説明

パワーステアリング用クーラ配管の取付け装置

【課題】強度バラツキの大きな溶接構造を使用せず、少ない部品点数で、取付け強度を向上できるパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置を提供する。
【解決手段】車体フレーム33に取付けられる支持ブラケット35と、支持ブラケットとの間で平行配置されたクーラ配管11を挟持する係止ブラケット37とを備え、支持ブラケットは、車体フレームに固定される取付け部35bと、クーラ配管を保持する扁平な保持面35c1を形成した配管保持部35cと、配管保持部の折り曲げ部の内側に形成されたリブ35dとを備え、係止ブラケットは、クーラ配管をホルダ38を介して保持面との間で挟持するU字形状に湾曲された湾曲部37b、37cを備え、係止ブラケット本体の両端部を支持ブラケットの配管保持部にボルトによって結合するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリング用の作動油を冷却するためのクーラ配管を取付けるパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧式パワーステアリング装置においては、パワーステアリング装置の作動によって昇温する作動油を冷却するためのクーラ配管が用いられる。一般にクーラ配管は、走行時の空冷効果が発揮されるラジエータの前面側に配置され、作動油がクーラ配管を循環することによって作動油を冷却するようになっている。この種のクーラ配管を有するパワーステアリング装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【特許文献1】特開2002−127849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のパワーステアリング用クーラ配管においては、特許文献1に記載されているように、クーラ配管がラジエータの前面をUターンするように配設され、通常クーラ配管の2か所を取付け装置によって車体フレームに固定するようになっている。
【0004】
ところで、クーラ配管を有するパワーステアリング装置が、過酷な条件で走行される、例えば、SUV(Sports utility vehicle)に搭載される場合には、車両振動に絶え得るようにクーラ配管を車体フレームに強度よく取付ける必要がある。また、特にSUVのような車両においては、作動油によって温められたクーラ配管の放熱効果を高めるために、クーラ配管に鉄製の多数のフィンが取付けられる場合が多いため、クーラ配管の重量が大きくなり、特許文献1に記載されているような取付け構成では、車両振動に絶え得るようにクーラ配管を強度よく取付けることが難しい問題がある。しかも、車両側からの要求として、強度バラツキが発生しやすい溶接構造を用いず、かつ部品点数の削減と軽量化が可能なクーラ配管取付け装置の実現が要求されている。
【0005】
本発明は、上記した従来の課題を解決するためになされたもので、強度バラツキの大きな溶接構造を使用せず、少ない部品点数で、取付け強度を向上できるパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、車体フレームに取付けられる支持ブラケットと、該支持ブラケットとの間で平行配置されたクーラ配管を挟持する係止ブラケットとを備えたパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置であって、前記支持ブラケットは、支持ブラケット本体の一端にクーラ配管に沿って折り曲げられ車体フレームに取付けられる取付け部と、前記支持ブラケット本体の他端にクーラ配管に沿って前記取付け部と直交する方向に折り曲げられ前記クーラ配管を保持する扁平な保持面を形成した配管保持部と、該配管保持部と前記支持ブラケット本体との折り曲げ部の内側に形成されたリブとを備え、前記係止ブラケットは、係止ブラケット本体の中央部に形成され前記クーラ配管をホルダを介して前記保持面との間で挟持するU字形状に湾曲された湾曲部を備え、前記係止ブラケット本体の両端部を前記支持ブラケットの配管保持部にボルトによって結合するようにしたことである。
【0007】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記ホルダは、両端部にずれ防止用の鍔部を備えた断面C形のゴムからなっていることである。
