説明

パワーコントロールユニットの車体への取り付け構造及び電気自動車

【課題】工数や部品点数を軽減させて、電力線と接続されるコネクタ部を保護するパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造、及び、前記パワーコントロールユニットの車体への取り付け構造を有する電気自動車を提供する。
【解決手段】
電力源からの電力を所望の電力に変換して走行用モータ100に供給することで走行用モータ100を駆動制御するパワーコントロールユニット30の車体12への取り付け構造であって、パワーコントロールユニット30を支持するユニット支持フレーム44と、ユニット支持フレーム44を車体12に取り付けるためのサイドフレーム64とを備え、走行用モータ100に電力を供給する三相交流電力ケーブル38が配線接続される電力コネクタ42と、電力コネクタ42をガードするガード部52とがパワーコントロールユニット30に設けられ、ガード部52は、ユニット支持フレーム44と締結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線と接続される接続部を保護するパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造、及び、前記パワーコントロールユニットの車体への取り付け構造を有する電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
下記に示す特許文献1には、パワーコントロールユニットは、電力変換器を有するカバーと該カバーに接続されたケースとを有し、該ケースには一体成形された、外部電力線のコネクタを取り付けるためのコネクタ取付部が設けられ、固定部材によってコネクタ取付部と車体とを固定することでパワーコントロールユニットを車体に取り付け、カバーとコネクタ取付部との間に支持部材を架設することで、車両の衝突時にコネクタ取付部の上部近傍に発生する応力集中を緩和して、コネクタ取付部の変形及び破損を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−262673公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、別体の支持部材を、カバーとコネクタ取付部とに架設するため、工数や部品点数の増加が懸念されるとともに、コネクタ取付部の保護が十分でない。
【0005】
そこで、本発明は、係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、工数や部品点数を軽減させて、電力線と接続されるコネクタ部の保護を強化させるパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造、及び、前記パワーコントロールユニットの車体への取り付け構造を有する電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、電力源からの電力を所望の電力に変換して走行用モータに供給することで該走行用モータを駆動制御するパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造であって、前記パワーコントロールユニットを支持するユニット支持フレームと、前記ユニット支持フレームを前記車体に取り付けるための取付フレームと、を備え、前記走行用モータに電力を供給する電力供給線が配線接続される配線接続部と、該配線接続部をガードするガード部とが前記パワーコントロールユニットに設けられ、前記ガード部は、前記ユニット支持フレームと締結されていることを特徴とする。
【0007】
前記ガード部は、前記車体の鉛直方向に前記配線接続部及び前記ガード部を投影したときに、投影された前記ガード部が投影された前記配線接続部を囲うように、前記パワーコントロールユニットの一側面に設けられている。
【0008】
前記パワーコントロールユニットの上部には、前記一側面から前記車体の鉛直方向に垂直な方向に向かって外方に突出した突出部が設けられており、前記配線接続部は、前記突出部の底面側に設けられ、前記ガード部は、前記一側面から前記車体の鉛直方向に垂直な方向に向かって前記突出部より外方に突出しているとともにその内部が空洞となっており、前記電力供給線は、前記空洞を通って前記配線接続部に接続されている。
【0009】
