説明

ヒトの病理学及び生理学における、アドレノメジュリン(AM)及び遺伝子関連産物(PAMP)の機能的役割

【課題】 本発明の方法は、アドレノメジュリン(AM)がさまざまな器官のヒト癌細胞系列で発現し、腫瘍の増殖を引き起こす普遍的な増殖因子として機能することを示す。本発明は治療、薬剤および生理的組成物に有用なAMペプチドおよびAM抗体を提供する。本発明はさらに、本発明のAMペプチドおよび抗体を含む組成物を使用する病気の診断、治療および予防方法を提供する。本発明の方法はまた、膵臓生理機能におけるAMの役割を同定するために使用する実験の手法も提供する。
【解決手段】単離したラット小島による方法は、AMが量依存的にインシュリンの分泌を妨げることを示した。AM生体活性を中和するモノクローナル抗体MoAb-G6は、本発明の方法によりインシュリンの放出を5倍増加させ、これは合成AMの添加で逆の効果が出ることが示された。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【背景技術】
【0002】
アドレノメジュリン(AM)は当初、ヒト褐色細胞腫(Pheochromocytoma)より単離され、最近同定された降圧性ペプチドである (K.Kitamura, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 192, 553 (1993))。AMは、185アミノ酸プレプロホルモンから、連続的な酵素的分解及びアミド化を通して生成される。この工程は52アミノ酸生体活性ペプチドの遊離で完結する (T.Ishimitsu et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 203, 631 (1994))。AM、及びその遺伝子関連ペプチド、PAMPは、185アミノ酸プレプロAM分子の翻訳後酵素的修飾から生成される、二つの知られた生体活性産物である (K.Kitamura, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 192, 553 (1993) ; K.Kitamura, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 194, 720 (1993) ; Kitamura, et al. FEBS Lett. 351, 35-37 (1994))。
【0003】
ヒトAMについての完全なゲノムの基礎構造が、最近報告された (Ishimitsu, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 203 : 631-639 (1994))。ブタ (Kitamura, et al., FEBS Lett. 338 : 306-310 (1994))、及びラット (Sakata, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 195 : 921-927 (1993))のAMの相補的なDNAもまたクローン化/配列決定され、ヒト相当物との高いホモロジーが示された。AMのヒトcDNAはクローン化され、mRNAの発現が副腎、肺、腎臓、及び心臓にて同定された (K.Kitamura, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 194, 720 (1993))。高程度の塩基配列ホモロジーが、ラットとブタを含む他のほ乳類種から単離されたAM mRNAとの間で見いだされた(J. Sakata, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 195, 921 (1993) ; 及びK.Kitamura, et al., FEBS Lett. 338, 306 (1994)) 。
【0004】
いくつかの発行物からのデータは、AMを発現する組織の広い範囲を明らかにした。RIA及びノザンブロット技術を使用することで、ヒト血漿、副腎髄質、心房、肺、腎臓でAMが高レベルで発見されたが (Kitamura, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 194 : 720-725 (1993) ; Kitamura, et al., FEBS Lett. 341 : 288-290 (1994))、しかし、今日までにこれらの器官でのAMの細胞源は同定されていない。
【0005】
AM及びPAMP双方はアミド化ペプチドであるが、これらはその血管拡張性効果を、明らかに異なったレセプターシステムを通して媒介することが示された (T.Shimosawa, et al., J. Clin. Invest. 96, 1672 (1995)) 。AMはアデニルシクラーゼ活性を刺激し、これは平滑筋細胞でのcAMPのレベルを高める。AMは構造的にカルシチニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)と関連し、その血管拡張性効果はCGRP拮抗剤、CGRP8−37によって抑制される (Y.Ishiyama, et al., Eur. J. Pharmacol. 241, 271 (1993) : Ishizaka, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 200, 642 (1994) ; J.A.Santago, et al., Life Sci. 55, 85 (1994) ; D.Y.Cheng, et al., Life Sci. 55, 251 (1994) ; H.Lippton, et al., J. Appl. Physiol. 76, 2154 (1994) ; Y.Shimekake, et al., J. Biol. Chem. 270, 4412 (1995))。逆に、PAMPはCGRPとアミノ酸配列ホモロジーはなく、その生物学的効果がCGRP8−37によって阻害されないという事実は、別個のレセプターシステムの関わり合いを示唆する (T.Shimosawa, et al., J. Clin. Invest. 96, 1672 (1995))。AMはまた、ナトリウム利尿活性及び利尿活性を持つ腎臓の機能重要な調節物質として示された (T.Ebara, et al., Eur. J. Pharmacol. 263, 69 (1994) ; M.Jougasaki, et al., Amer. J. Physiol. 37, F657 (1995))。AMは強力な気管支拡張物質、ある中枢神経脳活動の調整物質(昇圧および抗口渇誘発性ペプチド)、そしてアルドステロン及びアドレノコルチコトロピン放出の抑制物質であることも報告されている (H.Kanazawa, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 205, 251 (1994) ; H.Takahashi, et al., Am. J. Hypertens. 7, 478 (1994) ; T.Amurphy and W.K.Samson, Endocrinology 136, 2459 (1995) ; T.Yamaguchi, K.Baba, Y.Doi, K.Yano, Life Sci. 56, 379 (1995) ; W.K.Samson, T.Murphy, D.A.Schell, Endocrinology 136, 2349 (1995))。最後に、AMは、神経節芽細胞腫/神経芽細胞腫 (F.Satoh, et al., J. Clin. Endocrinol. Metabol. 80, 1750 (1995))、小細胞肺癌、アデノカルシノーマ、気管支肺胞癌、鱗状細胞癌、肺カルシノイド (Martinez, et al., Endocrinology 136, 4099 (1995))を含む神経及び肺双方の系統の様々なヒト腫瘍において発現していることが報告された。AMのヒト腫瘍における分布をさらに研究し、これらの悪性症状におけるその役割を決定する試みにおいて、我々は分子、生化学的及びin vitro手法を、59の固形腫瘍及び造血系統からのヒト癌細胞株を解析するために用いた。
【0006】
血管拡張剤としてのAMの役割は多数研究された (C.Nuki et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 196, 245 (1993) ; Q.Hao et al., Life Sci. 54, 265 (1994) ; D.Y.Cheng et al., Life Sci., 55, 251 (1994) ; C.J.Feng, B.Kang, A.D.Kaye, P.J.Kadowitz, B.D.Nossaman, Life Sci., 433 (1994))。AMは、原形質膜の特異的レセプターを通してアデニルシクラーゼ活性を活性化し、標的細胞へのCa2+の流れを調節するように働く (S.Eguchi et al., Endocrinology 135, 2454 (1994) ; Y.Shimekake et al., J. Biol. Chem. 270, 4412 (1995))。これらのシグナルトランスダクション経路は多くの生理学的工程に関係し、ホルモンの分泌の調節を含む。細胞内cAMPの調節が膵臓でのホルモンの放出を調節することはよく確証されている (Y.Korman, S.J.Bhathena, N.R.Voyles, H.K.Oie, L.Recant, Diabetes 34, 717 (1985) ; C.B.Wollheim, Diabetes 29, 74 (1980))。AMが、カテコールアミン (F.Kato et al., J. Neurochem. 64, 459 (1995))、アデノコルチコトロピン (W.K.Samson, T.Murphy, D.A.Schell, Endocrinology 136, 2349 (1995))、及びアルドステロン (T.Yamaguchi, K.Baba, Y.Doi, K.Yano, Life Sci. 56, 379 (1995) を含む様々なホルモンの分泌速度に影響を及ぼすことが報告されているので、我々は、膵臓の内分泌生理学を調節する際のAMの潜在的な役割を研究した。
【0007】
結果的に、多くの治療の、及び診療上のAMペプチドの適用による、AM関連疾患及び症状の予防、診断、処置での治療的使用に対する強力な、安定した、選択的AMペプチドの大きな医学的な、そして健康上の要求が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は治療的、薬理学的、生理学的組成物の中で有用な、新規のアドレノメジュリン(AM)ペプチドとAM抗体を提供する。加えて、本発明は新規AMペプチド及び抗体を含む組成物が有用である疾患の診断、処置及び予防の方法を提供する。特に、本発明の治療、診断、及び予防の対象を以下に示す。
【0009】
本発明の目的は、細胞の増殖を抑制するために、効果的な量の本発明のAMペプチド、もしくは抗体と、癌的細胞とを接触させることにより、癌、特に副腎、神経系、肺、結腸、卵巣、及び乳癌の予防及び治療のための方法を提供することである。本発明のAMペプチド及び抗体は軟骨肉腫の治療にも使用される可能性がある。
【0010】
この発明のさらなる目的は、新生物トランスフォームを崩壊させる介入戦略のための、一般的な標的としての使用のためのAMペプチド及び抗体を提供することである。
AMの存在、もしくは非存在が疾病の存在、もしくは疾患の素因を指し示すところの試料中のAMのレベルを測定することによって疾患を診断もしくは監視する方法を提供することも、この発明の目的である。本発明の方法によって診断もしくは監視しうる疾病の例は、これらに限定するのではないが、糖尿病、重度の尿毒症などの腎疾病、新生物疾患などの骨の疾病、皮膚疾病及び白血病などの血液関連疾病を含む。
【0011】
他の本発明の目的は、本発明のペプチド及び抗体を用いたタイプII糖尿病の予防、もしくは治療の方法を提供することである。特に、本発明のAMペプチド及び抗体は、インスリン分泌及び血中グルコース代謝の調節をするために使用される可能性がある。
【0012】
本発明の他の目的は、妊娠に関連した症状に使用するためのAMペプチド及び抗体を提供することである。特に、本発明のAMペプチド及び抗体を利用した、妊娠中毒症(子癇前症)(preeclampsia)の診断及び治療のための方法が記述されている。さらに、AMペプチド及び抗体は、胎児発育促進に使用される可能性がある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、神経伝達物質もしくはニューロン発達の調節のために、効果的な量のAMペプチドもしくは抗体を患者に投与することによって、中枢神経系の領域の活性を調節する方法を提供することである。本発明のAMペプチドと抗体によって治療しうる神経伝達、もしくはニューロンの発達の調節に影響を及ぼしている疾患の限定的でない例は、アルツハイマー病である。
【0014】
マスト細胞の脱顆粒を減らす、もしくは抑制するのに効果的な量で、AMに対する抗体を投与することにより、マスト細胞の脱顆粒のためにおこるアレルギー反応を減らす、もしくは抑制する方法を提供することも本発明の目的である。
【0015】
バクテリアもしくは菌類の増殖を抑制する、もしくは感染を防ぐのに効果的な量の、本発明の新規ペプチドを、患者に投与することで、バクテリア及び菌類の感染を治療する方法を提供することも本発明の目的である。
【0016】
本発明の他の目的は、治療を促進するのに効果的な量の、本発明の一つ、もしくはそれ以上の新規AMペプチド量を患者の皮膚の表面に塗ることで、すり切れた(chaffed)皮膚、皮膚損傷、傷の回復、外科的切断の治癒を促進する方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、請求した発明のAMペプチド及び抗体を用いて、臓器及び骨の発達を促進する方法を提供することである。
本発明はさらに、本発明の新規AMペプチド、及び抗体を含む薬剤組成物を提供し、新規AMペプチド及び抗体、さらに同じものを含む薬剤組成物の薬剤学的、治療的、診断的利用を提供する。
【0018】
本発明のこれらの、そして他の目的は、付随する明細書及び添付した図面によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は一般に、新規アドレノメジュリン(AM)ペプチド及びAM抗体、上記ペプチド及び抗体を含む薬剤学的組成物、及び薬剤学的活性剤としてのこれらの使用を提供する。
【0020】
特に、本発明は以下の新規AMペプチドに関連する。
PO70(YY-プレプロAM34-41)
Y-Y-W-N-K-W-A-L-S-R-NH2(SEQ. ID. NO. 1)
PO71(YGG-プレプロAM122-131)
Y-G-G-H-Q-I-Y-Q-F-T-D-K-D-NH2 (SEQ. ID. NO. 2)
PO72(プレプロAM116-146)
T-V-Q-K-L-A-H-Q-I-Y-Q-F-T-D-K-D-K-D-N-V-A-P-R-S-K-I-S-P-Q-G-Y-NH2
(SEQ. ID. NO. 3)
センスプライマー(AM94-114)
5'-AAG-AAG-TGG-AAT-AAG-TGG-GCT-3' (SEQ. ID. NO. 4)
アンチセンスプライマー(AM 444-464)
5'-TGG-CTT-AGA-AGA-CAC-CAG-AGT-3' (SEQ. ID. NO. 5)
アンチセンスプローブ(AM 289-309)
5'-CTG-GAA-GTT-GTT-CAT-GCT-CTG-3' (SEQ. ID. NO. 6)
プロアドレノメジュリンN末20ペプチド(PAMP-20)
A-R-L-D-V-A-S-E-F-R-K-K-W-N-K-W-A-L-S-R-NH2(SEQ. ID. NO. 7)
【0021】
これらのペプチド、及びその他のものはポリクローナル、もしくはモノクローナルのいずれかの抗体を発生するのに使用でき、この抗体は、本発明の方法で使用する組成物を含む抗体を調製するために使用することができる。この抗体は当業者にはよく知られている技術によって調製する。特に、ペプチドPO72に対するモノクローナル抗体は本発明の実施に有用である。
【0022】
本発明のAMペプチド及び抗体は、治療及び診断の設定の多様性に有用である。これらは以下に、さらに具体的に記述される。
【0023】
(1)正常ヒト肺、及び肺腫瘍におけるアドレノメジュリンの発現
