説明

ヒストン・デアセチラーゼの新インヒビターとしてのイミダゾリノン及びヒダントイン誘導体

【化1】


本発明は、ヒストン・デアセチラーゼ阻害酵素活性をもつ、式(I)[式中、R、R、R、X、Y及びZは定義された意味をもつ]の新化合物、それらの製造、それらを含有する組成物並びに医薬としてのそれらの使用を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒストン・デアセチラーゼ(HDAC)阻害酵素活性を有する化合物に関する。それは更に、それらの製造方法、それらを含んでなる組成物並びに、HDACを阻害するための、そして医薬としての、例えば癌及び乾癬のような増殖性状態を阻害するための医薬としての、インビトロ及びインビボ双方におけるそれらの使用を対象に関する。
【背景技術】
【0002】
核のヒストンは、遺伝子の転写並びに、複製、修復、組み換え及び染色体分離のような他のDNA−テンプレート過程を調節する原因となる機構の不可欠な、動的成分として知られる。それらはアセチル化、リン酸化、メチル化、ユビキチン化及びADP−リボシル化を包含する翻訳後修飾の対象である。
【0003】
本明細書で「HDAC」と呼ばれる1種又は複数のヒストン・デアセチラーゼは、核のヌクレオソームのヒストンH2A、H2B、H3及びH4を包含する、タンパク質のリシン残基上のアセチル修飾物の除去を触媒する酵素である。HDACは、本明細書で「HAT」と呼ばれる1種又は複数のヒストン・アセチルトランスフェラーゼと一緒に、ヒストンのアセチル化レベルを調節する。ヌクレオソームのヒストンのアセチル化の平衡は多数の遺伝子の転写に重要な役割を果たす。ヒストンの低アセチル化は遺伝子転写の抑制をもたらす凝縮されたクロマチン構造を伴ない、他方アセチル化ヒストンは、より開放されたクロマチン構造及び転写の活性化を伴なう。
【0004】
11種の構造的に関連したHDACが記載されており、2群に分類される。第I群のHDACはHDAC1、2、3、8及び11よりなり、一方、第II群のHDACはHDAC4、5、6、7、9及び10よりなる。第3群のHDACのメンバーは第I群及び第II群のHDACに構造的に関連していない。第I/II群のHDACは亜鉛依存性機序により機能し、他方第III群のHDACはNAD−依存性である。
【0005】
ヒストンに加えて、その他のタンパク質、とりわけp53、GATA−1及びE2Fのような転写因子;グルココルチコイド受容体、甲状腺ホルモン受容体、エストローゲン受容体のような核受容体;並びにpRbのような細胞周期調節タンパク質、もまた、アセチル化のための基質であった。タンパク質のアセチル化は、p53の安定化、コファクターの採用及び増加したDNA結合のようなタンパク質の安定化と関連付けられてきた。p53は、DNA損傷のような種々のストレス信号に反応して細胞周期の停止又は細胞死を誘発する可能性がある、腫瘍サプレッサーである。p53誘発細胞周期停止の主要標的はp21遺伝子であるように思われる。p53によるその活性化の次に、p21は、G1及びG2相の両方における細胞周期停止、衰退的過程中のそのアップレギュレーション及び増殖している細胞核抗原とのその相互反応をもたらすサイクリン/サイクリン−依存性キナーゼ複合物との関連により同定されてきた。
【0006】
HDACのインヒビターの研究はそれらが、細胞周期停止、細胞分化、細胞死及び形質転換された表現型の復帰において重要な役割を果たすことを示す。
【0007】
例えば、インヒビターのトリコスタチンA(TSA)はG1及びG2相の両方において細胞周期停止を誘起し、異なる細胞系列の形質転換表現型を逆転し、そしてフレンド白血病細胞及び他の細胞の分化を誘起する。TSA(及びスベロイルアニリドヒドロキサム酸SAHA)は細胞増殖を阻害し、末端分化(terminal differentia
tion)を誘発し、そしてマウスの腫瘍の形成を予防することが報告された(非特許文献1参照)。
【0008】
トリコスタチンAはまた、繊維症、例えば肝臓繊維症及び肝硬変の処置に有用であることが報告された(Geerts et al.,特許文献1、1998年3月11日公開参照)。
【0009】
HDACインヒビターについての薬作用発生団は、HDACの亜鉛含有活性部位と相互反応する金属結合領域、リンカー領域及び活性部位の縁上の残基と相互反応する表面認識領域又はキャッピング領域よりなる。
【0010】
HDACのインヒビターはまた、p21遺伝子発現を誘発することが報告されている。これらのインヒビターによるp21遺伝子の転写活性化は、p21プロモーター領域における、ヒストンH3及びH4のアセチル化の後のクロマチンリモデリングにより促進される。p21のこの活性化はp53−依存性様式で起り、従ってHDACインヒビターは多数の腫瘍の証明の突然変異p53遺伝子をもつ細胞中で作用する。
【0011】
更にHDACインヒビターは宿主の免疫反応の増強及び腫瘍脈管形成の阻害のような間接的作用をもつことができ、従って原発腫瘍の増殖を抑制し、転移を妨げることができる(非特許文献2参照)。
【0012】
以上を考察すると、HDACインヒビターは突然変異p53遺伝子をもつ腫瘍を包含する細胞増殖疾患又は症状の処置に大きな可能性をもつことができる。
【0013】
2003年8月14日付で公開された特許文献2はヒストン・デアセチラーゼのインヒビターとしての2環式ヒドロキサメートを開示している(特許文献2参照)。
【0014】
なかでも2003年9月18日付で公開された特許文献3、4、5、6、7、8、9、10はヒストン・デアセチラーゼのインヒビターとしての置換ピペラジニルピリミジニルヒドロキサム酸を開示しており、更に特許文献11はR306465を開示している(特許文献3〜11参照)。
【0015】
2003年10月9日付で公開された特許文献12はHDACインヒビターとしての、ピペラジン結合を含んでなるカルバミン酸化合物を開示している(特許文献12参照)。
【0016】
2003年10月23日付で公開された特許文献13はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしての置換ピペラジニルフェニルベンズアミド化合物を開示している(特許文献13参照)。
【0017】
2003年11月13日付で公開された特許文献14はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのベンズアミドを開示している(特許文献14参照)。
【0018】
2004年1月29日付で公開された特許文献15はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのアリール基とヒドロキサメート間にアルキルリンカーを含有する誘導体を開示している(特許文献15参照)。
【0019】
2004年2月12日付で公開された特許文献16はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしての、(ヘテロ)アリールアルケニル置換2環式ヒドロキサメートを開示している(特許文献16参照)。
【0020】
2004年6月24日付で公開された特許文献17は薬理学的作用物質としてのアリーレン−カルボン酸(2−アミノ−フェニル)−アミド誘導体を開示している(特許文献17参照)。
【0021】
2004年7月29付で公開された特許文献18は抗炎症及び抗腫瘍活性をもつN−ヒドロキシ−ベンズアミド誘導体の誘導体を開示している(特許文献18参照)。
【0022】
2004年7月29日付で公開された特許文献19はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしての、置換アリールヒドロキサメート誘導体を開示している(特許文献19参照)。
【0023】
2004年8月19日付で公開された特許文献20は薬理学的物質としてのモノ−アシル化O−フェニレンジアミン誘導体を開示している(特許文献20参照)。
【0024】
2004年8月19日付で公開された特許文献21はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのジアミノフェニレン誘導体を開示している(特許文献21参照)。
【0025】
2004年8月26日付で公開された特許文献22はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのベンズアミド誘導体を開示している(特許文献22参照)。
【0026】
2004年8月26日付で公開された特許文献23はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのインドール、ベンズイミダゾール及びナフトイミダゾールを開示している(特許文献23参照)。
【0027】
2004年9月30日付で公開された特許文献24はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしての非芳香族複素環式環系に結合されたヒドロキサメートを開示している(特許文献24参照)。
【0028】
2004年10月14日付で公開された特許文献25はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのオキシム誘導体を開示している(特許文献25参照)。
【0029】
2004年10月28日付で公開された特許文献26はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのヒドロキサメート誘導体を開示している(特許文献26参照)。
【0030】
2005年3月31日付で公開された特許文献27はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのベンズイミダゾールを開示している(特許文献27参照)。
【0031】
2005年4月7日付で公開された特許文献28及び29はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのベンズアミドを開示している(特許文献28、29参照)。
【0032】
2005年5月6日付で公開された特許文献30はヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのアシル尿素に結合された及びスルホニル尿素に結合されたヒドロキサメートを開示している(特許文献30参照)。
【0033】
2005年5月6日付で公開された特許文献31はまた、ヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしての二アリール結合ヒドロキサメートを開示している(特許文献31参照)。
【0034】
2005年8月18日付で公開された特許文献32は、ヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのチアゾリルヒドロキサム酸及びチアジアゾリルヒドロキサム酸を開示し
ている(特許文献32参照)。
【0035】
2005年9月22日付で公開された特許文献33は、ヒストン・デアセチラーゼインヒビターとしてのヘテロ五環式ヒドロキサム酸を開示している(特許文献33参照)。
【0036】
2005年10月6日付で公開された特許文献34は、ヒストン・デアセチラーゼとしてのアルケニルベンズアミドを開示している(特許文献34参照)。
【0037】
【特許文献1】欧州特許第0 827 742号明細書
【特許文献2】欧州特許第1472216号明細書
【特許文献3】欧州特許第1485099号明細書
【特許文献4】欧州特許第1485348号明細書
【特許文献5】欧州特許第1485353号明細書
【特許文献6】欧州特許第1485354号明細書
【特許文献7】欧州特許第1485364号明細書
【特許文献8】欧州特許第1485365号明細書
【特許文献9】欧州特許第1485370号明細書
【特許文献10】欧州特許第1485378号明細書
【特許文献11】欧州特許第1485365号明細書
【特許文献12】欧州特許第1492534号明細書
【特許文献13】欧州特許第1495002号明細書
【特許文献14】国際公開出願第03/092686号パンフレット
【特許文献15】国際公開出願第04/009536号パンフレット
【特許文献16】欧州特許第1525199号明細書
【特許文献17】欧州特許第1572626号明細書
【特許文献18】欧州特許第1581484号明細書
【特許文献19】欧州特許第1585735号明細書
【特許文献20】欧州特許第1592667号明細書
【特許文献21】欧州特許第1590340号明細書
【特許文献22】欧州特許第1592665号明細書
【特許文献23】国際公開出願第04/072047号パンフレット
【特許文献24】欧州特許第1608628号明細書
【特許文献25】欧州特許第1613622号明細書
【特許文献26】欧州特許第1611088号明細書
【特許文献27】国際公開出願第05/028447号パンフレット
【特許文献28】国際公開出願第05/030704号パンフレット
【特許文献29】国際公開出願第05/030705号パンフレット
【特許文献30】国際公開出願第05/040101号パンフレット
【特許文献31】国際公開出願第05/040161号パンフレット
【特許文献32】国際公開出願第05/075469号パンフレット
【特許文献33】国際公開出願第05/086898号パンフレット
【特許文献34】国際公開出願第05/092899号パンフレット
【非特許文献1】Finnin et al.,Nature,401:188−193.1999
【非特許文献2】Mai et al.,Medicinal Research Reviews,25:261−309,2005
【発明の開示】
【0038】
本発明の化合物は構造、それらの薬理作用及び/又は薬理学的効力において先行技術と異なる。
【0039】
解決するべき問題は、増加した生体利用能を有する、高い酵素活性及び細胞活性をもつヒストン・デアセチラーゼインヒビターを提供することである。
【0040】
本発明の新化合物は前記の問題を解決する。本発明の化合物は優れたヒストン・デアセチラーゼ阻害酵素活性及び細胞活性を示す。それらはp21遺伝子を活性化する高い能力を有する。それらは望ましい薬物動態学的プロファイルをもち、P450酵素に低い親和性をもつことができ、それが更により広範な安全性領域を許す不都合な薬剤−薬剤相互反応の危険を減少させる。
【0041】
本発明は式(I)
【0042】
【化1】

