説明

パーソナルケア製品用のポリマー組成物

パーソナルケア製品で用いるためのポリマー組成物を開示する。この組成物は、室温で、10〜15の炭素原子を有する長鎖アルコール、及び10〜30の炭素原子を有するエステル基がぶら下がる一部のアルキル側鎖と、1〜8の炭素原子を有するエステル基がぶら下がっている他のアルキル側鎖とを有するポリアルキル[メタ]アクリレートの固溶体である。このポリマーを、触媒の存在下で、ポリアルキル[メタ]アクリレートと長鎖アルコールとのエステル交換反応によって形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーソナルケア製品で用いられるポリマー組成物の分野に広く関連する。より詳しくは、本開示は、アクリル酸エステルから誘導される側鎖結晶性ポリマーを含むポリマー組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
化粧品用及び他のパーソナルケア製品用に用いられるオイル含有組成物に、ポリマー増粘剤が用いられることがある。いくつかの場合に、これらの組成物は、そのオイルに均一に分散される側鎖結晶性ポリマーを含有する場合がある。そのような場合には、広範な側鎖結晶性ポリマーを用いて、オイルを増粘することができ、そして一般的には、側鎖結晶性ポリマーは、親油性基、例えば長鎖アルキル基を有する。これらの種類の配合物で従来用いられている界面活性剤を、これらのポリマーを用いて補完することができ、又は代替することができる。そのような材料の1つの群としては、アクリル酸エステルから誘導される側鎖結晶性ポリマーであって、10〜50の炭素原子(例えば、10〜30の炭素原子)を含む直鎖の側鎖を有する側鎖結晶性ポリマーが挙げられる。そのようなポリマーは、ポリマーマトリクス中への活性のある材料のカプセル化、例えば触媒のカプセル化のためにも用いられている。この分類のポリマーの例は、Landec Corporationにより開発されたIntelimer(商標)化合物である。側鎖結晶性ポリマーは、特許文献1及び2でさらに述べられており、これらの文献は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0003】
Intelimer化合物、及びアクリル酸エステルから誘導され、かつ直鎖の側鎖を有する他の公知の側鎖結晶性ポリマーは、主に、大きな(アルキル)アクリル系モノマーのフリーラジカル重合によるホモポリマーである。大きな(アルキル)アクリル系モノマーを、調達し、そして処理するのが困難でかつ時間掛かる場合がある点で、フリーラジカル重合は欠点を有する。側鎖のポリマーを生成する他の方法は、参照により組み込まれる特許文献3〜5に記載されており、これらは燃料組成物で用いられるポリマーに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,199,318号
【特許文献2】米国特許第6,989,417号
【特許文献3】国際公開WO01/48032号
【特許文献4】米国特許出願公開20040250465号
【特許文献5】米国特許第6,265,360号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の典型的な実施態様は、調達し、そして処理するのが比較的容易であり、かつパーソナルケア製品での用途に関して望ましい特性を有する組成物を与えることによって、これらの欠点及び他の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
典型的な実施態様によれば、組成物は、R’OHの組成を有するアルコール、及び次の繰返し単位を有するポリアルキル[メタ]アクリレートを含有する:
【化1】

【0007】
Zは、水素又はメチル基であり;Xは、各繰返し単位で独立してR又はR’であり;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基(例えば、1〜4の炭素原子);R’は、10〜50の炭素原子を有するアルキル基(通常は、10〜30の炭素原子を有する);かつnは、この構成が約10,000〜約250,000g/mol(例えば、40,000〜140,000g/mol)の範囲の重量平均分子量を有するような整数である。XがR’であるポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位は、繰返し単位総数nの約60〜約99.5mol%を構成し、かつXがRであるポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位は、繰返し単位総数nの約0.5〜約40mol%を構成する。R’OHは、繰返し単位総数nに対して、約0.5〜約40mol%の範囲で存在している。
【0008】
他の1つの典型的な実施態様によれば、化粧品オイル、水、アルコール及びこれらの組合せからなる群より選択される化粧品基礎媒体、並びに上述のアルコール/ポリアルキル[メタ]アクリレート組成物を含む又はこの組成物から本質的になる約0.1重量%〜約20重量%の化合物を含有するパーソナルケア製品が開示される。さらなる他の1つの典型的な実施態様によれば、次の工程を含む、このような組成物の製造方法も開示される:
(a)次の反応機構によって、アルコールと、繰返し単位Aを有するポリアルキル[メタ]アクリレートとを触媒の存在下で、随意に溶媒中で反応させて、置換アルコールと、繰返し単位Bを有する置換ポリアルキル[メタ]アクリレートとを生成する工程であって、上記置換ポリアルキル[メタ]アクリレートは、繰返し単位A及びBのランダムコポリマーである工程:
【化2】

(式中、Zは水素又はメチル基;Rは1〜8の炭素原子を有する直鎖アルキル基;R’は10〜50の炭素原子(例えば、10〜30の炭素原子)を有する直鎖アルキル基)、及び
(b)その反応生成物から、上記置換アルコールROH及びあらゆる溶媒を除去して、上記アルコールR’OH及び上記置換ポリアルキル[メタ]アクリレートから本質的になる組成物を生成する工程であって、上記生成した組成物は、約60〜約99.5mol%の繰返し単位が、繰返し単位Bであり、約0.5〜約40mol%の繰返し単位が、繰返し単位Aであるポリアルキル[メタ]アクリレートを含有し、上記アルコールR’OHは、繰返し単位A及びBの総数に対して約0.5〜約40mol%の範囲で存在しており、かつその構成が、約10,000〜約25,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、工程。
【0009】
本発明の典型的な実施態様による組成物及び方法は、化粧品用途及び他のパーソナルケア用途に関連して有用であり、かつそのような用途における、化学的活性種のカプセル化、沈着及び供給のためのビヒクル、並びに増粘剤として用いることが出来る。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、例を用いて発明の原理を示す典型的な実施態様についての次の詳細な説明から、明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで開示するものは、長鎖アルコールの存在下でのポリアルキル[メタ]アクリレートのエステル交換反応によって得ることができるポリマー組成物である。下記式(1)で示すように、そのアルコールは、触媒の存在下でポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位Aと反応する:
【化3】

