説明

パレット位置矯正装置

【課題】クリーンな環境での使用に適し、ワークが重量物であっても対応できる低床構造にする。
【解決手段】ワークを載置するパレットの位置を所定の位置に矯正するパレット位置矯正装置は、パレットの位置を矯正するための矯正テーブル1と、カムフォロア30の転がりで矯正テーブル1を水平面上のθ方向に旋回するための第一転動手段3と、直動ガイド機構40x、40yの転動体の転がりで矯正テーブル1を水平面上のX−Y方向に移動するための第二転動手段4と、カム50aの回転で矯正テーブル1を昇降するための昇降手段5を備える。矯正テーブル1の水平方向および上下方向の移動を全て、摩擦の小さい転がり運動で行い、矯正テーブル1の移動に伴って発生する粉塵を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットの位置を所定の位置に矯正するパレット位置矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パレット上にワークを載せて搬送する無人搬送システムは、コンベヤにより搬送される空のパレット上にワークを載せる際に、パレットの位置を所定の位置に矯正するためのパレット位置矯正装置を備える。近年では、ロボットによりワークをパレットに載せるので、正確にパレットの位置を矯正しなければ、所定の位置にワークを載せることができない。パレット位置矯正装置は、搬送コンベヤより低い位置で待機する支持部材(テーブル)を昇降装置(昇降手段)により上昇させることで、搬送コンベヤにより搬送されるパレットを持ち上げて、位置矯正を行う。そして、ロボットが位置矯正されたパレット上にワークを載せた後、パレット位置矯正装置は昇降装置により支持部材を下降させてパレットをコンベヤ上に置き再び搬送する。このようなパレット位置矯正装置の昇降装置は、支持部材を昇降するのにシリンダを用いる(例えば、特許文献1の図1〜図3など参照)。
【0003】
パレット位置矯正装置は、パレット上にワークを載置するロボットや、使用する環境に合わせて設計されなければならない。例えば、搬送するワークが重量物であることによりロボットが高い位置にまでワークを持ち上げられない場合、パレット位置矯正装置もこれに合わせて低床構造にしなければならない。さらに、搬送するワークが、ガラス、精密機械などの重量物である場合、パレット位置矯正装置はクリーンルームといったクリーンな環境で使用するのに適したものでなければならない。
【0004】
ワークが重量物である場合、パレット位置矯正装置の昇降装置はワークの重量に対応できるように油圧シリンダによってテーブルを昇降することが一般的である。しかしながら、油圧シリンダで重量物を昇降する構成にすると、昇降装置が大型化することは避けられず、パレット位置矯正装置を低床構造にすることができない。さらに、油圧シリンダを使用した場合、油漏れの虞がありクリーンな環境で使用することができないという問題がある。
【0005】
また、パレット位置矯正装置は、クリーンな環境で使用するためには、構成部品どうしの摩擦によって発生する粉塵を抑えられる構成でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−286563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、クリーンな環境で使用するのに適し、ワークが重量物である場合にも対応できる低床構造のパレット位置矯正装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るパレット位置矯正装置は、ワークを載置するパレットの位置を所定の位置に矯正するパレット位置矯正装置であって、
パレットの位置を矯正するための矯正テーブルと、転がりで矯正テーブルを水平面上のθ方向に旋回するための第一転動手段と、転がりで矯正テーブルを水平面上のX−Y方向に移動するための第二転動手段と、カムの回転で矯正テーブルを昇降するための昇降手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、第一転動手段、第二転動手段および昇降手段のカムは、パレットを支持するために、同一鉛直線上に配置されている。
【0010】
好ましくは、パレットを搬送するためのコンベアを備え、矯正テーブルおよびコンベヤは、ワークがパレットに載置される際に互いに面一となってパレットを支持する。
【0011】
