説明

パーティションサイド部の構造

【課題】パーティションパネルの平面部を車両前方側に設置でき、パーティションリーンフォースメントの接合剛性を確保したままヒンジレイアウトの自由度を増大させ、剛性向上を図る。
【解決手段】パーティションパネルと左右両側に接合されるパーティションサイドパネル14,15と、これらパネルの裏面側に接合されるパーティションリーンフォースメント16とを備えるパーティションサイド部の構造において、パーティションサイドパネル14,15は、車両前後方向で2分割され、分割線Sは、前後パーティションサイドパネル14,15の接合部の略水平面に位置し、パーティションリーンフォースメント16の上部は、後側パーティションサイドパネル15の下方へ折り曲げた前側部分に接合され、パーティションリーンフォースメント16の下部は、前側パーティションサイドパネル14の下方へ折り曲げた下側部分に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にノッチバックタイプの車両におけるパーティションサイド部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体後部には、車室と荷室(ラッゲージルーム、トランクルーム)との間を仕切るため、パーティションパネルが設けられている。このパーティションパネルは、車体後部の中間高さに配置されており、後部の車体剛性、特に捩じり剛性に寄与する部品としての機能を有している。すなわち、パーティションパネルの剛性向上により、車両の操縦安定性の向上や車室内の騒音の低減を実現することが可能となる。このため、パーティションパネル自体の剛性を向上させるとともに、その左右両側で結合する車体側部のクォータパネルなどへの接合剛性を向上させることが要望されている。
また、パーティションパネルの左右両側端と側部パネルとの接合剛性を確保することは、搭乗員の体を保持するシートベルトの荷重がシートベルトガイド取付用の取付ボルトを車両前方斜め下方へ引く時に、側部パネルの変形をパーティションパネルが抑える効果を有していることから重要であり、この接合剛性確保によって車体の局所的な変形を緩和し、当該荷重を周辺パネルに分散することができる。
【0003】
そのため、従来の車体構造の中には、特許文献1のように、パーティションパネルの左右両側にこれとは別体のパーティションサイドパネルを接合させ、重量増加を抑えながらパーティションパネルの左右両側の剛性向上を実現しているものがある。そして、さらに剛性向上を図るために、パーティションサイドパネルの裏面側(車両後方)にパーティションリーンフォースメントを設置し、その両端部に車両の幅方向及び上下方向で閉断面を形成する構造が取られている。
また、特許文献2は、パーティションサイドパネルを車両前方の立壁部と車両後方の水平部の2分割とし、当該立壁部とパーティションパネルとの間に補強部材を設置している。これにより、パーティションパネルの左右両側の剛性を向上させるとともに、パーティションパネルの前側部分に設けた閉断面と立壁部との接合剛性も向上させている。
さらに、特許文献3は、パーティションサイドパネルの車両前方に断面形状が「くの字」のパネルを設置して閉断面を形成することにより、剛性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−101975号公報
【特許文献2】特開2006−256351号公報
【特許文献3】特開平8−276865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の車体構造では、閉断面を形成するパネルが強固に結合されていないと、当該閉断面の剛性向上が得られない。このため、上述した従来の車体構造において閉断面を形成するパネルは、間隔を空けずに行うスポット溶接などによって接合する必要がある。
ところが、車両後方にトランクルームを有するノッチバックタイプの車両では、トランクルームのドアの開閉はヒンジを用いて回動操作するタイプが一般的であり、そのトランクヒンジブラケットは、パーティションパネルの左右両側(パーティションサイドパネルが設けられている場合には当該パーティションサイドパネル)に取付けられている。このようなヒンジのアームのレイアウトは、トランクドアの開閉操作の回動軌跡に影響し、レイアウトはトランクヒンジブラケットの取付位置とトランクドアの相対位置が適正であれば、簡単に設定できるが、適正な位置が取れないと、トランクドアの回動軌跡に無理が生じ、対策のために複雑なリンク機構を取る必要が生じてしまう。このため、トランクヒンジブラケットの取付位置とトランクドアの相対位置は、ある程度距離を取ることが必要であり、ヒンジ取付位置に設計的な自由度を確保することが重要となる。一方、トランクヒンジブラケットには、トランクドアの開閉操作時の荷重やトランクドアの開放方向へのサポート(バネ)荷重が掛かるので、その取付剛性を確保することが求められている。
【0006】