(式中、Zは、その特定の繰返し単位がアクリレートかメタクリルレートかのいずれかに依存して、水素又はメチル基である)。
【0012】
ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位A中のエステルへのペンダント基であるアルキル基Rは、長鎖アルコールR’OHのアルキル基R’と置換する。これは、繰返し単位Bを有する置換ポリアルキル[メタ]アクリレートの生成をもたらし、一方でその開始のポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位Aのアルキル基Rは、置換アルコールROHを生成する。
【0013】
アルキル基Rは、1〜8の炭素原子を有する直鎖短鎖基である。より典型的には、その短鎖アルキル基Rは、1〜4の炭素原子数を有する。
【0014】
反応させる開始のポリアルキル[メタ]アクリレートポリマーは、そのポリマーの唯一の繰返し単位として、繰返し単位Aを有することができる。それゆえ、このポリマーは、メチル[メタ]アクリレート、エチル[メタ]アクリレート、プロピル[メタ]アクリレート、ブチル[メタ]アクリレート、ペンチル[メタ]アクリレート、ヘキシル[メタ]アクリレート、ヘプチル[メタ]アクリレート若しくはオクチル[メタ]アクリレートの繰返し単位のいずれか1つのホモポリマーとなることができ、又はこれらの[メタ]アクリレート繰返し単位の2つ以上のコポリマーとなることができる。
【0015】
しかし、反応させる開始のポリアルキル[メタ]アクリレートポリマーは、繰返し単位Aと共に、1種以上の他の繰返し単位、例えば非アクリル系モノマーにより形成される繰返し単位を有する、アクリレート又はメタクリレートのブロックコポリマー又はランダムコポリマーとなることもできると認識されるであろう。随意の他の種類の繰返し単位としては、エステル交換反応中に反応しない官能基、及び/又はクロスポリマーをもたらしうるエステル交換反応中に反応する官能基を挙げることができる。繰返し単位Aを有する開始のポリアルキル[メタ]アクリレートポリマーに含まれることがある、繰返し単位の他の種類の例は、N,N−ジアルキルアミノ[メタ]アクリルアミド、N−アルキル[メタ]アクリルアミド、N,N−ジアルキル[メタ]アクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−(3−メトキシプロピル)アクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−トリメチルブチルアクリルアミド、N−2−エチルヘキシルアクリルアミド、N−イソオクチルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−2−エチルヘキシルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−(3−メトキシプロピル)メタクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−メタクリルオキシ−N−エチルモルホリン、[メタ]アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸メチル、マレイン酸ブチル、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、フマル酸、メサコン酸、グルタコン酸、マレイン酸無水物及びイタコン酸無水物、ヒドロキシエチル[メタ]アクリルアミド、ヒドロキシプロピル[メタ]アクリルアミド、ヒドロキシブチル[メタ]アクリルアミド、ヒドロキシヘキシル[メタ]アクリルアミド、(酢酸ビニルからの)ビニルアルコール、ビニルピロリジノン、N−ビニルホルムアミド、ビニルエステル、アルキルビニルエーテル、ビニルアミド、スチレン、p−アルキルスチレン及びこれらの組合せが挙げられる。
【0016】
長鎖アルコールR’OHは、10〜15(例えば10〜13)の炭素原子数を持つアルキル基R’を有し、これは、エステル交換反応中にポリマーの短鎖アルキル基と置き換わる。1つの実施態様では、R’は、16〜22の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり;通常、R’は、ステアリル基(すなわち、1−オクタデシル基)又はベヘニル基(すなわち、1−ドコサニル基)である。R’は、全ての場合で同じアルキル基である必要はなく、式R’OHの複数の異なる長鎖アルコールが、反応混合物中に存在してもよいと認識されるであろう。例えば、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールのそれぞれが、反応混合物中に存在してもよく、そうして繰返し単位Aの短鎖アルキル基Rの一部がステアリル基と交換しながら、他の一部がベヘニル基と交換してもよい。
【0017】
開始の反応混合物における繰返し単位Aの、長鎖アルコールR’OHに対するモル比は、約0.6:1〜約1:0.6の範囲とすることができる。いくつかの実施態様では、このモル比は、約0.9:1〜約1:0.9の範囲とすることができ、さらに他の実施態様では、開始の反応混合物のこのモル比を、約1:1とすることができる。
【0018】
反応して繰返し単位Bを形成することができる長鎖アルコールR’OHに加えて、他のアルコール類を、アルキル基Rを置き換えるために、エステル交換反応中に含むことができ、繰返し単位A及びB、並びに他の繰返し単位のコポリマーが生成するという結果をもたらすと認識されるであろう。含むことができる他のアルコール類としては、モノアルコール、グリコール及びトリオールを挙げることができ、多価アルコールが含まれる場合にはクロスポリマーが形成されうる。例としては、ポリエーテル、アルキルポリエーテル、ポリ(アルコキシ化)アルコール、グリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、グリコールエーテル、ヒドロキシル末端オリゴマー、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル末端シロキサン、ヒドロキシル末端オルガノシロキサン、ヒドロキシル末端ポリエーテル、ヒドロキシル末端ラクトン、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ヒドロキシル末端ポリイソプレン及びこれらの組合せが挙げられる。
【0019】
この反応は、触媒の存在下で起こり、触媒は、エステル交換反応を導くのに適切な任意の触媒でよい。典型的な触媒としては、鉱酸、スルホン酸、フッ酸(例えば、トリフルオロ酢酸)及びこれらの混合物が挙げられる。スルホン酸の触媒は、式R”SOHで表すことができ、式中R”は、1〜約25の炭素原子数のヒドロカルビル基である。例えば、メタンスルホン酸である。他の典型的な触媒としては、固体酸が挙げられ、例えばNafion(商標)樹脂、Amberlyst(商標)樹脂、ゼオライト、分子篩及び酸性化粘土が挙げられる。イソプロピルチタナート及びブチルチタナートも有用である。さらに、他の触媒も用いることができ、例えば、アルカリ金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、特にカリウム又はナトリウムの酸化物、水酸化物、アルコキシドを用いることができ、さらに遷移金属、例えばスズ、亜鉛、ジルコニウム、チタン、アルミニウム及びマンガンの酸化物、アルキル化物、カルボン酸塩、ハロゲン化物又はアルコキシド、例えばブチルスズオキシド、Ti(OR” ’) 及びTi(R” ’)(式中、R” ’はアルキル基)を用いることができる。
【0020】
上述したように、式1のエステル交換反応中に、繰返し単位A中の短鎖アルキル基Rのいくつかは、アルコールの長鎖アルキル基R’と置き換わり、置き換えられた短鎖アルキル単位Rは、短鎖アルコールROHを形成する。
【0021】
反応中に生成される置換した(すなわち、短鎖の)アルコール化合物ROHの一部は、反応が進行している間に、反応混合物から除去することができる。これにより、交換反応を促進し、そしてアルキル基R’と置換する、ポリアルキル[メタ]アクリレート中の繰返し単位数を増加させることができる。反応中に除去されないあらゆるROHは、典型的には反応の終結時に除去されて、固体の反応生成物を生成する。これは、置換したポリアルキル[メタ]アクリレートと長鎖アルコールR’OHの固溶体である。
【0022】
この反応を、溶媒の存在下で行うこともでき、溶媒はあらゆる適切な有機溶媒とすることができる。式1に記載され、かつ示されるように、反応が進行するにしたがって、開始のポリアルキル[メタ]アクリレートの短鎖アルキル基Rが、長鎖アルコールR’OHの長鎖アルキル基R’によって置き換えられて、短鎖アルコール(ROH)が生成する。それゆえ、特に適切な有機溶媒としては、短鎖アルキルアルコール(ROH)と共沸混合物を形成する有機溶媒が挙げられる。Rが1〜4の炭素を有するアルキル基である場合に、トルエンは好ましい溶媒であり;キシレンも用いることができる。他の適切な溶媒としては、炭化水素、例えばデカン;エーテル、例えばジグリム;及びニトリル、例えばアセトニトリルが挙げられ、これらは全て例示目的である。
【0023】
1つの実施態様では、置換したアルコールROHを、あらゆる適切な手段によって、例えば減圧蒸留等によって、反応混合物又は反応生成物から除去することによって、取り除くことができる。反応は通常、還流下で加熱しながら行うため、置換したアルコール及び/又は溶媒を、その還流流から取り除き、その失ったアルコール/溶媒を新たな溶媒で置き換えることもできる。
【0024】
短鎖アルコールROHを、その反応中かその反応後かに組成物から除去するが、その反応は、過剰な長鎖アルコールが存在する場合であっても、全ての長鎖アルコール分子R’OHが消費されずに、通常では平衡に達する。結果として、多くの場合、開始のポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位Aの全ては、置換されないこととなる。
【0025】
それゆえ、反応により形成された繰返し単位Bを含む置換ポリアルキル[メタ]アクリレートは、通常は、ポリマー鎖に沿ってランダムに位置する繰返し単位A及びBのコポリマーとなるであろう。すなわち、その反応後に、ポリアルキル[メタ]アクリレートは、次の繰返し単位を有するであろう:
【化4】