好ましくは、矯正テーブルを押圧するための押圧手段を備え、押圧手段は、矯正テーブルの旋回中心を押圧することで、矯正テーブルの第一転動手段による旋回および第二転動手段による移動を防止する。
【0012】
好ましくは、昇降手段は、複数のカムにより矯正テーブルを昇降するものであって、カムのそれぞれは、回転角度が互いにずれた場合でも矯正テーブルの水平状態を確保できるように、その形状の一部が円弧に形成されている。
【0013】
好ましくは、矯正テーブルは、第一フレーム、第二フレームおよび第三フレームを積層して構成されており、第一フレームは、第一転動手段でθ方向に旋回可能に構成され、第二フレームは、第二転動手段でX−Y方向に移動可能に構成され、第三フレームは、昇降手段で昇降可能に構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るパレット搬送装置では、パレットを持ち上げるための矯正テーブルの昇降を油圧シリンダによって行うのではなく、カムの回転によって行う。これによって、小さな動力で矯正テーブルを昇降させることができ、油圧シリンダによる昇降にくらべて昇降装置(昇降手段)を大型化することなく重量物に対応できる構造にでき、結果パレット位置矯正装置を低床構造にできる。そして、従来のように油圧シリンダによる油漏れの恐れはなく、クリーンな環境で使用するのに適している。
【0015】
また、本発明に係るパレット位置矯正装置は、カムの回転による矯正テーブルの昇降に加え、転がりで矯正テーブルを水平面上のθ方向に旋回し、水平面上のX−Y方向に移動する構成としている。すなわち、矯正テーブルの昇降方向(上下方向)および水平方向の移動が、摩擦の小さい転がり運動によって行われる。したがって、本発明に係るパレット位置矯正装置は、矯正テーブルの移動により発生する摩擦を小さくでき、摩擦による粉塵を抑えることができるため、クリーンな環境で使用するのに非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】パレット位置矯正装置の構成を示す平面図である。
【図2】矯正テーブルの構成を示す側面図である。
【図3】図2に示された領域Aの拡大図である。
【図4】矯正テーブルの第一フレームの構成を示す平面図である。
【図5】矯正テーブルの第二フレームの構成を示す平面図である。
【図6】矯正テーブルの第三フレームの構成を示す平面図である。
【図7】昇降手段の構成を示す平面図である。
【図8】昇降ガイドの構成を示す側面図である。
【図9】昇降手段による矯正テーブルの昇降を示す図である。
【図10】押圧手段の構成を示す側面図である。
【図11】初期位置復帰手段の構成を示す平面図である。
【図12】パレットを搬送する一連の工程を示す図である。
【図13】図13Aは昇降手段のカムの形状を示す図で、図13Bはカムの回転角度と昇降高さとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明に係るパレット位置矯正装置の実施形態を説明する。
【0018】
図1に示されるように、パレット位置矯正装置は、パレットPを支持し、パレットPの位置を矯正するための矯正テーブル1を備える。パレット位置矯正装置は、矯正テーブル1の両側にコンベヤ2を備える。コンベヤ2は、無人搬送車(AGV)20および矯正テーブル1間におけるパレットPの搬送を行うためのものである。
【0019】
パレット位置矯正装置は、矯正テーブル1に支持されたパレットPの左右方向(コンベヤ2の搬送方向に対して垂直方向)の位置を矯正するための一対の第一パレットガイド21および一対の第二パレットガイド22を備える。第一および第二パレットガイド21、22は、矯正テーブル1およびコンベヤ2を間にして左右方向の両側に配置される。
【0020】
さらに、パレット位置矯正装置は、矯正テーブル1に支持されたパレットPの前後方向(コンベヤ2の搬送方向)の位置を矯正するための一対の第三パレットガイド23および一対の第四パレットガイド24を備える。第三および第四パレットガイド23、24は、矯正テーブル1の前後方向の両側に配置される。
【0021】
第1から第4パレットガイド21、22、23、24はそれぞれ、エアシリンダ25で駆動し、水平面上を直動可能となっている。パレット位置矯正装置は、エアシリンダ25を駆動して、各パレットガイド21、22、23、24を、矯正テーブル1に支持されたパレットPの側面に押し当てて、パレットPの左右方向および前後方向の位置を矯正する。
