 VLPと反応するものが報告されている。これらのモノクローナルには、HPV−11ビリオンにおける優性中和エピトープを認識することが立証されたH11.F1、およびH11.A3、すなわち独特な非中和構造依存的抗体がある(ChristensenおよびKreider,J. Virol.,64:3151−3156(1990);Christensenら,J. Virol.,64:5678−5681(1990))。予想通り、H11.F1およびH11.A3は、ELISAにより分析すると精製HPV−11 VLP出発物質と強く反応した(図6a)。しかしながら、これらの抗体はまた、還元剤への暴露によりVLP出発物質から生成されたカプソメアとも反応した(図6b)。すなわち、カプソメアは、無傷のVLPおよび真正ビリオンの表面で見出される構造依存的エピトープの少なくとも幾つかを有しており、E. coliにおいて発現されたHPV−11カプソメアに関してLiら(J. Virol.,71:2988−2995(1997))により行われた試験結果と一致している。これらの結果は、さらにモノクローナル抗体H11.F1およびH11.A3が、結合用の「天然様」立体配座を必要としながらも、先に報告されたようにVLP−依存的ではないことを立証している(Ludmererら,J. Virol.,71:3834−3839(1977))。
【0142】
対照的に、モノクローナル抗体 H11.F1およびH11.A3は、pH 9.6のカーボネート緩衝液での処理により解離したHPV 11 VLPを認識することはできない(データは示していない、Christensenら,J. Gen. Virol.,75:2271−2275(1994))。カーボネート処理を行ってもカプソメアの均一な溶液は得られなかったが、電子顕微鏡により調べると、部分的に凝集した小物体の不明瞭な混合物として現れた(データは示していない)。この研究結果は、5−20% 直線スクロース勾配でのカーボネートで処理したVLPの分析により部分的に確認されており、L1タンパク質は、主として、−4Sで移動したが、9−11Sでの小集団が観察され(図3b)、BPVビリオンに対するカーボネート緩衝液(pH 10.6、10mM DTT)の効果と一致していた(Favreら,J. Virol.,15:1239−1247(1975))。最後に、pH 9.6でのグリシン緩衝液により処理した場合、VLPはさらに小さな個々の粒子には解離されず(表2)、ある程度の効果が見られた。pH 9.6グリシンで処理したVLPは、電子顕微鏡では無傷で部分的に破壊されたVLPおよび凝集したVLPの輪郭不明瞭な混合物として現れた(データは示していない)。
【0143】
実施例3
HPV−11 VLPの定量的な再集合
HPV−11カプソメアからのVLPの再集合は、透析またはカラムクロマトグラフィーのいずれかにより還元剤を除去すると起こった。可溶性カプソメアの均一な調製物で出発して、還元剤の不存在下における長時間の透析は、限定された集団の再集合VLPを一貫して与えた(図4cおよび5c、d)。再集合VLPは、モノクローナル抗体 H11.F1およびH11.A3により認識される構造エピトープを保持した(図6)。
【0144】
再集合に関して、カプソメア(0.5−1.0mg/mlの全タンパク質で1−5ml)を4×1L PBS−0.5M NaClに対して4℃で24時間以上透析した;高い塩濃度を設定して、VLPを安定化した。キレート化剤の添加は、VLPを解集合する還元剤の能力を認め得るほどに高めなかった(表1)が、2mM EDTAの存在は、再集合を徐々に妨げて、150Sの粒子の適切に分離した集団として10−65% 直線スクロース勾配で移動するが、電子顕微鏡では平らで部分的に開口しているようであるVLPを与えた(データは示していない)。逆に、再集合反応の間の2mM Ca2+の添加は、10−65% 直線スクロース勾配分析により示すように、VLPを互いに付着させて、カルシウムの存在下に再集合したVLPは、ペレットに完全に移動した。しかしながら、Ca2+の存在は、その他の点では、電子顕微鏡で試験した場合の塩基性VLPの形態には影響を及ぼさないようであった(データは示していない)。最後に、カーボネートで処理したVLPのPBS−0.5M NaClへの透析は、VLPの再集合をもたらさなかった。その代わり、L1タンパク質は、電子顕微鏡分析および10−65% 直線スクロース勾配分析の両方により証明されるように、小さな可溶性成分または非晶質の凝集した沈殿のいずれかのままであった(データは示していない)。カーボネートで処理したVLPの透析は、構造特異的なモノクローナル抗体 H11.F1およびH11.A3との反応性を復活させなかった(図6d)。