(式中、Zは水素又はメチル基;nはポリマー鎖中のこれらの繰返し単位の総数に相当する整数;かつXは、独立してRかR’のいずれかである。)。
【0026】
この反応は、すでに存在しているポリマーに関する置換反応であるため、開始のポリアルキル[メタ]アクリレートと置換したポリアルキル[メタ]アクリレートとで、生成される又は破壊される鎖の数に、一般的に変化は生じないと認識されるであろう。それゆえ、比較的大きな分子量のアルキル置換基R’に起因して、置換ポリアルキル[メタ]アクリレートの分子量は、開始のポリアルキル[メタ]アクリレートの分子量よりも大きくなるであろうが、各ポリマー鎖は、反応前後で、おおよそn個の繰返し単位を有するであろう。
【0027】
反応混合物から短鎖アルコールROH及び溶媒を除去した後で、置換ポリアルキル[メタ]アクリレート及び長鎖アルコールR’OHを含む組成物の固体生成物を得る。置換ポリアルキル[メタ]アクリレート及び長鎖アルコールR’OHの生成した組成物は、約10,000〜約250,000g/molの範囲で重量平均分子量を有し、1つの実施態様では、その分子量は、約40,000〜約140,000g/molである。しかし、好ましい特定の分子量は、この組成物が用いられる最終的な特定の用途に依存する場合があると認識されるであろう。この分子量は、用いる反応物の比によって、また開始のポリアルキル[メタ]アクリレートの分子量の選択によって制御することができる。
【0028】
長鎖アルキル基を有する置換ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位(すなわち、繰返し単位B)は、繰返し単位総数n(すなわち、A+B)の約60〜約99.5mol%を構成するが、元の短鎖アルキル基を未だ有する置換ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位(すなわち、繰返し単位A)は、繰返し単位総数の約0.5〜約40mol%を構成する。すなわち、繰返し単位Aを有する開始ポリマー中のR基の約60〜約99.5mol%が、長鎖アルコール反応物R’OHのR’基と置換して、繰返し単位B及びROHを生成する。1つの実施態様では、長鎖アルキル側鎖(すなわち、繰返し単位B)を有する置換ポリアルキル[メタ]アクリレートは、そのポリマー中で繰返し単位総数の約80〜約99mol%となることができる。
【0029】
固体生成組成物中の長鎖アルコールR’OHの量は、ポリマー中の繰返し単位総数nに対して、約0.5〜約40mol%である。すなわち、R’OHモルの存在している数は、約0.05n〜約0.40nである。1つの実施態様では、長鎖アルコールは、約1〜約30mol%として存在し、また1つの他の実施態様では、約2〜約20mol%として存在する。これらの値は、その構成中に存在する繰返し単位の数nに対しての値である。
【0030】
以下に詳細に論じるように、こうして生成された置換ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物は、例えば化粧品又は他のパーソナルケア製品を製造するために、1つの成分として、例えば増粘剤として用いることができる。この置換ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物は、通常、約0.1〜約20重量%でそのような製品に存在し、化粧品オイル(すなわち、化粧品用途に適合するオイル)、水、化粧品溶媒(特定のアルコールを含む化粧品用途に適合する溶媒)及びこれらの組合せからなる群より選択される化粧品基礎媒体を有する化粧品又は他のパーソナルケア製品で用いることができる。適切な化粧品溶媒の例としては、1〜5の炭素原子を有する低級モノアルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール、2〜8の炭素原子を有するグリコール、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、1,3ブチレングリコール及びジプロピレングリコール、C3〜4のケトン並びにC2〜C4のアルデヒドの少なくとも1種が挙げられる。
【0031】
この置換ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物は、幅広いパーソナルケア製品における増粘剤として特に有用である。また、これはパーソナルケア用に用いられるある種の化学種のカプセル化及び沈着のために用いることができる。例えば、長鎖アルコールが、単純疱疹(cold−sore)の治療用に知られた材料であるベヘニルアルコールである1つの実施態様では、置換ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物を、パーソナルケア製品に加えて、増粘機能を与えることができ、また有効成分を供給することもできる。
【0032】
置換ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物を有利に用いることができるパーソナルケア製品としては、無水のオイル系製品(anhydrous oil−base products)、例えばある種の無水のヘアケア製品又はヘアケアトリートメント製品(例えば、ジェル)、頭皮トリートメント、日焼け止め、制汗剤デオドラント及びカラー化粧品(例えば、頬紅、リップスティック等);油中水型エマルション、例えばある種の肌用保湿剤、日焼け止め及び制汗剤デオドラント;水中油型エマルション、例えばある種の肌用保湿剤、日焼け止め及びムース/ヘアスタイリング剤;及びアルコール及び水系製品、例えばある種のマスカラ、シャンプー、カラーリングシャンプー、ヘアスプレー製品、ヘアスタイリング製品、洗顔剤、ボディ用洗剤、液体ハンドソープ及び他のハンドクレンザー、フレグランス及び体臭用製品が挙げられるが、これらは全て例示のみで提示している。
【0033】
置換ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物は、幅広い化粧品オイル、例えば特に、エステル(例えば、12〜15の炭素原子を有する安息香酸アルキル)、トリグリセリド(例えば、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド)、炭化水素(例えば、鉱油、ひまわり油)、天然オイル(例えば、ホホバオイル、ベニバナオイル)及びキャスターオイルで効果的となることができる。適切なオイルは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,736,125号の第3欄第37行目〜第4欄第4行目にも開示されている。シリコーンオイルも、化粧品オイルとして用いることができる。
【0034】
以下は、上述の置換ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物を含有する増粘したオイルを含む、無水の化粧品配合物の非限定的な例である:
A)パーソナルケア用途(例えば、ヘアジェル)に適切な増粘した無水のオイル:
オイル−約50〜約95wt%(シリコーンオイルに関して約10〜約95wt%)
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約1〜約20wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約30wt%
B)無水のスカルプセラム:
オイル−約50〜約95wt%(シリコーンオイルに関して約10〜約95wt%)
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約1〜約20wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約30wt%
C)無水の日焼け止めスティック又はジェル:
オイル−約50〜約95wt%(シリコーンオイルに関して約10〜約95wt%)
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約1〜約20wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約30wt%
D)無水の制汗デオドラントスティック又はジェル:
エモリエント−約50〜約95wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約1〜約20wt%
制汗デオドラント(APDO:Antiperspirant deodorant)有効成分−約0.1%〜約30wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約30wt%