【0022】
なお、第一および第二パレットガイド21、22はそれぞれ、その両端に垂直軸周りに回転自在なローラ26が取り付けらており、このローラ26がパレットPの側面を押す構成となっている。第四パレットガイド24は、パレットPを無人搬送車20から矯正テーブル1へ搬送する際の障害とならないように、昇降可能に構成される。
【0023】
パレットPを支持する矯正テーブル1は、第一から第四パレットガイド21、22、23、24によりパレットPの位置を矯正する際に、パレットPとともに水平面上を移動できるように構成される。さらに、矯正テーブル1は、コンベヤ2によって搬送されたパレットPを支持して昇降できるように構成される。以下、矯正テーブル1の構成について説明する。
【0024】
本実施例の矯正テーブル1は、図2、図3に示めすように、上から順に第一フレーム11(アッパフレーム)、第二フレーム12(ミドルフレーム)および第三フレーム13(アンダフレーム)からなり、三層構造になっている。
【0025】
第一フレーム11は、図3、図4に示すように、その上部の四隅にパレットPを支持し、滑りを防止するために、ウレタンなどからなるクッション性を有するパレット支持部材110を備える。また、第一フレーム11は、その下部の四隅に各構成部品を取付けるための第一補強部材111を備える。なお、第一フレーム11の上面にはカバー(図示略)が覆われている。
【0026】
パレット位置矯正装置は、図3、図5に示めすように、転がりで矯正テーブル1を水平面上のθ方向(図4)に旋回するための第一転動手段3を備える。第一転動手段3は、矯正テーブル1の第一フレーム11と第二フレーム12の間に設けられる。
【0027】
第一転動手段3は、カムフォロア(回転体)30と、これを取付けるための取付部材(ブラケット)31とを備える。取付部材31は第二フレーム12の下部の隅に設けられた第二補強部材120に固定される。そして、カムフォロア30は取付部材31に回転自在に取付けられ、第一フレーム11の第一補強部材111の下面に当接する。この第一転動手段3は第二フレーム12上の四隅に設けられ、第一フレーム11は第一補強部材111を介してこの4つのカムフォロア30により支持される。各カムフォロア30は、第一フレーム11の旋回方向の接線方向に回転できるように配置される。
【0028】
第一フレーム11は上下方向にのびる回転軸14を備えており、回転軸14の上端は第一フレーム11の中央の下部に取り付けられている。第二フレーム12はその中央に軸受部材15(ベアリングユニット)を備えており、回転軸14はこのベアリングユニット15に差し込まれ、軸周りに回転可能である。
【0029】
上記構成によって、矯正テーブル1の第一フレーム11は、各カムフォロア30が回転することで、回転軸14を中心として旋回することができる。すなわち、第一フレーム11は、カムフォロア30の転がりで、水平面上のθ方向に旋回自在となっている。なお、回転軸14は第二フレーム12の軸受部材15に差し込まれているため、第一フレーム11が旋回しても第二フレーム12は旋回しない。
【0030】
なお、第一転動手段3は、図3、図4に示すように、第一フレーム11の旋回範囲を規制するためのストッパ32を備える。ストッパ32は対向する一対の側壁33を有し、横断面コ字状に形成される。ストッパ32は、対向する側壁33がカムフォロア30を間にして両側に位置するように、第一フレーム11の補強部材111の下面から垂下する。この構成により、第一フレーム11が水平面上を旋回したときに、ストッパ32の側壁33のいずれか一方がカムフォロア30に接触するようにして、第一フレーム11の旋回範囲を規制する。こうして、第一フレーム11の第一転動手段3による水平面上の旋回は、図4に示したθの範囲に規制される(図4の一点鎖線、二点鎖線参照)。
【0031】
さらに、パレット位置矯正装置は、図3、図6に示すように、転がりで矯正テーブル1を水平面上のX−Y方向(図6)へ移動するための第二転動手段4を備える。第二転動手段4は、第二フレーム12と第三フレーム13との間で四隅に設けられる。第二転動手段4は、2つの直動ガイド機構40x、40yを備え、これを直交十字状に組み合わせて構成される。直動ガイド機構40x、40yはそれぞれ、直線状のガイドレールと、ガイドレールに対して相対的に移動可能なブロックと、直動レールとブロックとの間に介在された複数の転動体(ボールなど)とを備え、複数の転動体が転がることによって、ブロックがガイドレールに対して相対的に直動する構成となっている。本実施例の直動ガイド機構40x、40yは、LMガイド(登録商標)からなる。