前記パワーコントロールユニットは、前記車体の鉛直方向に対して、前記走行用モータの上方で前記ユニット支持フレームによって支持され、前記電力供給線を前記走行用モータに接続させるモータ側接続部の前記車体の鉛直方向の位置と、前記配線接続部の前記車体の鉛直方向の位置との中間位置に、前記ガード部が設けられている。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、電気自動車であって、前記パワーコントロールユニットの車体への取り付け構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び5に記載の発明によれば、走行用モータに電力を供給する電力供給線が配線接続される配線接続部と、該配線接続部をガードするガード部とがパワーコントロールユニットに設けられ、該ガード部は、前記パワーコントロールユニットを支持するユニット支持フレームに締結されているので、前記ガード部の強度を高めることができ、前記ガード部の保護性能を向上させることができる。したがって、高電圧の前記配線接続部の保護を強化することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記ガード部は、前記車体の鉛直方向に前記配線接続部及び前記ガード部を投影したときに、投影された前記ガード部が投影された前記配線接続部を囲うように、前記パワーコントロールユニットの一側面に設けられているので、高電圧の前記配線接続部が衝突時の衝撃を直接受けることを防止することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記パワーコントロールユニットの上部には、前記一側面から前記車体の鉛直方向に垂直な方向に向かって外方に突出した突出部の底面側に前記配線接続部が設けられ、前記ガード部は、前記一側面から前記車体の鉛直方向に垂直な方向に向かって前記突出部より外方に突出しているとともにその内部が空洞となっており、前記電力供給線は、前記空洞を通って前記配線接続部に接続されているので、衝突時の衝撃から前記電力供給線及び前記配線接続部を効果的に保護することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記パワーコントロールユニットは、車体の鉛直方向に対して、前記走行用モータの上方で前記ユニット支持フレームよって支持されるので、高電圧の前記電力供給線の長さを短くすることができる。また、前記電力供給線を前記走行用モータに接続させるモータ側接続部と前記配線接続部との間に前記ガード部が設けられているので、より効果的に前記配線接続部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電気自動車の概略構成を示す概略構成斜視図である。
【図2】電気自動車の概略構成を示す概略構成側面図である。
【図3】図1及び図2に示すパワーコントロールユニット及び該パワーコントロールユニットを支持するユニット支持フレームを示す斜視図である。
【図4】パワーコントロールユニット及びモータ式動力装置と三相交流電力ケーブルとの関係を示す模式図である。
【図5】電気自動車の車体の前方概略構成を示す概略構成斜視図である。
【図6】パワーコントロールユニットが車体に取り付けられた場合におけるダッシュパネルロアとリア支持フレームとの関係を示す図である。
【図7】モータ式動力装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造及び該パワーコントロールユニットの取り付け構造を有する電気自動車について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0017】
図1は、電気自動車10の概略構成を示す概略構成斜視図、図2は、電気自動車10の概略構成を示す概略構成側面図である。なお、図1及び図2においては、本発明に関係のない機構乃至構成要素については図示を省略している。また、本実施の形態では、車体12の鉛直方向を上下方向とし、該鉛直方向に垂直な方向を水平方向とする。また、電気自動車10の進行方向を前、後退方向を後、進行方向に向かって左方向を左、右方向を右とする。
【0018】
電気自動車10は、車体12内部に、前輪14L、14Rと後輪16L、16Rとの間で、且つ、車体12の底部に設けられた高電圧を出力するバッテリ18と、フロアパネル20を介して前記バッテリ18の上方に設けられる車室22と、該車室22とは隔てられて車体12の前方に区画されたモータルーム24と、該モータルーム24を覆うダッシュパネル26と、ダッシュパネル26の下方で、且つ、該モータルーム24に設けられたモータ式動力装置28の上方に載置されたパワーコントロールユニット(Power Control Unit)30とを備える。ダッシュパネル26は、ダッシュパネルロア26aとダッシュパネルアッパー26bとを有する。ダッシュパネル26は、モータルーム24と車室22とを仕切るものであり、モータルーム24からの汚れ、水、臭い等の浸入を防ぐ構造を有する。また、ダッシュパネル26は、外部からの水の浸入に対して、後述するA/C(エアコンディショナー)配管内に流入させない水排出機能を有する。
【0019】
パワーコントロールユニット30をダッシュパネル26の下方に配置したので、パワーコントロールユニット30をメンテナンスするためには、ダッシュパネルアッパー26bを取り外さなければならない。したがって、ユーザの高電圧部品であるパワーコントロールユニット30への容易なアクセスを防ぐことができる。
【0020】
