説明

パワーウインドウ装置

【課題】 右ハンドル車と左ハンドル車との間において各窓部材で駆動ユニットを共用することにより駆動ユニットの部品数を少なく抑えても、装置サイズの大型化を抑制でき、しかもその共用に伴う駆動ユニットの制御モード切換作業を不要とすることで装置取付作業の負荷も軽減することができるパワーウインドウ装置を提供する。
【解決手段】 パワーウインドウ装置1の各モータユニット7a〜7dにはEEPROM18が搭載され、このEEPROM18には、各モータユニット7a〜7dがどの座席に相当するかを示すレギュレータ情報Daが記憶されている。レギュレータ情報Daは、モータユニット7a〜7dを車両に組み付ける前に、書込装置28によってEEPROM18に書き込まれる。各モータユニット7a〜7dは、車内の信号線11を介してハンドル情報Dbを取得し、レギュレータ情報Da及びハンドル情報Dbを基に自身の装着席を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作手段の開閉操作により窓部材を自動で昇降させるパワーウインドウ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車両ドアに設けられたウインドウガラスの昇降操作(開閉操作)を簡易化するために、ウインドウガラスをDCモータ等の駆動モータで昇降させるパワーウインドウ装置が搭載されている。この種のパワーウインドウ装置においては、ウインドウガラスの昇降操作を行う際に操作する昇降スイッチとウインドウガラス昇降時の駆動源である駆動モータとが車両ドア毎に設けられ、これら複数の昇降スイッチの中のうち所定のスイッチが操作されると、その昇降スイッチに対応した駆動モータが駆動して所望のウインドウガラスが昇降する。
【0003】
図4は、この種のパワーウインドウ装置51の一例を示すブロック図である。パワーウインドウ装置51においては、運転席から助手席及びリア席左右のウインドウガラスの昇降操作が可能となるようにリモート機能を有している装置もある。このリモート機能を以下に説明すると、運転席の車両ドアには、運転席、助手席、リア右側席及リア左側席のパワーウインドウスイッチ(以下、PWスイッチと記す)52a〜52dを備えたスイッチユニット52が設けられている。運転席,助手席、リヤ右側席及びリヤ左側席の各車両ドアには、各車両ドア専用にPWスイッチ53a〜53dが設けられている。
【0004】
また、パワーウインドウ装置51は、PWスイッチ52a〜52d,53a〜53dのスイッチ操作を基に各ウインドウガラスを昇降させるモータユニット54を複数備えている。この例において、モータユニット54は運転席用、助手席用、リア右側席用及びリア左側席用の4つのユニット54a〜54dがあり、各々がECU(Electric Control Unit )55及び駆動モータ56を有している。運転席ECU55a、助手席ECU55b、リア右側席ECU55c及びリア左側席ECU55dは、信号線57を介してスイッチユニット52に接続されている。
【0005】
これらECU55a〜55dには、ウインドウガラスを開閉させる際に実行する昇降制御プログラムが書き込まれ、この昇降制御プログラムには、自身がどこの車両ドア用のECUであるかを認識する識別情報も含まれている。例えば、運転席ECU55aの場合、この運転席ECU55aに書き込まれた昇降制御プログラムには、識別情報として自身が運転席ECUであることのデータが書き込まれ、これについては助手席ECU55b、リア右側席ECU55c及びリア左側席ECU55dについても同様である。
【0006】
スイッチユニット52は、PWスイッチ52a〜52dが操作された際にその操作信号Stを信号線57に出力し、例えばスイッチユニット52で運転席PWスイッチ52aが操作された場合には、そのスイッチが操作されたことを示す運転席スイッチ操作信号Staを信号線57に出力する。各ECU55a〜55dはこの操作信号Staを入力し、これらECU55a〜55dのうち操作信号Staに対応するECU(ここでは運転席ECU55a)が動作を開始してウインドウガラスの昇降制御を行う。
【0007】
ところで、モータユニット54はレギュレータと組み付けられた後にその部品を車両ドアに取り付ける取付手順を経るが、車両ドアは左右で対称形状をとることから、部品取付先は形状が異なるため、右側車両ドア用と左側車両ドア用とでモータユニット54をそれぞれ用意する必要がある。即ち、フロント座席及びリア座席の各々において、単純に右側車両ドアと左側車両ドアとで、モータユニット54を共用することができない現状がある。
【0008】
ここで、車両には、各国々の車両規格に応じて右ハンドル車と左ハンドル車とがあるが、右ハンドル車の場合、フロント右側席が運転席となり、フロント左側席が助手席となり、一方で左ハンドル車の場合、フロント右側席が助手席となり、フロント左側席が運転席となる。従って、モータユニット54の種類は、フロント席において「右ハンドル車運転席用」、「右ハンドル車助手席用」、「左ハンドル車運転席用」、「左ハンドル車助手席用」の4種類必要になる。なお、モータユニット54の種類は、上記した昇降制御プログラム内の識別情報によって設定される。ところで、この構成においては右ハンドル車、左ハンドル車用に各々モータユニット54を用意する必要があるため、部品数が増加し、製造コストが嵩むという問題がある。
【0009】
この問題を解消するために、右ハンドル車と左ハンドル車との間で、パワーウインドウ装置を統括制御するマイクロコンピュータ(実際にはECU55)を共用する技術が、例えば特許文献1に開示されている。同文献1の技術は、駆動モータを制御するマイクロコンピュータに、マイクロコンピュータの制御モードを切り換える制御モード切換スイッチを接続する。そして、パワーウインドウ装置の取付先が右ハンドル車又は左ハンドル車に応じて、制御モード切換スイッチを導通或いは遮断することによって、マイクロコンピュータを右ハンドル車用或いは左ハンドル車用に切り換えている。