【0032】
そして、十字状に組み合わされた直動ガイド機構40x、40yは、一方40xが第三フレーム13に取り付けられ、他方40yが第二フレーム12の補強部材120に取り付けられる。そして、第三フレーム13は、後述するように昇降ガイド6(図3)によって上下方向には移動できるが、水平方向には移動はできないようになっている。
【0033】
したがって、第二フレーム12が一方の直動ガイド機構40xによりX方向へ移動でき、他方の直動ガイド機構40yによりY方向へ移動できる構成となっている。そして、第一フレーム11の回転軸14は第二フレーム12の軸受部材15に差し込まれていることから、第二フレーム12がX−Y方向に移動すると、第一フレーム11も一体となってX−Y方向へ移動する。すなわち、矯正テーブル1の第一フレーム11および第二フレーム12は、直行ガイド機構40x、40yの転動体の転がりによって、水平面上のX−Y方向に移動自在である。
【0034】
さらに、パレット位置矯正装置は、図3、図7に示すように、矯正テーブル1を昇降するための昇降手段5を備える。昇降手段5は、第三フレーム13の下方において四隅に配置されたカム50a、50bと、軸周りに回転可能に軸支された2本の駆動軸51a、51bとを備える。二つのカム50aは一方の駆動軸51aに取り付けられ、二つのカム50bは他方の駆動軸51bに取り付けられる。さらに、昇降手段5は、カム50a、50bを回転させるためのモータ52(駆動源)と、モータ52の駆動力を駆動軸51a、51bに伝達するためのチェーン53a、53bとを備える。チェーン53a、53bは、モータ53の出力軸54のスプロケット(図示せず)および駆動軸51a、51bのスプロケット55a、55bに係合している。モータ52を駆動することで、その動力がチェーン53a、53bを介して各駆動軸51a、51bに伝達され、各駆動軸51a、51bとともにカム50a、50bが回転する。
【0035】
さらに、昇降手段5は、図7、図8に示すように、第三フレーム13を上下方向(昇降方向)へ案内するためにベース17に立設された昇降ガイド6を備える。昇降ガイド6は、横断面コ字状のガイドレール60と、ローラ(カムフォロア)61とを備える。ガイドレール60は、上下に沿って設けられ、固定部材62を介して第三フレーム13に取り付けられる。ローラ61は、ベース17に固定された取付部材63に回転可能に取り付けられ、ガイドレール60のコ字状部分の間に入り込む。この構成によって、第三フレーム13は、水平方向への移動が規制され、上下方向にのみ移動可能となっている。
【0036】
そして、図9Aに示すように、各カム50a、50bはそれぞれ、その頂点において、第三フレーム13の下部において回転自在に設けられたローラ(ローラフォロア)130に当接する。
【0037】
この構成により、モータ52を駆動してカム50a、50bを回転させることで、カム50a、50bに当接しているローラ130はカム50a、50bの回転に従って回転する。そして、第三フレーム13は、上述の昇降ガイド6により水平方向に移動することなく、上下方向に案内され、図9Bに示すようにカム50a、50bの形状に従って昇降する。この第三フレーム13の昇降と一体となって、第一フレーム11および第二フレーム12も昇降する。こうして、矯正テーブル1は、昇降手段5のカム50a、50bの回転によって昇降する。
【0038】
以上のように、矯正テーブル1は、回転体(カムフォロア)30の転がりで水平面上のθ方向に旋回でき、直動ガイド機構40x、40yの転動体の転がりで水平面上のX−Y方向に移動でき、さらにカム50a、50bおよびローラ130の回転で昇降できるように構成される。すなわち、パレット位置矯正装置では、矯正テーブル1のすべての移動(X−Y−Z−θ)が、摩擦の小さい転がり運動によって(転がり摩擦が小さいことを利用することによって)行われる。したがって、パレット位置矯正装置は、矯正テーブル1を移動する際に発生する粉塵を抑えることができ、クリーンな環境で使用するのに非常に適している。
【0039】
また、パレット位置矯正装置は、図3に示すように、四隅において、支持部材110、カムフォロア30、直動ガイド機構40x、40yおよびカム50a、50bが同一鉛直線状に配置されており、これによってパレットPを支持する構成となっている。