【0008】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2において、前記リブは、前記平行配置されたクーラ配管にそれぞれ対応する位置に形成され、前記ホルダの両端鍔部は、前記リブの形成によって前記支持ブラケット本体と前記管路保持部の折り曲げ部の背面側に形成される切欠き部と前記管路保持部の端部を挟み込むように配置されていることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、支持ブラケットは、支持ブラケット本体の一端にクーラ配管に沿って折り曲げられ車体フレームに取付けられる取付け部と、支持ブラケット本体の他端にクーラ配管に沿って取付け部と直交する方向に折り曲げられクーラ配管を保持する扁平な保持面を形成した配管保持部と、配管保持部と支持ブラケット本体との折り曲げ部の内側に形成されたリブとを備え、係止ブラケットは、係止ブラケット本体の中央部に形成されクーラ配管をホルダを介して保持面との間で挟持するU字形状に湾曲された湾曲部を備えている。これにより、パワーステアリング用クーラ配管の取付け装置を、実質的に、支持ブラケットと係止ブラケットの2部材で構成でき、支持ブラケットおよび係止ブラケットの成形も、プレス加工で成形可能な単純な形状であるので、強度バラツキの大きな溶接を用いることなく、クーラ配管を強度よくかつ安定的に取付けることができる。しかも、支持ブラケットの支持ブラケット本体と配管保持部との折れ曲がり部にリブを形成したので、配管保持部の強度を向上することができ、車両振動に対する耐久性を向上することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、ホルダは、両端部にずれ防止用の鍔部を備えた断面C形のゴムからなっているので、車両の振動等によっても、ホルダを軸方向にずれないようにすることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、リブは、平行配置されたクーラ配管にそれぞれ対応する位置に形成され、ホルダの鍔部を、リブの形成によって支持ブラケット本体と管路保持部の折り曲げ部の背面側に形成される切欠き部に配置したので、リブの形成部を有効に利用して、ホルダの鍔部と支持ブラケットとの干渉を効果的に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は、パワーステアリング用クーラ配管の取付け装置の全体を示すもので、図5は、クーラ配管11を備えた油圧式パワーステアリング装置12の概略を示す。
【0013】
図5において、油圧式パワーステアリング装置12は、エンジン13によって駆動される油圧ポンプ14を備え、油圧ポンプ14より吐出された作動油は供給通路15を介してステアリングギヤ16に供給される。ステアリングギヤ16は、図示してないが、ハンドル操舵に応じて作動されるコントロールバルブと、コントロールバルブの作動によって作動油が給排されハンドル操舵をアシストするパワーシリンダからなっている。ステアリングギヤ16によるアシスト動作によって作動油の温度が上昇し、温度上昇した作動油は、ステアリングギヤ16より排出通路17に排出され、クーラ配管11に送り込まれる。クーラ配管11は、作動油がクーラ配管11を通過することにより、空冷による熱交換作用によって作動油を冷却するようになっている。クーラ配管11によって冷却された作動油は、戻り通路18を介してリザーブタンク19に戻され、再び油圧ポンプ14により汲み上げられて供給通路15に吐出される。クーラ配管11は、車両の走行中に冷却効率が向上するように、例えば、図略のラジエータの前面位置に配設されて外気に直接接触されるようになっている。
【0014】
図1および図2において、クーラ配管11は、互いに平行に配置される一対の配管路21、22を備え、一方の配管路21の一端は、管路23を介して図5に示すステアリングギヤ16の排出通路17に接続され、他方の配管路22の一端は、管路24を介して図5に示す戻り通路18を介してリザーブタンク19に接続されている。配管路21、22の各他端は接続管路25によって互いに接続されている。配管路21、22上には、鉄製のフィン27が配管路21、22の長手方向に沿って多数取付けられている。フィン27は、作動油の通過によって暖められたクーラ配管11(配管路21、22)の放熱効果を高めるためのものである。
【0015】
クーラ配管11の両端部は、2つのクーラ配管取付け手段31、32によって、車体フレーム33にそれぞれ取付け固定されるようになっている。2つのクーラ配管取付け手段31、32は、基本的に同一の構成からなっているので、以下、一方のクーラ配管取付け手段31についてその構成を具体的に説明する。
【0016】