【0043】
[式中、
Xはそれぞれ独立してN又はCHであり、
Yはそれぞれ独立して、O、CH又はCHであり、そしてYがCHである時は、置換基が環構造のY原子に結合されており、
Zはそれぞれ独立してC=O、CH又はCHであり、そしてZがCHである時は、点線が1つの結合であり、
nは0又は1であり、そしてnが0である時は、直接結合が意図され、
はフェニル、ナフタレニル、ヘテロシクリル、フェニルC1−6アルキル、ナフタレニルC1−6アルキル又はヘテロシクリルC1−6アルキルであり、ここで該フェニル、ナフタレニル又はヘテロシクリルはそれぞれ、場合により、水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル、フェニル、フェニルオキシ、シアノ、C1−6アルキルカルボニルアミノからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、あるいは2個の置換基が一緒になって2価の基−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−を形成してもよく、
は水素、C1−6アルキル又はフェニルであり、ここで該フェニルはそれぞれ場合により、水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、フェニルオキシ又はシアノからそれぞれ独立して選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく、
はヒドロキシあるいは、式(a−1)
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、
はヒドロキシ又は−NHであり、
は水素、チエニル、フラニル又はフェニルであり、そしてチエニル、フラニル又はフェニルはそれぞれ、場合によりハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、フェニル、C1−6アルキル、(ジC1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルオキシ、フェニルC1−6アルキルオキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル、C1−6アルキルカルボニル、ポリハロC1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル、C1−6アルキルスルホニル、ヒドロキシカルボニルC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニルアミノ、アミノスルホニル、アミノスルホニルC1−6アルキル、イソオキサゾリル、アミノカルボニル、フェニルC2−6アルケニル、フェニルC3−6アルキニル又はピリジニルC3−6アルキニルで置換されていてもよく、
、R及びRはそれぞれ独立して水素、−NH、ニトロ、フラニル、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、トリフルオロメチル、チエニル、フェニル、C1−6アルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルC1−6アルキル又は−C≡C−CH−Rであり、ここでRは水素、C1−6アルキル、ヒドロキシ、アミノ又はC1−6アルキルオキシである)の基であり、そして
前記のヘテロシクリルはフラニル、チエニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、ジオキソリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジニル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、トリアジニル、トリチアニル、インドリジニル、インドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノオキサリニル又はナフチリジニルである]、の化合物、それらのN−オキシド形態物、製薬学的に許容できる付加塩及び立体化学的異性体形態物を対象とする。
【0046】
置換基から環系中に引かれた線は、その結合が環系の適当な環原子のいずれにも結合されることができることを示す。
【0047】
用語「ヒストン・デアセチラーゼインヒビター」又は「ヒストン・デアセチラーゼのインヒビター」はヒストン・デアセチラーゼと相互反応することができ、その活性、より具体的にはその酵素活性を阻害することができる化合物を同定するために使用される。ヒストン・デアセチラーゼ酵素活性を阻害するとは、ヒストンからアセチル基を除去するヒストン・デアセチラーゼの能力を減少させることを意味する。このような阻害は好ましくは特異的である、すなわちヒストン・デアセチラーゼインヒビターが何か他の、無関係の生物学的効果をもたらすために要するインヒビターの濃度より低い濃度で、ヒストンからアセチル基を除去するためのヒストン・デアセチラーゼの能力を低下させる。
【0048】
以上の定義及び以後に使用されるハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを包含し、C1−4アルキルは例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、1−メチルエチル、2−メチルプロピル等のような1〜4個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖飽和炭化水素基を定義し、C1−6アルキルはC1−4アルキル及び、例えばペンチル、2−メチルーブチル、ヘキシル、2−メチルペンチル等のような、5〜6個の炭素原子を有する、より高次の同族体を包含し、C2−6アルケニルは、例えば、エテニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、3−メチル−2−ブテニル、等のような、1個の二重結合を含有し、そして2〜6個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖炭化水素基
を定義し、C3−6アルキニルは例えば2−プロピニル、3−ブチニル、2−ブチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、3−ヘキシニル、等のような、1個の三重結合を含有し、そして3〜6個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖の炭化水素基を定義し、ポリハロC1−6アルキニルは3個の同一の又は異なるハロ置換基を含有するC1−6アルキル、例えばトリフルオロメチルを定義し、そしてC3−6シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル等のような3〜6個の炭素を有する環式炭化水素基を包含する。
【0049】
製薬学的に許容できる付加塩は、製薬学的に許容できる酸付加塩及び製薬学的に許容できる塩基の付加塩を包含する。前記の製薬学的に許容できる酸付加塩は、式(I)の化合物が形成することができる治療的に有効な無毒の酸付加塩形態を含んでなることを意味する。塩基性を有する式(I)の化合物は、前記の塩基形態を適当な酸で処理することにより、それらの製薬学的に許容できる酸付加塩に転化させることができる。適当な酸は例えば、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸又は臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸等の酸のような無機酸、あるいは例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸(すなわちブタンジオン酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノ−サリチル酸、パモエ酸等の酸のような有機酸を含んでなる。酸性を有する式(I)の化合物は、前記の酸形態を適当な有機又は無機塩基で処理することにより、それらの製薬学的に許容できる塩基付加塩に転化させることができる。適当な塩基塩形態は例えば、アンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩等)、有機塩基との塩(例えばベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、ヒドラバミン塩)及び、例えばアルギニン、リシン等のようなアミノ酸との塩を含んでなる。用語の「酸又は塩基付加塩」はまた、式(I)の化合物が形成することができる水和物及び溶媒付加物形態を含んでなる。このような形態の例は例えば、水和物、アルコラート等である。
【0050】
本明細書で使用される用語「式(I)の化合物の立体化学的異性体形態物」は、式(I)の化合物が所有することができる、同一配列の結合により結合された同一原子よりなるが、互換性でない異なる三次元構造を有するすべての可能な化合物を定義する。別に言及され又は示されない限り、化合物の化学名は、該化合物が所有することができるすべての可能な立体化学的異性体形態物の混合物を包含する。該混合物は該化合物の基礎分子構造のすべてのジアステレオマー及び/又はエナンチオマーを含有することができる。純粋な形態又は相互に混合された、双方の、式(I)の化合物のすべての立体化学的異性体形態が本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0051】
式(I)の化合物のN−オキシド形態物はそこで、1個又は複数の窒素原子がいわゆるN−オキシド、特にその1個又は複数のピペリジン−、ピペラジン又はピリダジニル−窒素がN−酸化されているN−オキシドに酸化されている式(I)化合物を含んでなることを意味する。
【0052】
幾つかの式(I)化合物はまた、それらの互変異性体形態で存在することができる。前記の式中には明白に記載されていないが、このような形態は本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0053】
用語「式(I)の化合物」はまた、以後使用される時はいつも、製薬学的に許容できる付加塩及びすべての立体異性体形態物を包含することを意味する。
【0054】
本明細書で使用される用語「ヒストン・デアセチラーゼ」及び[HDAC]は、ヒスト
ンのN−末端のリシン残基のε−アミノ基からアセチル基を除去する酵素の1族のいずれか1個を表すことが意図される。文脈により別に示されない限り、用語「ヒストン」はあらゆる種からのH1、H2A、H2B、H3、H4及びH5を包含するいずれかのヒストンタンパク質を表すことを意味する。ヒトのHDACタンパク質又は遺伝子生産物はそれらに限定はされないが、HDAC−1、HDAC−2、HDAC−3、HDAC−4、HDAC−5、HDAC−6、HDAC−7、HDAC−8、HDAC−9、HDAC−10及びHDAC−11を包含する。ヒストン・デアセチラーゼはまた、原生動物又はカビ・真菌源から誘動することができる。
【0055】
興味深い化合物の第1の群は、1個又は複数の以下の制限が適用される式(I)の化合物よりなる:
a)XがそれぞれNである、
b)Yがそれぞれ独立してO又はCHである、
c)nが1である、
d)Rがフェニル、ナフタレニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルであり、ここで該フェニル、ナフタレニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルはそれぞれ、場合により、水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル、フェニル、フェニルオキシ又はシアノからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、あるいは2個の置換基が一緒になって2価の基−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−を形成してもよい、
e)Rが水素、C1−6アルキル又はフェニルである、そして
f)Rがヒドロキシである。
【0056】
興味深い化合物の第2の群は、1個又は複数の以下の制限が適用される式(I)の化合物よりなる:
a)XがそれぞれNである、
b)YがそれぞれCHである、
c)ZがそれぞれCHである、
d)Rがフェニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルであり、ここで該フェニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルはそれぞれ、場合により、水素、C1−6アルキル、フェニル又はフェニルオキシからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよい、
e)Rが水素である、そして
f)Rがヒドロキシである。
【0057】
興味深い化合物の第3の群は、1個又は複数の以下の制限が適用される式(I)の化合物よりなる:
a)Rが式(a−1)の基である、
b)Rが−NHである、
c)Rが水素又はチエニルである、そして
d)R、R及びRがそれぞれ独立して水素である。
【0058】
好ましい化合物の群は、式中、XがそれぞれNであり、Yがそれぞれ独立してO又はCHであり、nが1であり、Rがフェニル、ナフタレニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルであり、ここで該フェニル、ナフタレニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルはそれぞれ場合により水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル、フェニル、フェニルオキシ又はシアノからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、あるいは2個の置換基が一緒になって2価の基−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH
−O−を形成してもよく、Rが水素、C1−6アルキル又はフェニルであり、そしてRがヒドロキシルである、式(I)の化合物よりなる。
【0059】
より好ましい化合物の群は、式中、XがそれぞれNであり、YがそれぞれCHであり、ZがそれぞれCHであり、Rがフェニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルであり、ここで該フェニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルはそれぞれ場合により水素、C1−6アルキル、フェニル又はフェニルオキシからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、Rが水素であり、そしてRがヒドロキシである、式(I)の化合物よりなる。
【0060】
もっとも好ましい化合物は化合物第3、化合物第2及び化合物第35である。
【0061】
【表1】

【0062】
式(I)の化合物及びそれらの製薬学的に許容できる塩及びN−オキシド及び立体化学的異性体形態物は、従来の方法で調製することができる。出発材料及び幾つかの中間体は知られた化合物でありそして市場で入手することができるか又は当該技術分野で一般に知られた従来の反応方法に従って製造することができる。幾つかの製造方法は以下に更に詳細に説明されるであろう。式(I)の最終化合物を得る他の方法は実施例に記載される。
【0063】
本明細書で式(I−a)と呼ばれる、そのRがヒドロキシである式(I)の化合物は、式(II)の中間体を例えばトリフルオロ酢酸のような適当な酸と反応させることにより製造することができる。該反応は例えばメタノール又はジクロロメタンのような適当な溶媒中で実施される。
【0064】
【化3】

【0065】
本明細書で式(I−b)の化合物と呼ばれる、そのRが式(a−1)の基でありそしてRが−NHである式(I)の化合物は、式(XV)の中間体を塩化錫(II)水和物と反応させることにより製造することができる。該反応は例えば、テトラヒドロフラン、メタノール及び水の混合物のような適当な溶媒中で実施することができる。あるいはまた、式(I−b)の化合物は、式(XV)の中間体を水素と、例えばメタノールのような適当な溶媒中で10%木炭上パラジウムの存在下で反応させることにより製造することができる。
【0066】
【化4】

【0067】
式(I−b)の化合物はまた、式(XVI)の中間体を例えばトリフルオロ酢酸のような適当な酸と反応させることにより製造することができる。該反応は例えばメタノール又はジクロロメタンのような適当な溶媒中で実施される。
【0068】
【化5】

【0069】
本明細書で式(I−c)の化合物と呼ばれる、そのRが式(a−1)の基でありそしてRがヒドロキシである式(I)の化合物は、式(XVII)の中間体をテトラブチルアンモニウムフルオリドと、例えばテトラヒドロフランのような適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。式(XVII)の中間体中のTBDMSはtert−ブチル(ジメチル)シラニルを意味する。
【0070】
【化6】

【0071】
式(II)の中間体は、式(III)の中間体を式(IV)の中間体と、(3−ジメチルアミノ−プロピル)−エチル−カルボジイミド)塩酸(EDC)及び1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(HOBT)のような適当な試薬の存在下で反応させることにより製造することができる。該反応はジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド及びテトラヒドロフランの混合物又はジクロロメタン及びテトラヒドロフランの混合物のような適当な溶媒中でトリエチルアミンのような塩基の存在下で実施することができる。
【0072】
【化7】

【0073】
式(XV)の中間体は、式(III)の中間体を式(XVIII)の適当なニトロフェニルアミンと、ベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)及び水素化ナトリウムの存在下で反応させることにより製造することができる。該反応は例えばピリジンのような適当な溶媒中で実施することができる。
【0074】
【化8】

【0075】
更に、式(XVI)の中間体は、式(III)の中間体を式(XIX)の適当なtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)保護フェニルアミンと、ベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)及び水素化ナトリウムの存在下で反応させることにより製造することができる。該反応は例えばピリジンのような適当な溶媒中で実施することができる。
【0076】
【化9】

【0077】
式(XVII)の中間体は、式(III)の中間体を式(XX)の適当なtert−ブチル(ジメチル)シラニル(TBDMS)保護フェニルアミンと、ベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)及びトリエチルアミンの存在下で反応させることにより製造することができる。該反
応は例えばN,N−ジメチルホルムアミドのような適当な溶媒中で実施される。
【0078】
【化10】

【0079】
本明細書で式(II−a)の中間体と呼ばれる、そのZがC=OでありそしてRがC1−6アルキル(図を参照されたい)又はフェニルである式(II)の中間体は、そのRがC1−6アルキル(図を参照)又はフェニルである式(VI)の中間体を式(VII)の中間体と、テトラヒドロフランのような適当な溶媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0080】
【化11】

【0081】
式(III)の中間体は、式(V)の中間体を適当な酸性溶液(例えば塩酸)又は塩基性溶液(例えば水酸化リチウム又は水酸化ナトリウム)と、ジオキサンのような適当な溶媒又は、アルコール、アセトニトリル及び水のような適当な溶媒の混合物中で反応させることにより製造することができる。
【0082】
【化12】

【0083】
本明細書で式(V−a)の中間体と呼ばれる、そのZがCHでありそしてRが水素である式(V)の中間体は、例えば炭素上パラジウム(10%)のような触媒の存在下で、式(V−b)の中間体の水素による触媒水素化により、本明細書で式(V−b)の中間体と呼ばれる、そのZがCHでありそして点線が1つの結合を表す式(V)の中間体を転化することにより製造することができる。その反応はテトラヒドロフランのような適当な溶媒中で、トリエチルアミンのような塩基の存在下で実施することができる。
【0084】
【化13】

【0085】
そのRがC1−6アルキル(図を参照)又はフェニルである式(VI)の中間体は、式(VIII)の中間体を、そのRがC1−6アルキル(図を参照)又はフェニルでありそしてハロが例えばクロロ又はブロモである式(IX)の中間体と、炭酸カリウムの存在下で、アセトニトリルのような適当な溶媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0086】
【化14】