例えば、図7に示すような従来のパーティションリーンフォースメントによる閉断面の構造では、パーティションサイドパネル51とパーティションリーンフォース52との接合点を密に設けているので、これら接合点を避けた位置にトランクヒンジブラケット53を設定しなければならなかった。この場合、パーティションリーンフォース52の接合フランジ52aよりも車両後方にトランクヒンジブラケット53を設置する必要があるため、トランクヒンジブラケット53の取付位置とトランクドア(図示せず)との距離aは短くなる傾向にあり、十分な取付剛性を得ることができないおそれがあった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の構造と比べて、パーティションパネルの平面部を車両前方側に設置でき、パーティションリーンフォースメントの接合剛性を確保したままヒンジレイアウトの自由度を増大させ、余計な重量増加を避けながら閉断面周辺の剛性向上を図り、板厚の大きな車両前方側のパーティションサイドパネルがクォータパネルと結合することにより、車体幅方向の部材と車体側面部の部材とを強固に接合し、車体全体の剛性を向上させることが可能なパーティションサイド部の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車室と荷室との間を仕切るために設けられるパーティションパネルと、該パーティションパネルの左右両側に接合されるパーティションサイドパネルと、これらパーティションパネル及びパーティションサイドパネルの裏面側に接合されるパーティションリーンフォースメントとを備えているパーティションサイド部の構造において、前記パーティションサイドパネルは、車両前後方向で2つに分割され、この分割線は、前後パーティションサイドパネルの接合部の略水平面に位置しながら、車両幅方向に沿って延在し、前記パーティションリーンフォースメントの上部は、前記後側パーティションサイドパネルの下方へ向かって折り曲げた前側部分に接合され、前記パーティションリーンフォースメントの下部は、前記前側パーティションサイドパネルの下方へ向かって折り曲げた下側部分に接合されている。
【0009】
また、本発明において、前記パーティションパネルと前記前側パーティションサイドパネルとは、車両幅方向の両側部の隣接する部分で互いに接合され、前記パーティションパネルと前記後側パーティションサイドパネルとは、車両幅方向の両側部の隣接する部分で互いに接合されているとともに、前記パーティションパネルと前記パーティションリーンフォースメントとは、車両幅方向の両側部で互いに接合されている。
【0010】
さらに、本発明において、前記前側パーティションサイドパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの前記分割線を跨いで、ヒンジブラケットの配置用の穴が設けられている。
【0011】
そして、本発明において、前記前側パーティションサイドパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの接合部の重なり部分には、前記ヒンジブラケットの取付部が設けられている。
【0012】
また、本発明において、前記パーティションパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの接合部には、前記ヒンジブラケットの取付部が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
上述の如く、本発明に係るパーティションサイド部の構造は、車室と荷室との間を仕切るために設けられるパーティションパネルと、該パーティションパネルの左右両側に接合されるパーティションサイドパネルと、これらパーティションパネル及びパーティションサイドパネルの裏面側に接合されるパーティションリーンフォースメントとを備えているものであって、前記パーティションサイドパネルは、車両前後方向で2つに分割され、この分割線は、前後パーティションサイドパネルの接合部の略水平面に位置しながら、車両幅方向に沿って延在し、前記パーティションリーンフォースメントの上部は、前記後側パーティションサイドパネルの下方へ向かって折り曲げた前側部分に接合され、前記パーティションリーンフォースメントの下部は、前記前側パーティションサイドパネルの下方へ向かって折り曲げた下側部分に接合されているので、パーティションリーンフォースメントの接合部が、パーティションサイドパネルに設置されるヒンジブラケットと干渉することはなくなり、当該ヒンジブラケットをパーティションサイドパネルの水平面部の比較的車両前方側に配置することができ、パーティションリーンフォースメントの接合剛性を確保したままヒンジレイアウトの自由度を増大させることができる。
【0014】
ここで、本発明の構造では、前側パーティションサイドパネルと後側パーティションサイドパネルとの接合部において、ヒンジブラケットを設置する部分は接合されていないが、前側パーティションサイドパネル及び後側パーティションサイドパネルの各々は、パーティションリーンフォースメントと接合されていることから、車体全体の接合剛性は確保されている。しかも、本発明の構造では、前側パーティションサイドパネルの板厚のみを大きくすれば、閉断面周辺の剛性向上を図ることが可能となり、余計な重量増大を回避できるとともに、板厚の大きな前側パーティションサイドパネルが車体側部のクォータパネルと接合することにより、車両幅方向の部材と車体側部の部材との接合を強固にして、車体剛性を向上させることができる。なお、ヒンジブラケットは、トランクドアヒンジ等を介してトランクドアを回動自在に支持する部材である。