AMペプチドの新しい機能を同定するための最初の工程として、肺におけるAMの発現部位の局在化についての研究を行った。血管の上皮のAMの局在は、血圧調節におけるAMペプチドの関与によるものと予測され(Nuki, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 196 : 245-251 (1993) ; Ishiyama, et al., Eur J Pharmacol. 241 : 271-273 (1993) ; Perret, et al., Life Sci. 53 : PL377-PL379 (1993) ; Lippton, et al., Life Sci. 54 : PL409-PL412 (1994) ; Santiago, et al., Eur. J. Pharmacol. 272 : 115-118 (1995) ; Lippton, et al., J. Appl. Physiol. 76 : 2154-2156 (1994) ; Sugo, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 201 : 1160-1166 (1994))、平滑筋細胞でのAMの発現がすでに報告されている(Sugo, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 203 : 719-726 (1994))。様々な肺細胞タイプでのAMの発現は、この分子の潜在的な新しい役割を示している。
【0024】
外部環境との円柱上皮の先端境界でのAMの豊富な発現は、AMが肺管腔に分泌されている可能性があることを示唆する。普通、気管支上皮の繊毛細胞の機能は、繊毛区域を通した粘膜層の機械的輸送に制限されることが推測されるが、エンドセリンなどの他の調節ペプチドは、この細胞タイプで記述された(Giaid, et al., Am. J.Respir. Cell. Mol. Biol. 4 : 50-56 (1990))。並んでいる上皮及びマクロファージでのAMの発現は、気道上皮に存在するマガイニン(Diamond, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 : 4596-4600 (1993))、もしくは気管の抗微生物ペプチド(Diamond, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 : 3952-3956 (1991)) などの他のペプチドとして観察されたのと同様に、病原体に対する保護活性の可能性を示している。
【0025】
本明細書で記載の正常肺におけるAMの分布は、ペプチド−アミド化酵素について以前に報告されたパターンと同様である(Saldise, et al., J. Histochem. Cytochem. 1996)。この参照文献では、酵素産物と同じ場所に付随して発現している未知のアミド化ペプチドの潜在的存在を仮定していた。本明細書の研究は、AMがそれらの予期されるペプチドのうちの一つである可能性があることを示唆する。アミド化がAMの活性にとって重要なものであること、すなわちAMのアミド化体が、非アミド化体のそれよりも50倍強いレセプターへの親和性を有することが示された(Eguchi, et al., Endocrinology 135 : 2454-2458 (1994))。 正常組織におけるAMの機能を特徴づけるために、免疫細胞化学的手法を用いて、正常及び悪性肺におけるAMの分布を研究し、フォルマリン固定、パラフィン包埋標本でのそのメッセンジャーRNA(mRNA)の発現を研究するためにin situ逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりペプチドの局在性を確かめた。
【0026】
(2)正常及び悪性細胞におけるヒトAM/AM-R mRNAの発現
RT-PCRを使用して、様々な異なる由来の癌細胞株、及び正常ヒト組織におけるAMリガンド、及びレセプター mRNAを評価した(表3、図15A及び15B)。センス及びアンチセンスプライマーは、プライマー選択DNAstarプログラムからのコンピューター解析を基にして、発表されているヒトcDNA配列(Kitamura, K., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 194, 720 (1993))より得た。結果として得られた410bp及び471bpのAM及びAM-R mRNAに対するRT-PCR産物を、アンチセンスの入れ子(nested)プローブによるサザンブロットで確かめた。正常ヒト副腎及びH720のクローン化された産物を、ヌクレオチド配列決定により、AMのメッセージの本物の断片としてさらに証明し、Sp6およびT7プロモーター部位において配列決定プライマーを用いて、どちらの方向においても200bp以上のホモロジーがあることを示した。試験した新生物細胞株の大部分(55/58、95%)は、AMメッセージを発現していることを示した(図15A及び15B、及び表3を参照)。図15A及び15Bは、AM mRNA及びその翻訳タンパク質に対してスクリーニングした、典型的なヒト腫瘍細胞株試料(H157,H720,MCF-7,OVCAR-3,SNUC-1)及び正常ヒト組織(脳、肺、心臓、副腎)を示す。MoAb-G6は、合成ホモログPO72の10 μg/mLの付加で吸収された。
【0027】
AM mRNAは以下の癌細胞株では発見されてなかった。H69c(SCLC)、H233(アデノカルシノーマ)及びH460(大細胞癌)。特定の組織が、ノザンブロット評価によってAMを発現していないという事実は、RT-PCRによって示されたようにその存在を排除はしない(表4)。例えば、脳などの不均質な組織では、RT-PCRにてAMの発現が示されたが、ノザン解析では示されなかった。広範囲な研究ではないが、同様なデータがAM-R mRNAについても観察されており(27/36,75%)(表3)、正常組織及び新生物細胞株の75%において、リガンド及びレセプターのメッセージが同じ場所にあることを示している(図14A−14D及び図26A−26B)。データはRT-PCRによって以下の正常組織、すなわち脳、心臓、肺及び副腎(図26B)においてAM-R mRNAの存在を示している。
【0028】
AMは、標的細胞においてcAMP産生を誘導することが示された(Ishizaka, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 200 : 642-646 (1994))。ほとんどのペプチドホルモンが、細胞増殖の調節物質として働くcAMP合成を誘導させることが以前に観察されており(Ishizuka, et al., Cancer Res. 54 : 2129-2135 (1994) ; Moody, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 : 4345-4349 (1993))、従って、AMも腫瘍増殖の増殖調節物質として機能することが可能であった。加えて、血液供給は、遠い転位部位での腫瘍細胞の移植の成功の重要な因子であり、多くの腫瘍が血管新生を引き起こす(Weinstat-Saslow, et al., FASEB J 8 : 401-407 (1994))。別の、もしくは協働的な生存方法は、腫瘍床への栄養素の入手可能性を高めるために、AMなどの血管拡張物質を産生及び分泌することであろう。
【0029】
AM、気道上皮及び腫瘍に存在する調節ペプチドの局所分布は、歴史上非内分泌として区分され、活性ペプチドの合成のために必要な翻訳後修飾酵素の一つと同じ場所に位置することは、我々に”内分泌”の概念を再考させた。新しい調節ペプチドが発見されたので、新しい細胞のタイプが、内分泌学の舞台に入る。同じ傾向が以前に胃腸系(Bloom, et al., Adv. Clin. Chem. 20 : 177-244 (1980))、及び内皮細胞(Vane, et al., J. Physiol. Pharmacol. 43 : 195-207 (1992)) で起こった。AMの発現は、神経内分泌の特徴である発言が制限されているという我々の概念に異議を唱え、また、気道上皮の多様性を強調する。
【0030】
(3)ヒト癌細胞株によるAMペプチドの産生及び分泌
図26に示したように、選択した癌細胞株をRO条件下で増殖するように適応させ、これらの株からの結果としてできた全細胞溶解物を、以前に特徴づけられたウサギ抗血清(Martinez, A., et al., Endocrinology 136 : 4099-4105 (1995))を用いたウエスタンブロット解析によるAM免疫反応性を試験した。図26Cは、同定されたAM様免疫反応性ペプチドの電気泳動図を示している。
【0031】
18、14、および6 kDaの分子量種が同定され、おそらく、それぞれAM前駆物質、生成中間物質、及び本物のペプチドを表している。二つの癌細胞株、H720及びMCF-7での22 kDaの免疫反応性種も存在する。免疫検出分析の特異性は、抗体吸収コントロールによって確認され、このコントロールでは特異バンドは消えた(図26D)。腫瘍細胞からの本物のASMの発現をさらに確証するために、HPLC画分で、肺カルチノイド細胞株 NCI-H720からのROCMの解析を行った。カラムretintateは、合成ペプチドと一致する溶出時間(=89分)を持つAM様免疫反応性を含む(図15A−15B)。加えて、88から92分部分を含む連続的なHPLC画分をイムノブロットしたところ、主要な6kDaの免疫反応性バンドを示し、一方、124から129分画分は、18、及び14 kDa存在物を表した(図15C)。付加的免疫活性のピークが26.4分、53.6分、及び135.6分に同定されているが、これらはそれ以上特徴づけられていない(図15)。
【0032】
(4)AMはヒト腫瘍細胞増殖を調節する。
パラフィン包埋、RO−適合化細胞株の免疫組織化学(IHC)、及びin situ RT-PCR試験によって入手した結果は、正常肺、及び病理学的肺標本に対して以前に報告されたデータと一致していた(Martinez, A., et al., Endocrinology 136 : 4099-4105 (1995))。評価したヒト腫瘍細胞株は、図27に示すようにIHC及びin situ RT-PCRによってAMの発現を示す。SCLC H774でのAMの発現が、個々のコロニーの外層(増殖帯)で最も強い染色の強度を示すことを示すのは興味深いことであり、増殖調節における、AMを示すことができるという発見である(図27A)。この概念との一致は、AMがcAMP、細胞増殖を調節すると知られているシグナルトランスダクション経路を高めることを示した事実である(Ishiyama, Y., et al., Eur. J. Pharmacol. 241 : 271-273 (1993))。この推測した現象をさらに調査するために、MTT分析手法を使用して、いくつかの異なった腫瘍細胞株(肺、結腸、乳房、脳、及び卵巣)の増殖に対するAMの効果を試験した。高い範囲では、いくつかの非特異的毒性はあったが、RO−増殖細胞培養へのAMの外的付加(最終濃度範囲 0.1 μMから100 μM間)は、増殖を刺激するには無効であった。試験細胞は、本物のAMペプチドを産生する事が知られていたため、我々は、この外部リガンドにより増殖を刺激することができないということが、細胞がすでに細胞自体のAMを用いた最高増殖効果を得ているということを意味する可能性があることを仮定した。
【0033】
この仮定を証明するために、MoAb-G6を使用して外的AMの生物学的活性を阻止した。MoAb-G6の特徴を調べる間、他の既知のチロシンアミドペプチド、もしくは構造的に関連するCGRP、及びアミリンとの交差反応性がないことを明らかにした(図13)。MTT分析を使用して、MoAb-G6を5個のヒト腫瘍細胞株(NCI-H157、NCI-H720、MCF-7、NIH:OVCAR-3、及びSNUC-1)の増殖に対するその効果について評価し、投与量依存的抑制が、それらのうち4つで観察された(表5を参照)。最も高い濃度でのMoAb-G6使用(100 μg/ml)において、持続的に25−6%の増殖抑制が、SNUV-1を除く試験された癌細胞株の間で観察された。結腸癌細胞株、SNUC-1では、AM-R発現がRT-PCRでは検出できないが(図26B)、これはMoAb-G6がその増殖に対して、とても小さい効果しか持たないという理由であり得る。MCF-7に対する典型的なデータは図5Aに示され、これは同型コントロールマウス骨髄腫タンパク質(TEPC15、IgAκ、Sigma)が同投与量範囲全体では増殖阻止に非効果的であることを示している。MoAb-G6により誘導された腫瘍細胞増殖の抑制は、AMの外的付加によって除去され、10μMにて最大の回復をし、よって中和抗体による増殖抑制の特異性を証明している(図5B)。
【0034】
(5)AMレセプターはヒト腫瘍細胞株に存在し、AMは細胞内cAMPを増加させる。
AM-R mRNAのRT-PCR解析(図26B)に加えて、合成AM、及び125I−AM結合へのcAMPの反応は、反応している腫瘍細胞株での機能的AMレセプターの存在を明らかにする。いくつかの癌株は、125I−AMの選択的結合を示し、これは、乳癌細胞株MCF-7についての典型的データによって示されたように(図28C)、合成ホモログPO72、もしくは遺伝子関連ペプチドPAMPによって競合的に阻害されたものではなかった。データは、特異的結合が10nMでのIC50を伴う、投与量依存的なAMによる抑制を示す。MCF-7について示したように、このレセプターへのAMの結合は、10 pMから1 μM投与量範囲全体で、細胞内cAMPの迅速な増加を引き起こした。一方、PO72及びPAMPは、cAMPに対して何の効果も持たなかった。
【0035】
(6)成長及び発癌の間のヒト乳房上皮細胞の自己分泌成長因子としてのアドレノメジュリンの役割
AM mRNA発現は、RT-PCRを用いて4/4正常、6/6悪性乳房細胞において同定された。パラフィン埋包組織の免疫組織化学、及びin situ PCR解析により、11/11正常標本で、上皮細胞先端部分に選択的にAMの発現が局在した。悪性組織における同様の解析は、10/12の乳房CAでAMを示した。乳房CA中のAMの潜在的役割をさらに同定するために、腫瘍細胞株MCF-7を解析し、これは無血清/ホルモンなしの培養液での増殖適応をした。SDS−PAGE/イムノブロットによって評価した時、これらの細胞は18キロダルトン(kDa)、14kDa、9kDa、及び6kDaの免疫反応性AM様種を発現していることを示した。これらの種々の分子量存在物は、前駆体、本物のペプチド、及びAM生成中間物を表していると考えられる。加えて、発明者は、MCF-7がこのリガンドに対する高親和性レセプター(Kd=2 nM)を発現し、ソフトアガー分析において、細胞内cAMPが増加し結果としてクローン増殖が高くなることにより、外的AMに反応することを示す。抗AMモノクローナル抗体MoAb-G6は液体培養中でのMCF-7増殖の投与量依存性抑制を引き起こすことを示した。同型コントロールマウス骨髄腫タンパク質(IgAκ)は、同投与量範囲全体で効果がない。MoAb-G6増殖抑制は外的AMによって排除される。収集できるデータは、正常乳成長及び発癌において含まれる潜在的な自己分泌成長因子としてのAMを示す。
【0036】
(7)深刻な妊娠中毒症におけるアドレノメジュリンの調節
AMはヒト血漿中にかなりの濃度で存在する、強力で長時間作用する降圧性ぺプチドであり、血圧調節に関与する新規の循環ホルモンであると主張されている。特にAMは妊娠中毒症において機能すると考えられている。妊娠中毒症とは高血圧や突発性流産を伴う症状である。高血圧は妊娠の7%を悪化させ、妊娠中毒症は妊娠におけるすべての高血圧症の70%の原因となっている。現在のところ、妊娠中毒症を発病する可能性のある女性を同定するのに役立つ診断手段はない。それゆえ、明確な診断手段および治療法が必要とされているのである。
【0037】
妊娠中毒症及び関連する高血圧の疾病の原因をさらに理解するために、正常及び妊娠中毒症患者のホルマリン固定しパラフィン包埋した胎盤切片におけるAMの細胞局在を評価した。十分特徴の分かっているAM特異的ウサギポリクローナル抗体とストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ検出系(Vector laboratories)にて、確立された免疫組織化学的手法を用いた。正常患者の胎盤によって示される免疫染色と比較して、深刻な妊娠中毒症患者の胎盤では免疫反応性のあるAMが有意に減少していることがわかった。これらの結果は、妊娠中にAMが胎盤の環流と心臓血管系の調節に機能し得ること、調節異常が妊娠中毒症と関連し得ることを示唆している。
【0038】
本発明は妊娠中毒症の診断及び治療において有用であり、その点でこの技術分野の現在の状態の不十分な点を克服するのに有用である新規AMぺプチドを提供する。さらに、本発明の新規AMぺプチド及び抗体は、特定の疾患状態になりやすい人の体質の早期検出を考慮に入れている。
【0039】
(8)エストロゲンが誘導する子宮及び膣の増殖の間のアドレノメジュリンタンパク質レベルの亢進
一部、自己分泌/傍分泌因子を調節することによってエストロゲンが生殖管の増殖及び分化に対して効果を伝達することが、ますます増加する証拠によって示唆されている。エストロゲン処理後数分以内に充血の誘導、血管透過性の上昇と浮腫が起こり、その後続いて子宮上皮の同調的な増殖が起こる。これらの生理的な変化が目覚ましい性質を有するにも関わらず、エストロゲンがそれらを引き起こすメカニズムに関しては比較的少しのことしか分かっていない。血管に対するAMの既知の効果を考慮して、生理的な投与量のエストロゲンにて単回処理した後のAMタンパク質レベルの細胞特異的かつ一時的な調節を、確立された免疫組織化学的手法を用いて調べた。