【特許文献1】特開平10−153046号(第4−9頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の技術は、マイクロコンピュータの制御モードを切り換える制御モード切換スイッチが必要となり、図4で言うECU55、ひいてはモータユニット54及びパワーウインドウ装置51が大型化する問題があった。また、マイクロコンピュータの制御モードを切り換えるには、制御モード切換スイッチの切換作業が必要となり、この作業が面倒である問題もあった。
【0011】
そこで、この問題を解消するために、ECU55a〜55d(即ち、モータユニット54a〜54d)のコネクタ部に端子を追加し、信号線57(車両ハーネス)と間の接続マトリックスによって、車両での装着席を認識する技術が考えられる。これを以下に説明すると、図5に示すように各ECU55a〜55dに車両装着席認識用端子58〜60を複数(ここでは3つ)設け、これら車両装着席認識用端子58〜60のうちECUの装着席に応じた端子に信号線57を接続する。そして、車両装着席認識用端子58〜60のうち信号線57が接続された端子はGNDに短絡された状態となっており、各ECU55a〜55dはGND短絡を見ることで車両装着席認識用端子58〜60の入力状態を認識し、自身の車両での装着席を認識する。
【0012】
例えば、図5の例では、右ハンドル車の運転席ECUには、車両装着席認識用端子58〜60のどれにも信号線57が接続されず、右ハンドル車の助手席ECUには、車両装着席認識用端子58〜60のうち端子59に信号線57が接続される。また、左ハンドル車の運転席ECUには、車両装着席認識用端子58〜60のうち端子58に信号線57が接続され、左ハンドル車の助手席ECUには、車両装着席認識用端子58〜60のうち端子60に信号線57が接続される。
【0013】
しかし、信号線57の接続マトリックスを用いた技術においては、各端子58〜60に接続するための別の信号線57を用意する必要が生じ、信号線重量(ハーネス重量)が増えることから、小型化やコスト抑制に支障を来す問題があった。また、車両装着席認識用端子58〜60として使える端子がECU55a〜55dに予め余っていなければ、ECU55a〜55dに車両装着席認識用端子58〜60を増設する必要が生じ、端子を多く有する別のECUを用意することによるコスト増、或いはECUの再設計によるコスト増を招く問題が生じる。
【0014】
本発明の目的は、右ハンドル車と左ハンドル車との間において各窓部材で駆動ユニットを共用することにより駆動ユニットの部品数を少なく抑えても、装置サイズの大型化を抑制でき、しかもその共用に伴う駆動ユニットの制御モード切換作業を不要とすることで装置取付作業の負荷も軽減することができるパワーウインドウ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明では、1つの座席から他座席の車両扉の窓部材を昇降操作可能な操作手段が車内に設けられ、前記操作手段の操作信号を基に、駆動手段を車内の信号線を介して駆動制御することで前記操作手段の操作に応じた前記窓部材の昇降を行う駆動ユニットが前記窓部材ごとに設けられたパワーウインドウ装置において、前記駆動ユニットは、当該駆動ユニットが何処の窓部材を駆動するものかに相当する取付位置情報を記憶する記憶手段と、車両のハンドルが左右座席のうち何れに配置されているかに相当するハンドル情報と前記取付位置情報とを基に、前記駆動ユニットの前記車両における装着位置を認識する制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0016】
この発明によれば、車両の窓部材を駆動手段で昇降させる駆動ユニットが、少なくともフロント席右左の窓部材に各々設けられ、これら駆動ユニットには上記した記憶手段及び制御手段が設けられる。これら駆動ユニットの記憶手段には、駆動ユニットが何処の窓部材を駆動するものかに相当する取付位置情報が書き込まれている。取付位置情報の書込例としては、例えばフロント右側扉の駆動ユニットの記憶手段に、自身がフロント右側扉用である旨の取付位置情報が書き込まれ、フロント左側扉の駆動ユニットの記憶手段に、自身が左側扉用である旨の取付位置情報が書き込まれる。
【0017】
また、各駆動ユニットの制御手段は、車両のハンドルが左右座席のうち何れに配置されているかに相当するハンドル情報と上記取付位置情報とを基に、これら複数の駆動ユニットが各々何処の装着位置のものであるかを認識する。制御手段は、例えば自身がフロント右側扉用である場合、右ハンドル車である旨のハンドル情報を入力すると、自身は運転席の窓部材を昇降する駆動ユニットであると認識し、一方で左ハンドル車である旨のハンドル情報を入力すると、自身は助手席の窓部材を昇降する駆動ユニットであると認識する。
【0018】
以上の構成を前提とし、操作手段において例えば運転席の窓部材を開閉する操作がなされると、その旨の操作信号が車内の信号線を介して各駆動ユニットに出力される。各駆動ユニットはこの操作信号を入力するが、複数の駆動ユニットのうち運転席用の駆動ユニットがこの操作信号を基に作動を開始し、運転席の車両扉の窓部材を開閉させる。一方、操作手段において例えば助手席の窓部材を開閉する操作がなされると、その旨の操作信号が車内の信号線を介して各駆動ユニットに出力され、複数の駆動ユニットのうち助手席用の駆動ユニットの作動が開始され、助手席の車両扉の窓部材が開閉される。
【0019】
従って、各車両扉(例えばフロント右側扉とフロント左側扉)に取り付けられる駆動ユニットは、右ハンドル車又は左ハンドル車に関係なく同じものが使用可能となる。即ち、フロント右側扉に取り付けられた駆動ユニットは、右ハンドル車の場合には運転席の駆動ユニットとして振る舞い、左ハンドル車の場合には助手席の駆動ユニットとして振る舞うようになる。同様に、フロント左側に取り付けられた駆動ユニットは、右ハンドル車の場合には助手席の駆動ユニットとして振る舞い、左ハンドル車の場合には運転席の駆動ユニットとして振る舞うようになる。