【0015】
また、本発明において、前記パーティションパネルと前記前側パーティションサイドパネルとは、車両幅方向の両側部の隣接する部分で互いに接合され、前記パーティションパネルと前記後側パーティションサイドパネルとは、車両幅方向の両側部の隣接する部分で互いに接合されているとともに、前記パーティションパネルと前記パーティションリーンフォースメントとは、車両幅方向の両側部で互いに接合されているので、パーティションパネル、前側パーティションサイドパネル、後側パーティションサイドパネル及びパーティションリーンフォースメントの4部品が各々他の3部品と接合されることになり、ヒンジブラケットの設計自由度を確保したままで、接合剛性をより一層向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記前側パーティションサイドパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの前記分割線を跨いで、ヒンジブラケットの配置用の穴が設けられているので、ヒンジブラケットをより車両前方に設置することが可能となり、ヒンジの設計自由度を確保できる。これは、上述したように、閉断面の構成での接合剛性は、パーティションリーンフォースメントと前側パーティションサイドパネルもしくは後側パーティションサイドパネルとの接合で確保されており、前側パーティションサイドパネルと後側パーティションサイドパネルとの接合剛性を低くしても問題を生じることなく、上記配置を実施することができる。
【0017】
そして、本発明において、前記前側パーティションサイドパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの接合部の重なり部分には、前記ヒンジブラケットの取付部が設けられているので、2枚重ねの接合部の穴を用いてヒンジブラケットのフランジがボルト締結(もしくは溶接)により、3枚の部材をボルト締結(もしくは溶接)することが可能となる。このため、前側パーティションサイドパネルと後側パーティションサイドパネルとの接合強度が増大し、閉断面を囲む部材の接合剛性を向上させることができるとともに、ボルトなどの座面の剛性やヒンジブラケットの取付剛性を確保することができる。
【0018】
また、本発明において、前記パーティションパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの接合部には、前記ヒンジブラケットの取付部が設けられているので、ヒンジブラケットの車両前方側で車両幅方向内側の取付剛性の確保に連動して、ヒンジブラケットの車両後方側で車両幅方向内側の取付剛性を確保することができる。これにより、トランクドアの開閉操作時の荷重をヒンジブラケットの車両前後方向の取付剛性で受けることが可能となり、当該荷重を効率良く吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るパーティションサイド部の構造が適用される車両の室内側から見た後方側部の車体の一部を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2において、トランクヒンジブラケットを取付ける前の状態を示す斜視図である。
【図4】図3において、パーティションリーンフォースメントを取付けた状態のパーティションパネル及びパーティションサイドパネルの裏側を車両後方から見た斜視図である。
【図5】図2におけるA−A線断面図である。
【図6】図3において、トランクヒンジブラケットの取付部を拡大して示す斜視図である。
【図7】従来の構造のパーティションサイド部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は本発明の実施形態に係るパーティションサイド部の構造を示すものである。
【0021】
本発明の実施形態に係る車両は、図1〜図6に示すように、後部座席搭乗者を保持するシートベルト装置1を装備した4ドア・セダンタイプの自動車であり、このタイプの車両の側部車体構造は、車両の前後方向及び上下方向に沿って延在することにより車両側部の車体を構成するクォータインナパネル2、クォータアウタパネル3、リヤピラーパネル4及びホイールハウスインナパネル5を備えている。
シートベルト装置1は、リヤシートベルト6を巻き取るリトラクタ7と、このリトラクタ7から上方へ繰り出されるリヤシートベルト6の中間位置を案内支持するシートベルトガイド8を備えており、これらリトラクタ7及びシートベルトガイド8は、リヤシートベルト6によって乗員の体を保持する関係上、車室内の側部車体に設けられている。
【0022】