【0040】
エストロゲン処理によって、子宮及び膣の両方においてAMタンパク質に特有の、上皮細胞特異的な局在が時間に依存して誘導された。(調べた最初の時点、すなわち12時間で明らかである。)子宮上皮におけるAMの誘導は一過性で、エストロゲンに曝露してから24時間以内に対照水準まで減少した。しかし一方で、膣での著しい発現は上皮において、処理後48時間まで保たれた。両器官の平滑筋細胞はかなりの免疫反応性を示し、それはエストロゲン処理によって変動しないように見えた。これらの結果は、エストロゲンが子宮及び膣の上皮においてAMタンパク質のレベルを時間依存的かつ器官特異的に亢進することを示唆している。AMの誘導はDNA合成開始より先に起こるため、同調的な増殖に好ましい条件を提供するのに必要な、血管透過性と子宮及び膣への還流とを上昇させることによって、 AMはエストロゲンが作用する際に機能し得るのである。
【0041】
(9)卵巣の機能におけるアドレノメジュリンの役割
血管増殖及び血管流量のダイナミックな変化が排卵期周辺と黄体期の間、卵巣で起こる。選択された卵胞における新生血管形成の開始は、アロマターゼ、LH受容体やインヒビンサブユニットなどの種々の分化マーカーの出現と平行していることが示された。加えて、黄体形成期に現れる新生毛細血管は、高い透過性を持ち、そのことによって、プロゲステロンの生合成に必要なコレステロールを運搬する低密度リポタンパク質などの巨大タンパク質分子の送達を促進することが分かっている。血管流量の調節におけるAMの既知の機能を考慮して、本明細書中の具体的な研究目的は、免疫組織化学によってラット卵巣におけるAMタンパク質の、細胞及び段階特異的な発現を検討することであった。卵巣が目立ったAMタンパク質発現を示した。AMは、毛細血管内皮細胞、大血管の平滑筋細胞、胚上皮、卵胞膜細胞へ、また、成熟卵胞腔の卵丘の内側に点在する顆粒膜細胞の中に、そして黄体内の多くの細胞に免疫局在していた。卵巣内のAMに対する最も著しい免疫反応性は黄体で見られ、その中ではより成熟した黄体が最多の染色陽性細胞数を示した。加えて、AMの強い局在が卵管上皮の頂端面と関係していることが見出された。黄体、成熟した卵胞及び卵管におけるAMの目立った発現は、AMが卵巣ステロイド生成、排卵に対して、そして恐らく、着床、受精、初期発生へと導ける環境を卵管内に備えるのに対して寄与し得るものであると意味している。ステロイド及びゴナドトロピンホルモンの影響下に種々の生殖組織においてAMタンパク質が存在することは、恐らく急速な増殖及び/または分化した機能を維持するのに必要な、適した血液供給の獲得を確実にすることによって、生殖作用においてAMが中心的役割を果たし得ることを示唆している。
【0042】
(10)神経伝達におけるアドレノメジュリンの役割
肺内在性神経系のニューロンにおけるAMの存在は、神経伝達への関与の可能性を指摘している。AMと構造上の相同性をいくらか有する分子であり( Kitamura, et al., Biochem Biophys Res Commun 192:553-560 (1993) )、特に肺に多量に存在する( Springall, et al., J Auton Nerv Syst 20:155-166 (1987) )CGRPに、類似の機能が割り当てられた。最近、ラット中枢神経系にAMを注入後、血圧調節に対して効果があるという記載がされた。( Takahashi, et al., Am. J. Hypertens. 7:478-482 (1994) )
【0043】
(11)肥満細胞のIgE非依存的脱顆粒誘導におけるアドレノメジュリン及びその遺伝子関連ぺプチドであるプロアドレノメジュリンぺプチド-20(PAMP-20)の役割
肥満細胞はアレルギー応答と密接に関係している。これらは、脱顆粒が起こったときに、続いてヒスタミンを遊離する顆粒を含む。肥満細胞を免疫組織化学的に染色し観察すると、顆粒中のAMの存在が明らかになり、また、マウス肥満細胞株はAMのmRNAを産生する。肥満細胞の自己の脱顆粒作因産生能力によって自己分泌的脱顆粒あるいは誘い込み( recruitment )が可能となる。従って、一次刺激を受け(抗原に対してIgEを発現する)、その後、抗原提示によって活性化された(すなわち脱顆粒が起こる)肥満細胞がAMを放出する結果、一次刺激を受けていない肥満細胞の脱顆粒をAMが引き起こせるような系にAMが放出されることになる(アレルギー応答が上昇する)。
【0044】
AM及びPAMP-20は、等電点がそれぞれpIAM=10.2、pIPAMP=10.1の塩基性ぺプチドアミドである。ある種の塩基性ぺプチド(サブスタンスP、VIP、ソマトスタチン、マガイニン-2、ガストリン、メリチン及びNal-arg-LHRH類似体)が、ラット肥満細胞からIgE非依存的にヒスタミンの遊離を引き起こし得ることが以前に示された。AM及びPAMP-20に関する同様の分析によってこれらのぺプチドが、ラット肥満細胞に対するEC50がそれぞれ7.9±3.9μM、0.47±0.23μMの強力な脱顆粒因子であることが明らかになった。AMはマガイニン-2と同程度にヒスタミンの遊離誘導に効果があり 、一方PAMP-20はNal-arg-LHRHと類似の生物活性に関して20倍強力であった。ラットの皮膚及び気道に関する免疫組織化学的試験によって肥満組織細胞におけるAM発現が確認された。さらに、RT-PCRによって分析したところ、マウス肥満細胞株の2/4(MC/9、10P2、10P12、11PO-1)がAMメッセージを発現していることが示された。集めたデータはAM/PAMP-20が、アレルギー性浮腫の液体浸潤過程に寄与し得た新規の血管拡張剤であることを意味している。加えて、これらのぺプチドがIgE非依存的なメカニズムを介してラット肥満細胞の脱顆粒を誘導することが示され、またこれらのぺプチドは、アレルゲンのない状態で隣接する肥満細胞が新たに引き入れられる( recruited )ような、通常の免疫応答に関して以前は知られていなかった経路を明らかにし得る。
【0045】
さらに、本発明の抗AMモノクローナル抗体(実施例4参照)は、肥満細胞の脱顆粒によって引き起こされるアレルギー反応をブロックするための治療方法として有用である。
【0046】
(12)AM/PAMPの保護作用の検討
AMが、正常ヒト気管支上皮及び常在性肺性マクロファージの頂端に発現していることが以前明らかにされており(Martinez, et al., Endocrinology 136:4099 (1955) )、そのことは、マガイニン及び気管抗菌ぺプチドのものと類似の保護作用があり得ることを意味する(Diamond, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:4596 (1993) ; Diamond, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3952 (1991) ; Schonwetter, et al., Science 267:1645 (1995) ; Zasloff, M., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:5449 (1987) )。
【0047】
ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター、ネコ、イヌ、ブタ及びアフリカツメガエル(Xenopus laevis)を含む様々な種由来の、外皮、気管、消化管、性尿路などの種々の上皮表面におけるAMの発現を、以前に記載された免疫組織化学及びin situ RT-PCRの方法(Martinez, et al., Endocrinology 136:4099 (1995) )を用いて試験することで検討した(図22も参照)。免疫組織化学的研究によって、ほ乳類の気管、消化管、及び尿道の上皮細胞にも肺の肺胞マクロファージ内にもAMが高レベルで発現していることが明らかになった。調べた種の気管において、繊毛を持つ細胞及びクララ細胞のすべてがmRNA(図22A)とこのぺプチド(図22B、22C)の両方に関して強く陽性であった。ぺプチドの場合、頂端領域に常に蓄積されていたが、そのことは肺管腔へのAMの活発な分泌を示唆している。
【0048】
皮膚を免疫細胞化学的調査にかけると、強い染色が同様に観察された。両生類の表皮においては、ほとんどのケラチン細胞は軽く染色されたがAMに対する最も強い免疫反応性は皮膚の単細胞腺にあった(図22D)。両生類の外皮に非常に特徴的な他の腺はまったく染色されなかった。ほ乳類では、AM様物質が成体及び発生の最終段階の胚の両方の表皮の至る所に均一に分布していた(図22E)。
【0049】
性尿路もAMに関して陽性であることが分かった。集合管のような腎臓の細管のほとんどと尿管表面の上皮が、調べたすべての種においてファロピオ管、子宮(図22F)及び膣とともに免疫反応性があった。
【0050】
消化管は抗菌ぺプチドの主な源の一つとして以前に示されており(Schonwetter, et al., Science 267:1645 (1995) )、実際AMはこの系においても発現していた。免疫反応性は主に唾液腺(図22G)、肝臓の胆管及び胆嚢上皮、十二指腸のブルンネル腺(図22H)、結腸管腔上皮及び同じ器官のいくつかの瓶形の内分泌細胞(図22I)で見られた。
【0051】
他のいくつかの免疫反応性のある細胞のタイプには、カエルの食道表面の繊毛を持った細胞、モルモットの膵臓の管系及びラットの脳の第三脳室上衣が含まれた。
上皮細胞におけるAMの広範な分布、AMの粘膜皮膚表面に沿った頂端の細胞局在及び腸管上皮のブルンネル腺への局在は、AMが粘膜の宿主防御に機能していることを示唆している。このような分布は、抗菌防御に関与する他の抗菌ぺプチドの分布と一致している(Zasloff, M., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:5449 (1987) )。
【0052】
(13)AM及びその遺伝子関連ぺプチド(PAMP)の細菌性及び菌性病原体に対する抗菌活性の評価
AM及びその遺伝子関連ぺプチド(PAMP)の抗菌活性を評価するために大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)及び鵞口瘡カンジダ(C.albicans)に対してミクロ希釈及びマクロ希釈アッセイの両方を行った。抗カンジダ属活性をさらに評価するために発芽アッセイも行った(Ghannoum, M.A. and Radwan, S.S., Candida Adherence to Epithelial Cells. CRC Press; Boca Raton, FLA. 1990 pp. 72-104)。
【0053】
最初の実験では24時間時点の濁度によって評価される最小の阻害濃度(MICs)を求めるために常法(National Committee for Clinical Laboratory Standards. Villanova, PAM7-A3, M27-P (1993))を用いたが、AMあるいはAM遺伝子関連ぺプチドと対照の間にMICsに有意な差は見られなかった。AM及び遺伝子関連ぺプチドの、ありふれた比濁分析試験では検出できないかすかな抗菌活性の存在を評価するために、経時的に増殖阻害を評価する細菌及び菌のtimed killアッセイ(Walsh, et al., Antimicrob.Chemother.17:75(1986); Roilides, et al., J. Infect Dis. 163:579 (1991) ; Roilides, et al., J. Leukocyte Biol. 57:651 (1995))を修飾してより感度が高く定量的な手法を行った。
【0054】
AM及びPAMPは培養後6時間でE.coli、P.aeruginosa、及びC.albicansに対して活性を持つことが分かったが、S.aureusには効果がなかった。AM(PO71及びPO72)とPAMP(PO70)のカルボキシ末端部分を代表するいくつかのぺプチド断片(Martinez, et al., Endocrinology 136:4099 (1995))はこれらの病原体に対する活性をわずかしか、あるいは全く持たなかった。しかし、予備結果からAMのアミノ末端の同類体(AM1-12)がミクロ希釈アッセイにおいてそのままのAMと同様の抗菌活性を及ぼし、それはこのAM断片が抗菌活性の原因であり得ることを含意していると示唆される。6時間インキュベーションした時点でAMとPAMPはアルブミン(陰性対照)、PO70、PO71及びPO72(p=0.03)、PAMP(0.0009)よりも高い増殖阻害活性を示した。AMは、P.aeruginosaに対するミクロ希釈アッセイにおいて等モルのヒトアルブミン対照と比べて5倍活性があった(p=0.0666)。
【0055】
次に抗菌活性をマクロ希釈アッセイで評価した。はじめ6時間の時点では、AMについては全く活性が観察されず、マガイニンについては並みの活性が観察され、さらに、PAMPによって生み出された非常に大きな活性が観察された(図23A)。しかし、24時間培養から、マクロ希釈パターンはAMがPAMPより幾分活性があり、マガイニンはAMあるいはPAMPのどちらよりも有意に抗菌活性が大きく、ミクロ希釈アッセイのパターンと似たものになった(図24B)。マガイニンは、光学的に澄んだ細菌懸濁液を与えた唯一のぺプチドであった。6時間インキュベーションした時点よりも24時間曝露した時点の方が、P.aeruginosaに対するAMとPAMPの抗菌活性が高かった(p=0.061)。
【0056】
AM、AM1-12、PAMPあるいはカルボキシぺプチドのS.aureusに対する明らかな増殖抑制活性は、ミクロ希釈あるいはマクロ希釈アッセイのいずれにおいても全く見られなかった。これは、このぺプチドに対してこの病原体が有する自然耐性を反映している可能性があり、そのことは、今度は表面電荷反発現象学、ペプチドの加水分解あるいは細菌の多糖バリアーが介する適切なぺプチド/宿主相互作用の欠如と関係し得る。
【0057】
(14)AM及び遺伝子関連ペプチド(PAMP)のC.albicansに対する抗菌効果
ヒトのありふれた粘膜菌性病原体であるC.aibicansに対するAM及び遺伝子関連ペプチドの抗菌効果を、マクロ希釈及びミクロ希釈アッセイによって評価した。抗栄養活性の傾向はE.coli及びP.aeruginosaに対して観察されたものより、特にアルブミン標準と比較したときにより小さかった。しかし、AM(73%±8.1)あるいはPAMP(79.7%±2.44)の抗菌効果対当ペプチドのカルボキシ末端部分(46.8%±11.1、p≦0.004)の間に、きわめて有意な構造/活性相関が見られた。AM及びPAMPの全活性はマクロ希釈アッセイにおいて減少したが、抗菌活性の比較パターンは類似していた。細菌について観察されたパターンと一致して、マガイニンはAMやPAMPよりもC.alibicansに対してより強力であった。
【0058】
C. albicansが粘膜表面に付着し、浸潤する発病において、発芽は重要な段階である(Ghannoum, M.A. and Radwan, S.S., Candida Adherence to Epithelial Cells, CRC Press; Boca Raton, FLA., pp 72-104)。それゆえ、C.albicansの発芽に対するAM及びPAMPの効果を、抗真菌活性のもう一つの指標として調べた。AM濃度を増加することによって、4時間インキュベーションした時点で有意な発芽阻害があった(図25)(p=0.048、ANOVA)。2時間インキュベーション後では発芽抑制について有意な傾向はなかった。
【0059】
AM及びPAMPの増殖阻害特性は、C.albicans、S.aureusに対してよりもE.coli、P.aeruginosaといった好気性グラム陰性菌に対してより効果があった。このように特異な抗菌活性はデフェンシン及びセクロピンについても観察される(Maloy, W.L. and Kari, U.P., Biopolymers (Peptide Science) 37:105 (1995) ; Lehrer, et al., Cell, 64:229 (1991))。例えば、ブタの腸管内に見られるセクロピンペプチドのアミノ酸配列に依存して、好気性グラム陰性桿菌(E.coli及びP.aeruginosa)とグラム陽性球菌(Micrococcus luteus、黄色球菌)に対する抗菌活性には深い差異がある。C.alibicansに対してAM関連ペプチドが最小限の増殖阻害活性を持ったのに対し、AMは細胞培養培地中の発芽に対して時間依存的に阻害効果を示した。
【0060】