クーラ配管取付け手段31は、車体フレーム33にボルト34によって固定される支持ブラケット35と、支持ブラケット35に一対の配管路21、22を挟持してボルト36によって固定される係止ブラケット37とを有している。
【0017】
支持ブラケット35は、図3に示すように、鉄板の上下を直角に折り曲げて形成されたもので、鉛直な支持ブラケット本体35aの下部には、配管路21、22の長手方向に沿って折り曲げられた取付け部35bを有し、取付け部35bにはボルト34を挿通する取付け孔35b1が形成されている。一方、支持ブラケット本体35aの上部には、配管路21、22の長手方向に沿いかつ取付け部35bと直交する方向に折り曲げられた扁平な保持面35c1を有する配管保持部35cを備え、配管保持部35cは配管路21、22に跨る上下方向長さを有している。支持ブラケット本体35aと配管保持部35cの折り曲げ部の内側には、支持ブラケット35の強度をアップするために三角形状のリブ35dが塑性変形によって形成されている。リブ35dは、配管路21、22にそれぞれ対応した位置に2つ形成されており、これにより、リブ35dを形成した支持ブラケット本体35aと配管保持部35cの折り曲げ部の背面側には、図4に示すような切欠き部35eが形成される。
【0018】
係止ブラケット37は、長方形の鉄板からなる係止ブラケット本体37aに、図3に示すように、配管路21、22を挟持するための2つの略U字状に湾曲した湾曲部37b、37cを上下方向に間隔を有して形成したものである。係止ブラケット本体37aの上下2か所は、支持ブラケット35の配管保持部35cにボルト36によって一体的に結合される。配管路21、22は、支持ブラケット35の配管保持部35cと係止ブラケット37の湾曲部37a、37bとの間に、ゴム製のホルダ38を介在して挟持される。ゴムホルダ38は、図4に示すように、両端に位置決め用の鍔部38a、38bを有する断面C形形状をなすもので、C形の開口部を開いて配管路21、22の外周に装着され、その状態で、支持ブラケット35と係止ブラケット37との間で挟持される。この際、ゴムホルダ38の一方の鍔部38aは、図4に示すように、支持ブラケット35の配管保持部35cの端部に係止され、ゴムホルダ38の他方の鍔部38bは、支持ブラケット35の配管保持部35cと支持ブラケット本体35aとの折り曲げ部に形成された切欠き部35eに係止される。このように、ゴムホルダ38の鍔部38bをリブ35dの成形によって形成された切欠き部35eを利用して配置することにより、ゴムホルダ38の軸方向長さが配管保持部35cの横幅より小さくても、ゴムホルダ38の鍔部38bと支持ブラケット35との干渉を効果的に回避することができる。しかも、車両振動によって、ゴムホルダ38が軸方向にずれることも防止できる。
【0019】
本実施の形態におけるパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置は、上記したように構成されているので、車体フレーム33にクーラ配管11を取付ける場合には、まず、クーラ配管11の各配管路21、22の両端部にそれぞれゴムホルダ38を装着し、次いで、各配管路21、22に装着したゴムホルダ38の両端鍔部38a、38bを、支持ブラケット35の配管保持部35cを挟み付けるように位置させる。その状態で、係止ブラケット37の湾曲部37b、37cによって配管路21、22に装着したゴムホルダ38を包み込むように、係止ブラケット37を支持ブラケット35にボルト36によって固定する。しかる後、支持ブラケット35をボルト34によって車体フレーム33に固定する。
【0020】
このように、本実施の形態におけるパワーステアリング用のクーラ配管取付け装置によれば、実質的に、支持ブラケット35と係止ブラケット37の2部材によって構成できるので、部品点数の削減と軽量化を達成することができる。しかも、溶接構造を用いていないので、強度バラツキを少なくでき、鉄製フィン27の取付けによってクーラ配管11の重量が大きくなっても、取付け強度を向上することができる。また、支持ブラケット35には、配管路21、22を挟持する難しいビード加工が不要となり、単に上下を折り曲げるだけでよいので、一般のプレス加工で容易に成形することができ、製造コストを低減することが可能となる。
【0021】
さらには、支持ブラケット35の支持ブラケット本体35aと配管保持部35cの折り曲げ部の内側に、三角形状のリブ35dを形成しているので、配管保持部35cの強度、すなわち、配管保持部35cの保持面35c1に直交する方向の強度を向上することができる。しかも、リブ35dの成形によってその背面部に形成される切欠き部35eを利用して、ゴムホルダ38の鍔部38bを配置するようにしたので、ゴムホルダ38と支持ブラケット35との干渉を効果的に回避することができる。
