説明

パワー半導体装置

【課題】 熱集中による温度上昇が低減されたパワー半導体装置を提供する。
【解決手段】 パワー半導体素子の縦横比を1.5以上にする。これにより、周囲に対する放熱性を高めて、電流密度の高いパワー半導体素子でも効率のよい温度領域で動作させることが可能となる。さらに、ソース電極2から主電流を取り出すワイヤ61〜87の本数を14本以上とし、方向を異なる2方向に分散させる。2方向に分散したワイヤの先は、同一の配線電極42に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力スイッチングを行なうパワー半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド自動車などが注目されているが、このような用途では、小型で効率がよく信頼性の高いパワー半導体素子が求められている。パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子は、扱う電流が大きいので動作時の放熱が重要である。
【0003】
パワー半導体の信頼性を高める技術の一例が、特開2000−307043号公報(特許文献1)に開示されている。また、特開2000−100826号公報(特許文献4)には、トランジスタ単体セルを扁平な形状にして電流がエミッタ領域に均一に流れるようにした例が開示されている。
【特許文献1】特開2000−307043号公報
【特許文献2】特開平10−79466号公報
【特許文献3】特開2001−284575号公報
【特許文献4】特開2000−100826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来よく知られたパワー半導体素子としては、IGBT、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)、ダイオード素子などがある。
【0005】
これらのパワー半導体素子は、シリコン結晶上に形成され、電流密度の上限は200から250A/cm2程度であった。また、素子が形成されるシリコンチップの縦横比は、1から1.5未満までであった。さらに、チップ上の主電極にワイヤボンディングされ、主電流を取出すワイヤの数は、多くても10本までであった。このワイヤの一本あたりの径は、400μmまでであり、流すことのできる電流はワイヤ一本あたり20A程度であった。
【0006】
既存シリコン(Si)半導体を用いた電力素子及び高周波素子では、低損失、高速動作において、限界に到達することがわかっており、その利用には限界がある。このためシリコンよりもさらに高効率のパワー半導体素子に対する研究開発が行なわれている。
【0007】
そのようなパワー半導体素子として注目されているのが、単価珪素(SiC)半導体、窒化ガリウム(GaN)半導体や、スーパージャンクションMOSFETなどである。これらの素子は、電流密度の上限が400〜800A/cm2になると考えられる。しかし、これらの素子は、シリコンよりも高温(〜400℃)でも使用可能であるが、ユニポーラ素子として使用すると温度に比例して電力損失が増大してしまう。
【0008】
図9は、導通損失と温度との関係を示した図である。
【0009】
図9に示すように、導通損失は、室温の25℃付近で最も小さくなり、高温になると増大してしまう。したがって、高温で使用可能な素子であっても効率よく使用するためには放熱をよくして冷却効果を高めておく必要がある。このため、デバイスの形状や配置を工夫して、熱集中による温度上昇をできる限り避けたほうが、電力損失を少なくすることができる。
【0010】
本発明は、高効率パワー半導体において、熱集中による温度上昇が低減されたパワー半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、要約すると、パワー半導体装置であって、電力スイッチングを行なうパワー半導体装置であって、縦横比が1:1.5以上に扁平な形状を有する半導体基板と、半導体基板の第1、第2の主面にそれぞれ形成される第1、第2の主電極とを備える。
【0012】
好ましくは、パワー半導体装置は、半導体基板に形成され、第1、第2の主電極間に接続される単数または複数のパワー半導体素子をさらに備える。
【0013】
より好ましくは、パワー半導体装置は、制御電極をさらに備える。単数または複数のパワー半導体素子の各々は、電界効果型電流制御素子であり制御電極に与えられる電圧に応じて第1、第2の主電極間に流れる電流を制御する。