これらの抗菌特性が達成される濃度は、マガイニン及びセクロピンの濃度よりも概して10から100倍高い。しかし、もしこれらのAM関連ペプチドの組織でのレベルが微小環境において高度に濃縮されているとすれば、報告されているin vitroでの抗菌活性も上皮細胞表面に沿って効果があり得る。抗菌効果は低接種物濃度で最もよく観察されたが、それは生物体がこれらのAM関連ペプチドを分解し得る、あるいはそれらの標的細胞は細菌効果のためにはより高いモル濃度を必要とし得ることを示唆している。AM関連ペプチドの抗菌メカニズムはこれからさらに解明されなければならない。抗菌ペプチドの多くは、高塩基性の特性及び標的細胞膜に対する両親媒性を共有している。AM及びPAMPの両方とも等電点がそれぞれ9.7及び11.1で、高度に電荷を有する成分である。それらのアミノ酸構造は、マガイニン1及び2の膜挿入能力を亢進しうる広範なアルファ/ベータ両親媒性領域を含む(Oppenheim, et al., J. Biol. Chem. 263:7472 (1988))。両ペプチドの両親媒性の分布及び理論上のらせん回転対称を、DNASTARソフトウエアで計算された通りに示す。
【0061】
これらのAM関連ペプチドの抗菌特性はその活性を測定するのに用いたアッセイに依存している。例えば、AM及びPAMPの活性はマクロ希釈アッセイよりもミクロ希釈アッセイにおいてより大きいように見えており、これはペプチドとガラスあるいはプラスチック表面の間に相互作用があり得ると示唆している。これらのペプチドの増殖阻害の速度論は、他の抗菌ペプチドと同様に相当異なり得る。適切な例として、マガイニンの抗菌活性はマクロ希釈で24時間の時点でますますはっきりと見えるようになったのに対し、一方でアドレノメジュリンは、恐らく加水分解のために活性を失ったように見えた。同様に、ヒスタチンとして知られる唾液ペプチド類は、加水分解によって活性が不活性化される前1時間から2時間しか持続しない、強力だが一過性の活性を及ぼす。(Oppenheim, et al., J. Biol. Chem. 263:7472 (1988))。
【0062】
リポ多糖を静脈内投与したラットの肺、肝臓、脾臓において最も高レベルにAMの発現が増加していることを示したShojiらの最近の報告、Biochemical and Biophysical Research, 215:531 (1995)が、宿主防御におけるAMの隠れた機能と一致している。これらの知見は、細菌性及び菌性の病原体に対する宿主の応答を伝達し得る細網内皮組織系における、本抗菌ペプチドの正の調節を示唆している。AM及びその遺伝子関連ペプチドの多様な内分泌学的、血液動態学的特性は、恐らく他の抗菌ペプチドはこれまで認識されていたよりも広範囲な非抗菌的な生理活性を有し得る、という示唆に結びつく。
【0063】
従って、本発明は新規アドレノメジュリンペプチドを、抗菌剤、抗真菌剤として使用するために提供するものである。特に、AMペプチドは酵母の膣感染、みずむし、鵞口瘡、癌患者で致死性肺炎の典型的な原因となる酵母感染の治療に有用である。
【0064】
本発明のAMペプチドは苦痛を軽減し、皮膚症状である細菌及び菌感染を予防するのにも用いられる。例えば、AMペプチドは感染予防のために外科切開に局部的に応用され得る。さらに、AMペプチドはすり切れた皮膚、皮疹及び皮膚の損傷に対して、感染を予防し治療を促進するために局部的に応用され得る。
【0065】
(15)インスリン分泌調節因子としてのアドレノメジュリン
AMはインスリン産生の調節に関係づけられた。AMは標的細胞内のcAMPを高め、ある種のホルモンの分泌を調節する。AMが何か機能的な役割をラット膵臓内分泌部で伝達しているかどうか決定するために、複数の分析方法を利用した。十分特徴の分かっている抗体を用いた免疫細胞化学によって、AMがランゲルハンス島の周囲に存在することが示された。二重免疫染色及び免疫電子顕微鏡法によってAMがD(デルタ)、つまりソマトスタチン産生細胞に貯蔵されていることが明らかになった。膵島におけるAM mRNA発現を確認するためにin situ RT-PCR法を用いた。単離された膵島を用いて、AMが濃度依存的にインスリン分泌を阻害することを示した。加えて、MoAb G6(抗AM)は、内因性のAM活性を抑制することによってインスリン分泌を6倍に増加させた(図19A参照)。RIAで示したように、AM添加に続いてcAMPの濃度が上昇した。要するに、AMは膵臓のD細胞に発現しており、インスリン分泌を減少させるのである。
【0066】
AMはインスリン及び尿中に分泌されるため、疾患状態の前兆として血清及び尿中のインスリンレベルを検出する診断手段は非常に有用であろう。従って、本発明の新規AMペプチドは様々な疾患状態の決定及び診断に有用である。特に、本発明のペプチド及び抗体はII型糖尿病の診断、治療、予防に有用である。
【0067】
(16)膵臓におけるAMの分布
様々な種由来の膵臓を、十分特徴の分かっているポリクローナル抗体(Martinez, et al., Endocrinology 136, 4099 (1995) )を用いた免疫細胞化学によって調べた。ヒト、ラット、ハムスターではランゲルハンス島がすべての細胞でAMに対して免疫反応性があった。しかし、周辺部の特定の細胞は他よりも強い陽性を示した(図18A及び図18B)。加えて、強く染まった細胞が多少、膵実質部の至る所あるいは管上皮細胞中に分散して見出された。モルモット、ネコ、イヌの膵臓では染色パターンは異なった。つまり、AM様の細胞のほとんどは実質に分散しており、免疫反応性を持った細胞は膵島の周辺に時々見出されるだけであった。この場合、β細胞では免疫反応性は全く明らかではなかった(図18C)。加えて、低い強度の染色がつねにモルモットの膵臓の管上皮において見出された(図18D)。膵臓の管細胞にAMが存在することは、多くの上皮でAMが同定されることと一致し、そこではこのペプチドは著しい抗菌活性と関係づけられている(T. Walsh et al., Science (under editorial consideration))。
【0068】
さらにAM様物質を含む細胞の性質を特徴づけるために、連続切片をAM及び主要な膵臓ホルモンに対する抗体で染色した。AMに対する弱い免疫反応性を膵島の至る所で認め、そこで他のすべてのホルモンと共局在していることを明らかにしたが、AMに関して強く陽性だった細胞は膵臓ポリペプチドとのみ共局在していた(図18E及び図18F)。この結果は以前の報告(H. Washimine et al., Histochemistry 103, 251 (1995))と異なっているが、これはソマトスタチンとの共局在はAM免疫応答性の周辺分布に基づいていることを示唆した。電子顕微鏡レベルでの二十免疫金染色によって、ラット膵臓周辺部の細胞においてAMの膵臓ポリペプチドとの共局在を確認した(図18G)。光学による免疫組織化学的データと一致して、AMを検出する免疫金粒子を他の内分泌細胞のタイプにおいて電子顕微鏡によってほとんど見いだせなかった(図18H)。
【0069】
AMは、膵臓の生理機能に関与しているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)及びアミリンと構造上の類似点をいくつか有する(K. Kitamura, K. Kangawa, H. Matsuo, T. Eto, Drugs 49, 485 (1995))。それにもかかわらず、これらの3つのペプチドの膵臓における分布は様々である。すなわち、アミリンは主にβ−細胞にインスリンと共局在し(Mulder, et al., Cell Tissue Res. 274, 467 (1993))、CGRPは膵臓神経にも膵島周辺の細胞にも存在する(B. Ahren and F. Sundler, Cell Tissue Res. 269, 315 (1992))。免疫反応性の特異的な分布は、吸収対照とともにAM抗体がアミリンあるいはCGRPと交差反応する可能性を排除している。
【0070】
(17)膵臓内分泌部調節におけるAMの生理的効果
膵臓ホルモンの分泌におけるAMの隠れた生物学的機能を同定するために、3つの実験モデルを用いた。すなわち、ラットから単離されたランゲルハンス島、培養β−細胞株、ラットにおける経口グルコース耐性試験である。
【0071】
新たに単離された膵島にAMを添加すると、インスリン分泌が濃度依存的に減少するという結果になった(図19A)。この阻害は1μMのAM濃度に対して78%にまで達する。AMを中和するモノクローナル抗体であるMoAb-G6を用いて(M. J. Miller et al., Science (under editorial consideration))、外因性のAMが存在しない場合、インスリン分泌が5倍増加するのを観察した(図19A)。明らかに、この著しい効果は膵島によって産生される内因性のAMの中和が原因である。外因性のAMを再び添加すると、投与量依存的な競合阻害という結果になった(図19A)。この観察と一致して、AMを加えると膵島においてcAMPレベルが上昇した(図19B)。
【0072】
β−細胞に対するAMの効果を調べるために、よく特徴の分かっている6つのインスリン産生細胞株、すなわちRINm、N289、TR4、CRL 2057、CRL 1777、CRL 2055(American Type Culture Collection, Rockville, MD)におけるAMの影響を検討した。これらの細胞株は、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で示したように(図20)、AM mRNAを発現していたが、AMあるいはモノクローナル抗体のいずれを投与した後にも、インスリン分泌の速度に変化は全く観察されなかった(結果は示さず)。これらの結果は、少なくとも培養しているβ−細胞ではAM受容体は発現しておらず、一見するともっと複雑な相互作用が膵島で起こっていると示唆している。この仮説を確認するために、125I-AM(細胞5×105あたり0.2 nM)の結合を肺腺癌を陽性対照として用い、RINm細胞及びNCI-H1264細胞について調べた。RINm細胞では結合は全く観察されなかったが(25 cpm)、 NCI-H1264では強い放射活性が見られた(2265 cpm)。ことによると、AMは内分泌あるいは傍分泌経路を介して、インスリン分泌を阻害する異なる細胞タイプを調節し得る。同様のメカニズムがアミリンに関して記述された(R. A. Pittner et al ., J. Cell. Biochem. 55s, 19 (1994))。 cAMP及びCa2+の増加を通してβ−細胞で働く受容体系がインスリン分泌を阻害するのではなく、誘導することが示されていたにもかかわらず(Holz, et al., J. Biol. Chem. 270, 17749 (1995))、 in vivoでのβ−細胞におけるAM受容体の存在は完全には特徴づけられない。一方、AMが他の受容体を介して作用する可能性は排除できない。3つのペプチドは構造的に相関しているため(K. Kitamura, et al., Drugs 49, 485 (1995))、AMはCGRP受容体に弱い親和性で結合し(Eguchi, et al., Endocrinology 135, 2454 (1994); Hall, et al., Brit. J. Pharmacol. 114, 592 (1995); Zimmermann, et al., Peptides 16, 421 (1995))、アミリン受容体に同程度に結合し得るという証拠がある。
【0073】
3つめの実験では、麻酔をかけていないラットを試験して経口グルコース耐性におけるAMの影響を測定した(プロトールNo. 95-062, NCI)。AMは静脈内投与後少なくとも20分間はインスリンの分泌を劇的に(p=0.003)ブロックするため、循環するグルコースのレベルは対照動物よりも有意に(p=0.006)高かった(図21B)。
【0074】
本発明で集めたデータは、AMをインスリン分泌及び血中グルコース代謝を調節し得る糖尿病発生性の新規ペプチドとして示唆する。厳密なメカニズムはこれから解明されなければならないが、単離した膵島の研究及び培養β−細胞株に関する分析によって、未知の第二の伝達物質の関与が示される。インスリン産生細胞株がAMメッセージを発現し、当ペプチドに対してかすかに免疫反応性をもつが、インスリン分泌能力は外因性のAMあるいはMoAb-G6のいずれによっても直接には影響されないということに注意するべきである。従って、単離された膵島の実験及びラットの生理機能におけるインスリン分泌の、AMによる調節は当初の推測よりも複雑な相互作用を含んでいる。AMの発現は(少なくとも心臓血管系において)腫瘍壊死因子−α、インターロイキン−1、リポ多糖、インターフェロン−γ、エンドセリン−1、アンギオテンシンII、サブスタンスP、ブラジキニン、トロンビン及び血管作動性腸ペプチドのレベルに影響されるため(S. Sugo, et al., FEBS Lett. 369, 311 (1995))、生物活性を有するこれらの物質のあらゆる組み合わせが、インスリン分泌の調節においてAMと関係し得る。実際、いくつかの報告で糖尿病の異なる形態をこれらの物質と結び付けている(G.S.Hotamisligil and B. M. Spiegelman, Diabetes 43, 1271 (1994); T. H. Jones, Clin. Endocrinol. 40, 703 (1994))。
【0075】
AMの生理的な効果は幾分一酸化窒素によって産生されるものと関係があるということも報告された(C. J. Feng, et al., Life Sci. 55, 433 (1994))。この関係は、cAMPを増加させるAMに関するシグナルトランスダクション経路とcGMPを増加させる一酸化窒素に関するシグナルトランスダクション経路が、標的細胞で相互作用するためであろう(Fiscus, et al., Neuropeotides 26, 133 (1994))。一酸化窒素合成酵素はランゲルハンス島に存在し、一酸化窒素はインスリン分泌を調節するため(Schmidt, et al., Science 255, 721 (1992); Worl, et al., Histochemistry 102, 353 (1994))、これらの2つの調節系間の相互作用を研究するのは興味深いだろう。
【0076】
AMのよく知られている血管拡張効果は膵臓の環流を増加させることによってインスリン分泌速度にも影響しうる。血流量とは無関係な膵島の実験で証明したように、これは主要なメカニズムではないが、さらに評価するに値する。
【0077】
正常な膵臓の生理機能と、糖尿病や肥満などの様々な病気状態におけるAMの相互作用に関してもっとよく理解することによって、これらの代謝異常を未然に防ぐために治療的な介入に関する新分野を定めるのに役立ち得る。
【0078】
(18)増殖調節因子としてのcAMPの役割
増殖調節因子としてのcAMPの役割は以前様々なヒト腫瘍細胞株において証明された(T. W. Moody, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90, 4345 (1993); Cho-Chung, et al., Life Sci. 48, 1123 (1991); Ishizuka, et al., Cancer Res. 54, 2129 (1994); Hoosein, et al., Regul. Pept. 24, 15 (1989); Yu, et al., Endocrinology 131, 1188 (1992))。この第二シグナル変換物質は腫瘍の増殖に対して二相性の効果を有し、それによってある例では増殖促進を伝達し一方で他の例では増殖阻害剤として機能することが報告された(Cho-Chung, et al., Life Sci. 48, 1123 (1991); Ishizuka, et al., Cancer Res. 54, 2129 (1994); Yu, et al., Endocrinology 131, 1188 (1992))。この二重の機能はcAMP依存性タンパク質キナーゼの2つの全く異なるアイソフォームであるRI及びRIIの相対量に依存していることが示された(Ishizuka, et al., Cancer Res. 54, 2129 (1994))。R1/R2アイソフォームは胚形成、細胞分化及び癌化の間に正反対に発現している(S. M. Lohmann and U. Walter, in Advances in Cyclin Nucleotide and Protein Phosphorylation Research, P. Greengard, et al., Eds. (Ravan Press, New York, 1984), vol. 18, pp. 63-117)。RIアイソフォームの上昇は細胞の増殖及び形質転換と相関し、一方でRII型の増加は増殖阻害及び分化と相関する(S. M. Lohmann and U. Walter, in Advances in Cyclin Nucleotide and Protein Phosphorylation Research, P. Greengard, et al., Eds. (Ravan Press, New York, 1984), vol. 18, pp. 63-117)。従って、これらのアイソフォームの相対量に依存してcAMPは増殖促進効果あるいは増殖抑制効果のいずれも引き起こす。
【0079】