車体12のボンネット12aの下方には、衝突時における歩行者への衝撃を軽減させる歩行者保護エリア32が設けられており、この歩行者保護エリア32内には、パワーコントロールユニット30等の部品を設けることができない。したがって、パワーコントロールユニット30が歩行者保護エリア32と干渉しないように、パワーコントロールユニット30を作製しなければならない。しかし、本実施の形態では、パワーコントロールユニット30をダッシュパネル26の下方に配置したので、パワーコントロールユニット30の作製において、歩行者保護エリア32への配慮を軽減でき、低コストでパワーコントロールユニット30を作製することができる。
【0021】
電源ケーブル34は、バッテリ18に蓄積された電力をパワーコントロールユニット30に伝達するためのものであり、電源ケーブル34の一端はバッテリ18の電源コネクタ36に接続され、他端は後述するパワーコントロールユニット30の電源コネクタに接続される。パワーコントロールユニット30は、バッテリ18から供給される直流電力を三相(U、V、W相)の交流電力に変換し、該変換した三相の交流電力をモータ式動力装置28の後述する走行用モータに供給することで走行用モータを駆動制御する。
【0022】
パワーコントロールユニット30は、直流電力を三相交流に変換するインバータと該インバータを制御する制御装置とを有する(図示略)。モータ式動力装置28の前記走行用モータとパワーコントロールユニット30とは、三相交流電力ケーブル(電力供給線)38を介して接続されており、三相交流電力ケーブル38の一端は前記走行用モータの電力コネクタ(モータ側接続部)40に接続され、三相交流電力ケーブル38の他端はパワーコントロールユニット30の電力コネクタ(配線接続部)42に接続される。パワーコントロールユニット30をモータ式動力装置28の上方に配置させるので、高電圧の三相交流電力ケーブル38を短くすることができる。なお、パワーコントロールユニット30は、後述するユニット支持フレーム及び一対のサイドフレーム(取付フレーム)によって車体12のモータルーム24内に取り付けられる。
【0023】
図3は、図1及び図2に示すパワーコントロールユニット30及び該パワーコントロールユニット30を支持するユニット支持フレーム44を示す斜視図であり、図4は、パワーコントロールユニット30及びモータ式動力装置28と三相交流電力ケーブル38との関係を示す模式図である。パワーコントロールユニット30の上部には電源コネクタ46が設けられ、パワーコントロールユニット30の一側面側には電力コネクタ42が設けられている。パワーコントロールユニット30の電源コネクタ46に接続された電源ケーブル34が、車体12の後方水平を向くように、電源コネクタ46がパワーコントロールユニット30に設けられるとともに凹部48が形成されている。
【0024】
パワーコントロールユニット30の上部には、前記一側面側から車体12の水平方向に向かって外方に突出した突出部50が設けられており、該突出部50の底面側に電力コネクタ42が設けられている。つまり、電力コネクタ42に接続された三相交流電力ケーブル38が車体12の上下方向に沿って下方に垂れ下がるように、電力コネクタ42はパワーコントロールユニット30に設けられている。これにより、衝突時の衝撃を電力コネクタ42が直接受けることを防止することができる。
【0025】
パワーコントロールユニット30には、電力コネクタ42に接続された三相交流電力ケーブル38を囲うことで三相交流電力ケーブル38、突出部50、及び電力コネクタ42をガードするガード部52を有する。ガード部52は、前記一側面側から車体12の水平方向に向かって突出部50より外方に突出しているとともに(図4参照)、その内部が空洞となっており、三相交流電力ケーブル38はガード部52の空洞を通って電力コネクタ42に接続される(図6参照)。ガード部52は、走行用モータの電力コネクタ40の上下方向の位置と、パワーコントロールユニット30の電力コネクタ42の上下方向の位置との中間位置に設けられている(図4参照)。このガード部52は、パワーコントロールユニット30の筐体と一体成形されている。
【0026】
このように、パワーコントロールユニット30の筐体にガード部52を設けるようにしたので、工数や部品点数を増加させることなく、電力コネクタ42を保護することができる。また、ガード部52が電力コネクタ42に接続された三相交流電力ケーブル38を囲うようにしてパワーコントロールユニット30の筐体に設けられているので、衝突時の衝撃によって三相交流電力ケーブル38に力が加わることを防止することができる。したがって、三相交流電力ケーブル38に衝突時の衝撃によって加わる力によって電力コネクタ42に発生する応力を軽減、又は無くさせることができ、電力コネクタ42を保護することができる。
【0027】
