説明

パーツフィーダー

【課題】従来のパーツフィーダーは、その「ツーリング機構部分」が高価格であり、製品に高精密・高精度が要求されるため、製造に多大な時間を要して極めて生産性が悪く、そのため、量産化、コストダウン、近時のチップの超小型化・多品種対応等に大きな課題があった。
【解決手段】パーツフィーダーにおいて、パーツの整列と送給を行なうツーリング機構部分を、合成樹脂製の上部品と駆動部分へ取付ける金属製の下部品として各別に設けると共に両部品を固着手段で固着一体化して設け、該ツーリング機構部分を固着手段で駆動部分に取付けてパーツフィーダーを構成するようにして課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーツ(主として、チップ=各種チップ型電子部品、例・チップコンデンサー、レジスター等、例・0402/0603/1005等の各型式チップ、以下、単にチップと記す。)を送給するパーツフィーダー、例えば、チップマウンター装置等によりプリント基板等にチップを1個毎に分離してマウント(実装)する工程、チップ分離搬送ローターやチップテープへチップを1列整列搬送給する工程等において、チップを高速かつ効率的に整列して送給するために有効なパーツフィーダーに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のパーツフィーダーとして、主としてボールフィーダーとストレートフィーダーが用いられており、
また、これらのパーツフィーダーは、通常、ツーリング(Tooling)即ちチップの整列(オリエンテーリング;Orientation)と送給 (フィーディング;Feeding)を行なうツーリング(Tooling)機構(Mechanism)部分と、振動、エアー等の駆動源によってチップを設定・目的方向へ駆動(搬送、供給)する駆動部分を一体的に構成して成り立っている。
【0003】
而して、従来のパーツフィーダーは極めて高価格である上に、製品に高精密・高精度が要求されるため、製造に多大な時間を要して極めて生産性が悪く、そのため、量産化、コストダウン、近時のチップの超小型化・多品種化の進行に対応できない状態であった。
【0004】
そこで、近時、その打開を図って、量産化とそれに伴うコストダウン、及びチップの超小型化・多品種化等の対策が種々講じられつつあるが、その場合に、常にネックとなり大きな課題となるのが、上記の「ツーリング(Tooling)機構(Mechanism)部分」であった。
このツーリング機構部分、具体的には、ツーリング機構即ちチップの送給溝(トラック・シュート)及びその周辺機構・関連機構等を備えた機構部分であるが、従来は該ツーリング機構部分を、主として、金属の「超」と表現するに相応しい高精密・高精度の加工によって幅0.数mmのチップ送給溝を中心として構成・形状が複雑な周辺機構・関連機構等を、数少ない専門熟練工が懸かりっきりで製作していた。
【0005】
例えば、現在、出願人が、図示のような、ストレートパーツフィーダーの、0603型チップ(長さ0.6mm、幅0.3mm)用の、長さ200mm内外の「ツーリング機構部分」を製造する場合、チップ送給溝は幅0.4mm±0.01mmの加工精度が要求される上に、その周辺・関連機構も構成・形状が複雑で寸法的に高精度が要求されるため、
「ツーリング機構部分」1本当りの製造に、数少ない専門熟練工が懸かりっきりで、加工時間に約8時間を費やし、また、仕上げまでに、ツールチェンジ(各種工作機械の刃物交換)を約30回行ない、多種多数の刃物を使用し、例えば高価 (1本¥8500位) なΦ0.3mmのエンドミルでも「ツーリング機構部分」5本に付1本位の割合で消耗する等、大変な作業時間、作業工数、経費等を要していた。
【0006】
そして、現在及び将来的には、上記パーツフィーダー即ち「ツーリング機構部分」は、チップマウント、チップテーピング等の需要増大・効率化等のため、例えば、同じ型式チップ(例・0603)用のものを、1ロッド当り数100台、数1000台の単位で供給することになるため、コストダウン問題ばかりでなく、現状では、量産化、多機種化等の需要に応じきれないという極めて困難な課題があった。
【0007】
更に、従来、パーツフィーダーを、例えば、使用中の型式(例・0306)と異なる型式(例・1005)のチップ用に「切替・変更」する場合に、各機構部材の取外し交換と精密調整等に熟練作業者による多大の時間・手数を要し極めて非効率なためコスト負担が大きく、よって、チップ型式(種類、形状、寸法等)の切替・変更に容易に対応し難い大きな課題が有った。
【特許文献1】特願2006−233066号
【特許文献2】特開平10−175724号
【特許文献3】特開平10−294598号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
出願人、発明者は、上記従来のコストダウン、量産化、多機種対応等の課題を解決するために、最初は、課題の中心である「ツーリング機構部分」の全体を量産、コストダウンが可能な合成樹脂成型品で製造することを企図したものである。
【0009】