【0087】
本明細書で式(V−c)の中間体と呼ばれる、そのZがC=OでありそしてRがC1−6アルキル又はフェニル(図を参照)である式(V)の中間体は、そのRがC1−6アルキル又はフェニル(図を参照)である式(X)中間体を式(VII)の中間体と、テトラヒドロフランのような適当な溶媒の存在下で反応させることにより、製造することができる。
【0088】
【化15】

【0089】
そのRがC1−6アルキル又はフェニル(図を参照)である式(X)の中間体は、式(XI)の中間体を、そのRがC1−6アルキル又はフェニル(図を参照)でありそしてハロが例えばクロロ又はブロモである式(XII)の中間体と、炭酸カリウムのような適当な試薬の存在下で、アセトニトリルのような適当な溶媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0090】
【化16】

【0091】
式(V−b)の中間体は、メタノールのような適当な溶媒中でギ酸又は塩酸のような適当な酸の存在下で式(XIII)の中間体を転化させることにより製造することができる。
【0092】
【化17】

【0093】
式(XIII)の中間体は、式(XIV)の中間体を式(VII)の中間体と、ジクロロメタン又はテトラヒドロフランのような適当な溶媒中でトリエチルアミンのような塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0094】
【化18】

【0095】
式(XIV)の中間体は、例えばテトラヒドロフランのような適当な溶媒の存在下で式(XI)の中間体をグリオキサルジメチルアセタール及びナトリウムトリアセトキシホウ水素化物と、あるいは、例えばアセトニトリルのような適当な溶媒の存在下で2−ブロモ−1,1−ジエトキシエタン及び炭酸カリウムと反応させることにより製造することができる。
【0096】
【化19】

【0097】
式(XVIII)の中間体は、そのWが例えばブロモのような適当な離脱基である式(XXI)の中間体を式(XXII)の適当なボロン酸と、トリ−o−トリルホスフィン及び炭酸カリウムの存在下で反応させることにより製造することができる。該反応は炭酸カ
リウムのような塩基の存在下で、例えばジメチルエーテルのような適当な溶媒中で実施することができる。
【0098】
【化20】

【0099】
式(XXI)の中間体は、式(XXIII)の適当なニトロベンゼンを、O−メチル−ヒドロキシルアミン塩酸と、カリウムtert−ブトキシド及び塩化銅(I)の存在下で反応させることにより製造することができる。該反応はジメチルエーテルのような適当な溶媒中で実施することができる。
【0100】
【化21】

【0101】
式(XIX)の中間体は、式(XXIV)の中間体を水素と、例えばメタノールのような適当な溶媒中で10%木炭上パラジウムの存在下で反応させることにより製造することができる。
【0102】
【化22】

【0103】
式(XXIV)の中間体は、適当なtert−ブチルニトロフェニルカルバメート又は、そのWが例えば臭素のような適当な離脱基である式(XXV)を、式(XXII)のボロン酸と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及び炭酸ナトリウムの存在下で反応させることにより製造することができる。該反応は例えばジメチルエーテルと水の混合物のような適当な溶媒中で実施することができる。
【0104】
【化23】

【0105】
式(XXV)の中間体は、式(XXVI)の適当なニトロアニリンを第三級ブトキシカルボニル無水物と、水素化ナトリウムの存在下で、そして例えばN,N−ジメチルホルムアミドのような適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0106】
【化24】

【0107】
式(XX)の中間体は、式(XXVII)の適当なアミノフェノールをtert−ブチル−クロロ−ジメチル−シランと、テトラヒドロフランのような適当な溶媒中で、トリエチルアミンの存在下で、反応させることにより製造することができる。
【0108】
【化25】