また、ガード部52は、突出部50より外方に突出しているので、衝突時の衝撃から突出部50を保護することができ、電力コネクタ42、突出部50、及び三相交流電力ケーブル38を効果的に保護することができる。また、ガード部52を電力コネクタ40と電力コネクタ42との中間位置に設けることで、より効果的に電力コネクタ42、突出部50、及び三相交流電力ケーブル38を保護することができる。効果的に電力コネクタ42等を保護するために、前記中間位置は、電力コネクタ40の上下(高さ)方向の位置H1から電力コネクタ42の上下(高さ)方向の位置H2までの距離Lの略半分の位置(電力コネクタ40の高さ方向の位置H1からガード部52の高さ方向の位置までの距離がL/2)であることが好ましい(図4参照)。
【0028】
また、ガード部52は、電力コネクタ42を囲うのではなく、電力コネクタ42に接続される三相交流電力ケーブル38を囲うように設けられているので、電力コネクタ42を外部から視認することができ、三相交流電力ケーブル38の電力コネクタ42への接続がし易くなる。
【0029】
ユニット支持フレーム44は、左サイド支持フレーム54と、該左サイド支持フレーム54と略平行に設けられた右サイド支持フレーム56と、左サイド支持フレーム54と右サイド支持フレーム56とを懸架するように設けられたフロント支持フレーム58と、該フロント支持フレーム58より後側で右サイド支持フレーム56と左サイド支持フレーム54とを懸架するように設けられたリア支持フレーム60とを有する。ユニット支持フレーム44は、この4辺の支持フレームでパワーコントロールユニット30を囲んで支持する。フロント支持フレーム58、右サイド支持フレーム56、及び左サイド支持フレーム54は、ボルトBによって、パワーコントロールユニット30と締結される。
【0030】
詳しくは、フロント支持フレーム58とパワーコントロールユニット30の前方とがボルトBによって締結され、右サイド支持フレーム56とパワーコントロールユニット30の右側面とがボルトBによって締結される。また、前記一側面側(左側面)に設けられたガード部52と左サイド支持フレーム54とがボルトBによって締結される。つまり、パワーコントロールユニット30は、ユニット支持フレーム44の3辺によって支持される。ガード部52は左サイド支持フレーム54に締結されるので、よりガード部52の強度を高めることができ、ガード部52の保護性能を向上させることができる。したがって、電力コネクタ42を衝突時の衝撃から保護することができるとともに、電力コネクタ42の保護を強化することができる。
【0031】
図5は、電気自動車10の車体12の前方概略構成を示す概略構成斜視図である。なお、図5は、車体12のバンパーを開けたときの車体12の前方を示すとともに、本発明に関係のない機構乃至構成要素及びモータ式動力装置28については図示を省略する。
【0032】
車体12の前方部には、車体12の両側部において車体12の前後方向に延びる一対のサイドフレーム64、64が設けられ、ユニット支持フレーム44を一対のサイドフレーム64、64に懸架し、4つの支持部62と一対のサイドフレーム64、64とをボルトbで締結させることで、ユニット支持フレーム44を一対のサイドフレーム64、64に締結させる。このとき、衝突時の衝撃による影響を極力少なくするために、ユニット支持フレーム44を可及的に後方に配置させる。つまり、ユニット支持フレーム44を可及的にダッシュパネルロア26aに近づける。
【0033】
ここで、一対のサイドフレーム64、64と締結されているユニット支持フレーム44に、パワーコントロールユニット30を締結する場合に、パワーコントロールユニット30の後方とリア支持フレーム60とをボルトBで締結しようとすると、パワーコントロールユニット30の後方側にボルト締めの作業を行うためのスペースが必要となる。そのため、ユニット支持フレーム44を一対のサイドフレーム64、64に締結する際に、ユニット支持フレーム44を前記スペース分だけ予め前方側に配置しなければならず、パワーコントロールユニット30の載置位置が前方になってしまう。
【0034】
そこで、本実施の形態では、パワーコントロールユニット30をリア支持フレーム60以外の支持フレームで支持することで、つまり、リア支持フレーム60とパワーコントロールユニット30とを締結させないので、パワーコントロールユニット30を可及的に後方に配置させることができ、衝突時の衝撃によるパワーコントロールユニット30への影響を軽減させることができる。つまり、パワーコントロールユニット30を可及的に後方に配置させるので、クラッシャブルゾーンを長くすることができ(図2参照)、衝突時の衝撃によるパワーコントロールユニット30への影響を軽減させることができ、高電圧部品であるパワーコントロールユニット30を保護することができる。クラッシャブルゾーンを長くすることが可能なので、車体12のデザインの自由度が向上する。また、パワーコントロールユニット30を可及的に後方に配置させるので、バッテリ18までの高電圧の電源ケーブル34の長さを短縮することが可能となる。
【0035】
さらに、リア支持フレーム60でパワーコントロールユニット30を支持しないので、衝突時の衝撃によりパワーコントロールユニット30が後方に移動する場合であっても、パワーコントロールユニット30がリア支持フレーム60に当接するまでは、その移動を抑える力がパワーコントロールユニット30の後方側で発生することはないので、衝突時の衝撃によるパワーコントロールユニット30への影響を抑えることができる。