【0014】
この発明の他の局面に従うと、電力スイッチングを行なうパワー半導体装置であって、半導体基板と、半導体基板の第1、第2の主面にそれぞれ形成される第1、第2の主電極と、半導体基板が配置される絶縁性基板と、絶縁性基板上に形成される配線電極と、第1の主電極を配線電極に並列的に接続する14本以上の複数のワイヤとを備える。
【0015】
好ましくは、半導体基板は、短辺と、短辺との比率が1:1.5以上である長辺とを有する長方形の形状である。
【0016】
好ましくは、配線電極は、半導体基板を挟むように配置され、複数のワイヤは、半導体基板から第1の向きに向かって配線電極まで延在する第1のワイヤ群と、半導体基板から第1の向きとは異なる第2の向きに向かって配線電極まで延在する第2のワイヤ群とを含む。
【0017】
より好ましくは、半導体基板は、長方形の形状を有し、第1の主電極は、長方形の短辺に沿う方向に複数の領域に分割され、複数の領域のうちの第1の領域には第1のワイヤ群に属するワイヤが接続され、第1の領域に隣接する複数の領域のうちの第2の領域には第2のワイヤ群に属するワイヤが接続される。
【0018】
この発明のさらに他の局面に従うと、電力スイッチングを行なうパワー半導体装置であって、半導体基板と、半導体基板の第1、第2の主面にそれぞれ形成される第1、第2の主電極と、半導体基板が配置される絶縁性基板と、絶縁性基板上に形成され、半導体基板を第1、第2の部分で挟むように配置される配線電極と、第1の主電極を配線電極に並列的に接続する複数のワイヤとを備える。複数のワイヤは、第1の主電極を配線電極の第1の部分に接続する第1のワイヤと、第1の主電極を配線電極の第2の部分に接続する第2のワイヤとを含む。
【0019】
好ましくは、配線電極は、第1、第2の部分と第3の部分で半導体基板の3方を囲み、複数のワイヤは、第1の主電極を配線電極の第3の部分に接続する第3のワイヤをさらに含む。
【0020】
好ましくは、配線電極は、第1〜第3の部分と第4の部分とで半導体基板の4方を囲み、複数のワイヤは、第1の主電極を配線電極の第4の部分に接続する第4のワイヤをさらに含む。
【0021】
好ましくは、半導体基板は、電流密度400A/cm2以上を流すことが可能である。
【0022】
より好ましくは、半導体基板は、炭化珪素(SiC)である。
【0023】
より好ましくは、半導体基板は、窒化ガリウム(GaN)である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、半導体装置の熱集中が緩和され放熱性が向上するので、効率がよい温度条件で半導体装置を使用することが可能となり電力損失を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
[実施の形態1]
図1は実施の形態1で用いられる半導体素子1の形状を示した図である。
【0027】
図1を参照して、半導体素子1は、長方形かつ平板状の半導体基板を備える。長方形は、短辺L1と長辺L2とを有する。
【0028】
半導体素子1は、交流モータを駆動するインバータなどに用いられ、電力スイッチングを行なうパワー半導体素子である。短辺L1と長辺L2との比は、熱集中を避けるため長辺L2/短辺L1が1.5以上である。図1では、例として長辺L2/短辺L1が3である場合が示されている。
【0029】
半導体素子1は、さらに、主電流を授受するためのソース電極2と、スイッチング制御信号を与えるためのゲート電極3と、電流センス信号を授受するための電流センス電極4と、温度センス信号を授受するための温度センス電極5と、主電流を制御する電界効果トランジスタが形成される領域を囲むガードリング6とを含む。
【0030】
電流センス電極4は、半導体基板に形成されている電流モニタ用のMOSトランジスタに接続される。電流モニタ用のMOSトランジスタは、主電流制御用のスイッチング素子に与えられるスイッチング制御信号がゲートに与えられている。また、温度センス電極5は、半導体基板に形成されている温度検知用のダイオードに接続される。
【0031】
図2は、主電流を制御するスイッチング素子を説明するための図である。
【0032】
図1,図2を参照して、主電流を制御するスイッチング素子は、MOS(metal oxide semiconductor)トランジスタでありゲートGがゲート電極3に接続され、ソースSがソース電極2に接続され、ドレインDが半導体基板の裏面に形成されている電極に接続されている。
【0033】