【0109】
式(I)の化合物及び幾つかの中間体はそれらの構造中に少なくとも1個のステレオジェン中心をもつかも知れない。このステレオジェン中心はR又はS形態で存在することができる。
【0110】
前述の方法で製造される式(I)の化合物は一般に、当該技術分野で知られた分割法に従って相互から分割することができる、エナンチオマーのラセミ混合物である。式(I)のラセミ化合物は適当なキラル酸との反応により、対応するジアステレオマー塩形態物に転化させることができる。該ジアステレオマー塩形態物を次に、例えば選択的又は分別結晶化により分離して、エナンチオマーをアルカリによりそれらから遊離させる。式(I)
の化合物のエナンチオマー形態物を分離する代りの方法は、キラル固定相を使用する液体クロマトグラフィーを伴なう。該純粋な立体化学異性体形態物はまた、その反応が立体特異的に起る場合は、適当な出発材料の、対応する純粋な立体化学的異性体形態物から誘動することができる。特定の立体異性体が所望される場合は、該化合物は好ましくは立体特異的製造方法により合成されるであろう。これらの方法は有利にはエナンチオマーとして純粋な出発材料を使用するであろう。
【0111】
式(I)の化合物、それらの製薬学的に許容できる酸付加塩及び立体異性体形態は、それらがヒストン・デアセチラーゼ(HDAC)阻害効果を有するという貴重な薬理学的特性を有する。
【0112】
本発明は、有効量の本発明の化合物を投与することにより、形質転換細胞を包含する細胞の異常増殖を抑制する方法を提供する。細胞の異常増殖は正常な制御機構と独立した細胞増殖(例えば接触阻止の喪失)を表す。これは直接には増殖の停止、癌細胞の末端分化及び/又は細胞死を誘発することによる、そして間接的には、腫瘍の新生血管形成を抑制する双方による、腫瘍増殖の抑制を包含する。
【0113】
本発明はまた、有効量の本発明の化合物をこのような処置を要する被験体、例えば哺乳動物(そしてより特にはヒト)に投与することによる、腫瘍の増殖を抑制する方法を提供する。とりわけ本発明は、有効量の本発明の化合物の投与による腫瘍の増殖を抑制する方法を提供する。抑制することができる腫瘍の例は、限定はされないが、肺癌(例えば腺癌及び非小細胞肺癌を包含する)、膵臓癌(例えば外分泌膵癌のような膵癌)、結腸癌(例えば結腸腺癌及び結腸腺腫のような、例えば結腸直腸癌)、進行疾患を包含する前立腺癌、リンパ系の造血器官腫瘍(例えば急性リンパ性白血病、B−細胞リンパ腫、ブルキットリンパ腫)、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、甲状腺濾胞腺癌、骨髄異形成症候群(MDS)、間葉細胞源の腫瘍(例えば繊維肉腫及び横紋筋肉腫)、メラノーマ、奇形癌、神経芽細胞腫、神経膠腫、皮膚の良性腫瘍(例えば、角化棘細胞腫)、乳癌(例えば進行乳癌)、腎臓癌、卵巣癌、膀胱癌及び表皮癌である。
【0114】
本発明に従う化合物は、他の治療目的、例えば、
a)癌を処置するための腫瘍の放射線照射前、その間又はその後に本発明に従う化合物を投与することにより放射線治療に対して腫瘍を感受性化させる、
b)関節リューマチ、変形性関節炎、若年性関節炎、痛風、多発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎及び全身性エリテマドーデスのような関節症及び骨病理状態を処置する、c)血管増殖障害、アテローム性動脈硬化症及び再狭窄を包含する平滑筋細胞増殖を抑制する、
d)潰瘍性大腸炎、クローン病、アレルギー性鼻炎、移植片対宿主病、結膜炎、喘息、ARDS、ベーチェット病、移植拒絶、蕁麻疹、アレルギー性皮膚炎、円形脱毛症、強皮症、発疹、湿疹、皮膚筋炎、ニキビ、糖尿病、全身性エリテマドーデス、川崎病、多発性硬化症、気腫、嚢胞性繊維症及び慢性気管支炎のような炎症性状態及び皮膚状態を処置する、
e)子宮内膜症、子宮筋腫、不正子宮出血及び子宮内膜増殖症を処置する、
f)網膜及び脈絡膜血管に影響する血管疾患を包含する眼科血管形成を処置する、
g)心機能不全を処置する、
h)HIV感染症の処置のような免疫抑制状態を抑制する、
i)腎機能不全を処置する、
j)内分泌障害を抑制する、
k)糖新生の機能不全を抑制する、
l)神経病理、例えばパーキンソン病あるいは、認識障害、例えばアルツハイマー病又はポリグルタミン関連神経疾患をもたらす神経病理を処置する、
m)精神障害、例えば精神分裂病、双極性障害、鬱病、心配症及び精神病を処置する、
n)神経筋肉病理、例えば筋萎縮性測索硬化症を抑制する、
o)脊髄筋萎縮症を処置する、
p)遺伝子の発現を強化することにより、処置に敏感な他の病理学的状態を処置する、
q)遺伝子治療を高める、
r)脂質生成を抑制する、
s)マラリアのような寄生虫症を処置する、
のために、使用することができる。
【0115】
従って、本発明は、医薬としての使用のための式(I)の化合物並びに、1種又は複数の前記の状態を処置するための医薬の製造のための、式(I)のこれらの化合物の使用を開示する。
【0116】
式(I)の化合物、それらの製薬学的に許容できる酸付加塩及び立体異性体形態は、それらを、標識化合物とHDAC間の複合体の形成を検出又は測定する工程を含んでなる、生体サンプル中のHDACを検出又は同定するために使用することができるという貴重な診断的特性を有することができる。
【0117】
検出又は同定法は、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質、等のような標識薬で標識される化合物を使用することができる。放射性同位元素の例は125I、131I、H及び14Cを包含する。酵素は通常、順次検出可能な反応を触媒する適当な基質の共役により検出可能にさせられる。それらの例は、例えばベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ及びマレートデヒドロゲナーゼ、好ましくはホースラディッシュのペルオキシダーゼを包含する。発光物質は例えばルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、エクオリン及びルシフェラーゼを包含する。
【0118】
生体サンプルは体組織又は体液と定義することができる。体液の例は脳脊髄液、血液、血漿、血清、尿、喀痰、唾液等である。
【0119】
それらの有用な薬理学的特性を考慮すると、主題化合物は投与目的のための種々の製薬学的剤形に調合することができる。
【0120】
本発明の製薬学的組成物を調製するためには、有効成分として有効量の、塩基又は酸付加塩形態の特定の化合物を、投与に所望される調製物の形態に応じて広範な形態を採ることができる製薬学的に許容できる担体と密接な混合物に組み合わせる。これらの製薬学的組成物は望ましくは、好ましくは経口、直腸内、経皮的又は非経口注射による投与に適した単一の投与剤形にある。例えば、経口投与剤形の組成物を調製する際には、懸濁剤、シロップ、エリキシル及び液剤のような経口液体調製物の場合には、例えば水、グリコール、油、アルコール、等のようないずれかの通常の製薬学的媒質、あるいは散剤、ピル、カプセル及び錠剤の場合にはデンプン、糖、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等のような固形担体を使用することができる。
【0121】
それらの投与の容易さのために錠剤及びカプセルがもっとも有利な経口投与単位剤形を表し、その場合には明らかに固形の製薬学的担体が使用される。非経口組成物のための担体は、例えば溶解性を補助するための他の成分を包含することはできるが、通常、少なくとも大部分は滅菌水を含んでなるであろう。例えば、その担体が生理食塩水、ブドウ糖液又は生理食塩水とブドウ糖液の混合物を含んでなる注射液を調製することができる。適当な液体担体、懸濁剤等を使用することができる注射用懸濁液もまた調製することができる。経皮的投与に適した組成物中では、担体は、場合により、少量の、皮膚に対して有意な
有害効果を誘発しない、あらゆる性状の適当な添加剤と組み合わせてもよい浸透促進剤及び/又は適当な湿潤化剤を場合により含んでなる。該添加剤は皮膚に対する投与を容易にし、そして/又は所望の組成物を調製する補助になることができる。これらの組成物は種々の方法で、例えば経皮的パッチとして、スポットオン剤として又は軟膏として投与することができる。
【0122】
投与の容易さ及び用量の均一性のために、前記の製薬学的組成物を投与単位剤形に調合することは特に有益である。本明細書及び請求項に使用される投与単位剤形は、各単位が、必要な製薬学的担体と一緒に所望の治療効果をもたらすように計算された、前以て決定された量の有効成分を含有する、単一投与物として適した物理的に分割された単位を表す。このような投与単位形態の例は錠剤(刻み目付き錠剤又はコート錠)、カプセル、ピル、散剤分包、ウエファー、注射液又は懸濁液、小匙1杯、大匙1杯等並びにそれらの分離複数物である。
【0123】
当業者は、以後に提示される試験結果から、有効量を容易に決定することができるであろう。概括的に治療的有効量は0.005mg/kg〜100mg/kg体重であり、そしてとりわけ0.005mg/kg〜10mg/kg体重であろうと推測される。必要量を1日に適当な間隔を空けてで2、3、4又は5回以上の分割量として投与することが適当かも知れない。該分割量は例えば、単位投与剤形当たり0.5〜500mg、そしてとりわけ10mg〜500mgの有効成分を含有する単位投与剤形として調合することができる。
【0124】
本発明のもう1つのアスペクトとして、特に医薬としての使用に対し、より具体的には癌又は関連疾患の処置における、もう1種の抗癌剤とHDAC−インヒビターの組み合わせ物が想定される。
【0125】
前記の状態の処置のために、本発明の化合物を有利には、1種又は複数の他の医薬、より具体的には他の抗癌剤と組み合わせて使用することができる。抗癌剤の例は、
−白金配位化合物、例えばシスプラチン、カルボプラチン又はオキサリプラチン、
−タキサン化合物、例えばパクリタキセル又はドセタキセル、
−カンプトテシン化合物のようなトポイソメラーゼIインヒビター、例えばイリノテカン又はトポテカン、
−抗癌性ポドフィロトキシン誘導体のようなトポイソメラーゼIIインヒビター、例えばエトポシド又はテニポシド、
−抗腫瘍ビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン又はビノレルビン−抗腫瘍ヌクレオシド誘導体、例えば5−フルオロウラシル、ゲンシタビン又はカペシタビン、
−ナイトロジェン・マスタード又はニトロソ尿素のようなアルキル化剤、例えばシクロホスホアミド、クロランブシル、カルムスチン又はロムスチン、
−抗腫瘍、アントラサイクリン誘導体、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン又はミトキサントロン、
−HER2抗体、例えばトラストズマブ、
−エストロゲン受容体アンタゴニスト又は選択的エストロゲン受容体モジュレーター、例えばタモキシフェン、トレミレン、ドロロキシフェン、ファスロデックス又はラロキシフェン、
−エキセメスタン、アナストロゾール、レトラゾール及びボロゾールのようなアロマターゼインヒビター、
−レチノイド、ビタミンD及びレチノイン酸代謝阻害剤(RAMBA)のような分化剤、例えばアキュタン、
−DNAメチルトランスフェラーゼインヒビター、例えばアザシチジン、
−キナーゼインヒビター、例えばフラボペリドール、イマチニブメシレート又はゲフィチニブ、
−ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、
−他のHDACインヒビター、
−ユビキチン−プロテアソム経路のインヒビター、例えばVelcade、あるいは
−Yondelis、
である。
【0126】
用語「白金配位化合物」は本明細書では、イオンの形態の白金を提供するいずれかの腫瘍細胞増殖阻害白金配位化合物を表すために使用される。
【0127】
用語[タキサン化合物]はタキサン環系を有し、イチイの木(Taxus)の特定の種からの抽出物に関連した又はそれから誘動された化合物の1クラスを示す。
【0128】
用語「トポイソメラーゼインヒビター」は真核細胞中のDNA位相を変えることができる酵素を示すために使用される。それらは重要な細胞機能及び細胞増殖に必須である。真核細胞には2種のトポイソメラーゼ、すなわちI型及びII型がある。トポイソメラーゼIは約100,000の分子量のモノマー酵素である。この酵素はDNAに結合して、一時的な単鎖分解を誘動し、二重らせんを解き(又は解かせ)、そして次にDNA鎖から解離する前にその分解を再シールする。トポイソメラーゼIIはDNA鎖分解物の導入又は遊離ラジカルの分解又は形成に関与する、同様な作用機序を有する。
【0129】
用語「カンプトテシン化合物」は中国茶のカンプトテシン・アクミナタ(Camptothecin acuminata)及びインドの木のノタポヂテ・フェチダ(Nothapodytes foetida)から誘動される非水溶性アルカロイドである親カンプトテシン化合物に関連した、又はそれから誘動される化合物を表すために使用される。
【0130】
用語[ポドフィロトキシン化合物]はマンドレークの植物から抽出される親ポドフィロトキシンに関連した、又はそれから誘動される化合物を示すために使用される。
【0131】
用語「抗腫瘍ビンカアルカロイド」はツルニチソウ(Vinca rosea)の抽出物に関連した、又はそれから誘動される化合物を示すために使用される。
【0132】
用語「アルキル化剤」は生理学的条件下で、DNAのような生物学的に必須の高分子にアルキル基を与える能力を有する一般的特徴をもつ化学薬品の広範な群を包含する。大部分はナイトロジェンマスタード及びニトロソ尿素のような、より重要な物質であるが、有効なアルキル化部分は、その幾つかは酵素による複雑な分解反応後にインビボで生成される。アルキル化剤のもっとも重要な薬理学的作用は、細胞増殖、とりわけDNA合成及び細胞分裂に関与する基本的機序を乱すことである。急速に増殖している組織中のDNA機能及び完全性を阻害するアルキル化剤の能力が、それらの治療的適用及び多数のそれらの毒性の基礎を提供する。
【0133】
用語「抗腫瘍アントラサイクリン誘導体」は、グリコシド結合により結合される稀有な糖のダウノスアミンをもつテトラサイクリン環構造をもつことを特徴とする、カビ・真菌のStrep.peuticus var.caesiusから得られる抗生物質及びそれらの誘導体を含んでなる。
【0134】
原発性乳癌におけるヒト表皮増殖因子受容体2タンパク質(HER2)の増殖は、特定の患者に対する低い臨床予後と関連することが示されている。トラストズマブはHER2受容体の細胞外領域に高い親和性及び特異性をもって結合する、著しく精製された組み換
えDNA−誘動ヒト化モノクローナルIgG1カッパ抗体である。
【0135】
多数の乳癌はエストロゲン受容体を有し、これらの腫瘍の増殖はエストロゲンにより刺激され得る。用語「エストロゲン受容体アンタゴニスト」及び「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」は、エストロゲン受容体(ER)に結合するエストラジオールの競合的インヒビターを示すために使用される。選択的エストロゲン受容体モジュレーターはERに結合されると、受容体の三次元形態に変化を誘発し、DNA上のエストロゲン反応性要素(ERE)に対するその結合を変化させる。
【0136】
閉経後の女性においては、循環エストロゲンの主要な生成源は、末梢組織におけるアロマターゼ酵素による、副腎及び卵巣のアンドローゲン(アンドロステンジオン及びテストステロン)のエストロゲン(エストロン及びエストラジオール)への転化からである。アロマターゼ阻害又は不活性化によるエストロゲンの剥奪はホルモン依存性乳癌をもつ何人かの閉経後患者に対する有効な選択的処置である。
【0137】
用語「抗エストロゲン剤」は本明細書では、エストロゲン受容体アンタゴニスト及び選択的エストロゲン受容体モジュレーターのみならずまた、前記のようなアロマターゼインヒビターを包含するために使用される。
【0138】
用語「分化剤」は種々の方法で、細胞増殖を阻害し、分化を誘発することができる化合物を包含する。ビタミンD及びレチノイドは、広範な正常の及び悪性の細胞タイプの増殖及び分化を制御するのに重要な役割を果たすことが知られている。レチノイン酸代謝阻害剤(RAMBA)は、レチノイン酸のチトクロームP450−媒介異化作用を阻害することにより内在レチノイン酸のレベルを増加する。
【0139】
DNAメチル化の変化はヒト新生物におけるもっとも一般的な異常の1つである。選択される遺伝子のプロモーター内のメチル化亢進は通常、関与する遺伝子の不活性化を伴なう。用語「DNAメチルトランスフェラーゼインヒビター」は、DNAメチルトランスフェラーゼの薬理学的阻害及び腫瘍サプレッサーの遺伝子発現の再活性化により作用する化合物を示すために使用される。
【0140】
用語「キナーゼインヒビター」は細胞周期進行及びプログラムされた細胞死(細胞死)に関与するキナーゼの強力なインヒビターを含んでなる。
【0141】
用語「ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター」はRas及び他の細胞内タンパク質のファルネシル化を抑制するようにされた化合物を示すために使用される。それらは悪性細胞増殖及び生存に影響をもつことが示されている。
【0142】
用語「他のHDACインヒビター」は、限定はされないが、
−カルボキシレート、例えばブチレート、桂皮酸、4−フェニルブチレート又はバルプロ酸、
−ヒドロキサム酸、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ピペラジン含有SAHA類似体、二アリールヒドロキサメートA−161906及びそのカルボゾリルエーテル−、テトラヒドロピリジン−及びテトラロン−類似体、二環式アリール−N−ヒドロキシカルボキシアミド、ピロキシアミド、CG−1521、PXD−101、スルホンアミドヒドロキサム酸、LAQ−824、LBH−589、トリコスタチンA(TSA)、オキサムフラチン、スクリプタイド、スクリプタイド関連三環分子、m−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサム酸(CBHA)、CBHA−様ヒドロキサム酸、トラポキシン−ヒドロキサム酸類似体、CRA−024781、R306465及び関連ベンゾイル−及びヘテロアリール−ヒドロキサム酸、アミノスベレート及びマロニルジアミド、
−環式テトラペプチド、例えばトラポキシン、アピジシン、デプシペプチド、スピルコスタチン−関連化合物、RedFK−228、スルフヒドリル−含有環式テトラペプチド(SCOP)、ヒドロキサム酸含有環式テトラペプチド(CHAP)、TAN−174及びアズムアミド、
−ベンズアミド、例えばMS−275又はCI−994、あるいは
−デプデシン
を含んでなる。
【0143】
用語「ユビキチイン−プロテアソム経路のインヒビター」は細胞周期制御タンパク質を包含するプロテアソム中の細胞タンパク質の標的とされた破壊を阻害する化合物を識別するために使用される。
【0144】
癌の処置のための、本発明に従う化合物は、放射線照射と一緒に、前記のような患者に投与することができる。放射線照射はイオン化光線、そしてとりわけ癌マ光線、特に線形加速器により又は今日一般に使用されている放射性核種により放出されるものを意味する。放射性核種による腫瘍の照射は外部でも内部でもよい。
【0145】
本発明はまた、抗癌剤及び本発明に従うHDACインヒビターの本発明に従う組み合わせ物を対象にする。
【0146】
本発明はまた、例えば腫瘍細胞の増殖を抑制するための医学的治療における使用のための本発明に従う組み合わせ物を対象とする。
【0147】
本発明はまた、腫瘍細胞の増殖を抑制するための本発明に従う組み合わせ物を対象とする。
【0148】
本発明はまた、有効量の本発明に従う組み合わせ物を被験体に投与する工程を含んでなる、ヒトの被験者における腫瘍細胞の増殖を抑制する方法を対象とする。
【0149】
本発明は更に、有効量の本発明に従う組み合わせ物を投与することにより、形質転換細胞を包含する細胞の異常増殖を抑制する方法を提供する。
【0150】
他の医薬及びHDACインヒビターは同時に(例えば別の組成物又は単一組成物中で)又はどんな順序でも連続的に投与することができる。後者の場合には、2種の化合物は有益な又は相乗的効果が確実に達成されるのに十分な期間内そして量及び方法で投与されるであろう。投与の好ましい方法及び順序並びに組み合わせ物の各成分それぞれの投与量及び計画は、投与される特定のその他の医薬及びHDACインヒビター、それらの投与経路、処置される特定の腫瘍及び処置される特定の宿主に左右されるであろう。投与の最適な方法及び順序並びに投与量及び計画は、従来の方法を使用し、そして本明細書に提示された情報を考慮して当業者により容易に決定されることができる。
【0151】
白金配位化合物は有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき1〜500mg(mg/m)、例えば50〜400mg/m、特にシスプラチンに対しては約75mg/m、そしてカルボプラチンに対しては約300mg/mの用量で投与される。
【0152】
タキサン化合物は有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき50〜400mg(mg/m)、例えば75〜250mg/m、特にパクリタキセルに対しては約175〜250mg/m、そしてドセタキセルに対しては約75〜150mg/mの用量で投与される。
【0153】
カンプトテシン化合物は有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき0.1〜400mg(mg/m)、例えば1〜300mg/m、特にイリノテカンに対しては約100〜350mg/m、そしてトポテカンに対しては約1〜2mg/mの用量で投与される。
【0154】
抗腫瘍ポドフィロトキシン誘導体は有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき30〜300mg(mg/m)、例えば50〜250mg/m、特にエトポシドに対しては約35〜100mg/m、そしてテニポシドに対しては約50〜250mg/mの用量で投与される。
【0155】
抗腫瘍ビンカアルカロイドは有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき2〜30mg(mg/m)、特にビンブラスチンに対しては約3〜12mg/m、ビンクリスチンに対しては約1〜2mg/m、そしてビノレルビンに対しては約10〜30mg/mの用量で投与される。
【0156】
抗腫瘍ヌクレオシド誘導体は有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき200〜2500mg(mg/m)、例えば700〜1500mg/m、特に5−FUに対しては約200〜500mg/m、ゲムシタビンに対しては約800〜1200mg/m、そしてカペシタビンに対しては約1000〜2500mg/mの用量で投与される。
【0157】
ナイトロジェンマスタード又はニトロソ尿素のようなアルキル化剤は有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき100〜500mg(mg/m)、例えば120〜200mg/m、特にシクロホスホアミドに対しては約100〜500mg/m、クロランブシルに対しては約0.1〜0.2mg/m、カルムスチンに対しては約150〜200mg/m、そしてロムスチンに対しては約100〜150mg/mの用量で投与される。
【0158】
抗腫瘍アントラサイクリン誘導体は有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき10〜75mg(mg/m)、例えば15〜60mg/m、特にドキソルビシンに対しては約40〜75mg/m、ダウノルビシンに対しては約25〜45mg/m、そしてイダルビシンに対しては約10〜15mg/mの用量で投与される。
【0159】
トラストズマブは有利には、1コースの処置当たり、体表面積1平方メーターにつき1〜5mg(mg/m)、特に2〜4mg/mの用量で投与される。
【0160】
抗エストロゲン剤は有利には、特定の薬剤及び処置される状態に応じて1日に約1〜100mgの用量で投与される。タモキシフェンは有利には5〜50mg、好ましくは10〜20mgを1日2回の用量で経口投与され、治療効果を達成し、維持するために十分な期間治療を継続する。トレミフェンは有利には1日1回約60mgの用量で経口投与され、治療効果を達成し、維持するために十分な期間治療を継続する。アナストロゾールは有利には1日1回約1mgの用量で経口投与される。ドロロキシフェンは有利には1日1回約20〜100mgの用量で経口投与される。ラロキシフェンは有利には1日1回約60mgの用量で経口投与される。エキセメスタンは有利には1日1回約25mgの用量で経口投与される。
【0161】
これらの用量は例えば1コースの治療当たり1回、2回又は3回以上投与することができ、それを例えば7、14、21又は28日毎に反復することができる。
【0162】
それらの有用な薬理学的特性を考慮すると、本発明に従う組み合わせ物の成分、すなわち他の医薬及びDNAインヒビターは、投与目的のための種々の製薬学的剤形に調合することができる。成分は個々の製薬学的組成物中に別々に又は両成分を含有する単一の製薬学的組成物中に調合することができる。
【0163】
従って、本発明は1種又は複数の製薬学的担体と一緒に、他の医薬及びHDACインヒビターを含んでなる製薬学的組成物を対象とする。
【0164】
本発明はまた、1種又は複数の製薬学的担体と一緒に、抗癌剤及び本発明に従うHDACインヒビターを含んでなる製薬学的組成物の形態の本発明に従う組み合わせ物を対象とする。
【0165】
本発明はまた、腫瘍細胞の増殖を抑制するための製薬学的組成物の製造における本発明に従う組み合わせ物の使用を対象とする。
【0166】
本発明は更に、癌を罹患する患者の処置における、同時の、別々の又は連続的使用のための組み合わせ調製物としての、第1の有効成分として本発明に従うHDACインヒビター及び第2の有効成分として抗癌剤を含有する製品を対象とする。
【0167】
実験部門
以下の実施例は本発明を具体的に示す。
【0168】
以後、「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミド、「DCM」はジクロロメタン、「THF」はテトラヒドロフラン、「TFA」はトリフルオロ酢酸、「EtOAc」は酢酸エチル、「EtOH」はエタノール、「MeOH」はメタノール、「DIPE」はジイソプロピルエーテル、「EDC」はN’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、一塩酸そして「HOBT」は1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾールと定義される。
【0169】
A.中間体化合物の製造
実施例A1
a)中間体1の製造
【0170】
【化26】