【0040】
さらに、パレット位置矯正装置は、図10に示すように、矯正テーブル1を押圧するための押圧手段7を備える。押圧手段7はエアシリンダ70と、エアシリンダ70のピストンロッドの先端に設けられた押圧部材(パッド)71を備える。このエアシリンダ70は、第一フレーム11の下部からのびる回転軸14の自由端(下端)16を下側から押圧部材71で押圧できるように、第三フレーム13から垂下する取付部材72に取り付けられる。押圧手段7がシリンダ70を駆動して押圧部材71により自由端16を押圧することで、回転軸14は固定され、軸周りの回転および水平方向の移動ができなくなる。すなわち、矯正テーブル1の第一転動手段3による水平面上のθ方向旋回および第二転動手段4による水平面上のX−Y方向の移動が防止され、結果、矯正テーブル1の水平方向の位置を固定できる。このように、押圧手段7は、回転軸14、すなわち矯正テーブル1の旋回中心を押圧することで、矯正テーブル1の水平面上の旋回および移動の双方を防止する。
【0041】
さらに、パレット位置矯正装置は、図10、図11に示すように、矯正テーブル1の水平方向の位置を初期位置に戻すための初期位置復帰手段8を備える。初期位置復帰手段8は、すなわち、第一フレーム11が第一転動手段3によりθ方向に旋回し、第二フレーム12が第二転動手段4によりX−Y方向に移動したときに、第一および第二フレーム11、12を旋回および移動する前の状態(初期位置)に戻す。
【0042】
初期位置復帰手段8は、第二フレーム12および第三フレーム13の間に設けられる。初期位置復帰手段8は、回転軸14を間にして対向配置された2つのエアシリンダ80と、多角形(八角形)のプレート形状を有する押当部材82とを備える。エアシリンダ80は第三フレーム13に取り付けられ、そのピストンロッドの先端に垂直軸周りに回転自在の左右一対の押当ローラ81を備える。押当部材82は、回転軸14を元の位置に戻すためのもので、その中心に回動軸14が嵌挿され、回転軸14と一体的に回転および移動する。
【0043】
第一フレーム11が第一転動手段3によりθ方向に旋回し、さらに第二転動手段4によりX−Y方向へ移動し、回転軸14および押当部材82が一点鎖線で示す位置にあるとする。このとき、戻り手段8は、双方のエアシリンダ80を駆動して、押当ローラ81を押当部材82の側面に押し当てる。これによって押当部材82および回転軸14は回転および水平面上を移動して、押当ローラ82がフルストロークの位置あるときに(二点鎖線参照)、各押当ローラ81が押当部材82の側面に当接した状態になり、押当部材82および回転軸14は実線の位置にまで戻される。したがって、回転軸14に取り付けられた第一フレーム11は初期位置にまで戻される。さらに、回転軸14の移動に伴って軸受部材15も移動するので第二フレーム12も戻る。
【0044】
なお、初期位置復帰手段8は、押圧手段7による回転軸14の固定を解除した状態で駆動しなければならない。
【0045】
以下、図12に基づいて、上記の構成からなるパレット位置矯正装置によって、無人搬送車20から搬送されるパレットPの位置を矯正し、パレットP上にワークWを積載し、ワークWを積載したパレットPを無人搬送車20へ搬送する一例を説明する。
【0046】
図12Aに示すように、空のパレットPを載せた無人搬送車20が、パレット位置矯正装置の前に停止する。そして、無人搬送車20のコンベヤ(図示せず)およびパレット位置矯正装置のコンベヤ2を駆動し、パレットPを矯正テーブル1へ搬送する。この際、昇降可能な第四パレットガイド24は、パレットPの搬送の障害とならないように、コンベヤ2の上面より低い高さに位置し、また矯正テーブル1も昇降手段5によって、コンベヤ2の上面より低い高さに位置する。
【0047】
パレットPがパレット位置矯正装置に搬送されると、矯正テーブル1が昇降手段5によってコンベヤ2の上面より高く上昇し、図12Bに示すように、パレットPを支持して持ち上げる。このとき、矯正テーブル1は、第一転動手段3により水平面上のθ方向に旋回自在であり、さらに第二転動手段4により水平面上のX−Y方向に移動自在である。
【0048】