このMOSトランジスタは、図1のソース電極2の下部であってガードリング6に囲まれた領域に形成されている。
【0034】
図3は、パワーMOSトランジスタの単位構造を示す断面図である。
【0035】
図3を参照して、N型基板24の裏面にはドレイン電極となる金属層22が形成されている。N型基板24の上部にはドリフト層26が形成され、ドリフト層26の上部にはP型不純物領域28が形成され、P型不純物領域28の内部の半導体基板表面部にはN型不純物領域30が形成される。
【0036】
そして、半導体基板表面のN型不純物領域30からP型不純物領域28、ドリフト層26、P型不純物領域28を経てN型不純物領域30に至る部分には、ゲート酸化膜であるシリコン酸化膜32およびポリシリコンのゲート電極層34が形成される。そしてゲート電極層34の上部にも保護膜としてシリコン酸化膜32が形成される。
【0037】
半導体基板の表面には、P型不純物領域28およびN型不純物領域30に電気的に接続される金属層36が形成される。金属層36は、図1に示したソース電極2および図2に示したソースSに対応する。
【0038】
図3に示したような単位構造のMOSトランジスタが図1のソース電極2の下部に一面に形成されている。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態1の半導体素子の好適な素子寸法比を説明するための図である。
【0040】
図4を参照して、従来のパワー半導体素子は、円形の半導体ウエハから数を多く切出すために、縦横比を1.5未満とするのが通常であった。半導体ウエハからの取れ数が増えれば単価が下がるからである。また、従来のパワー半導体素子は、導通時の電流密度は200〜250A/cm2程度であり、400A/cm2未満であった。この部分が図4中の領域A1で示される。
【0041】
近年パワー半導体素子として注目されているSiC半導体、GaN半導体や、スーパージャンクションMOSFETなどでは、電流密度の上限が400〜1000A/cm2になると考えられる。これらの素子は、高温(〜400℃)でも使用可能であるが温度に比例して電力損失が増大してしまうので、放熱が良い形状にすることが好ましい。
【0042】
放熱を良くするには、半導体基板の短辺に対して長辺を長くして全体を細長い形状とすることが考えられる。そうすれば、発熱源であるパワートランジスタ形成領域は、特に長辺部分から外部に放熱しやすくなる。半導体基板を扁平にすることが重要であり、例えばトランジスタのセル単体を扁平な形状としても、半導体基板つまりチップを扁平な形状としないのでは良好な放熱効果を得ることはできない。
【0043】
電流密度が1000A/cm2を超えるものについては素子分割をすると考えると、現状の200A/cm2で縦横比1.5のチップと同程度の放熱性を確保するには、1.5×1000(A/cm2)/200(A/cm2)=7.5が最大値であろう。
【0044】
したがって、多少半導体ウエハからの取れ数が少なくなっても、縦横比1.5〜7.5の範囲は、電流密度が400〜1000A/cm2を流すことが可能な半導体基板であれば放熱性の観点から使用する価値がある。この部分が図4中の領域A2で示される。
【0045】
以上説明したように、実施の形態1では、パワー半導体素子の縦横比を1.5以上にする。これにより、周囲に対する放熱性を高めて、電流密度の高いパワー半導体素子でも効率のよい温度領域で動作させることが可能となる。
【0046】
図5は、半導体素子1を搭載する半導体装置40を示した図である。
【0047】
図5を参照して、半導体装置40は、絶縁性に優れ熱伝導が良いセラミック基板41と、セラミック基板41上に形成され主電流が流れる配線電極42,47と、配線電極47上に配置される半導体素子1とを含む。
【0048】
配線電極42,47は、主電流が流れる電極であり図示しないバスバーに接続される。半導体素子1は、図1に示した半導体素子1であり、その説明は繰返さない。
【0049】
半導体装置40は、さらに、セラミック基板41上に形成され制御信号やセンス信号を授受するための配線電極48,50,52と、半導体素子1を配線電極と接続するワイヤ61〜90とを含む。
【0050】
配線電極48と電流センス電極4とはワイヤ88で接続される。配線電極50とゲート電極3とはワイヤ89で接続される。配線電極52と温度センス電極5とはワイヤ90で接続される。
【0051】