【0171】
2−[4−(アミノメチル)−1−ピペリジニル]−5−ピリミジンカルボン酸、エチルエステル(0.0050モル)及びジメトキシ−アセトアルデヒド(0.0065モル)の混合物(30mlのTHF中)を50℃で1時間撹拌した。混合物を室温に冷却した。ナトリウムトリアセトキシホウ水素化物(0.0065モル)を添加し、反応混合物を室温で1晩震盪した。DCM(20ml)を添加した。反応物を水(10ml)及びNaHCOでクエンチした。層を分離した。有機層を乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させると、中間体1を収穫した(更に精製せずに次の反応工程で使用した)。
b)中間体2の製造
【0172】
【化27】

【0173】
中間体1(0.0010モル)及びトリエチルアミン(0.0020モル)をDCM(5ml)に溶解した。1−イソシアナト−4−フェノキシ−ベンゼン(0.0015モル)を添加した。反応混合物を室温で1晩震盪した。次に、トリス−(2−アミノエチル)−アミンポリスチレンHL(Novabiochem;Cat.No.01−64−0170)(0.0016モル)を添加した。反応混合物を室温で3時間震盪し、次に濾過し、濾液を濃縮すると、中間体2を収穫した。
c)中間体3の製造
【0174】
【化28】

【0175】
ギ酸(2ml)を中間体2(0.0010モル)に添加した。反応混合物を閉鎖反応容器中で50℃で1時間震盪した。溶媒をGenevac中で50℃で蒸発させた。残渣をDCM(15ml)中に取り、10%NaHCO水溶液(2ml)で2回洗浄し、乾燥し、次に再度DCMですすいだ。溶媒を蒸発させると中間体3を収穫した(更に精製せずに次の反応工程で使用した)。
d)中間体4の製造
【0176】
【化29】

【0177】
中間体3(0.0005モル)をTHF(4ml)に溶解した。1Nの水酸化ナトリウム(2ml)を添加し、反応混合物を閉鎖容器中で室温で1晩震盪した。1Nの塩酸(2ml)を添加し、混合し、次に溶媒を蒸発させると、中間体4を収穫した(更に精製せずに次の反応工程に使用した)。
e)中間体5の製造
【0178】
【化30】

【0179】
中間体4(最高0.0005モル)、N’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、一塩酸(0.00065モル)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(0.00065モル)及びトリエチルアミン(0.00075モル)をTHF(15ml)に室温で溶解した。次にO−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミン[6723−30−4](0.00065モル)を添加し、反応混合物を室温で6時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。DCM(25ml)を添加した。有機層を分離し、10%NaHCO水溶液(3ml)で洗浄し、次にExtrelut(R)カートリッジを通して乾燥(濾過)し、溶媒を蒸発させた。各残渣を逆相分取HPLCにより精製した。生成物画分を回収し、溶媒を蒸発させると中間体5を収穫した。
【0180】
以下の表は前記実施例の1つに従って製造された中間体を挙げる。
【0181】
【表2】

【0182】
実施例A2
a)中間体10の製造
【0183】
【化31】

【0184】
中間体1(0.0003モル)をDCM(26ml)中に取った。1−フルオロ−4−イソシアナト−ベンゼン(0.0004モル)を添加した。次いで、トリエチルアミン(0.0006モル)を添加した。反応混合物を室温で1晩震盪した。トリス−(2−アミノエチル)−アミンポリスチレンHL(Novabiochem;Cat.No.01−64−0170)(0.0004モル)を添加し,混合物を室温で3時間震盪し、次に濾過し、濾液を蒸発させると、中間体10を収穫した。
b)中間体11の製造
【0185】
【化32】

【0186】
ギ酸(1ml)を中間体10(0.0003モル)に添加した。反応混合物を50℃で1時間震盪した。溶媒を蒸発すると中間体11を収穫した。
c)中間体12の製造
【0187】
【化33】

【0188】
1Nの水酸化ナトリウム/THFの1:1水溶液(0.0010モル)を中間体11(0.0003モル)に添加し、混合物を50℃で1晩震盪した。1Nの塩酸水溶液(0.0010モル)を添加し、溶媒を蒸発させると中間体12を収穫した。
d)中間体13の製造
【0189】
【化34】

【0190】
中間体12(<0.0003モル)をDMF(1ml)に溶解した。次いでN’−(エ
チルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、一塩酸(0.0004モル)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(0.0004モル)及びトリエチルアミン(0.00045モル)の溶液(3mlのTHF及び1mlのDCM中)を添加した。次いで、O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミン(0.0004モル)の溶液(1mlのDCM中)を添加した。反応混合物を室温で1晩震盪した。DCM(20ml)を添加し、反応混合物を10%NaHCO水溶液で洗浄し、次いでExtrelut(R)上で乾燥した。濾液を蒸発させた。残渣を逆相HPLCにより精製した。生成物画分を回収し、溶媒を蒸発させると中間体13を収穫した。
【0191】
以下の表は前記の実施例の1つに従って製造された中間体を挙げる。
【0192】
【表3】

【0193】
実施例A3
a)中間体14の製造
【0194】
【化35】

【0195】
中間体1(0.0010モル)及びトリエチルアミン(0.0020モル)をDCM(5ml)に溶解した。1−イソシアナト−ナフタレン(0.0015モル)を添加した。次いで、トリス−(2−アミノエチル)−アミンポリスチレンHL(Novabiochem;Cat.No.01−64−0170)(0.0016モル)を添加した。反応混合物を室温で3時間震盪し、次に濾過し、濾液を蒸発させると、中間体14を収穫した。b)中間体15の製造
【0196】
【化36】

【0197】
ギ酸(2ml)を中間体14(0.0010モル)に添加した。反応混合物を閉鎖反応容器中で50℃で1時間震盪した。溶媒を50℃で蒸発させた。残渣をDCM(15ml)中に取り、10%NaHCO水溶液(2ml)で2回洗浄し、次いでExtrelut(R)上で乾燥し、次いでDCMで再度すすいだ。溶媒を蒸発させると中間体15を収穫した(更に精製せずに次の反応工程に使用した)。
c)中間体16の製造
【0198】
【化37】

【0199】
中間体15(0.0005モル)及びトリエチルアミン(0.100g)の混合物(30mlのTHF中)を触媒として10%Pd/C(0.100g)とともに室温で1晩水素化した。H(1当量)の取り込み後、触媒をジカライト上で濾去し、濾液を蒸発させると中間体16を収穫した。
d)中間体17の製造
【0200】
【化38】

【0201】
中間体16(0.0005モル)を1Nの水酸化ナトリウム水溶液(3ml)中に溶解した。THF(3ml)を添加した。反応混合物を閉鎖容器内で室温で1晩震盪した。1Nの塩酸水溶液(3ml)を添加し、溶媒を蒸発させると中間体17を収穫した(更に精製せずに次の反応工程に使用した)。
e)中間体18の製造
【0202】
【化39】

【0203】
中間体17(0.0005モル)及びN’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、一塩酸(0.00065モル)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(0.00065モル)及びトリエチルアミン(0.00075モル)をTHF(15ml)中に室温で溶解した。次いで、O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミン(0.00065モル)を添加した。反応混合物を室温で6時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。DCM(25ml)を残渣に添加し、有機溶液を10%NaHCO水溶液(3ml)で洗浄し、次いでExtrelut(R)カートリッジを通して乾燥した。溶媒を蒸発させた。残渣を分取逆相HPLCにより精製した。生成物画分を回収し、溶媒を蒸発させると0.026gの中間体18を収穫した。
【0204】
実施例A4
a)中間体19の製造
【0205】
【化40】

【0206】
2−[4−(アミノメチル)−1−ピペリジニル]−5−ピリミジンカルボン酸、エチルエステル(0.0189モル)、α−クロロ−ベンゼン酢酸、エチルエステル(0.0199モル)及び炭酸カリウム(5.2g)の混合物(125mlのアセトニトリル中)を15時間撹拌、還流し、水中に注入し、EtOAcで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(8.5g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(15〜40μm)(溶離剤:DCM/EtOAc 95/5〜90/10)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると、3.5g(43%)の中間体19を収穫した。
b)中間体20の製造
【0207】
【化41】

【0208】
4−イソシアナト−ベンゾニトリル(0.0021モル)を中間体19(0.0014モル)の混合物(25mlのTHF中)に添加した。混合物を室温で24時間撹拌し、水中に注入し、EtOAcで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(1g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(5μm)(溶離剤:DCM/MeOH 100/0〜94/6)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させた。残渣(0.47g)をEtOAc中に取り、乾燥すると、0.36gの中間体20、融点204℃を収穫した。
c)中間体21の製造
【0209】
【化42】

【0210】
中間体20(0.0007モル)の混合物(15mlの3Nの塩酸及び15mlのジオキサン中)を8時間撹拌、還流した。溶媒を蒸発させた。水中(30ml)を添加した。沈殿物を濾取し、水、次いでDIPEで洗浄し、乾燥すると0.34g(94%)の中間体21を収穫した。
d)中間体22の製造
【0211】
【化43】

【0212】
1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(0.001モル)、次いでN’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、一塩酸(0.001モル)を中間体21(0.0007モル)、O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミン(0.001モル)及びトリエチルアミン(0.002モル)の溶液(35mlのDCM/THF中)にN流下で添加した。混合物を室温で3日間撹拌し、水中に注入し、DCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(0.5g)をkromasil(R)上カラムクロマトグラフィー(5μm)(溶離剤:DCM/MeOH 100/0〜95/5)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させた。残渣(0.3g)をDIPE/ジエチルエーテルから結晶化させた。沈殿物を濾取し、乾燥した。残渣(0.25g)を70℃で4時間乾燥すると、0.22g(54%)の中間体22、融点182℃を収穫した。
【0213】
実施例A5
a)中間体23の製造
【0214】
【化44】

【0215】
2−[4−(アミノメチル)−1−ピペリジニル]−5−ピリミジンカルボン酸、エチルエステル(0.0072モル)の混合物(40mlのTHF及び40mlの1Nの水酸化ナトリウム中)を室温で1晩撹拌した。1Nの塩酸(40ml)を添加した。混合物を10分間撹拌した。炭酸ナトリウム(0.0216モル)を添加した。混合物を10分間撹拌した。1−[[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]オキシ]−2,5−ピロリジンジオン(0.0072モル)を分割して添加した。混合物を室温で6時間撹拌し、次いで0℃に冷却し、塩酸で酸性化した。沈殿物を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥すると4.1g(100%)の中間体23を収穫した。
b)中間体24の製造
【0216】
【化45】

【0217】
トリエチルアミン(0.02モル)、N’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、一塩酸(0.0082モル)及び1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(0.0082モル)を中間体23(0.0068モル)の混合物(200mlのDCM/THF中)にN流下、室温で添加した。混合物を室温で15分間撹拌した。O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミン(0.0082モル)を添加した。混合物を室温で48時間撹拌し、水中に注入し、DCMで抽出した。有機層を10%NaHCOで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(4g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(15〜40μm)(溶離剤:DCM/MeOH/NHOH 98/2/0.1)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると3.4g(89%)の中間体24を収穫した。
c)中間体25の製造
【0218】
【化46】

【0219】
中間体24(0.0355モル)及びピペリジン(0.089モル)の混合物(400mlのDCM中)を35℃で75時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。残渣をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(15〜40μm)(溶離剤:DCM/MeOH/NHOH
80/20/2)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると6.7g(56%)を収穫した。画分(0.79g)をジエチルエーテルから結晶化した。沈殿物を濾取し、乾燥すると、0.62gの中間体25、融点129℃を収穫した。
d)中間体26の製造
【0220】
【化47】

【0221】
中間体25(0.0053モル)、2−ブロモ−プロパン酸、メチルエステル(0.0056モル)及び炭酸カリウム(0.01モル)の混合物(75mlのアセトニトリル中)を3時間撹拌、還流し、次いで水中に注入し、DCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(2.2g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(15〜40μm)(溶離剤:DCM/MeOH/NHOH 97/30/0.1〜96/4/0.5)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると0.62g(28%)の中間体26を収穫した。
e)中間体27の製造
【0222】
【化48】