E)カラー化粧品(例えば、頬紅、リップスティック)
オイル−約50〜約95wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約1〜約20wt%
顔料−約0.1%〜約30wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約10wt%
【0035】
無水の化粧品配合物中のポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物の一部を、通常の増粘剤、特に例えば、カルナバワックス、ミツロウ、キャンデリラワックス等のワックスと置き換えることができる。
【0036】
油中水型エマルションを、(1)上述した任意のオイル中のポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物の加熱した(すなわち、溶融した)溶液と、(2)そのオイル溶液に近い温度(通常、約10℃以内)の水系相とを共に混合し;そして、攪拌しながらその混合物を冷却することによって、通常は調製する。水系相の油相に対する比は、例えば、約0.5:1〜約9:1とすることができる。
【0037】
以下は、油中水型エマルションを含有する化粧品配合物の非限定的な例である:
A)肌用保湿剤
水−約50〜約90wt%
シリコーン−約1〜約10wt%
乳化剤−約0.5〜約5wt%
エモリエント−約5〜約20wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約3wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約3wt%
B)日焼け止め
水−約50〜約90wt%
シリコーン−約1〜約10wt%
乳化剤−約0.5〜約5wt%
エモリエント−約5〜約20wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約3wt%
日焼け止め有効成分−約1〜約25wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約3wt%
C)制汗デオドラント
水−約50〜約90wt%
シリコーン−約1〜約10wt%
乳化剤−約0.5〜約5wt%
エモリエント−約1〜約20wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約6wt%
APDO有効成分−約0.1〜約30wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約5wt%
【0038】
水中油型エマルションを、(1)油相中のポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール組成物の加熱した(すなわち、溶融した)溶液、及び(2)そのエモリエント溶液に近い温度(通常、約10℃以内)である水系相を共に混合し;そして、攪拌しながらその混合物を冷却することによって、通常は調製する。油相の水系相に対する比は、例えば、約0.1:1〜約1:1とすることができる。以下は、水中油型エマルションを含有する化粧品配合物の非限定的な例である:
A)肌用保湿剤
水−約50〜約90wt%
乳化剤−約0.5〜約5wt%
エモリエント−約1〜約20wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約3wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約3wt%
B)日焼け止め
水−約50〜約90wt%
乳化剤−約0.5〜約5wt%
エモリエント−約1〜約20wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約3wt%
日焼け止め有効成分−約1〜約25wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約3wt%
C)ムース又は他のヘアスタイリング製品
水−約50〜約90wt%
乳化剤−約0.5〜約5wt%
界面活性剤−約0.1〜約2wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約1wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約2wt%
溶媒−約1〜約25wt%
噴射剤−約6〜約10wt%
【0039】
簡単に上述したように、ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコールは、例えば増粘剤として、また膜形成、有効成分の制御された供給又は沈着、及びフレグランス保持又は揮発物保持の利益を与えるために、アルコール又は水系でも用いることができる。以下は、アルコール又は水系を含む化粧品配合物の非限定的な例である:
A)カラーリングシャンプー
水−約50〜約90wt%
界面活性剤−約2〜約20wt%
起泡増進剤−約20wt%以下
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約5wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約10wt%
B)ヘアスプレー(エアロゾル及び非エアロゾル)
水−約50〜約90wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約5wt%
エタノール又は他の溶媒−約33〜約90wt%
エアロゾル用の随意の噴射剤−約0〜約50wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約2wt%
C)シャンプー
水−約50〜約90wt%
界面活性剤−約20wt%以下
起泡増進剤−約2〜約20wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.1〜約2wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約10wt%
D)ヘアスタイリング製品
水−約10〜約90wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約5wt%
エタノール又は他の溶媒−約0〜約10wt%
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約10wt%
E)体用洗剤製品
水−約50〜約90wt%
界面活性剤−約2〜約20wt%
ポリアルキル[メタ]アクリレート/長鎖アルコール−約0.5〜約5wt%
起泡増進剤−約20wt%以下
他の添加剤又は有効成分−約0.1%〜約10wt%
【0040】
エモリエントが用いられる製品においては、化粧品組成物中での用途に適切なあらゆるエモリエントを用いることができる。適切なエモリエントの例としては、エステル(例えば、C12〜15の安息香酸アルキル)、トリグリセリド(例えば、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド)、炭化水素(例えば、鉱油)、天然オイル(例えば、ホホバオイル、ベニバナオイル)、トリメリト酸トリトリデシル、ひまわり油、キャスターオイル、特にパーソナルケア組成物の感覚的特性又は審美的特性に改良を与えるのに用いられる化合物が挙げられる。
【0041】
乳化剤が用いられる製品においては、1〜20の範囲の親水親油バランス(HLB)を有するあらゆる適切な化粧品用乳化剤を用いることができる。適切な乳化剤の例としては、ステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸PEG−150、ジラウリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG−20、セテアリルアルコール及びセテアレス−20、並びにジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30が挙げられる。
【0042】
望む場合には、化粧品組成物の1以上の特性を、その組成物に可塑化化合物を添加することによって制御することができる。上記のそのような添加化合物の例としては、多くの化合物の中でも、シリコーン系可塑剤、天然又は合成の化合物(例えば、多糖、天然ゴム又は合成ゴム、安定化剤、油相又は水相に溶解性のアニオン性及び非イオン性の会合性増粘剤又はレオロジー変性剤)、他の膜形成ポリマー、例えば、ポリウレタン、ピロリジン(例えば、ポリビニルピロリジン)からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。この添加剤は、多くの添加剤の中でも、保存料、安定化剤(例えば、キサンタンゴム)、保湿剤(例えば、MPジオール(MP Diol)、ソルビトール及びヘキシレングリコール)、抗酸化剤(例えば、ビタミン)、レオロジー変性剤、フレグランス及び顔料からなる群より選択される化合物を含むことができる。