【0036】
図6は、パワーコントロールユニット30が車体12に取り付けられた場合におけるダッシュパネルロア26aとリア支持フレーム60との関係を示す図である。A/C配管66がダッシュパネルロア26aを貫通して、モータルーム24から車室22に向かって延びている。また、ダッシュパネルロア26a付近には、ブレーキ配管68等の他の部品が配置されている。したがって、リア支持フレーム60の凹凸形状を、A/C配管66、ブレーキ配管68等の部品(ダッシュパネル26付近の部品)と干渉しない形状にする。つまり、リア支持フレーム60の凹凸形状は、任意に変更可能である。これにより、パワーコントロールユニット30とユニット支持フレーム44とのアセンブリのサイズをコンパクト化することができるとともに、ユニット支持フレーム44をより後方側(よりダッシュパネル26側)に配置させることができ、衝突時の衝撃によるパワーコントロールユニット30への影響を抑えることができ、高電圧部品であるパワーコントロールユニット30を保護することができる。
【0037】
図7は、モータ式動力装置28の断面図である。モータ式動力装置28は、走行用モータ100と減速機102とディファレンシャルギア104とを一体に備えるもので、その外郭は車幅方向左端に位置するミッションケース106と、ミッションケース106の右端にボルト107で締結されるモータミッションケース108と、モータミッションケース108の右端に図示しないボルトで締結されるモータセンサーケース110と、モータセンサーケース110の右端に図示しないボルトで締結されるモータサイドケース112と、モータサイドケース112の右端に図示しないボルトで締結されるセンターシャフトベアリングサポート114と、ミッションケース106の内面にボルト116で締結されるインターミディエイトケース118とで構成される。走行用モータ100は、モータミッションケース108、モータセンサーケース110、及びモータサイドケース112内部に収納され、減速機102及びディファレンシャルギア104は、ミッションケース106及びモータミッションケース108の内部に収納される。
【0038】
走行用モータ100は、モータセンサーケース110の内周面に固定されたステータ120と、ステータ120に内部に回転自在に配置されたロータ122とで構成されている。ステータ120は、円周方向に配置された積層鋼板よりなる複数のステータコア124と、それらのステータコア124の外周にそれぞれ巻き回された複数のコイル126とで構成される。ロータ122は、モータミッションケース108及びモータサイドケース112にそれぞれボールベアリング128、130で回転自在に支持されたロータシャフト132と、ロータシャフト132に固定された積層鋼板よりなるロータコア134と、ロータコア134の外周部に埋設された複数の永久磁石136とで構成される。ロータコア134には、それを軸方向に貫通する複数の貫通孔138が形成される。
【0039】
減速機102は、ミッションケース106及びモータミッションケース108にそれぞれローラベアリング140及びボールベアリング142で支持された減速機シャフト144を備え、減速機シャフト144には、第2減速ギア146、パーキングギア148、及びファイナルドライブギア150が設けられる。ロータシャフト132に左端に設けた第1減速ギア152が減速機シャフト144の第2減速ギア146に噛合し、減速機シャフト144のファイナルドライブギア150がディファレンシャルギア104のファイナルドリブンギア154に噛合する。
【0040】
ディファレンシャルギア104は、ミッションケース106及びインターミディエイトケース118にそれぞれテーパローラベアリング156、158を介して回転自在に支持されたディファレンシャルケース160と、ディファレンシャルケース160にピニオンピン162を介して回転自在に支持された一対の回転自在に支持された一対のディファレンシャルピニオン164、164と、これらのディファレンシャルピニオン164、164の両方に同時に噛合する一対のディファレンシャルサイドギア166、166とを備えており、ディファレンシャルケース160の外周にファイナルドリブンギア154が固定される。
【0041】
左側のディファレンシャルサイドギア166に右端をスプラン結合された左ドライブシャフト168が、ディファレンシャルケース160及びミッションケース106を貫通して車幅方向左側に延出する。右側のディファレンシャルサイドギア166に左端をスプライン結合されたセンターシャフト(ハーフシャフト)170が、ディファレンシャルケース160、ミッションケース106及び中空のロータシャフト132の内部を貫通して車幅方向右側に延出する。センターシャフトベアリングサポート114にボールベアリング172を介して右端を支持されたセンターシャフト170に、右ドライブシャフト174がスプライン結合される。左ドライブシャフト168には前輪14Lが、右ドライブシャフト174には前輪14Rが接続されている。