【0223】
4−イソシアナト−1,1’−ビフェニル(0.0009モル)を中間体26(0.0006モル)の溶液(14mlのTHF中)に室温で添加した。混合物を室温で72時間撹拌し、水中に注入し、EtOAcで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。この画分(0.75g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(5μm)(溶離剤:DCM/MeOH 100/0〜90/10)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると0.15g(43%)の中間体27を収穫した。
【0224】
実施例A6
a)中間体32の製造
【0225】
【化49】

【0226】
2−クロロ−5−ピリミジンカルボン酸、メチルエステル(0.058モル)の溶液(80mlのN,N−ジメチル−アセトアミド中)を4−ピペリジンメタンアミン(0.116モル)及びN−エチル−N−(1−メチルエチル)−2−プロパンアミン(0.145モル)の溶液(150mlのN,N−ジメチル−アセトアミド中)にN流下で滴下した。混合物を室温で1時間30分間撹拌し、氷水中に注入し、EtOAc、次いでDCMで抽出した。有機層を水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。
残渣をDIPEから結晶化した。沈殿物を濾取し、乾燥すると10g(65%)の中間体32を収穫した。
b)中間体33の製造
【0227】
【化50】

【0228】
中間体32(0.012モル)及び炭酸カリウム(0.0383モル)の混合物(150mlのアセトニトリル中)を2時間撹拌、還流した。2−ブロモ−1−ジエトキシ−エタン(0.0479モル)を添加した。混合物を15時間撹拌、還流し、水中に注入し、DCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(8g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(15〜40μm)(溶離剤:DCM/MeOH/NHOH 98/2/0.1)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると1.9g(43%)の中間体33を収穫した。
c)中間体34の製造
【0229】
【化51】

【0230】
中間体33(0.0022モル)及びトリエチルアミン(0.003モル)の溶液(25mlのTHF中)をトリクロロ−メタノール、炭酸塩(2:1)(0.0009モル)の溶液(15mlのTHF中)に5℃で滴下した。混合物を室温で2時間撹拌した。2−メチル−1H−インドール−3−エタンアミン(0.0026モル)及びトリエチルアミン(0.003モル)の溶液(25mlのTHF中)を滴下した。混合物を50℃で15時間撹拌し、氷水中に注入し、EtOAcで2回抽出した。有機層を飽和NaClで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(1.6g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(5μm)(溶離剤:DCM/MeOH/NHOH 99/1/0.05〜94/6/0.3)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると0.73gの中間体34を収穫した。
d)中間体35の製造
【0231】
【化52】

【0232】
中間体34(0.0013モル)の混合物(20mlの1Nの塩酸及び20mlのMeOH中)を55℃で3時間撹拌した。メタノールを蒸発させた。残渣を炭酸カリウムで塩基性にした。混合物をEtOAcで抽出した。有機層を飽和NaClで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(0.64g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(15〜40μm)(溶離剤:DCM/MeOH/NHOH 97/3/0.1)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると0.52g(87%)の中間体35、融点85℃を収穫した。
e)中間体36の製造
【0233】
【化53】

【0234】
中間体35(0.0011モル)及び水酸化リチウム(0.022モル)の混合物(20mlのTHF及び10mlの水中)を室温で15時間撹拌し、次いでpHが4に設定されるまで3Nの塩酸中に取った。混合物をDCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させると0.5g(100%)の中間体36を収穫した。
f)中間体37の製造
【0235】
【化54】

【0236】
N’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、一塩酸(0.0016モル)及び1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(0.0016モル)を中間体36(0.001モル)、O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミン(0.0016モル)及びトリエチルアミン(0.0032モル)の溶液(40mlのDCM/THF(50/50)中)に室温で添加した。混合物を室温で48時間撹拌し、水中に注入し、DCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(0.74g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(10μm)(溶離剤:DCM/MeOH/NHOH 97/3/0.1)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると0.49g(80%)の中間体37、融点116℃を収穫した。
【0237】
実施例A7
a)中間体38の製造
【0238】
【化55】

【0239】
2−(メチルスルホニル)−5−ピリミジンカルボン酸、エチルエステル(0.0118モル)の溶液(30mlのアセトニトリル中)を(2−モルホリニルメチル)−カルバミン酸、1,1−ジメチルエチルエステル(0.0098モル)及び炭酸カリウム(0.0196モル)の溶液(80mlのアセトニトリル中)にN流下で滴下した。混合物を室温で12時間撹拌し、水中に注入し、EtOAcで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発乾燥させた。残渣(5.6g)をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(15〜35μm)(溶離剤:DCM/MeOH 99/1)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させた。残渣をジエチルエーテルから結晶化した。沈殿物を濾取し、乾燥すると0.3gの中間体37、融点100℃を収穫した。b)中間体39の製造
【0240】
【化56】

【0241】
TFA(7.5ml)を中間体38(0.037モル)の混合物(150mlのDCM中)に0℃で添加した。混合物を室温で48時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。ジエチルエーテルを添加した。沈殿物を濾取し、乾燥すると13.5g(96%)の中間体39、融点180℃を収穫した。
c)中間体40の製造
【0242】
【化57】

【0243】
中間体39(0.0105モル)を10%炭酸カリウム(100ml)の溶液(100mlのDCM中)に添加した。混合物を室温で15分間撹拌し、次いでDCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させると2.6gの中間体40を収穫した。
【0244】
実施例A8
a)中間体42の製造
【0245】
【化58】

【0246】
2−[4−(アミノメチル)−1−ピペリジニル]−5−ピリミジンカルボン酸、エチルエステル(0.0007モル)、2−ブロモ−プロパン酸、メチルエステル(0.0007モル)及び炭酸カリウム(0.0015モル)の混合物(5mlのアセトニトリル中)を3時間撹拌、還流し、水中に注入し、DCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させると0.24gの中間体42を収穫した。
b)中間体43の製造
【0247】
【化59】

【0248】
4−イソシアナト−ベンゾニトリル(0.0006モル)を中間体42(0.0006モル)の溶液(15mlのTHF中)に室温で添加した。混合物を15時間撹拌、還流した。4−イソシアナト−ベンゾニトリル(1当量)を添加した。混合物を24時間撹拌還流し、水中に注入し、DCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を最少量のDCM中に取った。沈殿物を濾去した。濾液を蒸発させ、シリカゲル上カラムクロマトグラフィー(20μm)(溶離剤:DCM/MeOH/NHOH 98/2/0.1)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると0.16g(48%)の中間体43を収穫した。
c)中間体44の製造
【0249】
【化60】

【0250】
中間体43(0.0003モル)及び水酸化リチウム一水和物(0.0007モル)の混合物(5mlのTHF及び2mlの水中)を室温で15時間撹拌した。1Nの塩酸を添加した。混合物を蒸発乾燥させた。この生成物を次の反応工程に直接使用すると中間体44を収穫した。
d)中間体45の製造
【0251】
【化61】

【0252】
中間体44(0.0003モル)、O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミン(0.0004モル)、EDC(0.0004モル)、HOBT(0.0004モル)及びトリエチルアミン(0.0005モル)の混合物(20mlのDCM/THF中)を室温で48時間撹拌し、水中に注入し、DCMで抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(0.2g)をkromasil(R)上カラムクロマトグラフィー(10μm)(溶離剤:DCM/MeOH 99/1)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させると0.108g(59%)の中間体45、融点120℃を収穫した。
【0253】
B.最終化合物の製造
実施例B1
化合物1の製造
【0254】
【化62】

【0255】
5%TFA(2mlのDCM/MeOH中)を中間体18(0.00005モル)に添加し、生成された溶液をシール管中で室温で1晩震盪した。溶媒を室温、N流下で蒸発させた。5%TFA(DCM/MeOH中)を再度添加し、混合物を脱保護が完了するまで(LC/MSにより確認)震盪した。溶媒を室温、N流下で蒸発させた。1,4−ジオキサン(2ml)を添加し、40℃で蒸発手順を反復すると最終生成物を与えて、0.022gの化合物1を収穫した。
【0256】
実施例B2
化合物2の製造
【0257】
【化63】

【0258】
5%TFA(4mlのDCM/MeOH 1/1中)を中間体5(最大0.0005モル)に添加し、生成された溶液をシール管中で室温で1晩震盪した。溶媒を室温、N流下で蒸発させた。5%TFA(4mlのDCM/MeOH 1/1中)を再度添加し、混合物を脱保護が完了するまで(LC/MSにより確認)震盪した。溶媒を室温、N流下で蒸発させた。1,4−ジオキサン(2ml)を添加し、40℃で蒸発手順を反復すると最終生成物を与えて、化合物2を収穫した。
【0259】
実施例B3
化合物3の製造
【0260】
【化64】

【0261】
5%TFA(4mlのDCM/MeOH 1/1中)を中間体9(最大0.0005モル)に添加し、生成された溶液をシール管中で室温で1晩震盪した。溶媒を室温、N流下で蒸発させた。5%TFA(4mlのDCM/MeOH 1/1中)を再度添加し、混合物を脱保護が完了するまで(LC/MSにより確認)震盪した。溶媒を室温、N流下で蒸発させた。1,4−ジオキサン(2ml)を添加し、40℃で蒸発手順を反復すると化合物3を与えた。
【0262】
実施例B4
化合物4の製造
【0263】
【化65】

【0264】
5%TFA(2mlのDCM/MeOH中)を中間体13(0.0003モル)に添加し、生成された溶液を室温で3日間静置した。溶媒をN流下で蒸発させ、生成物が純粋になるまでこの手順を反復すると化合物4を収穫した。
【0265】
実施例B5
化合物5の製造
【0266】
【化66】

【0267】
中間体22(0.0003モル)(1mlのTFA中)、MeOH(20ml)及びDCM(5ml)の混合物を室温で96時間撹拌した。DCMを蒸発させた。沈殿物を濾取し、最少量のMeOH、次いでジエチルエーテルで洗浄し、乾燥すると0.135g(83%)の化合物5、融点187℃を収穫した。
【0268】
実施例B6
化合物6の製造
【0269】
【化67】

【0270】
TFA(0.5ml)を中間体27(0.0002モル)の溶液(10mlのMeOH中)に5℃で添加した。混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を蒸発乾燥させた。残渣をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(25〜40μm)(溶離剤:DCM/MeOH/水 80/20/2)により精製した。純粋な画分を回収し、溶媒を蒸発させた。残渣(0.09g)をジエチルエーテルに取った。沈殿物を濾取し、乾燥すると0.072g(56%)の化合物6、融点169℃を収穫した。
【0271】
実施例B7
化合物12の製造
【0272】
【化68】

【0273】
5%TFA(2mlのDCM/MeOH中)を中間体31(0.0003モル)に添加し、生成された溶液を室温で3日間静置した。溶媒をN流下で蒸発させ、生成物が純粋になるまでこの手順を反復すると化合物12を収穫した。
【0274】
実施例B8
化合物35の製造
【0275】
【化69】

【0276】
中間体37(0.0008モル)の混合物(2.2mlのTFA及び44mlのMeOH中)を室温で24時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。沈殿物を濾過し、MeOH、次いでジエチルエーテルで洗浄すると0.31g(84%)の化合物35、融点246℃を収穫した。
【0277】
実施例B9
化合物36の製造
【0278】
【化70】

【0279】
中間体45(0.0002モル)の混合物(0.5mlのTFA及び10mlのMeOH中)を室温で24時間撹拌し、溶媒を蒸発乾燥させた。残渣をジエチルエーテル/2−プロパノンから結晶化した。沈殿物を濾取し、乾燥すると0.05g(66%)の化合物36、融点135℃を収穫した。
【0280】
【表4】