配線電極47は、図3に示した半導体基板の裏面のドレイン電極Dにはんだ等によって接続される。配線電極42は、図3に示した半導体基板の表面のソース電極Sに、複数のワイヤ61〜87によって接続される。
【0052】
配線電極42は、半導体素子1の半導体基板を第1の部分43と第2の部分45とで挟むように配置されている。また、配線電極42は、半導体素子1の半導体基板を第1の部分43と第2の部分45と第3の部分44とで3方を囲むように配置されている。
【0053】
複数のワイヤ61〜87は、半導体基板から図5の左向きに向かって配線電極42の第1の部分43まで延在する第1のワイヤ群であるワイヤ75〜87と、半導体基板から図5の右向きに向かって配線電極42の第2の部分45まで延在する第2のワイヤ群であるワイヤ61〜74とを含む。
【0054】
ソース電極2は、長方形の半導体基板の短辺に沿う方向に複数の領域に分割される。図5においてソース電極2の最上部側の領域の右端にはワイヤ61の一方端が接続され、ワイヤ61の他方端は配線電極42の第2の部分45に接続されている。そして隣接する領域では、左端にワイヤ75の一方端が接続されワイヤ75の他方端は配線電極42の第1の部分43に接続されている。
【0055】
このように隣接する2つの領域の一方が第2の部分45に接続され他方が第1の部分43に接続されるように、ワイヤ61〜87の接続が決定されている。したがって隣り合うワイヤの熱干渉が緩和される。言い換えると、半導体装置40は、主電流を取り出すワイヤの方向が異なる2方向に分散している。2方向に分散したワイヤの先は、同一の配線電極42に接続される。
【0056】
図6は、半導体基板に流し得る電流密度とワイヤ数との関係を示した図である。
【0057】
図6において、縦軸は主電流を取り出すためのソース電極に接続されるワイヤボンディング数であり、横軸は半導体基板に流しうる電流密度である。
【0058】
従来のパワー半導体素子は、導通時の電流密度は200〜250A/cm2程度であり、400A/cm2未満であった。また、ソース電極に接続されるワイヤボンディング数は、7〜10本であり、14本未満であった。この部分が図6中領域A3で示される。
【0059】
近年パワー半導体素子として注目されているSiC半導体、GaN半導体や、スーパージャンクションMOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)などでは、電流密度の上限が400〜1000A/cm2になると考えられる。電流が大きくなると、ワイヤ本数が同じである場合はワイヤあたりに流れる電流の大きさも大きくなる。そして、ワイヤあたりに流れる電流のばらつきも大きくなる。
【0060】
しかし、ワイヤを太くすると、過電流が流れたときの保護としてヒューズのようにワイヤが溶断されることが期待しにくくなる。また、太いワイヤほど材料費がかかるので、制御電極用のワイヤも含めてワイヤを太くするのは得策ではない。また、制御電極に対するワイヤとソースやドレイン電極に接続するワイヤの太さを変えるのは、ワイヤボンディング装置の制約から実現しにくいこともある。
【0061】
そこで、図1で示したような細長い半導体素子上に形成された細長いソース電極に対しては、従来よりも多くのワイヤを接続することでワイヤあたり電流を抑え電流ばらつきを小さくすることが可能となる。これにより、過電流通電時に電圧のオーバーシュート量を小さくすることができる。
【0062】
主電流取出用のワイヤ本数は、通常のパワー半導体素子が電流密度200A/cm2で7本だとすると、電流密度400〜1000A/cm2の高電力素子では、7(本)×400(A/cm2)/200(A/cm2)=14本から、7(本)×1000(A/cm2)/200(A/cm2)=50本までであろうと考えられる。すなわち図6の領域A4に示す範囲が好適である。
【0063】
またこれらのパワー素子は、高温(〜400℃)でも使用可能であるが温度に比例して電力損失が増大してしまうので、放熱を少しでも良くして使用することが好ましい。
【0064】
熱は、半導体基板の裏面からセラミック基板に伝導される以外にも、ソース電極に接続されているワイヤによってセラミック基板に伝導される部分もある。したがって、ワイヤの接続先があまり集中するのは好ましくない。また、ワイヤから空気や充填された防水樹脂等を介して放熱される熱もある。
【0065】
したがって、図5で説明したように、半導体装置40において主電流を取り出すワイヤの方向を異なる2方向に分散させ熱を分散させて放熱を良くしている。このため、同じ電流を流しても半導体基板温度をより低い温度に維持できるので、導通損失を低く抑えることができる。