【0020】
よって、右ハンドル車と左ハンドル車との間において各窓部材で駆動ユニットを共用することで駆動ユニットの部品数の抑制を図ったとしても、駆動ユニット共用のために例えば駆動ユニットに制御モード(即ち、右ハンドルモード及び左ハンドルモード)の切換スイッチを設けずに済む。従って、駆動ユニットひいてはパワーウインドウ装置の大型化が抑制される。また、上記した切換スイッチを用いた場合には、駆動ユニットを車両に組み付ける際に、右ハンドル車と左ハンドル車とでスイッチ切換作業が必要となるが、本発明の構成を用いればこの種の切換作業が不要となり、装置取付作業の負荷が軽減される。
【0021】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記記憶手段は、データ書き込み可能な不揮発性メモリであり、前記取付位置情報は、前記駆動ユニットが製品として製造された後に、書込装置によって前記記憶手段に書き込まれた情報であることを要旨とする。
【0022】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、取付位置情報が書き込まれていない記憶手段と上記した制御手段とを有する駆動ユニットを製造し、その駆動ユニットを車両に組み付ける前に書込装置を用いて記憶手段に取付位置情報を書き込み、書込作業を終えてから駆動ユニットを車両に組み付ける。このように、取付位置情報は後の別作業で記憶手段に書き込まれるため、記憶手段に取付位置情報を書き込む前の駆動ユニットは各窓部材に関係なく同一部品となる。従って、記憶手段へ取付位置情報を書き込む前の駆動ユニットは生産ラインで一括製造することが可能であるため、駆動ユニットの生産効率が向上する。なお、定義として「駆動ユニットが製品として製造」とは、例えば生産ラインに乗せた工程上での製造や、商品として取り扱い可能な状態まで部品を組み付ける製造等を言う。
【0023】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記取付位置情報は、前記駆動ユニットが前記車両に組み付けられる前に、前記書込装置によって前記記憶手段に書き込まれた情報であり、前記ハンドル情報は、前記駆動ユニットが前記車両に組み付けられた後に、車内の前記信号線を介して前記制御手段が取得する情報であることを要旨とする。
【0024】
この発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、駆動ユニットはハンドル情報を基に車両が右ハンドル車又は左ハンドル車のどちらであるかを判断する必要があるが、車両が右ハンドル車か左ハンドル車かの判断は、駆動ユニットが車両に組み付けられた後、車内の信号線を流れるハンドル情報を取得することで行われる。従って、作業者が自ら駆動ユニットの記憶手段にハンドル情報を書き込む作業を行わずに済み、ハンドル情報書込作業の省略によって駆動ユニットの製造作業(組付作業)の負荷が軽減される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、右ハンドル車と左ハンドル車との間において各窓部材で駆動ユニットを共用することにより駆動ユニットの部品数を少なく抑えても、装置サイズの大型化を抑制でき、しかもその共用に伴う駆動ユニットの制御モード切換作業を不要とすることで装置取付作業の負荷も軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化したパワーウインドウ装置の一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1は、パワーウインドウ装置1の電気構成を示す構成図である。本例のパワーウインドウ装置1は、車両2のサイドドア3(図2参照)のウインドウガラス4をモータ駆動力により自動で昇降させる装置である。車両の各サイドドア3には、各サイドドア3に対応するウインドウガラス4のみを昇降操作可能な専用のパワーウインドウスイッチ(以下、PWスイッチと記す)5が配設されている。本例においてPWスイッチ5は、フロント右側席PWスイッチ5a、フロント左側席PWスイッチ5b、リア右側席PWスイッチ5c及びリア左側席PWスイッチ5dがある。
【0027】
一方、例えば車両2が右ハンドル車の場合、車両のフロント右側席のサイドドア3aには、フロント右側席(即ち、運転席)から全てのウインドウガラス4を昇降操作可能(即ち、リモート機能)となるように運転席スイッチ群6が配設されている。この運転席スイッチ群6は、運転席PWスイッチ6aの他に、助手席PWスイッチ6b、リア右側席PWスイッチ6c及びリア左側席PWスイッチ6dを有する。従って、運転席スイッチ群6を用いれば、運転席だけでなく助手席、リア右側席及びリア左側席のウインドウガラス4も昇降操作可能である。なお、サイドドア3が車両扉に相当し、ウインドウガラス4が窓部材に相当する。
【0028】
PWスイッチ5及び運転席スイッチ群6は、例えば下降機能、上昇機能、自動下降機能(オート下降機能)、自動上昇機能(オート上昇機能)等を有するスイッチである。即ち、PWスイッチ5及び運転席スイッチ群6は2段クリック式の揺動型スイッチであり、一端側(下降側)又は他端側(上昇側)が1段押圧されると、そのスイッチが押された状態の間でオン状態となってウインドウガラス4が下降又は上昇する。また、PWスイッチ5及び運転席スイッチ群6は、下降側又は上昇側が2段押圧されると、その押された側のスイッチがオート状態となり、再スイッチ操作されるまでウインドウガラス4が連続下降・連続上昇する。
【0029】