【0281】
【表5】

【0282】
【表6】

【0283】
【表7】

【0284】
一般的HPLC方法A
HPLC勾配は、脱気装置、自動サンプル採取装置、カラムオーブン(40℃に設定)及びDAD検出器を伴なう4基ポンプよりなる、Alliance HT 2790(Waters)システムにより供給された。カラムからの流れはMS検出器に分離された。MS検出器はエレクトロスプレイイオン化源を伴なって設定された。質量スペクトルは0.1秒の滞留時間を使用して1秒間に100〜1000を走査することにより獲得した。キャピラリーニードル電圧は3kVであり、イオン化源温度は140℃に維持された。ネブライザーガスとして窒素を使用した。データ獲得はWaters−Micromass
MassLynx−Openlynxデータシステムにより実施した。
【0285】
一般的HPLC方法B
HPLC勾配は脱気装置、自動サンプル採取装置及びDAD検出器を伴なう4基ポンプよりなるAlliance HT 2795(Waters)システムにより供給された。カラムからの流れはMS検出器に分離された。MS検出器は電子スプレイイオン発生源を伴なって設定された。キャピラリーニードル電圧は3kVであり、イオン化源温度は100℃に維持された。ネブライザーガスとして窒素を使用した。データ獲得はWaters−Micromass MassLynx−Openlynxデータシステムにより実施した。
【0286】
方法1
一般的方法Aに加えて:1.6ml/分の流速でXterra MS C18(3.5mm、4.6×100mm)上で逆相HPLCを実施した。3移動相(移動相A:95%の25mMの酢酸アンモニウム+5%アセトニトリル;移動相B:アセトニトリル;移動相C:メタノール)を使用して、6.5分間100%A〜50%B及び50%Cから、1分間100%Bに、1分間100%Bの勾配条件を実施し、そして1.5分間100%Aで再平衡化させた。10μlの注入容量を使用した。コーン電圧は正のイオン化モードに
対して10Vであり、負のイオン化モードに対して20Vであった。
【0287】
方法2
一般的方法Aに加えて:1.2ml/分の流速でXterra MS C18(3.5mm、4.6×100mm)上で逆相HPLCを実施した。3移動相(移動相A:95%の25mMの酢酸アンモニウム+5%アセトニトリル;移動相B:アセトニトリル;移動相C:メタノール)を使用して、10分間100%A〜50%B及び50%Cから、1分間100%Bに、3分間100%Bの勾配条件を実施し、そして1.5分間100%Aで再平衡化させた。10μlの注入容量を使用した。
【0288】
方法3
一般的方法Bに加えて:1.0ml/分の流速でXterra MS C18(5μmm、3.9×150mm)上で逆相HPLCを実施した。2移動相(移動相A:100%の7mMの酢酸アンモニウム;移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、85%A、15%B(3分間維持)〜5分間20%A,80%B、6分間20%A及び80%Bの勾配条件を実施し、そして3分間最初の条件で再平衡させた。20μlの注入容量を使用した。コーン電圧は正のイオン化モードに対して20Vであった。質量スペクトルは0.08秒のインタースキャン遅延を使用して0.8秒間に100〜900を走査することにより獲得した。
【0289】
方法4
一般的方法Bに加えて:イオン化が正及び負双方であることを除いて方法3と同様であった。コーン電圧は正及び負の双方のイオン化モードに対して20Vであった。
【0290】
C.薬理学的実施例
ヒストン・デアセチラーゼの阻害のインビトロアッセイ(実施例C.1参照)は式(I)の化合物により得られるHDAC酵素活性の阻害を測定する。
【0291】
式(I)の化合物の細胞活性は、細胞毒性又は生存率に対する比色法を使用して、A2780腫瘍細胞について測定した(Mosmann Tim,Journal of Immunological Methods 65:55−63,1983)(実施例C.2参照)。
【0292】
化合物の溶解度は溶液中に滞留する化合物の能力を測定する。異なるpHにおける化合物の溶解度を化学発光窒素検出器の使用により測定することができる(実施例C.3参照)。
【0293】
DNA損傷剤及びヒストン・デアセチラーゼインヒビターを包含する広範な抗腫瘍剤がp21タンパク質を活性化することが示されている。DNA損傷剤は腫瘍サプレッサーp53によりp21遺伝子を活性化し、他方ヒストン・デアセチラーゼインヒビターは転写因子Sp1によりp21遺伝子を転写により活性化する。従って、DNA損傷剤はp21プロモーターをp53反応性要素により活性化し、他方、ヒストン・デアセチラーゼインヒビターはsp1部位(TATAボックスに対して−60bp〜+40bp領域に位置する)によりp21プロモーターを活性化し、両者がp21タンパク質の増加した発現をもたらす。細胞中のp21プロモーターがp53反応性要素を含まないp21の1300bpプロモーターフラグメントよりなる時は、それに従ってDNA損傷剤に非反応性である。化合物のp21を誘発する能力は幾つかの方法で評価することができる。第1の方法は腫瘍細胞を問題の化合物で処理し、細胞溶解後に、p21酵素結合イムノソルベントアッセイ(OncogeneのWAF1 ELISA)によりp21誘動を検出する。p21アッセイはマウスのモノクローナル及びウサギのポリクローナル抗体両者を使用する「サ
ンドイッチ」酵素免疫アッセイである。ヒトp21タンパク質に特異的なウサギのポリクローナル抗体はキット中に提供されるプラスチック壁の表面上に固定されている。アッセイされるサンプル中に存在するいずれのp21も、捕捉抗体に結合するであろう。ビオチニル化検出モノクローナル抗体はまたヒトp21タンパク質を認識し、捕捉抗体により保持されていたいずれのp21にも結合するであろう。検出抗体は順次、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−共役ストレプトアビジンにより結合される。ホースラディッシュペルオキシダーゼはその強度がプレートに結合されたp21タンパク質の量に比例する、無色の溶液から青色溶液(又は停止試薬の添加後は黄色)への発色基剤のテトラーメチルベンジジンの転化を触媒する。発色反応生成物を分光光度計を使用して定量する。定量はp21(凍結乾燥して提供される)の既知の濃度を使用する標準曲線の構成により達成される。このアッセイはDNA損傷の結果として又はヒストン・デアセチラーゼ阻害の結果としてのp21誘発量を測定する(実施例C.4.a.を参照)。
【0294】
もう1つの方法は細胞レベルのHDAC阻害の結果としてp21を誘発する化合物の能力を試験する。細胞はp53反応性要素を含有しないp21の1300bpプロモーターフラグメントを含有する発現ベクトルで安定にトランスフェクションすることができ、そこで対照レベルに比較してリポーター遺伝子発現の増加が化合物をp21誘発能をもつものと識別する。リポーター遺伝子は蛍光タンパク質であり、リポーター遺伝子の発現は発光される蛍光の量として測定される(実施例C.4.b.参照)。
【0295】
特異的HDACインヒビターは豊富なCYP P450タンパク質のような他の酵素を阻害するべきではない。CYP P450(大腸菌発現)タンパク質3A4、2D6及び2C9はそれらの特異的基質を蛍光分子に転化させる。CYP3A4タンパク質は7−ベンジルオキシ−トリフルオロメチルクマリン(BFC)を7−ヒドロキシ−トリフルオロメチルクマリンに転化させる。CYP2D6タンパク質は3−[2−(N,N−ジエチル−N−メチルアミノ)エチル]−7−メトキシ−4−メチルクマリン(AMMC)を3−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル]−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン塩酸に転化し、そしてCYP2C9タンパク質は7−メトキシ−4−トリフルオロメチルクマリン(MFC)を7−ヒドロキシ−トリフルオロメチルクマリンに転化させる。酵素反応を阻害する化合物は蛍光信号の減少をもたらすであろう(実施例C.5参照)。
【0296】
実施例C.1.
ヒストン・デアセチラーゼの阻害のインビトロアッセイ
HDAC蛍光活性アッセイ/Biomolの薬剤発見キット(カタログ番号:AK−500−0001)を使用した。HDAC蛍光活性アッセイはFluor de Lys(Fluorogenic Histone deAcetylase Lysyl(蛍光発生ヒストン・デアセチラーゼリシル))基質及び発色剤の組み合わせ物に基づく。Fluor de Lys基剤はアセチル化リシン側鎖を含んでなる。その基質の脱アセチル化は、第2工程において、Fluor de Lys発色剤による処理が発蛍光団を生成するように基剤を感受性にさせる。HeLa核抽出物(供給会社:Biomol)を75μMの基質とともに60μg/mlにおいてインキュベートした。Fluor de Lys基質を25mMのトリス、137mMのNaCl、2.7mMのKCl及び1mMのMgCl.6HO(pH7.4)を含有するバッファー中に添加した。30分後、1容量の発色剤を添加した。発蛍光団を355nm光線で励起し、発光(450nm)を蛍光プレート読み取り装置上で検出した。各実験につき、対照(HeLa核抽出物及びバッファーを含有)、ブランクインキュベート(バッファーを含有するが、HeLa核抽出物を含まない)及びサンプル(DMSOに溶解され、更にバッファー及びHeLa核抽出物中に希釈された化合物を含有)を平行して実施した。第1に、化合物を10−5Mの濃度で試験した。化合物が10−5Mで活性を示した時に、そこで化合物が10−5Mと10−9Mの間の濃度で試験される濃度−反応曲線を作成した。すべてのサンプルを4回試験
した。各試験において、ブランク値を対照及びサンプル値の両方から差し引いた。対照サンプルは100%の基質の脱アセチル化を表した。各サンプルに対する蛍光は対照の平均値の百分率として表した。適当なIC50−値(代謝物量を対照の50%に減少させるために要する薬剤濃度)を漸増データに対するprobit分析を使用して計算した。ここで試験化合物の効果はpIC50(IC50−値のマイナス対数値)として表される(表F−3参照)。
【0297】
実施例C.2.
A2780細胞に対する抗増殖作用の測定
試験されるすべての化合物をDMSOに溶解し、更に培養培地中に希釈した。細胞増殖アッセイにおける最終DMSO濃度は0.1%(v/v)を決して超えなかった。対照は化合物を含まずにA2780細胞及びDMSOを含有し、そしてブランクはDMSOを含有したが、細胞を含まなかった。MTTをPBS中5mg/mlに溶解した。NaOH(1N)でpH10.5にバッファーされた、0.1Mのグリシン及び0.1MのNaClよりなるグリシンバッファーを製造した(すべての試薬はMerckから購入した)。ヒトA2780卵巣ガン細胞(T.C.Hamilton博士[Fox Chase Cancer Centre,Pennsylvania,USA]からの提供品)を、2mMのL−グルタミン、50μg/mlゲンタマイシン及び10%のウシ胎仔血清を添加されたRPMI 1640培地中で培養した。細胞を37℃の湿潤化5%CO雰囲気内で単層培養物として定常的に維持した。細胞は1:40の分離比率のトリプシン/EDTA溶液を使用して、毎週1回通過させた(passaged)。すべての培地及び補助物はLife Technologiesから購入した。細胞はGen−Probe マイコプラズマ組織培養キット(供給会社:BioMerieux)を使用して決定されるようにマイコプラズマ汚染はなかった。細胞をNUNCTM96−ウェル培養プレート(供給会社:Life Technologies)中に播種し、1晩プラスチックに付着させた。プレート付着に使用された密度は,200μlの培地総量でウェル当たり1500の細胞であった。プレートに細胞付着後に、培地を変え、薬剤及び/又は溶媒を200μlの最終容量まで添加した。4日間のインキュベート後、培地を200μlの新鮮な培地と交換し、細胞密度及び生存性をMTT−基剤のアッセイを使用して測定した。各ウェルに対し、25μlのMTT溶液を添加し、細胞を更に37℃で2時間インキュベートした。次いで培地を注意して吸引し、青色のMTT−フォルマザン生成物を、25μlのグリシンバッファー、次いで100μlのDMSOの添加により可溶化させた。微量試験プレートを微量プレートシェーカー上で10分間震盪し、540nmにおける吸収をEmax 96−ウェル分光比色計(供給会社:Sopachem)を使用して測定した。1回の実験中、各実験条件に対する結果は3回の重複ウェルの平均である。最初のスクリーニングの目的のためには、化合物を10−6Mの単一の固定濃度で試験した。有効化合物に対しては実験を反復して、完全な濃度−反応曲線を確立した。各実験に対し、対照(薬剤を含まない)及びブランクインキュベート(細胞も薬剤も含まない)を平行して実施した。ブランク値をすべての対照及びサンプル値から差し引いた。各サンプルに対し、細胞増殖に対する平均値(吸収単位における)は対照の細胞増殖の平均値の百分率として表された。適当な場合には、IC50−値(対照の50%まで細胞増殖を減少させるために要する薬剤の濃度)を漸増データに対するprobit分析を使用して計算した(Finney,D.J.,Probit Analyses,2nd Ed.Chapter 10,Graded Responses,Cambridge University Press,Cambridge 1962)。ここで試験化合物の効果はpIC50(IC50−値のマイナス対数値)として表される(表F−3参照)。
【0298】
実施例C.3.
溶解度/安定性
異なるpHにおける化合物の溶解度を化学発光窒素検出計の使用により測定することが
できる。
【0299】
実施例C.4.
p21誘発能
実施例C.4.a
p21酵素結合イムノソルベントアッセイ
ヒトA2780卵巣ガン細胞中のp21タンパク質発現レベルを測定するために以下のプロトコールを適用した。A2780細胞(20000細胞/180μl)を、2mMのL−グルタミン、50μg/mlのゲンタマイシン及び10%のウシ胎仔血清を添加したRPMI 1640培地中で、96微量ウェルプレートに播種した。細胞の溶解の24時間前に、化合物を10−5、10−6、10−7及び10−8Mの最終濃度で添加した。試験したすべての化合物をDMSOに溶解し、培養培地中に更に希釈した。化合物の添加の24時間後に、上澄み液を細胞から除去した。細胞を200μlの氷冷PBSで洗浄した。ウェルを吸引し、30μlの溶解バッファー(50mMのTris.HCl(pH7.6)、150mMのNaCl、1%のNonidet p40及び10%のグリセロール)を添加した。プレートを−70℃で1晩インキュベートした。
【0300】
適当数の微量滴定ウェルをフォイルのポーチから取り出して、空のウェルホールダー中に入れた。洗浄バッファー(20×プレート洗浄濃度:100mlのPBSの20倍濃厚溶液及び界面活性剤、2%のクロロアセトアミドを含有する)の作業溶液(1×)を製造した。凍結乾燥p21WAF標準物を蒸留HOで再構成し、更に、サンプル希釈剤(キット中に提供されている)で希釈した。
【0301】
サンプル希釈剤中にそれらを1:4に希釈することにより、サンプルを製造した。サンプル(100μl)及びp21WAF1標準物(100μl)を適当なウェルにピペット添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを1×洗浄バッファーで3回洗浄し、次いで100μlの検出用抗体試薬(ビオチニル化モノクローナルp21WAF1抗体の溶液)を各ウェルに滴下した。ウェルを室温で1時間インキュベートし、次いで1×洗浄バッファーで3回洗浄した。400×共役物(ペルオキシダーゼストレプトアビジン共役物:400倍濃厚溶液)を希釈し、100μlの1×溶液をウェルに添加した。ウェルを室温で30分間インキュベートし、次いで1×洗浄バッファーで3回、そして蒸留HOで1回洗浄した。基質溶液(発光性基質)(100μl)をウェルに添加し、ウェルを室温の暗所で30分間インキュベートした。前記の添加基質溶液と同様な順序で停止溶液を各ウェルに添加した。450/595nmの二重波長における分光比色プレート読み取り装置を使用して各ウェル中の吸収を測定した。各実験に対し、対照(薬剤を含まない)及びブランク培養(細胞も薬剤も含まない)を平行した実施した。ブランク値をすべての対照及びサンプル値から差し引いた。各サンプルに対し、p21WAF1誘発の値(吸収単位における)を対照中に存在するp21WAF1の値の百分率として表した。130%を超える誘発百分率が有意な誘発と定義された。11種の化合物が試験され、有意な誘発を示した。
【0302】
実施例C.4.b.
細胞法
A2780細胞(ATCC)を10%FCS、2mMのL−グルタミン及びゲンタマイシンを添加されたRPMI 1640培地中で、37℃の5%COを含む湿潤化インキュベーター内で培養した。すべての細胞培養液はGibco−BRL(Gaithersburg,MD)により提供される。他の材料はNuncにより提供される。
【0303】
ゲノムDNAを、増殖しているA2780細胞から抽出し、p21プロモーターのネスト化されたPCR単離物のテンプレートとして使用した。第1の増殖を、テンプレートと
してゲノムDNAを含むオリゴヌクレオチド対GAGGGCGCGGTGCTTGG及びTGCCGCCGCTCTCTCACCを使用して55℃のアニーリング温度で20周期につき実施した。TATAボックスに対して−4551〜+88フラグメントを含有する生成された4.5kbフラグメントを、88℃のアニーリングにより20周期間、オリゴヌクレオチドTCGGGTACCGAGGGCGCGGTGCTTGG及びATACTCGAGTGCCGCCGCTCTCTCACCで再増殖させて4.5kbフラグメントを生成し、次いで88℃のアニーリングにより20周期間に、オリゴヌクレオチド対TCGGGTACCGGTAGATGGGAGCGGATAGACACATC及びATACTCGAGTGCCGCCGCTCTCTCACCにより、TATAボックスに対して−1300〜+88フラグメントを含有する1.3kbフラグメントをもたらした。オリゴヌクレオチド中に存在する制限部位XhoI及びKpnI(下線配列)をサブクローン作成に使用した。
【0304】
ルシフェラーゼリポーターをKpnI及びXbaI制限部位においてpGL3−塩基から除去し、ZsGreenリポーター(pZsGreen1−N1プラスミドから)により置き換えた。XhoI及びKpnI部位のpGL3−塩基−ZsGreen中へのヒトp21プロモーター領域の前記の1.3kbフラグメントの挿入により、pGL3−塩基−ZsGreen−1300を構成した。すべての制限酵素はBoehringer Manheim(ドイツ)により提供されている。A2780細胞を2×10細胞の密度で6−ウェルのプレートに添加し、24時間インキュベートし、製造業者により説明されるようにLipofectamin 2000(Invitrogen,Brussels,ベルギー)を使用することにより、2μgのpGL3−塩基−ZsGreen−1300及び0.2μgのpSV2neoベクトルによりトランスフェクションさせた。トランスフェクション細胞をG418(Gibco−BRL,Gaithersburg,MD)とともに10日間選択し、単一の細胞懸濁物を増殖させた。3週間後、単一のクローンを得た。
【0305】
A2780の選択されたクローンを増量させ(expanded)、96−ウェルのプレート中にウェル当たり10000細胞で播種した。播種の24時間後に、細胞を化合物(近位のp21プロモーター領域中のsp1部位に影響する)とともに更に24時間処理した。次いで、細胞を30’、4%のPFAで固定し、Hoechstの染料で対比染色した。ZsGreen生産及び従って蛍光をもたらすp21プロモーターの活性化をAscent Fluoroskan(Thermo Labsystems,Brussels,ベルギー)によりモニターした。
【0306】
各実験につき、対照(薬剤を含まない)及びブランクインキュベート(細胞も薬剤も含まない)を平行して実施した。ブランク値をすべての対照及びサンプル値から差し引いた。各サンプルにつき、p21誘発の値は、対照中に存在するp21の値の百分率として表した。130%を超える誘動百分率を有意な誘発と定義した。
【0307】
11種の化合物が試験され、有意な誘発を示した。
【0308】
実施例C.5.
P450阻害能
試験されたすべての化合物をDMSO(5mM)に溶解し、アセトニトリル中に5 10−4Mに更に希釈した。アッセイバッファー(0.1MのNaKリン酸バッファー、pH7.4)中に更に希釈し、最終溶媒濃度は2%を決して超えなかった。
【0309】
CYP3A4タンパク質のアッセイは、100μlの総アッセイ容量において、ウェル当たり15pモルのP450/mgタンパク質(0.01MのNaKリン酸バッファー+
1.15%のKCl中)、NADPH生成系(アッセイバッファー中、3.3mMのグルコース−6−リン酸、0.4U/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、1.3mMのNADP及び3.3mMのMgCl.6HO)及び化合物を含んでなる。37℃で5分間の前インキュベート後に、アッセイバッファー中に150μMの蛍光プローブ基剤BFCの添加により酵素反応を開始した。室温で30分間のインキュベート後に、2容量のアセトニトリルの添加後に反応は終結した。405nmの励起波長及び535nmの発光波長で蛍光の測定を実施した。本実験の対照化合物としてケトコナゾール(IC50−値=3×10−8M)を包含した。
【0310】
CYP2D6タンパク質のアッセイは、100μlの総アッセイ容量において、ウェル当たり、6pモルのP450/mgタンパク質(0.01MのNaKリン酸バッファー+1.15%のKCl中)、NADPH生成系(アッセイバッファー中、0.41mMのグルコース−6−リン酸、0.4U/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、0.0082mMのNADP及び0.41mMのMgCl.6HO)及び化合物を含んでなる。37℃で5分間の前インキュベート後に、アッセイバッファー中に3μMの蛍光プローブ基剤AMMCの添加により酵素反応を開始した。室温で45分間のインキュベート後に、2容量のアセトニトリルの添加後に反応を終結した。405nmの励起波長及び460nmの発光波長で蛍光の測定を実施した。本実験の対照化合物としてキニジン(IC50−値<5×10−8M)を包含した。
【0311】
CYP2C9タンパク質のアッセイは、100μlの総アッセイ容量において、ウェル当たり、15pモルのP450/mgタンパク質(0.01MのNaKリン酸バッファー+1.15%のKCl中)、NADPH生成系(アッセイバッファー中、3.3mMのグルコース−6−リン酸、0.4U/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、1.3mMのNADP及び3.3mMのMgCl.6HO)及び化合物を含んでなる。37℃で5分間の前インキュベート後に、アッセイバッファー中に200μMの蛍光プローブ基剤MFCの添加により酵素反応を開始した。室温で30分間のインキュベート後に、2容量のアセトニトリルの添加後に反応は終結した。405nmの励起波長及び535nmの発光波長で蛍光の測定を実施した。本実験の対照化合物としてスルファフェナゾール(IC50−値=6.8×10−7M)を包含した。
【0312】
最初のスクリーニングの目的のためには、化合物は1×10−5Mの単一の固定濃度で試験された。有効な化合物に対しては、全体の濃度−反応曲線を確立するために実験を反復した。各実験につき、対照(薬剤を含まない)及びブランクインキュベート(酵素も薬剤も含まない)を平行して実施した。すべての化合物を4重実験で測定した。ブランク値をすべての対照及びサンプル値から引いた。各サンプルにつき、サンプルのP450活性の平均値(相対的蛍光単位で)を対照のP450活性の平均値の百分率として表した。抑制百分率は100%引く、サンプルのP450活性の平均値として表した。適当な場合には、IC50−値(対照の50%までP450活性を減少させるために要する薬剤の濃度)を計算した。
【0313】
【表8】