【0066】
また、熱の拡散がされ放熱が良くなった結果、電流容量も向上させることが可能となり、また接合部の信頼性も向上する。
【0067】
[実施の形態2]
図7は、実施の形態2の半導体装置100を示した図である。
【0068】
図7を参照して、半導体装置100は、絶縁性に優れ熱伝導が良いセラミック基板141と、セラミック基板141上に形成され主電流が流れる配線電極142,147と、セラミック基板141上に形成され制御信号やセンス信号を授受するための配線電極148,150,152と、配線電極147上に配置される半導体素子101と、半導体素子101を配線電極と接続するワイヤ161〜169とを含む。
【0069】
配線電極142,147は、主電流が流れる電極であり図示しないバスバーに接続される。半導体素子101は、交流モータを駆動するインバータなどに用いられる電力スイッチングを行なうパワー半導体素子であり、短辺L1と長辺L2との比は、熱集中を避けるため長辺L2/短辺L1が1.5以上である。
【0070】
半導体素子1は、さらに、主電流を授受するためのソース電極102と、スイッチング制御信号を与えるためのゲート電極103と、電流センス信号を授受するための電流センス電極104と、温度センス信号を授受するための温度センス電極105と、主電流を制御する電界効果トランジスタが形成される領域を囲むガードリング106とを含む。
【0071】
電流センス電極104は、半導体基板に形成されている電流モニタ用のMOSトランジスタに接続される。電流モニタ用のMOSトランジスタのゲートには、主電流制御用のスイッチング素子に与えられるスイッチング制御信号が共通に与えられている。また、温度センス電極105は、半導体基板に形成されている温度検知用のダイオードに接続される。
【0072】
配線電極148と電流センス電極104とはワイヤ167で接続される。配線電極150とゲート電極103とはワイヤ168で接続される。配線電極152と温度センス電極105とはワイヤ169で接続される。
【0073】
配線電極147は、半導体素子101の半導体基板の裏面のドレイン電極Dにはんだ等によって接続される。配線電極142は、半導体基板の表面のソース電極Sに、複数のワイヤ161〜166によって接続される。
【0074】
配線電極142は、半導体素子101の半導体基板を第1の部分143と第2の部分145とで挟むように配置されている。また、配線電極142は、半導体素子101の半導体基板を第1の部分143と第2の部分145と第3の部分144とで3方を囲むように配置されている。
【0075】
複数のワイヤ161〜166は、半導体基板から図7の左向きに配線電極142の第1の部分143まで延在する第1のワイヤ群であるワイヤ163〜164と、半導体基板から図7の右向きに配線電極142の第2の部分145まで延在する第2のワイヤ群であるワイヤ165〜166と、半導体基板から図7の上向きに配線電極142の第3の部分144まで延在する第3のワイヤ群であるワイヤ161〜162とを含む。
【0076】
このように、半導体装置100は、主電流を取り出すワイヤの方向が異なる3方向に分散している。3方向に分散したワイヤの先は、同一の配線電極142に接続される。3方向に分散させることで放熱が良くなり、電流密度の高いパワー半導体素子でも効率のよい温度領域で動作させることが可能となる。
【0077】
図8は、実施の形態2の変形例を示した図である。
【0078】
図8を参照して、半導体装置200は、絶縁性に優れ熱伝導が良いセラミック基板241と、セラミック基板241上に形成され主電流が流れる配線電極242,247と、セラミック基板241上に形成され制御信号やセンス信号を授受するための配線電極248,250,252と、配線電極247上に配置される半導体素子201と、半導体素子201を配線電極と接続するワイヤ261〜271とを含む。
【0079】
配線電極242,247は、主電流が流れる電極であり図示しないバスバーに接続される。半導体素子201は、交流モータを駆動するインバータなどに用いられる電力スイッチングを行なうパワー半導体素子であり、短辺L1と長辺L2との比は、熱集中を避けるため長辺L2/短辺L1が1.5以上である。
【0080】
半導体素子201は、さらに、主電流を授受するためのソース電極202と、スイッチング制御信号を与えるためのゲート電極203と、電流センス信号を授受するための電流センス電極204と、温度センス信号を授受するための温度センス電極205と、主電流を制御する電界効果トランジスタが形成される領域を囲むガードリング206とを含む。