それから、第四パレットガイド24がコンベヤ2の上面よりも高い位置にまで上昇する。そして、第一から第四パレットガイド21、22、23、24が、パレットPの位置を矯正する。まず、パレット位置矯正装置は、図12Bに示すように、左右方向(コンベヤの搬送方向2に対して垂直方向)の両側に配置された第一および第二パレットガイド21、22をエアシリンダ25によってパレットPの左右方向の側面に押し当て、パレットPの左右方向の位置を矯正する。第一および第二パレットガイド21、22の先端には垂直軸周りに回転自在なローラ26が設けられていることから、このときパレットPはローラ26の転がりにより摩擦を小さくして前後方向(コンベヤ2の搬送方向)に移動可能な状態である。そして、パレット位置矯正装置は、第一および第二パレットガイド21、22をパレットPの左右方向の側面に押し当てた状態で、前後方向の両側に配置された第三および第四パレットガイド23、24をパレットPの前後方向の側面に押し当て、パレットPの前後方向の位置を矯正する。こうして、パレットPの左右方向および前後方向の位置が矯正される。このパレットPの位置矯正の際に、パレットPを支持している矯正テーブル1は、第一転動手段3および第二転動手段4によりパレットPとともに水平方向に移動する。
【0049】
パレットPの左右方向および前後方向の位置が矯正されると、押圧手段7のエアシリンダ70により回転軸14の自由端16を下側から押圧し、上述のように矯正テーブル1が水平方向に移動できないように固定する。これによって、矯正テーブル1に支持されたパレットPが矯正された位置からずれないように保持される。そして、パレット位置矯正装置は、パレットPの四方の側面を押している第一から第四パレットガイド21、22、23、24をパレットPから離間させる。その後、第四パレットガイド24は、コンベヤ2の上面より低い位置に下降する。
【0050】
それから、図12Cに示すように、矯正テーブル1は、その上面とコンベヤ2の上面とが面一になるまで下降して、停止する。こうして、パレットPのワークWを積載する位置への位置矯正が完了し、パレットP上へのワークWの積載が開始される。
【0051】
パレット位置矯正装置の横側に設置されたロボットアーム(図示略)で、位置矯正されたパレットP上にワークWを積載する。矯正テーブル1の上面とコンベヤ2上面とを面一にしていることで、双方1、2がパレットPを支持している。そして、ワークWの積載時に、矯正テーブル1より頑丈な構造のコンベヤ2がワークWの重量を受けるように、一方の矯正テーブル1がパレットPの矯正された位置からのずれを防止できるように機能させる。
【0052】
仮に、コンベヤ2だけでパレットPを支持した場合、パレットPは、コンベヤ2のバックラッシュにより、ワークWを積載している際に矯正された位置からずれる虞がある。しかしながら、押圧手段7により水平方向の移動が規制された状態の矯正テーブル1も併せてパレットPを支持することで、パレットPがコンベヤ2のバックラッシュにより位矯正された位置から移動しようとしても、矯正テーブル1(支持部材110の上面)とパレットPの下面との間の摩擦(静止摩擦)によって静止状態が維持され、矯正された位置からずれない。
【0053】
このように、ワークWの積載時に、矯正テーブル1より頑丈なコンベヤ2がワークWの重量を支え、矯正テーブル1にワークWによる負荷を実質的に与えないようにすることで、パレット位置矯正装置は、ワークWが重量物である場合でも対応できる構造となる。そして、矯正テーブル1は、コンベヤ2によるパレットPの位置ずれを防止するだけにして、ワークWが積載されたパレットPを昇降できるような頑丈な構造を不要とする。すなわち、矯正テーブル1は空のパレットPを昇降できるだけの構造でよい。したがって、例えば第一フレーム11、第二フレーム12および第三フレーム13を重量物に耐えうるような厚みのある頑丈な構造にする必要がないため(華奢な構造にしてもよいため)、パレット位置矯正装置を低床構造にすることができ、搬送レベルを低くできる。
【0054】
また、矯正テーブル1にもワークWの重量の一部がかかったとしても、上述のように支持部材110、カムフォロア30、直動ガイド機構40x、40yおよびカム50a、50bを同一鉛直上に配置してパレットPを支持する構造であるため、矯正テーブル1にかかる一部の重量を支えることができる。
【0055】
パレットP上へのワークWの積載が完了すると、図12Dに示すように矯正テーブル1は昇降手段5によりコンベヤ2の上面より低い位置に下降する。パレット位置矯正装置のコンベヤ2を駆動し、ワークWを積載したパレットPが待機している無人搬送車20へ搬送される。そして、無人搬送車20はパレットP上のワークWを運ぶためにパレット位置矯正装置から離れる。