【0145】
再集合HPV−11 VLPの特性決定
還元剤を除去した後、カプソメアがVLPに定量的に再集合した。驚いたことに、再集合VLPは、セシウムおよびスクロースの勾配で精製したVLP出発物質より粒径がずっと均一であった。3段階の解集合/再集合反応を10−65% 直線スクロース勾配により比較した場合、精製VLP出発物質は、勾配を超えて分布しており、多くの粒子(150−160S)は、無傷のVLPに関して予想される位置に移動したが、大部分のタンパク質は、勾配よりさらに下およびペレット中に移動した(図4a)。同様に、電子顕微鏡で試験した場合(図5a)、VLP出発物質は、完全な大きさを含め、様々な大きさの粒子、直径50−55nmのVLPの混合物であることが分かった。精製工程の初期の段階の直線スクロース勾配分析がより均一な粒径の分布を示す場合には、VLPの幾つかの破壊が抽出および精製の間に起こることは可能である(データは示していない)。
【0146】
高濃度の還元剤に長時間の暴露すると、上記のように、VLPがカプソメアに解集合した。VLP出発物質と比較すると、カプソメアは、10−65% 直線スクロース勾配の上部で移動し(L1は、ほとんど、または全く検出されなかった;図4b)、電子顕微鏡では、カプソメアの未破壊領域として見られた(図5b)。
【0147】
カプソメアの再集合は、均一な集団の球状で完全な大きさのVLPを与えた。再集合VLPは、10−65% 直線スクロース勾配の中央にバンドが現れ、推定される沈降係数が150.4±4.6S(n=7)であり、ペレット中または勾配の下部のいずれかで検出されるL1が精製VLP出発物質で観察されるよりずっと少なかった(図4c)。再集合VLPの均一性は、図5c、dで実証するように、電子顕微鏡で試験した場合により一層合致していた。主として、平均すると56.5±7.0nm(n=15)である、完全な大きさのVLPの範囲の粒子を検出し、幾つかの部分的に集合したVLP、またはより小さな複合体はほとんどはっきり見えなかった。本質的には、全てのカプソメアが、可溶性で濾過できる完全な大きさのVLPを再生するようである場合には、再集合工程の収率もまた印象的であった(最適な解集合条件下での出発物質から再集合VLPまでの全L1タンパク質の観点から平均すると、83%であった)。
【0148】
実施例4
ウイルス中和抗体を生成する最初の精製HPV−11 VLPおよび再集合HPV−11 VLPの能力の比較
再集合VLPをワクチン候補物質として上手く機能させるためには、実験動物に注射した場合、それらがウイルス中和抗体を誘起する能力を保持することが必須である。このことを試験するために、最初の精製HPV−11 VLPおよび解集合/再集合HPV−11 VLPの両方に対するポリクローナル抗血清を、方法の節に記載したように、BALB/c マウスにおいて生成した。各々の抗血清は、ELISAフォーマットでアッセイした場合、対応する免疫原に対して同等に反応性であった(データは示していない)。より重要なことには、感染性HPV−11ビリオンを必要とするRT−PCR中和アッセイ(Smithら,J. Invest. Dermatol.,105:1−7(1995))で試験した場合、免疫後の再集合HPV−11 VLPに特異的なポリクローナル抗血清が、最初の精製HPV−11 VLPに対して生成した抗血清で得られる中和価に等しい、10-5−10-6の中和価を示した(図7)。このことは、再集合HPV−11 VLPが、HPV−11ビリオンの非常に免疫原性でカプシドを中和する抗原ドメインを保持し、そして生殖器のHPV疾患の予防のためのワクチンとして働く可能性を有することを実証する。さらにまた、再集合VLPが完全な大きさ(すなわち、感染性ウイルスの大きさ)のVLPの均一な製造を示すならば、再集合VLPは、大きさが種々雑多である最初の精製VLPより強力な免疫原であろうことが可能であり、可能性は、現在、最初のVLPおよび再集合VLPの量を減少させながらマウスに投薬することにより試験している。