【0081】
電流センス電極204は、半導体基板に形成されている電流モニタ用のMOSトランジスタに接続される。電流モニタ用のMOSトランジスタのゲートには、主電流制御用のスイッチング素子に与えられるスイッチング制御信号が共通に与えられている。また、温度センス電極205は、半導体基板に形成されている温度検知用のダイオードに接続される。
【0082】
配線電極248と電流センス電極204とはワイヤ269で接続される。配線電極250とゲート電極203とはワイヤ270で接続される。配線電極252と温度センス電極205とはワイヤ271で接続される。
【0083】
配線電極247は、半導体素子201の半導体基板の裏面のドレイン電極Dにはんだ等によって接続される。配線電極242は、半導体基板の表面のソース電極Sに、複数のワイヤ261〜268によって接続される。
【0084】
配線電極242は、半導体素子201の半導体基板を第1の部分243と第2の部分245とで挟むように配置されている。また、配線電極242は、半導体素子201の半導体基板を第1の部分243と第2の部分245と第3の部分244と第4の部分245とで4方を囲むように配置されている。
【0085】
複数のワイヤ261〜268は、半導体基板から図8の左向きに配線電極242の第1の部分243まで延在する第1のワイヤ群であるワイヤ263〜264と、半導体基板から図8の右向きに配線電極242の第2の部分245まで延在する第2のワイヤ群であるワイヤ265〜266と、半導体基板から図8の上向きに配線電極242の第3の部分244まで延在する第3のワイヤ群であるワイヤ261〜262と、半導体基板から図8の下向きに配線電極242の第4の部分246まで延在する第4のワイヤ群であるワイヤ267〜268とを含む。
【0086】
このように、半導体装置200は、主電流を取り出すワイヤの方向が異なる4方向に分散している。4方向に分散したワイヤの先は、同一の配線電極242に接続される。4方向に分散させることで放熱が良くなり、電流密度の高いパワー半導体素子でもさらに効率のよい温度領域で動作させることが可能となる。
【0087】
なお、本実施の形態においては、パワー半導体素子の例としてMOSトランジスタの場合を説明したが、本発明はそれ以外にも、SiC、GaN、Siなどで構成されるIGBT、MOSFET、JFETなどに好適に用いることができる。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施の形態1で用いられる半導体素子1の形状を示した図である。
【図2】主電流を制御するスイッチング素子を説明するための図である。
【図3】パワーMOSトランジスタの単位構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1の半導体素子の好適な素子寸法比を説明するための図である。
【図5】半導体素子1を搭載する半導体装置40を示した図である。
【図6】半導体基板に流し得る電流密度とワイヤ数との関係を示した図である。
【図7】実施の形態2の半導体装置100を示した図である。
【図8】実施の形態2の変形例を示した図である。
【図9】導通損失と温度との関係を示した図である。
【符号の説明】
【0090】
1,101,201 半導体素子、2,102,202 ソース電極、3,103,203 ゲート電極、4,104,204 電流センス電極、5,105,205 温度センス電極、6,106,206 ガードリング、22,36 金属層、24 N型基板、26 ドリフト層、28 P型不純物領域、30 N型不純物領域、32 シリコン酸化膜、34 ゲート電極層、40,100,200 半導体装置、41,141,241 セラミック基板、42,47,48,50,52,142,147,148,150,152,242,247,248,250,252 配線電極、43,44,45,143,144,145,243,244,245,246 部分、61〜90,161〜169,261〜271 ワイヤ、A1〜A4 領域、D ドレイン、G ゲート、S ソース、L1 短辺、L2 長辺。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力スイッチングを行なうパワー半導体装置であって、
縦横比が1:1.5以上に扁平な形状を有する半導体基板と、