【0056】
そして、パレット位置矯正装置は、押圧手段7による回転軸14の押圧を解いて矯正テーブル1の固定を解除した後、初期位置復帰手段8によってパレットPの位置矯正に伴い水平方向に移動した矯正テーブル1の位置を初期位置にまで戻す。
【0057】
そして、空のパレットPを備えた別の無人搬送車20がパレット位置矯正装置の前に停止し、再度上記手順によりパレットPの位置が矯正され、パレットP上にワークWが積載される。
【0058】
なお、本実施例では、図1に示したように、矯正テーブル1を間にして対向配置された第一および第二パレットガイド21、22を左右両側からパレットPへ押し当てて、パレットPの左右方向の位置矯正をしている。この際、第一パレットガイド21のエアシリンダ25のエア圧を、第二パレットガイド22のエアシリンダ25のエア圧より高く設定する。こうすることで、パレットPの位置矯正をするときに、パレットPの側面PLが、エア圧がより高く設定された第一パレットガイド21のフルストローク時の先端ラインL1に必ず一致する。したがって、パレットPの左右方向の正確な位置矯正ができる。
【0059】
第三および第四パレットガイド23、24でも同様に、第三パレットガイド23のエアシリンダ25のエア圧を、第四パレットガイド24のエアシリンダ25のエア圧23より高く設定する。そして、パレットPの位置矯正するときに、パレットPの側面PFが第三パレットガイド23のフルストローク時の先端ラインL2に必ず一致するようにして、パレットPの前後方向の正確な位置矯正ができるようにする。こうして、パレット位置矯正装置は、パレットPの左右方向および前後方向の正確な位置矯正を保証する。
【0060】
また、本実施例では、図7に示しめしたように、矯正テーブル1を昇降するにあたり、二つの駆動軸51a、51bを一のモータ52によりチェーン53a、53bを介して回転させている。このような構成のパレット位置矯正装置は長期にわたり使用すると、駆動軸51a側のチェーン53aおよび駆動軸側51b側のチェーン53bは伸びて互いの長さに違いが生じ、これによって2つの駆動軸51a、51bの同期がとれなくなる。その結果、駆動軸51a側のカム50aと駆動軸51b側のカム50bとは互いに位相(回転角度)がずれて高さが揃わず、カム50a、50bにより昇降される矯正テーブル1は傾き、水平状態にならない。
【0061】
そこで、図13Aに示すように、各カム50a、50bの形状(外周形状)の一部を、カム50a、50bの回転中心C(駆動軸51a、51bの回転中心)を中心とした円弧に形成する。本実施例では、カム50a、50bの形状は、回転角度φが−5°≦φ≦5°で半径R1の円弧C1、85°≦φ≦95°、265°≦φ≦275°で半径R2の円弧C2、175°≦φ≦185°で半径R3の円弧C3に形成されている。このカム50a、50bの回転角度φと、回転中心Cからカムの最頂点(カム50a、50bと第三フレーム13のローラ130との当接する点)までの高さhとの関係を、図13Bに示す。図13Bから明らかなように、例えば回転角度φが85°≦φ≦95°のとき(半径R2の円弧C2がローラ130に接しているとき)、高さhは変化せずにこの間はR2と一定となる。このようにカム50a、50bの形状の一部を円弧C1、C2、C3に形成したことにより、カム50a、50bが回転しても、高さhが変化せずにR1、R2、R3の一定になる部分を確保する。
【0062】
この構成により、チェーン53a、53bが伸びて互いの長さに違いが生じ、カム50aとカム50bとの回転角度φが互いにずれた場合でも、回転角度φのずれが10°以下であれば、カム50aとカム50bとの高さが互いに一致する状態をつくることができる。すなわち、カム50a、50b同士の回転角度φにずれが生じても、これら50a、50bにより昇降される矯正テーブル1が水平になる状態を確保できる構成となっている。
【0063】
パレット位置矯正装置は、上記構成からなるカム50a、50bを備え、上記のパレットPによりワークWを搬送する一連の工程において、カム50a、50bの回転角度φが、85°≦φ≦95°の間で(高さhがR2のときに)、コンベヤ2から搬送されるパレットPを支持し、カム50a、50bの回転角度φが、175≦φ≦185°の間で(高さhがR3のときに)パレットPの位置を矯正する。さらに。パレット位置矯正装置は、カム50a、50bの回転角度φが、265°≦φ≦275°の間で(高さhがR2のときに)、パレットP上にワークWを積載し、−5°≦φ≦5°の間で(高さhがR1のときに)、初期位置復帰手段8により矯正テーブル1を初期位置に戻す。すなわち、矯正テーブル1を水平状態にする必要があるときには、たとえチェーン53a、53bが伸びてカム50a、50bの回転角度φにずれが生じたとしても、矯正テーブル1の水平状態を確保できるようにする。こうして、チェーン53a、53bの長さに違いが生じても、矯正テーブル1に支持されるパレットPを水平状態してパレットPの位置矯正およびパレットP上へのワークWの積載ができる。