クォータインナパネル2の車両後方側位置の外側には、車両の幅方向及び上下方向に展開して屈曲するクォータインナリーンフォースメント9が接合されて配置されている。このクォータインナリーンフォースメント9が位置するクォータインナパネル2には、シートベルトガイド8を取付ける取付ボルト10のボルト取付部(懸架部)11が設けられている。
【0023】
本実施形態のパーティションサイド部12は、クォータインナリーンフォースメント9の下方に配置されており、図2〜図6に示すように、車体後部の車室Rとトランクルーム(荷室)Tとの間の開口を仕切るために設けられるパーティションパネル13と、該パーティションパネル13の左右両側(車両幅方向両側)に接合される前後パーティションサイドパネル14,15と、これらパーティションパネル13及び前後パーティションサイドパネル14,15の裏面側(車両後方側)に接合されるパーティションリーンフォースメント16と、を備えている。パーティションパネル13は、車幅方向に沿って延在し、車両前後方向の中間部分が上方へ突出する「くの字状」に折り曲げられて形成されている。
【0024】
前後パーティションサイドパネル14,15は、図2〜図6に示すように、車両前後方向で2つに分割され、パーティションパネル13に沿った形状で車両前後方向に配置されており、これらサイドパネルの重合部は、互いに接合されている。このうち、前側パーティションサイドパネル14は、車両前後方向の中間部分が斜め下方へ向かって折り曲げられており、車両後方へ向かって水平に延びる後方側部分の後端は後部接合フランジ14aとして形成され、車両下方へ向かって傾斜する前方側部分の下端は前部接合フランジ14bとして形成されている。
一方、後側パーティションサイドパネル15の前方側部分は、車両前方へ向かって水平に延びる前部接合フランジ15aとして形成され、該前部接合フランジ15aの前端から車両下方へ向かって傾斜する傾斜部分の下端は下部接合フランジ15bとして形成されている。
【0025】
そのため、前側パーティションサイドパネル14の後部接合フランジ14aは、後側パーティションサイドパネル15の前部接合フランジ15aの上面に重ねて載置された状態で接合されるようになっている。すなわち、前側パーティションサイドパネル14と後側パーティションサイドパネル15とを分割する分割線Sは、これらサイドパネル14,15の接合部となる後部接合フランジ14a及び前部接合フランジ15aの略水平面に位置しながら、車両幅方向に沿って延在している。
なお、後側パーティションサイドパネル15の車両幅方向端部は、クォータインナパネル2の上下方向中間部分に接合されている。また、クォータインナリーンフォースメント9の前方側下端部は、前側パーティションサイドパネル14及び後側パーティションサイドパネル15の車幅方向端部に接合されている。さらに、クォータインナリーンフォースメント9の後端部は、クォータインナパネル2とクォータアウタパネル3との接合部まで延長されており、これらクォータインナリーンフォースメント9の後端部、クォータインナパネル2及びクォータアウタパネル3は、3枚重ね合わせの状態で、スポット溶接によって接合されている。
【0026】
本実施形態のパーティションリーンフォースメント16は、図3〜図5に示すように、車両前後方向に沿って断面略クランク形状に折り曲げられており、中間の水平部分の後端から斜め上方へ向かって延びる上端は後部接合フランジ16aとして形成され、中間の水平部分の前端から斜め下方へ向かって傾斜する前方側部分の下端は前部接合フランジ16bとして形成されている。そして、パーティションリーンフォースメント16の上部は、後部接合フランジ16aと下部接合フランジ15bとが互いにスポット溶接されて後側パーティションサイドパネル15の前方側部分に接合され、パーティションリーンフォースメント16の下部は、前部接合フランジ16bと前部接合フランジ14bとが互いにスポット溶接されて前側パーティションサイドパネル14の前方下側部分に接合されている。
【0027】
また、本実施形態のパーティションサイド部12において、パーティションパネル13と前側パーティションサイドパネル14とは、車両幅方向の左右両側部の隣接する部分で互いに接合されているとともに、パーティションパネル13と後側パーティションサイドパネル15とは、車両幅方向の左右両側部の隣接する部分で互いに接合されている。しかも、パーティションパネル13とパーティションリーンフォースメント16とは、車両幅方向の左右両側部で互いに接合されている。
【0028】
さらに、図2〜図6に示すように、前側パーティションサイドパネル14と後側パーティションサイドパネル15との分割線Sを跨いで、トランクヒンジブラケット17を配置するための貫通穴18が設けられている。この貫通穴18は、前側パーティションサイドパネル14の後部側の一部を車両前方へ浅く切欠くとともに、後側パーティションサイドパネル15の前部側の一部を車両後方へ深く切欠き、これら切欠きを車両前後方向で突き合わせることによって、車両前後方向の長さが大きい平面視で長方形状に形成されている。
なお、トランクヒンジブラケット17は、パーティションサイド部12の左右両側に配設されており、起立した一対の対向壁17aを有し、これら対向壁17aの間に架設したヒンジピン(図示せず)にトランクドアヒンジ19の先端部を取付けることによって、図外のトランクドアを回動自在に支持するように構成されている。