【0314】
D.組成物実施例:フィルムコート錠
錠剤コアの製造
100gの式(I)の化合物、570gのラクトース及び200のデンプンの混合物を十分混合し、その後、5gのナトリウムドデシルスルフェート及び10gのポリビニル−ピロリドンの溶液(約200mlの水中)で湿潤化する。湿った粉末混合物をふるい、乾燥し、再度ふるう。次いで100gの微細結晶セルロース及び15gの水素化植物油を添加する。全体を十分に混合し、打錠すると、各10mgの式(I)の化合物を含んでなる10.000錠を与える。
【0315】
コーティング
10gのメチルセルロースの溶液(75mlの変性エタノール中)に5gのエチルセルロースの溶液(150mlのジクロロメタン中)を添加する。次いで75mlのジクロロメタン及び2.5mlの1,2,3−プロパントリオールを添加する。10gのポリエチレングリコールを融解し、75mlのジクロロメタン中に溶解する。後者の溶液を前者に添加し、2.5gのマグネシウムオクタデカノエート、5gのポリビニルピロリドン及び30mlの濃厚色素懸濁液を添加し、全体を均一化する。コーティング装置内で、錠剤のコアをこのように得た混合物でコートする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

[式中、
Xはそれぞれ独立してN又はCHであり、
Yはそれぞれ独立して、O、CH又はCHであり、そしてYがCHである時は、置換基が環構造のY原子に結合されており、
Zはそれぞれ独立してC=O、CH又はCHであり、そしてZがCHである時は、点線が1つの結合であり、
nは0又は1であり、そしてnが0である時は、直接結合が意図されており、
はフェニル、ナフタレニル、ヘテロシクリル、フェニルC1−6アルキル、ナフタレニルC1−6アルキル又はヘテロシクリルC1−6アルキルであり、ここで該フェニル、ナフタレニル又はヘテロシクリルはそれぞれ、場合により、水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル、フェニル、フェニルオキシ、シアノ、C1−6アルキルカルボニルアミノからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、あるいは2個の置換基が一緒になって2価の基−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−を形成してもよく、
は水素、C1−6アルキル又はフェニルであり、ここで該フェニルはそれぞれ場合により、水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、フェニルオキシ又はシアノからそれぞれ独立して選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく、
はヒドロキシあるいは、式(a−1)
【化2】

(式中、
はヒドロキシ又は−NHであり、
は水素、チエニル、フラニル又はフェニルであり、そしてチエニル、フラニル又はフェニルはそれぞれ、場合によりハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、フェニル、C1−6アルキル、(ジC1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキルオキシ、フェニルC1−6アルキルオキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル、C1−6アルキルカルボニル、ポリハロC1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル、C1−6アルキルスルホニル、ヒドロキシカルボニルC1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニルアミノ、アミノスルホニル、アミノスルホニルC1−6アルキル、イソオキサゾリル、アミノカルボニル、フェニルC2−6アルケニル、フェニルC3−6アルキニル又はピリジニルC3−6アルキニルで置換されていてもよく、
、R及びRはそれぞれ独立して水素、−NH、ニトロ、フラニル、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、トリフルオロメチル、チエニル、フェニル、C1−6アルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルC1−6アルキル又は−C≡C−CH−Rであり、ここでRは水素、C1−6アルキル、ヒドロキシ、アミノ又はC1−6アルキルオキシである)の基であり、そして
前記のヘテロシクリルはフラニル、チエニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、ジオキソリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジニル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、トリアジニル、トリチアニル、インドリジニル、インドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノオキサリニル又はナフチリジニルである]、そのN−オキシド形態物、製薬学的に許容できる付加塩及び立体化学的異性体形態物。
【請求項2】
XがそれぞれNであり、Yがそれぞれ独立してO又はCHであり、nが1であり、Rがフェニル、ナフタレニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルであり、ここで該フェニル、ナフタレニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルはそれぞれ場合により水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、ポリハロC1−6アルキル、フェニル、フェニルオキシ又はシアノからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、あるいは2個の置換基が一緒になって2価の基−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−を形成してもよく、Rが水素、C1−6アルキル又はフェニルであり、そしてRがヒドロキシルである、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
XがそれぞれNであり、YがそれぞれCHであり、ZがそれぞれCHであり、Rがフェニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルであり、ここで該フェニル又はヘテロシクリルC1−6アルキルはそれぞれ場合により水素、C1−6アルキル、フェニル又はフェニルオキシからそれぞれ独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、Rが水素であり、そしてRがヒドロキシである、
請求項1及び2記載の化合物。
【請求項4】
化合物が化合物第3、化合物第2及び化合物第35である、請求項1、2及び3記載の化合物。
【表1】

【請求項5】
製薬学的に許容できる担体及び、有効成分として治療的有効量の、請求項1〜4に記載された化合物を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項6】
製薬学的に許容できる担体及び請求項1〜4に記載された化合物が密接に混合されている、請求項5に記載の製薬学的組成物を製造する方法。
【請求項7】
医薬として使用するための請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
増殖性疾患の処置用の医薬の製造のための、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
抗癌剤と請求項1〜4のいずれかに記載されたHDACインヒビターの組み合わせ物。
【請求項10】
a)式(II)の中間体を適当な溶媒中で適切な酸と反応させて、ここで式(I−a)の化合物と呼ばれる、そのRがヒドロキシである式(I)の化合物を生成し、
【化3】

b)式(XV)の中間体を塩化錫(II)水和物又は水素と、適当な溶媒中で木炭上10%パラジウムの存在下で反応させて、ここで式(I−b)と呼ばれる、そのRが式(a−1)の基でありそしてRが−NHである式(I)の化合物を形成し、
【化4】

c)式(XVI)の中間体を適当な酸と適当な溶媒中で反応させて、式(I−b)の化合物を形成し、
【化5】

d)TBDMSがtert−ブチル(ジメチル)シラニルの意味である式(XVII)の中間体をテトラブチルアンモニウムフルオリドと適当な溶媒中で反応させて、ここで式(I−c)の化合物と呼ばれる、そのRが式(a−1)の基でありそしてRがヒドロキシである式(I)の化合物を形成する、
【化6】

ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2008−546737(P2008−546737A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517483(P2008−517483)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063351
【国際公開番号】WO2006/136553
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】