【0043】
界面活性剤及び/又は起泡増進剤を用いることもできる。適切なあらゆる界面活性剤及び/又は起泡増進剤を用いることができるが、例としては、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム及びコカミドプロピルベタインからなる群より選択される群が挙げられる。
【0044】
噴射剤又は溶媒を用いる製品においては、それらには、特にイソブテン、ブタン、ジメチルエーテル、及びエタノールを挙げることができる。
【0045】
いくつかのパーソナルケア製品においては、肌又は髪に作用し又はこれらを保護する有効成分の化合物を含むことができる。そのような有効成分の化合物の例は、全て例示のみであるが、日焼け止め化合物(例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、オクチノキサート、オクトクリレン、サリチル酸エチルヘキシル、オキシベンゾン);スキンホワイトナー(例えば、サリチル酸);脂肪沈着防止化合物(anti−cellulite compound);アンチエイジング化合物(例えば、アルギニン/リジン等のポリペプチド、アルギニンPCA、アルペルギルス/アスピドスペルマケブラコ酵素(Aspergillus/Aspidosperma Quebracho Ferment)、カラスムギ穀粒タンパク(Avena Sativa (Oat) Kernel Protein)及びアボカドステロール、タンパク質、ペプチド、銅ペプチド、発酵バイオポリマー、ベータグルカン、植物有効成分、ビフィズス菌発酵エキス(Bifida Ferment Lysate)、テリハボク種子油(Calophylum Inorhylum seed oil)、カメリアシネンシス抽出物、セラミド、クロレラブルガリス抽出物、カワラタケ抽出物、セイヨウハシバミ(ヘーゼル)種子抽出物、ヒアルロン酸、加水分解エラスチン、加水分解タンパク質、加水分解大豆粉、加水分解ペプチド、ビタミンA,E,C、K及びB5、並びにナイアシンアミド);APDO化合物(例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレックス);ビタミン(例えば、天然トコフェロール、合成トコフェロール、合成トコフェロールアセテート、レチノール、レチニルパルミテート、酢酸、プロビタミンB−5、アスコルビン酸、リン酸アスコルビルナトリウム、アスコルビルグルコシド、リン酸アスコルビルマグネシウム);多糖(例えば、ヒアルロン酸、B−1,3−グルカン、キトサン);植物成分(例えば、アロエ、緑茶抽出物、ブドウ種子抽出物、イソフラボン類、カモミール/ビサボロール、フェンネル、イチョウ、朝鮮人参、グアバ);アルファヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、グリコール酸、乳酸);サトウキビ抽出物;防虫剤;並びに補酵素及び酵素(ユビキノン、コエンザイムQ10)が挙げられる。
【実施例】
【0046】
本発明を、以下の実施例によって、さらに述べる。これらは、例示目的で提示するものであり、本発明を限定するものではない。
【0047】
例1
約40,000g/molの重量平均分子量を有する過剰のポリ(メチルアクリレート)ホモポリマーを、ベヘニルアルコールと、1:0.9のモル比(メチルアクリレート繰返し単位:ベヘニルアルコール)で反応させた。4.3gのポリ(メチルアクリレート)の10.75mLのトルエン中の溶液を、まず調製して、それに50mLのトルエンをさらに添加した。その希釈した溶液を、14.65gのベヘニルアルコール(44.86mmol)と、触媒として30mgのナトリウムメトキシドと共に、250mLの三ツ口丸底フラスコに入れた。
【0048】
そのフラスコに、コンデンサー及びディーンスタークトラップ、ガラス栓及び隔壁を取り付け、窒素雰囲気を、そのフラスコに導入した。そして、フラスコ中の反応混合物を、加熱して還流させた。30分の間隔で、10mLの溶媒(トルエン及びメタノール副生物を含む)を除去し、等しい体積の新たなトルエンに置き換えた。1時間、4時間及び4.5時間のそれぞれで、さらに30mgの量のナトリウムメトキシドを添加した。7時間の還流後に、反応物を室温まで冷却した。残留している溶媒を、減圧蒸留によって除去して、ベヘニルアルコールと、メチルアクリレート及びベヘニルアクリレートの繰返し単位を有するポリアルキル[メタ]アクリレートコポリマーとの固体生成物を得た。
【0049】
例2
2番目の例を、同じポリ(メチルアクリレート)及びベヘニルアルコール試薬を用いて調製し、ここではそのポリマーのメチルアクリレート繰返し単位を、化学量論的に当量(すなわち、1:1のモル比)のベヘニルアルコールと反応させた。ここでも、4.3gのポリ(メチルアクリレート)の10.75mLのトルエン中の溶液を、50mLのトルエンで希釈した。この所望の化学量論を達成するために、この希釈した溶液を、触媒として30mgのナトリウムメトキシドを用いて、16.3gのベヘニルアルコール(49.84mmol)で処理した。その他は、この実験を、例1と同一の方法で行い、そうしてここでも、7時間の還流の後に混合物を室温まで冷却し、残留溶媒を減圧蒸留により除去し、そしてベヘニルアルコール、並びにメチルアクリレート及びベヘニルアクリレートの繰返し単位を有するポリアルキル[メタ]アクリレートコポリマーの固体生成物を得た。
【0050】
例3
3番目の例では、同じ試薬を用いて、ポリ(メチルアクリレート)を、余剰のベヘニルアルコールと、1:1.1のモル比で反応させた。この実験では、17.91gのベヘニルアルコール(54.85mmol)を用いたが、その他全てを、例1及び2に記載した方法に従って、実行した。
【0051】
これら3つのサンプルの組成物を、Brucker 300MHz機器で記録されるH NMR(CDCl)で確認し、この機器は、これら組成物中に存在する3つの構成成分のモル比を測定するためにも用いた。ポリマーの置換した繰返し単位中のベヘニルエステルの−COOCH−中のCH、ポリマーの置換してない繰返し単位中のメチルエステルの−COOCH中のCH、及びベヘニルアルコール中のOCHCH−中のCHに関するシグナルの積分値から、モル比を計算した。
【0052】
3つの実験のそれぞれから得たサンプルと共に、Air Products and Chemicals,Inc.から入手できるIntelimer IPA 13−6を、さらに解析して、平均分子量、粘度及び結晶融解温度を測定した。屈折率検出器を有するWaters Alliance 2795機器を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって、この実験の組成物及び比較の組成物の平均分子量を、重量平均として測定した。この実験の組成物及び比較の組成物の粘度を、95℃で、TA Instruments RDA−IIIレオメーターを用いて測定した。結晶融解温度を、10〜15mgのこの実験の組成物及び比較の組成物のサンプルを用いて、10℃の昇温速度(ramp rate)でTA Universal Analysis instrumentを用いて、示差走査熱量測定(DSC)によって計算した。その解析の結果を、以下の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
例1〜3で調製した置換ポリアルキル[メタ]アクリレートコポリマー/ベヘニルアルコール組成物のサンプルを、続いて鉱油に溶解し、そして加熱して、オイル増粘剤としての用途に関するそれらの有効性を評価した。5gの各サンプルを、95gのUSPグレードの鉱油に添加して、サンプルの結晶融点より約15〜20℃高い、85℃に加熱した。冷却後、IPA13−6を鉱油中に同じく5:95の重量比で有する配合物と、(初期の粘度の測定に基づく)増粘効果を比較した。このIPA13−6は、フリーラジカルプロセスによって、そのビニルモノマーから調製した標準的なポリ(ベヘニルアクリレート)ホモポリマーである。オイル中の4つ全ての組成物の粘度を、ブルックフィールド粘度計によって、10rpmで、表2に特定したようにD又はFのスピンドルを用いて解析した。また、この配合物の感覚を、そのままの鉱油と比較して評価したところ、全て柔らかい感触(silky feel)及び滑らかさ(slip)を持っていた。
【0055】
【表2】