【0029】
また、貫通穴18の周縁部であって、車両幅方向で内側に位置する前側パーティションサイドパネル14と後側パーティションサイドパネル15との接合部の重なり部分には、トランクヒンジブラケット17の取付部であるボルト穴20が設けられている。しかも、貫通穴18の周縁部であって、車両幅方向で外側に位置するパーティションパネル13と車両幅方向で内側に位置する後側パーティションサイドパネル15との接合部の重なり部分には、トランクヒンジブラケット17の取付部であるボルト穴20が設けられている。このため、トランクヒンジブラケット17は、下部フランジを貫通穴18の周縁部に設置し、パネル3枚重ねの状態で形成されたボルト穴20に締付ボルト(図示せず)を挿入して締付けることにより、パーティションサイド部12に締結されるようになっている。
【0030】
このように、本発明の実施形態に係るパーティションサイド部12の構造においては、車体後部の車室RとトランクルームTとの間を仕切るパーティションパネル13と、このパーティションパネル13の左右両側に接合され、車両前後方向で2つに分割される前後パーティションサイドパネル14,15と、これらパーティションパネル13及び前後パーティションサイドパネル14,15の裏面側に接合されるパーティションリーンフォースメント16とを備え、前後パーティションサイドパネル14,15の分割線Sは、前後パーティションサイドパネル14,15の接合部たる後部接合フランジ14a及び前部接合フランジ15aの略水平面に位置しながら、車両幅方向に沿って延在し、パーティションリーンフォースメント16の上部は、後部接合フランジ16aと下部接合フランジ15bとを重ねた状態でスポット溶接することにより後側パーティションサイドパネル15の前側部分に接合され、パーティションリーンフォースメント16の下部は、前部接合フランジ16bと前部接合フランジ14bとを重ねた状態でスポット溶接することにより前側パーティションサイドパネル14の下側部分に接合されている。
したがって、本実施形態の構造によれば、パーティションリーンフォースメント16の接合部が、前後パーティションサイドパネル14,15に設置されるトランクヒンジブラケット17と干渉することはなくなり、前後パーティションサイドパネル14,15の接合部が位置する略水平面の距離b(図5参照)は従来構造の距離a(図7参照)と比べて大きく取ることができる。このため、鎖線で示す従来の構造よりも実線で示す本実施形態の構造のトランクヒンジブラケット17は、パーティションサイドパネル14,15の水平面部の比較的車両前方側に配置することが可能となり、パーティションリーンフォースメント16の接合剛性を確保したまま、ヒンジレイアウトの自由度を大幅に増大させることができる。
しかも、本実施形態の構造では、前側パーティションサイドパネル14の板厚のみを大きく設定して、閉断面周辺の剛性向上が図れるため、閉断面周辺のパネル全体の板厚を大きくする場合と比べて重量増大を回避できるとともに、板厚の大きな前側パーティションサイドパネル14が車体側部のクォータインナパネル2と接合することにより、車両幅方向の部材と車体側部の部材との接合が強固となり、車体剛性を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態のパーティションサイド部12の構造では、パーティションパネル13と前後側パーティションサイドパネル14,15とは、車両幅方向の両側部の隣接する部分でそれぞれ互いに接合され、パーティションパネル13とパーティションリーンフォースメント16とは、車両幅方向の両側部で互いに接合されているので、パーティションパネル13、前後側パーティションサイドパネル14,15及びパーティションリーンフォースメント16の4部品が各々他の3部品と接合されることになる。したがって、本実施形態の構造によれば、トランクヒンジブラケット17の設計自由度を確保しながら、接合剛性をより一層高めることができる。
【0032】
さらに、本実施形態のパーティションサイド部12の構造では、前側パーティションサイドパネル14と後側パーティションサイドパネル15との分割線Sを跨いで、トランクヒンジブラケット17の配置用の貫通穴18が設けられているので、パーティションリーンフォースメント16と前側パーティションサイドパネル14もしくは後側パーティションサイドパネル15との接合によって閉断面の構成での接合剛性を確保でき、前側パーティションサイドパネル14と後側パーティションサイドパネル15との接合剛性を低くしても問題を生じることはなく、トランクヒンジブラケット17をより車両前方に設置することが可能となり、ヒンジの設計自由度を増大させることができる。
【0033】
また、本実施形態のパーティションサイド部12の構造では、前側パーティションサイドパネル14の後部接合フランジ14aと後側パーティションサイドパネル15の前部接合フランジ15aの重なり部分には、トランクヒンジブラケット17の取付部が設けられているので、2枚重ねの接合部の貫通穴18を用いてトランクヒンジブラケット17のフランジがボルト締結により、3枚重ねの状態でボルト締結することができる。したがって、前側パーティションサイドパネル14と後側パーティションサイドパネル15との接合強度が増大し、閉断面を囲む部材の接合剛性を向上させることができるとともに、ボルト座面の剛性やトランクヒンジブラケット17の取付剛性を確保できる。