パワーウインドウ装置1は、PWスイッチ5又は運転席スイッチ群6のスイッチ操作を基にウインドウガラス4を昇降させるモータユニット7と、ウインドウガラス4の昇降器であるレギュレータ8とを車両2のサイドドア3ごとに備えている。従って、本例においてモータユニット7は、フロント右側席モータユニット7a、フロント左側席モータユニット7b、リア右側席モータユニット7c及びリア左側席モータユニット7dの4つがある。なお、モータユニット7(7a〜7d)が駆動ユニットに相当する。
【0030】
モータユニット7は、同ユニット7を制御するECU9と、ガラス昇降の駆動源となる駆動モータ10とを備えている。即ち、本例のモータユニット7は、ECU9を駆動モータ10に対し一体に組み付けることにより、ECU9及び駆動モータ10がユニット化されたものである。なお、本例においては、各モータユニット7a〜7dの各ECU9を、フロント右側席ECU9a、フロント左側席ECU9b、リア右側席ECU9c及びリア左側席ECU9dと記すことにする。これらモータユニット7a〜7dは、各ECU9a〜9dが信号線11を介して相互接続されている。
【0031】
駆動モータ10は、例えば直流モータ(DCモータ)が用いられ、モータ回転力をレギュレータ8で上下方向の直線運動に変換し、ウインドウガラス4を昇降させる。例えば、駆動モータ10が正転すると、その回転力がレギュレータ8を介して下方に向かう直線運動に変換され、その下方向きの力によりウインドウガラス4が下降する。一方、駆動モータ10が逆転すると、その回転力がレギュレータ8を介して上方に向かう直線運動に変換され、その上方向きの力によるウインドウガラス4が上昇する。なお、駆動モータ10が駆動手段に相当する。
【0032】
各ECU9a〜9dは、マイクロコンピュータを構築する各種デバイスからなる制御回路12と、組をなすPWスイッチ5a〜5dのスイッチ状態を電気信号として出力するスイッチ回路13と、制御回路12からの指令を基に駆動モータ10を駆動する駆動回路14とを備えている。制御回路12は、CPU(Central Processing Unit )15、ROM(Read-Only Memory)16、RAM(Random-Access Memory)17及びEEPROM(Electrically-Eraserble and Programable ROM)18を有する。なお、EEPROM18が記憶手段(不揮発性メモリ)に相当する。
【0033】
ROM16には、ウインドウガラス4を昇降する際に実行される昇降制御プログラムPが記憶されている。昇降制御プログラムPは、PWスイッチ5又は運転席スイッチ群6が上昇操作された際に駆動モータ10を所定速度で一方向に回転させてウインドウガラス4を上昇させ、PWスイッチ又は運転席スイッチ群6が下降操作された際に駆動モータ10を所定速度で他方向に回転させてウインドウガラス4を下降させるプログラムである。CPU15はECU9を統括制御するものであり、ROM16の昇降制御プログラムPを実行してウインドウガラス4の昇降制御を行う。なお、CPU15及び昇降制御プログラムPが制御手段を構成する。
【0034】
各ECU9a〜9dは、PWスイッチ5a〜5dのうち自身と組をなすスイッチが操作された際、その操作に応答して駆動モータ10を駆動し、自身に対応するウインドウガラス4を昇降させる。例えば、フロント右側席PWスイッチ5aが操作されると、フロント右側席ECU9aのCPU15が駆動回路14を介して駆動モータ10を駆動してフロント右側席のウインドウガラス4を昇降させる。なお、フロント左側席PWスイッチ5b、リア右側席PWスイッチ5c及びリア左側席PWスイッチ5dについても、これらスイッチが操作された際には同様の動作をとる。
【0035】
昇降制御プログラムPには、ウインドウガラス4の閉操作時において、ウインドウガラス4と窓枠3xとの間での挟み込みを防止する挟み込み防止プログラムが含まれている。この挟み込み防止プログラムは、ウインドウガラス4の閉操作時にウインドウガラス4と窓枠3xとの間で異物の挟み込みを検知すると、ウインドウガラス4を停止または逆転動作させる制御である。各CPU15は、ウインドウガラス4を閉操作すべく上昇動作させている際、挟み込み防止プログラムを実行することで挟み込み防止制御を行っている。
【0036】
この挟み込み防止制御を以下に説明すると、パワーウインドウ装置1は、駆動モータ10の回転数(駆動数)を検出するパルスセンサ19を駆動モータ10ごとに備えている。各パルスセンサ19は、パルス入力回路20を介して各制御回路12に接続され、駆動モータ10の回転速度に応じたパルス信号Sxをパルス入力回路20を介して各制御回路12に出力する。各CPU15は、この入力したパルス信号Sxを基に駆動モータ10の回転速度や、ウインドウガラス4の現在位置を算出する。
【0037】
本例の挟み込み防止制御はパルス検知方式をとっており、パルスセンサ19から入力するパルス信号Sxを基に行う。即ち、駆動モータ10の回転速度が速いとパルス信号Sxのパルス周期は短く、反対に遅いとパルス信号Sxのパルス周期は長くなることから、このパルス周期の変動を利用して挟み込みを検知している。そして、ウインドウガラス4と窓枠3xとの間に異物が挟まれると、ウインドウガラス4の上昇動作が規制されてパルス周期は所定周期より長くなることから、この場合には異物が挟まったと判断し、ウインドウガラス4を下降させる。
【0038】
車両2には、エンジン始動時に操作されるエンジンスイッチ(イグニッションスイッチ)21が搭載されている。エンジンスイッチ21は、ステアリング近傍のキーシリンダに挿し込まれた車両キー(図示略)の回動操作に応じて、OFF位置、ACC位置(アクセサリ位置)、IG位置(イグニッション位置)及びSTART位置の4位置をとり、これら操作位置に応じたスイッチ信号を出力する。ちなみに、OFF位置は車両キーを抜き挿しする位置、ACC位置はエンジンをかけずにラジオ等のアクセサリを使用する位置、IG位置は運転するときの位置、START位置はエンジン始動位置である。
【0039】