【0042】
走行用モータ100を回転駆動すると、そのロータシャフト132のトルク(回転力)が第1減速ギア152及び第2減速ギア146を介して減速機シャフト144に伝達され、減速機シャフト144に伝達されたトルクは、ファイナルドライブギア150及びファイナルドリブンギア154を介してディファレンシャルケース160に伝達される。ディファレンシャルケース160に伝達されたトルクは、一対のディファレンシャルピニオン164及び一対のディファレンシャルサイドギア166を介して、電気自動車10の旋回状態等に応じて、左ドライブシャフト168と、センターシャフト170及び右ドライブシャフト174とに所定の比率で配分される。これにより、走行用モータ100が回転駆動すると、前輪14L、14Rが回転駆動する。
【0043】
このように、走行用モータ100の回転軸と、ディファレンシャルギア104の回転軸とが同軸上にあるので、モータ式動力装置28の配置位置を低くすることができ、電気自動車10の車高を高くすることなく、又は、パワーコントロールユニット30の車体12の鉛直方向の高さを低くすることなく、パワーコントロールユニット30をダッシュパネル26と走行用モータ100との間に搭載することが可能となる。つまり、モータ式動力装置28の配置位置を低くするので、ダッシュパネル26のダッシュパネルアッパー26bと、モータ式動力装置28とで形成される空間を広くすることができる。したがって、電気自動車10の車体デザインの自由度を高めることができ、パワーコントロールユニット30のコストが低廉になる。
【0044】
本実施の形態によれば、パワーコントロールユニット30を4辺で囲み、且つ、パワーコントロールユニット30を支持するユニット支持フレーム44は、車体12の後方側を除いた辺、つまり、左サイド支持フレーム54、右サイド支持フレーム56、及びフロント支持フレーム58で、パワーコントロールユニット30を支持するので、一対のサイドフレーム64、64に締結されたユニット支持フレーム44の後方側の辺(リア支持フレーム60)とパワーコントロールユニット30とをボルトBで締結させる作業を行うためのスペースが不要となり、そのスペース分だけパワーコントロールユニット30を車体12の後方側に配置させることができ、クラッシャブルゾーンを長くすることができる。したがって、衝突時の衝撃によるパワーコントロールユニット30への影響を軽減することができ、高電圧のパワーコントロールユニット30を保護することができる。
【0045】
ユニット支持フレーム44は、ダッシュパネル26の下方に設けられるので、ユーザのパワーコントロールユニット30への容易なアクセスを防ぐことができる。また、ユニット支持フレーム44は、ダッシュパネル26の下方に設けられるので、パワーコントロールユニット30の作製において、歩行者保護エリア32への配慮を軽減でき、低コストでパワーコントロールユニット30を作製することができる。
【0046】
走行用モータ100に電力を供給する三相交流電力ケーブル38が配線接続される電力コネクタ42と、電力コネクタ42をガードするガード部52とがパワーコントロールユニット30に設けられ、ガード部52は、パワーコントロールユニット30を支持するユニット支持フレーム44に締結されているので、ガード部52の強度を高めることができ、ガード部52の保護性能を向上させることができる。したがって、高電圧の電力コネクタ42を衝突時の衝撃から保護することができるとともに、電力コネクタ42の保護を強化することができる。
【0047】
パワーコントロールユニット30の上部には、左側面から車体12の鉛直方向に垂直な方向に向かって外方に突出した突出部50の底面側に電力コネクタ42が設けられ、ガード部52は、左側面から車体12の鉛直方向に垂直な方向に向かって突出部50より外方に突出しているとともにその内部が空洞となっており、三相交流電力ケーブル38は、該空洞を通って電力コネクタ42に接続されているので、衝突時の衝撃から三相交流電力ケーブル38及び電力コネクタ42を効果的に保護することができる。
【0048】
三相交流電力ケーブル38を走行用モータ100に接続させる電力コネクタ40と電力コネクタ42との間にガード部52が設けられているので、より効果的に電力コネクタ42を保護することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、ユニット支持フレーム44は、後方側のリア支持フレーム60以外のフレームで、パワーコントロールユニット30を支持するようにしたが、ユニット支持フレーム44は、4辺のフレームうち、少なくともリア支持フレーム60でパワーコントロールユニット30を支持しなければよい。つまり、4辺のフレームうち、少なくともリア支持フレーム60とパワーコントロールユニット30がボルトBによって締結されなければよい。