前記半導体基板の第1、第2の主面にそれぞれ形成される第1、第2の主電極とを備える、パワー半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板に形成され、前記第1、第2の主電極間に接続される単数または複数のパワー半導体素子をさらに備える、請求項1に記載のパワー半導体装置。
【請求項3】
制御電極をさらに備え、
単数または複数のパワー半導体素子の各々は、電界効果型電流制御素子であり前記制御電極に与えられる電圧に応じて前記第1、第2の主電極間に流れる電流を制御する、請求項2に記載のパワー半導体装置。
【請求項4】
電力スイッチングを行なうパワー半導体装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板の第1、第2の主面にそれぞれ形成される第1、第2の主電極と、
前記半導体基板が配置される絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に形成される配線電極と、
前記第1の主電極を前記配線電極に並列的に接続する14本以上の複数のワイヤとを備える、パワー半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板は、短辺と、前記短辺との比率が1:1.5以上である長辺とを有する長方形の形状である、請求項4に記載のパワー半導体装置。
【請求項6】
前記配線電極は、前記半導体基板を挟むように配置され、
前記複数のワイヤは、
前記半導体基板から第1の向きに前記配線電極まで延在する第1のワイヤ群と、
前記半導体基板から前記第1の向きとは異なる第2の向きに前記配線電極まで延在する第2のワイヤ群とを含む、請求項4に記載のパワー半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板は、長方形の形状を有し、
前記第1の主電極は、前記長方形の短辺に沿う方向に複数の領域に分割され、
前記複数の領域のうちの第1の領域には前記第1のワイヤ群に属するワイヤが接続され、
前記第1の領域に隣接する前記複数の領域のうちの第2の領域には前記第2のワイヤ群に属するワイヤが接続される、請求項6に記載のパワー半導体装置。
【請求項8】
電力スイッチングを行なうパワー半導体装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板の第1、第2の主面にそれぞれ形成される第1、第2の主電極と、
前記半導体基板が配置される絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に形成され、前記半導体基板を第1、第2の部分で挟むように配置される配線電極と、
前記第1の主電極を前記配線電極に並列的に接続する複数のワイヤとを備え、
前記複数のワイヤは、
前記第1の主電極を前記配線電極の前記第1の部分に接続する第1のワイヤと、
前記第1の主電極を前記配線電極の前記第2の部分に接続する第2のワイヤとを含む、パワー半導体装置。
【請求項9】
前記配線電極は、前記第1、第2の部分と第3の部分で前記半導体基板の3方を囲み、
前記複数のワイヤは、
前記第1の主電極を前記配線電極の前記第3の部分に接続する第3のワイヤをさらに含む、請求項8に記載のパワー半導体装置。
【請求項10】
前記配線電極は、前記第1〜第3の部分と第4の部分とで前記半導体基板の4方を囲み、
前記複数のワイヤは、
前記第1の主電極を前記配線電極の前記第4の部分に接続する第4のワイヤをさらに含む、請求項9に記載のパワー半導体装置。
【請求項11】
前記半導体基板は、電流密度400A/cm2以上を流すことが可能である請求項1〜10のいずれか1項に記載のパワー半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板は、炭化珪素(SiC)である、請求項11に記載のパワー半導体装置。
【請求項13】
前記半導体基板は、窒化ガリウム(GaN)である、請求項11に記載のパワー半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−156479(P2006−156479A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340918(P2004−340918)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】