【0064】
したがって、パレット位置矯正装置を経年的に使用することができ、昇降手段5のメンテナンスの間隔を延ばすことができる。そして、このような経年的に使用できる構造は、本発明のパレット位置矯正装置のような低床構造のためにメンテナンスをするためのスペースを確保しにくい場合、非常に有効である。
【0065】
なお、カム50a、50bの形状の円弧部分C1、C2、C3の角度はそれぞれ10°となっているが、これに限定されるものではなく、チェーン53a、53bなどをはじめとするパレット位置矯正装置の構成に合わせて適宜選択される。
【符号の説明】
【0066】
1 矯正テーブル
11 第一フレーム
12 第二フレーム
13 第三フレーム
2 コンベヤ
3 第一転動手段
30 カムフォロア
4 第二転動手段
40x、40y 直動ガイド機構(LMガイド)
5 昇降手段
50a、50b カム
7 押圧手段
8 初期位置復帰手段
P パレット
W ワーク
C1、C2、C3 円弧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置するパレットの位置を所定の位置に矯正するパレット位置矯正装置であって、
前記パレットの位置を矯正するための矯正テーブルと、
転がりで前記矯正テーブルを水平面上のθ方向に旋回するための第一転動手段と、
転がりで前記矯正テーブルを前記水平面上のX−Y方向に移動するための第二転動手段と、
カムの回転で前記矯正テーブルを昇降するための昇降手段とを備えたことを特徴とするパレット位置矯正装置。
【請求項2】
前記第一転動手段、前記第二転動手段および前記昇降手段の前記カムは、前記パレットを支持するために、同一鉛直線上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のパレット位置矯正装置。
【請求項3】
前記パレットを搬送するためのコンベアを備え、
前記矯正テーブルおよび前記コンベヤは、前記ワークが前記パレットに載置される際に互いに面一となって前記パレットを支持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパレット位置矯正装置。
【請求項4】
前記矯正テーブルを押圧するための押圧手段を備え、
前記押圧手段は、前記矯正テーブルの旋回中心を押圧することで、前記矯正テーブルの前記第一転動手段による旋回および前記第二転動手段による移動を防止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパレット位置矯正装置。
【請求項5】
前記昇降手段は、複数の前記カムにより前記矯正テーブルを昇降するものであって、
前記カムのそれぞれは、回転角度が互いにずれた場合でも前記矯正テーブルの水平状態を確保できるように、その形状の一部が円弧に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパレット位置矯正装置。
【請求項6】
前記矯正テーブルは、第一フレーム、第二フレームおよび第三フレームを積層して構成されており、
前記第一フレームは、前記第一転動手段で前記θ方向に旋回可能に構成され、
前記第二フレームは、前記第二転動手段で前記X−Y方向に移動可能に構成され、
前記第三フレームは、前記昇降手段で昇降可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のパレット位置矯正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−106845(P2012−106845A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257766(P2010−257766)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】