【0149】
実施例5
HPV VLPの精製中のVLP解集合および再集合の適用
上記のように、慣用のタンパク質精製法は、VLPのサイズ(20,000,000Da、55nm直径粒子)の使用に関して最適化されていない。特に、VLPの完全サイズは、樹脂上の殆どの反応性化学がVLPに立体的に近づけないため、殆どのクロマトグラフィー樹脂のキャパシティーおよび利用性を劇的に低下させる。しかし、この困難性は、細胞から抽出した粗VLPの解集合、解集合VLPの標準法を使用した精製、および所望の純度の段階でのVLPの再集合により避けることができる可能性がある。VLP精製に関する第2の懸念は、残余DNAによる汚染である。精製HPV−11 VLPで行った先の実験において、あるレベルの背景DNAが存続し、それはDNAseでの処理でも除去されず、DNAがVLP内に包含されているか、非常に強くそれらと会合していることを示す。VLPの解集合は、臨床的使用を意図した生物学的化合物の重要な懸念である、汚染DNAの増加した除去を可能にする。
【0150】
この可能性の試験において、HPV−16Tr VLPをバキュロウイルス感染昆虫細胞から抽出し、慣用のIECおよびHICクロマトグラフィーにより、方法のセクションに記載のように、スルフヒドリル還元剤の非存在下(無傷VLP)、または4%βMEの存在下(解集合VLP)のいずれかで精製した。後者の場合、βMEでまた平衡化したIECおよびHICカラムでのクロマトグラフィー前に、抽出VLPを4%βMEと>2時間、4℃でインキュベートした。両方の(即ち、スルフヒドリル還元剤の存在下または非存在下)精製工程での最終精製生産物を、4×1L PBS(0.5M NaCl)に対して透析し、純度、収率および残余DNAレベルを測定した。第3表に示すように、βME非存在下で精製した代表的調製物は、約60%のみの純度(タンパク質汚染に関して)およびヒトでの使用に望まれるのより高いDNA含有レベルのHPV−16Tr VLPをもたらした。逆に、解集合状態で精製したVLPの3つの調製物は、高い収率、有意に高いタンパク質純度および実質的に減少した残余DNAレベルにより特徴付けられた。解集合状態で精製したVLPの高いタンパク質純度は、図8に示すように、SDS/PAGEにより分析した時、容易に明らかとなる。再集合HPV−16Tr VLPの精製後のサイズおよび均質性は、精製HPV−11 VLPの再集合で観察させるものよりもさらに均質であるが、平均して、解集合なしで精製したHPV−16Tr VLPと同程度均質であり、ある場合には一様に均等な完全サイズのVLPを形成する(データは示していない)。これは、解集合なしで精製したHPV−16Tr VLPで観察されていないものである。
【0151】
精製HPV−16TrおよびHPV−11VLPの間のスルフヒドリル還元剤での長い処理の作用における興味深い差異がある。第1に、HPV−16Tr VLPは還元剤の低濃度および/または短い暴露時間では定量的に解集合するように見える(データは示していない)。これがHPV−16およびHPV−11 VLPの間の真性の差異を示すのか、それとも、HPV−11 L1タンパク質のC末のタンパク分解的切断がスルフヒドリル還元剤の存在下でVLPの分解も加速するという予備的試験での観察のようにHPV−16Tr L1タンパク質のC−末端切断によるものか、明らかではない。より興味深い性質は、スルフヒドリル還元剤有りの精製HPV−16Tr VLPの処理が、解集合HPV−16Tr VLPの直線状5−20%スクロース勾配分析を基にして、カプソメア、L1タンパク質およびL1モノマーの小さいオリゴマーの混合物を生成するように見えることである(図9)。しかし、透析による還元剤の除去により、この小さい可溶性成分の混合物は、直線状10〜65%スクロース勾配分析で証明されるように(図10)、そして電子顕微鏡分析で確認されるように(データは示していない)、無傷VLPに〜90%の収率で再集合することができる。これらの結果は、解集合条件が、可溶性の正しく折りたたまれたL1タンパク質を生成する限り、VLPがカプソメアのレベルに、またはより小さいL1オリゴマーにさえ解集合でき、無傷の完全サイズVLPへの再集合にまた十分であることを証明する。