AMの発現を調節する試薬がいくつか同定された。それらはインターロイキン−1α/β(IL-1α/β)、腫瘍壊死因子−α/β(TNF-α/β)、リポ多糖(LPS)、ある種の副腎皮質ステロイド、アンギオテンシンII、エンドセリン-1、ブラジキニン、サブスタンスP、アドレナリンなどの促進因子及び、フォルスコリン、8−ブロモ−cAMP、トロンビン、血管作動性腸ポリペプチド、インターフェロン−γのような抑制因子を含む(S. Sugo, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 203, 719(1994); Sugo, S., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 207, 25 (1995); N. Minamino, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 211, 686 (1995); S. Sugo, et al., FEBS Lett. 369, 311 (1995))。これらの因子の多くは炎症応答の間に免疫系の活性化を助ける。癌の原因及び予防に関する最近の総説で、興味深い指摘が2点された。すなわち、1) 細胞分裂の増加は癌のリスクの増加を引き起こし、それは特定のホルモンのレベルを増加させることによって促進されうる。2) 慢性感染あるいは炎症が世界の癌の3分の1に寄与している(Ames, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.92, 5258 (1995))。 IL-1α/β、TNF-α/-β及びLPSはAM発現を増加させることが知られている免疫炎症の作因であり、AMが腫瘍細胞株に対して栄養効果を伝達し得ることを考慮すると、これらの知見はAMを悪性形質転換させる潜在的な危険因子として間接的に示唆している。調べた腫瘍細胞株のほとんどはこのペプチドを発現していたため、腫瘍新生形質転換を中断させる介入戦略の一般的な標的の代表となり得る。
【0080】
本発明は、試験したヒト腫瘍細胞株のほとんどでAMが発現していること、AMが悪性障害において自己不死化状態へと駆り立てることができる自己分泌増殖因子として機能し得ることを明らかにしている。応答する腫瘍細胞株がAM受容体を発現することが示され、ペプチドを介した細胞内cAMPの増加を示した。これらの知見は病理標本由来の腫瘍組織においてAMが見出されるという報告(Martinez, et al., Endocrinology 136, 4099 (1995); Martinez, et al., J.Histochem. Cytochem. 43, 739 (1995))とあわせて、発癌におけるAMの正確な機能を決定するためにさらなる調査研究の必要性を指摘している。
【0081】
加えて、種間で類似したAMのアミノ酸配列と、細胞増殖に対する関連した作用を考慮して、本発明はこのペプチドと他の急激な細胞増殖部位(例えば胚形成、創傷治癒、胃腸代謝回転など)との関係とこの関係が進化の系統をたどってきた道程を評価する方法を提供する。
【0082】
実施例
本明細書の実施例は本発明の実施における様々な側面を例示することを意図したものであり、いかなる意味においても本発明を制限することを意図したものではない。
【実施例1】
【0083】
細胞培養
肺疾患のない死亡した患者より得られた正常な肺標本はUniversity of Pttsburghの薬理学科より提供された(プロトコールML1259)。肺癌の代表的な例を含む12のさらなるホルマリン固定されたパラフィン包埋塊(表1)はNational Medical CenterのNCI-Navy Medical Oncology Branchのファイルより得られた(Betesda,MD;プロトコール83-15)。5つの肺癌細胞株が本研究では用いられた。すなわちNCI-H146、H345(小型細胞肺腫)、H676(腺癌)、H720(類癌腫)およびH820(気管支肺胞癌)である。細胞は前に記載された(Siegfried,et al.,J Biol Chem 269:8596-8603 (1994))ように無血清、無ホルモンの培養液で増殖させた。およそ5X10細胞のペレットは4%パラホルムアルデヒド中で固定され、PBSで洗浄され、1mlの2%低融点アガロース(NuSieve,FMC BioProducts,Rockland, ME)に懸濁され、固体化され、通常の組織病理学的技術の適用の後にパラフィンに包埋された。mRNAは新鮮な細胞沈澱よりGlisinらのイソチオシアネート-塩化セシウム法(Glisin,et al.,Biochemistry 13:2633-2637 (1974))を用いて抽出された。正常なヒトの肺および副腎より得られたポリアデニル化されたRNAはClontech Laboratories(Palo Alto,CA)より購入された。
【0084】
【表1】

【0085】
SCLCは小型細胞肺腫を示す。分子は陽性の件数を示し、分母は調べられた件数を示す。
【実施例2】
【0086】
標準的な逆転写酵素(RT)-ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
3つのオリゴヌクレオチド(表2)がMilliGen/Biosearch 8700 DNA合成機(Millipore,Marlborough,MA)により作られ、PCRおよび期待される410塩基のPCR産物とのサザンブロット実験のためのプライマーおよびプローブとして用いられた。あり得るゲノムからの増幅を長い産物(644塩基)の存在によって区別するため、プライマーはAM遺伝子の3番目のイントロンをはさむように設計された(図1参照)。
【0087】
逆転写はSuperscript Preamplification System(GIBCO-BRL,Gaithersburg,MD)を用いて行われた。Perkin-Elmer 9600 Thermocycler(Perkin-Elmer,Norwalk,CT)が標本を増幅するのに用いられた。用いられたすべての緩衝液、酵素、およびヌクレオチドはApplied Biosystems(Perkin-Elmer/Cetus)より得られた。PCR産物は1%アガロースゲルを用いて電気泳動で解析され、臭化エチジウムの染色はUV灯下で観察され、その後サザン解析された。
【0088】
【表2】

【実施例3】
【0089】
サザンブロット解析
ゲルは1.5M NaCl-0.6M NaOH および1.5M NaCl-2Mトリス中で変性され、一晩の毛細管流輸送によって20XSSC中の0.2-μmニトロセルロースフィルターに移された。フィルターは真空下で80℃で架橋され、ハイブリダイゼーション緩衝液中に置かれた。アンチセンスプローブは標準的な手順を用いて32Pで末端標識された。プローブとのハイブリダイゼーションは42℃一晩で行われた。5X SSC-0.1%ドデシル硫酸ナトリウムおよび1X SSC-0.1%ドデシル硫酸ナトリウム中で室温の厳密条件で洗浄が行われた。フィルターは風乾され、コダックXAR5フィルム(Eastman kodak,Rochester,NY)にオートラジオグラフされた。
【実施例4】
【0090】
抗体の作製と特徴付け
AM前ホルモンの3つの断片(表2および図1参照)がFMOC化学を用いてMilliGen/Biosearch 9050 ペプチド合成機中で合成され、Beckman System GoldのRP-C18予備高速液体クロマトグラフィー(Beckman Instruments,Fullerton,CA)によって精製され、PO72と名付けられたペプチドの分子量は質量分析(Perkin-Elmer Sciex API III Plus, Foster Cit, CA)によって確認された。ペプチドPO72はキーホールリンペットヘモシアニン(Calbiochem-Behring,La Jolla,CA)とグルタルアルデヒド架橋を介して結合され、この結合物は以前に記載されたように(Cuttitta, et al.,J Clin Endocrinol Metab 67:576-583(1988))ニュージーランドシロウサギを過剰免疫感作するために用いられた。得られた血清は[125I]プロテインAを検出体とした固相(放射免疫検査)RIA(Cuttitta, et al.,J Clin Endocrinol Metab 67:576-583(1988))を用いて結合特異性および各々の力価について決定された。簡潔に記すと、試験ペプチドは96穴塩化ポリビニルマイクロタイタープレート(Dynatech Laboratories, Chantily VA)の個々の穴に受動的に吸着させ、その後プレートは非特異的な結合を最少化するために、リン酸緩衝液に溶かされた1%ウシ血清アルブミン(BSA)で被われた。試験ペプチドにはP070、P071、およびP072(社内合成)、AM、ガストリン、コレシストキニン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン様ペプチド1、8-アルギニンバソプレシン、血管活性腸ペプチド、オキシトシン、GRF、カルシトニン、CGRP、神経ペプチドY(NPY)、αMSH(Peninsula Laboratories,Belmont, CA),および負の対照としてBSA(Sigma Chemical Co., St.Louis,MO)が含まれた。力価スクリーンは1:100から1:204,800(2倍希釈列で)までの範囲を含んだ。AMに対して最高の力価を有し且つ関連するペプチドに対して最小の交叉反応性を持つ血清が全ての免疫組織化学的研究のために選ばれた。
【実施例5】
【0091】
ウェスタンブロット
腫瘍細胞株NCI-H720の全細胞溶解物は以前に報告された(Cuttitta, et al.,JClin Endocrinol Metab 67:576-583(1988))プロトコールに僅かな修正を加えたものに従って作製された。要約すると、細胞は最後に養分を与えられてから48時間後に採集され、PBSによって3回洗浄され、遠心分離(4℃で2000rpm 10分間)によってペレットにされた。ペレット(約5X10細胞)は以下のタンパク質分解酵素阻害剤すなわち、Pefabloc(Centerchem,Stanford,CT),およびbestatinおよびphosphoramidon(Sigma)のそれぞれを終濃度1mMで含む1mlのPBSに懸濁された。そして細胞懸濁液は均一化し、ソニケートし、超遠心分離によって澄明液とし、タンパク質の終濃度を決定した(Bio-Rad Laboratories,Richmond,CA)。
【0092】
細胞溶解物は10ー20%Tricineゲル(Novex, San Diego,CA)上の非還元的条件下で100V2時間の電気泳動によって分画化された。2ナノグラムのペプチドP072およびAMが正の対照標準として別々の穴に加えられた。ブロットの移動はチタニウム板挿入電極を装備した同一の装置によって成され、タンパク質は2弗化ポリビニル膜(Immobilon PVDF, Millipore) に30 V2時間で固定された。膜は1%BSA-PBSによって一晩でブロックされ、1000分の1希釈されたウサギ抗P072抗体(bleed 2343)で1時間処理され、PBSで3回洗浄され、28℃において1X10cpmの[125I]プロテインAに1時間曝され、PBSで6回洗浄され、乾燥され、コダックXAR5フィルムに対し-80℃で一晩オートラジオグラフされた。特異性の対照には抗原で予め吸収した(10nmol/ml P072)抗体で処理された同様の膜を用いた。
【実施例6】
【0093】
免疫細胞化学
正常肺、細胞株、腫瘍におけるAMの局在を調べるためにアビジン-ビオチン組織化学的染色法(Hsu,et al.,J Histochem Cytochem 29:577-580(1981)) が用いられた。全ての試薬はVectastain ABCキット(Vector Laboratories, Burlingame, CA)より得られた。パラフィン切片への抗体の滴定は1000分の1の濃度が免疫細胞化学的解析には適当であることを示した。ラットの副腎が正の対照として用いられた。負の対照は(1)1次抗体を非免疫血清で置き換えることおよび(2)抗体を10 nmol/mlの合成ペプチドP072で吸収することを含んだ。示した抗体はNPYに対して僅かな交叉反応性を示すので(図2参照)、このペプチドによる吸収もまた行われた。
【実施例7】
【0094】
In situ RT-PCR
AMの発現部位を決定するためにHybaid OmniSlide System Thermocycler(National Labnet Co., Woodbridge, N.J.)中でin situでmRNAを増幅する直接的な方法(Martinez,et al., J Histochem Cytochem, 43:739 (1995))が用いられた。ワックスが除かれた後切片に10μg/mlのプロテイナーゼK(Sigma)による37℃15分間の透過化を施した。逆転写はPCR反応の前にSuperScript Preamplification system (GIBCO-BRL)によって行われた。全てのスライドにおいて同調した”ホットスタート”を行うためにTaqポリメラーゼはPCR混合液に加えられるまでは特異的なモノクロナール抗体(TaqStart, Clontech)によってブロックされた。PCR混合液は2.5mM MgCl、200 μM デオキシNTP、100μM digoxigenin-デオキシUTP(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)、1ng/μlプライマー、50mM KCL、および10mMトリス-HCl pH8.3を含んだ。55℃のアニーリング温度で20サイクルが行われ、PCR産物はDigoxigenin検出キット(Boehringer Mannheim)を用い、キット製造者の指示に従って局在を調べた。対照はPCR混合液中において(1)逆転写酵素を除いたもの、および(2)プライマーのかわりに水を用いたものを含んだ。
【実施例8】
【0095】
抗体の性質の決定
bleed2343より得られた血清が1:1x10のEC50を示し、NPYに対してこの希釈率で1.0%以下(計算によると0.77%)の交叉反応性を、その他の試験ペプチド(図2)に対して0.1%以下の結合を示しており、AMに対して最も高い力価を示した。ペプチドP072(本来の抗原)とAMの間の結合の違いは塩化ポリビニル支持体に受動的に吸着させる時に起きた立体障害を反映しているのであろう。内部の断片としてP072抗原を含むより大きなAMペプチドはプラスチックの支持材に吸収された場合抗原決定基の有効性について選択的な利点を持った。あるいは、これらの二つのペプチド標的間の結合の違いはプレートへの受動的な吸収の際の吸着力の違いを反映していたこともあり得る。
【実施例9】
【0096】
ウエスタンブロット
NCI-H720細胞溶解物中タンパク質の電気泳動による分画化は約18,000および6,000の分子量を有する2つの免疫反応性のAM様分子種の存在を明らかにした(図3)。おそらくこれらのバンドはAM前駆体(185アミノ酸)および本来のペプチド(52アミノ酸)を表しているのだろう。これらのバンドの面体染色および正の対照は血清を抗原で吸収した後では除かれたことは検出の特異性を示している。
【実施例10】
【0097】
正常肺
ヒト正常肺においてはAMの免疫反応性は気管支および細気管支の円筒細胞(図4A-4D)、気管支腺の漿液細胞のいくつか、副交感神経の周核体(図5A-5D)、血管内皮(図5C)、いくつかの軟骨細胞(図6Aおよび6B)、肺胞マクロファージ(図7A )、および平滑筋中に見られた。軟骨細胞が染色された場合、軟骨板の中央の、より成熟した細胞だけが免疫反応性を示し、周辺の軟骨芽細胞は陰性であった。in situ RT-PCRはAMの免疫反応性を示す全ての細胞はAMのmRNAも発現していることを示した(図4C、5C、および7A)。免疫細胞化学およびin situ RT-PCRの両方の負の対照は染色の特異性を示した(図4B、4D、5B、5D、6B、および7B)。NPYで予め吸収することは染色に影響を及ぼさなかった(データは示さない)。
【実施例11】
【0098】
腫瘍細胞でのAMの発現
肺起源の腫瘍細胞がAMを発現しているか否かを決定するため、RT-PCRによって5つの細胞株が解析された(図8);それらのうち4つ(1つは小型3つは非小型肺癌)はAM mRNAを生産していたが、小型細胞肺癌であるH-146は陰性であった。免疫細胞化学およびin situ RT-PCRの手法はこれらの細胞株において同一のパターンでAMを検出した(図9Aおよび9B)。腫瘍による生体内でのAMの生産を調べ、AMの発現が培養手法による人為的なものではないことを確かめるため、異なる診断をされた20個の肺疾患のパラフィンブロックが解析された(表3)。免疫細胞化学によっては全ての小型細胞肺癌は陰性であったが15中10の非小型肺癌は陽性であった。in situ RT-PCR技術は5中2の小型肺癌がAM mRNAを発現したことを示した(図10Aおよび10B)。このことはこれらの腫瘍におけるAMペプチドの量が免疫細胞化学の検出限界以下であったことを示唆する。