【0022】
しかしながら、配管保持部35cの強度をアップするリブ35dは、必ずしも配管路21、22に対応した位置に設ける必要はなく、例えば、図6に示すように、リブ135dを配管路21、22の中間位置に形成するようにしてもよい。勿論、この場合には、リブ35dの背面側に形成される切欠き部35eを利用してゴムホルダ38の鍔部38bと支持ブラケット35との干渉を回避することができなくなるので、例えば、図7に示すように、ゴムホルダ38の軸方向寸法を若干長くして、ゴムホルダ38の鍔部38bを配管保持部35cの端面側に逃がすことによって、ゴムホルダ38の鍔部38bと支持ブラケット35との干渉を回避することが可能となる。
【0023】
上記した実施の形態においては、クーラ配管11を構成する2本の配管路21、22の各端部を、接続管路25によって接続した構成について述べたが、2本の配管路21、22の各端部をU字状管路によって一体的に形成するように構成してもよい。
【0024】
以上、本発明を実施の形態に即して説明したが、本発明は実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の形態を採り得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態を示すパワーステアリング用クーラ配管取付け装置の正面図である。
【図2】図1の2方向から見たパワーステアリング用クーラ配管取付け装置の上面図である。
【図3】図1の3−3線に沿って矢視したパワーステアリング用クーラ配管取付け装置の側面図である。
【図4】図3の4−4線に沿って切断した断面図である。
【図5】クーラ配管を備えた油圧パワーステアリング装置の概略図である。
【図6】本発明の変形例を示すパワーステアリング用クーラ配管取付け装置の側面図である。
【図7】図6の7−7線に沿って切断した断面図である。
【符号の説明】
【0026】
11…クーラ配管、12…パワーステアリング装置、21、22…配管路、27…フィン、31、32…クーラ配管取付け手段、33…車体フレーム、35…支持ブラケット、35a…支持ブラケット本体、35b…取付け部、35c…配管保持部、35c1…保持面、35d…リブ、36…ボルト、37…係止ブラケット、37a…係止ブラケット本体、37b、37c…湾曲部、38…ホルダ、38a、38b…鍔部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに取付けられる支持ブラケットと、該支持ブラケットとの間で平行配置されたクーラ配管を挟持する係止ブラケットとを備えたパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置であって、
前記支持ブラケットは、支持ブラケット本体の一端にクーラ配管に沿って折り曲げられ車体フレームに取付けられる取付け部と、前記支持ブラケット本体の他端にクーラ配管に沿って前記取付け部と直交する方向に折り曲げられ前記クーラ配管を保持する扁平な保持面を形成した配管保持部と、該配管保持部と前記支持ブラケット本体との折り曲げ部の内側に形成されたリブとを備え、前記係止ブラケットは、係止ブラケット本体の中央部に形成され前記クーラ配管をホルダを介して前記保持面との間で挟持するU字形状に湾曲された湾曲部を備え、前記係止ブラケット本体の両端部を前記支持ブラケットの配管保持部にボルトによって結合するようにしたことを特徴とするパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ホルダは、両端部にずれ防止用の鍔部を備えた断面C形のゴムからなっていることを特徴とするパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置。
【請求項3】
請求項2において、前記リブは、前記平行配置されたクーラ配管にそれぞれ対応する位置に形成され、前記ホルダの両端鍔部は、前記リブの形成によって前記支持ブラケット本体と前記管路保持部の折り曲げ部の背面側に形成される切欠き部と前記管路保持部の端部を挟み込むように配置されていることを特徴とするパワーステアリング用クーラ配管の取付け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−111147(P2010−111147A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283026(P2008−283026)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】