【表1】


aVLP(0.5−1.0mg/mlタンパク質)を示したように4℃で処理し、30%スクロースクッションを通ったL1の分散を方法のセクションに記載のように測定した。複数の測定(n=3−7)±標準偏差を示す。
【0152】
【表2】


aVLP(0.5−1.0mg/mlタンパク質)を示したように16時間、4℃で処理し、30%スクロースクッションを通ったL1の分散を方法のセクションに記載のように測定した。二回の測定の平均値±範囲を示す。
【0153】
【表3】


a無傷VLP(−βME)の一つの精製物および解集合VLP(+βME、ラン1−3)の3種の精製物を比較し、それらは方法のセクションに記載のように製造した。スケールは、使用した細胞ペーストのグラムで示し、純度は、最初の細胞ペーストに存在する量と比較した最終生産物のSDS/PAGEの比重分析により測定し、DNAはThreshold法で測定し、ヒトで予測される最大個別量であるL1タンパク質100g当りとして報告する。
【0154】
結論
従って、本発明は、パピローマウイルスVLPのインビトロでの定量的解集合および続く再集合の正確な条件を提供する。記載のように、パピローマVLP解集合の先の試みは、ある程度、関連するパポバウイルスであるポリオーマウイルスについての研究に影響された。この研究では、ジスルフィドおよびカルシウムイオンのキレート化の両方がビリオン解集合に必須であると示されていた(Brady et al., J. Virol., (1977))。しかし、低レベルのキレート化剤(例えば、0.5−10mM EDTA)の存在下でのポリオーマウイルス解集合に最適化した低レベルの還元剤(1−10mM DTT)が、パピローマVLPの解集合にほんの僅かしか作用しないが(第1表、Li et al., (Id.) (1997))、部分的にトリプシン処理されたHPV−11 L1 VLPは上記の条件で解集合した(Li et al., (Id.) 1997))ことが、驚くべきことに判明した。しかし、Sappおよび共同研究者は、カプソメアがHPV−33 VLから、還元剤単独(20mM DTT)での処理で生成するが、VLP破壊の程度は測定されなかったことを証明した(Sapp et al., (Id.) (1995))。先に記載された本実験において、勾配分析により解集合を試験した時、“ペレット”中のL1タンパク質の存在の試験が必要であったことが判明した。多くの場合、勾配にまたがるフラクションの試験は、良好な分解が達成されたことを示した。しかし、ペレットの試験は、電子顕微鏡分析で確認されるように、見えなくても、大きな割合のタンパク質が可変性サイズのVLPの形に止まるかまたはそうでなければ凝集していることを示した。30%スクロースクッションアッセイの開発により、多くの解集合条件を速くスクリーニングし、VLPを小さい可溶性の成分に一貫して解集合するものを同定することが可能となった。個々のカプソメア(HPV−11 VLPに関して)またはカプソメアの混合物および正しく折りたたまれた小さいL1オリゴマーおよびL1モノマー(HPV−16Tr VLP)の均質溶液への定量的解集合が、非凝集VLPを中程度から低いイオン強度の緩衝液中の高レベルの還元剤で長時間処理することにより一貫して達成されることが判明した。
【0155】
記載のように、カチオンのキレート化がHVP−11 VLP解集合に実質的に影響しないという観察は、これが、カルシウムキレート化がビリオン解集合を促進し、カルシウムの添加がキレート化剤の作用に打ち勝つというポリオーマウイルスでの先の研究と対照的であるため、驚きであった(Brady et al., (Id) (1977))。同様に、Montross et al., (Id) (1991)は、通常核内でのみ集合しているポリオーマウイルスVLPが、恐らく細胞質カルシウム濃度を必要なレベルまで上昇させるカルシウムイオノフォアの添加に続いて細胞質内で形成されることを観察した。しかし、カルシウムはHPV−11 L1カプシド安定性には重要でないように見える。逆に、アルカリpHでの炭酸緩衝液での処理は、HPV−11 L1 VLPを“解集合”せず、ポリオーマウイルスで見られる結果と同様であった(Brady et al., (Id.) 1977))。しかし、この処理は、VLPが、炭酸処理に続くPBS−0.5M NaClへの透析により再集合しないため、より厳しいように見える。