【0056】
例4
4番目の実験では、ポリ(メチルアクリレート)を、ステアリルアルコールと、1:1のモル比で反応させる。4.3gのポリ(メチルアクリレート)の10.75mLのトルエン中の溶液を、別の50mLのトルエンで希釈する。所望の化学量論を達成するために、この希釈した溶液を、触媒として30mgのナトリウムメトキシドを用いて、13.48gのステアリルアルコール(49.84mmol)で処理する。その他は、この実験を、例1と同一の方法で行い、そうしてここでも7時間の還流の後に混合物を室温まで冷却し、残留溶媒を減圧蒸留により除去する。ステアリルアルコール、並びにメチルアクリレート及びステアリルアクリレートの繰返し単位を有するポリアルキル[メタ]アクリレートコポリマーの固体生成物を得る。
【0057】
例5
水中油型エマルションを、表3に示す成分及び重量パーセントを用いて調製する。油相の成分を、第一の容器で共に混合し、そして75℃に加熱する。水系相の成分を、別にして他の容器で共に混合し、そして75℃に加熱する。そして、油相を水系相に添加して、そのエマルションを、3分間均質化する。水に希釈した少量のトリエタノールアミンを添加して、pHを5.5に調整した。
【0058】
【表3】

【0059】
例6
油中水型エマルションを、表4に示す成分及び重量パーセントを用いて、例5に関して記載した方法と同じ方法で調製した。例5と同様に、水に希釈した少量のトリエタノールアミンを添加して、pHを5.5に調整した。
【0060】
【表4】