パワーウインドウ装置1は、エンジンスイッチ21のスイッチ状態を基に各モータユニット7a〜7dの作動を許可又は禁止する信号制御ECU22を備えている。信号制御ECU22は、入力端子22aがエンジンスイッチ21のIG端子21aに接続され、出力端子22bが信号線11を介して各モータユニット7a〜7dのECU9a〜9d(各制御回路12)に接続されている。
【0040】
信号制御ECU22は、エンジンスイッチ21のスイッチ状態に応じた制御信号Sを各モータユニット7a〜7dに出力し、例えばエンジンスイッチ21がIG位置の際に昇降操作を許可し、エンジンスイッチ21がIG位置以外の際に昇降操作を禁止する。即ち、信号制御ECU22は、エンジンスイッチ21がIG位置の際、制御信号Sとして作動許可信号Saを出力して各モータユニット7a〜7dの作動を許可し、エンジンスイッチ21がIG以外の際、制御信号Sとして作動禁止信号Sbを出力して各モータユニット7a〜7dの作動を禁止する。
【0041】
各モータユニット7a〜7d(即ち、ECU9a〜9d)は、自身の入力端子(接続コネクタ)12aで入力した作動許可信号Sa又は作動禁止信号Sbを基に作動状態を設定する。即ち、CPU15は、信号制御ECU22から作動許可信号Saを入力すると、PWスイッチ5又は運転席スイッチ群6による昇降操作が可能な状態となり、信号制御ECU22から作動禁止信号Sbを入力すると、PWスイッチ5又は運転席スイッチ群6による昇降操作が不可能な状態となる。従って、エンジンスイッチ21がIG位置にあれば、全席で昇降操作が可能となり、エンジンスイッチ21がIG位置以外にあれば、全席で昇降操作が禁止となる。
【0042】
パワーウインドウ装置1は、運転席スイッチ群6のスイッチ状態に応じた信号を出力するスイッチ制御ユニット23を備えている。スイッチ制御ユニット23は、同ユニット23を統括制御するCPU24と、運転席スイッチ群6のスイッチ状態を電気信号としてCPU24に出力するスイッチ回路25とを有している。スイッチ制御ユニット23は、そのCPU24が信号線11を介して各モータユニット7a〜7dと電気接続されている。なお、運転席スイッチ群6及びスイッチ制御ユニット23が操作手段を構成する。
【0043】
スイッチ制御ユニット23において、CPU24はスイッチ回路25を介して運転席スイッチ群6のスイッチ状態を監視し、そのスイッチ状態に応じた運転席SW操作信号Srを信号線11を介して各モータユニット7a〜7dに出力する。例えば、CPU24は運転席PWスイッチ6aが下降操作されたことを検出すると、その旨に相当する運転席SW下降操作信号Sra1 を各モータユニット7a〜7dに出力し、運転席PWスイッチ6aが上昇操作されたことを検出すると、その旨に相当する運転席SW上昇操作信号Sra2 を各モータユニット7a〜7dに出力する。なお、運転席SW操作信号Srが操作信号に相当する。
【0044】
各モータユニット7a〜7dのEEPROM18には、自身(即ち、モータユニット7a〜7d)がどの装着席のものかを判定する際に用いられるレギュレータ情報Daが書き込まれている。ここで言う装着席とは車両2の対応座席のことであり、本例において装着席は運転席、助手席、リア右側席及びリア左側席のどれかとなる。従って、車両2には右ハンドル車と左ハンドル車とがあるが、右ハンドル車においてはフロント右側席が運転席、フロント左側席が助手席、後方座席が各々リア右側席及びリア左側席となる。一方、左ハンドル車においてはフロント右側席が助手席、フロント左側席が運転席、後方座席が各々リア右側席及びリア左側席となる。なお、レギュレータ情報Daが取付位置情報に相当する。
【0045】
本例においてレギュレータ情報Daは、各モータユニット7a〜7dの車両2における位置情報であり、例えば車両2のフロント又はリアにおいて左右のどちらの位置にあるかを示す情報である。本例は、フロント右側席モータユニット7aのEEPROM18にはフロント右側位置を示すレギュレータ情報Daが、フロント左側席モータユニット7bのEEPROM18にはフロント左側位置を示すレギュレータ情報Daが各々書き込まれる。また、リア右側席モータユニット7cのEEPROM18にはリア右側位置を示すレギュレータ情報Daが、リア左側席モータユニット7dのEEPROM18にはリア左側位置を示すレギュレータ情報Daが各々書き込まれる。
【0046】
車両2には、車内の制御機器(例えば電源ECU、メータECU等)を電気接続する車内通信線(車内Local Area Network)26が配設されている。信号制御ECU22は自身の通信端子22cを介して車内通信線26に接続され、この車内通信線26を介してメータECU27に電気接続されている。メータECU27は、車両2のインストルメントパネルに設けられた車速メータ、エンジン回転数メータ、水温計メータ又はガソリン残量メータ等の各種メータ(図示略)を制御するECUである。
【0047】
メータECU27は、各モータユニット7a〜7dがどの装着席のものかを判定する際に用いられるハンドル情報Dbを、例えば常時若しくは間欠的に出力する。このハンドル情報Dbは、車両2が右ハンドル車又は左ハンドル車のどちらであるかを示す情報である。信号制御ECU22はメータECU27からハンドル情報Dbを入力する度に同情報Dbを信号線11上に出力し、モータユニット7は自身がサイドドア3に組み付けられて信号線11に接続された時点でハンドル情報Dbを取得する。
【0048】
昇降制御プログラムPには、各モータユニット7a〜7dが車両2において何処の装着席のものかを判定する装着席判定プログラムが含まれている。この装着席判定プログラムは、EEPROM18に書き込まれたレギュレータ情報Daと、メータECU27から取得したハンドル情報Dbとを基に、各々のモータユニット7a〜7bがどの装着席のものかを判定するプログラムである。各CPU15は、ハンドル情報Dbを取得した時点で装着席判定処理を行い、自身(モータユニット7a〜7d)がどの装着席であるかを判定する。