しかも、本実施形態のパーティションサイド部12の構造では、パーティションパネル14と後側パーティションサイドパネル15との接合部にトランクヒンジブラケット17の取付部が設けられているので、トランクヒンジブラケット17の車両前方側で車両幅方向内側の取付剛性の確保に伴って、トランクヒンジブラケット17の車両後方側で車両幅方向内側の取付剛性を高めることが可能となり、トランクドアの開閉操作時の荷重をトランクヒンジブラケット17の車両前後方向の取付剛性で受けることができ、ドア開閉操作時の荷重を効率良く吸収することができる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施形態における貫通穴18の形状は、車両前後方向に沿って長い長方形状に形成されているが、トランクヒンジブラケット17などの形状に対応して、適宜の形状を選択することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 シートベルト装置
2 クォータインナパネル
3 クォータアウタパネル
6 リヤシートベルト
7 リトラクタ
8 シートベルトガイド
9 クォータインナリーンフォースメント
10 取付ボルト
11 ボルト取付部
12 パーティションサイド部
13 パーティションパネル
14 前側パーティションサイドパネル
14a 後部接合フランジ
14b 前部接合フランジ
15 後側パーティションサイドパネル
15a 前部接合フランジ
15b 下部接合フランジ
16 パーティションリーンフォースメント
16a 後部接合フランジ
16b 前部接合フランジ
17 トランクヒンジブラケット
18 貫通穴
R 車室
S 分割線
T トランクルーム(荷室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室と荷室との間を仕切るために設けられるパーティションパネルと、該パーティションパネルの左右両側に接合されるパーティションサイドパネルと、これらパーティションパネル及びパーティションサイドパネルの裏面側に接合されるパーティションリーンフォースメントとを備えているパーティションサイド部の構造において、
前記パーティションサイドパネルは、車両前後方向で2つに分割され、この分割線は、前後パーティションサイドパネルの接合部の略水平面に位置しながら、車両幅方向に沿って延在し、
前記パーティションリーンフォースメントの上部は、前記後側パーティションサイドパネルの下方へ向かって折り曲げた前側部分に接合され、前記パーティションリーンフォースメントの下部は、前記前側パーティションサイドパネルの下方へ向かって折り曲げた下側部分に接合されていることを特徴とするパーティションサイド部の構造。
【請求項2】
前記パーティションパネルと前記前側パーティションサイドパネルとは、車両幅方向の両側部の隣接する部分で互いに接合され、前記パーティションパネルと前記後側パーティションサイドパネルとは、車両幅方向の両側部の隣接する部分で互いに接合されているとともに、前記パーティションパネルと前記パーティションリーンフォースメントとは、車両幅方向の両側部で互いに接合されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティションサイド部の構造。
【請求項3】
前記前側パーティションサイドパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの前記分割線を跨いで、ヒンジブラケットの配置用の穴が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のパーティションサイド部の構造。
【請求項4】
前記前側パーティションサイドパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの接合部の重なり部分には、前記ヒンジブラケットの取付部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパーティションサイド部の構造。
【請求項5】
前記パーティションパネルと前記後側パーティションサイドパネルとの接合部には、前記ヒンジブラケットの取付部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパーティションサイド部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46131(P2012−46131A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192007(P2010−192007)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】