【実施例12】
【0099】
ヒト正常組織および腫瘍細胞株におけるAM mRNAの発現
a.細胞株および正常組織:表3はRTPCR解析によってAM mRNAを評価した全ての細胞株のまとめであり、広範な(95%)発現を示している。評価された腫瘍細胞株は以下の通り:小型細胞肺癌(SCLS):H60、H69c、H82、H146、H187、H209、H345、H446、N417、H510、N592、H735、H774、H889、H1092、および非小型肺細胞癌(NSCLC):H23、H157、H460、H676、H720、H727、H820、H1264、H1385、H1404、H2087、H2228、A549、UMC11。乳癌:SK-BR-3、ZR75-1、MCF-7、BT-20、MDA-MD231、BT-474、H2380。大腸:H630、SNUC-1。神経系:T98G(グリア芽細胞腫)、C6(神経膠腫)、およびTC106、CHP100、TC17、PNET、Peii、SYSY、AS、LAN-1、KCNR-C、KCNR-DRA(末梢神経系の神経芽腫)。卵巣:NIH:OVCAR-3、SKOV3、OVT2、A2780、CP70。前立腺:DU-145。副腎:H295。軟骨腫:SW578。慢性単核球白血病:U937。全ての肺、副腎、大腸、およびH2380腫瘍細胞株はNCI-Navy Medical Oncology Branchより得られた。脳腫瘍はNCI,Pediatric Branchより得られた。その他の細胞株はATCC,Rockville,MDより得られた。RNA抽出、cDNA増幅、およびRTPCRは文献に記載されたように行われた(T.A.Murphy and W.K.Samson,Endocrinology 136, 2459 (1995))。細胞は無血清無ホルモンの条件で3X10-M亜セレン酸ナトリウム(R0)を含むフェノールレッド無しのRPMI 1640(Life Technologies, Gaithersburg, MD)中で37℃で5%COの条件で維持された(Siegfried,et al., J. Biol. Chem. 269:8596-8603 (1994))。
【0100】
b.抗体
以前に同定された抗PO72(HN-TVQKLAHQIYQFTDKDKDNVAPRSK ISPQGY-CONH)多クローン抗体であるAM断片(Martinez, A.,et al.,Endocrinology 136:4099-4105 (1995))がウェスタンブロッティング分析に使用された。
【0101】
MoAb-G6と呼称する単クローン抗体が、AMのPO72ペプチドに対して、以前に発表された方法論(Cuttitta, F.,et al.,Nature316:823-826 (1985))を修正した手続きに従って生産された。Balb/cマウスはグルタルアルデヒド架橋を介してカサガイヘモシアニンと結合したPO72ペプチド(結合比率1mg/1mg)によって高免疫化された。脾臓リンパ球は標準プロトコルに従い、マウス骨髄腫細胞系RNS1に融合された。その結果生じたハイブリッドは固相ELISA法を用いて抗PO72 MoAbの生産のためにスクリーニングされた。免疫応答ハイブリドーマは二度サブクローニングされ、大量培養へと拡張され、腹水生産のための種培養物として用いられた。MoAb-G6(IgAイソタイプ)は最高力価の抗体であり、固相PO72結合レジン(BioRad Affi-Prep 10, Richmond, CA,結合効率10mmolペプチド/mlレジン)でのアフィニティークロマトグラフィーによって上記腹水から精製された。抗体は125I-プロテインAを検出体として用いた固相RIAを用いて結合特異性を規定された(Cuttitta、F.、J.Clin.Endoclinol.Metab.67:576−583(1988))(図13参照)。要約すると、検定ペプチドは96穴塩化ポリビニルミクロタイタープレート(Dynatech Labs.,Chantilly, VA)の各穴に受動的に吸着され(50ng/well;一晩、4℃)、その後プレートは非特異的結合を最小にするためPBS中の1%BSAで被覆された。検定ペプチド(Peninsula Labs., Belmont, CA)は、AM、PO72、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、バソアクティブ・インテスティナル・ペプチド(VIP)、アルギニンバソプレッシン(AVP)、成長ホルモン放出因子(GRF)、コレシストキニン(CCK)、アミリン、ガストリン、オキシトシン、カルシトニン、α-メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)、膵臓ポリペプチド、チロシン−チロシンペプチド(PYY)、タバナス アトラタス トレハロース抑制ホルモン(Tabanus atratus hypotrehalosemic hormone)、ネガティブコントロールとしてのBSA(Sigma Chemical Co., St.Louis, Mo.)を含んでいた。これらの検定ペプチドはC末端チロシンアミド領域を持つか、あるいは構造上AMに類似しているために選ばれた。抗体は1:100から1:204.800の範囲での2倍連続希釈で検定された。
【0102】
c.mRNA抽出、RT-PCRおよびクローニング
オリゴヌクレオチドプライマーはMilliGen/Biosearch 8700 DNA合成装置(Millipore, Marlborough, MA.)を用いて合成された。AM検出のためのプライマーセットは次の通りであった。センス、AM250−270、5'-AAGAAGTGGAATAAGTGGGCT-3'(SEQ. ID. NO.8);アンチセンス、AM640−660、5'-TGGCTTAGAAGACACCAGAGT-3'(SEQ. ID. NO.9);内部プローブ(nested probe)用アンチセンス、AM541−561、5'-GACGTTGTCCTTGTCCTTATC-3'(SEQ. ID. NO.10)。予想される産物は410bpである。AM-R遺伝子増幅のためには次のプライマーが用いられた。センス、AM-R476−497、5'-AGCGCCACCAGCACCGAATACG-3'(SEQ. ID. NO.11);アンチセンス、AM-R923−946、5'-AGAGGATGGGGTTGGCGACACAGT-3'(SEQ. ID. NO.12);アンチセンスプローブ、AM-R788−811、5'-GGTAGGGCAGCCAGCAGATGACAA-3'(SEQ. ID. NO.13)。471bpの産物を生産する。RT-PCR、サザンブロッティング、ウェスタンブロッティングの手続きについては以前に述べられている(Martinez,et al.,Endocrinology 136, 4099 (1995))。簡略には、逆転写はSuperScript Preamplification System(Life Technologies)を用いて行われた。Perkin-Elmer 9600 Thermocyclerがサンプルの遺伝子増幅に用いられ、リガンドとリセプターの各々に対し55℃と61℃のアニーリング温度で35サイクル行われた。使用された緩衝液、酵素、ヌクレオチドはすべてApplied Biosystems(Perkin-Elmer Cetus, Norwalk, CT)から購入された。PCR産物は1%アガロースゲルを用いた電気泳動によって分析された。エチジウムブロマイド染色はUV光線下で観察され、その後32P末端標識プローブを用いたサザン分析が行われた。
【0103】
【表3】

【0104】
表3はRT-PCR分析によってAMおよびAM-RのmRNAを評価された腫瘍細胞系の一覧を示しているが、発現が多くの腫瘍細胞に行き渡っていることを表している。評価された腫瘍細胞は様々な種類の組織に由来し、それらはRT-PCRさらにサザンブロッティング分析によって評価された結果、55/58(95%)がAM mRNA を27/36(75%)がAM-R mRNA を発現している。ndは未評価を示す。
【0105】
いくつかの組織がノザンブロッティング分析によってAMを発現しないという事実は、AMの存在を排除するものではない(表4参照)。例えば、全脳などの異種の組織も、RT-PCRではAMの発現を示すが、ノザンブロッティングでは示さない。表4はRT-PCR分析によってmRNAを評価された正常組織の一覧を示している。以前にノザンブロッティング分析によって報告されている組織(Kitamura, K., et al.,BIochem. Biophys. Res. Commun. 194, 720 (1993))の他にも多くの組織がAMを発現している。すべての正常ヒト組織polyA+RNAはClontech(California)を通して入手され、初代上皮細胞はClonetics(California)から購入された。
【0106】
表4はRT-PCR分析によりAM mRNA が評価された正常組織の一覧を示す。ノザン分析を用いたKitamura, et al.の結果とRT-PCRを用いた今回の結果との比較を示してある。いくつかの組織はノザンブロッティングで検出されなかったが、増幅した結果陽性となった。ndは未評価を示す。
【0107】
【表4】

【0108】
d.サザンブロット
ゲルは1.5M NaCl/0.6M NaOH(30分、×2)中で変性し、1.5M NaCl/2M Tris(30分、×2)中で中和した後、20×SSC中の0.2μmニトロセルロースフィルター上に、一晩での毛管流動転移でブロットした。フィルターは80℃真空下で架橋し、ついでプレハイブリダイゼーション緩衝液中で加温した。アンチセンス内部プローブはT4キナーゼを用いて標準の手法で32P末端標識した。標識プローブ(1×10cpm/ml)とのハイブリダイゼーションは一晩、42℃で行った。室温での厳しい条件下での洗浄は5×SSC/0.1%SDS中(30分)で、さらに1×SSC/0.1%SDS中(30分)で行った。フィルターは空気乾燥の後、kodak XARSフィルムにオートラジオグラフィーを行った。
【0109】
e.ウェスタンブロット
全細胞溶菌液は文献に報告された改変プロトコル(Cuttitta, et al., Nature 316:823-826 (1995))に従って生産した。要約すると、細胞は最後の培地補給から48時間後に採取し、冷却されたPBSで3度洗浄した後、遠心分離(2.000rpm、10分間、4℃)でペレット状にした。ペレット(約5×10細胞)は以下のプロテアーゼ阻害剤を各々最終濃度1μM含む1ml PBS に再懸濁した。すなわち、ペファブロック(Centerchem Inc., Stanford, CT )、ベスタチン、およびフォスフォラミドン(Sigma)である。細胞懸濁液はホモジネートし、音波処理し、超遠心によって澄明にした後、最終的なタンパク質濃度を決定した(BCA kit, Bio Rad Laboratories, Richmond, CA)。細胞溶解液は2×トリシン試料緩衝液に、タンパク質濃度約35μg/50μlとなるよう希釈し、95℃で3分間加熱し、試料溝に導入した。
【0110】
細胞溶解液は10-20%トリシンゲル(NOVEX, San Diego, CA)上で100ボルト2時間、非還元状態での電気泳動によって分画した。2ngのペプチドPO72とAMをポジティブコントロールとして別々の試料溝に導入した。転移ブロッティングはチタン板電極を備えた同じ装置で行われ、ポリビニルジフルオリド膜(ImmobilonPVDF, Millipore)に、30ボルト3時間で転移させた。膜を1%BSA-PBS中で一晩ブロックし、ウサギ抗PO72抗体(breed #2343 )の1:1000希釈液中で1時間加温し、PBS中で3回洗浄し、1×10cpmの125I−プロテインAに30分、4℃でさらし、PBS中で6回洗浄し、乾燥した後、一晩-80℃でKodak XARS フィルム上にオートラジオグラフィーを行った。特異性コントロールには、抗原で予め吸収処理した(10mmols/ml PO72)抗血清中で加温した同様の膜を用いた。
【0111】
f.HPLCによる同定
肺のカルシノイド(がん細胞)細胞系H720は無抗血清/無ホルモン状態(RO)で RPMI-1640中での生育に慣らされ、その結果生じた馴化培地(ROCM)はHPLC分画(Siegfried, J.M., et al.,J. Biol. Chem.269:8596-8603; and Reeves, J.M.,J Biol. Chem. 263:1928-1932 (1989))にかけられた。プロテアーゼ阻害剤が、全細胞溶解液について述べたのと同じように、連続して採取された1 リットルのROCMに加え、次の処理までの間4℃に保管した。プールされたROCM(10リットル)は凍結乾燥し(Freezemobile 12EL, Virtis, Gardiner, NY)、蒸留水で500mlに再構成した後、遠心し、粒子成分を除去するために濾過滅菌(0.45μm)を行った。その結果生じた濾過液は、補助回転ポンプ(Ranin, Wobern, MA.)を用いて15ml/分の流出速度で半調製用CI8カラム(DeltaPak, Millipore, 30×300mm)にロードした。カラム結合物は0.1%TFAを含む5〜60%アセトニトリル勾配を用いて選択的に150分かけて溶離し、210と280nm(Beckman System Gold HPLC, San Ramon, CA)において検査された。12ml/分の分画を集め、凍結乾燥し、次の処理までの間-80℃に保管した。保管された分画は、2×トリシン試料緩衝液に再懸濁し、上に述べたウェスタンブロッティング分析にかけた。
【0112】
g.免疫組織化学
RO中で生育した腫瘍細胞系から採取した細胞ペレットは、それぞれ4%のブアンのパラフォルムアルデヒドにて2時間固定し、1%の低融点アガロースに埋め込み、さらにパラフィンに埋め込んだ。切片はアビジン−ビオチン複合体(ABC)法を用いて染色した。要約すると、ウサギ抗ヒトPO72抗体(1:1000)と共に一晩加温の後、細胞はビオチン化されたヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(1:200, Vectastain, Burlingame, CA)と共に、ついでアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(1:100, Vectastain)と共に加温した。抗血清の、10nmols/mlのヒトPO72と前加温したものを、吸収コントロールとして用いた。結合抗体はジアミノベンジジン(Sigma)とHOを用いて可視化した。切片はヘマトキシリンによって軽く対比染色した。
【0113】
h.in situ RT-PCR
分析は細胞系と組織において文献に記述された方法(Martinez, A., et al.,J. Histochem. Cytochem. 43:739-747 (1995))をそのまま用いて行われた。要約すると、切片はシラン化スライドに乗せ、脱パラフィン化し、プロテイナーゼKで透過処理し(10μg/ml, 15分、37℃)、逆転写を行った(Superscript II,Life Technologies)。PCRはOmnislide thermocycler(Hybaid, Holbrook, NY)で20サイクル後完了した。PCR混合物の組成は標準PCRで用いられた溶液と同様であり、そこに産物を標識するためにDigoxigenin-11-dUTPを添加した。Digoxigenin標識アンプリコン(欠損ウィルスベクター)はdigoxigenin検出キット(Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)によって可視化した。RT工程の省略あるいはPCR混合物における特異的プライマーの省略をネガティブコントロールとして用いた。
【0114】
i.生育分析
MTT法が文献に記述された通りに行われた(Nakanishi, Y.F., et al.,Exper. Cell Biol. 56:74-85 (1988))。要約すると、2×10細胞/ml(50μl/well)からの単細胞懸濁液を96穴PVCプレートに植え、適当な濃度のMoAb-G6とAMを50μlの量で加えた。分析はTIS培地(RMPI 1640 plus 10μg/ml transferrin, 10μg/ml insulin and 3×10−8M sodium selenite)中で行った。5日間の37℃,5%COの加湿インキュベーターでの生育の後、MTT分析(Carmichael, Y.F., et al., Cancer Res.47:943-946 (1987))の変法であるPromega Proliferation Assey(Madison, WI)からの色素と可溶化溶液を加えた。Biorad Microplate Manager plate reader and software を、色素還元からの生存可能細胞の数の変化の決定に用いた。細胞数は570nmの吸光度の測定で評価した。
【0115】