【0156】
炭酸処理によるHPV−11 VLP解集合は、構造依存的、HPV−11−特異的モノクローナル抗体と反応できないL1タンパク質をもたらした。対照的に、HPV−11 L1 VLPの長い還元による解集合は、無傷HPV−11 L1 VLPおよびHVP−11ビリオンの両方の表面に見られる構造特異的エピトープを有するカプソメアをもたらした。これらの結果は、正しく折りたたまれたL1タンパク質のみがVLPに再集合する能力を有するという考えを支持する。
【0157】
インビトロでの完全なサイズのVLPへの効率的な再集合のために、本明細書に記載の結果は、出発物質の構造的完全性、可溶性および均質性が重要であることを示す。このようなカプソメアの集団(HPV−11 VLPに関して)またはカプソメアの混合物および正しく折りたたまれた小さいL1オリゴマーおよびL1モノマー(HPV−16Tr VLP)のチオール還元による生成に続いて、再集合が還元剤の除去後に本質的に起こる。再集合は、カラムクロマトグラフィー法、または大過剰の緩衝液に対する透析のいずれかによるスルフヒドリル還元剤の除去により達成され、VLP出発物質よりもサイズでより均質な、再集合した、完全サイズのVLPの集団を生じた。ポリオーマウイルスでの先の実験において、Salunke et al., (Id.) (1989)は、カプソメアからのVLP集合が、多様な、多形体二十面体集合を、集合条件の関数(pH、イオン強度およびカルシウム濃度)として生成することを観察した。興味深いことに、最も一貫して形成される構造は、ウイルスカプシドの72カプソメア二十面体に加えて、24カプソメア二十面体および12カプソメア二十面体であった。著者らは、ジスルフィド結合形成がポリオーマVLP集合を助けるが、高いイオン強度(2M硫酸アンモニウム)において、可変性のサイズのカプシドが、15mM6MEの存在下でさえ形成されるため、これは必須ではないことを記した。同様に、Li et al., (Id.) (1997)は、E. coli中で発現したカラム精製HPV−11カプソメアが、また15mM βMEの存在下で1M NaCl中でカプシド様構造を形成する能力を有することを観察している。しかし、高いイオン強度条件がなんらかの程度のカプシド形成に有利であるが、我々の実験によると、生理学的イオン強度でジスルフィド結合がHPV−11およびHPV−16Tr L1 VLPを共に保つために必要である。
【0158】
解集合反応が4℃で撹拌無しで典型的に行われた場合でさえ、最大の解集合のために、非常に高レベルの還元剤への長い暴露を必要とすることは興味深い。先に記載したように、安定化ジスルフィド結合が埋没して、近づくことができず、これらの結合の、局所構造変動による溶媒への暴露が非常に稀であるというのが一番ありそうな説明である。
【0159】
バルクでの完全なサイズのVLPに再集合する能力は、多くの可能性を開く。図7に示されるように、高用量で、再集合VLPは、精製VLP出発物質としてウイルス中和抗体を誘発することができる。再集合VLPが、粒子サイズに関して均質性が低い精製VLP出発物質と同程度の強い免疫原であるかを測定するために、これらの有効性を現在試験している。多くの異なるサイズおよび形の粒子が、インビボでの感染に続いて細胞の核内で観察されるが(Kiselev et al., J. Mol. Biol., 40:155-171 (1969))、恐らく完全なサイズのウイルスのみが生産的に感染する。記載のように、本再集合VLPは、本方法がより均質なVLP粒子を提供するので、より大きな安定性を示し得るであろう。更に、上記のように、再集合反応は、出発条件の大きな範囲での再集合を最適化するために、タンパク質濃度、pH、イオン強度および動態を変えることにより、更に促進し得る可能性がある。最後に、本発明は、選択化合物の濃縮溶液の存在下で再集合反応を行うことにより、外来化合物のVLP中へのパッケージングを可能にする。本発明は、上記のように、現在利用可能ではないHPVウイルスタイプの代用物として、または医薬または他の標的化合物の送達システムとして使用するためのプソイドビリオンの生成に使用できる。
【0160】