【0049】
例えば、フロント右側席モータユニット7aは、車両2が右ハンドル車である旨のハンドル情報Dbを取得すると、自身のEEPROM18には自身がフロント右側位置であるレギュレータ情報Daが書き込まれていることから、これら情報Da,Dbを基に自身の装着席が運転席であると判定する。一方、フロント右側席モータユニット7aは、車両2が左ハンドル車である旨のハンドル情報Dbを取得すると、このハンドル情報DbとEEPROM18内のレギュレータ情報Daとを基に自身の装着席が助手席であると判定する。
【0050】
また、フロント左側席モータユニット7bは、車両2が左ハンドル車である旨のハンドル情報Dbを取得すると、自身のEEPROM18には自身がフロント左側位置である旨のレギュレータ情報Daが書き込まれていることから、これら情報Da,Dbを基に自身の装着席が助手席であると判定する。一方、フロント左側席モータユニット7bは、車両2が左ハンドル車である旨のハンドル情報Dbを取得すると、このハンドル情報DbとEEPROM18内のレギュレータ情報Daとを基に自身の装着席が運転席であると判定する。なお、リア右側席モータユニット7c及びリア左側席モータユニット7dも、同様に装着席判定を行う。
【0051】
従って、右ハンドル車の場合には、フロント右側席モータユニット7aが運転席モータユニットとして振る舞い、フロント左側席モータユニット7bが助手席モータユニットとして振る舞う。一方、左ハンドル車の場合には、フロント右側席モータユニット7aが助手席モータユニットとして振る舞い、フロント左側席モータユニット7bが運転席モータユニットとして振る舞う。なお、リア右側席モータユニット7c及びリア左側席モータユニット7dについては、右ハンドル車及び左ハンドル車に関係なく同じ装着席となる。
【0052】
次に、本例のパワーウインドウ装置1の車両2への組付手順及び作用を説明する。
図3は、各モータユニット7a〜7bを車両2に組み付けてその装着席を判定するまでの手順を表すフローチャートである。まず、レギュレータ8にモータユニット7をセットし、モータユニット7とレギュレータ8とを一体に組み付ける(ステップ100)。本例においては、このセット作業をモータユニット7a〜7dごとに実施することから、モータユニット7とレギュレータ8とを組み付けた部品を、フロント右側席、フロント左側席、リア右側席及びリア左側席で合計4つ用意する。
【0053】
続いて、各モータユニット7a〜7dのEEPROM18に、それぞれレギュレータ情報Daを書き込む(ステップ101)が、この書込作業は以下の通りに行う。各モータユニット7a〜7d(即ち、各ECU9a〜9d)の入力端子(接続コネクタ)12aは、外部の書込装置28が接続可能である。書込装置28は例えば入力装置、制御装置、演算装置、主記憶装置、表示装置及びI/F(全て図示略)等からなる装置であり、I/Fに通信ケーブル29の一端を接続し、通信ケーブル29の他端を入力端子(接続コネクタ)12aに接続することでモータユニット7a〜7dに各々接続される。
【0054】
そして、書込装置28の入力装置を操作することにより、表示装置を見ながら書込装置28にレギュレータ情報Daを入力し、必要なデータを全て入力した後に、入力装置で送信操作を行う。すると、レギュレータ情報Daが通信ケーブル29を介してモータユニット7に送信され、そのレギュレータ情報DaがEEPROM18に書き込まれる。本例においては、4つのモータユニット7a〜7dが存在することから、この書込作業をモータユニット7a〜7dごとに計4回実施する。
【0055】
続いて、レギュレータ情報書き込み後のモータユニット7が組み付けられた各レギュレータ8を、車両状態、つまり車体に取り付けられた状態の各サイドドア3に各々装着する(ステップ102)。即ち、モータユニット7aを組み付けたレギュレータ8をフロント右側席、モータユニット7bを組み付けたレギュレータ8をフロント左側席、モータユニット7cを組み付けたレギュレータ8をリア右側席、モータユニット7dを組み付けたレギュレータ8をリア左側席の各サイドドア3に各々装着する。
【0056】
この組付作業とともに車両2の組み立てが完了した後、信号制御ECU22はハンドル情報Dbを各モータユニット7a〜7dに出力し、各モータユニット7a〜7dは信号線11を介してハンドル情報Dbを取得する(ステップ103)。車両2が右ハンドル車の場合には、その旨を示すハンドル情報Dbが出力され、車両2が左ハンドル車の場合には、その旨を示すハンドル情報Dbが出力される。
【0057】
そして、各モータユニット7a〜7dの各ECU9a〜9dは、ハンドル情報Dbを基にして車両2が右ハンドル車又は左ハンドル車のどちらであるかを判断する(ステップ104)。ECU9a〜9dは、車両2が右ハンドル車であると判断するとステップ105に移行し、車両2が左ハンドル車であると判断するとステップ106に移行する。
【0058】
フロント右側席モータユニット7aのECU9aは、自身のEEPROM18に記憶したレギュレータ情報Daから自身がフロント右側席のものであると認識しているため、右ハンドル車である旨のハンドル情報Dbを取得すると、自身の装着席が運転席であると判定する(ステップ105)。一方、フロント左側席モータユニット7bのECU9bは、自身のEEPROM18に記憶したレギュレータ情報Daから自身がフロント左側席のものであると認識しているため、右ハンドル車である旨のハンドル情報Dbを取得すると、自身の装着席が助手席であると判定する(ステップ105)。
【0059】
これと同じように、フロント右側席モータユニット7aのECU9aは、左ハンドル車である旨のハンドル情報Dbを取得すると、自身のEEPROM18に記憶したレギュレータ情報Daとこのハンドル情報Dbとを基に、自身の装着席が助手席であると判定する(ステップ106)。一方、フロント左側席モータユニット7bのECU9bは、左ハンドル車である旨のハンドル情報Dbを取得すると、自身のEEPROM18に記憶したレギュレータ情報Daとこのハンドル情報Dbとを基に、自身の装着席が運転席であると判定する(ステップ106)。