【表5】

【0116】
表5はMoAb-G6によって引き起こされる阻害効果およびAMの追加による回復の一覧を示している。生育阻害は検定された細胞系においてコントロールすなわちMoAb-G6の添加がないものと比べて、25-60%の範囲で起こっている。さらに、MoAb-G6の効果を合成AMの添加によって逆転させることにより、特異性が証明された。結腸がん細胞系SNUC-1はMoAb-G6に反応しなかった。値は3回の異なる実験における24穴の平均値と、それらの標準偏差(s.d.)である。CA=carcinoma。
【0117】
j.リセプター結合
リセプター結合分析は文献に記述された通りに行われた(Moody, T.W., et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:4345-4349 (1993))。要約すると、細胞(5×10)をフィブロネクチンに被覆された(20μg)24穴プレートに置いた。モノレヤー細胞層が形成されたころあいに、細胞をTIS緩衝液中で4回洗浄し、その後リセプター結合培地(TIS plus 1% BSA および 1mg/ml バシトラシン)と共に加温した。細胞を125I-AM (Phoenix Pharmaceuticals) と共に30分間37℃で加温した。リセプター結合培地中で4回細胞を洗浄した後、細胞を0.2N NaOH に溶解し、ガンマカウンターで計数した。
【0118】
k.cAMP分析
サイクリックAMPはNew England Nuclear(Boston, MA)から購入したキットを用いてRIAによって分析した。24穴プレートの細胞を1% BSA、1mg/mlバシトラシン、100μMイソブチルメチルキサンチンを含むTIS培地に再懸濁した。AMを0.1pMから10μMの範囲で加え、5分後に同量のエタノールの添加によって反応を終結させた。上清はRIAキットを用い、製造者の指示に従ってcAMPを検査した。
【実施例13】
【0119】
ヒト腫瘍細胞系によるAM分泌の証明
選択されたがん細胞系を無血清、無ホルモン培地(RO)中での生育に適応せ、結果として生じた個々の腫瘍細胞系の全細胞溶解液と正常組織抽出物は、文献で同定されたウサギ抗AM抗血清(Martinez, et al., Endocrinology 136, 4099 (1995))を用いたウェスタンブロッティング分析によって検査した。図14Cは同定されたAM様免疫反応性ペプチドの電気泳動の様子を示している。分子量18、14、6kDaの3種がそれぞれAM前駆体、プロセシングを受けた中間体、真正ペプチドと同定された。全ての腫瘍細胞系が真正ペプチドを示す6kD本体の存在を示したわけではなかった。免疫検出分析の特異性は、抗体吸収コントロールによって確認した。抗体吸収は特異的なオートラジオグラフィーでのバンドの形成を消失させた(図14D参照)。
【0120】
腫瘍細胞による真正AMの発現をさらに確証するために、RO馴化培地のHPLC分画を肺カルシノイド細胞系NCIH720について分析した。要約すると、H720細胞を約5 リットルの無ホルモン培地で大量調製し、10培の濃度まで凍結乾燥した。ついでH720馴化培地(CM)を0.45μmのフィルターを用いて濾過滅菌した。HPLCクロマトグラフィーへの準備のため次にあげるプロテアーゼ阻害剤をCMに添加した。すなわち、ペファブロック1μM、ベスタチン1μM、ホスホルアミドン1μMである。CMは、150分間で5〜60%のアセトニトリル勾配(0.1%trifluoroacetic acid含有)を用いたBeclunan System Gold HPLCに取り付けた半調製用のC18カラム(30×120mm)上にロードした。12分画を収集し、凍結乾燥し、適当な量の緩衝液に再懸濁した。図15Aは注入前に500mlに濃縮された5リットルのH720 CMの分画の様子を、89.4分(矢印)での合成AMの溶出時間と比例して示している。図15Bと15Cは、H720 CM中では固相でも(図15B参照)、ウェスタンブロッティング分析でも(図15C)、AMの免疫反応が約88.8分に出現することを示している。ウェスタン分析は88〜92分の分画は6kD本体を含み、124〜129分の分画は14と18kDの本体を含むことを示している。
【0121】
細胞系NCIH720はカラム溶出時間が合成ペプチドのそれ(89分)と一致するAM様免疫反応性を含んでいた(図15A、15B)。さらに、88分〜92分の連続したHPLC分画の免疫ブロット分析は、主要な6kDの免疫反応バンドを示し、122〜129分の分画は18と14kDの存在を示した(図15C参照)。このように、RO適応ヒト腫瘍細胞系は真正AMを発現することが、二つの異なる生化学技術によって証明された。
【実施例14】
【0122】
AMによるヒト腫瘍細胞の増殖制御
パラフィン包埋R0適応細胞系列を免疫組織化学試験およびin situ RT-PCR(マルチネス,ら.,j.Histochem.Cytochem. 43,739(1995))を行うことにより観察して、一定の結果が得られた。AMをヘテロに発現させると、個々のコロニーの細胞外膜(増殖部位)に特異的に非常に強い染色が観察され、この発見から、増殖制御にAMが関与することが示唆された。この仮定についてさらに評価するために、特に肺、大腸、胸(breast)、脳、および卵巣細胞系列のようないくつかの腫瘍細胞系列の増殖に対するAMの効果を調べるために、MTT検定技術を使用した(D.N.カルネー,ら., Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A. 79,3185(1981))。R0増殖細胞の培養液にAMを添加すると(0.1nMから100nM)、高濃度では非特異的な毒性が見られたが、増殖刺激にはなんの効果もみられなかった。試験した細胞系列は内在的なAMペプチドを生産することが知られていたため、外部由来のリガンドにより増殖を刺激することができないのは、すでに自身のAM生産機構を使用して最大増殖効果にすでに到達しているためと考えられる。
【0123】
同時に、内在的なAMの生物活性を阻害するためにMoAB-G6を使用した。このモノクローナル抗体は、AMの合成類似体(P072)であり本来のペプチド構造の3分の2に相当する(TVQKLAHQIYQFTDKDKDNVAPRSKISPQGY-NH(配列番号14))に対して作成した。免疫、融合、およびハイブリドーマスクリーニング過程は、先に記述されたように行った(カッティタ,ら., Nature 316, 823(1985))。IgAのサブタイプであるMoAB-G6は、他の既知のチロシンアミドペプチドまたは構造的に類似したCGRPおよびアミリン(amylin)と交差反応しなかった(図13参照)。in vitroで使用する前に、MoAB-G6を固相抗原カラムを使用して腹水液より親和性精製し、0.1Mクエン酸(pH 3.0)で60分のところに溶出した。合成AMのみを添加すると、高濃度にて(10uM)わずかな抑圧(〜10%)が誘導された(図17B)。いくつかのヒト腫瘍細胞系列(NCI-H157, NCI-H720, MCF-7, SNUC1およびNIH: OVCAR-3)の増殖に対するMoAB-G6の効果を調べるためにMTT検定を行い、いずれの場合にも(5つの細胞中5つ)量依存的な抑圧が観察された。最大増殖阻害は、試験した細胞系列について20から55%の範囲であった。MCF-7についての代表的データを図17Aに図示し、これは等張コントロールであるマウスミエローマタンパク質(TEPC 15, IgAκ, Sigma)は同じ範囲の投与量では増殖阻害効果がないということを示している。MoAB-G6によって誘導される腫瘍細胞の増殖阻害は、AMを外来的に添加することによって阻害され(最大に回復するのは10uMである)、従って、免疫増殖抑制の特異性が証明された(図17B)。
【実施例15】
【0124】
免疫細胞化学による膵臓におけるAMの分布の決定
ラット、ハムスター、モルモット、ネコ、およびイヌの膵臓を、ブアン液(Sigma,セントルイス、ミズーリ州)にて固定し、パラフィンに包埋した。アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合法(ヒュー、ら., J Histochem Cytochem 29: 577-580(1981))を以前に同定されたAMに対するポリクローナル抗体(マルチネス、ら., Endocrinology 136, 4099(1995))およびインシュリン、グルカゴン、ソマトスタチン、および膵液ポリペプチドに対する商業的に入手可能な抗体(Accurate Chemical&Scientific Corp.,ウエストバリー、ニューヨーク)を使用して行った。負のコントロールには、一次抗体の代わりに同じウサギ由来の免疫前の血清、および10nmol/mlの合成ペプチド(AMまたはCGRP)により予め吸収した抗体を用いた。免疫電子顕微鏡用に、3匹のラットにカコダイレート緩衝液中な2.5%パラホルムアルデヒド+2.0%グルタルアルデヒドを灌流させた。膵臓の小片を脱水して樹脂の中に包埋した。超薄切片をニッケルグリッドにマウントし、先に記載されたように二重金免疫法を行った(マルチネス、ら.,J HistochemCytochem. 43,739(1995))。
【0125】
図18Aは、ランゲルハンス島全体が少し免疫反応を示し、表面細胞が強く染色されたラットの膵臓を示す。対比染色はこの切片について行っていない。図18Bは、同じパターンを示すハムスター膵臓について説明している。図18Cは、免疫反応を起こした多くの細胞が柔組織に散らばっているイヌ膵臓について説明している。図18Dは、モルモットの膵臓の導管システムにおける免疫反応を図示している。導管細胞よりも内分泌細胞の方が強く染色されていることに注目する。図18Eは、AMで免疫染色したハムスター膵臓の連続切片を示し、図18Fは膵液ポリペプチドが両方の免疫反応と共局在することを示す(矢印)。図18Gは、左にある細胞中でAM(小さな金顆粒、10nm)および膵液ポリペプチド(大きな金顆粒、20nm)の共局在を示す電子顕微鏡による二重金免疫染色について説明している。負のα細胞の小断片が右側に観察できる。挿入した図は両方の免疫反応を含む2つの分泌顆粒を大倍率に拡大して示す。図18Hは、ソマトスタチン(小さな顆粒)を含む分泌顆粒においてAM(大きな顆粒)に対して免疫反応を示したD細胞の詳細を示す。
【実施例16】
【0126】
AMはcAMP増加させ、およびヒト腫瘍細胞系列にはAM受容体が存在する
以下のすでに確立された手法(T.W.モーディー., Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.90, 4345(1993))に従い、ヨウ素化したリガンド(Phoenix Pharmaceuticals)およびcAMPの合成AMに対する反応を用いて、腫瘍細胞系列におけるAM受容体の存在を解析した。いくつかのがん細胞系列は、125I-AMが選択的に結合し、この結合は合成類似体P072または遺伝子関連ペプチドPAMPによって競合的に阻害されなかった(図19A-チェック)。このデータは特異的結合が10nMのIC50で量依存的にAMによって阻害されることを示す。さらに、この受容体システムに対するAMの結合により、10pMから1μM(ED50 5nM)の範囲で細胞内のcAMPが急速に直線的に増加し、最大では通常のコントロールの3倍になった(図19B)。反対に、P072およびPAMPはcAMPに対して効果はなかった。
【実施例17】
【0127】
単離したラット小島からのインシュリン放出に対するAMおよびMoAb-G6の効果の決定
AM添加に引き続く小島における細胞内cAMPの量依存的な増加。6匹のラット由来の小島をよく知られている手法にしたがって単離した(グレイ、ら., Diabetes 33, 1055(1984))。測定は24穴プレートで行った(穴ごとに90個の小島)。5.6mMグルコースを含むRPMI-1690培地で45分間インキュベートした後に、20.6mMグルコースおよび適切な濃度のAMおよび/または抗体を含むRPMI中で二回目のインキュベートを行った。両方のインキュベーションの上清をインシュリン用の放射免疫検定(RIA)で試験した(Amersham, アーリントンハイツ、イリノイ州)。高グルコース濃度の上清におけるインシュリン濃度と、低グルコース濃度溶液で測定したインシュリン濃度の比率を縦軸に示す。培地を回収した後、同じ実験由来の小島を、cAMP濃度の解析(コルマン,ら.,Cancer Res. 46, 1214(1986))のために保存した。小島を50%エタノールで抽出し遠心して、業者の手引書にしたがって上清をRIAキット(New England Nuclear,ボストン、マサチューセッツ州)を使用してcAMPについて試験した。実験は3回繰り返し行い、その代表例を示す。データは2つの穴の平均値±標準偏差である。
【実施例18】
【0128】
サザンブロット
サザンブロッティングに使用したmRNAは、正常組織の場合には購入(Clontech,パロアルト、カリフォルニア州)、またはマイクロファストトラックキット(Invitrogen,サンフランシスコ、カリフォルニア州)を使用して細胞系列から抽出した。逆転写(RT)、ポリラーゼ鎖反応(PCR)、およびサザンブロットを、先に記載された方法にしたがって行った(マルチネス、ら., Endocrinology 136, 4099(1995))。AM遺伝子のもっとも保存された領域を認識するプライマーセットを作成し使用した。プライマー配列はセンス(AM250-270)5'-AAG-AAG-TGG-AAT-AAG-TGG-GCT-3'(配列番号15);アンチセンス(AM523-542)5'-TGT-GAA-CTG-GTA-GAT-CTG-GT-3'(配列番号16)。サザンに使用するプローブは(AM430-450)5'-TCT-GGC-GGT-AGC-GCT-TGA-CTC-3' (配列番号17)。これらのプライマーにより292bpの産物が生じる。単離したバンドの塩基配列の解析により、RT-PCR産物と一致したことが確認された。
【実施例19】
【0129】
グルコース耐性試験
グルコース耐性試験を、スプラグードーリーラットを用いて(250から300g)AMの存在下(○)または非存在下(●)にて試験した。(図21A)有意なインシュリン量の違い(p<0.01)がAMを静脈注射してから20分後に観察される。(図21B)循環グルコース量も注射してから1時間後に有意に高くなる(p<0.01)。グルコース耐性法は以前に報告された(ブラウン、ら.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med. 150,557(1975))。6匹のラットに胃への挿管を介してグルコース溶液(400mg/100g体重)を投与した。グルコースのローディングに引き続いて眼球血液試料を一定間隔で回収し、グルコース濃度を色素検定(Sigma)によって決定した。血液のインシュリン量を放射性免疫測定(Amersham)によって同じ試料について決定した。3日後、同じラットに静脈内注射によって体重1gあたり1μlのAM(60μM)を投与し、耐性試験を繰り返した。データは6匹の動物についての平均値±標準偏差である。二テールのスチューデント検定を行って統計的な有意性を決定した。(*)は統計的な有意性を示す(p<0.01)。
【実施例20】
【0130】
異なる種のさまざまな器官におけるAM mRNAの局在および免疫活性
in situ RT-PCRおよび免疫組織化学をマルチネス、ら., Endocrinology 136,4099(1995)に記載されたように行った。簡単に言えば、in situ RT-PCRで使用した組織を4%パラホルムアルデヒドで固定し、免疫組織化学用の組織はブアン液(Sigma Chemical Co.)で固定した。in situ RT-PCRに用いるコントロールは、特異的プライマーを水で置き換えて逆転写段階を省略したものを含む。免疫組織化学用の負のコントロールは、10nmol/mlの合成AMで抗体をあらかじめ吸収したものまたは免疫前の血清で一次抗体を置換したものを含む。
【実施例21】
【0131】
大腸菌の増殖阻害におけるAMPおよびPAMPの効果
大腸菌の増殖阻害を、マイクロ希釈時間経過致死検定で測定した(図23参照)。トリプシンソイアガー(TSA)およびサブロード(Sobouraud)デキストロースアガー(SDA)プレートでそれぞれ一晩培養した細菌およびカンジダアルビカンをRPMI-1640培地(Bio-Whittaker)に懸濁し、プラスチックマイクロ希釈プレート内で200μl中に最終濃度が8x10cfu/mlになるように調節した。AM関連ペプチド、マガイニン、およびアルブミンを8uMから300uMの範囲で等モル濃度量ずつ添加した。プレートを24時間ゆっくりと振盪させながら37℃でインキュベートした。6時間および24時間の点で、それぞれの穴から10から50ulの液体をTSAおよびSDAプレート上で連続的に100倍希釈して定量的に培養した。
【実施例22】
【0132】
AMおよびPAMPの抗微生物活性