本発明は、その精神または不可欠な特徴から逸脱することなく、他の特殊な形態でも実施され得る。記載された態様は、あらゆる点において説明的なものにすぎず、限定的なものではないと見なされるべきであり、従って、本発明の範囲は、前述の記載ではなく添付された「特許請求の範囲」により示されている。特許請求の範囲の法的に同じ価値を有する意味および範囲内に含まれる修飾も全てその範囲内に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】精製HPV−11 L1タンパク質のSDS/PAGE分析。
【図2】HPV−11 VLP解集合の30%スクロースクッション分析。
【図3】解集合されたHVP−11 VLPの5−20%線状スクロース勾配分析。
【図4】様々な状態の集合におけるHPV−11 VLPの10−65%線状スクロース勾配分析。
【図5】種々の状態の集合におけるHPV−11 VLPの電子顕微鏡写真。
【図6】HPV−11構造特異的モノクローナル抗体を有する無傷および解集合VLPの反応。
【図7】HPV-11 ウイルスを中和する最初の精製HPV-11 VLPおよび再集合VLPに対する抗血清の性能比較。
【図8】集合(−βME)および解集合(+βME、2運転)状態におけるHPV-16TrVLPのSDS/ページ比較であり、解集合状態において精製VLPの更なる精製を示している。
【図9】解重合HPV-16TrVLPの5−20%線状スクロース勾配分析。
【図10】様々な重合状態におけるHPV-16TrVLPの10−65%線状スクロース勾配分析。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パピローマウイルス・ウイルス様粒子(VLP)を、カプソメア、小さいL1オリゴマーおよび/またはモノマーからなる群より選ばれた部分を含有する小さい、正しく折りたたまれたL1タンパク質に解集合する方法であって、この方法は、少なくとも70%の解集合を提供し、パピローマウイルスVLP含有組成物を長時間、高濃度のスルフヒドリル還元剤を含有し、最大0.5のイオン強度を有する溶液に接触せしめることを含む。
【請求項2】
還元剤溶液が最大約0.25のイオン強度を有する、請求項1の方法。
【請求項3】
還元剤溶液が約0.001から0.50のイオン強度を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
還元剤が、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、グルタチオン、ジチオエリトリトール、システイン、水素スルフィドおよびこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1の方法。
【請求項5】
解集合が、VLPの小さい正しく折りたたまれた部分への少なくとも約90%解集合をもたらす、請求項1の方法。
【請求項6】
いかなるプロテアーゼの使用も含まない、請求項1の方法。
【請求項7】
いかなるキレート剤の使用も含まない、請求項1の方法。
【請求項8】
パピローマウイルスVLPがL1タンパク質またはL1とL2タンパク質の混合物からなる、請求項1の方法。
【請求項9】
VLPがヒト・パピローマウイルスVLPである、請求項1の方法。
【請求項10】
該VLPが、HPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18、HPV−30、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−54、HPV−55、HPV−56、HPV−70およびこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項9の方法。
【請求項11】
解集合に使用されるVLPが精製される、請求項1の方法。
【請求項12】
該精製VLPが少なくとも50重量%の純度を有する、請求項11の方法。
【請求項13】
該精製VLPが約70から90重量%の純度を有する、請求項12の方法。
【請求項14】
解集合に使用されるVLPが実質的に不純である、請求項1の方法。
【請求項15】
不純VLPが解集合状態で精製され、精製化の所望の段階で再集合される、請求項14の方法。
【請求項16】
VLPが少なくとも50重量%の純度で再集合される、請求項15の方法。