ところが、近時進歩が著しい合成樹脂素材及び高精密加工技術によって、金型及びその成型品において、機構・寸法精度等を満足する「ツーリング機構部分」成型品の製造・量産は可能であるが、合成樹脂製であるため、製品後に、例えば、図示のように「ツーリング機構部分」が細長い形状の場合などに、全形的にねじれ・歪み等の変形・狂いの発生を避けられない課題が生じた。
【0010】
そこで、本発明は、更に「ツーリング機構部分」の開発を進めて、該「ツーリング機構部分」において、直接チップを整列・送給を行なうために複雑・微細なツーリング機構が必要とされる部分を合成樹脂製の上部品として独立して設けると共に、駆動部分への取付けを行なうために機械的強度と定規的精度が必要とされる金属製の下部品を独立して設けて、この上部品と下部品をボルトなどで一体的に固着して「ツーリング機構部分」を設けることを発明し、該発明に係る「ツーリング機構部分」を「駆動部分」にボルトなどで一体的に取付けてパーツフィーダーを設けるようにして、もって、パーツフィーダーの大幅な工数削減を実現してコストダウン、量産化、多機種対応等の課題を有効に解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、パーツ主としてチップの整列(オリエンテーリング;Orientation)と送給 (フィーディング;Feeding)を行なうツーリング(Tooling)機構(Mechanism)部分と、振動若しくはエアーによりパーツを設定・目的方向へ駆動(搬送、供給)する駆動部分を一体に構成してなるパーツフィーダーにおいて、
パーツの整列と送給を行なうツーリング機構部分を、具体的ツーリング機構即ちパーツの送給溝・トラック・シュート及びその周辺機構・関連機構を備えた合成樹脂製の上部品と、駆動部分へ取付ける金属製の下部品として各個別に構成した両部品を、固着手段で固着一体化して設け、
該ツーリング機構部分の下部品を駆動部分に取付けて、パーツフィーダーを構成するように備えたことを特徴とするパーツフィーダーによって課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
従来の「ツーリング機構部分」全て金属製であったため、その製造に大変な作業時間、作業工数、経費等を要していたが、本発明は、該「ツーリング機構部分」を、量産が可能な合成樹脂成型品の上部品と、駆動部分への取付けのために機械的強度と定規的精度を備えた金属製の下部品との、各別の部品として設け、両部品を一体的に固着(着脱交換自在)して「ツーリング機構部分」を設け、該「ツーリング機構部分」を「駆動部分」に一体的に取付(着脱交換自在)けてパーツフィーダーを設けるようにしたので、パーツフィーダーの大幅な工数削減を実現してコストダウン、量産化、多機種対応等の従来の課題を有効に解決し得る画期的な効果がある。
【0013】
上部品は、高精密・高精度な金型を製作するだけで、その型成形加工により量産が可能となるため、従来の100分の1以上のコストダウンが可能となり、よって、パーツフィーダーの大幅な工数削減を実現してコストダウン、量産化が可能となる。
【0014】
上部品を交換するだけで、各種型式(種類、形状、寸法等)のチップの分離供給用への「切替・変更」を、極めて安価、簡単かつ迅速に行うことが可能となり、消耗による交換に要する費用を著しく削減できる。
また、消耗した上部品はリサイクル可能な樹脂部品であるため、廃棄物を発生させない効果がある(環境負荷の削減)。
【0015】
下部品を金属の高度精密加工で設け、該下部品を水平その他の定規・基準として、合成樹脂製の上部品を該下部品に取付けるようにしたので、それによって、上部品の狂いを正規状態に矯正し、若しくは、狂いの発生を防止して上部品の正規状態を保持したツーリング機構部分を構成することが出来る多大の効果があり、また、該下部品によって、ツーリング機構部分を駆動部分に対して正確に取付けて、高精度なパーツフィーダーを構成し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
パーツの整列と送給を行なうツーリング機構部分2を、具体的ツーリング機構即ちパーツの送給溝・トラック・シュート4及びその周辺機構・関連機構5を備えた合成樹脂製の上部品Aと、駆動部分3へ取付ける金属製の下部品Bとして各個別に構成した両部品を、固着手段で固着一体化して設け、該ツーリング機構部分2の下部品Bを駆動部分3に取付けて構成した、パーツフィーダー1。
【実施例1】
【0017】
次に、本発明の実施例を説明すると(図1〜図7参照)、
パーツ主としてチップtの整列(オリエンテーリング;Orientation)と送給 (フィーディング;Feeding)を行なうツーリング(Tooling)機構(Mechanism)部分2と、振動若しくはエアーによりパーツを設定方向へ駆動・搬送、供給)する駆動部分3を一体に構成してなるパーツフィーダー1において、
パーツの整列と送給を行なうツーリング機構部分2を、具体的ツーリング機構即ちパーツの送給溝・トラック・シュート4及びその周辺機構・関連機構5を備えた合成樹脂製の上部品Aと、駆動部分3へ取付ける金属製の下部品Bとして各個別に構成した両部品A、Bを、固着手段で固着一体化して設け、