【0061】
例7
シリコーン油中水型エマルションを、以下の表5に示す成分を用いて、トリエタノールアミンを用いないことを除いて、例6と同様に調製した。
【0062】
【表5】

【0063】
無水の制汗固体スティックを、以下の表6に示す成分を組み合わせることによって調製した。容器の内容物を攪拌しながら、記載した順番でこれらの成分を容器で混合した。この混合物を、約75℃〜80℃の間に加熱し、そして全ての成分が完全に分散し、そして均一になるまで継続して攪拌する。混合物が均一となったら、加熱は止めて、攪拌は継続する。混合物が70〜72℃に冷却したら、このバッチをモールドに注いで、スティックを形成する。
【0064】
【表6】

【0065】
本発明を、特定の態様に関して記載しているが、他の態様及び実施態様は、当業者には明らかであり、これらは特許請求の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成R’OHを有するアルコール、及び
次の繰返し単位を有するポリアルキル[メタ]アクリレート:
【化1】

(式中、Zは、水素又はメチル基;Xは、各繰返し単位で独立してR又はR’;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基;R’は、10〜30の炭素原子を有するアルキル基;かつnは、この組成物が約10,000〜約250,000g/molの範囲の重量平均分子量となる整数)
を含有する組成物であって、
XがR’である前記ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位が、前記繰返し単位総数nの約60〜約99.5mol%を構成し、XがRである前記ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位が、前記繰返し単位総数nの約0.5〜約40mol%を構成し、かつ
R’OHは、前記繰返し単位総数nに対して、約0.5〜約40mol%の範囲で存在している、組成物。
【請求項2】
Rが、1〜4の炭素原子を有する直鎖アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R’が、16〜22の炭素原子を有する直鎖アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
R’が、ステアリル基又はベヘニル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルコールが、前記繰返し単位総数nに対して約0.5〜約20mol%であり、XがR’である前記繰返し単位が、前記繰返し単位総数nの約80〜約99.5mol%であり、かつXがRである前記繰返し単位が、前記繰返し単位総数nの約0.5〜約20mol%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
Rが、1〜4の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、かつR’が、16〜22の炭素原子を有する直鎖アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリアルキル[メタ]アクリレートが、次の前記繰返し単位のみを有する、請求項1に記載の組成物:
【化2】