【請求項17】
解集合が温度約4℃で行われる、請求項1の方法。
【請求項18】
該VLPが濾過されて解集合の前に凝集体が除去される、請求項11の方法。
【請求項19】
スルフヒドリル還元剤の濃度が少なくとも約1重量%である、請求項1の方法。
【請求項20】
スルフヒドリル還元剤の濃度が少なくとも約4重量%である、請求項19の方法。
【請求項21】
高度に均質のパピローマウイルス・ウイルス様粒子(VLP)含有の組成物をつくる方法であって、下記の工程:
(i)パピローマウイルス・ウイルス様粒子含有の組成物を長時間、高濃度の少なくとも1種のスルフヒドリル還元剤を含み、最大0.5のイオン強度を有する溶液と接触せしめて、少なくとも約70%の該VLPが小さい正しく折りたたまれたL1タンパク質含有の部分に解集合するようにし、
(ii)該小さい正しく折りたたまれたL1タンパク質含有の部分をVLPに、スルフヒドリル還元剤の除去または酸化により再集合せしめること、
を含む方法。
【請求項22】
スルフヒドリル還元剤が酸化または透析、濾過またはカラムクロマトグラフィーにより除去される、請求項21の方法。
【請求項23】
イオン強度が再集合工程(ii)中に0.5以上に上げられて、再集合VLPの安定性を高める、請求項21の方法。
【請求項24】
工程(i)で使用される還元剤の濃度が少なくとも1重量%である、請求項21の方法。
【請求項25】
該スルフヒドリル還元剤がグルタチオン、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、ジチオエリトリトール、システイン、水素スルフィドおよびこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項21の方法。
【請求項26】
解集合に用いられる溶液のイオン強度が0.25以下である、請求項21の方法。
【請求項27】
解集合に用いられる溶液のイオン強度が0.15以下である、請求項26の方法。
【請求項28】
工程(i)においてVLPをスルフヒドリル還元剤溶液と少なくとも2時間接触させる、請求項26の方法。
【請求項29】
該接触が少なくとも約16時間行われる、請求項28の方法。
【請求項30】
該接触が少なくとも16から24時間行われる、請求項29の方法。
【請求項31】
VLPがヒト・パピローマウイルスVLPである、請求項21の方法。
【請求項32】
該ヒト・パピローマウイルスVLPが、HPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18、HPV−30、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−54、HPV−55、HPV−56、HPV−70およびこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項31の方法。
【請求項33】
解集合に使用されるVLPが実質的に純粋である、請求項21の方法。
【請求項34】
解集合に使用されるVLPが実質的に不純である、請求項21の方法。
【請求項35】
該精製VLPが直径約>0.45μmより大きい凝集体を実質的に含まない、請求項33の方法。
【請求項36】
プロテアーゼおよび/またはキレート剤の使用を含まない、請求項21の方法。
【請求項37】
請求項21の方法によりつくられた均質のパピローマウイルスVLP組成物。
【請求項38】
該VLPがヒト・パピローマウイルスVLPである、請求項37のVLP組成物。
【請求項39】
該ヒト・パピローマウイルスVLPが、HPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18、HPV−30、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−54、HPV−55、HPV−56、HPV−70およびこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項38の方法。
【請求項40】
工程(i)が、小さい正しく折りたたまれたL1タンパク質含有の部分へのVLPの事実上完全な解集合を提供する、請求項21の方法。
【請求項41】
再集合工程(ii)が、少なくとも0.5のイオン強度を有する溶液を用いて行われる、請求項40の方法。