【0060】
従って、本例によれば、フロント右側席モータユニット7a及びフロント左側席モータユニット7bは、右ハンドル車と左ハンドル車の間で共用することが可能となる。ところで、このようにモータユニット7が共用できないと、フロント席において「右ハンドル車運転席用」、「右ハンドル車助手席用」、「左ハンドル車運転席用」、「左ハンドル車助手席用」の4種類必要になる。しかし、本例のようにモータユニット7が共用できれば、フロント席においてモータユニット7が2種類で済むことになるので、部品数が少なく済み、製造コストの低下に寄与する。
【0061】
また、特許文献1の技術を用いてモータユニット7を共用すると、モータユニット7の制御モードを右ハンドル車用又は左ハンドル車用に切り換える切換スイッチが必要となるが、本例の構成を用いればこの種の切換スイッチが不要となる。従って、パワーウインドウ装置1に必要な部品数の低減が可能であり、ひいてはパワーウインドウ装置1の小型化に寄与する。また、上記した切換スイッチを用いた場合、モータユニット7の制御モードを切り換える切換作業が必要になるが、本例の構成においてはこの切換作業も不要となり、モータユニット7の車両2への組付作業の簡素化も図られる。
【0062】
さらに、図5に示す技術を用いてモータユニット7を共用化すると、モータユニット7(即ち、ECU9)に車両装着席認識用端子を用意し、これら端子に接続するハーネスを用意する必要がある。従って、ハーネス重量の増加、それに伴うコスト増、端子追加による装置大型化等を招くおそれがある。しかし、本例の構成を用いれば、車両装着席認識用端子を用いずに済むので、ハーネスは不要となり、ハーネス重量が増加する問題は生じなく、さらには車両装着席認識用端子が不要であるため、モータユニット7(ECU9)の小型化も図られる。
【0063】
本例の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)各モータユニット7にEEPROM18を搭載し、これらモータユニット7を車両2に組み付ける前にEEPROM18にレギュレータ情報Daを書き込み、車両組み付け後に取得するハンドル情報Dbとこのレギュレータ情報Daとを基に、各モータユニット7が自身の装着席を認識する。従って、フロント右側席モータユニット7a及びフロント左側席モータユニット7bを右ハンドル車と左ハンドル車とで共用することができ、部品数低減や製造コスト低減を図ることができる。また、モータユニット7のモードを右ハンドル車用又は左ハンドル車用に切り換える切換スイッチを用いずにモータユニット7を右ハンドル車及び左ハンドル車で共用可能であるので、切換スイッチ不要による部品数低減や装置小型化を図ることができ、モード切り換えに伴う切換スイッチの切換作業も不要とすることができる。さらに、本例においてはモータユニット7の共用化に際し、モータユニット7(ECU9)に車両装着席認識用端子を用いずに済むことから、ハーネス重量の増加、ユニット大型化、端子増設等の問題も生じない。
【0064】
(2)車両2に組み付ける前に書込装置28を用いてEEPROM18にレギュレータ情報Daを書き込む組付手順を経るので、EEPROM18にレギュレータ情報Daを書き込む前であれば、モータユニット7は同一部品の製品となる。従って、EEPROM18にレギュレータ情報Daを書き込む前のモータユニット7は生産ラインで一括製造することが可能である。よって、EEPROM18にデータ未書込みのモータユニット7を一括製造し、車両2に組み付ける前にEEPROM18にレギュレータ情報Daを書き込む組付工程を経るようにすれば、モータユニット7の生産効率を向上することができる。
【0065】
(3)各モータユニット7の装着席を判定する際に必要となるハンドル情報Dbは、モータユニット7をサイドドア3に組み付けた後に車内通信によって取得する。ところで、例えばモータユニット7をサイドドア3に組み付けた後に作業者が自らハンドル情報DbをEEPROM18等の不揮発性メモリに書き込むことも可能であるが、このようにすると書込作業が必要となり、組付作業が面倒になる。しかし、本例の構成を用いれば、作業者が関与することなく各モータユニット7にハンドル情報Dbを供給することができ、モータユニット7を車両2に組み付ける際の組付作業負荷を軽減することができる。
【0066】
(4)ウインドウガラス4の閉操作時において、ECU9(モータユニット7)はウインドウガラス4と窓枠3xとによる挟み込みを防止する挟み込み防止制御を行うことができる。
【0067】
(5)エンジンスイッチ21がIG位置にある際にウインドウガラス4の昇降操作を許可し、それ以外の位置にある際には昇降操作を禁止するので、不用意なウインドウガラス4の開閉を禁止することができる。
【0068】
なお、実施形態は上記構成に限定されず、例えば以下の態様に変更してもよい。
・ 取付位置情報は、モータユニット7を車両2に組み付ける前に、書込装置28によってEEPROM18に書き込まれるレギュレータ情報Daに限定されない。例えば、取付位置情報は、モータユニット7を製造する過程でROM16等にマスクされた、いわゆるレギュレータ情報Daと同様のデータ内容を有するマスク情報でもよい。
【0069】
・ 車両2の仕向け先に応じて昇降制御プログラムを設定可能としてもよい。これを説明すると、ROM16にそれぞれ仕向け(例えば出荷国、車種)に応じて複数の昇降制御プログラムPを書き込み、信号制御ECU22が信号線11を介して車両2の仕向け情報Dc(図1参照)を各モータユニット7a〜7dに出力する。各モータユニット7は、仕向け情報Dcを参照して車両2の仕向けを認識し、ROM16内に書き込まれた複数の昇降制御プログラムPのうちこの仕向けに応じたプログラムを指定し、それを使用プログラムとして設定する。この場合、仕向けに応じた昇降制御プログラムPを設定することができる。