該ツーリング機構部分2の下部品Bを駆動部分3に取付けてパーツフィーダー1を構成したものである。
【0018】
上記において、ツーリング機構部分2の、上部品Aの主体部分(送給溝・トラック・シュート4及びその周辺機構5など)を合成樹脂の型成形加工で設け、また、下部品Bを金属加工で設け、該上部品Aと下部品Bを、ボルト6をボルト孔7に挿通して締結する等の適宜の固着手段で、固着一体化、及び、着脱・交換自在に備えたものである、
【0019】
そして、上部品Aと下部品Bを固着一体化して備えたツーリング機構部分2の、下部品Bを駆動部分3にボルト6を締結する等の適宜の固着手段で、固着一体化、及び、着脱・交換自在に取付けて、パーツフィーダー1を構成したである。
【0020】
なお、下部品Bを金属の高度精密加工で設け、該下部品Bを水平その他の定規・基準として、合成樹脂製の上部品Aを該下部品Bに取付けることによって、上部品Aの狂いを正規状態に矯正し、若しくは、狂いの発生を防止して上部品Aの正規状態を保持したツーリング機構部分2を構成すると共に、該下部品Bによって、ツーリング機構部分2を駆動部分3に対して正確に取付けて、パーツフィーダー1を構成するように備えたものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、チップその他のパーツをを対象とするパーツフィーダー、例えば、図示例のようなストレートパーツフィーダー、ボール(ホッパー) パーツフィーダー、その他のツーリング機構部分と駆動部分からなるパーツフィーダーに汎用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例ツーリング機構部分を駆動部分に取付けて構成したパーツフィーダーの斜視図。
【図2】実施例上部品と下部品の斜視図で、両部品を固着してツーリング機構部分を構成する説明図。
【図3】上部品と下部品を固着して構成したツーリング機構部分の斜視図。
【図4】ツーリング機構部分と駆動部分の斜視図で、両者を取付けてパーツフィーダーを構成する説明図。
【図5】図3のc−c線断面矢視図。
【図6】図3のd−d線断面矢視図。
【図7】図3のe−e線断面矢視図。
【符号の説明】
【0023】
A 上部品(ツーリング機構部分)(合成樹脂製)
B 下部品(ツーリング機構部分)(金属製)
t チップ
1 本発明を実施したパーツフィーダー
2 ツーリング機構部分
3 駆動部分(振動機構)
4 送給溝(トラック・シュート)
5 周辺機構
6 ボルト
7 ボルト孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーツ主としてチップの整列(オリエンテーリング;Orientation)と送給 (フィーディング;Feeding)を行なうツーリング(Tooling)機構(Mechanism)部分と、振動若しくはエアーによりパーツを設定方向へ駆動・搬送、供給)する駆動部分を一体に構成してなるパーツフィーダーにおいて、
パーツの整列と送給を行なうツーリング機構部分を、具体的ツーリング機構即ちパーツの送給溝・トラック・シュート及びその周辺機構・関連機構を備えた合成樹脂製の上部品と、駆動部分へ取付ける金属製の下部品として各個別に構成した両部品を、固着手段で固着一体化して設け、
該ツーリング機構部分の下部品を駆動部分に取付けて、パーツフィーダーを構成するように備えたことを特徴とする、
パーツフィーダー。
【請求項2】
ツーリング機構部分の、上部品の主体部分を合成樹脂の型成形加工で設け、下部品を金属加工で設け、該上部品と下部品を固着手段で、固着一体化、及び、着脱・交換自在に備えたものである、
請求項1のパーツフィーダー。
【請求項3】
上部品と下部品を固着一体化して備えたツーリング機構部分の、下部品を駆動部分に着脱・交換自在に取付けて、パーツフィーダーを構成するように備えたものである、
請求項1のパーツフィーダー。
【請求項4】
下部品を金属の高度精密加工で設け、該下部品を水平その他の定規・基準として、合成樹脂製の上部品を該下部品に取付けることによって、上部品の狂いを正規状態に矯正し、若しくは、狂いの発生を防止して上部品の正規状態を保持したツーリング機構部分を構成すると共に、該下部品によって、ツーリング機構部分を駆動部分に対して正確に取付けて、パーツフィーダーを構成するように備えたものである、
請求項1のパーツフィーダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−84034(P2009−84034A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259744(P2007−259744)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000227397)日東工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】