【請求項42】
L1タンパク質またはL1とL2タンパク質の組み合わせを含むパピローマウイルス・ウイルス様粒子(少なくとも1種の所望の部分を包含している粒子)をつくる方法であって、
(i)L1タンパク質またはL1とL2タンパク質の組み合わせからなるパピローマウイルスVLPを含むVLP組成物を、該VLPを長時間、高濃度の還元剤含有の溶液と接触せしめることにより、解集合し、
(ii)得た小さい正しく折りたたまれた成分を、再集合されたパピローマウイルスVLP中に包含されるべき少なくとも1種の部分、および選択的に精製L2タンパク質を含有する溶液と接触せしめ、
(iii)該還元剤を除去するか、または酸化剤を加えて、該小さい正しく折りたたまれた成分の該部分含有パピローマウイルスVLPへの再集合を提供する、
ことを含む方法。
【請求項43】
該再集合VLP中に包含される少なくとも1種の部分は、核酸配列、放射核種、抗癌剤、ペプチド、抗ウイルス剤、細胞生長調節剤、ホルモン、サイトカイン、抗原、トキシンおよびこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項42の方法。
【請求項44】
該部分がDNAである、請求項43の方法。
【請求項45】
該DNAが選択可能なマーカーをコードする、請求項44の方法。
【請求項46】
該選択可能なマーカーが、該パピローマウイルスに感染した細胞中で発現される、請求項45の方法。
【請求項47】
該DNAが最大約8キロ塩基である、請求項44の方法。
【請求項48】
パピローマウイルスに普通に感染した細胞中に部分を導入する方法であって、請求項42によってつくられたVLPの有効量を投与することを含む方法。
【請求項49】
該VLPがDNA、抗ウイルス剤、または抗癌剤を含む、請求項48の方法。
【請求項50】
該細胞が、HPV VLP挿入可能な上皮細胞または非上皮細胞である、請求項48の方法。
【請求項51】
推定のパピローマウイルスワクチンまたは治療薬の効力を調べるインビトロ方法であって、
(i)L1タンパク質またはL1とL2タンパク質の組み合わせからなり、そしてさらに、対応のパピローマウイルスのゲノムの少なくとも1つの断片、または発現を提供する配列に操作的に連結した選択可能なマーカーをコードするDNAを包含するパピローマウイルスVLPを含むパピローマウイルス・プソイドビリオンをつくり、
(ii)インビトロで該パピローマウイルスに感染した細胞を、該パピローマウイルス・プソイドビリオンに、可能性ある治療薬または該パピローマウイルスに対する抗血清の存在または不存在で接触せしめ、
(iii)該細胞中の該選択可能マーカーの発現または該パピローマウイルスDNAの存在のレベルに基づいて、該推定のパピローマウイルス治療薬またはワクチンの可能性ある効力を検査する、
ことを含む方法。
【請求項52】
該パピローマウイルスがヒト・パピローマウイルスである、請求項51の方法。
【請求項53】
該ヒト・パピローマウイルスが、感染ウイルスの保存が利用できないものである、請求項52の方法。
【請求項54】
選択可能なマーカーが、β−ガラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ、ネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼまたは他の選択可能なマーカーからなる群より選ばれる、請求項52の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−57377(P2009−57377A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202695(P2008−202695)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【分割の表示】特願2000−510845(P2000−510845)の分割
【原出願日】平成10年8月19日(1998.8.19)
【出願人】(597103942)メディムーン・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Medimmune, Inc.
【Fターム(参考)】