【0070】
・ 信号制御ECU22は、ハンドル情報Dbを常時出力することに限定されない。例えば、信号制御ECU22は、エンジンスイッチ21がIG位置に操作されたことを条件に、信号線11を介してハンドル情報Dbを各モータユニット7a〜7dに出力するようにしてもよい。
【0071】
・ ハンドル情報Dbは、車内通信によって各モータユニット7a〜7dに供給されることに限定されない。例えば、ハンドル情報Dbは書込装置28によってEEPROM18等の不揮発性メモリに書き込んでもよい。
【0072】
・ 1つのサイドドア3に対しウインドウガラス4が1つであることに限らず、1つのサイドドア3に複数のウインドウガラス4が設けられていてもよい。
・ モータユニット7を車両2(サイドドア3)へ組み付けるとは、モータユニット7とレギュレータ8とを一体に組み付けてから、その部品を車両2に組み付けることに限定されず、少なくともモータユニット7を組み付ける作業のことを言う。例えば、レギュレータ8を予めサイドドア3に組み付けておき、その後にモータユニット7を組み付ける手順をとってもよい。
【0073】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)請求項1〜3のいずれかにおいて、前記取付位置情報は、前記駆動ユニットが左右車両扉のうち何れに配置されているかに相当する情報である。
【0074】
(2)請求項1〜3のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記操舵部材位置情報と前記取付位置情報とを基に、前記駆動ユニットが前記車両の運転席用又は助手席用のどちらであるかを認識する。
【0075】
(3)1つの座席から他座席の車両扉の窓部材を昇降操作可能な操作手段が車内に設けられ、前記操作手段の操作信号を車内の信号線を介して受信し、該操作信号を基に駆動手段を駆動制御することで前記操作手段の操作に応じた前記窓部材の昇降を行う駆動ユニットが前記窓部材ごとに設けられたパワーウインドウ装置における駆動ユニットの組付方法であって、前記駆動ユニットには、データ書き込み可能な記憶手段が設けられ、当該駆動ユニットが何処の窓部材を駆動するものかに相当する取付位置情報が、該駆動ユニットが前記車両に組み付けられる前に書込装置によって前記記憶手段に書き込まれ、前記駆動ユニットが前記車両に組み付けられた後に、前記車両のハンドルが左右座席のうち何れに配置されているかに相当するハンドル情報を制御手段が前記信号線を介して取得し、該制御手段が前記ハンドル情報と前記取付位置情報とを基に前記駆動ユニットの前記車両における装着位置を認識することを特徴とする駆動ユニットの組付方法。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】一実施形態におけるパワーウインドウ装置の電気構成を示す構成図。
【図2】車両を斜め後方から見た斜視図。
【図3】モータユニットの車両組付から装着席判定を行うまでのフローチャート。
【図4】従来におけるパワーウインドウ装置の一例を示すブロック図。
【図5】装着席判定時に用いるハーネスの接続マトリックスを説明する表。
【符号の説明】
【0077】
1…パワーウインドウ装置、2…車両、3(3a)…車両扉としてのサイドドア、4…窓部材としてのウインドウガラス、6…操作手段を構成する運転席スイッチ群、7(7a〜7d)…駆動ユニットとしてのモータユニット、10…駆動手段としての駆動モータ、
11…信号線、15…制御手段を構成するCPU、18…記憶手段(不揮発性メモリ)としてのEEPROM、23…操作手段を構成するスイッチ制御ユニット、28…書込装置、Sr…操作信号としての運転席SW操作信号、Da…取付位置情報としてのレギュレータ情報、Db…ハンドル情報、P…制御手段を構成する昇降制御プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの座席から他座席の車両扉の窓部材を昇降操作可能な操作手段が車内に設けられ、前記操作手段の操作信号を基に、駆動手段を車内の信号線を介して駆動制御することで前記操作手段の操作に応じた前記窓部材の昇降を行う駆動ユニットが前記窓部材ごとに設けられたパワーウインドウ装置において、
前記駆動ユニットは、
当該駆動ユニットが何処の窓部材を駆動するものかに相当する取付位置情報を記憶する記憶手段と、
車両のハンドルが左右座席のうち何れに配置されているかに相当するハンドル情報と前記取付位置情報とを基に、前記駆動ユニットの前記車両における装着位置を認識する制御手段と
備えたことを特徴とするパワーウインドウ装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、データ書き込み可能な不揮発性メモリであり、前記取付位置情報は、前記駆動ユニットが製品として製造された後に、書込装置によって前記記憶手段に書き込まれた情報であることを特徴とする請求項1に記載のパワーウインドウ装置。
【請求項3】
前記取付位置情報は、前記駆動ユニットが前記車両に組み付けられる前に、前記書込装置によって前記記憶手段に書き込まれた情報であり、前記ハンドル情報は、前記駆動ユニットが前記車両に組み付けられた後に、車内の前記信号線を介して前記制御手段が取得する情報であることを特徴とする請求項2に記載のパワーウインドウ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−291541(P2006−291541A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112449(P2005−112449)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】