AMおよびPAMPの抗微生物活性を、大腸菌を培養してから6時間後にマイクロ希釈検定を行って決定した(図24A参照)。6時間ではAMについては最初活性は観察されず、マガイニン(M)には少し活性が観察され、そしてPAMPでは高い活性が観察された。24時間インキュベーションすると(図24B参照)、増殖阻害活性はPAMPよりもAMの方がわずかに活性が高かったが、マガイニンはAM(p=0.006)またはPAMP(p=0.004)のいずれよりも活性が高かった。データは6回の実験をまとめたものである。マイクロ希釈検定は、12x75mmホウケイ酸ガラスチューブ内で行った。ロイライド、E.,ら., J Infect Dis. 163; 579 (1991)に記載されたように細胞を培養し回収し、最終的に400ulに8x10cfu/ml濃度になるように調節した。AM関連ペプチド、マガイニン、およびアルブミンを8uMから300uMの範囲で等モル濃度量ずつ添加した。チューブを24時間ゆっくりと振盪させながら37℃でインキュベートした。6時間および24時間の点で、それぞれのチューブの100ulの液体をTSAおよびSDAプレート上で連続的に100倍希釈して定量的に培養した。
【実施例23】
【0133】
C. albicansの発芽におけるAMの効果
AMの濃度を上昇させて4時間インキュベーションすると、C. albicansの発芽を有意に阻害する(p=0.048, ANOVA)(図25参照)。2時間インキュベーションした後の発芽の抑圧は有意ではなかった。データは11回の実験結果をまとめたものである。発芽は、SDAで一晩増殖させたものを回収し、AMを8から85uMの濃度含むRPMI-1640に懸濁したC. albicansのコロニーをインキュベートすることによって決定した。細胞を37℃でインキュベーションし、それぞれの実験につき濃度ごと時間ごとに100から200細胞測定することによって2時間および4時間の点で発芽を測定した。発芽の割合は、胚コニディア(blastoconidia)の総数に対する特徴的な平行壁のチューブ状要素を持つC. albicansの胚コニディアの比率として評価した。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、ヒトAM遺伝子、mRNA、及び二つの生物学的に活性な分子、AM及びプロAMペプチド(PAMP)を含むプレプロホルモンの構造を示している概略図を表す。合成されたオリゴヌクレオチド及びペプチドの位置を示す。遺伝子及びmRNAの番号は、開始コドンからの塩基対を示す。タンパク質の番号はアミノ酸と一致する。データは Ishimitsu, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 203: 631-639 (1994) の報告を基に修正した。
【図2】図2は、固相試験ペプチドへ結合するウサギ抗PO72免疫源(bleed 2343)に対する力価曲線を示す。測定可能な抗体相互作用が、AM、PO72、PO71、NPY、及びCGRPにて観察された。すべての他の標的ペプチド(PO70、ガストリン分泌ペプチド、グルカゴン様ペプチド1、血管作用腸ペプチド(vasoactive intestinal peptide, VIP)、アルギニンバソプレッシン、GRF、コレシストキニン、ガストリン、オキシトシン、カルシトニン、αMSH、及びBSA)の結合は無視できる程度だった。
【図3】ヒト肺カルシノイド細胞系、NCI-H720の全細胞溶解物中のAM様免疫反応性種の検出。右レーンは2 ngの合成PO72(分子量 3576)を含む。検出の特異性は抗PO72抗血清の抗原吸収によって説明される(右パネル)。
【図4】図4A−4Dは、上皮において抗AM抗血清の免疫反応性を示し(図4A)、in situ RT-PCR後にAM mRNAの標識をした(図4C)細気管支の横断切片(倍率 ×450)を示す。吸収コントロール(図4B)及びRTの省略(図4D)により染色の特異性を確認した。
【図5】図5A−5Dは、ニューロンといくつかの神経のperykaRIAが免疫染色されており(図5A)、一方、前吸収した抗血清によって処理した連続切片は陰性である(図5B)、小神経節を示す気管支の動脈血管外膜層を通した切片の写真である。(倍率 ×450)。他の神経節は、in situ PT−PCR技術の適用の後(図5C)、低倍率で(×120)、ラベルされたことが明らかとなる。矢印は、その内皮層が明らかに陽性である血管を示している。PCR混合液中のプライマーの省略は陰性染色を与えた(図5D)。
【図6】図6A、及び6Bは抗AM(図6A)、及びPO72によって前吸収された抗血清(図6B)によって免疫染色された軟骨細胞の詳細の写真を示す。(倍率 ×700)。
【図7】図7A、及び7Bは、in situ RT-PCR後AM mRNAに対してラベルされた肺胞マクロファージ(図7A)、そして逆転写酵素なしのネガティブコントロール(図7B)の写真を示す。(倍率 ×450)。
【図8】正常組織、及び肺の腫瘍細胞株から得たmRNAでのRT-PCRによるAMの特性。PCR産物はUV光にて明視化したとき(下パネル)、妥当なサイズであり(410bp)、これらをサザンブロット後に特異的プローブでハイブリダイズした(上パネル)。H146及びH345は小細胞癌であり、H676はアデノカルシノーマ、H720はカルシノイド、H820は気管支肺胞癌である。H146はAMに対して陰性と分析された唯一の細胞株である。
【図9】図9A及び9Bは、in situ RT-PCRによって示したように、AM mRNAの細胞質の分布を示している細胞株H820(気管支肺胞癌)(図9A)、及び逆転写工程を省略したときに、染色が消えることを示している連続切片(図9B)の写真を示す。(倍率 ×550)。
【図10】図10A及び10Bは、in situ RT-PCRによって(図10A)、及び免疫細胞化学によって(図10B)腫瘍細胞内でのAM mRNAを示しているアデノカルシノーマの連続切片の写真を示す。(倍率 ×550)。
【図11】図11は、ラットマスト細胞からの、ヒスタミンの放出を指し示すチャートを表す。
【図12】図12A及び12Bは、ヒト腫瘍細胞株の増殖にに対する抗AM MoAbの効果を示している。
【図13】図13は、AM(○)及び二つのPO72分子:グループ内ペプチド(●)及びペニンシュラ(Peninsula)ペプチド産物(□)に結合していることを示している、モノクローナル抗体MoAb-G6の特性を示している。すべての他のペプチド、PO70、GRP、GLP1,VIP,AVP,GRF,CCK,アミリン、ガストリン、オキシトシン、αMSH、膵臓ポリペプチド、ペプチドYY、Taa-HoTH(Tabanus atratus ハイポトレハロースホルモン(Hypotrehalosemic Hormone))及びBSAは、無視できる結合を示した。固相分析はすでに記述されている方法(Cuttitta, et al., Nature 316,823 (1985))を用いて行った。
【図14】図14A及び14Bは、AM mRNA及びその翻訳タンパク質に対してスクリーニングしたヒト腫瘍細胞株(H157、H720、MCF-7、OVCAR-3、SNUC-1)及び正常ヒト組織(脳、肺、心臓、副腎)の典型的な試料を表している。図14Aはサザンブロット解析であり、図14Bは、RT-PCR解析によって評価したのと同様に、AM mRNAについての予期された410bp産物を表している、エチジウムブロマイド1%アガロースゲルである。図14Cは、AMに対するウサギ抗血清を用いたときの18、14、6kDaの免疫反応性種を示すウエスタンブロット解析を示す。
【図15】図15A−15Cは、H720コンディションドメディウム(CM)のHPLC結果、固相プレート分析及びウエスタンブロット分析を示す。図15Aは、89.4分での合成AMの溶出時間(矢印)と比較した、H720CM 5Lのフラクション化を表す。
【図16A】典型的なヒト腫瘍細胞株MCF-7を、増殖効果、cAMP活性及び、無血清、ホルモンなしの状態下でのAMによるレセプター結合を示すために使用した。図16Aは、MoAb-G6の抑制効果(●)を、そのマウス骨髄腫同型コントロールIgAκ(Sigma)からの非効果(○)と比べたものを示す。図16Bは、MoAb-G6の効果が、AMのみの付加(●)に比べて、合成AMの付加によって(○)乗り越えられることを示す。MTT (Carney, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 79, 3185 (1981)) 及びレセプター結合/cAMP分析手法 (T.W.Moody, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90, 4345 (1993)) は他で記述されている。
【図16B】典型的なヒト腫瘍細胞株MCF-7を、増殖効果、cAMP活性及び、無血清、ホルモンなしの状態下でのAMによるレセプター結合を示すために使用した。図16Cは、サイクリックAMPが合成AMの付加によって活性化されることを示す。図16Dは、特異的レセプター結合が、PAMP(□)もしくはPO72(●)に対してよりも、AM(○)に対しての方が高いことを示している。MTT (Carney, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 79, 3185 (1981)) 及びレセプター結合/cAMP分析手法 (T.W.Moody, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90, 4345 (1993)) は他で記述されている。
【図17】図17A−17Hは、免疫細胞化学によって示されたような、膵臓におけるアドレノメジュリン(AM)の分布を示す。
【図18】AM及びMoAb-G6(α−AM)のラット単離膵島からのインスリンの放出に対する効果(図18A)。AMの濃度の上昇は、MoAb-G6抗体の存在下(○)もしくは非存在下(●)で、インスリン分泌を減少させる。抗体によって媒介されるインスリン分泌の劇的増加を表している(図18B)。
【図19】図19Aは、インスリンを発現している六つの細胞株、及びヒト副腎と膵臓mRNAにおけるAMに対するサザンブロットを示す。図19Bは、転写前にUVによって見た同じゲルを示す。
【図20】グルコース耐性試験を、AM存在下(○)、もしくは非存在下(●)でSprague-Dawleyラット(250から300 g)で行った。
【図21】図21は、パネルA−Iにて、多くの異なった種の器官での、AM mRNA及び免疫反応性の分布を示している。パネルAは、ラット気管の上皮細胞でのin situ RT-PCRによって検出されたAMに対するmRNAを示している。パネルBは、特に先端部分において、AM抗体に対する強い免疫反応性を表しているモルモット気管を示している。パネルCは、核上部分の強い免疫染色を示すツメガエル(Xenopus)の気道を示している。パネルDは、表皮の単細胞腺(二つがこの図に現れている)に集中しているAM免疫反応性を持つツメガエル外皮を示す。左の黒い部分は色素胞である。パネルEは、16日齢マウス胎児の皮膚を示す。表皮、及び発達している筋肉直下においてAMに対する強い免疫反応性が観察されている。パネルFは、並んでいる上皮、及び腺双方におけるAMに対する免疫染色を示している、ハムスターの子宮を表している。パネルGは、ハムスターの舌で見つかった小唾液腺を示す。別々の分泌細胞がAM様物質を蓄えている。パネルHは、強く免疫染色されたブルナー腺を含むラット十二指腸を示す。パネルIは、AM陽性内分泌細胞を含むネコ結腸の切片を示す。
【図22】図22は、E.Coliの増殖の抑制に対するAM及びPAMPの効果を示す。AMはアルブミン(Alb)(ネガティブコントロール)(*、p=0.03)、PO70(¶、p=0.04)、PO71(¶、p=0.006)、及びPO72(¶、p=0.03)よりも高い増殖抑制活性を示した。マガイニン(Magainin, M)は、AM(*¶§†、p=0.03)及びPAMP(§†、p=0.009)が示すよりもより強いE.Coliに対する抑制活性を発揮した。データは14の実験より作製した。
【図23】図23A及び23Bは、AM及びPAMPの殺菌活性を示す。
【図24】図24は、C. albicansの発芽(germination)に対するAMの影響を指し示す。
【図25】図25は、α−ヘリックス/β−シートの角度パラメータ (Eisenberg) 、及びAMとPAMPに対するらせん回転投影表示 (DNASTAR) により計算されたように、AM及びPAMPにおける両親媒性部分の分布を示す。
【図26】図26は、AM及びAM-Rに対してスクリーニングしたヒト腫瘍細胞株、及び正常ヒト組織の典型的な試料を示す。サザンブロット解析は、RT-PCR増幅後、AMに対する予期された410bp産物(A)及びAM-R mRNAに対する471bp産物(B)を示している。(C)細胞抽出液のウエスタンブロット解析は、AMに対するウサギ抗血清を用いたときに18、14、及び6kDaの免疫活性種を示す。加えて、22kDaの翻訳後修飾に起因する可能性のある免疫活性の存在物がある。(D)吸収コントロールは陰性であった。
【図27】図27はAMに対するヒト癌細胞株の免疫組織化学的、及びin situ RT-PCR解析を示す。SCLC H774(A)、及び卵巣癌細胞株NIH:OVCAR-3(B)におけるAMに対する免疫組織化学的解析。H774コロニーにおけるAM免疫反応性の末梢分布を示す。カルシノイド細胞株H720(C)、及びPCR混合液中のプライマーを水で代用したところの連続切片でのネガティブコントロール(D)におけるAM mRNAに対するin situ RT-PCR。
【図28】図28は、AMの増殖効果を示す。典型的なヒト腫瘍細胞株、MCF-7を、無血清、ホルモンなしの状態でのAMによる増殖効果、レセプター結合、cAMP変量を示すために使用した。(A)MoAb-G6の抑制効果(●)を、そのマウスの骨髄腫同型コントロール、IgAκからの非効果(○)と比較した。(B)AMのみを付加したとき(●)と比較して、合成AM(○)付加によってMoAb-G6の効果が越えられた。(C)特異的レセプター結合がAM(○)について測定されたのに対して、PAMP(●)もしくはPO72(□)について無視できる。(D)サイクリックAMPは合成AMの付加により投与量依存的に上昇する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたアドレノメジュリンペプチドPAMP-20 (配列番号7)。
【請求項2】
請求項1に記載されたペプチドに対して反応性の抗体。
【請求項3】
被検体における低血圧、高血圧、または心不全以外の病気を診断しまたは監視するための、請求項1に記載のペプチドまたは請求項2に記載の抗体の使用であって、被検体から得られたサンプル中のアドレノメジュリンレベルを測定することを含み、このアドレノメジュリンレベルが病気の存在または病気の予後の指標である、前記使用。
【請求項4】
病気が、糖尿病、腎臓病、骨の病気、皮膚病、または造血細胞の病気である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
神経伝達または神経成長を制御するために有効な量の請求項1に記載のペプチドまたは請求項2に記載のペプチドまたは抗体を含む、被検体における中枢神経系の領域においてニューロン活性を制御するための医薬組成物。
【請求項6】
被検体における肥満細胞の脱顆粒または免疫反応細胞の関与により、アレルギー反応または炎症反応を制御し、減少し、または阻害するための、被検体における肥満細胞の脱顆粒を減少しまたは阻害するために有効な量の請求項2に記載の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のペプチドまたは請求項2に記載の抗体を含む、器官および骨の発生を促進するための医薬組成物。
【請求項8】
病気または症状を治療しまたは予防するために有効な量のペプチドまたは抗体を被検体に投与して、被検体における疾患または症状を治療しまたは予防するための医薬を製造する際の、請求項1に記載のペプチドまたは請求項2に記載の抗体の使用。
【請求項9】
病気または症状が癌、腫瘍、II型糖尿病、妊娠に関連する症状、細菌感染、真菌感染、皮膚の擦り傷、皮膚傷害、創傷、または外科的切開である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
癌または腫瘍が、副腎、神経系、肺、結腸、卵巣、前立腺、軟骨肉腫、膵臓、または乳房の癌または腫瘍である、請求項9に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−145850(P2007−145850A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349430(P2006−349430)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【分割の表示】特願平9−509499の分割
【原出願日】平成8年8月16日(1996.8.16)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【Fターム(参考)】