したがって、例えば、ユニット支持フレーム44は、左サイド支持フレーム54及び右サイド支持フレーム56のみによって、パワーコントロールユニット30を支持してもよい。また、ボルトBによってユニット支持フレーム44とパワーコントロールユニット30とを締結するようにしたが、ボルトB以外の固定部材によって締結してもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、パワーコントロールユニット30をモータ式動力装置28の上方に設けるようにしたが、上方でなくてもよい。例えば、パワーコントロールユニット30をモータ式動力装置28と水平に設けてもよい。さらに、パワーコントロールユニット30を水平に設けるようにしたが(パワーコントロールユニットの上面、底面が水平方向となるように設けたが)、パワーコントロールユニット30を斜め方向に設けてもよい。要は、車体12の鉛直方向に電力コネクタ42及びガード部52を投影したときに、投影されたガード部52が投影された電力コネクタ42を囲うように、ユニット支持フレーム44によって車体12に取り付けられたパワーコントロールユニット30の一側面にガード部52が設けられていればよい。
【0051】
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0052】
10…電気自動車 12…車体
14L、14R…前輪 18…バッテリ
22…車室 24…モータルーム
26…ダッシュパネル 28…モータ式動力装置
30…パワーコントロールユニット 32…歩行者保護エリア
34…電源ケーブル 36、46…電源コネクタ
38…三相交流電力ケーブル 40、42…電力コネクタ
44…ユニット支持フレーム 50…突出部
52…ガード部 54…左サイド支持フレーム
56…右サイド支持フレーム 58…フロント支持フレーム
60…リア支持サイドフレーム 64…サイドフレーム
66…A/C配管 68…ブレーキ配管
100…走行用モータ 104…ディファレンシャルギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力源からの電力を所望の電力に変換して走行用モータに供給することで該走行用モータを駆動制御するパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造であって、
前記パワーコントロールユニットを支持するユニット支持フレームと、
前記ユニット支持フレームを前記車体に取り付けるための取付フレームと、
を備え、
前記走行用モータに電力を供給する電力供給線が配線接続される配線接続部と、該配線接続部をガードするガード部とが前記パワーコントロールユニットに設けられ、
前記ガード部は、前記ユニット支持フレームと締結されている
ことを特徴とするパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造であって、
前記ガード部は、前記車体の鉛直方向に前記配線接続部及び前記ガード部を投影したときに、投影された前記ガード部が投影された前記配線接続部を囲うように、前記パワーコントロールユニットの一側面に設けられている
ことを特徴とするパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造。
【請求項3】
請求項2に記載のパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造であって、
前記パワーコントロールユニットの上部には、前記一側面から前記車体の鉛直方向に垂直な方向に向かって外方に突出した突出部が設けられており、
前記配線接続部は、前記突出部の底面側に設けられ、
前記ガード部は、前記一側面から前記車体の鉛直方向に垂直な方向に向かって前記突出部より外方に突出しているとともにその内部が空洞となっており、
前記電力供給線は、前記空洞を通って前記配線接続部に接続されている
ことを特徴とするパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造であって、
前記パワーコントロールユニットは、前記車体の鉛直方向に対して、前記走行用モータの上方で前記ユニット支持フレームによって支持され、
前記電力供給線を前記走行用モータに接続させるモータ側接続部の前記車体の鉛直方向の位置と、前記配線接続部の前記車体の鉛直方向の位置との中間位置に、前記ガード部が設けられている
ことを特徴とするパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のパワーコントロールユニットの車体への取り付け構造を有することを特徴とする電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−96661(P2012−96661A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246025(P2010−246025)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】