【請求項8】
組成R’OHを有するアルコール、及び
次の繰返し単位のみを有するポリアルキル[メタ]アクリレート:
【化3】

(式中、Zは、水素又はメチル基;Xは、各繰返し単位で独立してR又はR’;Rは、1〜4の炭素原子を有する直鎖アルキル基;R’は、18又は22の炭素原子を有する直鎖アルキル基;かつnは、この組成物が約40,000〜約250,000g/molの範囲の重量平均分子量となる整数)
から本質的になる組成物であって、
XがR’である前記ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位が、前記繰返し単位総数nの約60〜約99.5mol%を構成し、XがRである前記ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位が、前記繰返し単位総数nの約0.5〜約40mol%を構成し、かつ
R’OHは、前記繰返し単位総数nに対して、約0.5〜約40mol%の範囲で存在している、組成物。
【請求項9】
化粧品基礎媒体、並びに
組成R’OHを有するアルコール、及び次の繰返し単位を有するポリアルキル[メタ]アクリレートを含む、約0.1〜約20重量%の化合物:
【化4】

(式中、Zは、水素又はメチル基;Xは、各繰返し単位で独立してR又はR’;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基;R’は、10〜30の炭素原子を有するアルキル基;かつnは、この化合物が約10,000〜約250,000g/molの範囲の重量平均分子量となる整数)
を含有するパーソナルケア製品であって、
XがR’である前記ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位が、前記繰返し単位総数nの約60〜約99.5mol%を構成し、XがRである前記ポリアルキル[メタ]アクリレートの繰返し単位が、前記繰返し単位総数nの約0.5〜約40mol%を構成し、かつ
R’OHは、前記繰返し単位総数nに対して、約0.5〜約40mol%の範囲で存在している、
パーソナルケア製品。
【請求項10】
前記化粧品媒体が、化粧品オイルを含む、請求項9に記載のパーソナルケア製品。
【請求項11】
前記化粧品オイルが、オイル系エモリエントを含む、請求項10に記載のパーソナルケア製品。
【請求項12】
乳化剤及び水をさらに含有する、請求項10に記載のパーソナルケア製品。
【請求項13】
乳化剤及び水をさらに含有し、かつ油中水型エマルションである、請求項10に記載のパーソナルケア製品。
【請求項14】
乳化剤及び水をさらに含有し、かつ水中油型エマルションである、請求項10に記載のパーソナルケア製品。
【請求項15】
有効成分をさらに含有する、請求項10に記載のパーソナルケア製品。
【請求項16】
界面活性剤又は起泡増進剤をさらに含有する、請求項9に記載のパーソナルケア製品。
【請求項17】
増粘した無水オイル、無水のヘアケア製品、無水の日焼け止め、無水の制汗デオドラント及びカラー化粧品からなる群より選択される無水の製品である、請求項10に記載のパーソナルケア製品。
【請求項18】
肌保湿剤、日焼け止め、及び制汗デオドラントからなる群より選択される油中水型エマルションである、請求項10に記載のパーソナルケア製品。
【請求項19】
肌保湿剤、日焼け止め、及びヘアスタイリング製品からなる群より選択される水中油型エマルションである、請求項10に記載のパーソナルケア製品。
【請求項20】
カラーリングシャンプー、ヘアスプレー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、洗顔剤、ボディ用洗剤、フレグランス及び体臭用製品からなる群より選択される、請求項9に記載のパーソナルケア製品。
【請求項21】
以下の工程を含む、置換ポリアルキル[メタ]アクリレートを含有する組成物の製造方法:
(a)次の反応機構によって、アルコールと、繰返し単位Aを有するポリアルキル[メタ]アクリレートとを、触媒の存在下で随意に溶媒中で反応させて、置換アルコールと、繰返し単位Bを有する置換ポリアルキル[メタ]アクリレートとを生成する工程であって、前記置換ポリアルキル[メタ]アクリレートは、繰返し単位A及びBのランダムコポリマーである工程:
【化5】

(式中、Zは、水素又はメチル基;Rは、1〜8の炭素原子を有する直鎖アルキル基;かつR’は、10〜30の炭素原子を有する直鎖アルキル基);及び
(b)前記反応生成物から、前記置換アルコールROH及びあらゆる溶媒を除去して、前記アルコールR’OHと前記置換ポリアルキル[メタ]アクリレートから本質的になる組成物を生成する工程であって、前記生成する組成物は、前記繰返し単位の約60〜99.5mol%が繰返し単位Bであり、前記繰返し単位の約0.5〜約40mol%が繰返し単位Aであるポリアルキル[メタ]アクリレートを含み、前記アルコールR’OHが、繰返し単位A及びBの総数に対して約0.5〜約40mol%の範囲で存在し、かつ前記組成物が、約10,000〜約250,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、工程。

【公表番号】特表2013−514383(P2013−514383A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544805(P2012−544805)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060642
【国際公開番号】WO2011/084552
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】